2015/09/08

Metallica『St. Anger』(2003 / 再掲)

Facebook上でこのアルバムの話題が上がり、ふと12年前に書いたテキストのことを思い出しました。以下は当時書いたものに若干手を加えた文章になります。基本的には当時聴いた感想をそのままに、表現などをよりわかりやすく少し修正しています。

いや、いいアルバムなんですよ。今日久しぶりに通して聴いてみたけど、やっぱりよかった。結局この後もアルバムは1枚しか出てないけど、『ブラックアルバム』以降で一番好きなアルバムです。って24年も経ってるのかよ! いい加減、これらを更新するようなスゴイの、作ってくださいよ!


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『ブラックアルバム』から12年。ずっとこういう作品を待ってました。

Metallica待望のニューアルバム『St. Anger』はオリジナルアルバムとしては1997年の『Reload』以来だから、約6年ぶりの新作。通算8枚目、デビュー20周年を迎える2003年に“原点回帰”とも“さらなる未来を見据えた”とも取れるような非常に素晴らしい、なおかつ非常にいびつな作品を我々に届けてくれました。

1999年に発売されたオーケストラとの共演ライブ盤『S&M』以降の流れは今さら書くまでもないでしょう。もし『St. Anger』の日本盤を買ったのなら、このアルバム発表までの経緯がライナーノーツに載ってますし、2004年(日本では2005年)には映画『メタリカ:真実の瞬間』でがっつり描かれてますからね。

アルバムリリース1週間前にリードトラックとして公開された「St. Anger」を聴いて以来、このアルバムに対する期待はドンドン高まっていました。実際、音源を聴く前からインタビュー等で「今度のアルバムは初期に戻ったかのような速い曲ばかり」という発言を目にしていたから妙な期待感があったんだけど、実際に聴いた「St. Anger」は自分の想像を遙かに超える強烈な1曲だったんですから。そこから1週間後、発売されたアルバムを手に取り、CDプレイヤーのトレイに乗せ、1曲目「Frantic」から順々に聴いていくわけです……するとド頭からものすごいテンションと異常な音圧にビックリし、続く「St. Anger」に「ああ、CDで聴くとラジオでは聴き取れなかった細かなところまで耳に入ってくるなぁ」と感嘆し、3曲目「Some Kind Of Monster」の“速くて、重くて、複雑で、長い”展開に驚愕し、4曲目「Dirty Window」のブルータルさに爆笑する。でも、これが5曲、6曲と進むうちにそういう楽しむ余裕さえなくなっていくんです。どれも本当に“速くて、重くて、複雑で、長い”んだ、これが。もう最後の「All Within My Hands」にたどり着いた頃には無言でスピーカーを見つめてたし、75分11曲すべてが終了したと同時に深い溜息をついたくらいでした。

アルバム『St. Anger』は決して初期スラッシュ路線への回帰ではなく、どちらかというと『Load』や『Reload』の延長線上にある作品だと思います。しかしラーズが言うように「昔住んでいた場所を懐かしみながら通り過ぎ、新しい目的地を目指す」ような作風でもあるんですよね。そういう意味では過去の集大成とも呼べるんだけど、単なる焼き直しで終わらずさらに過激に前進している。1983年のアルバム『Kill 'Em All』でデビューしてから20年後にたどり着いたのがここかと思うと、ただただ驚くというかなんと言うか……。

確かにここでやってることは決して革新的なことではないかもしれないし、2000年前後に登場したSlipknotやSystem Of A Downといった新世代バンドからの影響が強い音だといえるでしょう。ではMetallicaはそういった新世代バンドのフォロワーに成り下がってしまったのかというと、そうとも言い切れない。確かに前作、前々作あたりでは自身が『ブラックアルバム』(1991年発売の5thアルバム『Metallica』)を産み落としたことでガラリと変えてしまったシーン自体のフォロワーという、すごく複雑な状況に陥っていたと言えなくもないですが、むしろ今作は「SlipknotやSystem Of A Downといったバンドからヒントを得て、今のMetallicaなりに消化したサウンド」と呼んだほうがしっくりくるように感じます。ほとんど一発録りに近く、ほぼ手を加えていないような生々しいサウンド。ドラムの皮がギターサウンドでビリビリ共鳴してる音まで拾うほどに生々しいし、ボーカルもほぼノンエフェクトのように聞こえる。『St. Anger』においてはこの“生々しさ”がブルータルさをさらに増長させているし、ノイズやハウリングまでをも味方に付け、個々の楽器が共鳴し合って混沌とした「変な周波数の音」まで生みだしてる。そういう点は上記2バンドやその類のバンドとは一線を画するところだと思います。

最初にこのアルバムの楽曲に触れたとき、僕はそれについて「無感情な冷たさと複雑な曲展開が『...And Justice For All』を彷彿とさせる」と表現しました。しかしアルバム全体を通して聴いたときに感じたのは、確かにその感覚に近いんだけど、もっと無軌道さ、無修正っぽさを強くイメージさせるというか。比べるのも変な話ですが、これを聴くと『...And Justice For All』でさえちゃんと計算された様式美性が強く感じられる(ように思う)。だけど『St. Anger』の場合は次に何がくるかわからない、そんな展開の仕方をするんです。Metallicaは今作の楽曲をスタジオでジャムセッションしながら作っていったそうですが、一度ジャムった音源を後でプロ・トゥールズを使って編集して、その編集した構成でもう一度ジャムることを繰り返していたみたいで……通常ならそこで整理されてスッキリするはずなのに、ある意味真逆の“いびつ”なものに仕上がっているという。それをメンバー全員(レコーディングにはプロデューサーのボブ・ロックがベーシストとして参加)で顔を突き合わせて作業してる感じがまた……今作はメロディや歌詞までもが共同作業。だからクレジットに「Hetfield-Ulrich-Hammett-Rock」とメンバー全員の名前が入ってるわけです。

と、いろいろ書いてみたものの、これ以上変な先入観を植え付けたくないので、とにかく1回通して聴いてほしい。聴き終わったら、続いて歌詞や対訳を手にしながらもう1回聴いて、さらに付属DVDでのスタジオライブを通して観る(『St. Anger』全収録曲を新ベーシスト、ロバート・トゥルージロを含む体制で演奏したもの。アルバムと同じ曲順で収録している。日本では現行のユニバーサル盤には付属されておらず、ソニー盤のみに付いているので、中古で探すことをオススメします)。そうすると、このアルバムの凄味がストレートに伝わってくると思います。1回目よりも2回目、2回目よりも3回目。回数を重ねるごとにその凄味はどんどん増していき、DVDでのスタジオライブが究極の決定打となることでしょう。

そしてこのアルバムを聴いたら『Load』や『Reload』でやったこともなんだか許せてきた。あれがあったから、ここにたどり着いたんだ、と。確かにジェイソン脱退は残念だったけど、ロバートを含む今の編成だって悪くない。いかにもライブ栄えするパフォーマーだと思うしね、ロバートって(DVDを観る限りでは)。そして、その相乗効果でジェームズやカーク、そしてラーズまで生き生きとプレイしてる。ホント、早くライブが観たいよね。しかも古い曲じゃなくて、このアルバムからの曲を演奏するライブを。ああ、愉快愉快。最高の気分だ!



▼Metallica「St. Anger」
(amazon:国内盤(ユニバーサル) / 輸入盤(ユニバーサル) / 国内盤(ソニー)

投稿: 2015 09 08 01:10 午前 [2003年の作品, Metallica] | 固定リンク

2006/10/11

MONDO GENERATOR『DRUG PROBLEM THAT NEVER EXISTED』(2003)

 元QUEENS OF THE STONE AGEのニック・オリヴェリのバンド(というかソロユニットかな)「MONDO GENERATOR」の、2003年リリースの2ndアルバム「DRUG PROBLEM THAT NEVER EXISTED」を初めて聴きました。今更?って突っ込まれそうだけど、たまたま入ったTSUTAYAでワゴンセールをやっていて、どれでも1枚500円という輸入盤の中にこのアルバムがあったんですよ。パッケージに貼ってあるステッカーにニックとQOTSAの名前が表記されていて「あっ!」と思い出して、そのまま購入したわけです。そういえば最近このアルバムに続く新作「DEAD PLANET : SONICSLOWMOTIONTRAILS」も出たばかりだし、ちょうどいい機会なんで取り上げておきます。

 KYUSSやQOTSAはストーナーロック直系(ていうかKYUSS自体がUSストーナーの教祖的存在でもあるわけですが)のスタイルを取っているわけですが、このMONDO GENERATORはもっととっ散らかったサウンドスタイルで、自由奔放にいろんな曲をやっているイメージが強いです。このアルバムでもパンキッシュな疾走チューンからモロにガレージなナンバー、QOTSAにも通ずるヘヴィサウンド、アコースティックと、とにかく何でもアリ。そしてそのどれもがカッコいいんだから、文句を言えるはずもなく(って誰に文句言えばいいんだよ?って話ですが)。"F.Y.I'm Free"(「F.Y.」とは当然「Fuck You」のことです)での爆走ガレージサウンドは絶対に聴いておくべきものだし、その他の曲にしても勿論。あり得ないくらいにバカデカイ音で聴いてほしい1枚ですね。

 ゲストもとにかく豪華。この作品をリリースした当時はまだQOTSAのメンバーだったこともあり、盟友ジョシュ・オムやマーク・レネガン、さらに元KYUSS時代のドラマー(その後FU MANCHUでも叩いてましたよね)Brant Bjorkも参加してますからねぇ。豪華っちゃあ豪華だわな。まぁQOTSAのファンは当然聴いているであろうこのアルバム。俺みたいなライトファンやガレージロック好きでまだ聴いてない人がいたら、ホント早く探して聴いた方がいいって。ナマヌルいロックもどきを聴いて満足してる場合じゃねーですよ!

 そういやぁニックとジョシュが仲直りしたなんて話もありますが、元相方のジョシュがドラマーとして参加するバンド「EAGLES OF DEATH METAL」の2ndアルバムが間もなく日本発売されます。アルバムタイトル及び収録曲の邦題が相当ステキなので、あわせてチェックすることをオススメします!



▼MONDO GENERATOR「DRUG PROBLEM THAT NEVER EXISTED」(amazon:US盤

投稿: 2006 10 11 05:39 午後 [2003年の作品, Mondo Generator] | 固定リンク | コメント (1) | トラックバック

2005/03/18

JOMI MASSAGE『ALOUD』(2003)

 先日紹介した「Loveless Records」について、そして前回取り上げたTRAENINGについて、多少は話題になってくれたようで個人的には嬉しく思っています。こうやって少しずつでもいいんで、草の根的に名前やその良さが広まってくれれば、俺としても非常に嬉しいです。明日(3/19)放送の「RADIO TMQ」でもこちらのレーベル所属アーティストを幾つか取り上げる、ミニ特集を組む予定ですので、興味がある人は是非聴いてくださいね。

 さてさて。今回もその「Loveless Records」所属アーティストについて書いてみたいと思います。今回紹介するのもTRAENING同様デンマークのアーティストです。「JOMI MASSAGE(ヨミ・マッサージ)」というユニットの、昨年3月に本国でリリースされた(日本では昨年11月リリース)1stアルバム「ALOUD」、これが兎に角個性的で良いんですよ。

 JOMI MASSAGEというのは『シグネ・ホイラップ・ウィリー・ヨルゲン』という女性によるユニットの名前です。彼女は元々、デンマークでは名の知れたノイズロックシーンのカリスマ的バンド、SPEAKER BITE ME(SBM)のフロントマンだったそうで、このJOMI MASSAGEというユニット自体は1999年頃からスタートさせたそうです。この名義で音楽活動だけでなく、アートの個展を開いたり等、ソロとしてのアーティスティックな活動は全てこの『JOMI MASSAGE』名義で行ってきたそうです。

 ドラムを除く殆どの楽器をシグネひとりで演奏し、レコーディングやライヴではそのSBMでの盟友、エミル・ランドグリーンが参加し、更にMOGWAIの最新作やツアーにも参加しているルーク・サザーランドがギターやバイオリンで参加し、2003年後半に制作されたのが、今回の「ALOUD」というアルバムなんだそうです。

 一聴すると、ローファイで刺々しく、硬質で苦みばしったサウンドがPJハーヴェイを彷彿させたりしますが(隙間だらけで硬質な感じが余計にそう感じさせるんだよね)、他にもSONIC YOUTHのキム・ゴードン、PIXIESのキム・ディールといった『カリスマバンドの中の、女性アーティスト/シンガー』を彷彿させます。要するに、非常に個性的なサウンドに個性的な歌が乗る、と。

 時にシューゲイザーのように激しいディストーションサウンドの壁が飛び出したり、ノイズの海に飲み込まれたりしますが、その轟音の後に無音に近い静寂が訪れたり、不気味なまでの冷たさを感じさせたり‥‥ルークが参加してるからってわけじゃないですが、こういった強弱法を用いたアレンジから、MOGWAI的なものも感じられたりします。ボーカルも時に囁くように歌ったり(というよりも呟いたり)、時にエフェクトをかけたかのようなディストーション・ボイスが飛び出たり、何だろう‥‥ヒステリックには決してならない、けど暴力的な程に冷たい感情の塊を言葉に乗せてぶつけてくるような、そんな感じとでも言えばいいでしょうか。

 俺は先のSBMも聴いたことないし、そこでどういった音楽をやっていたのか実際知らないので、このアルバムを聴いただけの評価になってしまいますが‥‥凄くエモーショナルな1枚だな、と。先日、このアルバムを聴き始めた時にウトウトしてきちゃって、実際に3曲目の "I See Those Who Died" 辺りで眠っちゃったんですよ。で、この曲の後に無音に近いような静寂が訪れるんですね‥‥フェードアウトして、そのまま暫くして4曲目の "Is There A Light?" にフェードインしていくような‥‥まるでホントに夢の中へと引きずり込まれていくような錯覚に陥って。で、これが‥‥決していい夢が見れるような状況/状態ではないんですよね。悪夢とは言わないまでも、なんつーか‥‥ジンワリと嫌な寝汗をかくような、そんな音とでもいいましょうか‥‥

 で、歌詞もまた女性的で‥‥多分男性の俺が語るよりも、もっと同性の方々が語ってくれた方がより判りやすく伝わるんじゃないかな、と思うんで、俺は今回コメントを避けます。「○○っぽい」とか書くことも可能だけど、それともちょっと違うような気もするんで。

 今再び、シューゲイザー的なものがリバイバルしようとしてるのかどうか、俺には判りません。ただ、その流れがシーンの中に(小さいながらも)存在するのは確かなようです。それはギターロック・シーンだけでなく、テクノ方面においても同様で、昨年辺りから実際にそういう音に出会う機会が何度かありました。しかもそういう並がアメリカやイギリスからではなく、他のヨーロッパ諸国だったり、カナダみたいな国からだったりするんですよね‥‥これが何時英米に飛び火するのか、そしてその時にTRAENINGやこのJOMI MASSAGEといったアーティストも日の目を見ることになるのか‥‥いや、なって欲しいし、なってもらわないと困るんですよね。こんなに良いアルバムを作ってるんだから。

 デンマーク、面白いことになってるなぁ。MEWは勿論、TRAENINGといい、このJOMI MASSAGEといい。まだまだ個性的で良質なバンド/アーティストが沢山いそうですね。そういったアーティストを沢山我々に紹介してくれることを、今後「Loveless Records」さんに期待したいところです。楽しみにしてますよ!



▼JOMI MASSAGE「ALOUD」(amazon

投稿: 2005 03 18 12:10 午前 [2003年の作品, Jomi Massage] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005/03/12

TRAENING『BETTER THAN THIS』(2003)

 先日の「RADIO TMQ」放送終了後に、「Loveless Records」というレーベルの方からメールをいただきまして。以前からよく「RADIO TMQ」を聴いてくださっているそうで(ありがとうございます!)、ネットラジオというものの可能性に関しても非常に興味を持っておられるようでして。

 で、そのメールで同レーベル所属アーティストをいろいろ紹介していただきまして。実はですね‥‥このレーベル、偶然にも以前BARKSでの紹介記事を読んでいて記憶には残っていたんですね。けどこの時はリンク先の試聴とかはしなくて。

 今回メールをいただいてから改めて試聴してみたら‥‥非常に個性的なアーティストばかりでとても強く興味を持ちまして。まだ所属アーティスト及びリリース数は少ないのですが(何せ去年の春からスタートしたレーベルですしね)、その分1枚1枚が濃密な作品ばかりなので、今回から数回に渡ってその「Loveless Records」所属アーティストについていろいろ紹介していこうかと思います。

 というのもですね‥‥今回のメールを切っ掛けに、我らが「radio.gs」ではこの「Loveless Records」の音源を番組内で放送する許諾をいただきました! スゲエ! 初めてだこういうの! 凄く嬉しい!

 まず最初に紹介するのは、レーベル最初のリリースとなった、デンマークのTRAENINGというバンド。昨年4月に日本でもファーストアルバム「BETTER THAN THIS」をリリースしています(本国では'03年10月リリース)。メンバーは6人で、女性が2人(リードシンガーが女性)。デンマークというと最近ではMEWなんてバンドもいますが、このTRAENINGはそのMEWのオープニングアクトとしてヨーロッパを回った経験を持ち、MEWのシンガー・Jonasも「今まで聴いた最高作品の中のひとつ」としてこのTRAENINGのアルバムを挙げている程なんだとか。

 サウンド的には‥‥まぁ試聴して貰えば判りますが、非常にヒンヤリとした印象なんですね。北欧特有の冷たさなのかどうかは判りませんが、とにかくシンプルでスカスカでローファイなバンドサウンドがクセになるんですわ。ボーカルのMarieの歌声も決して上手いタイプではないんですが、このサウンドに合った声/歌い方なんですね。

 あんまり「○○に似てる」っていう表現をすると怒られそうな気もしますが‥‥同じ北欧・アイスランドのMUM辺りとの共通項も見え隠れするような気がするし(多分曲によってピアニカとか鉄琴を使ってるからかも)、あと‥‥曲によっては「KID A」以降のRADIOHEAD辺りとの共通点もあったりなかったり。時にシューゲイザー的な色もあったり、時にはスウェディッシュ・ポップにも通ずるような朗らかなメロディを持つ曲もあったりするんだけど、基本的にはモノトーンに近い‥‥ザラついた、限りなくモノトーンに近いサウンド。これが彼等最大の特徴であり、魅力だろうね。

 デンマークからこういうバンドが出てくるってのが面白いし、もっと外に向けて(=イギリス等)活動していけば更に面白いことになるんじゃないかな‥‥そんな気がするのね。

 うん、凄くいいアルバムですよ。これ、2004年に出会ってたら多分「BEST OF 2004」に選んでたかもしれない。それくらい個人的にはツボだったんだわ。アルバム、何度もリピートしてるもの。とりあえず皆さんはリンク先やオフィシャルサイト等で試聴してみてください。そして、今度の「RADIO TMQ」で彼等の曲流しますので、気に入った人は是非買ってみてください。たまんねーよ、マジで。

 ちなみに彼等、現在セカンドアルバムに向けて既に動いているそうです。早ければ年内には聴けるかな。そして‥‥セカンド発表の際には、是非来日公演を実現させてください! つーかライヴ観たいって。めっちゃ観たいし!



▼TRAENING「BETTER THAN THIS」(amazon

投稿: 2005 03 12 01:00 午前 [2003年の作品, Traening] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/11/26

とみぃ洋楽100番勝負(100)

 いよいよラスト‥‥最後は思い入れタップリに語らせていただきます‥‥


●第100回:「Coma Girl」 JOE STRUMMER & THE MESCALEROS ('03)

 

「早くくたばれっ!」って冗談ぽく言ってはみるものの、そこには「絶対に死ぬもんか‥‥死んでもらっては困るんだよ!」という祈り/願いも沢山込められてるんだよね‥‥当たり前の話だけど。最高の愛情を込めて吐く悪態。それはある意味では彼等にとって最高の賛辞なのかもしれない。

 でも。そんな冗談すら言えない、言いたくても言えない相手だっている。この連載を続けてきた中で、故人を扱う機会が沢山あったんだけど、最後の最後もその故人‥‥比較的最近亡くなったこの人で締めくくりたいと思います。丁度12月だしね、これが発表される頃は‥‥

 2002年12月22日、彼は静かに息を引き取りました。日本では23日に伝わって来たこの知らせ。最初知った時は「へっ、嘘‥‥」と、にわかには信じられませんでした。情報が少ない/錯乱していたことから、いろいろネットサーフしてみたものの、それは間違いない事実であることが判明しました‥‥愕然としたよ。ほんの3ヶ月前、あんなに元気な姿をその年最後の「夏フェス」で目撃したばかりだったのに。一緒に "I Fought The Law" を大合唱したばかりだったのに‥‥

 俺にとってのジョー・ストラマーという親父は、THE CLASHの偉人というよりは、ロック・フェスティバル、野外フェスティバルってこんなにも楽しいもんなんだぜ、自ら進んで楽しむものなんだぜ、という至極簡単なことを教えてくれた、大先生でした。俺が初めて体験した夏フェス‥‥'99年のフジロックで出会ったジョーは、大好きだったTHE CLASHの曲を出し惜しみすることなく連発してくれ、当時の新曲も過去と何ら変わらず「レベル・ロック」していることを証明してみせました。

 そして3年後。今度は朝霧JAMで再会。正直、最後の最後だったし天気も悪く霧で視界も悪かったし、演奏される曲も今回は新バンド・THE MESCALEROS以降のものが多かったことから、あんまりのめり込めなかったんだよね‥‥けどそれって、結局「俺はジョーにTHE CLAHSしか求めてなかった」ってことと一緒だったわけで。だから "Bankrobber" や "I Fought The Law" という曲に過剰反応してたんだよね‥‥恥ずかしいけど。

 ジョーの死後から1年経って、志半ばで頓挫してしまったレコーディングを仲間達で完了させたのがこの「STREETCORE」というアルバムで。買ってから暫くは聴けなくてさ‥‥こんなにも重く感じさせるアルバムは随分久し振り。ジャケットといい、並んだ曲目といい、全てがその頃の俺には重過ぎて‥‥

 年が明けて2004年。やっとパッケージを開けて‥‥1曲目の "Coma Girl" の歌い出しに胸が熱くなってさ‥‥

  「遥か西のフェスティバル会場を這うように歩いてたんだ」

‥‥嗚呼、この人は死ぬまで「ジョー・ストラマー」で在り続けたんだな、と。当たり前の話だけど、その事実に涙が止まらなくて。アルバムが進んでいく中、いろんな音が聞こえてきて‥‥6曲目の "Redemption Song" で更に泣いて。この瞬間、今更だったけど‥‥ジョー・ストラマーって親父は俺にとって、とても重要な人間のひとりになったんだ。

 今でこそ笑顔で聴くことができるこのアルバム。THE CLASHの5作と同じように、自分にとって大切なアルバムです。こんなにパンクで活き活きした親父、イギーとジョーの他に知らん。

 だから‥‥今更だけど‥‥ホントに悔やまれる。もう一度、ただもう一度だけ会いたかった‥‥

 ありがとう。そして‥‥死ぬまで勉強させてもらいます!



▼JOE STRUMMER & THE MESCALEROS「STREETCORE」(amazon

投稿: 2004 11 26 12:06 午前 [2003年の作品, Clash, The, Joe Strummer & The Mescaleros, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/07/10

忌野清志郎『KING』(2003)

次々と新しいバンド/ユニットを組んではアルバム出したり、またはライヴだけだったり、はたまたシングル1枚こっきりだったりと、特にここ4~5年の忌野清志郎の活動は精力的過ぎ。その間にはデビュー30周年記念のイベントがあったりしたけど、純粋なソロ名義でのアルバムとなると、'99年の「Ruffy Tuffy」以来なんだね(といっても、結局その後はRuffy Tuffyなるバンドが誕生してしまうわけですが)。その間にいろいろ音源は出てたんで全然そんな気はしないし、むしろ全く有り難みは感じないわけだけど‥‥そう思ってこのアルバムをスルーすると、とんでもない目に遭いますよ。

多分‥‥ここ10年くらい‥‥いや、RCサクセション活動停止後で最も充実した内容を持つ傑作アルバムじゃないですか、これ。清志郎が過去やってきたことの、ある意味集大成と呼べるような『Simple is best』なR&B/ロックンロール・アルバムに仕上がっていて、どれも過去の彼の作品をトレースしたかのような既出感が強いんだけど、だからといって悪いというわけじゃなく、むしろ‥‥だからこそ最高なんじゃないか、と。声を大にして言いたいわけです。

いきなりソウルフルなスローチューン "Baby 何もかも" からスタート。しかもこの曲が後半、テンポアップして盛り上がっていくという構成。その後、ファンキーだったりブルージーだったりソウルフルだったり。小気味いいロックンロールがあれば、ドス黒くてドロドロした濃さを持つR&Bナンバーあり。清志郎らしい言葉遊び満載の歌詞、何故50越えたオッサンにここまでピュアな歌詞が書けるんだ?と、いつも以上に感動してしまうナンバーの数々。そしてそれらを盛り上げるバックメンバーの面々。お馴染みの三宅伸治をパートナーに向かえ、懐かしい面々から新しい仲間まで、とにかく「くんずほぐれず」なセッションの数々。もうどれも最高なわけ。自宅にMac(マッキントッシュ)を導入したことで、そこでデモテープを作っていった‥‥なんていう「子供が新しいオモチャを手に入れた」ことからスタートした、今回のアルバム・セッション。結局完成したのは、如何にも清志郎らしい生音を大切にした温かみのあるロックンロール・アルバム。そこら中にブラスが入ってたり、ガットギターの音がしたり、生々しいエレキギターのサウンドに鳥肌立てたり、そして迫力があり、時に優しい清志郎の『声』があり‥‥つまり、聴き手が彼に望む要素が、ある1点を除いて全て揃ってるわけ。そりゃ悪いわけがない。

で、その残る「ある1点」というのが‥‥要するにみんな、心のどこかで「もうあり得ないよな‥‥」とガッカリしながらも、それでも期待してしまうRCサクセションの影‥‥その復活を期待してしまう、と。チャボとの共演でもいいから、って思ってる人は多いと思うけど‥‥果たしてこのアルバムを聴いた後になっても、その言葉を吐くことが出来るかな? いや、俺には出来ないね。このアルバムがあれば、俺はライヴで "雨上がりの夜空に" や "スローバラード" や "トランジスタラジオ" が聴けなくても、全く文句言えないね。それだけの魅力と迫力がパンパンに詰め込まれているもの。そうじゃない?

俺、今年のフジロックは未だに悩んでるのよ‥‥2日目のグリーンステージ、清志郎。2年前は目の前ほんの数十センチの距離で彼の歌を堪能してしまったから‥‥それを越えることはもうないだろうけど、それでも年に1度は清志郎観ないと納得いかないんだよね。ちなみに去年はフジロックに出なかったから、一度も観れなかったんだよね‥‥あー、そろそろ禁断症状が‥‥



▼忌野清志郎『KING』
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投稿: 2004 07 10 04:54 午前 [2003年の作品, 忌野清志郎] | 固定リンク

2004/07/09

SNOW PATROL『FINAL STRAW』(2003)

苦節10年‥‥ってわけじゃないけど、ここまでたどり着くのにホントに10年かかってるんですよね、このバンド。グラスゴー出身の4人組ギターロック/ギターポップ・バンド、SNOW PATROLのメジャーでの1作目、インディー時代から数えて通算3作目となるこのアルバム、「FINAL STRAW」。既にイギリスでは昨年秋にリリース済。シングルヒットもポツポツと出ていたようで、それが今年に入った辺りから少しずつ話題になり始め、この2月に本国でボーナストラックを加えて再リリース、更に3月にはいよいよアメリカでのリリース、そして4月に入って日本ではフジロックに出演が決まる等、いろんな要素が重なって少しずつ知名度がアップ。来日記念盤の如く、本国から約9ヶ月近く遅れてこの6月にようやく日本盤もリリースされたのでした。

俺はUS盤が出てすぐ、4月の頭にこのアルバムを購入しました。友人関係にオススメしてきたり、更には自分のラジオで彼らのヒット曲 "Chocolate" を流す等して、少しでも彼らのブレイクに貢献できれば‥‥と動いてきました。ま、このサイト的には一番最初にすべきだったのは、こういうレビューを書くことだったわけですが(ホント、お待たせしました!って感じですね。期待してた皆さん、スマンです)。

もうね‥‥悪く書きようがないんだわ。元々こういう湿り気だったり陰りのあるギターポップ/ロックは大好きなわけで、そこにきてグラスゴー出身とくれば‥‥ねぇ? 悪いわけがない(いやマジで)。ドリーミーな要素も持ちつつ、と同時に時々訪れるラウドな側面‥‥という要素から、同郷のTEENAGE FANCLUB等と比較されるのかもしれませんが、個人的にはもっと暗い奴らなんじゃないかな、と思ってます。US盤には歌詞カードがないのでどういうことを歌っているのか判りませんが(それがこのアルバム・レビューを遅らせた最大の理由でもあったわけですが)、聞くところによると、意外とサイケなことを歌っている‥‥なんていう話が。ホントですかね、日本盤を買った皆様??

だとしたら‥‥尚更気に入ってしまうかも。あー、そういうダメダメ加減、好きだわ。外資系CDショップではTHE FLAMING LIPSと比較する意見も見かけますが、それもあながち間違ってないな、と。ドリーミーでドラッギー。陽気なようで絶望的‥‥あー、もう最高じゃないですか!

