カテゴリー「2003年の作品」の160件の記事

2020年8月11日 (火)

THE DISTILLERS『CORAL FANG』(2003)

2003年10月にリリースされたTHE DISTILLERSの3rdアルバム。日本盤は同年12月に発売されました。

THE DISTILLERSはフロントに立つブロディ・デイル(Vo, G)を中心に1998年に結成されたパンクバンドで、当初はトリオ編成で活動。1999年にRANCIDのティム・アームストロング(Vo, G)が主催するHellcat Recordsから1st EP『THE DISTILLERS EP』を発表し、デビューを飾ります。その後、リードギタリストが加入し4人編成となり、現在までに3枚のオリジナルアルバムを発表。なお、デビュー当時のブロディとティムは夫婦関係にありました(のちに離婚。2005年にはQUEENS OF THE STONE AGEのジョシュ・ホーミと結婚しました。が、昨年に離婚云々の話題があったような……)。

現時点での最新作(といっても17年前の作品ですが)となる本作は、Hellcatを離れメジャーのSire Recordsと新たに契約して制作された1枚。メジャー契約の効果もあってか、プロデューサーにはギル・ノートン(FOO FIGHTERSJIMMY EAT WORLDPIXIESなど)、ミキサーにアンディ・ウォレス(NIRVANARAGE AGAINST THE MACHINESLIPKNOTなど)を迎えた、「純粋培養なパンクロックアルバムなのに、しっかりキャッチーさも備わった」完全無欠のアルバムに仕上がっています。

ブロディのアクの強いボーカルはどこかコートニー・ラヴHOLE)を彷彿とさせるものがありましたが、ここで聴ける彼女のボーカルパフォーマンスはそれ以上にジョーン・ジェットを思わせるものもある。こういったボーカル面での成長は、楽曲のクオリティアップから引き出されたものなのでしょうか。アートワークのエキセントリックさから想像できる(感覚的な)アングラさは皆無で、全体を通して非常に聴きやすさに満ちた作風なのが印象的です。適度なスピード感とキャッチーなメロディ、耳に残るブロディのボーカル……ロックアルバムとしては文句なしのインパクトを与えてくれるはずです。

オープニングの「Drain The Blood」でのシンガロングできそうな大衆感の強さといい、モッシュ&ダイブ必至の「Die On A Rope」でのスピード感といい、「The Gallow Is God」や「The Hunger」でのダルな雰囲気といい、メジャー感と(音楽的な)アンダーグラウンドの危うさとのキワキワのあたりを進み続ける姿勢はさすがの一言だし、そんな中でラストに「Death Sex」を持ってくるあたりも完璧。当時、刺激が足りなかった自分にとってメジャーというフィールドから大きな衝撃を与えてくれた1枚でした。

ちなみに、このアルバムを購入したのは海外リリースから約4ヶ月後の2004年2月のこと。同年3月末に控えた『MAGIC ROCK OUT』での2度目の来日に備えて予習しようと思い聴いたのです。そのライブの様子は本サイトにも掲載していますが、16年前の自分もブロディのことを「パンク版ジョーン・ジェット」と比喩していますね(笑)。よほどカッコよかったんだろうな、と当時の記憶を必死に絞り出そうとしながらこのアルバムを爆音で聴いているところです。

なお、THE DISTILLERSは2006年に一度解散しており、ブロディはSPINNERETTEというバンドでアルバムを1枚残したり、2014年には初のソロアルバム『DIPLOID LOVE』(こちらも最高!)を発表していますが、2018年に『CORAL FANG』制作時のメンバーで再結成。現在までに「Man VS. Magnet」「Blood In Gutters」の2曲を収録したアナログ盤を発表しており、4作目のアルバム制作にも期待が寄せられています。

 


▼THE DISTILLERS『CORAL FANG』
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2020年3月24日 (火)

DECKARD『DREAMS OF DYNAMITE AND DIVINITY』(2003)

2003年に発表されたDECKARDの2ndアルバムにして最終作。日本盤未発売。

本作は当初、オフィシャルサイトから購入可能な限定商品でしたが、2004〜5年頃から一般流通が開始。現在は各デジタル音源販売サイトおよびストリーミングサービスにて手軽に聴くことができます。

