カテゴリー「2003年の作品」の172件の記事

2024年4月18日 (木)

LINKIN PARK『METEORA: 20TH ANNIVERSARY EDITION』(2023)

2023年4月7日にリリースされた、LINKIN PARKの2ndアルバム『METEORA』(2003年)の20周年記念デラックス盤。全43曲入りのCD3枚組と、全89曲で構成されたボックスセットおよびデジタルエディション、アナログボックスセットの3仕様が用意されています。

アメリカで1000万枚以上、全世界で約3000万枚を売り上げたデビュー作『HYBRID THEORY』(2000年)に続く2作目ということで、相当なプレッシャーの中で制作されたかと思いますが、結果はご存知のとおり。初の全米1位を獲得したほか、アメリカのみで800万枚以上、全世界で2700万枚というメガヒットを記録し、前作にも劣らない成績を残す代表作のひとつとなりました。

ボックスセットにはリマスタリングされたアルバム本編(CD&アナログ)のほか、2003年11月に発売されたバンド初のライブアルバム『LIVE IN TEXAS』(CD版未収録曲含む)と未発表ライブ音源集『LIVE IN NOTTINGHAM 2003』(ともにアナログ)、過去にファンクラブ経由で発表された『METEORA』期のデモ音源をまとめた『LPU RARITIES 2.0』(CD)、『METEORA』期の貴重なライブ音源をコンパイルした『LIVE RARITIES 2003-2004』(CD)、「Lost」「Fighting Myself」といった未発表曲や本邦初公開となるデモ音源をまとめた『LOST DEMOS』(CD)、そしてアルバム制作ドキュメンタリー映像『THE MAKING OF METEORA』(DVD)やソウルやマイアミなど2003〜4年のライブ映像(DVD)をひとまとめに。

一方、3枚組バージョンはDISC 1に『METEORA』+未発表曲「Lost」、DISC 2に『LPU RARITIES 2.0』、DISC 3に『LIVE RARITIES 2003-2004』という構成。今回の再発において重要になってくるのは、おそらくボックスセットのみで聴ける『LOST DEMOS』と、ライブコンパイル盤『LIVE RARITIES 2003-2004』になると思っているので、本稿では『LOST DEMOS』と『LIVE RARITIES 2003-2004』中心に解説していきます。

『LOST DEMOS』

「Lost」は新たに手が加えられ、アルバム本編に含まれていても不思議ではない仕上がりにまで到達。それによって、未発表曲というよりも“新曲”のイメージが強いかも。初期の彼らに対してのイメージどおりの1曲ではないでしょうか。ただ、アルバムに含まれていたら“つなぎ”の1曲で終わっていたかもしれません。

「Fighting Myself」は『METEORA』で描かれている世界観の延長線上にある、ヒップホップマナーの1曲。「Lost」がチェスター・ベニントンのクリーンボーカル中心だとしたら、こっちはマイク・シノダのラップを軸にしたグルーヴィーな仕上がりです。「Resolution」あたりもこの流れにあるのかな。一方、「More The Victim」「Massive」「Healing Foot」はテイスト的に『HYBRID THEORY』寄りで、『METEORA』への通過点的な内容。アルバム本編から漏れるのも仕方ないかな。もちろん、もっとブラッシュアップできたらアルバム本編に含まれていても不思議じゃないんですが、当時はそこまでの魅力が見出せなかったのかもしれませんね。

そのほか、「Faint」や「Lying From You」のデモバージョンも含まれており、ブラッシュアップされる前の原石ぶりを確認することができます。『LPU RARITIES 2.0』に収録されたバージョンとはそれぞれ異なるので、完成版含めた聴き比べもできそうです。


『LIVE RARITIES 2003-2004』

ライブをまるまる1本収めた『LIVE IN TEXAS』や『LIVE IN NOTTINGHAM 2003』とは異なり、こちらは『METEORA』期の象徴的なツアー/フェスのハイライト的内容で、全10曲と非常にコンパクト。自身のツアーのほか、『Reading Festival 2003』や『Rock Am Ring 2004』での記念碑的音源も含まれています。

この中で特筆すべきはラスト3トラックかなと。初期の「Step Up」から「Nobody's Listening」へのメドレー、そこにE-ECUTIONERSの「It's Goin' Down」をミックスしたスペシャルバージョンは、ライブならではの特別感があります。また、NINE INCH NAILS「Wish」のカバーや、KORNジョナサン・デイヴィスをゲストに迎えた「One Step Closer」もスペシャル感が強く、当時のバンドの勢いがダイレクトに伝わります。どれもシングルやファンクラブ経由では既発音源ですが、こうして手軽に聴けるようになったのはありがたい限りです。

 


▼LINKIN PARK『METEORA: 20TH ANNIVERSARY EDITION』
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2024年1月 8日 (月)

2003年4月〜2004年3月発売の洋楽アルバム20選

2015年から毎年この時期に用意してきたこの成人企画。ちょうど2022年から成人年齢が18歳へと引き下げされ、現在は成人式の概念も崩れつつありますが、この企画はこの企画として、タイトルから「祝ご成人」の文字を外し、20年前を振り返る企画として続けることにしました。