‥‥って全然レビューにならないな、これじゃ。ホント、「イイ!」以外の言葉が浮かばないし、それ以外の表現が見当たらない‥‥どの曲がどんな感じで他所のバンドでいうと○×△に似てる、とか他に例えようがあるんだろうけど、とにかくね、KEANE同様‥‥特にアメリカではCOLDPLAYやTRAVISの次に来るようなバンドになれると思うんですよ。そういう風に書けば、何となく理解してもらえるかしら?(勿論、KEANEが上記2バンドとは異なるタイプのバンドだったように、このSNOW PATROLもそういうバンドではないですよ。けど通ずる空気感はあるな、と)

シングルヒットしたような "Chocolate" や "Run" といった名曲に、まずは先入観なしで接して欲しいな。勿論、1曲目の "How To Be Dead"(なんて素晴らしい曲名なんだろう!)から最後の "Same" まで(日本盤には更にボーナストラックが入ってるわけですが)、とにかく独特な空気感と存在感を持った個性的な楽曲が並ぶ。全てが同じ方向性を持ちながらも、その「純度」や「濃さ」の濃淡/コントラストが絶妙。時に爽やかだったり、時にドロドロしてたり。時に切なくなったり、時にふさぎ込んだり‥‥ある意味、静かに感情に訴えかけるアルバムといえるかな。とにかく心に響く1枚なのですよ。

個人的には今年前半は、非常に良いアルバムに恵まれたな、と思ってます。周りの人達はCD買う枚数が減ったとか、良い曲が少ないとか言ってるようですが‥‥全然外に向けてアンテナ張ってないんじゃないの!?との疑念がね‥‥ずっとあるわけですよ。で、だからこそ俺はネットラジオの方で、少しでも良い音楽をみんなに伝えられればな、切っ掛けになってもらえればな、と思っているわけですよ。

だからね‥‥是非このアルバムも買って聴いてみて。



▼SNOW PATROL『FINAL STRAW』
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投稿: 2004 07 09 04:35 午後 [2003年の作品, Snow Patrol] | 固定リンク

2004/05/03

おけいさんと安倍なつみ(モーニング娘。)『母と娘のデュエットソング』(2003)

モーニング娘。の安倍なつみはこれまでソロで音楽活動を公にしてくることはありませんでした。それはつんく♂自身の「安倍こそがモーニング娘。の顔であり、マザーシップ」という表現が全てを言い表していると、俺自身も感じていたからね。言い方を変えれば、安倍が本格的にソロ活動をする時……それは「モーニング娘。の終焉」を意味する‥‥それくらいのことだと思うんですよ。ところが、今回リリースされたこのシングルはちょっと話が違う。そう、所謂「企画モノ」以外の何モノでもないですよね、これ。それにソロ活動という程でもなく、不確定なユニット形態。しかも相手はあの六文銭の四角佳子、しかも作曲にはその小室等が加わるという、正しくオリジナルソング版『FOLK SONGS』といった形になってるわけです。ま、『FOLK SONGS』にはこれまで、つんく♂は関わってきてないわけですから、そういった意味ではちょっと違うのかもしれないけど……。

安倍がこれまでソロで歌ってきた楽曲は、例えば本体では「せんこう花火」や「男友達」、また『プッチベスト』にて「トウモロコシと空と風」、そして2001年春の当時のメンバー10人によるソロシングル「真夏の誕生日」。この程度なんですよね。当然、これまで一度として歌手としての「課外活動」(=ソロ/ユニット活動)はなかったわけで、そういう意味では満を持しての……ってことになるんでしょうけど、ま、最初にこういう形でのソロ活動と耳にした時「あ、これ1枚の企画モノだろうなぁ……」とか正直思いましたね。多分、こういう形態でハロプロのメンバーを使ったコラボレートが今後も増えると思いますよ。それは個人的には悪いことだとは思いませんね、こういう風に「つんく♂以外のソングライターとの共作」という形だったら。だって、絶対に新鮮なものが生まれるはずだから。

で、今回のシングル収録の2曲ですが……良くも悪くも「モーニング娘。の安倍なつみ」のパブリックイメージを壊さない程度の作風ってことになるのでしょうか。正直、もっとフォークソング的なものを想像してたのですが、これってフォークというよりはニューミュージック的ですよね? ま、『FOLK SONGS』企画自体がホントにフォークなのかどうかっていう疑問の残る企画なんで、そう考えればこうなるのは当然なのかなぁ、と。

勿論、気に入っていないわけじゃないですよ。現にここで取り上げてるってことはここ数日、結構な頻度で聴いてるってわけですから。それに、この曲を聴いて俺が安倍に対して思い描いていた「ソロ構想」がちょっと変わってきたなぁ、と感じているのですから。

安倍がソロをやるとしたら、どういう形が一番いいのかなぁ……ってことを前々から考えたことがあったんですよ。どういう音楽性が一番彼女にフィットするのか、一番彼女らしさを表現することができるのか、と。でね、結局はモーニング娘。での路線を踏まえた、それこそ延長線上にある形。これが一番彼女らしいのかと思ってたんですね。勿論、安倍こそがモーニング娘。なわけですから、それは決して間違いではないと思うんですが。けどね、この1年くらい……『童謡ポップス』とかテレビ番組でのオリジナルソングによる童謡とか、そういうのを歌う彼女を観たり聴いたり、そして先日発売されたエッセイ集を読んだりすると、彼女には「アーティスティック」な方向性よりも……言い方は悪いですが……もっと下世話で、それこそ子供にまで伝わりやすい表現方法の方がより安倍に合ってるんじゃないのかな、と。決して安倍がアーティスティック路線無理とか幼稚とかそういう意味じゃないですよ。

彼女の「陽」の要素ってのはファンなら誰もが認識するところかと思います。そしてそれは多くの「闇」を切り抜けてきたからこそ得たものであって、それは決して彼女ひとりの力によるものではなく、周りのメンバーや友人、家族やスタッフ、そしてファンといった多くの人達の存在があったからこそのものだと思うんですね、個人的に。そして彼女はそういった「陽」の要素を逆にそういった周囲を取り囲む人間達にも振りまいている。単純に優しく・明るく振る舞うだけではなく、それを「歌」にしたためて……それって俺には真似できそうでできないよなぁ、と常々思っているわけです。そしてそれも「選ばれた人間こそが持つことができる才能」のひとつだと思うんですよ。やはり彼女は選ばれた人間だと。

そうした「選ばれた人間」として、我々のような大人や彼女と同年代の10~20代の人達だけでなく、それこそ小学生くらいの子供にまでストレートに届くような歌を彼女には歌って欲しいなぁ……このシングルを聴いてそこまで思ってしまったんですよ。そして彼女にはそれをやり遂げるだけの才能と力が絶対にある。俺はそう確信してます。

間違いなく今回のシングルは「母の日」を意識したものでしょう。リリース時期もその周辺だし。ちゃんとテレビ番組でのプロモーションもあることですし、それらを観て聴いた人達……そういった子供達やその親御さんにまで届けばいいなぁ……そう願います。

私事で恐縮ですが……先日、自分の母親が商売を初めて20周年ということで、その記念パーティーを開きまして。古くからの友人・知人、親戚、俺達家族、そして母を支えたお客さん達。こういった人達が100人以上も集まってくれました。母の人徳ってのもあるでしょうけど……なんかね、あれを見てからこの曲を聴いてしまうと、ちょっとウルッときちゃうんですよ。ああ、ヤベェなぁ。俺も歳なのかなぁ、と。たまたまそういうシチュエーションと重なってしまったこともあり、また安倍の屈託のない歌い方も相俟って………ちょっと今の自分にはググッとくる大切な曲になりそうな予感。決して名曲と呼べる類の楽曲ではないですが、例えば「握って歩きたい」みたいに子供や大人にも届くような歌い継がれる曲になってくれればなぁ……難しいかもしれないけど、そういうふうになってくれたら俺は嬉しいなぁ。

そして「安倍なつみというシンガー」には、これからもそういう曲をバンバン歌っていって欲しいと思います。モーニング娘。そのものがなくなったとしても、彼女はきっと歌い続けると思います。あるいは将来、結婚をして子供を持って表舞台から遠ざかる日が来るかもしれません。そんな日が来たとしても、きっと彼女は自分の子供達に向かってそういう「優しい歌」を歌い続けることでしょうね。いや、絶対にそうだと思いますよ。そしてやっぱり‥‥俺はそんななっちが大好きなんです。歌っている安倍なつみが大好きなんです。今後、再び「安倍なつみ」としてのソロ活動があるかどうか判りませんが、また心に響くような素晴らしい歌を期待しています。

なっち、ありがとう。



▼おけいさんと安倍なつみ(モーニング娘。)『母と娘のデュエットソング』
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投稿: 2004 05 03 12:00 午前 [2003年の作品, ハロー!プロジェクト, 安倍なつみ] | 固定リンク

2004/04/30

HOOBASTANK『THE REASON』(2003)

正直バカにしてたところはあるのね、彼らに対して‥‥ところが、ここにきて急ブレイク。昨年12月にリリースされたこのアルバムが、前週の18位から翌週にはいきなり3位まで急上昇。シングル曲もチャートアクション好調で、これがきっかけだったのか、それともLINKIN PARKとのツアーが大盛況だったことが要因なのか‥‥いつ何時、どんなチャンスが待っているか判らない、そしてその切っ掛けをいきなり掴んでしまったりする。それがアメリカなんだよね、今も昔も‥‥

というわけで、hoobastankが2003年12月に発表したセカンドアルバム「THE REASON」。です。上に書いたように、アメリカのビルボード・チャートでいきなり3位まで上昇してしまってるんですよ(ちなみに初登場はトップ40入り程度の記録でした)。恐らく今現在の最新シングル "The Reason" の受けがかなり良いこともあり、それも影響してるんだろうな、と思うんですが‥‥だって、この俺自身もその曲を聴いて「あれっ、hoobastankってこういう曲もやるんだ!?」って驚いた程ですからね。彼らに対する印象って、2年前のサマソニで観たのと、ファーストアルバムからのPV、そしてこの最新作からの先行シングル曲 "Out Of Control" の印象しかなかったんですね。で、それで十分だと思ったのも正直なところで。所謂ニューメタルの範疇に入るであろう音楽性で、ちょっとパンク色もあるかな?程度の感想。ライヴもボーカルの日系人の子が頑張ってるのを観ると、ちょっと嬉しくなるという‥‥LINKIN PARKもそうなんだけどね‥‥

で、その "The Reason" という曲がね、これまで持っていたニューメタル的な側面とは違った、所謂ミディアムテンポのメロウ・チューンなんだけど‥‥懐かしい香りがするのよ。'80年代的な‥‥そう、産業ロック的な匂いというか。アコースティックギターとストリングスを取り入れた、本当の「歌モノ」で聴いてて心地よい。大陸的なおおらかなノリも持ちつつ、どことなく繊細さも持ち合わせている、みたいな。前者だけだったらホントに産業アメリカンロックの焼き直しで終わってたんだろうけど、後者の繊細さ‥‥これって結局『EVANESCENCE以降』、最も必要とされている要素なのかもね‥‥これのお陰で『'80s クローン』で終わらずに済んでる。むしろそっちよりも、ここ数年のCREEDやNICKELBACK辺りと並べても何ら引けを取らない。もうね、そこが意外で意外で。あーこういう曲も出来るんだ‥‥アルバム聴いてみたいな、って。

で聴いたのよ、アルバム。ファーストはちゃんと聴いてないんで、今回が初hoobastank。いきなり1曲目の "Same Direction" と先行シングルの2曲目 "Out Of Control" にやられる。普通にカッコいいよね。適度にメタリックで、適度にパンキッシュ。ラップメタル的方向に走らず、むしろ最近主流のエモ/スクリーモの範疇にある作風かな、と。特に2曲目のスクリームパートなんてまんまだしね。

ところがね、このアルバムの肝ってそういったエモ的要素ではないのね。勿論大半をそういったアップテンポのマイナーチューンが占めているわけだけど、聴き終えた後に印象に残るのは‥‥3曲目 "What Happened To Us?" や先の "The Reason"、"Lucky" や "Disappear" といったスロウ~ミドルテンポのメロウチューン。アコースティックギターを多用して、音の感触を柔らかくしてるのね。で、そこに彼ら独特の繊細なメロディが乗って、更に独特な世界観を展開しているという。しかもマイナーにばかり頼らず、メジャーキーの曲も結構ある。そこも意外でしたね。

アコギやストリングスを導入したミドルチューンを聴いていると、どうしても先駆者‥‥ってわけでもないけど‥‥EVANESCENCEを思い出してしまうんだけど、女性的な向こうと違ってこちらはもっと男臭さが強く、そこがまた哀愁味が溢れててイイ感じ。ヤバい、めっちゃ好みかも‥‥ハードロック少年だった昔の血が騒ぐね。

もうさ、ニューメタルとかラウドロックとかエモとか、そういったのどうでもいいよ。普通にハードロックじゃんか、これ。EVANESCENCEの時も思ったけど、結局はみんなそこに戻ってくんだよ。最近アメリカではパンキッシュだったバンドがよりポップでハードな方向へと進んでいってるし、ニューメタルとか呼ばれてた連中もよりメロディを強調し始めて、歌ものバンドへと進化している。'90年代に暗く陰を落とした『混沌さ』に耐えられなくなった奴らがひとり、またひとりと離脱し、自身のルーツにある音楽‥‥もしかしたらそれは、NIRVANA以前にヒットチャートを賑わしていたBON JOVIやDEF LEPPARDやGUNS N'ROSESなのかもしれない‥‥そういった音楽へと戻っていった‥‥そうは考えられないかな? 最近の傾向を見てると、嫌でもそう思えてきちゃうんだよね。ANDREW W.K.が登場した時点で、みんなうっすらと気づいてたんじゃないの? いつかはそういう時代がまた戻ってくるって。現に当のBON JOVIだって、新作がアメリカで初登場2位を記録したわけでしょ。GUNSも最近出たベスト盤が、新曲すら入ってないのに世界中で大ヒットしてるわけだし。もうね、そういう時代なんだよ、きっと。

EVANESCENCEにしろLINKIN PARKにしろ、コアなロックファンからは敬遠されがちですが、そういったメインストリームを引き受けた存在ならではの魅力ってがあるはずだし、それはこのhoobastankからも十分に感じられるんですよね。ちゃんと聴いてないからファーストとの比較は出来ないけど、少なくとも2年前に観たサマソニのステージの数倍は良くなってた。それがこのセカンドアルバムを聴いた感想ですかね。とにかくいいアルバム。今更ながら、暫く愛聴しそうです。



▼HOOBASTANK『THE REASON』
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投稿: 2004 04 30 04:46 午前 [2003年の作品, Hoobastank] | 固定リンク

2004/04/29

22-20s『05/03』(2003)

成る程、彼らが22-20sですか‥‥とひとりで勝手に納得してますが。早くも某音楽雑誌でも「今年期待の新人」として紹介されちゃったりしているイギリスのトリオバンドが、昨年秋に海外でリリースした6曲入りのライヴEPがこの「05/03」。タイトル通り、'03年5月に行われた英国公演を収録した内容。ギター/ベース/ドラムというシンプルな構成に、ゲストでハモンドオルガンやキーボードといったサポートメンバーが入ったりしてますが、基本となるのはやはりトリオですね。

6曲入りで、オリジナル曲が5曲に、カバー("King Bee")という構成。これだけあると、かなりバンドの雰囲気や勢いを体感できるんじゃないですかね? しかもライヴ音源だし。殆ど修正されてないでしょうから(せいぜい各楽器のボリュームくらいでしょう)、音楽的にはギターを中心とした、本当にシンプルな'70年代ブルーズ・ロックで、曲によっては昨今流行のロック・リバイバル的なノリを感じるし、R&B的なノリからはMANDO DIAO的なものを感じるし‥‥という意味では、彼らの登場は正に今だから、今じゃなきゃならなかったんだろうな、というのがヒシヒシと伝わってくるわけですよ。

トリオでブルージーで'70年代的‥‥というと、どうしてもCREAMやジミ・ヘンドリクス辺りと比較してしまいたくなるんですが、そっち方向(各楽器のインプロビゼーションを中心としたアンサンブル)にドップリ浸かっておらず、意外とアッサリしてるのが印象的。曲自体が3分前後のものばかりなんだよね。普通スタジオテイクだとわざと短めのアレンジにして、ライヴだとその数倍の長さになってるというパターンがこの手のバンドには多いんですが(って偏見?)、そういう意味では彼らも「最近のバンド」なんだなぁ、と。ただの「'70年代かぶれ」で終わってないな、と。

まだまだ未熟な面も見受けられるし、アレンジももっと煮詰める必要があると思うし、何よりも曲のバリエーションが狭いかな、という見方もできるし‥‥そういう意味ではホント「これから」という存在だよね。決して「最高!」とは言えないと思う。過剰な期待を寄せるのもいいかもしれない、メディアのパワーを使って「2004年台風の目」とか捲し立てるのもアリだと思うけど‥‥正当な評価は、この春にリリースされるスタジオ音源によるシングルと、夏頃に予定されているというフルアルバムを聴いて下したいなと思います。

ただ、個人的な趣味でいえば、完全にストライクゾーン。特にギター・プレイに関してはクリスピアン・ミルズ(元KULA SHAKER~現THE JEEVAS)をちょっとだけ彷彿させるものがあるし(ま、音楽的にもふたつのバンドの中間といった印象があるしね)、昨今のガレージ/ロック・リバイバル/リフロックの流れにあるスタイルの中でもかなり異質な音を出す存在だと思うしね。残念ながら、これから出る日本盤はCCCDでのリリースとなってしまいますが、今出回ってる輸入盤(主にUS盤)はCD-DAみたいなので、その辺を気にする人は是非輸入盤で買ってみてください。6曲も入って1,000円ちょっとだしね。



▼22-20s『05/03』
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投稿: 2004 04 29 06:13 午後 [2003年の作品, 22-20s] | 固定リンク

2004/03/19

DIFFUSER『MAKING THE GRADE』(2003)

先日放送したネットラジオ「RADIO TMQ」でも紹介し、その時もなかなかの評判だったアメリカ出身の4人組、DIFFUSERのセカンドアルバム「MAKING THE GRADE」がやっとここ日本でも発売されました。とはいってもこのバンドのこと、俺もつい最近知ったんですけどね。いや、音はずっと前に聴いてるはずなんだけど‥‥全然記憶に残ってなくて。

3~4年前、映画「MI:2」のサウンドトラックに彼ら、参加してるんですよ。ファーストアルバム収録曲の "Karma" で。全然記憶に残ってないよ‥‥どんな曲かもね。で、最近聴き返してみたんだけど‥‥このセカンドの音と全然違うのな。ちょっと驚いた。ま、たった1曲との比較だし、実際ファーストアルバムはまだ聴いたことがないから、本当の「違い」はまだ判らないんだけど‥‥

これを書いている今まさに、彼らは来日中でして、しかも「MAGIC ROCK OUT」への出演も決まってる。アメリカでは昨年7月にリリースされたこのアルバムも、ようやくこの2月にはリリースされた(但し日本盤はCCCDなので注意。US盤はエクストラ仕様なのに‥‥)。そう、正にこれからというバンドですよ、彼らは。

聴いてもらえば判るように、彼らのこのアルバムでのスタイルは、ハードポップ/パンクポップの流れにあるサウンド。FOO FIGHTERS以降の流れといえばいいのか‥‥最近ではAMERICAN HI-FIみたいに「HM/HRからの影響を見せるパンクポップ/ハードポップバンド」が増えてますが、間違いなくこのDIFFUSERもそのひとつと呼んでいいと思います。

適度にパンク的疾走感があり、サウンド自体は重厚、メロディも親しみやすく、コーラスの重ね方なんてメロディアス系のハードロックバンド的。この辺は例えばHR側でいうところのHAREM SCAREMやSZUTERS、ENUFF Z'NUFF、あるいはANDREW W.K.なんかとも共通するものがあると思います。実際にこのバンド、そういったHM/HRからの影響を口にしてるそうですし。

ある時期まで、HM/HRを好きだと公言することはダサイことだ、という認識がありました。恐らくグランジ以降の流れでしょうか。が、ニューメタル系が台頭し始め、もう一方からはパンク系のハードポップ/ハードロックも盛り上がり始める。AMERICAN HI-FIなんて正にその代表例といっていいでしょうし、その兄貴分と呼べるだろうFOO FIGHTERSのデイヴ・グロールなんて、自身はグランジの中から登場したのに、今では自分が好きな/影響を受けたメタル/ハードコア系バンドとのコラボレーションを楽しんでいる。別にBON JOVIやMOTLEY CRUEが好きだった、と言っても誰にも責められない時代。それがここ数年の流れのようです。

間違いなく、DIFFUSERは'80年代以降のメロディアスなアメリカン・ハードロックの延長線上にいるバンドでしょう。そして、上に挙げたようなハードポップ系ハードロックバンド(なんつー呼び名だこれ)を好んでいるHRファン、AMERICAN HI-FIやSUGARCULT、BUSTED、FUZZBUBBLE、MARVEROUS 3といった辺りが好きなパワーポップ/ハードポップバンド好きに注目されるべき存在、それが今のDIFFUSERのポジションなのかな、と。「MRO」というフェス/イベントがイマイチ盛り上がってないようなので、是非今年の夏にもう一度、巨大サマーフェスに出演して、その良さを理解してもらわねばなりませんね!



▼DIFFUSER『MAKING THE GRADE』
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投稿: 2004 03 19 08:20 午前 [2003年の作品, Diffuser] | 固定リンク

2004/03/05

PRIMAL SCREAM『DIRTY HITS』(2003)

「この程度で俺等のこと、解った気になるなよな!」っていうボビー・ギレスピーの叫び声が聞こえてきそうな気がしないでもないですが、とりあえず本人達の選曲ってことである種の開き直りすら感じられる、このベストアルバム「DIRTY HITS」。既にPRIMAL SCREAMも結成して20年近くが経ち、こうやってベスト盤が出せるまでに成長しました‥‥けど、このベスト盤はいろんな意味で厄介な存在でもあるわけでして。

本来、ベスト盤って「それまでそのアーティストに対して興味がなかった(あるいは知らなかった)初心者が、手っ取り早くそのアーティストの歴史を理解するための教科書的アイテム」なわけですよ。まぁ出す側としては「ここらで活動にひと区切りつけたいし、新しいことにチャレンジしたいから、ベスト出しておくか」とか「レコード会社の移籍も無事決まったし、とりあえず未発表曲が数曲あるから、これを古巣に渡してベストでも出してもらうか」程度の軽い気持ちで出すのかもしれませんが。あるいは「契約残ってるし、消化するために出しますか」とか「んーだよー、契約消化する前に解散すんなよなー! しょーがねー、アルバム2枚しか出してなかったけど無理矢理ベスト盤出して消化しますか」っていう大人の事情でリリースされる場合もありますが(実は大半がこれだったりして)。

プライマルの場合はどうだったか知りませんが、とにかく出ちゃったわけですよ。ま、こうやってベストでも出ればツアーも出来るし、バンド側にとってはいい口実なのかもしれないよね。実際、このベスト出してからUKツアーもやったし、この3月にはまたまた日本にやって来るし(この約1年ちょっとの間に3回くらい来てるしね)。

で、これまでそんなプライマルに「取っ付き難い」という印象を持っていたロックファンにとって、正に「これから聴いてみれば大丈夫かも‥‥」と思わせるような存在が登場した。それがこのベスト盤なのかな、と。しかし、いざ蓋を開けてみると‥‥ファースト&セカンドからは選曲されず、出世作となったサード「SCREAMADELICA」から'02年の最新作「EVIL HEAT」までの5作からしか選曲されておらず、しかもアルバムタイトル通り、その殆どがシングル曲という豪華さ(そしてある意味の手抜き加減)。そりゃね、初心者からするとそういったヒット曲から入って行くのが一番なんだろうけど、ことプライマルに関してはそうはいかないのね。このバンドってアルバム毎にコンセプトやサウンドが異なるでしょ。同じダンスミュージックを背骨に持ちながらも、「SCREAMADELICA」と「VANISHING POINT」とでは全くの別物だし、アメリカ南部への憧れをそのまま体現してしまった「GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP」に関してはもう‥‥ねぇ。そんな彼らの(ある意味)代表曲を年代順に並べているんだけど、やはり3~4曲毎にスタイルが変わるっていうのは、初心者的にどう映るんだろうね。その辺はちょっと聞いてみたいかも。

ぶっちゃけ、もしプライマルを本気で知りたいのなら、アルバム単位で聴いていった方が絶対いいと思います。勿論、1曲1曲を抜き出して聴けば当然カッコいいわけですが、これがね‥‥ "Higher Than The Sun" の後に "Rocks" がきたりしちゃうと、さすがにね。勿体ないと思うんですよ。

そうはいっても、何度も言うようにやはりどの曲も優れものなのは確かなので、流し聴きする分には丁度いいコンピレーション盤かもしれませんね。ただ、彼らの歴史を勉強するにはちょっと不向きな気がします。それでも‥‥各アルバム毎にまとまって曲が収録されてるから、気に入った時期があったら、それらが収録されているオリジナルアルバムに手を出す、そういう風に聴いていけば確かに役立つかも。ええ、そういう風に使ってみてください。むしろそうすべきです。

個人的には、もしこれからプライマルを聴こうと思っているのなら、迷わず最新オリジナルアルバムの「EVIL HEAT」を聴けばいいと思うし、彼らのライヴでの爆裂振りを伺い知りたいのなら、昨年日本限定でリリースされた「LIVE IN JAPAN」を聴くのもいいかと。こっちもある種ベスト盤的役割を果たしてくれるのでね。

最後に。もしこれからこのベスト盤を買おうと考えている人がいたら、注意してもらいたい点がひとつ。実はこのベスト盤には初回限定仕様が用意されていて、その特典が日本盤とUK盤(US盤も含む)とでは全然違うのね。日本盤はPV9曲が収録されたDVDが、UK盤は過去のシングルに収録されていたリミックスワークが13曲入ったCDが付いてきます。PVも普段観る機会がない人にはいいだろうけど、ここで声を大にして言いたいのは‥‥「迷わずUK初回限定盤をゲットせよ!」ということ。これから聴いてみようって人、このロックバンドが如何に「ダンスミュージック(テクノ/ハウス/ダブ/ファンク等)」にこだわっているか、それがこのリミックスワークから存分に伝わってくると思います。参加してるリミキサー陣の名前だけ挙げてみても、エイドリアン・シャーウッド、THE ORB、SABRES OF PARADISE、TWO LONE SWORDSMEN、THE CHEMICAL BROTHERS、MASSIVE ATTACK、アレック・エンパイア等々。どうよこれ? 2002年に出たMANIC STREET PREACHERSのベスト盤付属のリミックスCDも凄かったけど(これもシングルに収録されてたものをひとまとめにしたもの。UK盤は初回限定のみ、日本盤は常に2枚組仕様)、こっちも改めて聴いてみて、やっぱり凄いな、と。正直、これだけの為にこのベストを買ったとしても決して高い買い物ではないはず。解説とか歌詞が載ってないけど、それでも2,000円以下でヒット曲も、リミックス曲もそれぞれ70分強楽しめるんだから、絶対にUK盤でしょう!



▼PRIMAL SCREAM『DIRTY HITS』
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投稿: 2004 03 05 03:41 午後 [2003年の作品, Primal Scream] | 固定リンク

2004/03/04

SOUTH『WITH THE TIDES』(2003)

どうしてもSOUTHというと、「MO'WAX」に所属するギターロック・バンド、親分がジェームズ・ラヴェル(U.N.K.L.E.)、という事柄が最初に挙げられることが多かったんだけど、まぁあのダンス系レーベルに所属した数少ないギターロック・バンドってことで、確かに注目されてもおかしくないわけで。けど、それが時として足枷になることだってあるんですよ。

ロンドンを拠点に活動するこのバンドの、約2年振りのセカンドアルバム「WITH THE TIDES」はそんな「MO'WAX」を離れ、新たにBMG傘下の「Kinetic」からのリリース。当然プロデュースにジェームズ・ラヴェルは絡んでません。当たり前か。

ここで繰り広げられている音楽は、以前実践されていた「テクノロジーとギターロックの融合」とはある意味真逆の、人肌の温度に近い「生身のロック」。プロデューサーにMANIC STREET PREACHERSやASHを手掛けたデイヴ・エリンガを迎え、トリオの演奏を軸にしながらもストリングスやバンジョー、ハープシコードといった楽器を導入、中心にある「歌」を劇的に盛り上げるのに一役買っています。

多分、誰もが「これがあのSOUTH!?」と驚くのではないでしょうか? ここまでメランコリックに、且つソウルフルに「歌」を聴かせるバンドに変わっているとは。ゆったりとした空気を保ったまま、サウンドに身を委ねてゆらゆらしていると、最終曲に到達している‥‥そんなアルバム。当然ダンサブルな要素は皆無。そういったものを彼らに求めていた人にとっては、この変化は裏切り以外の何者でもないでしょう。が、個人的には前作に全く思い入れとかなかったから、すんなり受け入れることができました。ま、確かに「これ、ホントに同じバンド!?」と耳を疑ったりはしましたが。

所々、前作で養った要素‥‥効果音やサウンドエフェクト面ですが‥‥を感じつつも、それはほんの飾り。RADIOHEAD辺りがそういう要素を前面に出すのと違い、ここでは必要最低限に抑えられてる印象。無理矢理こじつければ、U2が「ALL THAT YOU CAN LEFT BEHIND」で実践したことを、更にエモーショナルにした感じ‥‥ってのはどうでしょう? ちょっと強引かな?