BABY CHAOSからDECKARDへと改名し、満を辞してのデビューアルバム『STEREODREAMSCENE』(2000年)をメジャーのReprise Recordsから発表したものの、大したプロモーションを受けることもなくすぐに契約終了。それからしばらくしてこの2作目の制作に取り掛かったものの、バンドは本作をリリースすることなく2002年に活動休止。メンバーはそれぞれの道を歩むことになります。

この2作目のプロデュースを手がけたのは、メンバーのクリス・ゴードン(Vo, G)。基本的な作風は前作の延長線上にある、良い意味でアメリカナイズされたパワーポップ。ですが、穏やかさの中にもキラキラしたメジャー感がにじみ出ていた前作とは異なり、全体的にどことなくダークさが漂っているのが大きな特徴かもしれません。

もちろんどの曲も非常に練り込まれた、完成度の高いナンバーばかりなのですが、なんとなく“突き抜け”感が足りないような……良い意味で受け取れば、BABY CHAOS時代の魅力が復調していると見ることもでき、「Holy Rolling」を筆頭に(アレンジや演奏面で)ハードロック的な色合いが戻ってきているのはその影響もあるのかなと思いました。

一方で、悪い意味で受け取るとならば……せっかくアメリカに渡ったのに、レーベルからは思ったようなサポートを受けられず、あげくリリースから間もなく契約解除。そういったネガティブな要素が作品にも暗い影を落とした……そう考えられなくもないのかなと。

本来彼らが持ち合わせていた要素の復活と、状況がままならない不安。これらが複合的に作用して、この空気感を生み出した……だとしたら、こういう作品こそ多くのリスナーのもとに行き届くようにして「ダークだけどカッコいいじゃん。あれ、前にも1枚出してるの? だったら聴いてみようかな?」と思わせることもできたはずなのに。悪い状況はいつになっても復調することなく、結果としてバンドは事実上の解散へと向かうわけです。

事実、僕自身このアルバムがリリースされていることを知ったのはかなりあとになってからで、当時まだ生きていたDECKARDのオフィシャルサイトでダウンロード購入して「もっと早くに聴いておくべきだった!」と思ったくらいですから。

結果として、2013年にBABY CHAOSが再結成したおかげで、DECKARD時代の2作品も「歴史のひとつ」として受け取れるようになりましたので、あのまま埋もれずに本当によかったです。『STEREODREAMSCENE』ほどの鉄壁さはないものの、影の要素を強めたこの作風もかなりクセになるはず。『STEREODREAMSCENE』を気に入った方、BABY CHAOSの近作から彼らを知ったというリスナーにもぜひ触れてもらいたい1枚です。

 


▼DECKARD『DREAMS OF DYNAMITE AND DIVINITY』
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2019年10月 6日 (日)

MICHAEL MONROE『WHATCHA WANT』(2003)

マイケル・モンローが2003年1月に発表した、通算5枚目のオリジナルアルバム。JERUSALEM SLIMDEMOLITION 23.名義のアルバムを含めると、通算7作目のソロ作品ということになります。

前作『LIFE GETS YOU DIRTY』(1999年)発表前後から、再び運気が上昇し始めたマイケル。その勢いはそのままソロに注ぎ込まれるのかと思いきや、なんと2001年にHANOI ROCKS再生(=事実上の再結成)。オリジナルメンバーはマイケルとアンディ・マッコイ(G)のみでしたが、現代的にアップデートされたオリジナルアルバム『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』(2002年)をリリースするなど、精力的な活動が展開されました。

今回紹介するソロアルバムは、マイケルがハノイ再生期間に唯一発表したソロアルバム。タイトルの『WHATCHA WANT』は、その再生ハノイの第1弾アルバム『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』の同名収録曲から取られたもの。そもそも、この「Whatcha Want」という曲、ソロ用に作られたものだったみたいですね。