通常なら1月はじまりでカウントするところを、これまで同様4月はじまり翌年3月終わりという年度縛りで進めるのは、ちょっと日本的なのかな。とはいえ、今さらこのフォーマットを崩すのも何かなと思い、このまま続けさせていただきます。

この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に2003年4月〜2004年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れが強い作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能なものを20枚ピックアップする……というのが本来の趣旨。20年って結構節目にもなると思うので、改めて「ああ、自分が生まれた頃はこういうアルバムがヒットしていたのか」とか「これってもう20年前の作品なのか」とか、いろいろ浸っていただいたり驚いていただけるとうれしいです。

 

では、サブスクを通して20年前の名盤20枚をお楽しみください。

 

ALICIA KEYS『THE DIARY OF ALICIA KEYS』(2003年12月発売)(Spotify

 

AVENGED SEVENFOLD『WAKING THE FALLEN』(2003年8月発売)(Spotify)(レビュー

 

BEYONCÉ『DANGEROUSLY IN LOVE』(2003年6月発売)(Spotify

 

THE BLACK EYED PEAS『ELEPHUNK』(2003年6月発売)(Spotify

 

THE DARKNESS『PERMISSION TO LAND』(2003年7月発売)(Spotify)(レビュー

 

FRANZ FERDINAND『FRANZ FERDINAND』(2004年2月発売)(Spotify)(レビュー

 

HOOBASTANK『THE REASON』(2003年12月発売)(Spotify)(レビュー

 

JET『GET BORN』(2003年9月発売)(Spotify

 

JOHN MAYER『HEAVIER THINGS』(2003年9月発売)(Spotify

 

KANYE WEST『THE COLLEGE DROPOUT』(2004年2月発売)(Spotify

 

LAMB OF GOD『AS THE PALACES BURN』(2003年5月発売)(Spotify

 

THE MARS VOLTA『DE-LOUSED IN THE COMATORIUM』(2003年6月発売)(Spotify)(レビュー

 

METALLICA『ST. ANGER』(2003年6月発売)(Spotify)(レビュー

 

MEW『FRENGERS』(2003年4月発売/日本盤同年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

MUSE『ABSOLUTION』(2003年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

OUTKAST『SPEAKERBOXXX / THE LOVE BELOW』(2003年9月発売)(Spotify

 

RADIOHEAD『HAIL TO THE THIEF』(2003年6月発売)(Spotify)(レビュー

 

SCISSOR SISTERS『SCISSOR SISTERS』(2004年2月発売)(Spotify

 

SNOW PATROL『FINAL STRAW』(2003年8月発売)(Spotify)(レビュー

 

THE WHITE STRIPES『ELEPHANT』(2003年4月発売)(Spotify

 

