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カテゴリー「2003年の作品」の163件の記事

2021年8月25日 (水)

DREAM THEATER『TRAIN OF THOUGHT』(2003)

2003年11月11日にリリースされたDREAM THEATERの7thアルバム。日本盤は同年11月12日発売。

以降のバンドの指針を確かなものとした前々作『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』(1999年)、初の2枚組大作となった前作『SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE』(2002年)に続く今作は、前作から1年10ヶ月という非常に短いスパンで届けられた意欲作。2作にわたってコンセプトアルバムを制作してきたバンドが、改めてライブの躍動感を重視した作品作りに回帰し、3rdアルバム『AWAKE』(1994年)や4thアルバム『FALLING INTO INFINITY』(1997年)で試されたモダンヘヴィネス/グルーヴメタル路線を数歩推し進めたアグレッシヴなスタイルを確立させています。

全7曲で約70分という長尺ぶりは相変わらずですが、オープニングを飾る「As I Am」(約8分)や続く「This Dying Soul」(11分半)で魅せる/聴かせるスタイルは、過去のモダンヘヴィネス路線を昇華し、よりナチュラルに、より現代的にビルドアップさせたもの。もちろん、ただヘヴィでわかりやすいだけではなく、そこにDTらしいプログメタル要素もしっかり散りばめられており、要所要所に飛び出す変拍子やテクニカルなプレイと相まって、ヘヴィメタルバンドの充実ぶりがじっくり伺えるはずです。

また、アルバムの随所からオルタナメタル的なテイストも見え隠れし、そういった方向性が一時期のQUEENSRYCHEとも重なる。しかし、ここでは付け焼き刃的な危うさは皆無で、しっかりした軸が感じられるので、ヘヴィメタルアルバムとして終始安心して楽しむことができるのです。『AWAKE』や『FALLING INTO INFINITY』は一部のリスナーを除いて「これじゃない」という声が多かった迷作ですが(とはいえ、僕はこの2枚が大好物なんですけどね)、『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』で確たる核を再確認できたからこそ、再びこの路線に戻っていっても迷いなくやりたいことをやり通せる。つまり、今作はある種『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』に対する“裏の顔”と受け取ることができるのではないでしょうか。個人的にはそう感じています。

初期のMETALLICAがやりそうなヘヴィバラード「Endless Sacrifice」や前のめりなヘヴィプログメタル「Honor Thy Father」、ダークな本作における小休止的な短尺バラード「Vacant」、過去2作におけるドラマチックさを引き継ぐインスト「Stream Of Consciousness」、バラードテイストも強いヘヴィなミドルチューン「In The Name Of God」と、全体を通して王道ヘヴィメタルアルバム的作風も徹底されている。コンセプチュアルなテイストは苦手だけど……というメタルリスナーにも、本作はもっともとっつきやすい1枚ではないでしょうか。個人的にも、DTに対する熱を再び高めてくれたという意味で重要な良作です。

 


▼DREAM THEATER『TRAIN OF THOUGHT』
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2021年7月 5日 (月)

SKID ROW『THICKSKIN』(2003)

2003年8月5日にリリースされたSKID ROWの4thアルバム。日本盤は同年10月29日発売。

セバスチャン・バック(Vo)、ロブ・アフューソ(Dr)が脱退し、3rdアルバム『SUBHUMAN RACE』(1995年)以降活動が停滞気味だったSKID ROW。1998年11月にはAtlantic Records時代の総決算となるベストアルバム『40 SEASONS: THE BEST OF SKID ROW』が発売され、一度バンドとしての節目を迎えてから新たなフロントマンとしてジョニー・ソーリンガーをオーディションにて迎えることになります。

前作から約8年半ぶり、レーベルをインディーズのSPV / Steamhammer Records(本国では自主レーベルのSkid Row Records、日本はビクター)に移して初の新作は、デイヴ・スネイク・セイボ(G)、スコッティ・ヒル(G)、レイチェル・ボラン(B)の全盛期メンバーに新加入のジョニー、元SAIGON KICKのフィル・ヴァロン(Dr)という新たな布陣で制作。大半の楽曲はデイヴ&レイチェルが書き下ろし、一部でデーモン・ジョンソン(ex. BROTHER CANE、ex. BLACK STAR RIDERSなど)などがソングライティングに参加しています。