そういう事情もあるのかどうか不明ですが、アルバムは全13曲中オリジナルナンバーが5曲と非常に少ないんです。それ以外はEDDIE & THE HOT RODS、UK SUBS、THE DEAD BOYS、X-RAY SPEX、デイヴ・リンドルム、THE BOYS、レオナード・コーエンとバラエティに富んだアーティストのカバー曲を収録。アルバムとしての勢いは十分に伝わってくるものの……なんとなくですが、雰囲気的には3作目『PEACE OF MIND』(1996年)にも近いものを感じます。ただ、あのときほどネガティヴさは感じられず、むしろ再生ハノイで感じた“違和感”を放出するような“アク抜き”役割の1枚なのかなと。

まあとにかく。カバー曲は文句なしに良いです。当たり前か、原曲が良いんだから。EDDIE & THE HOT RODS「Do Anything You Wanna Do」のパワーポップ感は初期ハノイにも通ずるものがあるし、おなじみTHE DEAD BOYS「What Love Is」は「まだこれやってなかったんだ!」と驚かされるし。アルバムラストを飾るアコースティックナンバー「Hey, That's No Way To Say Goodbye」も、レオナード・コーエンのくどさがまったく感じられない(笑)、非常にさらっとした仕上がりで、このアルバムにぴったりの1曲だと思いました。

また、オリジナルナンバーも同時期のハノイ作品に収録されていたとしても、何ら違和感のない楽曲ばかり。「Right Here, Right Now」の疾走感、どこか後期THE CLASHを思わせる「Stranded」のエモさ、湿り気の強い「Rumour Sets The Woods Alight」や「Life's A Bitch And Then You Live」のセンチメンタルな泣きメロなど、どれもなかなかの出来。それもそのはず、レコーディングにはティンパ(B)&ラク(Dr)といった当時の再生ハノイのメンバーが参加しているんですから(笑)。

前作同様、この時期のソロ作品は日本でもあまり良い扱いを受けていない印象があり、現在もCDは廃盤状態。デジタル配信も行われておりません。せっかくバンド形態のMICHAEL MONROEがここまでちゃんと続いているんだから、(もはやライブでこれらの楽曲を披露しないにしても)ぜひ形として残し続けてほしいものです。

 


▼MICHAEL MONROE『WHATCHA WANT』
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2019年8月 1日 (木)

KORN『TAKE A LOOK IN THE MIRROR』(2003)

2003年11月にリリースされた、KORN通算6作目のオリジナルアルバム。

マイケル・ベインホーン(SOUNDGARNDENRED HOT CHILI PEPPERSオジー・オズボーンなど)をプロデューサーに迎え制作した前作『UNTOUCHABLES』(2002年)で、メロディアスかつプログレッシヴな作風へとシフトして賛否両論を巻き起こしたKORN。同作から1年弱という短期間で、今度は初のセルフプロデュース(ジョナサン・デイヴィスがメイン、フランク・フィリペッティがサポート&ミックス)に乗り出します。

アルバム発売の数ヶ月前には映画『トゥーム・レイダー2』のテーマソングとして、新曲「Did My Time」を提供。リリース当時のレビューにも書きましたが、この曲を聴く限りでは『UNTOUCHABLES』の延長線上にある作風になるのかなと思っていました。

で、実際に届けられたアルバム。オープニング「Right Now」のギターリフを聴いて「お、原点回帰?」と若干期待したものの、確かにヘヴィだけど基本的には前作の延長線上にあるスタイルで間違いないのかなと。確かにボーカルスタイルは若干初期の歌唱法を取り戻しつつありますが、それもアルバム全体においてはスパイスといったほうがいいのかな。やっぱり全体を通して耳に残るのは、ジョナサン・デイヴィス(Vo)の歌唱力・表現力の向上と、その彼が扱うキャッチーなメロディなのですから。

KORNらしい危うさはちゃんと残しつつ、どこか整理された楽曲構成・アレンジに初期の無軌道さを求めるのは、もはや死んだ子の歳を数えるようなもの。バンドとしてどんどん進化していく姿を冷静に受け入れつつ、彼らがどこへ進んで行きたいのか、何をしたいのかを当時は冷静に考えたりしたものです。