このほかにも、以下の作品を候補に挙げていました。

A PERFECT CIRCLE『THIRTEEN STEP』(レビュー
AEROSMITH『HONKIN' ON BOBO』(レビュー
AIR『TALKIE WALKIE』
AMY WINEHOUSE『FRANK』
ANDREW W.K.『THE WOLF』(レビュー
ANTHRAX『WE'VE COME FOR YOU ALL』(レビュー
ARCH ENEMY『ANTHEMS OF REBELLION』(レビュー
THE BANGLES『DOLL REVOLUTION』
BASEMENT JAXX『KISH KASH』
BELLE & SEBASTIAN『DEAR CATASTROPHE WAITRESS』(レビュー
BLACK LABEL SOCIETY『THE BLESSED HELLRIDE』(レビュー
BLINK-182『BLINK-182』
BLUR『THINK TANK』(レビュー
BRITNEY SPEARS『IN THE ZONE』
CAESARS『39 MINUTES OF BLISS (IN AN OTHERWISE MEANINGLESS WORLD)』
THE CORAL『MAGIC AND MEDICINE』
COURTNEY LOVE『AMERICAN SWEETHEART』(レビュー
THE CRIBS『THE CRIBS』(レビュー
DAMAGEPLAN『NEW FOUND POWER』(レビュー
DANKO JONES『WE SWEAT BLOOD』
DASHBOARD CONFESSIONAL『A MARK, A MISSION, A BRAND, A SCAR』
DAVE GAHAN『PAPER MONSTER』
DAVID BOWIE『REALITY』(レビュー
DEATH CAB FOR CUTIE『TRANSATLANTICISM』
DEFTONES『DEFTONES』(レビュー
DIDO『LIFE FOR RENT』
DIMMU BORGIR『DEATH CULT ARMAGEDDON』
DIFFUSER『MAKING THE GRADE』(レビュー
THE DISTILLERS『CORAL FANG』(レビュー
DREAM THEATER『TRAIN OF THOUGHT』(レビュー
ELECTRIC SIX『FIRE』(レビュー
ERYKAH BADU『WORLDWIDE UNDERGROUND』
EXODUS『TEMPO OF THE DAMNED』
FALL OUT BOY『TAKE THIS TO YOUR GRAVE』
FOUNTAINS OF WAYNE『WELCOME INTERSTATE MANAGERS』
GEORGE MICHAEL『PATIENCE』
HATEBREED『THE RISE OF BRUTALITY』
HIM『LOVE METAL』
IGGY POP『SKULL RING』
IN FLAMES『SOUNDTRACK TO YOUR ESCAPE』
INCUBUS『A CROW LEFT OF THE MURDER...』(レビュー
IRON MAIDEN『DANCE OF DEATH』(レビュー
JACK JOHNSON『ON AND ON』
JANE'S ADDICTION『STRAYS』
JEFF BECK『JEFF』(レビュー
JOE STRUMMER & THE MASCALEROS『STREETCORE』
JOHN FRUSCIANTE『SHADOWS COLLIDE WITH PEOPLE』
JONNY GREENWOOD『BODYSONG』
JOSS STONE『THE SOUL SESSIONS』(レビュー
KILLING JOKE『KILLING JOKE』
THE KILLS『KEEP ON YOUR MEAN SIDE』
KINGS OF LEON『YOUTH AND YOUNG MANHOOD』
KORN『TAKE A LOOK IN THE MIRROR』(レビュー
KRAFTWERK『TOUR DE FRANCE SOUNDTRACKS』(レビュー
KYLIE MINOGUE『BODY LANGUAGE』
LED ZEPPELIN『HOW THE WEST WAS WON』(レビュー
LOSTPROPHETS『START SOMETHING』
LIMP BIZKIT『RESULTS MAY VARY』
M83『DEAD CITIES, RED SEAS & LOST GHOSTS』
MADONNA『AMERICAN LIFE』
MACHINE HEAD『THROUGH THE ASHES OF EMPIRE』
MOGWAI『HAPPY SONGS FOR HAPPY PEOPLE』(レビュー
N.E.R.D.『FLY OR DIE』
NELLY FURTADO『FOLKLORE』
NORAH JONES『FEELS LIKE HOME』
OPETH『DAMNATION』
PHOENIX『ALPHABETICAL』
PLACEBO『SLEEPING WITH GHOSTS』
PREFUSE 73『ONE WORD EXTINGUISHER』
PRINCE『N・E・W・S』
PROBOT『PROBOT』(レビュー
THE RAPTURE『ECHOES』(レビュー
THE RASMUS『DEAD LETTERS』(レビュー
SHINEDOWN『LEAVE A WHISPER』(レビュー
SOILWORKS『FIGURE NUMBER FIVE』
SPIRITUALIZED『AMAZING GRACE』
STAIND『14 SHADES OF GREY』
STARSAILOR『SILENCE IS EASY』
STEREOPHONICS『YOU GOTTA GO THERE TO COME BACK』
STERIOGRAM『SCHMACK!』
THE STILLS『LOGIC WILL BREAK YOUR HEART』(レビュー
STING『SACRED LOVE』
THE STROKES『ROOMS ON FIRE』(レビュー
SUPER FURRY ANIMALS『PHANTOM POWER』
SUPERJOINT RITUAL『A LETHAL DOSE OF AMERICAN HATRED』
TRAVIS『12 MEMORIES』
TRIVIUM『EMBER TO INFERNO』
TV ON THE RADIO『DESPERATE YOUTH, BLOOD THIRSTY BABES』
THE VON BONDIES『PAWN SHOPPE HEART』
THE WiLDHEARTS『THE WiLDHEARTS MUST BE DESTROYED』(レビュー
YEAH YEAH YEAHS『FEVER TO TELL』
ZEBRAHEAD『MFZB』

 

この20枚、きっと20年前にその年のベストとして選ぼうとしたらまったく違ったセレクトになったんじゃないかな。ちなみに2003年の年間ベストはこちらなんですが、ロックやメタル系のセレクトは一貫しているものの、当時“流行りもの”として接していたR&Bやヒップホップのヒット作が20年を経てかなり大きな影響力を持つようになり、僕の中でもあの頃を語る上で欠かせなくなってきている事実がありまして。こうして、歴史は更新されていくんですね……と実感する今日この頃です。きっと昨年や一昨年の20枚を今選んだら、3分の1くらい入れ替わっているのかもしれませんね。

 

2023年3月22日 (水)

BLACK LABEL SOCIETY『THE BLESSED HELLRIDE』(2003)

2003年4月22日にリリースされたBLACK LABEL SOCIETYの4thアルバム。日本盤は同年3月29日発売。

前作『1919 ETERNAL』(2002年)からほぼ1年という、非常に短いスパンで届けられたオリジナルアルバム。アメリカでは売り上げを前作の倍近くに伸ばし、初めてBillboard 200(全米アルバムチャート)入り(最高50位)を記録しました。

前作と何がそんなに違ったのでしょうか。ひとつは、ドラム以外のすべてのパートをザック・ワイルドひとりで担当したこと。ドラムのみ前作から参加したクレイグ・ニューネンマッハー(ex. CROWBAR)がプレイしているのですが、そもそも前作も3曲のみロバート・トゥルヒーヨ(現METALLICA)が参加したのみで、それ以外の曲ではザックがベースも弾いていたので、そこまで大きな変化というわけではない。そもそも、それ以前の『SONIC BREW』(1999年)『STRONGER THAN DEATH』(2000年)の時点でザックはドラム以外のパートをすべてレコーディングしていたので、これに関してはただ原点に戻っただけと言えます。