作風的には2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)〜3rdアルバム『SUBHUMAN RACE』で見せたグルーヴメタルの延長線上にある楽曲と、グランジ以降、主にPEARL JAM以降の土着的アメリカンロックをベースにしたオルタナティヴロックの延長線上にある楽曲という2つの軸が見えてきます。前者に関してはおそらく『SUBHUMAN RACE』以降に書き溜めていた楽曲なのかなという印象が強く、「Mouth Of Voodoo」や「Lamb」あたりは『SLAVE TO THE GRIND』に収録されていても不思議じゃないタイプ。

もう一方の土着的路線ですが、これはジョニーというシンガーの声質や声域に合わせた結果でもあるのかなと。「Ghost」や「See You Around」「One Light」あたりに代表される楽曲スタイルは、いかにも90年代半ば以降のオルタナ路線ですしね。実際、ジョニーの声質に非常に合っていますし、楽曲自体の完成度も非常に高い(これら多くの楽曲にデーモン・ジョンソンが携わっていることは触れておくべきポイントでしょう)。こういった楽曲が当時ラジオから流れてきても、そしてそれがSKID ROWの楽曲だと知らなかったとしても違和感なく楽しめたと思うんです。

そう、これをSKID ROWという名前のもとで披露することで違和感が生じてしまったんです。アルバムの中で先のグルーヴメタル路線とうまく噛み合っていないこともあり、全体的にぼんやりした印象を与えてしまう。これは8年というブランクがあまり良い方向に作用しなかった例ではないでしょうか。勿体ないったらありゃしない。

そこに加えて、代表曲「I Remember You」のパンクアレンジ「I Remember You Two」ですからね……これも蛇足でしたよね。いろいろできることを示したアルバムの中で、唯一過去を引きずってしまっている気がしてなりません。

あと、このテイストのアルバムを2003年に出すセンスも……いや、そこは100歩譲ろうか(苦笑)。悪いアルバムではないんだけど、先に述べたように全体像がぼんやりしてしまった、そんな惜しい1枚です。

 


▼SKID ROW『THICKSKIN』
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2021年1月 4日 (月)

CHILDREN OF BODOM『HATE CREW DEATHROLL』(2003)

本当は今年の1月4日から最低1週間くらい、4年以上続いた毎日更新をお休みする予定だったんです。モチベーションがちょっと落ちてきたので、また書きたいと思えるまではいいかな……って。

ところが、1月4日もあと数時間で終わろうとしているこのタイミングに、アレキシ・ライホの訃報が飛び込んできて。取材帰りの出先で、SNS経由で知ったのですが、ショックが大きくて。自分でもここまでショック受けるなんて思いもしませんでした。

というわけで、今日は特別にCHILDREN OF BODOMについて書きたいと思います。

本作『HATE CREW DEATHROLL』は2003年1月6日にリリースされた、CHILDREN OF BODOMの4thアルバムにして出世作。日本盤は同年2月5日に発売されました。

本作で本国フィンランドのアルバムチャートで初めて1位を獲得。このアルバムのチルボドの入門編として挙げる人も多いくらい、非常に聴きやすい/入っていきやすい1枚だと思います。

シンセを取り入れたクラシカルな王道クサメタルを下敷きにしつつ、90年代半ばから勃発したメロディックデスメタルの要素を強く打ち出した独特なスタイルは、本作でひとつの完成形へと到達。PANTERA以降のグルーヴメタルのテイストや、L.A.メタル的ロックンロール要素も随所に散りばめつつ、サビではシンガロングできそうなわかりやすくキャッチーなメロディを採用することで、メロデスが苦手なリスナーにも取っ付きやすさを感じさせてくれる。また、ギターリフやソロパートも非常にクールで耳に残るものばかり。改めてアレキシという稀代のギターヒーローの才能も、ここで存分に味わえるはずです。