あ、「全体を通して耳に残る」のは何もキャッチーな側面だけではありません。そういった楽曲を表現するサウンドのえげつなさは、もしかしたら過去イチかもしれません。低音の鳴りやそれらを生々しい感触でパッケージしたミキシングは、初期2作のそれとは異なるものの非常に現代的で、こりゃあ日本人には真似できないは……と驚いたこともよく覚えています。

今聴き返すと、「結局は1stアルバム『KORN』(1994年)や2ndアルバム『LIFE IS PEACHY』(1996年)の衝動はもはや取り戻せないものの、その表現方法になるべく近づけつつ、セールス的に大成功を収めた3rd『FOLLOW THE LEADER』(1998年)や4th『ISSUES』(1999年)のスタイルをベースに、5th『UNTOUCHABLES』で試みた実験の成果を詰め込む」という最初の10年の集大成だったのかなと。そう考えると、本作を最後にヘッド(G)が脱退したのも、次作『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』(2005年)でさらなる変化の時期を迎えたのも納得できるかなと。もちろん、長い歴史を経た今だからこそ言える話ですが。

ちなみに本作、当初の予定よりも前倒しでリリースされたんですよね。というのも、アルバム収録曲がネット上でリークされてしまったので、バンドやレーベル側が慌てて正規品を世に送り出したという。結果、全米チャート初登場19位、最高9位(ミリオンセールス)というこれまでの作品では低調な数字で終了するという不運な1枚となってしまいました。いや、いいアルバムなんだけどね。

 


▼KORN『TAKE A LOOK IN THE MIRROR』
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2019年4月 9日 (火)

BON JOVI『THIS LEFT FEELS RIGHT』(2003)

2003年11月(日本では同年10月末)にリリースされた、BON JOVIの再録アルバム。80〜90年代に発表されたヒットシングルの数々をアコースティックベースでリアレンジした全12曲で構成されています。当初は「Last Man Standing」「Thief Of Hearts」といった新曲も収録予定とアナウンスされましたが、最終的に外されることに。これらのアイデアが元になり、2005年のオリジナルアルバム『HAVE A NICE DAY』とつながっていくことになります。

アコースティックベースとはいえ、完全なる“アンプラグド”アルバムではなく、しっかりエレクトリックギターやベースなども使用されております。だって、オープニングの「Wanted Dead Or Alive」からしてモダンなLED ZEPPELIN風アレンジですから。このダイナミズム、嫌いじゃない。個人的にはこの1曲だけで“アリ”なアルバムになる予定でした。

「予定でした」というのは、以降の楽曲を聴いてもらえばわかるように、レイドバックというか無駄に枯れてしまった感の強い、肩の力抜けすぎなリアレンジが続くからに他ありません。「Livin' On A Prayer」は元からあるアコースティックバージョンをベースに、リッチー・サンボラ(G, Vo)の代わりにオリヴィア・ダボが歌ったものに。これはこれで悪くないんだけど、続く「Bad Medicine」の“高いキーが出なくなったからメロを変えまくったらつまらない曲になりました”的アレンジや「It's My Life」の“それ、ただの演歌やんか”的アレンジ、などなど……“これじゃない”感連続の内容となっています(苦笑)。

ぶっちゃけ、リリース当時は数回聴いたっきりで放っておいたのですが、あれから15年以上経ち、久しぶりに聴いてみたら……印象まったく変わってなかった(笑)。「Wanted Dead Or Alive」は相変わらず“アリ”だけど、他の曲は……悪くはないけど良くもない。なにもBON JOVIの名前でやることではなかったな、と。山場のまったくない「I'll Be There For You」とか聴いた日にゃあ……これ、ジョン・ボン・ジョヴィがソロでやればよかったのにね。

そもそも、選曲が良くなかったんじゃないかな。無理にシングル曲にこだわったばかりに、中途半端な中身になってしまったわけで、例えば「Love For Sale」や「Someday I'll Be Saturday Night」といったもともとアコースティック調の楽曲ならアイデアひとつで別の表現ができたはずなのに(それだと、あまり変わり映えしなかったのかな)。そういった意味では、初回限定盤付属DVDに収められたAOLセッションズのほうが見応え/聴き応えがある気がします。