では、楽曲面が大きく変化したのか。そこに関しても、前作までの延長線上にあるものなので、そこまで変わったとは思えない。ただ、楽曲の質感に関しては一聴して粗暴に思えるものの、実は洗練され始めていることにも気付かされる。ヘヴィすぎるギターリフに圧倒されるかもしれませんが、実はアレンジもかなり手が込んだものが多く、「Suffering Overdue」でのスマートな冴え渡りぶりには驚きを隠せません。どうしても似たようなヘヴィナンバーの連発で1曲1曲の差別化に苦心しそうなジャンルですが、このアルバムにおける各曲の個性の際立ちぶりからは、前作以で得た手応えが非常に大きなものだったことが伺えます。

また、アコースティック色を強めた「The Blessed Hellride」、ダークなパワーバラード調「Blackened Waters」、アーシーでセンチメンタルなピアノバラード「Dead Meadow」といった変化球もしっかり用意。さらに、自身の師匠ともいえるオジー・オズボーンがゲスト参加した「Stillborn」といった話題性の強い楽曲も含まれており、楽曲のバラエティ豊かさや充実度は過去イチかもしれません。特段変わったことや新しいことにトライしたわけではない本作、作品を重ねるごとにバンドの軸がより強靭なものへと確立されていったからこそ、特別なことをしなくても当たり前のような傑作へと昇華させることができたわけですね。それが、売り上げやチャート成績にも反映された。そう考えると、この結果は納得といいますか、ごく当たり前の評価なのでしょう。

とにかく、この時期のザックの創作意欲は尋常じゃないものがあり、翌年春には早くも次作『HANGOVER MUSIC VOL.VI』(2004年)を発表することになります。

 


▼BLACK LABEL SOCIETY『THE BLESSED HELLRIDE』
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2023年1月 9日 (月)

2002年4月〜2003年3月発売の洋楽アルバム20選

2015年から毎年この時期に用意してきたこの成人企画。ちょうど昨年から成人年齢が18歳へと引き下げされ、現在は成人式の概念も崩れつつあります。が、この企画はこの企画として毎年やっていってはどうかと思い直し、タイトルから「祝ご成人」の文字を外し、20年前を振り返る企画として残すことにしました。

通常なら1月はじまりでカウントするところを、これまで同様4月はじまりの翌年3月終わりという年度縛りで進めるのは、ちょっと日本的なのかな。とはいえ、今さらこのフォーマットを崩すのも何かなと思い、このまま続けさせていただきます。

この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に2002年4月〜2003年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れが強い作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能なものを20枚ピックアップする……というのが本来の趣旨。20年って結構節目にもなると思うので、改めて「ああ、自分が生まれた頃はこういうアルバムがヒットしていたのか」とか「これってもう20年前の作品なのか」とか、いろいろ浸っていただいたり驚いていただけるとうれしいです。

 

では、サブスクを通して20年前の名盤20枚をお楽しみください。

 

AVRIL LAVIGNE『LET GO』(2002年6月発売)(Spotify)(レビュー

 

BECK『SEA CHANGE』(2002年9月発売)(Spotify

 

COLDPLAY『A RUSH OF BLOOD TO THE HEAD』(2002年8月発売)(Spotify

 

EMINEM『8 MILES: MUSIC FROM AND INSPIRED BY THE MOTION PICTURE』(海外:2002年10月発売、日本:2003年4月発売)(Spotify

 

EVANESCENCE『FALLEN』(2003年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

FOO FIGHTERS『ONE BY ONE』(2002年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

JURASSIC 5『POWER IN NUMBERS』(2002年10月発売)(Spotify

 

KILLSWITCH ENGAGE『ALIVE OR JUST BREATHING』(2002年5月発売)(Spotify

 

THE LIBERTINES『UP THE BRACKET』(2002年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

LINKIN PARK『METEORA』(2003年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

MAROON 5『SONGS ABOUT JANE』(2002年6月発売)(Spotify

 

MASSIVE ATTACK『100TH WINDOW』(2003年2月発売)(Spotify)(レビュー

 

MOBY『18』(2002年5月発売)(Spotify

 

THE MUSIC『THE MUSIC』(2002年9月発売)(Spotify

 

RED HOT CHILI PEPPERS『BY THE WAY』(2002年7月発売)(Spotify)(レビュー

 

SIGUR ROS『( )』(2002年10月発売)(Spotify

 

STONE SOUR『STONE SOUR』(2002年8月発売)(Spotify)(レビュー

 

SUM 41『DOES THIS LOOK INFECTED?』(2002年11月発売)(Spotify

 

t.A.T.u.『200 KM/H IN THE WRONG LANE』(海外:2002年12月発売、日本:2003年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

UNDERWORLD『A HUNDRED DAYS OFF』(2002年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