今現在、こういったサウンドを鳴らすバンドはイギリスにごまんといるでしょう。'90年代中盤以降、大ヒットを連発していた頃のマニックス、ある時期のRADIOHEADもここに入るだろうし、最近じゃTRAVISみたいなバンドだっている。そういう意味で、まだSOUTHは「その他大勢」なのかもしれません。確固たる個性みたいなものはちょっと希薄かな?と感じる瞬間もあるし。けど、良い作品なのには違いない。ここまで「聴いていて落ち着ける」ギターロックアルバム、最近あんまり聴いてなかったので、とても新鮮でした。

これらの楽曲をライヴではどう表現するのか‥‥3人で全部やるのか、それともサポートを入れるのか、あるいは全く違うアレンジにするのか‥‥そう考えると、今度の「MAGIC ROCK OUT」はある意味見物なのかもしれませんね。

上にも書いたように、RADIOHEADの「THE BENDS」やマニックス「EVERYTHING MUST GO」辺りが好きだというUKロックファンなら間違いなく気に入る1枚。俺は大好きですよ。



▼SOUTH『WITH THE TIDES』
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投稿: 2004 03 04 04:39 午後 [2003年の作品, South] | 固定リンク

2004/03/01

KRAFTWERK『TOUR DE FRANCE SOUNDTRACKS』(2003)

オリジナルアルバムでいう前作「ELECTRIC CAFE」がリリースされたのが1986年。当時、中学生だった俺は「CGを駆使したPVが面白かったから」といった理由でこのアルバムをレンタルしました(LPの時代にね!)。これが俺とKRAFTWERKとの出会い。あれから17年以上もの月日が経ち、その間にリリースされたKRAFTWERKの新譜は‥‥ゼロ‥‥あ、いや、'91年に「THE MIX」っていうセルフ・リミックス集が出たっけ‥‥あの時でさえ俺、ハタチだもんなぁ‥‥十代に1枚、二十代に1枚、そして三十代になって1枚。次に彼らのアルバムが聴けるのは、あと7~8年経ってからとか? そんな皮肉さえも言いたくなってきますが、ま、こうやって久し振りのオリジナルアルバムも聴けて、更に来日公演も観れたんだから、良しとしましょうよ。

というわけで、正に前作から17年振り(!!)、通算10作目(「THE MIX」を含めても11作目)となるアルバム「TOUR DE FRANCE SOUNDTRACKS」。その名の通り、'83年にリリースされたシングル "Tour de France" から数えても20年、何故この時期に再び「Tour de France」なのか。何やら2003年で「Tour de France」という競技自体が100周年なんだそうで、それを記念して作られた公式認定サウンドトラックなんだそうですよ。20年前の時は協会から依頼されて作ったのか、単に競技からインスパイアされて作ったのかは知りませんが、まさか20年前のあの曲がこういう形で蘇り、またその曲を軸にオリジナルアルバムが完成するとは、当の本人達も、そしてファンの側も思ってもみなかったでしょうね。

そんなこのアルバム。20年前の "Tour de France" をリメイクし、更に2003年バージョンとして3つのバージョンを制作し(というよりも、3つの楽章からなる組曲といった方が正しいかも)、それらを軸にして「Tour de France」という競技をモチーフにいろいろ新曲が作られています。

とにかく一聴して感じたのは、全然古くさくないということ。当たり前か、大半が完全新曲なんだから。リメイクされた "Tour de France" はちょっと懐かしさが程よくブレンドされていて、逆に心地よかったりするんだけど、それ以外の曲‥‥例えば2003年バージョン組曲なんて、完全に今の音でテクノしまくってるからね。4つ打ち仕様、クラブ仕様。ビートも1983年のビートではなくて、2003年のビート。勿論これよりも今っぽい、真新しいビートはいくらでもあるし、聴く人が聴けばこれすら「古くさい」のかもしれないけど、俺にはそうは聴こえないし、全然「アリ」なわけ。UNDERWORLDやCHEMICAL BROTHERSというよりは、ORBITALとかLEFTFIELDといったイメージかな。そういうサウンドを持った1枚に仕上がってると思います。

で、勿論そういった "Tour de France" シリーズ以外の新曲も、良い意味でKRAFTWERKらしく、そして現代的なダンスチューンに仕上がっています。ミドルテンポでメロウなシンセが気持ちいい "Vitamin" もユニークだし、アッパー系の "Aero Dynamik" も単純にカッコいい。この曲が第二弾シングルというのも頷ける話(個人的には、もし第三弾リカットがあるなら、絶対に "Vitamin" だと思ってるんですが)。そして自転車競技という「孤独との戦い」「敵は自分」というテーマをそのまま音にしたかのような "Electro Kardiogramm" も如何にもな印象(ま、テーマは今俺が勝手に思いついて付けてみたんですが)。"La Forme" も従来の彼ららしさを包括しながらも今を主張してる印象。古めかしくもあり、今に通ずる色も見いだせたりもする。だから聴く人によって「止まってる(=時代遅れ)」とも「現代的」とも取れる。この辺がこのアルバムの面白味でもあるんですけどね。

ライヴを観てしまった後だから余計に感じるのかもしれないけど、全体的にストイックな空気が流れる中、最後の最後にオリジナルの "Tour de France" のシンセの音色が聴こえてくると、自然と顔がほころんでしまうんですよね‥‥孤独なレースからゴールした瞬間に似てるのかな。とにかく優しくて温かい印象。 "Tour de France" で始まり "Tour de France" で終わるという構成はそういうテーマがあったからこそなんですが‥‥けど、これは本当によく出来たアルバムだなぁ、と。

残念ながら2003年の10枚には選ばなかったのですが、それでも昨年後半よく聴いた1枚であり、その10枚に限りなく近い作品であるのは確か。もし昨年中にライヴが実現していたら、間違いなく10枚の中に入れてましたけどね。

「とりあえずKRAFTWERKを聴いてみたいんだけど‥‥」と思ってる若い子達には、まずこのアルバムから聴くことをオススメします。無理してアレンジ的にもサウンド的にも時代の流れを感じるアルバムを聴いて切り捨てられるよりは、現代的に処理されたこの「新作」から聴いた方が入りやすいと思いますしね。



▼KRAFTWERK『TOUR DE FRANCE SOUNDTRACKS』
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投稿: 2004 03 01 03:52 午前 [2003年の作品, Kraftwerk] | 固定リンク

2004/02/28

DEFTONES『DEFTONES』(2003)

前作「WHITE PONY」から約3年半振りに届けられた、DEFTONES通算4作目のオリジナルアルバム「DEFTONES」。この時期にセルフタイトルのアルバムを発表するということは、恐らくそれなりに自信があるのか、それともこれまでの活動の集大成となるような作品になるのか‥‥とにかく前作があまりにも恐ろしい傑作だったこともあり(そして予定されていたフジロックのキャンセル等、未だに大ブレイク後の来日が果たせていない事等も付け加えて)いろいろ期待していたのですが‥‥ま、良くも悪くも「前作の延長線上」にある作風といえるでしょう。

ニューメタルとかスクリーモとかいろいろ呼び名はあると思うんですが、こういった「ポストロックとのクロスオーバー」的サウンドを実践した先駆者として、今後後続達との差別化を図るためにどういう方向に進んでいくのか。この3年間に所謂「ニューメタル」と呼ばれるタイプのバンドは飽和状態に入り、平凡なバンドはどんどんと消えていき、成功を収めたバンドは更に自らの個性に磨きをかけ、独自の方法論で新作をリリースしていく中、このDEFTONESだけは沈黙を守り続けていたような思えます。海外からツアーやフェス等に参加した等の情報は伝わってきたものの、やはり前作に伴う来日公演が実現しなかったことから、ここ日本では殆ど盛り上がりに欠け、未だに「どこがそんなに凄いのか!?」といった感じで静止するロックファンが多いのではないでしょうか。考えてみれば過去、彼らが来日した際にはクアトロ・クラスでのツアーでしたからねぇ。それだけ観た人が限られるわけで‥‥だからこそ、フェスのような大舞台で彼らの魅力を余す事なく見せつけて欲しかったんですけどねぇ(結局、この「DEFTONES」リリースから1年近く経った今現在においても、来日は実現していません)。もしかしたら彼らって、'01年までのTOOLに近いものがあるのかもしれませんね。

そんな彼らの新作。悪いわけがない。いや、普段ヘヴィロックやラウド系をバンバン聴いてるファンにとっては、この程度のラウドさは日常茶飯事でしょう。しかし、やはり最近この手のバンドを聴く機会が少なくなった自分からすると、良い意味で聴きやすいサウンドなんですね。勿論、依然ラウドなサウンドには違いないのですが、前作辺りから顕著になりだした「RADIOHEADやMOGWAI等にも通ずるポストロック感」が一部の楽曲で激化しているように感じます。頭3曲はこれまでの流れを汲むミドルテンポのラウドロックで、適度にグルーヴィーで気持ちいいのですが‥‥その3曲目 "Minerva" 辺りから、少しずつですがMOGWAI辺りの色合い‥‥静と動のコントラストを強調した色合いが見えだします。5曲目 "Deathblow" になると、もはやラウド系やニューメタルということさえ忘れそうになる空気が漂い、打ち込みを多用した8曲目 "Lucky You" になると完全に「AMNESIAC」辺りのレディヘとイメージが被り、10曲目 "Anniversary Of An Uninteresting Event" ではそのレディヘやMASSIVE ATTACK辺りの色合いすら感じられ、既にラウドロック/ニューメタルなんて域を完全に抜け切っていることに気づかされます。ゴスとも違うダークさ‥‥例えば同時期にリリースされたEVANESCENCEと比べても、全く方向性や向かっている場所が違っていることに気づくことでしょう。

が、そういった要素がアルバム全体を覆っているわけではなく、あくまで「バンドとしての、何分の一かの個性」であり、やはり残りの楽曲はこれまでのフォーマット‥‥所謂ニューメタル/スクリーモの系譜に属するものなんですね。そこがその手のファンにとっての安心要素であり、且つ残念な点でもあるんですが。完全に向こう側に突き抜けることなく、あくまでこっち側に居座ってその居場所の面積/間口を広げている。それがDEFTONESの立ち位置なのかな、と。それはそれで否定しませんが‥‥NEUROSISのようなバンドもいるわけですし、今後はラウド系だけでなく、そういったポストロック系との付き合いも深めてみてはどうでしょうか? この手のサウンドを好むポストロック系アーティストも多いでしょうし、最近では普通にUKギターロックバンドでも、こういったバンド達とツアーをする人達がいるみたいだし。そうやってどんどんクロスオーバーを重ねていき、次のアルバムでは更なる「深化」を進めていってもらいたいものです。

やっぱり俺がこのバンドに望むのは、現状維持しつつ間口を広げていく形ではなく、いっそのことあっち側にどっぷり浸かって、「ポストロック側から鳴らされるラウドロック」という手法でアルバムを1枚作って欲しいんですけどね‥‥ちょっとズレてますかね?

ま、とにかくです。前作やこのアルバムを引っ提げて、是非一度来日してもらいたい。今年のフジロックやサマソニ‥‥一気にブレイクするチャンスだと思うんですけどね。



▼DEFTONES『DEFTONES』
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投稿: 2004 02 28 12:00 午前 [2003年の作品, Deftones] | 固定リンク

2004/02/27

BACKYARD BABIES『STOCKHOLM SYNDROME』(2003)

作『MAKING ENEMIES IS GOOD』から約2年半振りに届けられた、BACKYARD BABIES通算4作目のオリジナルアルバム『STOCKHOLM SYNDROME』。日本でその地位を確立したセカンド『TOTAL 13』と比べて明らかにスピード感を抑えたその作風に賛否両論だったけど、今回はどうだろう‥‥スピード感とか爆走ロックにこだわるファンにとっては今度のアルバムも期待を裏切る内容なのかもしれないね。けどさ、そうじゃねぇだろ?と。そういった点でここ日本でブレイクしたからといって、それを水増しし続けて作品を重ねていくことを選ばなかった時点で、俺はこのバンドを信用できると思ったし、何よりもソングライティングの能力がアルバムを重ねる毎に向上し続けているんだから‥‥そこに焦点を当てた場合、このアルバムは間違いなく過去最高の完成度を誇る1枚と呼んでいいと思います。

今回のアルバムの面白い点って、俺はそういった楽曲面での向上と、そして「聴く人によっていろんな聴こえ方をする」という点だと思うのね。例えばさ、俺はこのアルバムを「80年代末以降に登場したアメリカン・パンクの流れを汲む」作風だと思ってるのね。ところが、別に人に言わせると「LAメタル的」だと解釈され、また別の人は「オルタナの延長線上にあるダークな作風」と解釈し、またある人は「北欧らしさをこれでもかと強調したポップなロックンロール」と解釈。自分の周りの人間だけでも、これだけバラバラな解釈をしてるわけですよ。で、全員の言ってる意味も理解できるのね。確かにそういった要素も十分感じるし。けど、絶対にそれだけに固執してるわけでもない。恐らくそういった路線を狙ってるようで、実は全く狙っていない‥‥限定しないからこそ人によっていろんな解釈ができ、いろんな魅力が見えてくる。そんなアルバムじゃないですかね、これ。

で、メロディーだけを抜き出してみると、確かに「哀愁漂う北欧さしさを強調」してるようにも感じられる。けど俺の場合、特に今回のアルバムの楽曲を聴いてると、例えばアメリカのBAD RELIGION辺りに共通する色合いを感じるのね。そこから「80年代末以降に登場したアメリカン・パンクの流れを汲む」作風と解釈したんだけど。勿論、BAD RELIGIONだけでなく、いろんなバンドからの要素も感じるわけですよ。それは決して借り物じゃなくて、ちゃんと「BACKYARD BABIESのオリジナル」として昇華できてるからさすがなわけで。

確かに、ここにセカンドにあったようなスピード感が加われば無敵だったかもしれません。けど、2003年の彼らはそれを選ばなかった。何故なら「周りがやってるから」でしょうね‥‥他人と同じことをやっても‥‥っていう「別に俺等はそれがなくても勝ち続けられるぜ?」的な自信の表れとでもいいましょうか、とにかくそんな心強さをアルバム全体から感じるわけ。速い曲もあるにはあるけど、アルバムの核を形成するのはあくまでミドルテンポの楽曲達。ミドルテンポにすることで、更にメロディの素晴らしさを際立たせようという試みなのか‥‥だとしたら、思いっきり大成功してますよね。シングルにもなった「Minus Celsius」という曲があるんですが‥‥これ、完璧過ぎませんか? 前作以降、彼らが目指していたモノの完成形がこれなんじゃないか?と思える程、素晴らし過ぎるんですよ。マイナーキーで、アッパーミドルテンポで、適度に隙間があって、メロウで、ギターがカッコ良くて、男臭くて‥‥俺が今、このバンドに求める要素の全てがこの曲に凝縮されているんです。名曲。名曲中の名曲。誰が何と言おうと絶対に食い下がらないからね。名曲なんだからさ。

勿論、他にもいい曲が沢山あるし、適度にスピード感がある曲も後半に進むに連れて登場するし、前作に引き続きドレゲンがリードボーカルを取る「One Sound」もある。AC/DC的なノリを持つ「Friends」ではゲストとしてマイケル・モンロー(HANOI ROCKS)、今は亡きジョーイ・ラモーン(RAMONES)、昨年のフジロックにも出演したダンコ・ジョーンズ、タイラ(DOGS D'AMOR)、ニナ・パーソン(THE CARDIGANS)、コリー・クラーク(元WARRIOR SOUL)がそれぞれ数小節分の歌詞を書き、それぞれのパートを自ら歌っていて、コーラスにTHE HELLACOPTERSやL7のメンバーが参加しているという、正に曲名通りの「酒呑み友達によるパーティーチューン」に仕上がってるし、ノリ的に一辺倒だった気がする前作と違いかなりバラエティ豊かに仕上げたように感じます。これもアメリカ人プロデューサー、ジョー・バレッシによるところが大きいのでしょう。そして、そういったことが上手く影響したのか、前作以上に「Roll」しまくってる作品に仕上がった。これもスピードを抑えた結果なのかもしれませんね。

多分、このアルバムも賛否両論激しいんでしょうね。けどそれくらいでいいと思いますよ。全然話題にならない/印象に残らないアルバムではない、強過ぎる程の個性を持った作品集なんだからね。



▼BACKYARD BABIES『STOCKHOLM SYNDROME』
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投稿: 2004 02 27 12:00 午前 [2003年の作品, Backyard Babies] | 固定リンク

2004/02/05

JOSS STONE『THE SOUL SESSIONS』(2003)

既にここ日本でもFM局を中心に局地的に盛り上がりつつあるジョシュ・ストーンというシンガー。彼女、イギリスの片田舎に住む16歳の女の子だというのだから‥‥いやはや、恐れ入ったというか何と言うか‥‥

この「THE SOUL SESSIONS」と題された彼女のファーストアルバムは、そのタイトル通り、古き良き時代のソウル/R&Bを、'80年代後半生まれのジョシュが、ソウル界/R&B界の大御所ミュージシャン達と「セッション」することで作り上げられた1枚。どの曲もどこかで一度は耳にしたことがあるんじゃなかろうか?と言えるような、その筋では知られた曲ばかり。ちょっとソウルに疎い人でも、"Some Kind Of Wonderful" くらいは知ってるでしょ? そういったスタンダードナンバーを、とても16歳の白人女性には思えない程ディープでソウルフルな歌声で自分のものにしてるんだから、もうなんて言ったらいいのか‥‥日本に数百万人はいると思われる「自称・ディーヴァ」系の方々。ジョシュの爪の垢でも煎じて飲んで、もうちょっと控えめに生きていきなさいって!

例えば、ソウルやR&Bの世界に疎い俺からすれば、ベティ・ライトとかアンジー・ストーンなんて人は「音は聴いたことないけど、名前くらいは知ってる」っていう存在でして、その凄さを実感してないからこそ「超有名なアーティストがプロデュース!」という付加価値は俺にとって意味がないもの。そりゃ、ここでカバーされてるアレサ・フランクリンやカーラ・トーマス、THE ISELY BROTHERSは知ってるし、実際ここに入ってる曲の原曲を知ってるものも多い。だけど、俺にはその辺の重みって殆ど意味がないものでして‥‥単純に「ソウル/R&Bとして以上に、ロックやポップスとしても十分に機能するアルバム」なのですよ。きっとそれは、ラジオでいきなりTHE WIHTE STRIPESのカバー "Fell In Love With A Boy" が流れてきて、俺の中にもの凄い勢いで飛び込んできたからでしょうね。曲が終わってから、これが噂のジョシュ・ストーンの曲だと知って、2度驚いたわけ。以前、うちのサイトのニュースで取り上げたことがあって、その名前は知ってて、しかもWHITE STRIPESのカバーもやってるってのも頭に入ってたから、余計にね。

タイプはちょっと違うけど、マライア・キャリーのファーストアルバムを初めて聴いた時に似たような衝撃を受けましたね。マライアの場合は純粋な意味でのR&B調ポップスと呼べるけど、ジョシュの場合は‥‥ドンズバのソウルをやってるはずなんだけど、もっといろんな可能性を感じさせる作風のアルバムだなぁ、と。全編生バンド(しかも名うてのミュージシャンばかり)ってのも大きいし、アレンジがシンプルながらもズシンとくるものばかりってのも関係あるでしょう。とても16歳の女の子相手のバンドとは思えませんよね? 30代半ば辺り‥‥それこそシェリル・クロウとかあの辺にも共通する色を持ってるし。また曲によっては、昨今流行のリバイバル・ロックにも通ずるし。そう、彼女の登場は必然だったんでしょうね。時代に呼ばれた人だったのかもしれません。

とにかくね、"Fell In Love With A Boy" がカッコ良すぎて‥‥THE ROOTSのメンバーが参加してたりするんですよね、これ。あと、ラストの "For The Love Of You Pts.1&2" での「歌」とか。全編がハイライト。そりゃ16歳なりの「未熟さ」を感じさせる瞬間もあるにはあるんだけど‥‥それが何?っていう感じですかね。そんな「重箱の隅をつつく」ようなことを言ってるような人達は放っておいて、純粋に楽しめばいいと思いますよ。だってさ、これが1作目なんだから‥‥5年後とか10年後って、ホントどうなってるんだろうね‥‥ゾッとするね。

デビュー作が完全カバー集だったこともあり、まだまだ彼女の方向性とか本当の魅力がピンボケしてるようにも思えますが、それは今後彼女に付いたプロデューサーの仕事次第ですよね。折角ベティ・ライトみたいな大物が彼女を支えてるんだから、彼女が曲を書き下ろしてもいいし、あるいは‥‥それこそWHITE STRIPESのジャック・ホワイトが書き下ろして、このアルバムのメンツでアレンジしてみてもいいし。カチッとした個性がまだない分、可能性だけは尽きないですね。ホント、先々が楽しみな人が現れましたよ‥‥



▼JOSS STONE『THE SOUL SESSIONS』
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投稿: 2004 02 05 03:27 午前 [2003年の作品, Joss Stone] | 固定リンク

2004/01/22

Cacoy『human is music』(2003)

  dj klockとsaya(tenniscoats等)とueno(プカプカブライアン等)によるエレクトロニカ・ユニット、Cacoy(「囲」の意)が'03年4月に発表したファースト・フルアルバム「human is music」。エレクトロニカと一言でいっても、その中にもいろいろと細分化されたジャンルがあるようでして、ヒップホップ的なものから完全に室内での観賞用に作られた厳かなものまで、今では多種多様なスタイルが存在しているようです。ただ、少ない経験ながらも「あ、こういうのもエレクトロニカだよな?」なんて聴いて理解できるものもありまして‥‥今回紹介するCacoyの音楽性も正にそれといえるものなのではないでしょうか。

  個人的にはdj klockがどういう仕事をしてきたか、そしてtenniscoatsやその他のバンドがどういう音楽性なのかという事前情報は一切知らず、単純に「CD屋で試聴したら、気持ちよかった」から買ったアルバムなんですね。もう、ホントそれだけ。このアルバムが現時点においてもどういった評価がくだされているのか?なんてのも、全然知らないわけで。ま、そもそも興味ないですからね、メディアのその手の評価は。

  これはね、もう完全に「リスニング用のエレクトロニカ」と言っていいと思いますよ。勿論、作り手本人達はそういった意識の元、これらの音楽を創造していないのかもしれませんが、俺自身はそういう目的‥‥つまり、自分の部屋で深夜、リラックスしたい時に聴く音楽‥‥でこのアルバムを聴いていますからね。確かにエレクトロニカ特有の、あのピキピキしたサウンドはここにも含有されているんですが、特にそれが神経を逆撫でるようなこともなく(例えばエイフェックス・ツインみたいにね)、全体的にダウナーなノリということもあり、聴いていて高揚感を得るような感じではない‥‥だけど、気持ち良くて何度も聴いてしまう。

  多分その理由は幾つかあるとは思うんですが‥‥最大の理由は、エレクトロニカだけど人の暖かみを感じる音だから。勿論電子音がそこら中に振り撒かれているわけですが、そこに同じくらい同居する生楽器‥‥サックスやトランペット、更にはsayaによるボーカルの存在が大きいのです。最近、こういった生楽器を導入したエレクトロニカをやってるユニットを見かけますが、このCacoyもその一連の流れにいるユニットといっていいんでしょうね。個人的には‥‥ちょっと路線的には違うけど‥‥アイスランドのMUM辺りと同じ匂いを感じるんですよ。だから気に入ってるのかな‥‥

  よく「テクノには人間が作り出すサウンドみたいに、人の暖かみを感じない」という声を耳にしますが、確かにそうかもしれない‥‥けど、こういう方法もあるんだよな、と。これは純粋なテクノミュージックではないし、正直エレクトロニカと呼ぶに相応しいのかどうかも判りませんが‥‥けど、聴いていて気持ちいい、暖かい何かを感じる。それは間違いない事実なんですね。個人的にはそれで十分じゃないかな、と。難しいこと考えすぎて、その音楽本来の良さを見過ごしてしまうのは、ちょっと勿体ないですもんね。



▼Cacoy『human is music』
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投稿: 2004 01 22 12:00 午前 [2003年の作品, Cacoy] | 固定リンク

2004/01/17

THE PLAYMATES『LISTEN!』(2003)

  姫路が誇るパワーポップ/ギターポップバンド、THE PLAYMATESが約1年振りに発表する通算4作目のフルアルバム「LISTEN!」。このアルバムの3ヶ月前には、ここにも収録されている "IF" や "BABY LOVE" の「STEREO VERSION」や、ニール・セダカやキャロル・キングといった王道ポップクリエイター達のカバーを含む全6曲入りのミニアルバム「A SESSION WITH THE PLAYMATES」をリリースしていて、結成10周年を迎える2003年は本当に精力的に活動していくんだな?というのが伺えて、ファンには嬉しい限り。しかも、そのどれもが本当に素晴らしい楽曲ばかりなのだから、さすがとしか言いようがないですよね。暫く活動が停滞していた時期があっただけに、ここ最近の充実振りには正直嬉しいものがあります。

  上にミニアルバムでは「STEREO VERSION」なんてことを書きましたが、この「LISTEN!」というアルバム、ジャケットにも表示されているように「モノラル」なんです。今やギターの振り分けとかドラムのタムタムやシンバルの位置が全てステレオ録音によって、まるで目の前で演奏されているかのように実感することができるわけですが、録音技術が乏しかった'50~'60年代の録音物はほぼ全部「モノラル録音」だったことはご存知でしょう。BEATLESのアルバムひとつをとっても、ある時期から急に「モノラル」から「ステレオ」に切り替わっていたり、あるいは「疑似ステレオ」なんていうのまである始末で。ステレオ録音は勿論、現代の音楽界ではごく当たり前と思われがちですが、そんなの誰が「当たり前」って決めたんですかね? そういったセオリー通りの音楽、面白くないよね?

  このTHE PLAYMATESはそういったセオリー通りに面白みを感じなかったから敢えてモノラルにした‥‥のではないと思います。これはもう単純に趣味の問題であり、自分達のサウンドに一番フィットする録音方法/表現方法だったから、時代に逆行するかのような技術を採用したんでしょうね。ていうかさ、3ピースのロックバンドが至極シンプルなそのサウンドを、ライヴ感そのままに録音物に閉じ込めようとした場合、実はこういった方法が一番伝わりやすいんじゃないかな‥‥なんて思うんですけど、どうでしょうか? 勿論人それぞれ、趣味も好みも違うから、一概にはそれが正論とは言い難いですが‥‥そして、それが合っているバンド/似合わないバンドが存在するのも事実。単純にTHE PLAYMATESの場合、見事にその方法とサウンドが合致したわけですよ、奇跡的に。

  このバンドのサウンドを言い表す時、必ず「マージービート」だとか「リバプールサウンド」といったキーワードが出てくると思うのですが、勿論そういったものをルーツに持ちつつもただ再現するのではなく、ちゃんと同時代性‥‥全員が20代後半~30代前半ということもあり、パンクやガレージ等を通過してるはずなので‥‥も表現しつつ、彼らなりの表現方法で「THE PLAYMATESらしいロックンロール」を展開しているわけです。歌詞は全て英語、2声~3声によるコーラス、シンプルな演奏、甘くとろけるようなメロディ、全部2~3分以内で収まる楽曲(アルバム自体も12曲で30分ちょっとという聴きやすいランニングタイム)。これだけ書くと「そんなの、似たようなバンドが腐る程いるじゃないか?」と返されそうですが、確かに。けどさ、聴いてもらえば判ってくれるはず‥‥決して勢いとかで押し切るタイプではなくて、あくまで「メロディ・歌(コーラス)・演奏」で勝負するバンド。そして聴いて納得してしまう説得力。伊達に10年もやってないな?と思わされるわけですよ。確かに初期はもっと勢いがある楽曲をやってたりもしたんでしょうけど、例えばTEENAGE FANCLUBがどんどん轟音から鳴りを潜め、「静かなる攻め」を突き詰め始めたのと同じものをTHE PLAYMATESからも感じるわけです。

  とはいっても、彼らはTFCよりもまだまだ若いですから、完全に「枯れて」しまうには勿体ない。若さ故に表現できるものもあるわけで、そういった楽曲もちゃんと収録されている。映画「アメリカン・グラフィティ」の中のダンスタイムで流れてきそうな楽曲から、ストレートでスピード感をちゃんと伴ったロックチューンまで。「ポップ」というキーワード繋がりで約30数分、全く飽きさせない至福の時を与えてくれるアルバム。それがこの「LISTEN!」という1枚。日本のインディーシーンには有名無名問わず、まだまだ素晴らしいバンドが沢山いるんです。チャートやテレビ、雑誌だけが全てじゃないってことがお判りいただけると思いますよ、特にこのアルバムを聴いてしまうとね!



