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2003年12月 5日 (金)

WHAM!『MAKE IT BIG』(1984)

よく自分よりもちょっと上の世代の音楽ファンから『'80年代は何も生まなかった』とか『暗黒の時代』だとか言われる機会が昔から多かったわけですよ。そういう人達の大半が'70年代のど真ん中や末期をリアルタイムで通過してる人達で、まぁ所謂『BEATLESに間に合わなかった世代』なわけですね。けど彼等にはパンクという特別なものがある。そういう『リアルなロック』と世間一般で呼ばれるものを通過してしまった世代からすれば、'80年代に入って登場したニューウェーブもニューロマンティックもMTVもLAメタルもNWOBHMもテクノもユーロビートも、全部ダメダメなわけですよ。糞なわけ。

けどさ、そんな『糞』を『黄金』だと思って育ったわけよ、俺ら'70年代生まれは。まだビデオデッキが今みたいに普及してなかった時代、眠い目をこすって深夜のMTVや「ベストヒットUSA」を心待ちにして、毎月「ミュージックライフ」や「ロックショウ」「IN ROCK」のグラビアを切り抜きして下敷きに挟んだりしてたわけ。そういう時代をリアルタイムで通過したんだもん、そういった上の世代よりも許容範囲は広いんだろうね。彼等が理解できないような音楽も嬉々として楽しんでたし‥‥

多分今回紹介するジョージ・マイケルが在籍したWHAM!も、そういう誤解を思いっきり受けたグループのひとつなんだと思う。その甘いルックスやMTVを意識したビジュアルのせいで、完全にアイドルだと思われてたわけだけど、そういう評価を完全に覆したのがこのセカンドアルバム、「MAKE IT BIG」。全8曲、40分を欠ける短さなんだけど、完全無欠のポップ・アルバムに仕上がってるわけです。

全8曲中7曲がオリジナル曲で、6曲がジョージ・マイケルの作詞作曲(1曲のみ相棒、アンドリュー・リッジリーとの連名)によるオリジナル曲。ファーストアルバムも殆どがジョージの手によるものだったわけだけど、その時点で「ゴーストライターが書いてるんじゃないの?」とか囁かれる程、完成度が高かったわけですよ。で、このアルバム。完成度は更に高まり、高純度のポップソングに留まらず、ホワイト・ソウルというか、完全にR&Bと呼んでも違和感ない程なんですね。ま、ファーストの時点で既に片鱗は伺えたんですが、ここでひとつの完成型を見たというか、兎に角素晴らしすぎるんですね。

ふと収録曲に目をやると、半分の4曲がシングルとして大ヒットしてるんですわ。多分誰もが知ってるであろう "Careless Whisper"(西城秀樹が "抱きしめてジルバ" としてカバーした、あの名バラードですね)を筆頭に、当時は某カセットテープのCMソングに抜擢された "Freedom"、地味ながらもアメリカでは1位を記録した "Everything She Wants"、そして懐メロ・コンピ盤に必ずといっていい程入ってるナンバーワンヒット "Wake Me Up Before You Go-Go"("ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ" と書いた方がいいかしら?)、どれもがあの当時、必ずMTVやラジオから聞こえてきた曲ばかり。勿論それ以外のアルバム曲もポップでソウルフルな楽曲ばかり。多分このアルバムの中で一番輝いているであろう永遠のポップソング "Heartbeat"、セクシーでアダルトな雰囲気が後のジョージのソロを彷彿させる "Like A Baby"、かのTHE ISLEY BROTHERSのカバーである "If You Were There"、ゴージャスなポップソング "Credit Card Baby" ‥‥本当に捨て曲一切なし。

当時、白人ポップグループがR&Bやソウルといった黒人音楽に接近する傾向が、特にイギリスでは多かったように感じます。かのボーイ・ジョージ率いるCULTURE CLUBがレゲエやソウルを取り入れたのもそうだし、DURAN DURANも『SEX PISTOLS(パンク)とCHIC(ソウル)の融合』を試みたし、ポール・ウェラーもTHE STYLE COUNSILでホワイト・ソウルをモノにしようとしたし。パンク後、そういった方向に流れていったのは恐らく必然だったのかもしれませんね。

にしてもさ‥‥R&Bとかソウルとか抜きにしても、このアルバムのポップ度、完成度はどうよ? むしろさ、この時代に生まれたであろう10代~20代前半の子達にこのアルバムを聴いて欲しいんだよね。そう願って今回取り上げたわけ。間違いなくジョージ・マイケルのソングライターとしての才能は天才的だし、シンガーとしての力量も俺内ではフレディ・マーキュリーに匹敵する程だと信じているし(いろんな意味で似てるしね?)、何よりもこのアルバムは歴史に残る名盤だし。ロックだのパンクだのソウルだのって、そんなくだらないカテゴリーに拘る前に、このアルバムをまず聴けってぇの!



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