全米14位と大きなヒットにつながらず、ファンの間でもスルーされることの多い1枚ですが、『HAVE A NICE DAY』へとつながるという点においては大きな役割を果たした作品なのかな。そう考えると、こういう失敗も悪くないのかも。

にしても……あと10年経ったら、この良さが理解できるんだろうか。そうなりたいような、なりたくないような(苦笑)。

 


▼BON JOVI『THIS LEFT FEELS RIGHT』
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2018年10月15日 (月)

MANIC STREET PREACHERS『LIPSTICK TRACES: A SECRET HISTORY OF MANIC STREET PREACHERS』(2003)

2003年7月にリリースされた、MANIC STREET PREACHERS通算2作目のコンピレーションアルバム(日本ではだいぶ遅れ、2005年7月発売)。初のシングルコレクションアルバム『FOREVER DELAYED』(2002年)と対をなす、シングルカップリング曲を中心に構成された2枚組アルバムで、ディスク1にはオリジナル曲(未発表曲含む)、ディスク2にはカバー曲(初音源化曲含む)がそれぞれ収められており、マニックスの“裏サイド”を存分に満喫できる内容となっています。

“裏サイド”とはいうものの、その内容はアルバム本編と引けを取らないほどの完成度の高い楽曲ばかり。録音時期はさまざまで、古いものは1991年の「Motown Junk」収録の「Sorrow 16」と「We Her Majesty’s Prisoners」で、最新は「4 Ever Delayed」(前年の『FOREVER DELAYED』のタイトルトラックとして制作されたものの、未収録。2003年に日本企画EP『FOREVER DELAYED EP』が初出)になるのかな。というわけで、10年以上にわたりシングルのカップリングで実践されてきた実験の数々が、ここで聴けるというわけです。

もちろん、ここに収録されていないカップリング曲も多数存在します。例えば「R.P. McMurphy」(1991年の「Stay Beautiful」収録)や「Patrick Bateman」(1993年の「La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)」収録)、「Too Cold Here」(1994年の「Revol」収録)あたりは、ファンの間でも人気の高い楽曲なのに未収録。このへんは日本限定で発売された紙ジャケ2枚組仕様の限定盤などで聴くことができるので、興味を持った方はチェックしてみてはいかがかと。

とはいえ、それ以外は概ね満足な内容ではないかと。90年代初頭の勢いに満ちたパンクチューンから、3rdアルバム『THE HOLY BIBLE』(1994年)へと向かっていく過程の無機質さが増した楽曲、3人になってからのエモーショナルかつキャッチーなポップチューンなど、とにかくバラエティに富んでいる。改めて、シングルコレクション以上にこのバンドの凄みが味わえるのではないでしょうか。

そして、ディスク2のカバー集。スタジオテイクからライブ音源、ラジオパフォーマンスまで音源的にはさまざまですが、取り上げているアーティストがTHE CLASHチャック・ベリーストーンズといったルーツから、GUNS N' ROSESNIRVANA、HAPPY MONDAYS、PRIMAL SCREAMといった近代のアーティストまで、さらに意外なところではWHAM!などもあり、改めてその多様性にも驚かされます。ちなみに、こちらのカバーに関しては意外とストレートに演奏しており、どちらかというとコピーに近いのかなと。そのへんは原曲者に対する愛情の強さ故かもしれませんね。

なお、ここでも漏れたカバー曲がいくつか。「Under My Wheels」(アリス・クーパー)、「Charles Windsor」(McCARTHY)、「The Drowners」(SUEDE)、「Stay With Me」(FACES)と、漏れたどれもが個人的に気に入っていたカバーなので残念極まりないです。ま、これらの音源も先に書いた紙ジャケ2枚組で聴けるので、気になる人は探してみてはどうでしょう。

あ、本作を購入するときは少々高いですが国内盤をオススメします。というのも、ボーナストラックとして今は入手困難な無料配布EP『GOD SAVE THE MANICS』(2005年)収録の3曲が追加されているので(カバー盤のラストに追加というのが少々アレですが)。さらに、当時ソニーのCMソングとしてオンエアされていた「Everything Must Go」のシングルバージョン(3分ちょっとに編集されたバージョン)も追加されているので、まあ多少のお得感があるのかなと。『GOD SAVE THE MANICS』は配信もされていない貴重音源なので、ぜひ日本盤を探してみてください!