▼THE PLAYMATES『LISTEN!』
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投稿: 2004 01 17 12:00 午前 [2003年の作品, Playmates, The] | 固定リンク

2004/01/11

BON-BON BLANCO『バカンスの恋』(2003)

  BON-BON BLANCOが'03年6月にリリースした、通算5枚目となるシングル「バカンスの恋」はこれまでどのシングルとも違った、非常に「聴かせる要素」が強い作品に仕上がっています。3月にリリースされたファーストアルバム「BEAT GOES ON」以降最初のリリースとなるわけですが、決して路線変更というわけでもなく、かといって前作の延長線上にある楽曲と言い切るにはちょっと違った、非常に深みを持ったタイトル曲 "バカンスの恋" と、アルバム収録曲の中でも1~2を争う完成度の高さを誇るバラード "The sea of the time" の2曲から成るこのシングルで、ボンブラはまた新たなステップを踏み出したと言っていいでしょう。

  ラテンテイストという共通項を持ちながらも、それまでのシングル曲とは違った趣きの "バカンスの恋" は、アイドルポップという枠をはみ出しつつあることを伺わせる、非常に完成度の高い1曲に仕上がっています。こういう傾向はアルバムを聴いた時点で見え隠れしていたのですが(その顕著たる例がカップリングにも収録された "The sea of the time" でしょう)、その傾向はこの曲で一気に進んだと言っていいでしょう。この曲が誰の曲だか知らずに聴いたとして、一体どれくらいの人が「アイドルグループの曲」だと判るでしょう? そういう楽曲なんですよね、これ。残念ながら某歌番組での悲しい弄りのイメージの方が強かったためか、曲自体が話題になることは殆どありませんでした。同時に古参のファンからは「ちょっと‥‥」という声も聞こえてくる程。確かに「アイドル」としての彼女達が好きだった人にとっては、この曲の路線はちょっと違うのかもしれませんね。けど、個人的にはこういう路線に進むこと、大歓迎です。決して「アイドル」だから悪いのではなくて、良い意味での差別化を図るためにも必要かな、と思うのです。現在、アイドルグループで成功を収めているのはモーニング娘。を含む一部のハロー!プロジェクトの面々と、「バンドル(バンド・アイドル)」という形態を取るZONEくらいでしょうか。そんな中に食い込んで行くには、ラテンの要素の他にも「完成度の高い楽曲」という要素が重要になってきます。そりゃデビュー時の路線のままで成功を収めるのが一番良いのですが、「キワモノ」「色モノ」で終わらないためにも「こういう曲も歌えるんだよ!」というのを誇示しておく必要があったのかなぁ、と。リリースから半年以上経った今、この曲を聴いて改めて思うわけです。

  別にアーティスト路線で売ろうとは考えてないはずなんですよ、製作陣も。確かに "バカンスの恋" といい "The sea of the time" といい、普通にJ-POPとして通用する楽曲ですけどね。じゃなかったら、これに続くシングルをアニメ「ワンピース」主題歌にぶつけるという大ネタをかましたりしないでしょうしね(ま、思った程このシングルが売れなかったから、また路線を変えた/戻した、というのも考えられますけど)。とにかく曲としては非常に優れた2曲なので、もしボンブラに興味を持ったなら、まずはこのシングルから聴いてみては如何でしょうか?

  とにかくね‥‥アルバムで聴いた時から既に名曲だと感じていた "The sea of the time"。これだけでも是非聴いてみてください。正直、こっちがA面でもよかったんじゃないかと思える程なんですよ。あ、タイアップ取ってきて両A面ってのもありだったかも。それだけに、本当に勿体無いなぁ‥‥とも思うわけで。一回生で歌う姿を観てみた1曲ですね。



▼BON-BON BLANCO『バカンスの恋』
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投稿: 2004 01 11 12:30 午前 [2003年の作品, BON-BON BLANCO] | 固定リンク

2004/01/09

JEFF BECK『JEFF』(2003)

改めて実感するのは、やはりジェフ・ベックというオッチャン(というか爺サマ)の貪欲さ‥‥勿論そのプレイの凄さや醍醐味については書くまでもないと思うんだけど‥‥多分何の説明もなしにこのアルバムを聴かせたら、大体の人は「どこぞの若手インダストリアルユニット?」とか「新手のデジロック」「ダンス界の新星」なんて言っちゃうのかも。そういった要素を持ち、見事に消化しきっているのが、この「JEFF」というアルバム。

ある意味、ここ数作の集大成ともいえる作風だし、尚かつ更に前を見据えている作品と取ることも出来る。とにかくひとつ言えるのは、過去2作‥‥「WHO ELSE!」や「YOU HAD IT COMING」よりもこなれてきたという点。勿論その2作でも、ただの借り物では済ませられない程の完成度を見せていた「ジェフ・ベック流テクノ」ですが、ここで一旦完成型を見せ、それでいて更に最新型の武器を披露するという、とにかく凄いアルバムなのですよこれ。

ブルーズあり、サーフミュージックあり、ファンキーあり、ヒップホップあり、フュージョンあり、ハウスやテクノ系あり、インダストリアルあり、といった具合にとにかく雑多。けど、その根底にあるのは「踊る」という行為そのもの。つまりはダンスミュージックなわけですよ。如何に聴き手を踊らせるか、それが彼の根底にある重要なファクターのひとつだと思うんですね。JEFF BECK GROUPでもいいし、その後のソロ活動でもいいし、とにかくいろんな要素のダンスミュージックを、その時その時で違った方向性・違った手段で料理してきたベック。しかも「流行に乗って借り物的に手を出してみました」的な胡散臭さがあまり感じられず(中には失敗作もあるんだけど)、やるからには常に追求する男、ジェフ・ベック。とくに「テクノ三部作」と呼ばれている「WHO ELSE!」以降の流れは圧巻で、完全に時代とリンクしているんですよね。UNDERWORLDやTHE CHEMICAL BROTHERS、PRODIGYといったダンスユニットがオーバーグラウンドへ浮上したのと同時に、ベックもああいった作風のアルバムを制作する。しかも若手との作業を経て、どんどん若返っていく。

今回の作品でも前作で起用したアンディ・ライトを筆頭にCURVEのディーン・ガルシア、APPOLO440、デヴィッド・トーン、ミー・ワンといった有名・無名アーティスト達と共同作業で制作にあたってるし。バックトラックを作るのがそうった若手達なんだけど、最終的にはその上にベックの自由奔放なギターが乗ることで完全に「ジェフ・ベックの作品」へと昇華していく。さすがというか何というか。やっぱり凄いオッサンですよこの人。

一時期エリック・クラプトンがテクノロジーに興味を持って、そういった方向に片足を突っ込んでいた時期があったけど、結局あの人はブルーズの人なんですよね。最終的にはそこに戻っていく。けどそれは決して保守的というわけではない。方やジミー・ペイジはひとつのスタイルの中でいろんな可能性を見出そうとしてきたけど、ここ20年くらいは完全に停止してしまってる。はっきり言っちゃえば保守的‥‥なんだろうね。けど、それだからこそ彼は支持されるのかもしれない。そしてジェフ・ベック‥‥この人の事を好きだという人は、一体どういった音楽を愛する人達なんでしょうね? オールドロックのファン? ギターキッズ? それともダンスミュージック好き?? 何かよく掴めないんだけど‥‥間違いなく言えるのは、60歳を間近に迎えても尚、このオヤジは守りに入らないという事実。一体何時までこの進化を続けるのか、とくと見届けていこうではないですか。



▼JEFF BECK『JEFF』
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投稿: 2004 01 09 03:00 午前 [2003年の作品, Jeff Beck] | 固定リンク

2004/01/03

クレイジーケンバンド『777』(2003)

  2002~2003年は何かと話題になることが多かったクレイジーケンバンド。テレビCMでのタイアップや地上波音楽番組への出演、更にはテレビドラマへの出演や和田アキ子への楽曲提供&プロデュース等、他ジャンルのアーティストとのコラボーレート等々。とにかくサブカル界だけでなく、段々とその名前や風貌、そして音楽が一般のシーンへと浸透しつつあったのが2003年だったように思います。

  そんなCKBの人気を決定づける為に発表されたのが、通算5作目となるアルバム「777」。既に前作「グランツーリズモ」でその下地は出来ていたし、そこへ間髪入れずに連続リリースされた一連のシングルがチャートのトップ20入りしたり等、注目だけでなく結果が伴い始めていた時期でのアルバムリリースで、見事14位という結果を叩き出したのでした。それまでは「大人が熱狂する、大人のためのロック」なんて触れ込みで語られることの多かった彼等が、10代~20代の子達にも受け入れられることになったのです。正に「昭和歌謡」的なものが新しいと持てはやされていた時期と見事合致したのも多きかったといえます。

  が、CKBの魅力はそんな型にはまったものだけじゃないんです。それこそホットロッド調ロックンロールあり、ジミ・ヘンドリクスばりのブルージーなヘヴィロックあり、お洒落なポップソングやボサノヴァあり、以前にもコラボレートしているRhymesterと再共演したヒップホップ調あり、ダニー・ハザウェイやマーヴィン・ゲイも真っ青なエロR&Bあり、とにかく何でもあり。それら全てを指して‥‥俺は「大人のパンクロック」と呼びたいですね。そんな型破りなところ、正にパンクじゃないですか。あのダンディな風貌で、こんなことやっちゃうんだから‥‥カッコイイったらありゃしない。

  とにかく、これだけいろんな要素をひとつのバンドの中に取り込もうとすると、普通は散漫になってしまいがちなんだけど、そこは百戦錬磨の大人。とにかく何をやっても「CKB風」ロックとしてちゃんと成立しているのは、さすがとしか言いようがないです。バンドとしての力量もとにかくハイレベルだけど、やはりここは横山剣というソングライターの突出した才能、ここに注目したいところです。10年近く前から特に変わったことをやってるわけじゃない。つまり、いろんな要素を取り込みつつも、根底にあるものは頑固一徹に守り通した。その結果、時代が彼等に追いついた‥‥横山剣やバンドがその間にやってきたことはといえば、個々の力量に磨きをかけることと、如何に聴き手を惹き付けるか・楽しませるか、ということ。それらに対してちゃんと結果が伴うようになったのが、ここ数年ということなんでしょう。ホント、全てはタイミングなんだなぁと思わずにはいられませんね。

  途中に入る寸劇的なジングルも面白いし、何よりも箸休めとして十分機能している。70分強、全21曲というかなりの長丁場なんですが、全く飽きさせないのはそういったバラエティ豊かさ、それらを説得力を持って聴かせるバンドの力量からなんでしょう。勿論、魅力的な歌声や歌詞もですけどね。

  ここまでくると、次はどんな楽曲を聴かせてくれるのか‥‥と期待が大きくなるばかりですが、次のアルバムはどうやらベストアルバムになるようです。オリジナルアルバムに未収録のシングル曲、沢山ありますしね。ここらでひとつ大きな区切りをつけるのもいいでしょうし、そういった入門編的作品をこの時期に発表して、更にファンを増やすことにも一役買うことでしょう。とにかく、本格的大ブレイクを前に、今一度この最新作で予習しておくのもいいかもしれませんね。2003年の10枚には選ばなかったものの、これも年間通してよく聴いたアルバムの1枚です。



▼クレイジーケンバンド『777』
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投稿: 2004 01 03 12:00 午前 [2003年の作品, クレイジーケンバンド] | 固定リンク

2004/01/01

Cocco『Heaven's hell』(2003)

  Coccoが約2年振りに帰ってきた‥‥いや、正確には「帰ってきた」と言い切れないもどかしさを伴う、人前への登場といった方がいいのかな? とにかく、2001年4月に我々の前を去った後、一切の音楽活動を中止していた彼女が、再び自分の音楽を、自分の言葉で表現し始めた。個人的にはそれだけで十分なんだけどね。

  2003年8月15日。正に「日本中でみんなが黙祷する日」に、彼女は我々に対する問題提議を伴い戻ってきた。真新しい楽曲と、百数十人の子供達を引き連れて‥‥それがこのDVDの中で歌われている "Heaven's hell" という楽曲。たった1曲の新曲ではあるけれど、この時の生演奏会では約10分に及ぶ長丁場を、素人同然の子供達と共にやり遂げ、聴き手を十二分に惹き付ける、本当に素晴らしい歌と演奏を我々に見せて/聴かせてくれたのでした。この映像を最初に目にしたのは、同年8月末のTBS系「NEWS23」での特集にて。約30分に及ぶドキュメント(舞台裏やメイキング、そしてCoccoとのインタビュー等)の中で、彼女が何故2年前に音楽活動を中止したのか、そして何故再び人前で歌うことを選んだのか、それらが彼女の言葉で語られています(勿論今回のDVDの中にもその場面は収録されています)。

  このDVDはその番組、そして沖縄のテレビ局で放送された同イベントのドキュメントを合わせ、市場流通用に再編集した、約60分に及ぶドキュメントDVDです。当然イベント当日の歌の模様も完全収録されています。

  しかし、ここで注目すべきなのは‥‥実は彼女の新曲についてではなく(それはまた別の機会にちゃんと語りたいと思います)、何故彼女が「歌」と「ゴミ拾い」を結びつけたか、そしてそこに向かわせたかなんじゃないでしょうか。勿論その答えの全てがこのDVDの中に存在するのですが‥‥ま、俺が改めて書くまでもないので、とにかくあなた自身の目で確認してもらいたいな、と思います。

  自分の住んでいる場所もまた、海に囲まれています。夏になれば海水浴客やリゾート客で栄える、それなりに名の知れた町のようです。が、決して綺麗な海ではありません。昔は綺麗だったんです。けど、段々と汚くなっていった。勿論、そういった観光客が汚した結果がそれ、とは言い切れません。地元に住む人達による汚染だって間違いなくあります。いろんな要因が重なり合った結果が、今の汚い海なんでしょう。

  よく自分が子供の頃‥‥小学生の頃だったかな? 海開きの前になると必ず、土曜の午前中を使って近くの海水浴場へ行って、砂浜のゴミ拾いをするんです。観光客が捨てていった空き缶やビニール、家庭ゴミ等。酷いモノになると使用済みのコンドームとか‥‥勿論、全部が全部観光客が捨てていったものではなく、中には他の海からたどり着いたゴミ‥‥明らかに余所の土地にしか存在しない品物だったり、あるいは海外から漂着したゴミだったり‥‥そういったものを「何で僕達が拾わなくちゃいけないんだろう?」といった疑問を抱きつつ、強制的に拾わされていました。全ては「観光客に気持ちよく海を使ってもらえるように」と‥‥

  このDVDを観たとき、そういった子供の頃に感じた違和感をふと思い出しました。けどもし今、同じようなことを強いられたとしたら‥‥多分あの頃とは違った考えの下、ゴミ拾いをすると思います。そういえば以前、女の子と地元の海に行った時、あまりにゴミが凄かったんで無意識のうちにゴミ拾いしてたんですよ。遊びながらですが。そしたらね、その子は俺に言うわけですよ‥‥「なんでそんなことするの?」って。自分にとっては落ちてるゴミを拾うことは、普通のことなんですよね。フジロックとか行くとそうでしょ? まぁ落ちてるゴミを拾わないまでも、絶対に自分からゴミをゴミ箱以外に捨てようなんて思わない。あんまり酷い散らかりようだったら無意識のうちに拾ってしまう、みたいな。その感覚だったんですよね。けど、そんなこと知らない普通の子達にとっては、むしろゴミを捨てる方が普通の感覚で、拾うなんて恥ずかしい行為、あるいはバカみたいに映るわけですよ、極端な話。それを改めて認識した時、ちょっとショック受けましたね。だってさ、自分らの海じゃないか、って。誰のものでもない、だけど俺らの海なんだよ、って。説明しても無駄だと思ったから、その場はそのままやりすごしたけど。後になって、その時にそれを説明できなかった自分に腹立たしく感じたりなんかしてね‥‥

  DVDの内容から脱線してるように見えるかもしれないけど、つまりはそういうことなんです。このDVDを観るってことは、そういった問題意識と向き合うこと。決してCoccoは「沖縄に来てゴミ拾いをして」と言ってるんじゃないんですよ。それぞれ身の回りで、個人レベルで出来ることをやっていこう。それを考える切っ掛けを我々に与えてくれてるんですよ。そういったことを判りやすく伝えるために、彼女は今回「歌」に託した。イベントのサブタイトルにあるじゃないですか、「もしも歌が届いたら 海のゴミを拾ってね」って。海じゃなくてもいいんですよ、山でも、川でも。もっともっと、身の回りの自然を大切にして欲しい。そうすることが、いろんなことに繋がっていくと、彼女は信じてるんです。それが最終的に世界平和に繋がるんじゃないか、と‥‥

  歌が世界を変えることは不可能でしょう。ジョン・レノンも成し得なかったんだから。けど何度も書くけど、世界は変わらなくても人間の意識を変えることはできる。大きな成果は得られなくても、個人レベルの小さな変化をもたらすことは可能なんです。だって、この "Heaven's hell" という曲を聴いて心動かされた人、沢山いるでしょ? それはあなたの心の中にある「何か」が動かされたからでしょ? それをそこで終わりにして欲しくないんです。考えることをそこで放棄して欲しくないんです‥‥彼女はそう言いたかったんじゃないかな‥‥

  最後に‥‥ちょっと話題から逸れちゃいますが‥‥このDVDを観ていて何度か涙してしまうシーンがあったんですが、個人的に最も涙を堪えきれなかったのは、彼女が子供達の前であの "Raining" を弾き語りするシーン。勿論そこに至るまでの会話込みで、ですが‥‥とにかく全てを観て欲しいです、音楽のみではなくね。



▼Cocco『Heaven's hell』
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投稿: 2004 01 01 12:00 午前 [2003年の作品, Cocco] | 固定リンク

2003/12/30

宇多田ヒカル『COLORS (EP)』(2003)

結局、今年宇多田ヒカルがリリースした音源はこのシングル1枚、しかもカップリングの "Simple And Clean" はその前年春リリースした "光" の英語バージョンでバックトラック自体は殆ど一緒だし。ということは、2003年は "COLORS" 1曲しかこの世に出さなかったことになるのか。2002年初夏に発表したサードアルバム「DEEP RIVER」前後から、入院~長期休養~結婚~成人と私生活でいろいろあったわけで、それを尊重しての音楽活動スローペースだったんだろうけど、ファンとしてはちょっと淋しいところ。いや、ファンだなんて言ったら烏滸がましいかな。彼女の歌は大好きだ、って意味なんだけど。

というわけで、2004年はその分を取り返すかのように武道館5デイズ、新曲&アルバムリリース、全米デビュー等目白押しなんだけど‥‥まずそのまえに、現時点で唯一の『「DEEP RIVER」後』であるこのシングルについていろいろ語ってみたいと思います。

正直なところ、このシングルを初めて聴いた時はちょっとだけ肩透かしを食らったな、と思ったのを覚えてます。例えばカップリングの "Simple And Clean"("光")と比べてみてもいいんだけど、バックトラックが今までよりも弱いかな、という気がしたのね。勿論彼女の歌や歌詞に関しては文句なし。というよりも、彼女に関しては共感する/しない以上に大きなパワーを『歌』から感じるわけ。勿論内容がない歌をうたうことはまず考えられないんだけど、だからこその大前提があって、その上でバックトラック云々という話をしてますので、ご了承を。

インスト・バージョンを聴いてもらえば判ると思うんですが、全体的に少し古い印象を受けるんですね‥‥時代がひと回りして、こういった'80年代~'90年代前半的な打ち込みサウンドが今では、新しいとまでは言わないもののかなり新鮮に聞こえるような時代になっているのは確かなんですが、それにしても‥‥ちょっと安直過ぎないか?って思える程にチープな印象を受けたんですよ。で、リリースから約1年近く経って、CDだけでなくテレビで歌う姿やCMソングに起用されたりして、ずっと耳にする機会があったわけですが、やっぱり慣れって怖いですね。最初に感じた違和感が今では殆ど感じなくなってるわけですから。というよりも、テレビで聴くとそういったバックトラックよりも歌に耳が行ってしまうんですよね。ショボイから耳に入らない、というのもあるんですが、やっぱりそれ以上に宇多田ヒカルの「歌の存在感」なんでしょうか。あのブレイク後に飛び込んでくる彼女の歌声、このインパクトが全てな気がしますね、この曲は。

方や "Simple And Clean" は、"光" という「既に存在するヒット曲」が先に世に出てしまったこともあり、そちらのイメージが強かったわけですが、こうやって聴くと同じようでいて全く違う印象を受けますね。特にサビ部分はメロディを歌詞に譜割り等に合わせてるせいか、歌い回しがかなり変わってる部分がありますし。慣れないうちは違和感があったものの、決してそれは「良くない」という違和感じゃなくて、単純に "光" のイメージが強いせいで感じるものだったんでしょうね、暫く聴いていると全く違和感を感じなくなったし。これも慣れのひとつなのかもしれませんが、逆に今度は "光" の方を聴くと違和感があったりしてね。まぁどっちの方が好き、という明言は避けますが(だって選べないしマジで)、人の好みによって好き嫌いはあると思いますよ。英語でカッコイイっていうのもあるでしょうし、日本語じゃなきゃ伝わらないって人もいるでしょうし。

最後に "Simple And Clean" のリミックス。正直リミックスに関してはそこまで詳しい人間じゃないし、まぁ浜崎あゆみみたいに無駄なリミックスが多いのと比べれば、まだマシな気がしますけどね。本来、こういったリミックスってクラブで使われることを前提として作られたものでしょ? それがいつの間にか「こういうアーティストにリミックスしてもらいました」的品評会の場に変わっちゃってる気がするんですが‥‥そっちが正解なの? いや、面白ければ全然いいんですけどね。で、今回のヒッキーのやつは‥‥まぁ可もなく不可もなくといった印象。テンポを上げて、かなりダンサブルな印象が強くなりましたが、まぁ別にいいんじゃないの?くらいの感想しか出てきません。普通にクラブとかで聴いたら気持ちいいのかもしれないけど、これを書いてる今は自室で素面状態なので。これ以上何とも言いようがないというのが本音です。

とまぁ辛口なコメントもしつつ、いろいろ書き連ねてきましたが‥‥これ1曲で次の作品集を占うことは不可能ですよね。シングルが何枚かあって、初めて見えてくるものが今まではあったのですが、今回に関しては‥‥次のアルバムって全米デビュー用の英語アルバムでしょ? じゃあこの "COLORS" はちょっと別路線なんじゃないかな? このままの色合いで日本市場向けの作品を作るってわけじゃないでしょうし‥‥だからといって "Simple And Clean" の路線で行くとも思えないし(これもある意味日本市場向けですしね)。何とも先が読めない彼女でありますが、とにかく今言えるのはただひとつ。ライヴ楽しみだ、と。そして‥‥どんなタイプであろうと、彼女が生み出す楽曲が楽しみで仕方ない、と。もうそれだけですよ。



▼宇多田ヒカル『COLORS (EP)』
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投稿: 2003 12 30 12:00 午前 [2003年の作品, 宇多田ヒカル] | 固定リンク

2003/12/29

RAGE AGAINST THE MACHINE『LIVE AT THE GRAND OLYMPIC AUDITORIUM』(2003)

RAGE AGAINST THE MACHINEの、結果としてはラストライヴとなってしまった'99年9月12&13日に行われたロサンゼルス「THE GRAND OLYMPIC AUDITORIUM」での模様を収めたライヴアルバム。あの衝撃的な解散('00年秋にボーカルのザック・デ・ラ・ロッチャ電撃脱退)から丸3年経った今年11月(日本では12月)に発売ということで、その3年の間に彼等を知った、あるいは結局彼等のライヴを体験することが出来なかった人にとっては正に「待望の~」「衝撃の~」ライヴ音源ということになるのではないでしょうか?

日本では初回限定版としてライヴCDにライヴDVD(9/13ラストライヴの模様を完全収録)をセットにした形でリリースされていますが、海外ではCDとDVDは別売りになってます。しかもUSのDVDはリージョンコードの関係で、家庭用DVDプレイヤーでは観れないと思いますので、無くなる前に是非日本限定版をゲットしてもらいたいと思います。

だってさ、この音源だけを聴いてたら‥‥絶対に絵を見たくなるもの。こんな凄い音を出すバンド、一体どんな風にステージで音を出してるのか、そして客席は一体どうなっているのか‥‥ってさ。少なからず彼等に興味を持っている人、そしてこの音源で初めて彼等の音に触れた人なら絶対にそう思うはず。だけどバンドは既に解散している。もう二度と観れない。ならば‥‥DVDで体感したいですよね?

まぁ今回はライヴCDの方のレビューってことなので、そちら中心で話を進めていきます。俺がライヴ盤大好きなのは以前から何度も、いろんな所で書いてますが‥‥今回の場合、ライヴ盤としての役割以上に‥‥例えば「ベスト盤」としてのカタログ的役割も大きいし、そして何よりも「ラスト音源」‥‥バンドとしての最後の様子を実況しているという記録的役割も非常に大きい。まぁ純粋なラストライヴはDVDに完全収録されているわけで、このCDの方は2日間同会場で行われたライヴからベストテイクを拾って編集した内容なので(だからセットリスト的にもちょっと変わってくるし)、そういった意味では実況中継というよりも、よりベスト盤的要素が強いように感じられます。選曲にしても各アルバムから非常に良いバランスで演奏されてますし。当時はリリースされていなかったカバー集「RENEGADES」からも入ってるし。セカンド「EVIL EMPIRE」から2曲しか選ばれていないのは、まぁ仕方ないでしょう。このアルバムのみ意外と評価が低いんですよね。俺はこのアルバムから彼等に入っていったわけですが、実際聴く頻度としては実は一番低いし。ある時期からのライヴでも事実、セカンドからは2曲("People Of The Sun" と "Bulls On Parade")しか演奏してないですしね。出世作ではあるものの、バンド自身もこのアルバムに対してはちょっと‥‥という思いがあったのでしょう。まぁ‥‥そうはいっても他のバンドとは一線を画する、非常に優れたグルーヴィーなアルバムだと思いますけどね。

所謂『ラップメタル』だとか『ラウドロック』と呼ばれるジャンルの先駆者的存在として語られることが多いレイジですが、その後に登場する他のバンドと比べれば明らかに異質です。それはこのライヴ盤を聴けば更にご理解いただけると思います。ギターにしても音使いが全く違うし、リズムもヘヴィメタルというよりはファンク/ブラックミュージックのそれに近い。LED ZEPPELINとDEEP PURPLEが同じようで実は全く異なるタイプのバンドだ、というのと同じだと思うのですよ。例えば‥‥KORNでもいいしlimpbizkitでもいい。そういったバンドを「DEEP PURPLE側」だとすると、レイジは明らかに「ZEP側」の立ち位置にいるバンド。勿論音楽性を指して「パープルみたい」「ZEPみたい」と言ってるんじゃないですよ?(ま、判ってもらえてると思いますが)

音楽性という意味でなら、レイジって結局思ってる以上に幅が狭い音楽性だったような気がするんですよ。実際にはもっと多彩だったと思うのですが、それが完全に開花する前に空中分解してしまったのかな、と。事実、分裂前後にリリースされたカバー集ではいろんなジャンルのアーティストの曲を取り上げているわけで、そういったものを消化した新しい音楽が今後もっと生まれる可能性があったはずなのに‥‥なんて書いても後の祭りですが、本当にオリジナルアルバム3枚というのは勿体ない。ま、だからこそ伝説になったのかもしれませんが。

けど‥‥言い方を変えれば、あれが「RAGE AGAINST THE MACHINE」としての限界だったのかも‥‥とも取れるわけで。だからザックはバンドを飛び出してしまったのかもしれないし。う~ん‥‥既に存在しないバンドに対してああでもない、こうでもないと好き勝手に憶測で書くのはよくないのですが‥‥そうでも思わないと納得できない部分が多いんですよ、あの解散劇には。俺、3年経った今でも納得いってないし。

更に納得いかない理由に‥‥俺は日本でのラストツアーとなってしまった'00年6月の公演に、チケットを持っていながら行けなかったというのもあるんですが。これがわだかまりの原因になってることは間違いなんですが‥‥まぁ身内の不幸があったのですから仕方ないですけどね(その当時は残念とかいう気持ちは全くなく、深い悲しみに暮れてましたからね)。それから約5ヶ月後ですよ、解散劇は‥‥幸い俺はその前年、'99年7月のフジロックで体験できているので、一度も観たことがないという人からすればマシなんですけどね。それにしても‥‥やっぱり悔やみますよ、そりゃ。

まぁそんなこともありつつも‥‥このCDを爆音で聴きながら踊ったり暴れたりして、今年1年の嫌な出来事を忘れたいな、と。部屋でチマチマ聴くタイプのバンドじゃないですからね。クラブでもいいし、野外にラジカセ持ってって聴いてもいいし、カーステレオでアホ程デカイ音で聴いてもいいし‥‥誰かと共有したい音ですよね。そうすることでより力強いものを得る。それが彼等最大の魅力だったのではないでしょうか? だからこそ、多くの人にライヴを観て欲しかった‥‥それを是非CDやDVDで疑似体験してみてください。自分の人生観を変えた、大切なバンドですからね。



▼RAGE AGAINST THE MACHINE『LIVE AT THE GRAND OLYMPIC AUDITORIUM』
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投稿: 2003 12 29 05:27 午前 [2003年の作品, Rage Against The Machine] | 固定リンク

2003/12/28

クラムボン『imagination』(2003)

最初に断っておきますが、俺はクラムボンに関しては殆ど素人というか、初心者に限りなく近い存在です。だって聴いたことがある作品が、以前リリースされた再構築盤「Re-clammbon」と今年夏にリリースされたベスト盤だけ。あとは岡村靖幸トリビュートでカバーしてた "カルアミルク" とか、ホントそのくらい。そんな人間が初めてオリジナルアルバムに触れる機会を得た。とにかく前評判が高かったこの5作目のオリジナルアルバム「imagination」なんですが‥‥驚いた、というのが正直な感想。こんなにも判りやすかったっけ!?という、ね‥‥

どうしても彼等に対して俺、小難しいイメージがあったのよ。多分リコンストラクト盤とかから入ったからなんでしょうけど‥‥ポップ職人というよりも、もっとマニアックな世界観を大切にする、そんなユニットのような印象がずっとあって。更に原田郁子さんの声がね、そういう俺の気持ちを増長させるかのようなタイプなわけ。人間ってさ、一度そういった印象持っちゃうと、それが固定観念として残って、暫く聴かず嫌いになったりしない? 正にそれでさ、俺。ベスト盤とか買ってみたものの、数回聴いて、その後は聴く頻度がそんなに多くなかったのね(最近はよく聴き返してるんですが)。

で、このアルバム。まず聴く前に評判の良さを耳にしていたんで、ちょっと意地悪に「ふふふ、そんなにいいのか? だったら聴いてやろうじゃねぇか!」くらいの心構えでアルバムに臨んだわけですよ。もうね、ちょっとでも気に入らないところがあったら、それこそレビューしないで‥‥いや、レビューで「いいんだけどさ‥‥」とか遠回しに「判んねぇーよ!」ってのを書いてやろうかと。嫌な奴だね俺。ところがさ‥‥全然。貶すどころが、目下連続リピート記録更新中でして。後を引くアルバム?っていうのかな‥‥兎に角「余韻」を大切にする、聴き終えた後に非常に気持ちよくなれる作品だと感じたわけ。しかも聴きやすい。これが最大のポイントね。小難しさが減退してるのよ(少なくとも俺にとってはね)。