楽曲に関してはとにかく名曲揃い。オープニングを飾る「Needled 24/7」を筆頭に、ラストのタイトルトラック「Hate Crew Deathroll」まで捨て曲一切なしで、グルーヴィーさを感じさせる「Sixpounder」にドラマチックな「Bodom Beach Terror」や「Angels Don't Kill」、イントロのドラムフレーズ(トラック的には前曲「You're Better Off Dead」のアウトロ)がモロにJUDAS PRIEST「Painkiller」な「Lil' Bloldred Ridin' Hood」などクセものばかり。次作『ARE YOU DEAD YET?』(2005年)ではグルーヴメタル側に寄り始めるので、クラシカルなクサメタルが好きなリスナーはぜひ本作から触れてみることをオススメします。

ボーナストラックには恒例のカバー曲が。哀愁味に満ちたRAMONES「Somebody Put Something In My Drink」と、スラッシーなSLAYER「Silent Scream」というタイプの異なる2曲を楽しむことができます。個人的にはこのバンドのロックンロールテイストが色濃く表れた前者がお気に入り。

チルボド自体はメンバー3人が脱退したことで、2019年末にほぼ活動終了状態に突入。アレキシはBODOM AFTER MIDNIGHTという新バンドで昨年から活動を始めたばかりでした。まだ41歳という若さでこの世を去るなんて。ダメだよ、自分より若いミュージシャンが俺より先に逝ってしまうのは……。

 


▼CHILDREN OF BODOM『HATE CREW DEATHROLL』
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2020年8月11日 (火)

THE DISTILLERS『CORAL FANG』(2003)

2003年10月にリリースされたTHE DISTILLERSの3rdアルバム。日本盤は同年12月に発売されました。

THE DISTILLERSはフロントに立つブロディ・デイル(Vo, G)を中心に1998年に結成されたパンクバンドで、当初はトリオ編成で活動。1999年にRANCIDのティム・アームストロング(Vo, G)が主催するHellcat Recordsから1st EP『THE DISTILLERS EP』を発表し、デビューを飾ります。その後、リードギタリストが加入し4人編成となり、現在までに3枚のオリジナルアルバムを発表。なお、デビュー当時のブロディとティムは夫婦関係にありました(のちに離婚。2005年にはQUEENS OF THE STONE AGEのジョシュ・ホーミと結婚しました。が、昨年に離婚云々の話題があったような……)。

現時点での最新作(といっても17年前の作品ですが)となる本作は、Hellcatを離れメジャーのSire Recordsと新たに契約して制作された1枚。メジャー契約の効果もあってか、プロデューサーにはギル・ノートン(FOO FIGHTERSJIMMY EAT WORLDPIXIESなど)、ミキサーにアンディ・ウォレス(NIRVANARAGE AGAINST THE MACHINESLIPKNOTなど)を迎えた、「純粋培養なパンクロックアルバムなのに、しっかりキャッチーさも備わった」完全無欠のアルバムに仕上がっています。

ブロディのアクの強いボーカルはどこかコートニー・ラヴHOLE)を彷彿とさせるものがありましたが、ここで聴ける彼女のボーカルパフォーマンスはそれ以上にジョーン・ジェットを思わせるものもある。こういったボーカル面での成長は、楽曲のクオリティアップから引き出されたものなのでしょうか。アートワークのエキセントリックさから想像できる(感覚的な)アングラさは皆無で、全体を通して非常に聴きやすさに満ちた作風なのが印象的です。適度なスピード感とキャッチーなメロディ、耳に残るブロディのボーカル……ロックアルバムとしては文句なしのインパクトを与えてくれるはずです。

オープニングの「Drain The Blood」でのシンガロングできそうな大衆感の強さといい、モッシュ&ダイブ必至の「Die On A Rope」でのスピード感といい、「The Gallow Is God」や「The Hunger」でのダルな雰囲気といい、メジャー感と(音楽的な)アンダーグラウンドの危うさとのキワキワのあたりを進み続ける姿勢はさすがの一言だし、そんな中でラストに「Death Sex」を持ってくるあたりも完璧。当時、刺激が足りなかった自分にとってメジャーというフィールドから大きな衝撃を与えてくれた1枚でした。