▼MANIC STREET PREACHERS『LIPSTICK TRACES: A SECRET HISTORY OF MANIC STREET PREACHERS』
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2018年8月12日 (日)

THUNDER『SHOOTING AT THE SUN』(2003)

2002年に再結成を果たしたTHUNDERが、2003年3月に日本先行で、海外では翌月4月に発表したのがこの『SHOOTING AT THE SUN』というアルバム。通算6枚目のオリジナルアルバムとなりますが、当初は日本盤と同時期にオフィシャルサイトでオンライン販売されるのみという、再結成したものの単なるファンアイテムなんじゃ……くらいのプライオリティでリリースされました。要するに、この再結成自体も意気込んで「またやってやるぞ!」というよりも「うまくいったらマイペースに続けていこうかな?」くらいのテンションだったんでしょうね。

前年には4曲入りEP『BACK FOR THE CRACK』(2002年)がここ日本でも発売されていますが、本作はその延長線上にある1枚。アルバムにはEPから「The Pimp And The Whore」「Somebody Get Me A Spin Doctor」「Blown Away」の3曲が収録されているのですが……地味。とにかく地味で玄人好みでブルース/ソウルテイスト満載のハードロックが展開されています。

オープニングを飾る「Loser」こそ、往年のTHUNDERらしい豪快さが若干感じられますが、以降はFREEやBAD COMPANYあたりをより地味にしたような、とても『BACKSTREET SYMPHONY』(1990年)とは同じバンドとは思えないくらい(いや、よく聴けば同じバンドだと気づくけど)派手さが消えています。

何がそんなに地味なのかというと、きっとこれって演奏のメリハリとメロディラインによるものが大きいんだろうなと。演奏は決して弾き倒したりひとつの楽器だけ前に出ようとか、そういった欲がまったく感じられないし、ボーカルをバックアップするためだけに存在しているような、そんな印象すら受けます(本当はそんなことないとは思うけど)。

また、メロディラインも初期の頃のように高音で張り上げるようなものではなく、装飾による抑揚を極力削り落とし、歌の熱量だけでメリハリをつけるような、そんな表現方法に変化しています。これは解散前の最終作『GIVING THE GAME AWAY』(1999年)の時点ですでに見え隠れいていた手法なので、その延長と考えれば納得いくことでしょう。

にしても、「祝・復活!」的な盛り上げが一切ないのが、よくも悪くもこのバンドらしいといいますか。ま、だから好きなんですけどね。地味だ地味だと書き倒してきましたが、だから悪いわけではなく、むしろ「わかる人にはわかる!」最高の1枚だと確信しています。



▼THUNDER『SHOOTING AT THE SUN』
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2018年6月17日 (日)

AVENGED SEVENFOLD『WAKING THE FALLEN』(2003)

2003年8月にリリースされた、AVENGED SEVENFOLDの2ndアルバム。彼らは続く2005年の3rdアルバム『CITY OF EVIL』でメジャーデビュー、一気にブレイクするのですが、この『WAKING THE FALLEN』はそんな彼らの“爆発前夜”の様子が余すところなく凝縮された力作に仕上がっています。

『CITY OF EVIL』で彼らを知った自分にとって、本作は完全に後追いで聴いた1枚。当時からライブでの定番曲だった「Unholy Confessions」や、来日公演でも披露されていた「Remenissions」「Second Heartbeat」「I Won't See You Tonight Part 1」などを耳にし、「インディーズ時代にも良い曲あるじゃん」と思い手にしたアルバムでした。あ、でもちゃんと聴いたのは『AVENGED SEVENFOLD』(2007年)のツアーのときだから、結構遅かったのか。