どうやら前作辺りからいろいろ変化を続けてるらしいんだけど、俺にとってはこのアルバムでの変化は非常に嬉しい方向に進んでるように思います。まず生音を重視したアレンジ。所々にエレクトロニカ的要素も感じつつ(例えば海外でいうとMUM辺りと同じ香りがしたりして)、全体を覆うのはそういった冷たさではなくて、あくまで暖かみ。それも人肌の暖かさ。適温なのよ。そういったエレクトロニカ的な色合いを持ちながらも緩やかに、まるで朝陽が昇っていくかのように段々と温度の上昇が感じられるイントロダクション "いってらっしゃい" からスタートして、緩やかなテンポの曲が10曲続き、最後に再びスタート地点に戻り、今度はゆっくりと太陽が沈んでいくかのようなアウトロ "おかえり" で終わるアルバム構成。しかも間にある10曲の歌は、全て人間らしいテンポと人間らしい温度と人間らしい高揚感と人間らしい安らぎを持ち合わせている‥‥ここが一番大事なわけ。ただ緩いだけじゃないのね。

例えば、音楽がマニアックでカルトになればなる程、そういった人肌の暖かが段々と希釈されていく。逆にポップになるにしても、人工甘味料をこれでもかと注ぎ込んだポップさとなると、その人肌の暖かさが過剰過ぎて煩わしく感じられたりする。

今回のクラムボンのアルバムを聴いてると、ミュージシャンとしてのマニアックさも十分に持ち合わせながらも決して突き放し感がない、そして程良いポップさが満遍なく散りばめられている。それは後からシュガーコーティングしたものではなくて、素材本来が持つポップさ。紙一重でそういった絶妙のバランスを保ちながらも、最終的には人としての暖かみ‥‥つまりポップさが前面に出てしまう。それがこの「imagination」というアルバムなのではないか、と俺は思うわけです。

「いや、クラムボンは前からこうだったよ!」とファンから力説されてしまうと返す言葉もないわけですが、少なくとも以前上に書いたような小難しい固定観念を持っていた俺にすれば、この発見は非常に大きいわけ。勿論、そんな理屈っぽく考えながらこのアルバムを聴いてるわけじゃないですよ(レビューを書く上で、今こういうことを初めて考えてみたわけですからね)。だってさ、このアルバムに接している時は俺、本当に無心でその気持ちよさに身を寄せているだけなんだから‥‥いやー、多くの人がこのアルバムを絶賛する理由、よ~く判りました。本当にいいアルバムですよ、これ。間違いない。



▼クラムボン『imagination』
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投稿: 2003 12 28 12:00 午前 [2003年の作品, クラムボン] | 固定リンク

BELLE & SEBASTIAN『DEAR CATASTROPHE WAITRESS』(2003)

BELLE & SEBASTIANの約3年半振り通算5作目(サントラ盤を除く)となるアルバム『DEAR CATASTROPHE WAITRESS』は、いろんな意味で注目される1枚となっています。まず、このバンドの顔のひとつであるイザベル・キャンベルの脱退後初のアルバムであること。次に、レーベル移籍(かの「ROUGH TRADE」に移籍。アメリカでも「MATADOR」から「SANCTUARY」へ移籍)後初の作品集であること。最後に、今作のプロデューサーとしてトレヴァー・ホーン(古くはART OF NOISE、最近ではt.A.T.u.で有名)を迎えていること。こういったいろんな要素が複雑に絡まって、多くの人の興味を惹き付けることに成功しています。だってさ俺、今までベルセバって全然聴いてこなかった人なんだもん。いや、数曲は知ってるけど、自分でアルバム買ってまで聴こうとは思わなかったのね。その程度の知識・認識なわけ。

で、そんな人間が聴く「初めてのベルセバ」なわけですが、普通にいいアルバムだと思いました。確かにイザベル嬢の声はここにはありませんが、バンドのブレインであるスチュワート・マードックがそこにいる限り、特に問題はないようです。勿論、欠けたものを埋め合わせるためにいろいろな変化は仕方ないでしょう。むしろそういったマイナス要素を切っ掛けに、変化を遂げるには絶好のチャンスだったのかもしれませんね。そこにレーベル移籍や外部プロデューサー(しかも超大物)起用という別の切っ掛けがあった。バンドとしてステップアップするのに、丁度いい時期にきていたんでしょう。

しかし自分が以前から抱いていたイメージと、それ程大きな違いは感じられないんですよね、このアルバムでのベルセバのサウンド。勿論、ちゃんと聴いてきた人間ではないので、正確には「とんでもない!こんなに変わっちゃったじゃんか!!」って言われる可能性大なんですが、少なくとも自分の中に出来上がっていた「ベルセバ像」を壊してしまうような、駄目な変化はしてないように感じました。むしろ、全体的にメジャー感が増し、ゴージャスになったような気がしますね。何というか、イギリス人による穏やかなパーティーを見てるような、そんなイメージ。アルバムを聴いてるとそんな紳士的な空気がひしひしと伝わってくるようで、聴いてるこっちまで顔がほころんでしまう、そんな作品ですよね。

また、ベルセバというとネオアコ的なイメージも持ち合わせていたと思うんですが、確かにその延長線上にある作風なんですが、今回のアルバムでは曲によって打ち込みを導入していたりして、「おおっ!?」と唸ってしまうアレンジがあったりで、その辺も環境の変化がもたらした意欲から来るものなんでしょうかね。個人的には適度な導入だったこともあって、アルバムの良いアクセントになってると思います。ま、そんな気にする程なものではないと思うので‥‥全体的には生音や歌を重視したバンドサウンドですしね。

トレヴァー・ホーンが手掛けたことによる変化‥‥例えば彼がこれまでに手掛けてきたようなエレクトロニック系サウンドをイメージしてこのアルバムと接すると、意外なまでに彼の「色」が感じられないんですよね。勿論既にスチュワートという中心人物がいるわけですから、トレヴァーは全体の雰囲気作り程度でいいのかもしれません。司令塔はあくまでスチュワートであり、そのお膳立てをしたり最後の仕上げをしたりするのがトレヴァー。そんな関係性だったのかもしれませんね。勿論憶測ですけど。それくらい、過去のトレヴァーの仕事と比べると異色作なんですよ。

多分古くから彼等を知るファンからすると、今回の変化(脱退や大物プロデューサー起用、音楽性の変化等)は非常に大きな影を落としているのかもしれません。が、個人的にはこのアルバムを気に入っているので‥‥そういった人とは意見が違うかもしれませんね。アルバム全体に漂うブリティッシュ臭、ネオアコ臭、ギターポップ臭、等々、どれもが自分的に好みであり、この人間臭さがたまらないんですよね。その割りにそこまで癖が強いわけでもない(多分この辺がトレヴァーによる功績なのかも)。けど癖になる、スルメ的アルバムですな。来年の今頃も、そして数年先もこれを聴いてる自信がありますよ。それくらい普遍的なポップ・アルバム。だから最高傑作とかそういう言い方はしません。普通に受け入れられるべき作品。決して孤高の作品とかではなく、ね。



▼BELLE & SEBASTIAN『DEAR CATASTROPHE WAITRESS』
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投稿: 2003 12 28 12:00 午前 [2003年の作品, Belle & Sebastian] | 固定リンク

2003/12/27

BRIDES OF DESTRUCTION『HERE COMES THE BRIDES』(2003)

噂の大物バンド、いよいよその全貌を露わにする‥‥といったところでしょうか。

今年に入って元GUNS N'ROSESの残党がSTONE TEMPLE PILOTSのシンガーと共にVELVET REVOLVERという新バンド(プロジェクト?)を結成しましたが、こちらもある意味そういった類のバンドになるのかな。MOTLEY CRUEのベーシストにしてメインソングライターであるカリスマ、ニッキー・シックスが元L.A. GUNSのギタリスト、トレイシー・ガンズと共に結成した新バンド、それがこのBRIDES OF DESTRUCTION。当初は元MOTLEY CRUEの二代目シンガーだったジョン・コラビもギタリストとして参加していましたが(どうやらこのアルバムのレコーディングには一部彼の音がそのまま残されている模様)、結局は新人シンガーであるロンドン・レグランドと、セッションドラマーとして活躍してきたスコット・クゥーガンとの4人編成でいくことになったようです。

で、このアルバム。日本先行で2003年12月にリリースされたファーストアルバム『HERE COMES THE BRIDES』(海外では04年3月に「Sanctuary Records」からリリース予定)。全9曲入り、約37分という決して長くはない収録時間なのですが、それなりに、いや、2003年というこんなご時世に聴くとかなり新鮮な印象を受ける1枚なのかもしれません。

ブレインとなってるのは、明らかにニッキーとトレイシーのふたり。彼らがリーダーとして活動してきた各バンドの色合いを感じさせつつ、それらをヘヴィな音像で表現したかのようなハードロックを展開しています。ダークなんだけど、思いの外ポップなのは、やはり百戦錬磨のニッキー&トレイシーの個性なんでしょうね。ありがちなラウドロックやヘヴィロックへ行かずに、むしろ'80年代後半~'94年頃に時代を席巻したハードロック、といった印象が強い楽曲が並んでいるんですよ。まぁ1曲目「Shut The Fuck Up」みたいなパンキッシュなラウドチューンは、明らかに意識したものなんでしょうけど、その後に登場する‥‥3曲目「I Got A Gun」や4曲目「Two Times Dead」なんて、まんまMOTLEY……ジョン・コラビが参加した『MOTLEY CRUE』でやってそうなタイプですよね。ま、全体的にあのアルバム前後にやってたことや、トレイシーがやってたソロバンド・KILLING MACHINE的なことを新しいシンガーでやってるといった印象が強いですかね。ただ、その割にはMOTLEY色がかなり強いんですが‥‥これはまぁ、ニッキーが現在そのMOTLEYで動けないジレンマをそのまま象徴してるようで、ファンとしてはちょっと複雑な心境なんですが……だってさ、ここでやってるようなことをミック・マーズがギターで、トミー・リーがドラムで、ヴィンス・ニールがボーカルでやれば‥‥勿論これとは違ったものになっちゃうんですけど……十分にカッコイイ作品になったはずなんですよ。けど現実は‥‥いや、このバンドの、このアルバムも十分にカッコイイと思うんですが……暫くこの手のハードロックを聴いていなかったからか、新鮮に感じるものの、結局彼ら(ニッキーやトレイシー)は「グランジ前後」で止まっちゃってるんだな、とも気づかされちゃうわけですよ。いやいや、ここで自分達が最も好きなものを、最も得意とする方法でやってみただけだ!と言われてしまえば納得もしますが……でもねぇ……。

と、ネガティブなことを書いてみたものの、それでも「Natural Born Killers」や「Life」、「Only Get So Far」といった曲を聴くと、やっぱりこの人達のポップセンスは枯れてないよな、とも思うわけで。自分にとって最高のメンツ(MOTLEYの4人)で作ったものじゃないから、「あのメンツなら……」というもどかしさもありつつ、それなりに楽しめてしまう自分もいたりで、本当に心中複雑です。

あ、シンガーのロンドンについても書いておきますか。まだ確たる個性というのは確立してないような気もするんですが、面白いシンガーではありますよね。曲によってイギー・ポップみたいになったり、また時にはフィリップ・アンセルモだったり、あるいはバンドメイトだったジョン・コラビだったり(いや、ジョンというよりもクリス・コーネルなのかしら?)。良く言えばカメレオン的、悪い言い方すれば「他人の物真似」……このバンドでどの程度ライヴをやっていくのか判りませんが、全てはライヴ次第でしょうね。あとさ、このバンドってドラムのスコットもリードボーカル取れるのね。7曲目「Life」で澄んだストレートな歌声を披露してるのが、そのスコットなんですよ。この曲だけ聴いちゃうと、声のせいで……パワーポップ寄りのハードロック・バンドかと錯覚しそうになっちゃうのね。濁声(ロンドン)と澄んだ声(スコット)という対比が面白いと思うし、まぁドラム叩きながら歌ってるので今後どの程度歌っていくのか判りませんが、フロントマンになることはないでしょうから、バランス的にはこれでいいのかな、と。

どうもニッキー絡みになると厳しいことを書いてしまいたくなるんですが、それも彼に対する愛からくる言葉なので。俺の中での最高のロックスター……マイケル・モンローとニッキー・シックスには常に最高でいて欲しいわけですよ。HANOI ROCKSが現在順調に活躍してる反面、MOTLEYは……って悔しい思いをここ数年してるわけですからね。勿論本家で大活躍してくれるのが一番ですが、それでもこうやってフットワーク軽やかに新しいバンドでアルバムを出してくれたことを、今は素直に喜びたいと思います。ライヴも期待していいんですかね?



▼BRIDES OF DESTRUCTION『HERE COMES THE BRIDES』
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投稿: 2003 12 27 10:50 午前 [2003年の作品, Brides of Destruction, Motley Crue, Wildhearts, The] | 固定リンク

2003/12/26

THE STROKES『ROOM ON FIRE』(2003)

前作「IS THIS IT」から約2年。若いロックファン待望のTHE STROKESセカンドアルバム、「ROOM ON FIRE」。ファーストを気に入ったであろう人なら間違いなく気に入るであろう、まんま前作の延長線上にある作風。悪くない。けど最高でもない。多分このバンドはライヴをやるために曲を作って、そしてアルバムは単なる通過点であり、最終的にライヴでそれらの曲を完成型に持っていくバンドなのかな‥‥という気が、今回のアルバムを聴いてまず感じたこと。やっぱり‥‥自分にとってこのバンドは、そんなに重要な存在ではないな、と。それは多分未だにライヴを一度も観たことがないという事実が影響してるんだと思うけど‥‥いや、少なくとも映像で観る限りでは‥‥う~ん。

いろんなバンドと比較してみてもいいんだけど、何かそれも違う。最近主流の「リバイバル・ロック」だったり「リフ・ロック」だったり、そういった枠の中にはめようとしてみる。けどそれも違うと感じる。アティチュードや佇まい、面構えは完全にそれらの枠の中にいるバンド達に引けを取らないものなのに、発するサウンドは完全に別物‥‥いや、別物ってのは言い過ぎかな。でも決定的に違う「何か」がSTROKESには備わっている。きっとそれが彼ら最大の魅力なんだろうけど‥‥それが何だか判らない。そして‥‥多分それは、今の自分には必要のないものなのかもな、とも思うわけで。

例えばね、このアルバムを通して聴いてみると‥‥アルバムとして完成されていないんですよね。何て言うか‥‥作った(レコーディングした)楽曲をそのまま詰め込んでいったかのような、構成を無視した曲順‥‥いや、これ自体が彼らの計算なのかもしれないけど、少なくとも俺にはそうは感じられない。このぶっきらぼうさが魅力という声も判らないではないけど、やっぱりずっと残るものだしなぁ。曲単体では非常に魅力的なものばかりなのに、いざアルバムとしてまとめて聴いてみると伝わらないものがある。これはファーストの時にも感じたことなんだけどね(実際それが原因で、彼らの良さに気づくまで相当の年月を費やしたし)。

そしてね‥‥ただパワーコード一発鳴らせば世界を変えることができる‥‥そんなバンド達との決定的な違い。それはやっぱり「音の鳴らし方」なんだと思う。言い方が悪いんだけど‥‥インテリ過ぎるのね。サウンドのひとつひとつから知的さを感じるのよ。演奏自体はとても熱いものなんだけど、伝わってくるサウンドは何故かヒンヤリとしていて、どこか冷静さを感じる。それが彼らのインテリジェンスからくるものなのかどうかは判らないけど、とにかくそこは他の「リバイバル・ロック」と呼ばれるようなバンドと大きく異なるよね。基本的にロックンロールって頭悪い音楽じゃない?(凄い偏見だ)バカがお山の大将になりたくて、なりふり構わず暴れまくる‥‥凄く偏ったイメージだとは思うけど、そういうバカが好きで俺はロックが大好きになったわけで、未だにそういったものをロックに求めちゃうのね。でも、残念ながら「CDの中のSTROKES」からはその要素が感じられないのよ‥‥ライヴが凄い!っていう声は散々耳にしてるし、実際に観たらそういった「バカ要素」をステージで補完してるのかもしれない。上に書いたように、このバンドってライヴで楽曲を最高のものに持っていくタイプなのかもしれないし‥‥まぁそこら辺は俺なんかよりも、実際にライヴを観てるあなた達の方がよくお判りでしょうから、俺の考えはここら辺で‥‥

あとさぁ‥‥いろんな所で言われてると思うけど、ニューヨーク・パンク的なものよりも、もっとニューウェーブ的な‥‥例えばTHE CARSとかBLONDIEとか、そういったバンドとの共通点が多いような気がするのね。ま、サウンド的にですけど。そこら辺もROLLING STONESやガレージバンド~グランジからの影響が強い他のバンドとの大きな違いかな。STROKES自体もそういったバンド達から影響を受けてスタートしたバンドらしいけど、最終的には「らしさ」を手に入れたんだから‥‥勝ち組? まぁそうでしょうね。そういった要素が更に強まってるのがこのセカンドなんだ、と。そういう意味では非常に好感が持てますよね、俺的には。

まぁいろいろといい事も悪い事も書き連ねてきましたが‥‥要するにね、曲は好きなんだけど、アルバムとしてはイマイチ好きになれない。そんな微妙な関係なわけよ、俺とSTROKESってのは。多分この先もずっとこの関係を保ったまま、つき合い続けていくのかもしれないね‥‥ライヴ観たら変わったりして。いや判らないけどさ。

何かさ、「恋仲にはならないんだけど、気づいたらずっと側にいてくれる腐れ縁の女友達」って感じだな、STROKESって‥‥



▼THE STROKES『ROOM ON FIRE』
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投稿: 2003 12 26 04:49 午後 [2003年の作品, Strokes, The] | 固定リンク

2003/12/25

フラワーカンパニーズ『東京タワー』(2003)

フラワーカンパニーズ今年2枚目、通算9枚目のオリジナルアルバムとなる「東京タワー」は、曲数や収録時間(8曲入り、27分半)からいえばミニアルバムと呼ばれても仕方ない作品なんだけど、内容だけでいったらフルアルバム並みなんですよね。いや、熱量と濃さからいえば十分すぎる程なんで、多分8曲程度で丁度よかったのかも。前作「発熱の男」が13曲入りで、その前の「吐きたくなるほど愛されたい」も13曲入りだから‥‥まぁスケールダウンは否めないかな。単純に曲が貯まって早くリリースしたかったから、無理して10曲以上作らずに(出来るまで待たずに)すぐレコーディングしてリリースしたんだろうね。このフットワークの軽さもインディーズならでは。物事ポジティヴ・シンキング。インディーズ落ちとか言うなや。

曲の方は相変わらず、暑苦しいまでに熱血ロケンローを繰り広げております。文句なしでしょう。過去の彼等、そして俺のようにここ数作で彼等のことを好きになった人、イベントライヴ等で目撃して気に入った人なら絶対に好きになる、むしろ嫌いになんてなれない「いつもの顔」がそこにはあります。変わり映えがないと言ってしまえばそれまでですが‥‥つうかフラカンにそんな風変わりなことを求めてもねぇ‥‥変わらず10年間、こうやってやり続けてきたから凄いんだよ。インディーズに行って、逆に何のしがらみもなくなった分、メジャー時代よりも更に純度は増してると思いますよ。そうじゃない?

相変わらず、30男のセンチなハートを振るわす歌詞の連発。"捨鉢野郎のお通りだ" での「捨鉢男は30越えて みっともないほど 燃えている あはは あはは あはは あはは 思春期なんだと言ってやれ」がね、もう俺の心臓鷲掴みなわけ。そうそう、そうなんだよ!って。握り拳で机バンバン叩いちゃったもん。

それと、タイトルナンバー "東京タワー" ね。歌詞が手元にある人は是非じっくり読んで欲しいな‥‥こういう歌を、こういう言葉使いでストレートに、尚かつ説得力ある表現方法でひとつの曲の中に閉じこめることに成功してるバンド、少ないと思う。いや、もしかしたらこういうのって時代遅れで、もはや誰もやらないことなのかもしれない‥‥けど、だからこそ、地道に頑張るフラカンのようなバンドにはずっと、こういう路線で頑固に戦い続けて欲しいな、と。そう心から思い願っているわけですよ。

最近「フラカンを聴くならまずどれから聴いたらいいですか?」って質問をよく受けるんだけど、ちょっと前までは俺、最新作だった「発熱の男」を薦めてたのね。過去のベスト盤聴くよりも、こっちの方がバンドとしての「今」を感じることができるし、何よりも傑作だし。けどさ、これからはこの「東京タワー」をまずお薦めしようかと思ってます。初心者がいきなり濃いのを13曲も聴かされるのは、ちょっと酷かな、なんて思ったので。バンドの魅力・素晴らしさがちゃんと表現されていて、コンパクトで聴きやすい。ライヴの様子も何となく見えてくるしね‥‥つうわけで、これからフラカンを聴いてみようと思ってるそこのあなた。まずはこのアルバムから。そこから過去に遡っていくことをオススメします!



▼フラワーカンパニーズ『東京タワー』
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投稿: 2003 12 25 03:52 午前 [2003年の作品, フラワーカンパニーズ] | 固定リンク

MO'SOME TONEBENDER『TRIGGER HAPPY』(2003)

  MO'SOME TONEBENDER、約1年振りのニューアルバムは、再びインディーズからのリリース。メジャーからドロップしてしまったのか、あるいは今回の『作風』が原因で、たまたま今回だけ古巣(インディーズ)からのリリースなのか‥‥真相は判りませんが、とにかくこれはとんでもないアルバムだ、ということだけは間違いのない事実です。

  モーサムというと「ヒンヤリとしてて、鋭くてザクザクするギターと、絶叫に近いボーカルと、それを支える鉄壁のリズム隊」というようなイメージがあると思うんですね。楽曲的にもグランジだったりニューヨークパンクだったり、そういったものからの影響が強い3ピースのロックバンド。シンプルだけに生々しい。ところがこのアルバムはどうでしょう‥‥1曲目の "trigger happy (in the evening)" はまだいいんですよ。オープニングSEと考えれば‥‥納得がいくものだし。しかし、2曲目 "hang song" で我々の度肝を抜くわけですよ。完全に我々が思い描いたモーサムのパブリックイメージをぶち壊す1曲。打ち込みリズムの上を這い回るギターとベース、そしてトランペット‥‥ダブ? ポストパンク? それともポストロック??‥‥いや、ジャンルの括りなんてどうでもいい、とにかく何だかよく判らない「凄み」、あるいは得体の知れない「塊」が我々の耳に、大音量で飛び込んで来る‥‥従来の「らしさ」と新しい「らしくなさ」とを併せ持った "BIG-S"(かのフリクションのカバー)ではスライドギターがのたうち回り、ヒップホップ的手法まで取り入れる。何だこれ!? マジでモーサム、どうしちゃったの!? まぁ普通そう思うだろうね。

  これがね、アルバム1枚ずっと続くわけ。しかも手を変え品を変え、そして表情を変え。けど全てに於いて一環してる点がひとつあるのね。それは‥‥「得体の知れなさ」。とにかく‥‥何だかよく判らない凄さがあるわけ。何度も聴き返して、そして何日も聴き込んでも全然判らない、その凄さの中身。従来の彼等らしくもあるんだけど、これまでとは明らかに違う要素もある。けど、いざアルバム通して聴いてしまうと‥‥間違いなくモーサムそのもの。何なんだろう、これは?

  去年、これに似たような体験をしたことがある。ナンバーガールのラスト作となってしまったスタジオ盤、「NUM-HEAVYMETALLIC」が正にそれだった‥‥あれと全く同じとは言わないよ。あのレベルには正直達してないと思うし、作品としてもモーサムの方はちょっと散漫すぎると思うし。けど、そこに達することが出来るだけの「片鱗」は十分に感じられるわけ。というか‥‥これはもしかしたら、とんでもないモノが生まれる前の「前兆」なのかもしれないよ。何かそんな気がする。

  確かにナンバガにも通ずるようなポストパンク/ダブ的要素もあるのね。ディレイが効いたトランペットなんて正にそれを意識してるし、中には "VIEW VIEW" なんていう「まんま」な曲まであるし。けど、モーサムがナンバガとは違うのは、そこだけに固執してない点。上にも書いたような要素だったり、更にはホントにポストロックに接近しつつあるんじゃ?なんて思わせる "rainy" ~ "candy & friday" ~ "trigger happy (in the morning)" があったり、歌詞も英語や日本語を使い分けてるし(多分、その辺は意識してないだろうけど)、インストものが結構収録されてたり。とにかくひとつ言えるのは、決してモーサムはナンバガにはならないし、目指してないこと。モーサムはモーサムなりの高みを目指しているんだと。このアルバムを聴けばそれは十分に理解してもらえると思います。

  とにかく‥‥何だかとんでもない作品に出会ってしまったような気が‥‥決してこれが「答え」なんじゃなくて、単なる「設問その1」に過ぎないんだろうな、と。間違いなく次の作品はとてつもない、我々の手に負えないような「モンスター」になるんだろうな‥‥そう実感させる1枚。決して彼等のベストアルバムではないんだけど、今後続く彼等の歴史の上で、間違いなく重要な1枚になるアルバム。それがこの「TRIGGER HAPPY」でしょう。そう、間違いなく、ね。



▼MO'SOME TONEBENDER『TRIGGER HAPPY』
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投稿: 2003 12 25 12:00 午前 [2003年の作品, MO'SOME TONEBENDER] | 固定リンク

2003/12/23

MUSE『ABSOLUTION』(2003)

前作「ORIGIN OF SYMMETRY」から約2年3ヶ月振りに届けられた、MUSEのサードアルバム「ABSOLUTION」は前作以上に『深化』した、非常に過剰で味わい深い1枚に仕上がっています。前作にみられた北欧系ヘヴィメタル的な色合いは若干後退しながらも、シアトリカルな側面は更に激化。ロック的な攻撃性よりもズッシリと構え、腰を据えたかのような重さを感じさせる印象を全体から受けます。

例えば、前作ではまだ飛び道具的存在だったピアノメイン曲が、この新作ではいきなり1曲目から登場します。ミディアムテンポで激しいピアノが印象的な "Apocalypse Please" がそれで、ボーカル/ギター/ピアノ担当のマシュー・ベラミーのオペラチックなファルセット・ボーカルもここで存分に堪能できます。更に従来の路線を追求したシングル曲 "Time Is Running Out" や "Hysteria"、ヘヴィなリフが印象的な "Stockholm Syndrome" や "The Small Print"、ミディアムバラード "Sing For Absolution"、劇的な盛り上がり方をする "Falling Away With You"、ストリングスを導入した新境地 "Blackout"、ちょっとだけダンサブルな要素がみられる(けど予想の範疇内な) "Butterflies & Hurricanes"、これまた新境地といえる "Endlessly"、ありそうでなかったタイプの "Thoughts Of A Dying Atheist"、ちょっとだけここ数年のRADIOHEAD的な方向性を感じるラスト曲 "Ruled By Secrecy"‥‥確かに新境地といえるような新たな曲調もあるにはあるんだけど、それら全てが予想の範疇内であり、つまりは前作の延長線上にある作風なわけ。ファースト「SHOWBIZ」からセカンドへと移行する時に見られた劇的な変化/成長は今回見られず‥‥しかしながら、大成功を収めたセカンドの路線を更に追求した形での成長がこの新作で大きくクローズアップされてるんですね。

基本的にはこのMUSEというバンド、RADIOHEAD以降のバンドの中でもかなり特異な存在で、UKギターロック的な色合いよりも、ダークでゴシック調でヘヴィメタリックな側面をフューチャーしたバンドなんですよね。ポップで判りやすい歌メロに、ラウドロック真っ青なヘヴィリフ、時にはギターレスでピアノやシンセをメインに据えた耽美な楽曲まで登場する。決してポストロック的な方向へは行かず、あくまで判り易さ全面に出す。実はこのバンド、THE DARKNESS辺りに通ずるバンドなんじゃないかって気がするんですよね。伝統的ブリティッシュロック・バンドという意味でね。プログレッシヴでヘヴィで、メロウで耽美でゴシックで。ただ、こういう表現の仕方をするバンドが同時代に存在しなかったから目立ってしまったという。それとファルセットを多用したヒステリックで線の細いボーカルが、如何にも「RADIOHEAD以降」という風に捉えられてしまった。タイミング的なものも大きいし、まぁ登場の仕方も大きいし。世が世なら、間違いなく「時代錯誤」とか「'70年代のレトロック・リバイバル」なんて呼ばれてハイプ扱いされてたんでしょうね。アートワークにストーム・トーガソン(元ヒプノシスのメンバー)を起用する辺りにも、その筋の匂いがプンプンするし。

多分‥‥2003年にこのアルバムを持ってデビューしてたら‥‥絶対にTHE DARKNESSと比較されてたと思います。ライヴを観ても判るように、このMUSEも非常にアート面とエンターテイメント面をバランス良く強調したステージを繰り広げるし。そういう意味でも比較されるべき対象なのかもしれませんね。本当はRADIOHEADではなく、THE DARKNESSと肩を並べるべき存在。それが2003年に於けるMUSEの在り方なのではないでしょうか。前作同様、非常に気に入っている1枚です。しかし、癖が強い為‥‥THE DARKNESS同様、好きな人にはとことんアピールするものの、苦手意識のある人にはとことんダメな1枚にもなるでしょう。万人にはオススメしないものの‥‥実はハードロック・ファンにこそ聴いて欲しいアルバムだったりして。