このほかにも、以下の作品を候補に挙げていました。

ASIAN DUB FOUNDATION『ENEMY OF THE ENEMY』
BEN HARPER『DIAMONDS ON THE INSIDE』
BON JOVI『BOUNCE』(レビュー
BRUCE SPRINGSTEEN『THE RISING』
DAVID BOWIE『HEATHEN』(レビュー
DISTURBED『BELIEVE』(レビュー
EMINEM『THE EMINEM SHOW』
FEEDER『COMFORT IN SOUND』(レビュー
HANOI ROCKS『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』(レビュー
THE HELLACOPTERS『BY THE GRACE OF GOD』(レビュー
IN FLAMES『REROUTE TO REMAIN』
KING CRIMSON『THE POWER TO BELIEVE』
KORN『UNTOUCHABLES』(レビュー
MESHUGGAH『NOTHING』
OASIS『HEATHEN CHEMISTRY』(レビュー
OK GO『OK GO』
OPETH『DELIVERANCE』
PET SHOP BOYS『RELEASE』
PETER GABRIEL『UP』
PRIMAL SCREAM『EVIL HEAT』(レビュー
QUEENS OF THE STONE AGE『SONGS FOR THE DEAF』
ROYKSOPP『MELODY A.M.』
RUSH『VAPOR TRAILS』(レビュー
SPARTA『WIRETAP SCARS』(レビュー
THE USED『THE USED』(レビュー
THE VINES『HIGHLY EVOLVED』

 

2022年12月 5日 (月)

KISS『KISS SYMPHONY: ALIVE IV』(2003)

2003年7月22日にリリースされたKISSのライブアルバム。日本盤は『アライヴIV〜地獄の交響曲』の邦題で、2004年3月24日発売。

言わずと知れたKISSのライブ作品『ALIVE!』シリーズの第4弾は、2003年2月26日にメルボルンで開催されたスペシャルライブ『Kiss Symphony』の模様を完全収録したもの。この頃はピーター・クリス(Dr, Vo)が出戻り状態で、ポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、トミー・セイヤー(G, Vo)という不思議な編成による貴重なライブが記録されています。

KISS初のCD2枚組ライブ作品(『ALIVE!』『ALIVE II』も当初はCD2枚組でしたが、その後1枚ものも制作されています)で、ひとつのライブを完全収録するという形ではこれが初めてになるのかな。当初『ALIVE IV』と題されたアルバムは1999年12月31日のカナダ・バンクーバーでのカウントダウンライブを収めたものが発売される予定でしたが、ちょうどレーベルの親会社の吸収合併というトラブルに巻き込まれ、リリースが見送られることに。それもあってか、本作は彼らの作品で唯一Universal系列ではないインディーズのSanctuary Records(流通はBMG〜Sony系列)からの発売となりました。

ライブは3部構成で、第1部がKISSの4人による通常のライブ。70年代のヒット曲に「Lick It Up」「Psycho Circus」といった80年代以降の楽曲も交えたコンパクトなものです。このへんはいつも通りかな。

で、このライブのハイライトは第2部以降。ここからデヴィッド・キャンベルが指揮をとるMelbourne Symphony Ensembleとのコラボステージが展開さてます。第2部はアコースティック編成でのステージで、「Forver」や「Goin' Blind」「Sure Know Something」「Shandi」といった楽曲が『MTV Unplugged』(1996年)を彷彿とさせるアレンジで演奏されています。ただ、さすがに総勢70名ものストリングス隊が加わることで音の厚みは『MTV Unplugged』とは比較しようがない豪華さ。なもんだから、「Beth」なんてオリジナル音源を超えちゃってます(笑)。

第3部はエレクトリック編成とオーケストラとのコラボステージ。無駄に迫力のある「Detroit Rock City」から「King Of The Night Time World」の流れはこのコラボならではのアレンジで、カッコいいったらありゃしない(特に後者ね)。「God Of Thunder」も不気味さが一気に増し、ホラー映画のサントラのよう。そして、圧巻なのが「Black Diamond」。これ、もはや「紅」だよな(笑)。YOSHIKI先生にピアノで参加してほしかったなあ。

改めて思うのは、KISSの楽曲がいかにポップソングとして優れているかという点。もちろん、彼らはロックバンドであってポップスを量産する存在ではないですが、どの曲もメロディアスで親しみやすい。そこに多声ハーモニーが加わることで、激しいサウンドにも関わらず耳馴染みが良くなる。そういった楽曲をオーケストラアレンジを加えた形で表現すれば、そりゃあポップさがより際立つわけです。

たった1回限りの企画だからこそ許されたこのコラボレーション。歴史のひとつとして触れるもよし、楽曲の魅力を再確認するために聴くもよし。これはこれで全然アリですよね。

 


▼KISS『KISS SYMPHONY: ALIVE IV』
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2022年8月 2日 (火)

ARCH ENEMY『ANTHEMS OF REBELLION』(2003)

2003年7月23日にリリースされたARCH ENEMYの5thアルバム。日本盤は同年7月30日発売。

前作『WAGES OF SIN』(2001年)から加入したアンジェラ・ゴソウ(Vo)を含む布陣での2作目。当時のメンバーはアンジェラのほか、マイケル(G)&クリストファー(G)のアモット兄弟、シャーリー・ダンジェロ(B)、ダニエル・アーランドソン(Dr)という黄金期の布陣。