サウンドプロダクションに関しては、メジャー後の諸作品と比べものにならないくらいチープなものですが、楽曲自体は『CITY OF EVIL』の原型と呼べるような良曲ばかり。いや、リスナーによっては『CITY OF EVIL』よりも良いと思えるのではないか?と感じる1枚かもしれません。

スクリーモ以降のHR/HMというよりは、エモやパンク、そしてPANTERAなどの90年代ヘヴィネス系の要素もたっぷり取り入れられており、どの曲にもしっかりした歌メロとツインリードギターの名フレーズがフィーチャーされている。ところどころにメロディックデスメタルからの影響も感じられる。『CITY OF EVIL』に近いはずなのに、どこか別モノのように感じられるのは、こういった“ルーツからの直接的影響”がくっきり見えるからかもしれません。

トータル68分と非常に長いアルバムですが、聴いていて飽きがこないのは、そういった点も大きく作用しているように思います。まあ、なんといってもどの曲もフックが効いていて飽きさせない作りというのが非常に大きいのですが。

『CITY OF EVIL』以降は“新世代のGUNS N' ROSES”みたいに余計な表現がひとり歩きしてしまい、どうしてもイメージと実像がしっくりこない印象もありましたが、『WAKING THE FALLEN』時代の彼らはもっと生々しくて、何がやりたいのかがしっかり見えてくる。そういった意味でも、本作が名盤と言われる理由がご理解いただけるのでしゃないでしょうか。

なお本作。2014年に『WAKING THE FALLEN: RESURRECTED』というタイトルで、『WAKING THE FALLEN』収録曲のデモやライブ音源、別テイクなどを集めたボーナスディスク付きで再発。同仕様は全米10位という好記録を残しています。



▼AVENGED SEVENFOLD『WAKING THE FALLEN』
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2018年3月 7日 (水)

A PERFECT CIRCLE『THIRTEENTH STEP』(2003)

2003年9月に発表された、A PERFECT CIRCLEの2ndアルバム。ご存知のとおり、このバンドはTOOLのメイナード・キーナン(Vo)が、バンドのギターテクを勤めていたビリー・ハワーデル(G)という才能と出会ったことで誕生し、TOOLが所属レーベルとの裁判で思うように活動的なかった2000年に1stアルバム『Mer de Noms』を発表しています。その経緯などについては、2003年10月に執筆した同作のレビューに詳しいので、そちらに譲ります。

さて、前作レビューを執筆したあと、この2ndアルバムについて書くことができなかったので、14年ぶりの新作が今年4月に発売されるこのタイミングに改めて書いてみたいと思います。

前作のときにも書いたように、A PERFECT CIRCLEはメイナードの“ソロプロジェクト”ではないし、TOOLとは完全に別モノ。むしろ、ビリーという才能の塊と遭遇したことで、メイナードの創作意欲がTOOLとは別の形で爆発した、新しいバンドと受け取るほうが正しい解釈だと思っています。

なので、そのサウンドもTOOLのようにプログレッシヴな展開をするものとは別次元で展開されており、特に本作はヘヴィな印象が強かったデビュー作『Mer de Noms』とは若干異なるカラーを打ち出し始めています。

ちなみに、当時のバンドメンバーはメイナード、ビリーのほか、ジョシュ・フリース(Dr)、当時MARILYN MANSONを脱退した“トゥイギー・ラミレズ”ことジョーディー・ホワイト(B)、元THE SMASHING PUMPKINSのジェイムズ・イハ(G)。イハはレコーディング後にバンドに合流しており、レコーディングにはNINE INCH NAILSなどで知られるダニー・ローナー(G)が参加しています。

このメンツから想像できる音……ではないかもしれません。特に本作は美しさや優しさの側面が強まっているため、ダイナミックかつヘヴィなアンサンブルを得意とするこのメンバーの特徴を抑えめに、あくまで曲の持つ世界観を再現することに徹したのではないかと思われます。