ちなみに、このアルバムを購入したのは海外リリースから約4ヶ月後の2004年2月のこと。同年3月末に控えた『MAGIC ROCK OUT』での2度目の来日に備えて予習しようと思い聴いたのです。そのライブの様子は本サイトにも掲載していますが、16年前の自分もブロディのことを「パンク版ジョーン・ジェット」と比喩していますね(笑)。よほどカッコよかったんだろうな、と当時の記憶を必死に絞り出そうとしながらこのアルバムを爆音で聴いているところです。

なお、THE DISTILLERSは2006年に一度解散しており、ブロディはSPINNERETTEというバンドでアルバムを1枚残したり、2014年には初のソロアルバム『DIPLOID LOVE』(こちらも最高!)を発表していますが、2018年に『CORAL FANG』制作時のメンバーで再結成。現在までに「Man VS. Magnet」「Blood In Gutters」の2曲を収録したアナログ盤を発表しており、4作目のアルバム制作にも期待が寄せられています。

 


▼THE DISTILLERS『CORAL FANG』
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2020年3月24日 (火)

DECKARD『DREAMS OF DYNAMITE AND DIVINITY』(2003)

2003年に発表されたDECKARDの2ndアルバムにして最終作。日本盤未発売。

本作は当初、オフィシャルサイトから購入可能な限定商品でしたが、2004〜5年頃から一般流通が開始。現在は各デジタル音源販売サイトおよびストリーミングサービスにて手軽に聴くことができます。

BABY CHAOSからDECKARDへと改名し、満を辞してのデビューアルバム『STEREODREAMSCENE』(2000年)をメジャーのReprise Recordsから発表したものの、大したプロモーションを受けることもなくすぐに契約終了。それからしばらくしてこの2作目の制作に取り掛かったものの、バンドは本作をリリースすることなく2002年に活動休止。メンバーはそれぞれの道を歩むことになります。

この2作目のプロデュースを手がけたのは、メンバーのクリス・ゴードン(Vo, G)。基本的な作風は前作の延長線上にある、良い意味でアメリカナイズされたパワーポップ。ですが、穏やかさの中にもキラキラしたメジャー感がにじみ出ていた前作とは異なり、全体的にどことなくダークさが漂っているのが大きな特徴かもしれません。

もちろんどの曲も非常に練り込まれた、完成度の高いナンバーばかりなのですが、なんとなく“突き抜け”感が足りないような……良い意味で受け取れば、BABY CHAOS時代の魅力が復調していると見ることもでき、「Holy Rolling」を筆頭に(アレンジや演奏面で)ハードロック的な色合いが戻ってきているのはその影響もあるのかなと思いました。

一方で、悪い意味で受け取るとならば……せっかくアメリカに渡ったのに、レーベルからは思ったようなサポートを受けられず、あげくリリースから間もなく契約解除。そういったネガティブな要素が作品にも暗い影を落とした……そう考えられなくもないのかなと。

本来彼らが持ち合わせていた要素の復活と、状況がままならない不安。これらが複合的に作用して、この空気感を生み出した……だとしたら、こういう作品こそ多くのリスナーのもとに行き届くようにして「ダークだけどカッコいいじゃん。あれ、前にも1枚出してるの? だったら聴いてみようかな?」と思わせることもできたはずなのに。悪い状況はいつになっても復調することなく、結果としてバンドは事実上の解散へと向かうわけです。

事実、僕自身このアルバムがリリースされていることを知ったのはかなりあとになってからで、当時まだ生きていたDECKARDのオフィシャルサイトでダウンロード購入して「もっと早くに聴いておくべきだった!」と思ったくらいですから。

結果として、2013年にBABY CHAOSが再結成したおかげで、DECKARD時代の2作品も「歴史のひとつ」として受け取れるようになりましたので、あのまま埋もれずに本当によかったです。『STEREODREAMSCENE』ほどの鉄壁さはないものの、影の要素を強めたこの作風もかなりクセになるはず。『STEREODREAMSCENE』を気に入った方、BABY CHAOSの近作から彼らを知ったというリスナーにもぜひ触れてもらいたい1枚です。

 