「Silent Wars」を筆頭に、前作で築き上げたドラマチックなメロディックデスメタルスタイルはそのままに、スピードよりも重さを重視することでミドルテンポの楽曲に力が入り始めたのはこの頃からでしょうか。リードシングル「We Will Rise」や「Dead Eyes See No Future」あたりはまさにその真骨頂で、どちらも歌う/泣くギターが耳に残る良曲です。特に後者は、そのドラマチックな構成/アレンジ含め第2期ARCH ENEMYのひとつの型が完成に近づきあることを感じさせてくれます。

そうした変化も影響し、初期からの武器であったスピード感を求めるリスナーには当時あまり好意的に受け入れられなかった印象があります。1曲1曲を取り上げると(多少の実験的要素こそあれど)その完成度は非常に高いものばかりなのですが、いざアルバムとして10数曲並べられると、前編通して聴くにはちょっと厳しい……そういう声が多かったような。

確かに、それ以前/それ以降の作品と比べると全体的にミドルテンポの楽曲がベースになっていることもあり、若干の違和感を覚えるかもしれません。「We Will Rise」「Dead Eyes See No Future」ときて、その次が「Instinct」ですもんね。悪くないんだけど、今聴くと「もうちょっと工夫できかもしれないよな?」とも思ったり(だからこそ、「Instinct」のあとに「Leader Of The Rats」が来ると、ちょっとだけホッとするんですよね)。

後半の幕開けを飾る美しいメロディのアコギインスト「Marching On A Dead End Read」から、2分少々のファストチューン「Despicable Heroes」へと続く構成には“らしさ”を覚えるものの、その後も再びミドルテンポ中心。不思議なメロディを持つ「Dehumanization」あたりはフックとしては面白いけど、「Anthem」「Saints And Sinners」というドラマチックな組曲もなぜか効果的に作用していない印象を受ける。なんででしょうね?

これ、もう1曲くらいアップテンポの楽曲を入れて、ミドル曲を1曲削ったらまた印象が違ったんじゃないかな。ドラマチックな要素は十分なほど含まれているんだから、あとはアルバムをいかにスムーズに聴かせるか。そこに勝負を賭けてほしかったなあ。ミドルヘヴィ曲自体は悪くないんだけど、ここまで続くと差別化や印象に残すことが難しくなると思うんですよ。

だからなのかこのアルバムって、極端な話シングル2曲の印象しかないんですよ。数歩譲っても、冒頭の「Tear Down The Walls」「Silent Wars」とラストの「Anthem」「Saints And Sinners」が増える程度。やりたいことは理解できるんだけど、それがうまく機能し切れていない/完全には消化できていない感が否めない、そんな「あと一歩」なアルバムです。

 


▼ARCH ENEMY『ANTHEMS OF REBELLION』
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2022年5月 4日 (水)

HARDCORE SUPERSTAR『NO REGRETS』(2003)

2003年8月27日にリリースされたHARDCORE SUPERSTARの4thアルバム。日本盤は同年8月21日に先行発売。

ポップ&キャッチー度を強めた前作『THANK YOU (FOR LETTING US BE OURSELVES)』(2001年)から1年10ヶ月ぶりの新作。初めてプロデューサーを立てて制作した前作を経て、今作ではバンドとロベルト・ラギー(IN FLAMESCYHRAなど)の共同プロデュースで制作に臨んでいます。

バブルガムポップ度を強めた前作のカラーをさらに強め、ポップパンク調の味付けでまとめ上げたことで日本デビュー作『BAD SNEAKERS AND A PINA COLADA』(2000年)での質感は相当希釈されたものに。同じ北欧の大先輩HANOI ROCKSや、そのルーツでもあるRAMONESあたりと共通する軽やかさと軽快さは、もはやグラムメタルやスリージーハードロックというよりはガレージパンク、バブルガムパンクと呼んだほうが正しいものかもしれません。

しかし、楽曲自体はどれも非常によく作り込まれたキャッチーさを保っており、オープニングを飾る「Wall Of Complaint」やリードシングル「Honey Tongue」などからは50'sや60'sのポップチューンとの共通点も見つけることができるほど。思えばHANOI ROCKSやRAMONESのようなバンドもそういったルーツを持つ存在だけに、HCSSにとっては新たな武器を求めて試行錯誤した結果がこの4作目だったのかもしれません。

残念ながら、初期のイメージ(サウンド/ヴィジュアル含め)を求める層にはこの大胆な変化は賛否両論でした。全体を通して、ドラムやギターのミックスが軽いのも原因なのでしょうか。ハードロックバンドとして接するとネガティブな評価になってしまいがちですが、これも今となっては良質なパンクロック/ガレージロックアルバムの1枚。極端なことを言ってしまえば、音だけなら当時のOASISTHE LIBERTINESあたりと並べて語っても面白いんじゃないでしょうか(ホント極論ですが)。あと、日本盤限定ジャケット(下。海外オリジナルジャケはサブスクなど参照)が非常にカッコよく、このへんも往年のHANOI ROCKSを彷彿とさせて好印象です。