だからといって、ヘヴィなサウンドが皆無かというとそんなことはありません。8分近くにおよぶオープニングトラック「The Package」は序盤こそ穏やかですが、曲が進むにつれて影に隠れていたヘヴィさが顔を見せ始めますし、不穏なギターリフが印象的な「Pet」のような曲も含まれていますしね。それ以外にも、各曲の至るところにそういった要素は散りばめられているので、前作から激変したというわけではありません。

でも、本作の軸になる部分は“そこ”ではない、と。浮遊感の強いサウンドメイキングやアレンジ、TOOLでは聴くことができないメイナードの異なる表情(声)、そして鬼才ビリー・ハワーデルのソングライティング。これらが三位一体となってリスナーの前に姿を現す。油断してると魂を持っていかれそうになるけど、信用して心を預けてみたら予想外の気持ち良さが味わえる、そんなアルバムではないでしょうか。非常に抽象的な表現が多い気がしますが、そういう抽象的なものこそがA PERFECT CIRCLEというバンドには合っているような気がします。

 


▼A PERFECT CIRCLE『THIRTEENTH STEP』
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2017年5月 2日 (火)

LINKIN PARK『METEORA』(2003)

2000年秋にアルバム『HYBRID THEORY』でメジャーデビューを果たしたLINKIN PARKは、たった1枚のアルバムでアメリカのみならず世界中で人気バンドに仲間入り。アルバムは1000万枚を超える大ヒット作となり、同作からのシングル「In The End」もビルボートTOP10入り(最高2位)を記録しました。2002年夏には『HYBRID THEORY』収録のリミックストラックを集めたアルバム『REANIMATION』(最高2位)を発表。現在に至るまで彼らはこういったリミックス曲を多数発表していますが、このへんも彼らの立ち位置を明確にさせるのに一役買ったように思います。

そしてLINKIN PARKは2003年春、待望の2ndアルバム『METEORA』をリリースしました。本作は発売と同時に全米1位を獲得。発売初週に80万枚以上を売り上げる記録を作りました。プロデュースは前作から引き続きドン・ギルモアが担当。作風的にもデビュー作の延長線上にある内容に仕上がっています。あれだけ爆発的大ヒットを記録したアルバムに続く作品ですもの、そりゃあ一気に路線を変えることはできませんよね。

ただ、よくよく聴くとこの『METEORA』には続く3rdアルバムへの布石もいくつか見え隠れしております。つまり、“変化の前にどうしても必要だったステップ”という点において、この『METEORA』の果たした役割は非常に大きなものがあったわけです。

リズム的には軽やかさすら感じられたデビュー作と比べると、この『METEORA』で聴ける楽曲群はもっと重心が低く、重く引きずるようなものが多い印象。このへんは当時のラウドロック/ニューメタルがどうこうよりも、ヒップホップ的観点でそうなったのではないか、と推測します。また、本作発売前に『REANIMATION』というリミックスアルバムを発表したのも、そのへんに大きく影響を与えているでしょうしね(『METEORA』に関しても、ジェイ・Zとのマッシュアップアルバム『COLLISION COURSE』を発表していますし)

興味深いことに、本作収録曲はどれも2〜3分台で、4分を超える楽曲は皆無。インタールードやインスト小楽曲なども含め、全13曲で36分という聴きやすさも、このアルバムを繰り返し聴きたくなる要因になっているはずです。いわゆるロックやHR/HMのアルバムのように頭からエンディングまでをひとつの流れで聞かせてしまう作風というよりも、もうちょっと雑多な印象が強いのが、この『METEORA』というアルバムが前作『HYBRID THEORY』とは大きく異なるポイントかもしれません。実は最初に聴いたLINKIN PARKのアルバムがこの『METEORA』。このバンドに対して苦手意識が強かったけど、不思議と入っていきやすかったのを今でも覚えています。また、このアルバムを聴いてから『HYBRID THEORY』に入っていくと、以前よりも苦手意識が解消されていたことにも気づかされました。

『HYBRID THEORY』がバンドにおけるすべての原点ならば、この『METEORA』は何にも縛られずにどこにでも行ける、どんな姿にだって変身できるという最初の意思表明だったのかもしれませんね。



▼LINKIN PARK『METEORA』
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