▼DECKARD『DREAMS OF DYNAMITE AND DIVINITY』
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2019年10月 6日 (日)

MICHAEL MONROE『WHATCHA WANT』(2003)

マイケル・モンローが2003年1月に発表した、通算5枚目のオリジナルアルバム。JERUSALEM SLIMDEMOLITION 23.名義のアルバムを含めると、通算7作目のソロ作品ということになります。

前作『LIFE GETS YOU DIRTY』(1999年)発表前後から、再び運気が上昇し始めたマイケル。その勢いはそのままソロに注ぎ込まれるのかと思いきや、なんと2001年にHANOI ROCKS再生(=事実上の再結成)。オリジナルメンバーはマイケルとアンディ・マッコイ(G)のみでしたが、現代的にアップデートされたオリジナルアルバム『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』(2002年)をリリースするなど、精力的な活動が展開されました。

今回紹介するソロアルバムは、マイケルがハノイ再生期間に唯一発表したソロアルバム。タイトルの『WHATCHA WANT』は、その再生ハノイの第1弾アルバム『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』の同名収録曲から取られたもの。そもそも、この「Whatcha Want」という曲、ソロ用に作られたものだったみたいですね。

そういう事情もあるのかどうか不明ですが、アルバムは全13曲中オリジナルナンバーが5曲と非常に少ないんです。それ以外はEDDIE & THE HOT RODS、UK SUBS、THE DEAD BOYS、X-RAY SPEX、デイヴ・リンドルム、THE BOYS、レオナード・コーエンとバラエティに富んだアーティストのカバー曲を収録。アルバムとしての勢いは十分に伝わってくるものの……なんとなくですが、雰囲気的には3作目『PEACE OF MIND』(1996年)にも近いものを感じます。ただ、あのときほどネガティヴさは感じられず、むしろ再生ハノイで感じた“違和感”を放出するような“アク抜き”役割の1枚なのかなと。

まあとにかく。カバー曲は文句なしに良いです。当たり前か、原曲が良いんだから。EDDIE & THE HOT RODS「Do Anything You Wanna Do」のパワーポップ感は初期ハノイにも通ずるものがあるし、おなじみTHE DEAD BOYS「What Love Is」は「まだこれやってなかったんだ!」と驚かされるし。アルバムラストを飾るアコースティックナンバー「Hey, That's No Way To Say Goodbye」も、レオナード・コーエンのくどさがまったく感じられない(笑)、非常にさらっとした仕上がりで、このアルバムにぴったりの1曲だと思いました。

また、オリジナルナンバーも同時期のハノイ作品に収録されていたとしても、何ら違和感のない楽曲ばかり。「Right Here, Right Now」の疾走感、どこか後期THE CLASHを思わせる「Stranded」のエモさ、湿り気の強い「Rumour Sets The Woods Alight」や「Life's A Bitch And Then You Live」のセンチメンタルな泣きメロなど、どれもなかなかの出来。それもそのはず、レコーディングにはティンパ(B)&ラク(Dr)といった当時の再生ハノイのメンバーが参加しているんですから(笑)。

前作同様、この時期のソロ作品は日本でもあまり良い扱いを受けていない印象があり、現在もCDは廃盤状態。デジタル配信も行われておりません。せっかくバンド形態のMICHAEL MONROEがここまでちゃんと続いているんだから、(もはやライブでこれらの楽曲を披露しないにしても)ぜひ形として残し続けてほしいものです。

 


▼MICHAEL MONROE『WHATCHA WANT』
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2019年8月 1日 (木)

KORN『TAKE A LOOK IN THE MIRROR』(2003)

2003年11月にリリースされた、KORN通算6作目のオリジナルアルバム。

マイケル・ベインホーン(SOUNDGARNDENRED HOT CHILI PEPPERSオジー・オズボーンなど)をプロデューサーに迎え制作した前作『UNTOUCHABLES』(2002年)で、メロディアスかつプログレッシヴな作風へとシフトして賛否両論を巻き起こしたKORN。同作から1年弱という短期間で、今度は初のセルフプロデュース(ジョナサン・デイヴィスがメイン、フランク・フィリペッティがサポート&ミックス)に乗り出します。