 


▼HARDCORE SUPERSTAR『NO REGRETS』
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2022年3月25日 (金)

MEW『FRENGERS』(2003)

2003年4月7日にリリースされたMEWの3rdアルバム。日本盤は同年10月22日発売。

MEWは1995年に結成されたデンマーク出身のロックバンド。結成当時のメンバーはヨーナス・ビエーレ(Vo, G)、ボウ・マドセン(G/2015年脱退)、ヨハン・ウォーラート(B/現在はH.E.R.O.と掛け持ち)、スィラス・グレイ(Dr)の4人で、1997年に1stアルバム『A TRIUMPH FOR MAN』にて本国デビューを果たします。

日本デビュー作となったこの『FRENGERS』はEpic Recordsと契約して最初の作品(前作から引き続き、自主レーベルEvil Officeと併記)。本国では最高2位を記録しましたが、本格的な海外デビュー作ということもあってノルウェーでは6位、フィンランドでは36位と北欧諸国でもランクインしたほか、イギリスでも最高102位という数字を残しています。

Sony系列の手腕もあり、プロデューサーにリッチ・コスティ(SIGUR ROS、MUSEBIFFY CLYROなど)を迎えて制作。全10曲中6曲が過去2作からの再レコーディングでしたが、海外ではほぼ無名だったこともありこの試み自体はまったく問題なし。むしろ、海外に向けた名刺がわりの1枚としては最適な内容ではないかと思います。

オープニングを飾る「Am I Wry? No」を筆頭に、往年のプログロックを下地にしつつもポストロックやオルタナティヴロック、シューゲイザー、あるいはハードロックの手法をバランスよく配合した北欧のバンドらしくひんやりしたアレンジに、透明感の強いヨーナスのボーカルが乗ることにより独特の緊張感を生み出している。かと思えば、「Symmetry」や「Behind The Drapes」のように伸びやかな楽曲も存在し、その緩急に飛んだ楽曲群で聴き手を最後まで惹き付け続けます。

本作リリース当時、僕はこのバンドを新たなポストロック勢というよりは、MUSEなどのような“オルタナ側からHR/HMシーンへの回答”あるいは“21世紀ならではのHR/HMの新解釈”と捉えていた記憶があります。それこそ時期的にも、THE MARS VOLTAなどと同じ枠で捉えていたような気もしますし、「MUSEほどヘヴィではないし、MANSUNほど奇妙ではないけど、こういう表現もアリだよね」と好意的に受け入れてヘビロテしていたような……とにかく好きな1枚であったことに間違いありません。

また、「Symmetry」や「Her Voice Is Beyond Her Years」のように女性ボーカルを効果的にフィーチャーしたアレンジでは、上に挙げたバンドとは異なる威力を発揮していましたし、ピアノやオルガン、ブラスなどを取り入れつつ音響系的な空気も漂わせている点からはHR/HM勢にはない個性が伝わりました(あくまでHR/HM観点からの話ね)。

今振り返ると、この頃の自分はオーソドックスなヘヴィメタルに対して若干の苦手意識(というか嫌悪感かな)を持ち始めていた時期で、新しい音を求めていたのかもしれません。そういった意味では、MEWは僕にとってかなりど真ん中に近いものがあり、このアルバムで表現されている楽曲/音はストレートに響いたわけです。

来年でリリースから20周年ですが、サウンドや表現、手法など含めまったく古びていない本作、オルタナ経由のメタルが何周かした今こそ再評価すべき傑作であり、HR/HMを中心に聴く層に触れていただきたいなと。ヨハンのH.E.R.O.加入もあり、今がそのタイミングではないでしょうか。

 


▼MEW『FRENGERS』
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2022年2月28日 (月)

RADIOHEAD『HAIL TO THE THIEF』(2003)

2003年6月9日にリリースされたRADIOHEADの6thアルバム。日本盤はコピーコントロールCD仕様で、海外に先駆け同年6月2日発売。

エレクトロニカやジャズなど、ロックのフォーマットから離れた異色的内容の連作『KID A』(2000年)『AMNESIAC』(2001年)でアメリカでも大成功を収めることとなったRADIOHEAD。『AMNESIAC』から2年ぶりに届けられた今作は、基本的には同2作の延長線上にある、非常に実験性の強い仕上がりとなっています。

この『HAIL TO THE THIEF』制作に向けて、まずトム・ヨークが3つのデモ作品を制作し、その中から厳選された楽曲をメンバー全員で仕上げていったとのこと。対外的には「次のアルバムはメタル」「いんなでPOISONを聴いて勉強してる」とメディアに発し、2ndアルバム『THE BENDS』(1995年)以来のロックアルバムになると見せかけておいて、その中身は『KID A』や『AMNESIAC』のスタイルにより磨きをかけた先鋭性の強い作品でした。

アルバム冒頭こそ「2 + 2 = 5」と題したロック色の強いナンバーですが、続く「Sit Down. Stand Up」以降はエレクトロ色の強い楽曲と、「Sail To The Moon」のようにムーディな楽曲が交互に訪れる。とっつきにくさや難解さを伴うスタイルのように映りますが、どの曲も不思議と過去2作以上の聴きやすさが伝わる仕上がり。それは3〜4分台という適度な尺以上にメロディが洗練されていることも大きいのではないでしょうか。