▼MUSE『ABSOLUTION』
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投稿: 2003 12 23 02:36 午前 [2003年の作品, Muse] | 固定リンク

2003/12/22

THE MARS VOLTA『DE-LOUSED IN THE COMATORIUM』(2003)

我々の前に衝撃的な登場をしたAT THE DRIVE-IN。しかしアルバム「RELATIONSHIP OF COMMAND」をリリースした翌'01年。まさかの分裂/解散。予定されていたフジロックへの出演も果たせぬまま、彼等はバンドとしてずるい幕引き‥‥勝ち逃げの状態で我々の前から姿を消したのでした。

そして'02年。彼等はふたつのバンドで我々の前に戻ってきます。SPARTAと、そして今回紹介するTHE MARS VOLTA。正直に言っていいですか?‥‥俺、SPARTAには全然興味が湧かなかったのね。何故なら、俺にとってのATDIってのは、セドリックのボーカルそのものなんですよ。勿論バンド全体としての雰囲気や生み出されるサウンド・楽曲、全てにおいて好きでしたが、やはりあの「声」があってこそ、俺は好きになったんですね。

だからこそ、その「声」を有するTHE MARS VOLTAの方に興味が行くのは、当たり前の話なんですね。けどさ‥‥やっぱり怖かったわけですよ。ATDIが最高だっただけに、その後に出てくるものが‥‥しかも分裂してしまった後ですから。あの5人だからこそ成し得たサウンドだというのは重々承知してるんです。だからこそ、聴くのが怖かった‥‥結果、昨年リリースされていたEPは聴かなかったんですよ。

で、このデビューアルバムですが‥‥実はこれもリリース後すぐには手を出しませんでした。同様にずっと引きずってたんですね、そういった思いを‥‥けど、ある切っ掛けで踏ん切りがついた。それは彼等のPVをたまたま観てしまったから。もうね、一発でノックアウトですよ。そうそう、俺がずっと待ってたのはこういうものだったんだ!って。それを一瞬にして思い出させてくれたのが、THE MARS VOLTAだったんです。やっぱりセドリックの「声」だったわけですよ。

ゲストとしてベースにRED HOT CHILI PEPPERSのフリーを迎えているとか、更にジョン・フルシアンテもゲスト参加してるとか、かのリック・ルービンがプロデュースしてるとか、いろいろ話題となるポイントはあると思うんですが、そんなことがどうでもよくなる程に、アルバム全体を覆う雰囲気やヴァイブ感が抜群に良い、良すぎるんです。ATDIに見られたパンク的要素は若干後退し、ラテン要素はそのままに、更にジャズやプログレ、ジャムバンド的フリースタイルなインプロビゼーション、そしてエレクトロニカ等‥‥とにかく他ジャンル/多ジャンルを包括した独自の感覚で構築されたロックがここには詰め込まれています。ATDIを気に入っていた人なら間違いなく受け入れられるだろう1枚。

とにかくね‥‥言葉にならない、いや、出来ない凄みを感じるんですね。感情の塊をそのまま素手でぶつけられたかのような、胸に大きな穴がポッカリ空いてしまったかのような衝撃。第一印象はとにか「衝撃」。ATDIのアルバムを初めて聴いた時にも似たような感覚を受けましたが、あれ以上でしたね。まさかこんなご時世に、こんなアルバムを聴こうとは‥‥嬉しいのと、焦って冷や汗かいたのと‥‥何だかよく判らない感情と、いろんな思いが入り交じる音。「アート」とか「ラウドロックの新星」とか‥‥そんなのどうでもいい。とにかく熱いロックンロール。感情を揺さぶるロックンロール。それだけが真実なんです、このアルバムの中では。

何でもっと早く聴かなかったんだろう‥‥と後悔したし、結局来日公演にも間に合わなかったし(来年1月にも再来日公演が予定されていますが、日程的に無理なんですよね)‥‥そしてアルバムリリースを待たずに、このアルバムでも大きな役割を果たしているサウンド・エフェクト担当のジェレミーがツアー先で亡くなってしまったこと。結局間に合わなかった‥‥って残念な気持ちもあるんですが、まだまだバンドは健在。ATDIのように短命に終わることなく、このままセカンドアルバムまで突っ走って欲しいです。



▼THE MARS VOLTA『DE-LOUSED IN THE COMATORIUM』
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投稿: 2003 12 22 09:28 午後 [2003年の作品, Mars Volta, The] | 固定リンク

ウルフルズ『ええねん』(2003)

  ジョン・B・チョッパー復帰後初となる、通算8枚目のオリジナルアルバム「ええねん」。ここ数作も悪くはなかったものの、どこかスッキリしなかったのがホントのところで‥‥ところがこのアルバムはどうだろう。久々の改心の一撃(一曲)となったシングル "ええねん" からスタートするんだけど‥‥まぁこの曲に関しては今更書くまでもないでしょう。全肯定ソングと呼ばれているこの曲、一聴すれば力強さ、ポジティヴさが十分に伝わってくるし、本当にここまで「歌」に励まされたのって、そしてそれが十分に機能したのって何時以来だろう!?って考えてしまう程に凄いわけで。彼等がカバーした "明日があるさ" という曲も、正にそういった類の楽曲だったものの、あれはあくまでカバーであり企画モノ。ここにあるのはウルフルズとしての、正真正銘の所信表明なわけですよ。

  そんな所信表明からスタートするこのアルバム。実はそのタイトルナンバーがアルバムの肝なのではなくて、それ以降‥‥ "たった今!" からスタートする2曲目以降こそが、このアルバムの、そして「ウルフルズ」本来の肝なんですよ。意外とここを見落としがちな人が多くて、個人的にはビックリしてるんですけどね(見方を変えれば、それだけ "ええねん" という楽曲から彼等に入っていった音楽ファンが多いってことか?)。ウルフルズの、そしてトータス松本の本質的な面を考えた場合、どう見ても "ええねん" ではなく、それ以降の14曲のスタイルの方がウルフルズらしく、そしてトータスらしいと思うんですけどね。彼等、そして彼の根本にあるソウルやブルーズといったブラック・ミュージックをルーツとしたオールド・スタイルのロックンロール‥‥多分、ここまで素直に原点回帰的シンプルなスタイルへとたどり着いたのは、今年初頭にリリースされたトータスのソロアルバム、そこで奏でられたロックやソウルのクラシックナンバーを通過し、灰汁抜きし‥‥そしてジョン・B復帰という特別な要素が加わったからこその、複合要素による結果なんでしょうね。良くも悪くもその後の彼等に影響した "ガッツだぜ!" やアルバム「バンザイ」の大ヒット、更には "明日があるさ" の予想外の大ヒット‥‥こういった事実が全て「過去のもの」として捉えることが出来たからこそ、"ええねん" やこのアルバムに辿り着けたのではないかな、と。このアルバムをヘヴィローテーションしながら、勝手にそう想像しています。

  ポップソング・クリエイターとしてのウルフルズはここには居ません。いや、そんなの最初っから居なかったんです‥‥勿論、トータスの生み出す楽曲やメロディにはポップな要素が豊富に含まれています。しかし彼は宇多田ヒカルでもなければ桜井和寿でも草野マサムネでも奥田民生でもない。トータス松本なんですよ。それを力強く証明し、自らを力強く肯定したのがこのアルバムなのですよ。他の誰かには決してなれないし、なる必要もない。自らのルーツを再確認し、結局それを再現しようとした時に偶然オリジナルメンバー4人が揃った。たったそれだけのことなんだけど、最終的にはそういった要素がこのアルバムにとって必要不可欠な要素となった。全てが偶然の産物なんだろうけど、やっぱりこれは必然だったんでしょうね。回り道したけど、ウルフルズはまた「ウルフルズ」になった。再デビュー盤なんて言い方はしたくないけど‥‥やっぱりまたここから何かが始まる予感はしますよね(って俺だけか?)

  とにかく、大音量で聴きたいアルバム。全てがライヴを想定して作られたであろう、必要最低限のサウンドで構築された非常にシンプル且つ判りやすいロック&ソウル・ナンバー。ある意味で山崎まさよしと同じような孤高さを感じるんですが、今後はそういった「真似できそうで誰にも真似できない高み/深み」を追求した、唯一無二の存在になってもらいたいもんです。

  そうそう、ディスク2(「A John B CD」)についてもコメントしておきますか‥‥まぁ早い話がジョン・B復帰を祝った2曲入りディスクなんですが‥‥1曲目 "Sleep John B" はかのBEACH BOYSの "Sloop John B" の替え歌で、実際にジョン・B自身が歌ってるんですね。上に書いたポップ要素をここで補ってるって言い方もできるんですが‥‥まぁあくまでこれはボーナスですからね。コーラスとして参加してるゲスト陣が兎に角豪華で‥‥って俺が書くまでもないか。長くなるので割愛。もう1曲は "風に吹かれている場合じゃない" はMC SQUAREDがヒューマン・ビートボックスで参加、メンバー全員がコーラスを取り、その上でジョン・Bが自身の詩の朗読をするという異色作。ちょっとヒップホップ色が強い、如何にも今風の1曲なんだけど‥‥結局これら2曲は番外編ですからね。本編(15曲入りのディスク1)とは別ディスク収録という事実を見るまでもなく、ね。ただ、こういう余裕があるってんも、今のバンドの状態を物語ってるようで、何だか嬉しくなるんですけどね。

  兎に角今、ウルフルズのライヴが観たいんです。このアルバムの曲を生で聴きたいんです。そしてアルバム聴いてライヴ観た後に、初めてこの作品が完結するんじゃないかな‥‥そう思うんですよね。



▼ウルフルズ『ええねん』
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投稿: 2003 12 22 04:21 午後 [2003年の作品, ウルフルズ] | 固定リンク

2003/12/18

IRON MAIDEN『DANCE OF DEATH』(2003)

本当に、心の底から「いいメタルのアルバムだな」と思えたのが、今回の「DANCE OF DEATH」。ブルース・ディッキンソンとエイドリアン・スミスが復帰しトリプルギター/6人編成としての2枚目、通算13作目となるIRON MAIDENのオリジナル・アルバム。制作には前回とほぼ同じメンバーが当たり(ケヴィン・シャーリーがプロデュース)、作風的にも前作の延長線上といえるような内容なんですが、今回の方が遙かに良い出来なのは何故なんでしょうかね?

個人的には前作「BRAVE NEW WORLD」も嫌いじゃなかったんですが、まぁあれですよね、『ブルース&エイドリアン復帰に対するご祝儀』的な甘い評価が目立ったじゃないですか。で、俺もそういった好意的な気持ちで迎えた1枚だったんですよ。ただ、個人的評価としては‥‥'92年のブルース在籍時ラスト作となった「FEAR OF THE DARK」以降のアルバムは、正直「帯に短し~」なんですよね。悪くはないんだけど、決定的な何かが足りない。それは「決めの1曲」とかそういった類のものではなく(「決めの1曲」という意味では、前作には "The Wickerman" がありましたからねぇ)。

今回のアルバム、決して短いアルバムではないですよね。冒頭のシングル曲2連発("Wildest Dreams"、"Rainmaker")で「おおっ、どこから聴いてもMAIDENだ!」って感じで勢いをつけて、3曲目から如何にもな長編がバンバン飛び出すという仕組み。叙情詩的な "No More Lies" からヘヴィなシャッフルナンバー "Montsegur"、そこからアルバムの肝となる長編タイトルナンバー "Dance Of Death" への流れは圧巻だと思うし、如何にもMAIDENらしい "Gates Of Tomorrow" や "New Frontier"(これ、久々に俺内で大ヒット)の後に再び長編の嵐‥‥"Paschendale"、"Face In The Sand"、"Age Of Innocence"、"Journeyman" の4連発。特に "Paschendale" のオーケストラを導入した劇的な盛り上げ方は個人的にはかなりツボ。例えば往年のRAINBOWなんかを彷彿させるノリ、と言えばお判りいただけるでしょうか?

アルバムを通して聴くと‥‥後半にそういった長編が続いてるからってわけじゃないですけど‥‥何となく作風的に「POWERSLAVE」に近いような印象を受けます。これって要するに「バンドとして新しいピークに達しつつある」ってことなんですかね‥‥'80年代のMAIDENは明らかに「POWERSLAVE」というアルバムで、世界的にひとつのピークを迎えてますよね。そしてその後、ある意味迷走とも取れるような「SOMEWHERE IN TIME」や「SEVENTH SON OF A SEVENTH SON」等をリリースし続ける(しかしこういった迷走時期の作品が実は名盤だったりするから侮れない)。そしてエイドリアンの脱退(解雇)~ブルースの脱退‥‥勿論、今後の彼らが再び同じような道を辿るという意味ではないですよ? ただ、こうやって20年以上に渡って活躍してきたバンドとして、今回のアルバムで再び「高み」に到達しそうだな、という気がするというだけ。このアルバムのツアーが10数年振りに大がかりなセットを用いたものになるのも、その表れなんじゃないでしょうか?

最近の若手メタルバンドは一切聴かない、というか昨今のメタルに全くといって興味がない俺なんですが、こうやって往年のバンドが今でも活躍してると応援したくなるというか、聴きたくなっちゃうんですよね、素直に。で、久し振りに聴くから余計に良く聞こえるというね。いやいや、いいアルバムじゃないですか。毎日何時間も聴き込んだり、決して自身の「BEST OF 2003」に入れてしまうようなタイプの作品ではないですが、やっぱりたまにはいいもんですね。ほら、毎日あっさりした食事をしてると、たまに油ギトギトでコッテリした食事がしたくなる時、あるじゃない? あれと一緒。今の俺にとってのヘヴィメタルって、多分そういう存在なんだと思います。

最近のイギリスではTHE DARKNESSの大ブレイクを筆頭に、再びこういったメタルに脚光が当たっています。MAIDENはまぁある意味国民的バンドですから‥‥と思ってたら、まさかそのTHE DARKNESSに1位の座を阻まれるとはねぇ‥‥アメリカでも久し振りにトップ20入りしたそうですし、普段ラウドロックばかり聴いてる人も、たまにはこういった正統派もいいんじゃないですかね?(ただし日本盤はCCCDなのでご注意を)



▼IRON MAIDEN『DANCE OF DEATH』
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投稿: 2003 12 18 05:05 午前 [2003年の作品, Iron Maiden] | 固定リンク

2003/12/14

2 MANY DJ'S『AS HEARD ON RADIO SOULWAX PT.2』(2003)

先日の「ELECTRAGLIDE」にも出演した2人組DJユニット、2 many dj's。彼等が今年の初めに発表したDJミックスCD第2弾がこれ。彼等はベルギー出身の2人組で、実はSOULWAXというバンドのメンバーであるステファン・ディワーラとデヴィッド・ディワーラの兄弟によるDJユニット。既に地元ベルギーでは有名らしく、彼等のミックスを流すラジオ番組まである程なんだそうで。その延長線上で制作されたのが、このCDなわけですが‥‥純粋に考えて、これは凄い労力の塊だと思いますよ。

実際に彼等のDJを体験したことがある人なら判ると思いますが、とにかくジャンルが幅広いんですよ。最新のテクノやダンスのヒット曲から、'90年代のR&B、グランジ、ガレージ、'80年代のMTVヒット曲、そして'70年代のルーツロック、パンク等々。何でもありなのが、彼等のDJスタイル。エレグラでもビヨンセやらNIRVANAやらNEW ORDERやら、挙げ句の果てに西城秀樹まで飛び出す始末。このスタイルでミックスCDを作ろうとすると‥‥まぁ権利関係で揉めるわけですよね。単なるコンピレーション・アルバムを作るだけでも、レコード会社の枠を超えた問題等から収録出来ないなんてことがあるのに、ここではAというバンドのバックトラックの上にBというダンスユニットの歌部分のみを被せてしまったりしてるわけですから‥‥ヒップホップでいうところの「サンプリング・ネタ」なわけですからね。'90年代に入ってから、この手の権利問題がかなり厳しくなったんで余計ですよね。

で、そんな労力をかけて作られたこのミックスCD。凄いいいんですよ! オフィシャルサイトに行くと、このアルバムに収録された楽曲のジャケットが載っていて、そこをクリックすると「如何にその楽曲の使用許可を貰うまでに苦労したか」とか「どういう風に使った」というコメントがいちいち細かく書いてあるんですよ。更にこのアルバムを作るにあたって許可を貰えたにも関わらず、使用しなかった楽曲のリスト。最後に「アーティスト側から拒否された、あるいは最後まで返事を貰えなず使えなかった楽曲」のリストまであるんでね。一度聴いた後にこれらのリストを見ると‥‥何か判ってくるんですよね。この人達、ドップリと'80年代に浸かってきた奴らだなぁと。CD聴いても判るんですが、兎に角使われてるネタが俺のストライクゾーンばかり。例えばオープニングでいきなりEMERSON, LAKE & PALMERのライヴアルバムから "Peter Gunn" でスタートしたかと思うと、その上にBASEMENT JAXXの "Where's Your Head At (Head-a-Pella)" を被せるし。もうこのオープニングで俺の心を鷲掴み。更にその後もVELVET UNDERGROUNDの "I'm Waiting For The Man" が登場したり(クレジットはないけど、この曲の後のドラムってもしかしてPRIMAL SCREAMの "Rocks" だったりしませんか?)、THE STOOGESの "No Fun" のバックトラックの上にSALT 'N PEPAの "Push It" を被せてしまったり、もうそのアイデアの奇抜さにはただただ驚かされるばかり。この後も懐かしいNENAの "99 Luftballons" が出てきたり、10CCの "Dreadlock Holiday" のバックトラックの上にかのDESTINY'S CHILDの大ヒット曲 "Independent Women Part 1"(映画「チャーリーズ・エンジェル」主題歌ね)のボーカルトラックを被せちゃったり、THE BREEDERSは飛び出すわ、THE CRAMPSは飛び出すわ、ELECTRIC SIXからKISS(の "I Was Made For Loving You" をカバーした女性ボーカルのエレポップ)へ繋いで、そのまま上手いことNEW ORDERの "The Beach"("Blue Monday" のインストバージョン)へ繋いじゃったり。もう60分笑いっぱなし。大音量でかけてると、自然と踊っちゃってるんだよね、家の中で。

自分でもDJとかよくやってたけど、俺の場合は単純に曲と曲を上手いこと繋いでくだけで、ここまで芸が細かくないわけ。つうかやっぱりこういうのを聴いちゃうと、「こういう人達をDJっていうんだよなぁ~」と改めて尊敬の目で見てしまうわけ。そしてだからこそ、俺はあくまで「なんちゃってDJ」なわけよ。絶対にDJだなんて口が裂けても言えないッスよ。

何やらこのミックス・シリーズ。今後も続々とCDが出ていくようですよ。有り難いことですが‥‥本家のSOULWAXの方もそろそろねぇ‥‥一昨年の「SUMMER SONIC」での来日以来、音沙汰がないような気がするんですが、気のせい?

そうそう、最後に‥‥このCDには46曲のクレジットがあるんですが、実はクレジットにない楽曲も使用されていたりします。所謂「シークレット」的存在ですかね。上に書いたPRIMAL SCREAMももしかしたらそうかもしれないし‥‥それ以上にもっと大ネタがあるんですよね‥‥洋楽ファンなら聴けば判ると思いますが‥‥例えば「最近逮捕されてすぐに釈放されたキング・オブ・ポップス」とか「かつて名前を放棄して記号表記とかするようになってた王子様」とか‥‥他にもあるようなので、判ったら俺にそっと教えてください。

とにかく、これからのパーティー・シーズンに持ってこいの1枚。これかけてるだけで気持ちいいし、あるいは話のネタになるし、とにかく重宝すること間違いなし。踊り狂ってくださいまし。



▼2 MANY DJ'S『AS HEARD ON RADIO SOULWAX PT.2』
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投稿: 2003 12 14 06:07 午後 [2003年の作品, Soulwax, 2 Many DJ's] | 固定リンク

2003/12/10

THE RAPTURE『ECHOES』(2003)

今年もまぁ例年通り、いろんな新人さんがデビューしてそれなりに話題になったりしました。最近は音楽雑誌、全く買ってないので(まぁ立ち読みする程度ですか)「ROのイチオシ!」とかその辺はイマイチ判らないんですが‥‥こうやってネットをやってると、それなりに話題になるバンドってのは、やっぱり雑誌とかでも騒がれてる存在なんですかね。

ここ数ヶ月、洋楽のニュースサイトの真似事を続けてるけど、暫く疎かった最新の洋楽情報にもちょっとずつ着いて行けるようになってきたんですね、再び。まぁだからといって全部聴いてるかと言われると全然そんなことないわけで。基本的には知ったかぶりはやめて、知らないものは知らない、知ってるものに関してはそれなりのコメントを付けるようにしてます。なんつーか、基本的には「ニュースクリップで、洋楽のお好みテープ(今ならMDかCD-Rか)を作る」ような感覚でページ作ってるんですね。アイドルポップの後にヘヴィロック持ってきて、その後にテクノを繋いで、最後はファンクの大御所、みたいな‥‥ニュースでDJやってるような感覚とでもいいましょうか。ま、それは言い過ぎですけどね。

大体最近話題になる新人バンドの傾向って、どうしてもリバイバル・ロック系が多いじゃないですか。今更「ブリットポップの流れを組むUKギターロック!」とか力説されても、全然説得力がないというか、そんな流れ組まれても‥‥みたいに思っちゃうし。かといって、そういったリバイバル・ロック系の流れにもちょっと食傷気味だし。ダンスの要素を取り入れたバンド? 去年THE MUSICとか出てきたけど、それ以降でいいのってあまりいないし。つうかさ、そういった上に挙げたような要素全部を含んだバンドが出てくれば、一番手っ取り早いんだけどねぇ‥‥

そこでお客さん! 今日紹介するのはこのバンド、THE RAPTURE。今挙げたようなものを全部含んでこのお値段!‥‥っていう深夜の某TVショッピング風な冗談はこの辺にして‥‥

冗談抜きで、このTHE RAPTUREのアルバム「ECHOES」を聴いてると、俺が最初に書いたような「お好みテープを聴いてる」ような錯覚に陥るのね。ブリットポップだったり、ハウスだったり、ファンクだったり、パンクやガレージやグランジだったり、あるいはダブだったり‥‥そういったような要素をアルバムから感じられるのよ。ただこのバンドの場合、ひとつの曲にそういったいろんな要素が詰まってるのではなくて、曲毎に表情を変えていくのよ。ハウス風の "Olio" でダンサブルに始まったかと思えば、そのまま狂気じみたボーカルを聴かせるパンキッシュなファンク "Heaven" に続くし、かと思うとムーディー且つダウナーなバラード "Open Up Your Heart" がフェイドインしてくるし。ある意味「音のおもちゃ箱」なんだけど、意外と統一感はあるかな。打ち込み主体の曲の後にヘンテコなリズムを持ったファンクが続いても、全然違和感なし。それはきっとバンドとしての確たる信念がちゃんと備わってるからなのかもしれないね。

バンド編成もギター/ベース/ドラム/サックスという4ピースで、他のバンドと比べてもやはり風変わり。サックスが加わることで、曲によっては更に狂気度が増してたりするんだよね。管楽器の音って、時に人の神経を本当に逆撫でるからね。官能的だったり、狂ってしまったり。使う人/使い方ひとつでこんなにも表情を変える楽器‥‥エレキギターもそうだけど、本当に凄い楽器だと改めて思うよ。

さてさて。このバンドの場合曲の良さやバラエティ豊かさも確かに特徴だけど、やはりシンガーのルーク・ジェナーによる狂気じみたハイトーン・ボイスが一番の武器かもしれないね。時にトム・ヨーク(RADIOHEAD)のように弱々しく、そして時にロバート・スミス(THE CURE)のように狂ってる。タイプはちょっと違うけど、TALKING HEADS時代のデヴィッド・バーンを思い浮かべちゃうんだよね‥‥ああ、そういえばバンド自体も何となく全盛期のTALKING HEADSを彷彿させるしね(って思ってるの、俺だけ?)。ポスト・パンクからファンク等のダンサブルな方向へと進化していったTALKING HEADSのように、このTHE RAPTUREも多分ガレージロック的な道から一歩踏み出して、ハウスやファンクといったダンサブルな要素を吸収していったのかもしれないし。その結果が "House Of Jealous Lovers" という超名曲を生んだんだろうし‥‥ま、ホントのところは判らないんだけどね。

とにかく面白い存在なのは間違いないです。こういうバンドってきっと「ハイプ」だの「一発屋」だのいって貶されることが多いと思うんですが‥‥サマソニでのライヴも面白そうだったし、是非単独来日を期待したいところ。時代を変えるようなタイプのバンドではないだろうけど、間違いなく記憶に残るバンドだと思います。



▼THE RAPTURE『ECHOES』
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投稿: 2003 12 10 03:53 午後 [2003年の作品, Rapture, The] | 固定リンク

2003/12/03

THE BEATLES『LET IT BE...NAKED』(2003)

このアルバムを語る上でいろんな情報を書いておくべきなのかもしれないし、むしろそういった事実を踏まえた上で語られるべき作品なんでしょうけど‥‥ゴメン、今日はそういうの、一切抜きで。むしろ今回のは‥‥暴言に近い物言いをすると思うので、読んでて不快に感じる箇所もあるかと思います。予めご了承ください。

さてさて。ビートルズのニューアルバムです。ま、ニューアルバムという言い方に多少語弊があるかと思いますが、実際そういう表現で扱われることが多いのもまた事実。確かに「ニュー」アルバムですよ、これは。

ご存じの通り、33年前にリリースされたビートルズのラストアルバム『LET IT BE』を“本来の形”に近づけたとされるアルバム、それが今回リリースされた『LET IT BE...NAKED』。名前通り、本当に“裸”になったのかどうか‥‥個人的見解を記しておくと、「ドラマ性を持たせ一般流通目的でソフト編集されたアイドルAV」が「ヘア出し中出し無修正!こんな生々しいのが見たかった!的裏ビデオ」という風に編集前の形でリリースされたと思ったら、実際には「ヘアは出てるけど薄ボカシ入り、しかもゴム付きで本番なし!」だった‥‥みたいな感じでしょうか?(非常に判りにくく、且つ下品な例えで申し訳ないッス)

オリジナル(フィル・スペクターがプロデュースしたものを、敢えて「オリジナル」とします)の『LET IT BE』が上記のような「ラストアルバムとして、そしてあの無機質な同名ドキュメント映画のサウンドトラックとして成り立たせる為に、過剰なまでにドラマチックに演出し、尚かつ殺伐さを抑えてウワモノを被せた」作品だとすると、今回の『LET IT BE...NAKED』って本当の意味での“NAKED”ではないですよね。判る人には判ると思いますが、ひとつの楽曲の中にいろんなテイクが混在していて、いわば“サイボーグ”と化してるわけですよ。ブートなんかでも流通していた音源と聴き比べてもそれは顕著で、そういった意味では“作られた裸”‥‥つまり「無修正といいつつ、薄ボカシ入ってるじゃんか!」だとか「ナマ本番とかいって、ゴム付けて、しかも実際には挿入してないし!」といった詐欺紛いの謳い文句だったりするわけです。その辺に対しての憤りみたいなものは、確かに感じます。

けどね‥‥だから何?ってことですよ。じゃあこのアルバムが質の悪いものなのかというと、全然そんなことはなく、むしろこの生々しいミックス(音の粒が粗く、ボーカルがオリジナルよりも前に出てる)は下手なガレージバンドより何万倍もカッコイイじゃないの? 言っちゃ悪いけど、結局オリジナル盤リリースから33年経っても、このアルバムを超えるようなバンド/作品って数える程しかなかったってことなんじゃないの? その駄目押しとしてカッコ良さ重視の編集盤が制作された、と。自分にとってこのアルバムの存在意義、その程度で十分よ。あとは音が全てを物語ってくれるから。

曲の良さについては今更ここに書くこともないでしょう。むしろハードロッキンな「Dig A Pony」や 「I've Got A Feeling」、「One After 999」とか聴いちゃうと、改めて『LET IT BE』っていいアルバムだったんだな、と再確認しちゃうわけよ。装飾をそぎ落とした「Let It Be」や「The Long And Winding Road」については好き嫌いとかあると思うけどね。個人的にはフィル・スペクター・バージョンに慣れ親しんだせいか、あっちの方が好きかも。ただ『LET IT BE...NAKED』というアルバムに関していえば、こっちのテイクで正解だと思うけどね。

最近このアルバムに対して、したり顔で「“NAKED”とかいって編集しまくりだからダメ」とか「結局オリジナルの方がいいに決まってる」とか言ってる人、見かけるでしょ? ちゃんと聴かないでほざいてる奴らは問題外。つうかそんな奴らに「音楽ファン」とか「ロックファン」とか軽々しく名乗って欲しくないね! そしてオリジナルを尊重するあまりに今作を否定する輩。気持ちは判るけど、結局あなた達も「最近のつんく♂はだめぽ、モーニング娘。はもう終わったよ」とかいって今あるもの全てを否定しようとする一部のモーヲタと同類。俺から言わせりゃ同じよ! だってメンバーが『オリジナルアルバム』と言い切ったところで、どうあがいても今作は編集盤以外の何ものでもないわけですよ? ポール・マッカートニーが公式アルバムと言ったから? 冗談じゃない! 「楽しみ方がひとつ増えた」くらいの軽い心構えができないもんかね‥‥。

何度も言うけど、下らない能書きたれて、大して聴きもしないで文句タラタラな奴らなんか信用するな! 自分の耳を信じろ! 自分が良いと感じたもの、それが全てなんだからさ。