アルバム発売の数ヶ月前には映画『トゥーム・レイダー2』のテーマソングとして、新曲「Did My Time」を提供。リリース当時のレビューにも書きましたが、この曲を聴く限りでは『UNTOUCHABLES』の延長線上にある作風になるのかなと思っていました。

で、実際に届けられたアルバム。オープニング「Right Now」のギターリフを聴いて「お、原点回帰?」と若干期待したものの、確かにヘヴィだけど基本的には前作の延長線上にあるスタイルで間違いないのかなと。確かにボーカルスタイルは若干初期の歌唱法を取り戻しつつありますが、それもアルバム全体においてはスパイスといったほうがいいのかな。やっぱり全体を通して耳に残るのは、ジョナサン・デイヴィス(Vo)の歌唱力・表現力の向上と、その彼が扱うキャッチーなメロディなのですから。

KORNらしい危うさはちゃんと残しつつ、どこか整理された楽曲構成・アレンジに初期の無軌道さを求めるのは、もはや死んだ子の歳を数えるようなもの。バンドとしてどんどん進化していく姿を冷静に受け入れつつ、彼らがどこへ進んで行きたいのか、何をしたいのかを当時は冷静に考えたりしたものです。

あ、「全体を通して耳に残る」のは何もキャッチーな側面だけではありません。そういった楽曲を表現するサウンドのえげつなさは、もしかしたら過去イチかもしれません。低音の鳴りやそれらを生々しい感触でパッケージしたミキシングは、初期2作のそれとは異なるものの非常に現代的で、こりゃあ日本人には真似できないは……と驚いたこともよく覚えています。

今聴き返すと、「結局は1stアルバム『KORN』(1994年)や2ndアルバム『LIFE IS PEACHY』(1996年)の衝動はもはや取り戻せないものの、その表現方法になるべく近づけつつ、セールス的に大成功を収めた3rd『FOLLOW THE LEADER』(1998年)や4th『ISSUES』(1999年)のスタイルをベースに、5th『UNTOUCHABLES』で試みた実験の成果を詰め込む」という最初の10年の集大成だったのかなと。そう考えると、本作を最後にヘッド(G)が脱退したのも、次作『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』(2005年)でさらなる変化の時期を迎えたのも納得できるかなと。もちろん、長い歴史を経た今だからこそ言える話ですが。

ちなみに本作、当初の予定よりも前倒しでリリースされたんですよね。というのも、アルバム収録曲がネット上でリークされてしまったので、バンドやレーベル側が慌てて正規品を世に送り出したという。結果、全米チャート初登場19位、最高9位(ミリオンセールス)というこれまでの作品では低調な数字で終了するという不運な1枚となってしまいました。いや、いいアルバムなんだけどね。

 


▼KORN『TAKE A LOOK IN THE MIRROR』
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2019年4月 9日 (火)

BON JOVI『THIS LEFT FEELS RIGHT』(2003)

2003年11月(日本では同年10月末)にリリースされた、BON JOVIの再録アルバム。80〜90年代に発表されたヒットシングルの数々をアコースティックベースでリアレンジした全12曲で構成されています。当初は「Last Man Standing」「Thief Of Hearts」といった新曲も収録予定とアナウンスされましたが、最終的に外されることに。これらのアイデアが元になり、2005年のオリジナルアルバム『HAVE A NICE DAY』とつながっていくことになります。

アコースティックベースとはいえ、完全なる“アンプラグド”アルバムではなく、しっかりエレクトリックギターやベースなども使用されております。だって、オープニングの「Wanted Dead Or Alive」からしてモダンなLED ZEPPELIN風アレンジですから。このダイナミズム、嫌いじゃない。個人的にはこの1曲だけで“アリ”なアルバムになる予定でした。

「予定でした」というのは、以降の楽曲を聴いてもらえばわかるように、レイドバックというか無駄に枯れてしまった感の強い、肩の力抜けすぎなリアレンジが続くからに他ありません。「Livin' On A Prayer」は元からあるアコースティックバージョンをベースに、リッチー・サンボラ(G, Vo)の代わりにオリヴィア・ダボが歌ったものに。これはこれで悪くないんだけど、続く「Bad Medicine」の“高いキーが出なくなったからメロを変えまくったらつまらない曲になりました”的アレンジや「It's My Life」の“それ、ただの演歌やんか”的アレンジ、などなど……“これじゃない”感連続の内容となっています(苦笑)。