「Where I End And You Begin」はロックのフォーマットとは若干異なるものの、そのグルーヴ感からはロック的なテイストも伝わる。非常にスローなテンポからスタートする「We Suck Young Blood」も曲後半でうねるようにテンポアップしていく。リードシングル「There, There」もその流れにある1曲ですよね。この曲はリズム面に特化した印象があり、ライブでも複数のメンバーがフロアタムを叩いてビートを強調している。このカッコよさは過去の楽曲にはなかったものも見受けられ、個人的にも大好物です。

その後も「The Gloaming」みたいな直接的エレクトロニカや「A Punch Up At A Wedding」といったダウナーチューン、極太ファンク調の「Myxomatosis」、ベートーヴェンの「月光ソナタ」がモチーフの「A Wolf At The Door」など個性豊かな楽曲が並ぶ。統一性が薄いにもかかわらず、最後までスルスル聴き進められてしまうのは、ジャンルこそ雑多なものの質感として一本芯が通っているからではないえしょうか。

実は本作、RADIOHEADのアルバムとしては全14曲/約57分と最長なんですよね。それでも(内容は難解さを伴うのに!)ここまで聴きやすいアルバムに仕上げてしまう、その手腕に改めて感服します。そりゃ全英1位/全米3位(セールス100万枚超え)という成績も納得です。

ただ、本作に対してはリリース当時、僕はあまり良い印象がありませんでした。というのも、先にも書いたように日本盤と一部輸入盤がコピーコントロールCD仕様で発売されたため。確かUS盤がCDDA(通常のCD)仕様だったため、ちょとt時間が経ってから内容を確認してAmazonで取り寄せた記憶があります。現在はリリース元も変わり、廉価盤CDや配信で手軽に聴くことができますが、当時はそういった事実があったことを忘れてはなりません。なので、本作に対してポジティブな印象を持てるようになったのは、意外とここ数年のことかも知れません(マジで)。

 


▼RADIOHEAD『HAIL TO THE THIEF』
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2021年8月25日 (水)

DREAM THEATER『TRAIN OF THOUGHT』(2003)

2003年11月11日にリリースされたDREAM THEATERの7thアルバム。日本盤は同年11月12日発売。

以降のバンドの指針を確かなものとした前々作『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』(1999年)、初の2枚組大作となった前作『SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE』(2002年)に続く今作は、前作から1年10ヶ月という非常に短いスパンで届けられた意欲作。2作にわたってコンセプトアルバムを制作してきたバンドが、改めてライブの躍動感を重視した作品作りに回帰し、3rdアルバム『AWAKE』(1994年)や4thアルバム『FALLING INTO INFINITY』(1997年)で試されたモダンヘヴィネス/グルーヴメタル路線を数歩推し進めたアグレッシヴなスタイルを確立させています。

全7曲で約70分という長尺ぶりは相変わらずですが、オープニングを飾る「As I Am」(約8分)や続く「This Dying Soul」(11分半)で魅せる/聴かせるスタイルは、過去のモダンヘヴィネス路線を昇華し、よりナチュラルに、より現代的にビルドアップさせたもの。もちろん、ただヘヴィでわかりやすいだけではなく、そこにDTらしいプログメタル要素もしっかり散りばめられており、要所要所に飛び出す変拍子やテクニカルなプレイと相まって、ヘヴィメタルバンドの充実ぶりがじっくり伺えるはずです。

また、アルバムの随所からオルタナメタル的なテイストも見え隠れし、そういった方向性が一時期のQUEENSRYCHEとも重なる。しかし、ここでは付け焼き刃的な危うさは皆無で、しっかりした軸が感じられるので、ヘヴィメタルアルバムとして終始安心して楽しむことができるのです。『AWAKE』や『FALLING INTO INFINITY』は一部のリスナーを除いて「これじゃない」という声が多かった迷作ですが(とはいえ、僕はこの2枚が大好物なんですけどね)、『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』で確たる核を再確認できたからこそ、再びこの路線に戻っていっても迷いなくやりたいことをやり通せる。つまり、今作はある種『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』に対する“裏の顔”と受け取ることができるのではないでしょうか。個人的にはそう感じています。

初期のMETALLICAがやりそうなヘヴィバラード「Endless Sacrifice」や前のめりなヘヴィプログメタル「Honor Thy Father」、ダークな本作における小休止的な短尺バラード「Vacant」、過去2作におけるドラマチックさを引き継ぐインスト「Stream Of Consciousness」、バラードテイストも強いヘヴィなミドルチューン「In The Name Of God」と、全体を通して王道ヘヴィメタルアルバム的作風も徹底されている。コンセプチュアルなテイストは苦手だけど……というメタルリスナーにも、本作はもっともとっつきやすい1枚ではないでしょうか。個人的にも、DTに対する熱を再び高めてくれたという意味で重要な良作です。

 


▼DREAM THEATER『TRAIN OF THOUGHT』
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