▼THE BEATLES『LET IT BE...NAKED』
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投稿: 2003 12 03 12:00 午前 [2003年の作品, Beatles, The] | 固定リンク

2003/12/01

LED ZEPPELIN『HOW THE WEST WAS WON』(2003)

「とみぃの宮殿」5周年を記念する月、そしてその記念すべき日に何を取り上げようかと悩んだのですが‥‥やはり自分の原点となるようなアーティストを毎年12/1には取り上げてきてるので、今年もそんな感じで行こうかなと思ってたわけですよ。

そしたらさ、今年新譜出したじゃないの、こいつらが。いや、純粋な意味での新譜ではないんですが‥‥けど、間違いなく「新譜」ですよね、これ。

というわけで、俺の人生観を大きく変えやがったバカバンドの中のひとつ、LED ZEPPELINが今年リリースしたライヴアルバム、「HOW THE WEST WAS WON」を取り上げたいと思います。ベタとか言うなそこ。

ZEPと出会って早20年近く。当時「FMステーション」という雑誌を買っていた中学生の俺が、お約束ともいえる「ロックの名盤100選」みたいな特集記事を読んで、思いっきり惹かれまくったのがDEEP PURPLEの「MACHINE HEAD」とこのZEPのセカンドアルバムだったわけでして。同時に2枚、今や懐かしい存在となりつつある貸しレコード店「友&愛」に行って借りてきて。ある意味耳に優しいパープルは一発で気に入ったのですが、ZEPは‥‥なんじゃこりゃ!?的衝撃があったわけですよ。とにかく曲が良いとか何が凄いとか言えず、ただただ「凄い」と。結局、あれから20年以上経った今でも、俺にとってのZEPというのは「何だかよく判らないけど、凄い存在」なわけですよ。

その20年近くの間に、何度もリバイバルヒットをするわけですよ、彼等は。「LIVE AID」というチャリティーライヴでは、ドラムにフィル・コリンズとトニー・トンプソン(R.I.P.)を迎えて無理矢理再結成したり、'88年に行われた「ATLANTIC RECORDS」40周年記念ライヴでもドラムに亡くなったジョン・ボーナムの息子、ジェイソン・ボーナムを迎えて簡単に再結成してしまったり。'90年代半ばにはジミー・ペイジとロバート・プラントが活動を共にし「PAGE・PLANT」名義でMTVアンプラグドに出演したり、'98年にはアルバムまで作ってしまったりといろいろ無茶なことばかりし続けてきたわけですよ、オッサン達は。しかもその合間、'90年にリマスター・ベスト&ボックスセットをリリースしたり、やれ紙ジャケだ、新リマスターだ、新しいベストだと手を変え品を変え我々の購買意欲に火を着け、'97年には秘蔵音源集その1といえる「BBC SESSIONS」をリリースしたりして、新たに若いファンを産み続けているわけですよ。何なんでしょう、このオヤジ達は‥‥

そして2003年。バンドのデビューから約35年、解散から数えても23年近く経った今年、秘蔵音源集その2といえる今回の3枚組ライヴCD「HOW THE WEST WAS WON」と、「どこにそんな映像が残ってたんだよ!?」と思わず唸ってしまうような2枚組DVD「LED ZEPPELIN」を同時リリース。DVDの方なんて全部で約5時間ですよ!? これ全部観るのにひと月近くかかりましたもん。つうか集中力が続かないって、そんなに。ライヴアルバムもだけどさ‥‥本当に体力使うのよ、ZEPの音源聴く時は。半端な体力じゃ保たないもん、この「音の塊」に身を委ねるっていう行為は。

簡単な解説を。このライヴCDは、'72年6月25日のLAフォーラム公演と同27日のロング・ビーチ・アリーナ公演(共にカリフォルニア)の音源から、オイシイ所をひとまとめにして、あたかも1本のライヴを観てる(聴いてる)かのような錯覚を与える程の統一感を持たせた、所謂「疑似ライヴ実況盤」として編集されております。が、そんなことは言われなければ気づかないことであって、実際この3枚をぶっ通しで聴いていると‥‥知っている人は多いと思いますが、彼等のライヴというのはとにかく長く、特に初期は気分によってその長さが3時間にも4時間にもなったという逸話がある程なんですね。例えば2度目の来日時だったか、大阪かどこかではやはり4時間近く演奏したという伝説も残していますしね。このライヴ盤では約150分程度に収まってますが、まぁそれでもこれくらいが基本スタイルだったんじゃないかな?と思わせるような、本当に「度を超した」ライヴなんですよ。

曲数にしたら17曲。普通のバンドだったら90分もあれば十分でしょうけど、そこはZEP。同じ曲でも日によって長さが全然違ったりするんですからね。特に "Dazed And Confused" やジョン・ボーナムのドラムソロを含む "Moby Dick"、終盤の山場である "Whole Lotta Love" なんていうのは、本当に長いですからね。このアルバムでもそれぞれ20分を軽く超える即興の嵐ですから。楽曲至上主義の音楽ファンが聴いたら正直キツいと思うかもしれませんが、特にバンドをやってたような人なら誰もが唸ってしまうようなプレイの応酬ですよ。ホント、「凄い」以外の言葉が浮かばない程に「度を超した」ライヴ。

そしてこの頃('72年)頃になると、アルバムだと5作目「THE HOUSE OF HOLY」リリース前なのですが既に "Over The Hills And Far Away" や "Dancing Days"、"The Ocean" といった新曲もプレイしてるんですね。非常に興味深い。更にディスク1後半のアコースティック・コーナー(サードや4作目収録の "Going To California"、"That's The Way"、"Bron-Yr-Aur Stomp")も興味深いし(それまで唯一のライヴ作品とされてきた「THE SONG REMAINS THE SAME」では聴けないものですからね)。そうそう、何よりもその「THE SONG REMAINS THE SAME」と比べてもロバート・プラントの声が張りまくっていて、高音も気持ち良いくらいに出てるんですね。この後になると高音が厳しくなってきて、段々オリジナルのメロディーを端折って歌うようになりますからね("Rock And Roll"に顕著ですよね)。そういう面から見ても、当時の勢いや凄み、「TOO MUCHさ」が十分に伝わるんじゃないでしょうか?

それにしてもこの音源、本当に音がクリアですよね。当時のライヴ・レコーディングにはかのエディ・クレイマーが当たっていたんですが、今回リリースするに当たってケヴィン・シャーリーがミックスし直してるんですわ。この人、デジタル面で特に抜きん出てるプロデューサー/エンジニアなので、相当いじりまくったとは思うんですが‥‥聴いてて全然違和感感じませんから、さすがというか。

‥‥ってここまで小難しいことをいろいろ書いてきたけど、これら全部頭から一旦消し去ってください。そしてただひたすら150分、ぶっ通しで聴いてみて。ホント凄いから。何だかよく判らないけど凄いからさ。

‥‥って、5年サイト続けてきて、締めの言葉が「何だかよく判らないけど凄いからさ。」ってのも凄いよな。いろんな意味で。この成長の無さが5年も続く秘訣だったのか!(驚。のち号泣)



▼LED ZEPPELIN『HOW THE WEST WAS WON』
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投稿: 2003 12 01 03:40 午前 [2003年の作品, Led Zeppelin] | 固定リンク

2003/11/27

後藤真希『原色GAL 派手に行くべ!』(2003)

  後藤真希通算9枚目のシングルとなる「原色GAL 派手に行くべ!」。古くからのファンはこれを聴いていろいろ思うことがあるんじゃないですかね‥‥恐らく誰もが思い浮かべるであろうことだとは思いますが、ここでも敢えて書いてみたいと思います。

  タイトルナンバー "原色GAL 派手に行くべ!" という曲は、明らかにプッチモニでの後藤を意識して作られた(あるいはアレンジされた)楽曲だと思うんですね。イントロやエンディングでの布袋寅泰の "POISON" を彷彿させるギタープレイとリズムで「おお、ちょっとパンキッシュ!?」と思わせて(男性コーラスもそれっぽいしね)、歌い始めのサビでこれでもか!?ってくらいにキャッチーでポップでつんく♂らしいメロディを持ってくる。そしてAメロ~Bメロでの構成や挿入される「声ネタ」、これらが全て往年のプッチモニをイメージさせるようなものなんですね。いや、イメージさせるというよりもあからさまに狙ってるように感じますけどね。ちょっと素っ頓狂なんだけどカワイらしい後藤の歌い方も、"ちょこっとLOVE" や "ぴったりしたいX'mas!" といったコミカルな「女の子・後藤真希」を強くイメージさせるものだし、高橋諭一が手掛けたアレンジもプッチらしい「音のおもちゃ箱」的な騒がしいものだし(例えば松浦亜弥の一連のキラーチューンを思い浮かべてもらえば何となく想像つくでしょう)。結局空中分解してしまったかのような第三期プッチに代わり「私が引き継ぐから!」という強い意志というか力強さが存分に味わえる。恐らく今後のライヴでもキラーチューンとなるんじゃないですかね、これは。

  この曲を最初に聴いた時、そのコミカルな歌詞や振り付けも相俟って‥‥一瞬ですが、聞こえないはずの保田圭や吉澤ひとみ、あるいは市井紗耶香の歌声や踊る姿が聞こえてきたり見えてきたりしたような気がしたんですよ。ホント、それくらい「あの時代」がフラッシュバックしてきて‥‥けど、最終的にこれがただのノスタルジーで終わらなかったのは、ひとえに今の後藤が持つポテンシャルの高さのお陰じゃないかな、と。この1年で彼女は相当実力を付けたと思います。それは彼女のライヴを観たことのある人なら誰もが首を縦に振る事実でしょう。そんな1年の集大成としてこの曲を歌う。恐らくモーニング娘。卒業当時の彼女がこの曲を歌ったとしたら、ただのプッチモニ・リバイバルで終わっていたでしょう。もしかしたら「‥‥保田や吉澤がいないと淋しいなぁ」くらいの物足りなさを感じてたかもしれませんね。けど、実際には違った。それが「今の後藤真希」なわけですよ。

  一方カップリング曲 "恋人募集中" はロッカバラード調の8分の6拍子ヘヴィバラード。同じく高橋諭一によるアレンジで、ギター以外は全編打ち込みなんですが‥‥例えばBON JOVIとかAEROSMITHみたいなアメリカン・ハードロック・バンドがやりそうなロッカバラードといったイメージで、しっとりというよりは派手に歌い上げる後藤の歌を存分に味わえる1曲に仕上がってます。そういえば後藤、今回のシングルリリースに際して「そろそろバラードが歌いたかったんだけど‥‥」みたいな発言をしてたみたいですが、これを聞いて俺‥‥まぁ勝手な想像ですが、何故つんく♂が今回バラードを用意しなかったのを考えてみたんですよ。

  その前に‥‥後藤が公の場で歌ったバラード曲となると、自身のソロ曲となると昨年末にリリースされた "サン・トワ・マミー" と "君といつまでも" だけなんですよ。それ以外だと、テレビの歌番組で歌った "Who..."(浜崎あゆみ)と "Time goes by"(EVERY LITTLE THING)くらいでしょうか? これら2曲が彼女が大好きで、よくカラオケで歌う曲なんだそうです‥‥つまり「自信を持って他人に聴かせられる曲」として選んだのが、このバラード2曲なわけです。

  たったこれだけの情報で判断してしまうのは危険だというのは承知してますが、それでも言ってしまうと‥‥ほら、よく「俺/私、歌そこそこ上手いのよ。自信あるんだ」って他人に言い回る人程、勝負曲って感情を込めて歌い上げるバラードだったりしません? 今回の後藤の発言を耳にした時、そしてつんく♂が未だにバラードらしいバラードを彼女に用意しない事実に気づいた時、これを思い出したんですよ。

  言い方は悪いですが、今回の後藤の「そろそろバラードが歌いたかったんだけど‥‥」云々の発言って、考えようによっては「この1年でミュージカルもやった。ツアーも2回もやって大成功した。今のワタシ、相当イケてるんじゃない!?」ってな風にテングになりつつあるんじゃなかろうか、と‥‥いやいや、そんなことはないとは思ってますが。「今のワタシがバラード歌ったら、スゴイんじゃない!?」みたいな風に思ってたとしたら‥‥そりゃつんく♂も「まだまだや!」って焦らしますよね? 俺がつんく♂だったら焦らすもん、絶対に。シングルではまだ2~3枚先まで切らないと思う。アルバム用には‥‥微妙なところですね。来年1月末に待望のセカンドアルバムがリリースされるそうですが、今年リリースしたシングル4枚("うわさのSEXY GUY"、"スクランブル"、"抱いてよ!PLEASE GO ON"、"原色GAL 派手に行くべ!")を軸として、どこまで音楽的な枠を広げていくのか。ファーストアルバム「マッキングGOLD (1)」が非常に幅の狭い、遊びの少ない作風だったことを考えると、今回はバラードもありえなくないんだけど‥‥さて、どうなるんでしょうね?

  今回何故つんく♂がこういった楽曲を用意したか、それは本人にしか判りませんが‥‥きっと今年1年頑張った後藤に対する彼なりのご褒美みたいなもんだったんじゃないですかね? 今年最後の日に、ソロとしては初めてとなる紅白歌合戦があるし、年末年始の音楽番組にもいろいろと出演するでしょう。そこで歌い上げるような綺麗なバラードを用意するのではなくて、あくまで「後藤とバカ騒ぎしようぜ!」的な脳天気チューンを持ってくる。松浦だったり藤本美貴の場合は年末のリリースでは毎回ミディアムスロウ・ナンバーを用意してきましたが、あくまで後藤は後藤、そのシステムに則る必要はないわけです。「最も後藤らしいやり方で最高の1年を締め括る」‥‥そういう意味では、本当にピッタリで、そしてもってこいの1曲だと思います。その代わり、今後の伏線ともいえるようなロッカバラードをカップリングに用意して、しっかりと彼女の今現在の実力まで見せつける。十分じゃないですか!

  売れる/売れないは別として、俺はこのシングル大好きですよ。2曲ともバランス取れてるし。俺の中ではかなり上位にランキングするシングルですね。

  ま、この "原色GAL 派手に行くべ!" で紅白に挑むとは思いませんけど、それでも‥‥おめでとうございます!ってことで。ねっ?



▼後藤真希『原色GAL 派手に行くべ!』
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投稿: 2003 11 27 01:00 午前 [2003年の作品, ハロー!プロジェクト, 後藤真希] | 固定リンク

2003/11/25

the pillows『PENALTY LIFE』(2003)

  「あれっ、こんなもん!?」。それがthe pillows待望の新作を初めて聴いた時の感想でした。期待が大き過ぎたのか、それとも俺の耳がどうにかしちまったのか‥‥

  前作「Thank you, my twilight」が昨年を代表する大傑作だったし、先日リリースされたこの新作からの先行シングル「TERMINAL HEAVEN'S ROCK」も十分期待に応えてくれた楽曲だったんだけど‥‥どうにもこの「PENALTY LIFE」の第一印象は、地味。何か前作を通り越して再び「Smile」辺りにまで戻ってしまったかのような地味さだったのね。いや、悪くはないのよ。悪くはないんだけど、一発で唸ってしまうような衝撃度は皆無だったのね。シングルに収められてた3曲には少なからずそういった要素を感じていたんだけど‥‥あー、何か悪い方に空回りしてるんじゃないかな、考えすぎなんじゃないかな、とかいろいろと勝手に考えちゃいましたね。

  楽曲自体はどれも小粒でポップなロックチューンばかりで、それはそれで問題ないんですよ。多分1曲1曲を取り出して聴いてみたら、絶対にシングル「TERMINAL HEAVEN'S ROCK」を聴いた時と同じような反応をすると思うし。けど、これが1枚のアルバム、11曲入りの作品集として聴いてみた時、どうしてもシングルの時に感じたようなドキドキ感が体感できなくて。何故なんでしょうね? 絶対に悪い作品集だとは思わないし、曲も全然悪いとは思わないのに‥‥

  自分自身の心境とか今現在聴いてる音楽の趣味とかも多少影響してるとはいえ‥‥いや、それでもpillowsの新作には大変期待してたんですよ? 来年行われる単独ライヴにも足を運ぶつもりでいたし。あー何でこんなことになっちゃったのかなぁ‥‥って。

  もし俺自身に理由がないのなら‥‥pillows側に変化があったってことですよね。で、これも勝手に想像で書いちゃうんですが‥‥このアルバムを制作するに当たって、相当苦労したんじゃなかろうか?なんて思うのですよ。このアルバムを聴いた時に「あれっ、こんなもん!?」って思ったのと同時に「考えすぎじゃねぇの?」とも感じたんですね。多分、前作を踏まえてこの新作の制作に当たったと思うんですが‥‥煮詰まっちゃったのかなぁ、と。「pillowsとして平均点以上の楽曲」を作ることは難なく出来たと思うんですよ。現に前作のツアー中に、このアルバムにも収められてる "TERMINAL HEAVEN'S ROCK" と "Moon Marguerite" の2曲を制作、ライヴで発表してたわけですし。このアルバムで聴いてもこれら2曲はやっぱり素晴らしいと思うし、勿論それ以外の楽曲もこれら2曲に勝るとも劣らない内容なわけですし。ところが、これがアルバムとなると前作を超えられなかった。何故だろう? これがpillowsとしての限界なのか、それとも‥‥いや、前作が特別過ぎたんだ、なんて考え方もあると思うんですね。波に上手く乗れたんだ、と。で、その波に再び乗ろうとした結果、いろいろ考えすぎたのかな、と。

  アルバムを通して聴くと、何となく曲順に難があるような気がするんですね。それとアレンジ。非常にロックしてるんですが、ちょっとソフトコーティングしてない!?って感じたんですよ、今回の楽曲。メロが前作以上にポップになってるように感じられるし、それに対応したアレンジだったと思うんですが、どうにもそれが良くなかったんじゃないか、と‥‥いや、その辺はもう俺個人の趣味の問題ですからね。

  何度も聴いているうちにドンドン気に入っていく‥‥というのもあるんですが、これってもしかして「自分が聴き慣れただけなんじゃないの?」なんて穿った見方もしてしまいたくなる程、このアルバムに対するテンションが下がり気味なんですよ、俺。当然聴く頻度も前作程じゃないし‥‥「iTunes」に落として曲単位でシャッフルして聴くことは今後多々あると思うんですが‥‥う~ん‥‥

  まさかpillowsの新作に対して、こんなにキツいことを書こうことになろうとは‥‥ファンの皆さん、期待に応えられなくてゴメンナサイ。けどこれが偽らざる俺の感想なんですわ。pillowsを好きだからこそ、愛してるからこそ、正直に書いておこうと思います。大して気に入ってもないのに「今回もサイコーでしたねっ!」なんて嘘は書けないですからね。それに、数ヶ月経ったらここに書いたことを否定する程に気に入るようになってるかもしれないし。

  そうそう、ライヴにはちゃんと行こうと思ってますよ。ライヴで聴いたらまた感想が判るかもしれないしね。いや、絶対にそうだと信じてるし!

  最後に‥‥俺がこのアルバムで一番気に入ったのが、実はシークレットトラックのあの曲だったってことは、ここだけの秘密ですよ。「本編気に入ってないのかよ!」ってツッコミはナシの方向でねっ。



▼the pillows『PENALTY LIFE』
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投稿: 2003 11 25 12:00 午前 [2003年の作品, pillows, the] | 固定リンク

2003/11/19

Mr.Children『掌 / くるみ』(2003)

  この9月に "タガタメ" というラジオでしか聴けない新曲を発表したMr.Children。CD音源としての新曲は昨年末の "HERO" 以来、約11ヶ月振り。メディアにも少しずつ露出が増えていき、いよいよテレビの歌番組にも登場するというし、ゆっくりですが順調に「転がり」始めているようですね。

  今回は初の両A面シングル。タイプの違う2曲を敢えて両方ともリーダートラックとして選び、それぞれにPVまで制作。しかもそのPVがCD-EXTRAとして2曲分収録されているんだから、ホント豪華。DVDというフォーマットを選ばずに敢えて「エンハンスド仕様」にした辺り、何となく『今の風潮』に対する主張のような気が‥‥ってのは深読みし過ぎでしょうか。

  そうそう、これまでうちでやってきたミスチル関連のレビュー。某雑誌みたいな深読みばかりでしたが、今回はそれを止めようと思います。面白がってくれてる人が少なからずいるのは知ってるんですが、今の俺にはああいうのは書けません。いや、書きたくないんです。この先とか過去とか今はどうでもよく(本当はよくないけど)、ただ目の前にあるこの2曲とだけ触れ合っていたい。そう強く思うんですよ。ああいうのは俺よりもっと上手く書ける人が沢山いるだろうから、そういう人達にお任せします。

  さてさて、本題に入りましょう。まず1曲目の "掌"。「攻撃的なロックチューン」という話を聞いていましたが、実際にはそんな攻撃的な曲というわけではなく、ミドルテンポで心地よい跳ね気味なリズムを持つポップロックといった印象。アレンジ的にも "ニシエヒガシエ" 以降の流れを組むもので、スティングとかU2辺りを彷彿させる色合いかな。サビの「ひとつにならなくていいよ」という歌詞が非常に印象的な、いろんな意味で「ミスチルらしい」‥‥いや、「桜井和寿らしい」楽曲に仕上がっています。最初聴いた時は幾分地味な印象を受け、「これ、シングルっていうよりアルバム曲だよな‥‥」と思ったりもしたんですが、もしかしたら今のミスチル/桜井がこういったモードなのかもしれませんね。

  2曲目の "くるみ" はこれまた彼等らしいバラードナンバー。これもシングルにするには地味過ぎて、かといってカップリングにするにはよく出来すぎてる1曲で、やっぱりアルバムの5曲目とか8曲目辺りに登場しそうなタイプの曲かな、というのが第一印象。勿論悪い意味ではなくてね。使われているシンセやアコーディオン、ストリングスといった音色が「従来のミスチルらしさ」を醸し出しているので、何となく懐かしい香りもしつつ、それでいてずっと大人な「色気」も感じる。これは「IT'S A WONDERFUL WORLD」にも通ずる要素であるんだけど、ここで聴ける2曲はその前作ともちょっと違った色合いが見え隠れする。勿論それは成長なんでしょうけど、それだけじゃない気もするし。

  2曲に共通して言えるのは、「IT'S A WONDERFUL WORLD」周辺のシングル曲と比べて、まず第一印象が「地味」に感じられるという点。所謂シングル特有の「キラーチューン」的側面が完全になりを潜め、もっと「深さ」を追求してるように思えますね。さっき「成長」と書きましたが、これは『進化』というよりも『深化』といった方が近いかもしれませんね。Mr.Childrenを総括しつつ追求していったのが「IT'S A WONDERFUL WORLD」だとしたら、現在制作されているアルバムは更に重心の低い作風になるんじゃないのかな‥‥という気がしますね、このシングル2曲や "タガタメ" を聴いてしまうと。振り幅が非常に大きかった前作に対し、トーンは同じなのにいろんな形をしてるような‥‥そんな新作が期待できるんじゃないでしょうか? そういう意味では俺、「Q」に比較的近い作品が誕生するんじゃないかな、と読んでるんですが‥‥

  あっ、いけね。深読みしないとか最初に宣言したのに、結局調子に乗ってやっちゃったよ。まぁいいか、いつものことだし。

  アルバムが来年の早い時期にリリースされるとは思いますが‥‥個人的にもう1枚、シングルが欲しい気がします。上に書いたような「同じトーンで奏でる異形の楽曲」をもうワン・パターン欲しいかな、と。まぁあんまり既出曲が増えると、アルバム聴いた時の驚きが少なくなるからなくてもいいような気もするけどね。

  今回のシングル、これまでミスチルをバカにしてきたような人にこそ聴いて欲しいかな、と思ってます。この正反対なようで1本筋の通った2曲の「従来のミスチルみたいだけど、それでいて新しいミスチル」を聴いて、どういう反応を示すのか‥‥ちょっと楽しみですね。



▼Mr.Children『掌 / くるみ』
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投稿: 2003 11 19 12:00 午前 [2003年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2003/11/18

DAVID BOWIE『REALITY』(2003)

ええ、今度の1月8日で57歳ですよ、デヴィッド・ボウイ翁は‥‥ったく、何なんだよ、このジイサマは‥‥通算26作目となるオリジナルアルバム「REALITY」。前作「HEATHEN」リリースからたったの15ヶ月しか経ってないっていうんだから、驚きというか何というか‥‥'70年代の『ベルリン3部作』と呼ばれるアルバムの内、「LOW」と「HEROES」の2枚がたった9ヶ月の間に作られたというのに何となく似てますよね。ただ大きな違いは、あの頃のボウイは30代で脂が乗りきった時期、そして今は還暦間近のジイサマという現実。ま、こればっかりはどうしようもないですけどね。特にこの2枚ってボウイのディスコブラフィーの中でも特殊且つ名盤と呼ばれることの多い作品ですし、それと比べること自体が間違ってるのは承知してるんですが、それでもこの「1年3ヶ月というインターバル」、しかも56歳のオヤジが成し遂げたという事実は称賛に値すると思うのですよ。

ご存じの通り、前作「HEATHEN」以降ボウイは再びトニー・ヴィスコンティと手を組んでアルバム制作に当たっています。当然今回の「REALITY」もヴィスコンティとの共同プロデュースなのですが‥‥これがね、悪くない。いや、いいんですよ。俺ね、周りの評価に反して'90年代の作品‥‥特にブライアン・イーノと共に制作した「OUTSIDE」と、ボウイなりの「インダストリアル」アルバムである「EARTHLINK」の2枚、大好きなんですよ。この人って結局、如何に周りの期待を裏切り続けるか、そしてそれが上手く機能するのか?って人だったわけでしょ。'70年代、少なくとも'80年代初頭まではそうあり続けたわけですよ。ところが「LET'S DANCE」での大成功以降、その成功を維持しようっていう魂胆が見え見えで、そういった冒険心が薄れていったように感じるんですね。確かに'80年代末にTIN MACHINEというバンドを組んでみたものの、話題性は十分ながらもやってる音楽は「LET'S DANCE」以降の延長線上でしたよね、良くも悪くも。で、「BLACK TIE WHITE NOISE」でちょっと持ち返しつつ、「OUTSIDE」と「EARTHLING」で完全に吹っ切れた‥‥と俺は解釈してたんですね。だからこそ、'96年の来日公演も楽しめたわけですよ。

でも、多くのボウイ・ファンからすると、完全に逆みたいなんですね。特に古くからのファンだと論外らしく‥‥頭硬いんじゃねぇの!?とか神経を疑ったものの、まぁ気持ちも判らないでもないんだけどね。実際、俺も'70年代のボウイを最も愛しているわけだし、やはりあの頃の幻影を追ってしまうわけですよ(リアルタイムで体験してないから、余計にね)。

'99年にリリースされた「HOURS...」というアルバムは、そういう意味では従来のボウイ・ファンが唸りそうな「地味渋ボウイ」を再現した、非常にアーティスティックで深い作品だったと思うんですが、どうしても決定打に欠けた1枚だったように思うんですね(個人的には好きですよ。一般論としての話ですからね)。で、「HEATHEN」‥‥ここでも「あと一歩」という感じだったんじゃないですかね、古き良き時代のボウイを求めるファンからすると。

そして短期間で登場したこの「REALITY」。俺はこれ、本当にいい意味での「開き直り」が感じられる作品集だと思うんですよ。だけど、決して下世話な感じがしない。深さという意味では「HOURS...」よりも深い。だけど派手さという意味ではここ数作で一番なんですね。アッパーでウルサイ曲があるってのもあるんですが、徹底的にバンドサウンドに拘って鳴らされる「音」がちゃんと主張してる。そういう意味で「派手」だと思うわけですよ。多分これは前作を制作してツアーも一緒に回ったメンツでの制作というのも大いに影響してるんでしょうね。それと楽曲の幅が前作よりも広がったという意味でも派手さを感じますね。シングルにもなった "New Killer Star" や "Looking For Water"、"Reality" のような攻めの曲もあれば、ジャズかと錯覚する "The Loneliest Guy" や "Bring Me The Disco King" という地味目な曲もある。そして "Pablo Picasso" や "Try Some, Buy Some" というようなカバー曲まである(前者がジョナサン・リッチマン、後者がジョージ・ハリスンの曲。日本盤には更にTHE KINKSの "Waterloo Sunset" がボーナストラックとして追加収録されています。個人的にはアルバムの流れを断ち切るかのようで蛇足に感じるんですけどね)。「HOURS...」や「HEATHEN」が全体的に統一されたトーンのアルバムだったのに対し、この「REALITY」ってもっと多彩で、そして明るいトーンのアルバムに感じられるんですよね、サウンドだけ聴いてると。

ところが、歌詞を読んでしまうと印象が一変します。というのも、このアルバムで歌われている新曲の殆どが「9・11」以降に書かれた曲‥‥ニューヨークに住むボウイにとって、いや、例えニューヨークに住んでいなかったとしても彼が(意識的にだろうが無意識にだろうが)そういった現実から影響を受けるのは必然であり、それが直接的表現ではなくても聴き手の我々は彼の歌からいろいろと感じ取っていくわけです。そしてそれは「REALITY」というアルバムタイトルに端的に表れているのではないでしょうか。

そういったポリティカルな側面がこのアルバムをより「強い」ものにしてるのかもしれませんね。だからこそボウイの歌やひとつひとつの「音」が「派手」に鳴っている。そして我々は(その歌詞の意味が判ろうが判るまいが)新しいボウイに惹かれていく。取っ掛かりはそれで十分じゃないでしょうか?

いよいよ正式発表になったボウイ8年振りの来日公演。前回は布袋寅泰と武道館で共演したんだっけ。さてさて、今回はどういったステージを見せてくれるのか‥‥そしてこの新曲達をどんな風に鳴らすのか。非常に楽しみですね!