ぶっちゃけ、リリース当時は数回聴いたっきりで放っておいたのですが、あれから15年以上経ち、久しぶりに聴いてみたら……印象まったく変わってなかった(笑)。「Wanted Dead Or Alive」は相変わらず“アリ”だけど、他の曲は……悪くはないけど良くもない。なにもBON JOVIの名前でやることではなかったな、と。山場のまったくない「I'll Be There For You」とか聴いた日にゃあ……これ、ジョン・ボン・ジョヴィがソロでやればよかったのにね。

そもそも、選曲が良くなかったんじゃないかな。無理にシングル曲にこだわったばかりに、中途半端な中身になってしまったわけで、例えば「Love For Sale」や「Someday I'll Be Saturday Night」といったもともとアコースティック調の楽曲ならアイデアひとつで別の表現ができたはずなのに(それだと、あまり変わり映えしなかったのかな)。そういった意味では、初回限定盤付属DVDに収められたAOLセッションズのほうが見応え/聴き応えがある気がします。

全米14位と大きなヒットにつながらず、ファンの間でもスルーされることの多い1枚ですが、『HAVE A NICE DAY』へとつながるという点においては大きな役割を果たした作品なのかな。そう考えると、こういう失敗も悪くないのかも。

にしても……あと10年経ったら、この良さが理解できるんだろうか。そうなりたいような、なりたくないような(苦笑)。

 


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2018年10月15日 (月)

MANIC STREET PREACHERS『LIPSTICK TRACES: A SECRET HISTORY OF MANIC STREET PREACHERS』(2003)

2003年7月にリリースされた、MANIC STREET PREACHERS通算2作目のコンピレーションアルバム(日本ではだいぶ遅れ、2005年7月発売)。初のシングルコレクションアルバム『FOREVER DELAYED』(2002年)と対をなす、シングルカップリング曲を中心に構成された2枚組アルバムで、ディスク1にはオリジナル曲(未発表曲含む)、ディスク2にはカバー曲(初音源化曲含む)がそれぞれ収められており、マニックスの“裏サイド”を存分に満喫できる内容となっています。

“裏サイド”とはいうものの、その内容はアルバム本編と引けを取らないほどの完成度の高い楽曲ばかり。録音時期はさまざまで、古いものは1991年の「Motown Junk」収録の「Sorrow 16」と「We Her Majesty’s Prisoners」で、最新は「4 Ever Delayed」(前年の『FOREVER DELAYED』のタイトルトラックとして制作されたものの、未収録。2003年に日本企画EP『FOREVER DELAYED EP』が初出)になるのかな。というわけで、10年以上にわたりシングルのカップリングで実践されてきた実験の数々が、ここで聴けるというわけです。

もちろん、ここに収録されていないカップリング曲も多数存在します。例えば「R.P. McMurphy」(1991年の「Stay Beautiful」収録)や「Patrick Bateman」(1993年の「La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)」収録)、「Too Cold Here」(1994年の「Revol」収録)あたりは、ファンの間でも人気の高い楽曲なのに未収録。このへんは日本限定で発売された紙ジャケ2枚組仕様の限定盤などで聴くことができるので、興味を持った方はチェックしてみてはいかがかと。

とはいえ、それ以外は概ね満足な内容ではないかと。90年代初頭の勢いに満ちたパンクチューンから、3rdアルバム『THE HOLY BIBLE』(1994年)へと向かっていく過程の無機質さが増した楽曲、3人になってからのエモーショナルかつキャッチーなポップチューンなど、とにかくバラエティに富んでいる。改めて、シングルコレクション以上にこのバンドの凄みが味わえるのではないでしょうか。

そして、ディスク2のカバー集。スタジオテイクからライブ音源、ラジオパフォーマンスまで音源的にはさまざまですが、取り上げているアーティストがTHE CLASHチャック・ベリーストーンズといったルーツから、GUNS N' ROSESNIRVANA、HAPPY MONDAYS、PRIMAL SCREAMといった近代のアーティストまで、さらに意外なところではWHAM!などもあり、改めてその多様性にも驚かされます。ちなみに、こちらのカバーに関しては意外とストレートに演奏しており、どちらかというとコピーに近いのかなと。そのへんは原曲者に対する愛情の強さ故かもしれませんね。

なお、ここでも漏れたカバー曲がいくつか。「Under My Wheels」(アリス・クーパー)、「Charles Windsor」(McCARTHY)、「The Drowners」(SUEDE)、「Stay With Me」(FACES)と、漏れたどれもが個人的に気に入っていたカバーなので残念極まりないです。ま、これらの音源も先に書いた紙ジャケ2枚組で聴けるので、気になる人は探してみてはどうでしょう。

あ、本作を購入するときは少々高いですが国内盤をオススメします。というのも、ボーナストラックとして今は入手困難な無料配布EP『GOD SAVE THE MANICS』(2005年)収録の3曲が追加されているので(カバー盤のラストに追加というのが少々アレですが)。さらに、当時ソニーのCMソングとしてオンエアされていた「Everything Must Go」のシングルバージョン(3分ちょっとに編集されたバージョン)も追加されているので、まあ多少のお得感があるのかなと。『GOD SAVE THE MANICS』は配信もされていない貴重音源なので、ぜひ日本盤を探してみてください!



▼MANIC STREET PREACHERS『LIPSTICK TRACES: A SECRET HISTORY OF MANIC STREET PREACHERS』
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2018年8月12日 (日)

THUNDER『SHOOTING AT THE SUN』(2003)

2002年に再結成を果たしたTHUNDERが、2003年3月に日本先行で、海外では翌月4月に発表したのがこの『SHOOTING AT THE SUN』というアルバム。通算6枚目のオリジナルアルバムとなりますが、当初は日本盤と同時期にオフィシャルサイトでオンライン販売されるのみという、再結成したものの単なるファンアイテムなんじゃ……くらいのプライオリティでリリースされました。要するに、この再結成自体も意気込んで「またやってやるぞ!」というよりも「うまくいったらマイペースに続けていこうかな?」くらいのテンションだったんでしょうね。

前年には4曲入りEP『BACK FOR THE CRACK』(2002年)がここ日本でも発売されていますが、本作はその延長線上にある1枚。アルバムにはEPから「The Pimp And The Whore」「Somebody Get Me A Spin Doctor」「Blown Away」の3曲が収録されているのですが……地味。とにかく地味で玄人好みでブルース/ソウルテイスト満載のハードロックが展開されています。

オープニングを飾る「Loser」こそ、往年のTHUNDERらしい豪快さが若干感じられますが、以降はFREEやBAD COMPANYあたりをより地味にしたような、とても『BACKSTREET SYMPHONY』(1990年)とは同じバンドとは思えないくらい(いや、よく聴けば同じバンドだと気づくけど)派手さが消えています。

何がそんなに地味なのかというと、きっとこれって演奏のメリハリとメロディラインによるものが大きいんだろうなと。演奏は決して弾き倒したりひとつの楽器だけ前に出ようとか、そういった欲がまったく感じられないし、ボーカルをバックアップするためだけに存在しているような、そんな印象すら受けます(本当はそんなことないとは思うけど)。

また、メロディラインも初期の頃のように高音で張り上げるようなものではなく、装飾による抑揚を極力削り落とし、歌の熱量だけでメリハリをつけるような、そんな表現方法に変化しています。これは解散前の最終作『GIVING THE GAME AWAY』(1999年)の時点ですでに見え隠れいていた手法なので、その延長と考えれば納得いくことでしょう。

にしても、「祝・復活!」的な盛り上げが一切ないのが、よくも悪くもこのバンドらしいといいますか。ま、だから好きなんですけどね。地味だ地味だと書き倒してきましたが、だから悪いわけではなく、むしろ「わかる人にはわかる!」最高の1枚だと確信しています。



▼THUNDER『SHOOTING AT THE SUN』
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