▼DAVID BOWIE『REALITY』
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投稿: 2003 11 18 07:44 午前 [2003年の作品, David Bowie] | 固定リンク

2003/11/14

METALLICA『St.Anger (EP)』(2003)

来日記念ってことで、シングルも取り上げておきましょうか、ってことでMETALLICAです。最新アルバム『St.Anger』のリリースから遅れること1ヶ月、今年の7月上旬にリカットされたのがこのシングル「St.Anger」。丁度日本盤は来日が発表になった頃だったのかな? だからなのか、CD帯に「来日決定記念盤」って書いてあるんだよね。ま、そんなのこじつけなのはみんな知ってると思いますが、とりあえず短めにいろいろ書いてみたいと思います。

ご存じの通り、海外でシングルをリリースする場合、タイトルトラックだけ一緒でカップリング曲だけ何枚かに振り分ける「CD-1&2」形式みたいなのが主流になってますが、METALLICAの場合も『LOAD』の頃からこの形式に則ってシングルCDを2枚、場合によってはそこに7インチのアナログ盤も加えてリリースしちゃったりしてます。90年代はそこまでコアな追っかけ方をしてこなかったので内容がどう違うのかは判りませんが(詳しくはオフィシャルサイトのディスコグラフィーをご覧になるのが一番かと)、とにかく今回も海外ではシングルCDが2枚と7インチ1枚の計3フォーマットでのリリースとなっています。が、日本の場合はそんな阿漕な商売はせず、ちゃんと1枚にまとめてリリースしてくれるんですから本当に有り難いものですね。

というわけで、今回はその日本盤を中心に話を進めていきますのでご承知ください。

まず今回、カップリングには全てカバー曲が用意されています。しかも全部RAMONES。これは恐らく今年2月にリリースされたRAMONESのトリビュートアルバム用に、試しに数曲レコーディングされたんだと思います。丁度アルバム制作期間中だったこともあって、リラックスするには良い企画だったんじゃないでしょうか。いつも以上にまったり気味のMETALLICAが堪能できますし。

プロデュース……というかいつもの如く「NOT VERY PRODUCED」ということで、アルバム同様ボブ・ロックが担当しています。日本盤にはレコーディング・クレジットが載っているんですが、全部タイトル曲「St.Anger」と同じ(エンジニア等が)、レコーディング時期も2002年12月となっています。トリビュート盤に採用された「53rd & 3rd」は残念ながらシングルには入っておらず、代わりにそのトリビュート盤のタイトルにもなった「We're A Happy Family」や「Commando」、「Today Your Love, Tomorrow The World」、「Now I Wanna Sniff Some Glue」の4曲が収録されています。また日本盤には収録されませんでしたが、UK盤のディスク2には「Cretin Hot」が収録されています。ということで、今回のトリビュート盤に際し、METALLICAは6曲ものRAMONESナンバーを録音したことになります。まぁ6曲とはいっても全部カバーというよりはコピーに近い代物ですし、全曲実質2分前後の短い曲なので、本当に肩の力を抜いて、1日でドバーッと録音してしまったのかもしれませんね。

シングルのタイトルトラック「St.Anger」については、今更何も言うことはありません。完璧すぎる名曲。未だ初めて聴いた時の衝撃は忘れられません。間違いなく今年一番の衝撃でしたしね。そんな緊張感漲るナンバーの後に、ユルユルなパンクカバー(コピー)が約8分(「St.Anger」1曲分と同じ長さ!)が続く辺りが、またMETALLICAらしいというか‥‥これは「GARAGE DAYS RE-RE-REVISITED」ではなく、日本盤ブックレット内に書かれている通り「GARBAGE DAYS REVISITED」と呼んだ方が正しいですね。サウンド自体は間違いなく今のMETALLICAなんだけど……いや、これはこれで好きですよ。曲はもう名曲揃いなわけで……ただね……これまでMETALLICAのパンクカバーというと、MISFITSとかANTI NOWHERE LEAGUEとかDISCHARGEみたいなコアなバンドばかりだったからね、ここまでメジャーで直球なカバーは意外というか……笑っちゃうんですよね、聴いてて。面白いんだけどさ。ユルすぎよマジで。

そういえば現在行われている来日公演、13日の大阪ではこのEPから「Commando」が演奏されたそうですね。確かに、ここから何かやるとしたら「Commando」か「We're A Happy Family」くらいだよなぁ。メジャー度からいったら後者なんだろうけどさ。まぁとにかくアレです。このシングルは新作からファンになった人というよりも、METALLICAの音源なら何でも持ってないと気が済まないって人とか、彼等のカバーソングなら全部聴いてみたいっていう人にはうってつけなんじゃないでしょうか。あと『GARAGE INC.』での彼等が気に入ったって人もね。



▼METALLICA『St.Anger (EP)』
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投稿: 2003 11 14 05:00 午前 [2003年の作品, Metallica] | 固定リンク

2003/11/12

カントリー娘。に紺野と藤本(モーニング娘。)『先輩 ~LOVE AGAIN~』(2003)

  カントリー娘。に紺野と藤本(モーニング娘。)名義になって早くも2枚目のシングルとなる今回、前作 "浮気なハニーパイ" から約4ヶ月で届いたこの "先輩 ~LOVE AGAIN~" は珍しく3曲も入ってるマキシシングルとしてのリリース。内訳は新曲が2曲("先輩 ~LOVE AGAIN~"、"何が愛かわからないけど…")と太陽とシスコムーンの名曲 "丸い太陽" のカン紺藤バージョン。通常より300円高い価格設定ですが、これなら満足のいく内容ではないでしょうか。というのも、どの曲も粒ぞろいで、特にタイトルトラックは‥‥今年の5曲の中に食い込みそうな程俺の心を揺さぶっているんですから。

  タイトル曲 "先輩 ~LOVE AGAIN~" はつんく♂の楽曲で、アレンジには平田祥一郎という始めて名前を目にする人が当たっています。曲調としてはR&Bテイストをほんのり匂わせつつ、実はメロがしっかりした純歌謡曲というもの。あくまでこれまでの「つんく♂歌謡」の範疇で語られるべき作品ではあるんですが、これがなんの、かなりツボなんですよ。タイプとしては藤本美貴がソロ時代にリリースした "ボーイフレンド" 路線。しかし、こちらの方がもっとゆったりしたノリで、若干地味かな、と。しかしサビへの転調やそのサビのメロ等はここ最近のつんく♂作品のノリとはちょっと違うような気が。つうかそこがいいんですが、この曲の場合。全体的な雰囲気としてこれからの時期に合いそうなノリ。つんく♂って毎年、こういったミディアムスロウのマイナーチューンをこの時期にぶつけてきますよね?('01年は松浦亜弥 "100回のKISS"、'02年は先の "ボーイフレンド")で、そういうこともあってか、どうしても藤本に用意された曲なのかな‥‥なんて穿った見方をしてしまいそうで。けど、要所要所で聴ける里田やあさみの歌声もいい味を出してると思うし、みうなに関してはまだ2枚目ってこともあってやっぱりこれからかなぁ‥‥という気も。そして‥‥紺野がいい味出してるんですわ。紺野の掠れ気味の声で危うい歌声がまたこういったミディアムスロウのマイナーチューンに合ってるんですわ。そういえば モーニング娘。"Do it! Now" でもいい味出してたしね。

  中間部に登場する藤本のセリフに関しては‥‥ファンなので正視できません。なのでコメントはパス!

  2曲目、"丸い太陽" は上にも書いたように太陽とシスコムーンのヒット曲。当然ながら「2003Ver.」ってことで、バックトラックは新しくなっています。アレンジャーは土肥真生という人。原曲がもっとソウルフルなポップソングといったイメージが強かったのに対し、こちらは使われているサウンドひとつひとつにしても「軽さ」が目立ち、「冬」って面を強調してるかな‥‥という音色も数多く使われていますよね。そういった意味で、真冬の軽快なポップチューンといった新しい服を着せられたイメージ‥‥かな? 歌に関しては‥‥絶対に原曲のイメージが強いし、「前の方が良かった」っていう人が多いのは判ってて敢えて言うけど、これはこれでいいんじゃないかと思います。ティーンエイジャーが歌うことで原曲よりも若々しくて軽やかなイメージが増長したしね。コーラスに加わった本家の稲葉貴子も心中複雑というよりは「こうやって自分達の歌が後輩達に歌い継がれている」現実に喜んでいるんじゃないでしょうか?

  3曲目、"何が愛がわからないけど…"。実は最初にブックレットに目を通さずに3曲続けて聴いた時、この曲が最も「従来のカントリー娘。」らしいな、と感じてたんですよ。サウンドやアレンジ自体は現代的だし、1枚のマキシシングルとして他の2曲とのトータル性を強く感じたのですが‥‥どうしてでしょうね? メロの運び方がりんね在籍時のカントリー娘。っぽいと感じたからでしょうかね? つんく♂にしては古めかしい、いいメロディだなぁ‥‥と思ってたらこれ、たいせー作曲なんですね! ビックリした。けどさ、たいせーだから悪いとは思わなかったのね。逆に‥‥先にクレジットを見てから曲を聴いていたら、こんな風に純粋に曲と向き合うことができなかったかもね。どうしてもイメージ悪いからさ、たいせーの書く曲って。

  たいせーは作曲のみで、作詞・プロデュースは勿論つんく♂、アレンジはメロン記念日 "赤いフリージア" や先日のああ! "FIRST KISS" 等を手掛けている湯浅公一。俺内でかなりのヒット率が高いアレンジャーですね。で、これも当たりだったかな、と。バックトラックには高橋諭一もギターで参加してるんで、余計に古き良き時代を思い出しちゃったのかなぁ‥‥もしかしたらこの曲って市井紗耶香に用意した曲だったのかもしれないけど‥‥やはりプロデューサーにしろ作詞家にしろアレンジャーにしろ、優秀な人が関われば関わる程、元のメロディが持った良さ以上の魅力を持ち得るものなのでしょうか‥‥たいせーにしてもまさかこんな風に俺に褒められてるなんて思ってもみないでしょうね!

  というわけで、相変わらずベタ褒め状態なんですが‥‥「カントリー娘。に紺野と藤本(モーニング娘。)」というユニットとして見た場合、まだシングル2枚ですし方向性も両極端、これといったカン紺藤らしい魅力というのはあと一歩といった印象なんですが、そういうのを抜きにしても "先輩 ~LOVE AGAIN~" は素晴らしいなぁ、と。これ、仮に藤本のソロとしてリリースしてたら‥‥それなりに高く評価してたでしょうけど‥‥ここまでの評価はしなかったかもなぁ。結局、あさみや里田、みうな、そして紺野の個性が加わったことで藤本にない部分をフォローしている‥‥だからこその魅力なのかなぁ、と。ま、それは藤本サイドからのモノの見方ですけどね。カントリー娘。サイドから見たら、またこれはこれで悩みの種なんでしょうけどね‥‥

  あー、今年は5曲選ぶの、本当に大変そうだなぁ‥‥。



▼カントリー娘。に紺野と藤本(モーニング娘。)『先輩 ~LOVE AGAIN~』
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投稿: 2003 11 12 12:00 午前 [2003年の作品, カントリー娘。に紺野と藤本(モーニング娘。), ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

2003/11/05

MOGWAI『HAPPY SONGS FOR HAPPY PEOPLE』(2003)

スコットランドの「ノイズ・テロリスト」、MOGWAIが'03年春にリリースした通算4作目のオリジナルアルバム「HAPPY SONGS FOR HAPPY PEOPLE」は、ある種それまでの活動に一区切りつけるかのような集大成的内容になっているだけでなく、それまでとは違う「色合い」も見出すことができます。前作「ROCK ACTION」はそれまでの轟音ギターサウンドを後退させ、ムーディーで聴かせる曲(そう、前作ではアルバムの半数がボーカル入りだった)、穏やかな空気感を持った曲に支配されていたけど、今度のアルバムはどうだろう‥‥確かに前作の延長線上にある作風でもあり、尚かつ前作以上に轟音サウンドをちゃんと取り入れつつ(ま、そうはいっても初期程のうるささや狂気は感じないですけどね)、曲もコンパクトにまとまっていて(殆どの曲が4~5分台)、非常に聴きやすくて取っ付きやすいアルバムになっています。

新作では普通のボーカル・トラックは皆無。ボコーダー等を使ったコラージュ的なナンバーは幾つかありますが、とても歌モノと呼べる代物ではなく、完全に「楽器のひとつ」として機能しています。

穏やかさや緩さといった点では前作に近い印象を受けますが、ドラマチックに盛り上がっていく曲が多く、例えば静かにギターのアルペジオから始まり、徐々に徐々にとノイズギターが被さっていってクライマックスを迎える "Killing All The Flies" や、3本のギターが微妙に違ったフレーズ(アルペジオ)を絡ませていき、轟音ギターが加わった瞬間に何かが取り憑いたかのような激しさを見せる "Ratts Of The Capital" といった辺りは最も「MOGWAIらしさ」を感じることの出来る楽曲なのではないでしょうか。この辺りの楽曲は「COME ON DIE YOUNG」辺りを好むファンにもアピールする内容かと思いますし、また前作しか知らない人には(って、そういう人は少ないと思いますが)驚きに値する楽曲かもしれませんね。

前作を覆っていた独特な暗さ・冷たさが減退し、多少なりとも幸福感のようなものを感じられる‥‥正にタイトル通りかもしれませんが‥‥それもこのアルバムの特徴のひとつと言っていいでしょう。それは良い意味での「殺伐さ」の減退かもしれませんし、またある種のファンにとっては「緊張感の緩和」を意味するものかもしれません。確かに初期のような怒りに満ちた轟音サウンドも彼等の魅力であり、自分自身もそういった面に魅了されたひとりなのですが、前作の路線も好む自分としてはこの新作のサウンドもまた「MOGWAIらしさ」を存分に感じ、楽しむことが出来るものとして成り立っているんですよね。

例えば5曲目 "Boring Machine Disturbs Sleep" で聴ける、まるで賛美歌のような穏やかさ、そして7曲目 "Golden Porsche" で感じることのできる優しさ、等‥‥そういった「これからのMOWAI」的な新しい面もまた、こういう形で取り込まれると「ああ、何かMOGWAIらしいよな‥‥」と思えちゃうんですよね。決して違和感は感じることなく、ごく自然な形で変化・進化してるように感じられますよね。

バンドはこのアルバムを「作っていて楽しかった」そうです。そういった「純粋に音楽を楽しむ心」が、このタイトルに繋がっているのかもしれません。しかし、ここで俺はひとつ、わざと曲解をしてみようと思います。「ハッピーや人々の為の、ハッピーな曲」というタイトルの作品集ではあるんですが、これって逆説的に捉えちゃってもいいんじゃないかな、と‥‥つまり「決してハッピーになれない人達に向けた、現実的な曲達」‥‥そんな中からほんの一筋の光を見出すように、このアルバムには轟音や静寂に紛れて、ひと握りの幸福感も添えられている。全てがハッピーの塊じゃないからこそ、そういった人々にとってよりリアルに響く‥‥そういう類のアルバムなのかなぁ、と。深読みし過ぎだとは思いますが、この音の渦の中に身を委ねていると、自然とそういう気持ちになってくるんですよね‥‥



▼MOGWAI『HAPPY SONGS FOR HAPPY PEOPLE』
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投稿: 2003 11 05 02:50 午前 [2003年の作品, Mogwai] | 固定リンク

2003/11/04

Buffalo Daughter『Pshychic』(2003)

  Buffalo Daughter2年振り、通算4作目(でいいんだっけ?)のアルバム、「Pshychic」。これまでは「Grand Royal」からのリリースだったのですがレーベル自体が閉鎖してしまった為、今回から「V2 Records」からのリリースとなっております。しかもこのアルバム(日本盤ね)、通常のCD(CD-DA)とスーパーオーディオCD(SACD)とのハイブリッド盤となっていて、これまで同様普通のCDプレイヤーでも楽しめるし、更にSACDプレイヤーを持っていればもっと高音質のサウンドを体感することができるという代物でして。最近この手のディスクが増えていて面白いなぁとは思うんですが、いかんせんSACDプレイヤー自体を持ってないものでして、そのサウンドの凄さは未だに体感したことはありません。そもそもSACD自体(ハイブリッド盤含む)買うのが今回初めてでして。まぁ結局俺は普通のCDプレイヤーでしか聴けない環境なので、その辺に関しては「音がどう凄い!」等のコメントは出来ないわけでして‥‥

  前作「I」がポストロック色を強めながらもどこか「歌モノ」的雰囲気が強かったこともあり、個人的にはかなり気に入っていた1枚なんですが、この新作ではそういった「歌モノ」的要素はかなり後退、ひとつのフレーズ/リフを延々リピートするという意味では非常にテクノ/トランス的ではあるんですが、そこまで機械的でもなく、リズムの躍動感なんかは完全に「血の通った」リズムといった印象を受けるし‥‥ま、確かに「ポストロック」と呼んでしまえばそれまでなんですが、でも前作とは違ったものを強く感じるし。どっちかっていうと前々作「New Rock」に近いかな、なんて気もするし。多分ストレートなロック色が復活してる分、余計にそう感じるんでしょうね。

  歌にしても「聴かせる」というよりも、楽曲の中のひとつの「フレーズ」といったような使われ方をしてるのが新作の特徴のひとつなんじゃないですかね。そういった使い方は前作にもあったのですが、このアルバムの場合は全てにおいてそういう方向に進んでいるっていう点において、非常に興味深いものを感じますね。曲自体も5曲で51分、殆どの曲が10分近いものだし。そんな長尺な楽曲の中において歌の占める割合は1~2割といった程度。元々このバンド自体がそういった指向性(歌を聴かせる)が強いバンドではなかったわけだから、それはそれで納得いくんですが、それにしてもこの割り切りは正直凄いなと思います。声にしても大野由美子による高音とシュガー吉永による低音のユニゾンが相変わらず気持ちいいしね。

  圧巻なのはやはり、最後に収録された代表曲のひとつ、"303" のライヴテイクでしょうか。これ、20分以上もあるもの凄いテイクでして‥‥実験音楽とか前衛音楽とかいろいろ呼び方はあると思うんですが、素直にすげぇ!と言わざるを得ない1曲ですね。冒頭部での音のやり取りを聴いて引いてしまう人もいるかと思いますが、そのまま聴き続けていると段々リズムが入っていって、楽器がひとつひとつと増えていって、独特なグルーヴが生み出され‥‥いろいろ呼び方/呼び名はあると思うんだけど、ただひたすら凄くて圧倒的。なんていうか‥‥音の広がりも凄く気持ちいいし開放的だし、去年のフジロックで彼等を観たことを思い出す‥‥そんな気持ちいい音。それはライヴテイクのみならず、全体に言えることなんだけどね。

  聴くところによると、ここに収録された殆どの楽曲が一発録りだったとのこと。コンセプトとか決め事等を一切決めずにスタジオで音を出したものを、そのまま収めたのがこのアルバムらしい‥‥ってこれがホントに一発録り!? 楽器やってる人なら判ると思いますが‥‥有り得ねぇ‥‥やっぱ凄いとしか言いようがないわ。世界に出しても恥ずかしくない日本のバンドって沢山いるとは思うんですが、Buffalo Daughterは間違いなくその先頭に立つべき、誇るべき日本のバンドですよ。来年1月にはこのアルバム、海外でもリリースが決定しているそうなので(勿論「V2 Records」からね)、来年は海外での活動が増えることでしょう‥‥そして夏にはフェスで更にひと回りもふた回りも大きくなったBuffalo Daughterを期待したいところです。



▼Buffalo Daughter『Pshychic』
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投稿: 2003 11 04 12:36 午前 [2003年の作品, Buffalo Daughter] | 固定リンク

2003/11/01

INCUBUS『LIVE AT LOLLAPALOOZA 2003』(2003)

'90年代後半、ラウドロック・ブームの波に乗って登場したINCUBUS。そんな彼等も今や全米ナンバーワン・バンド。だからってわけじゃないだろうけど、PEARL JAM辺りがよくやってる「オフィシャル・ブートレッグ」を今回インターネット上でリリースしまして。ただINCUBUSの場合は、チャリティー名目でこのライヴ盤をリリースしたんだよね。流通にレコード会社を介さないことで、10ドル以下に抑えた値段設定になってたり、紙ジャケにCDが素で入ってる辺りも手作りっぽさがあるし。PEARL JAMのブートシリーズに習ってのことなんだろうね。

けどさ、音に関しては西新宿辺りで売ってるブート盤と比較にならない程、良いわけで。ま、アーティスト側が自ら出す「公式海賊盤」だもん、そりゃ音いいわな普通。ライヴレコーディング自体はどのライヴでも行ってるんだろうけど(後のチェック用に録音自体はしてると思いますよ)、ちゃんとミックスされてるように感じられるのね、このアルバムの音。バランスもいいし。リリースするためにしっかり金かけてる感じ。録って出しって感じじゃないところはまぁブートっぽくないかな、と思うけど。出すことに意義があったんでしょうね、彼等の場合。

タイトルの通り、今年全米をツアーした「ロラパルーザ」ツアーで録音されたものなんだけど、いつ・どこで録音されたものかは明記されていません。最初の数曲は途切れなく進んでいくんだけど、途中から曲毎にブツ切り状態で終わったり始まったりすることから、多分ロラパルーザ・ツアーの中でのベストテイクを集めたものなんでしょうね。ここには13曲、約60分のライヴ音源が入ってるんだけど、実際にはもっと長いのかもしれないよね。だってこのアルバムにはセカンドアルバム「MAKE YOURSELF」からの大ヒット曲 "Drive" が入ってないんだもん。基本的にはナンバーワン・アルバム「MORNING VIEW」からの曲が大半を占め、残りはセカンドからと、ファーストからも2曲。後は同じロラパルーザにも参加したJURASSIC 5のDJ等が参加したジャズ風のインストナンバー "Battlestar" と、俺が持ってる3枚のアルバムには入っていない曲 "Pistola"。バンドのヘヴィな側面ではなく、あくまで "Drive" 以降、「MORNING VIEW」でのエモーショナルな歌モノ路線を強調した選曲になってます。彼等のライヴってまだ一度も観たことがないんだけど‥‥昔「ファミリー・ヴァリューズ」ツアーの映像(ファーストリリース後)を観た時はもっとヘヴィロックしてたような気がするんだけど‥‥きっとサード以降の流れとして、こういうったナチュラルな路線で突き進み、そしてそれが支持されてるんだろうね。何となく納得できるもん、この音源聴いてると。

で、それまでどうしても釈然としなかった点があってね。それが上に書いたように‥‥ずっとヘヴィロックがソフトでエモーショナルな側面を取り入れていったバンドだと思ってたのよ。だから「MORNING VIEW」って‥‥いいアルバムなんだけど、どうにも馴染めないものがあったのよ。けどさ、このライヴ盤を聴くと‥‥見えてくるのね、彼等の出所が。時流に合わせてヘヴィな色合いやDJプレイを取り込んでいたけど、元々はナチュラルなアメリカンロック・バンドなんだなこいつら、って‥‥グランジの波に飲み込まれちゃったけど、正にPEARL JAMがそうであったようにね。

例えばさ‥‥プロデューサーが一緒だったからっていう理由じゃないけど、同じアメリカのバンドとしてR.E.M. 辺りとの共通点も見え隠れするのよ、そういったエモーショナルな曲を聴いてると。勿論、PJなんかの色も見えるし。それって要するに「アメリカ人による、オーソドックスなアメリカンロック」ってことなんじゃないかな、と。表現の手段や方法が違うだけで、根元にあるものはどれも一緒なんじゃないかな、という気がするのね。どうでしょう?

とかいいながらこのバンド、まだ全員20代前半くらいでしょ!? デビューした頃がハタチそこそこだったはずだからさ。きっと次のスタジオ盤(来年前半リリース予定)ってさ、その「MORNING VIEW」よりももっと地味で深いアルバムになるんじゃないかな、って気がするんだよね、このライヴ盤を聴いてると‥‥いやぁ‥‥けどそんなに急ぐ必要もないか。若いなら若いなりの表現方法があるはずだしね。

元々ジャズとかファンクからの影響が強いのもあるし、各メンバーがそういった音楽をやってたらしいから演奏にもそういったノリやテクニックを見出せるんだよね。ターンテーブル担当もただヒップホップ的なスクラッチをするだけじゃなくて、キーボーディストがいるような感じのエフェクト音を沢山取り入れてくれるので、音に広がりを感じるし。願わくばそういった要素を更に微妙に出しつつ、歌を前面に出した「広意義での」ラウドロックを産み続けて欲しいな‥‥と願っております。

機会があったら是非聴いてみてください。スタジオ盤とはまた違った彼等の「顔」を見つけることが出来ますから。



▼INCUBUS『LIVE AT LOLLAPALOOZA 2003』
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投稿: 2003 11 01 04:58 午前 [2003年の作品, Incubus] | 固定リンク

2003/10/30

GOING STEADY『青春時代』(2003)

今年1月に電撃解散した、GOING STEADY。その彼等が最後の置き土産として同年4月にリリースしたのが、この「青春時代」という3曲入りマキシシングル。リリース後すぐにチャートのトップ10入りしたので、記憶に残っている人も多いでしょう。

俺自身、彼等に対して何の思い入れもなく、まぁ普通に音源を楽しむといった程度の存在でした。この手のバンドって正直腐るほどいるだろうし、そんな中で彼等が10~20代の子達に支持されたというのは、そのサウンドよりも実直な歌詞だったのかなぁ‥‥とオッサンの俺は思うんですが。青すぎる程に青い。中学~高校生の頃、悶々としながらもちょっと深いことを考えてみたり、けどホントは夢見る夢子ちゃんだった、そんな誰もが通過する「あの時期」をそのまま真空パックしたかのような純度の高さ。だからこそ、聴き手によって反応は様々。ま、それこそが「音楽」なんだけどさ。

ゴイステの作品を取り上げようと思った時、アルバムではなく、このシングルを真っ先に思い付き、そして選んだ理由は単純明快。これが一番俺の中でしっくりきて、尚かつ共感できたから。楽曲的にいったら他のシングル曲の方が彼等らしいんだろうけど、何の思い入れもない俺にしてみればそんなの関係ない。響くか、響かないか。そのどちらかだから。

表題曲の「やりっぱなし」感‥‥というか、制作作業中に解散してしまったかのような「ヤリ逃げ」感がたまらないし、その歯が浮くような青臭さが充満する歌詞も含めて、素直に好きと言える。最初に聴いたのは仕事中に流れる有線でだったんだけど、気づいたら歌詞に耳が行って集中して聴いてたし。ある意味大したことは言ってないんだろう‥‥大人の観点からすればね‥‥けど、何かね‥‥こういう気持ちをまた取り戻したいな、という気持ちにはなった。そしてこの曲に恋した。ホントそれだけの曲。いや、それで十分だよね。

カップリングの "駆け抜けて性春" はライヴ音源なんだけど、とにかくその音の酷さが強烈で曲自体は殆ど記憶に残らないんだけど‥‥まぁそれもゴイステらしさなのかな? 去年のフジロックで観るチャンスはあったものの、結局スルーしたんだよね。ま、いつでも観れるだろう‥‥って思って。結局「次」はなかったわけだけど。けど特に惜しいとも思わないし。それでよかったのかもね。

もうひとつのカップリング曲 "惑星基地ベオウルフ" はスタジオ音源。"青春時代" 程ストレートな表現ではないものの、これもまたゴイステらしい歌詞。途中で挿入される "星に願いを (WHEN YOU WISH UPON A STAR)" と、そこで読まれるセリフもまた彼等らしい。ちょっとググッとくるかも。

ライヴ音源を除いたスタジオ音源2曲が共にミディアムスローのバラード調というのは、解散等を意図せずにそうなったのか、それとも最後のリリースってことでワザとこの2曲を選んだのか‥‥その真相は判らないけど、少なくとも俺にとっては意味のある2曲だったと思う。単純に良い曲だと思うし。

何度も書くけど、やはり自分にとってはそこまで重要な存在というわけではないんだよね(ファンの皆さんには申し訳ないと思います)。けど、少なくともこのシングル‥‥特に "青春時代" は自分に強くアピールするものでした。多分、今後も春先になる度にこの曲を聴くと‥‥いろいろ思い出すんだろうなぁ‥‥今年の春にあったいろんな出来事を。そしてそれがまたこの曲と見事にシンクロするもんだから‥‥切ないというか、やるせなくなるよ。



▼GOING STEADY『青春時代』
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投稿: 2003 10 30 04:02 午前 [2003年の作品, GOING STEADY] | 固定リンク

2003/10/24

PANTERA『THE BEST OF PANTERA : FAR BEYOND THE GREAT SOUTHERN COWBOYS' VULGAR HITS!』(2003)

いろんなテキストで何度か書いてきたけど、'91~'92年というのはその後のロックシーンに影響を与える「大きな波」が幾つも生まれた年でした。HM/HR系アーティストの相次ぐビルボード・アルバムチャート初登場1位(SKID ROW「SLAVE TO THE GRIND」やVAN HALEN「F.U.C.K.」等)に始まり、METALLICAのブラックアルバム、GUNS N'ROSESの「USE YOUR ILLUSION」2枚同時リリース、NIRVANAやPEARL JAM、SMASHING PUMPKINSといったシアトル勢のメジャーデビュー、RAGE AGAINST THE MACHINEの誕生、そして今回紹介するPANTERAのオーバーグラウンドへの進出。数年後にラウドロック/ヘヴィロックと呼ばれるようになるジャンルの、いわばルーツといえるであろうMETALLICAとPANTERA。'80年代と'90年代の代表的ヘヴィメタルバンド。共にメタル勢では数少ない「'90年代にナンバー1アルバムを生みだしている」バンドなんですよね。

PANTERAがインディーズ時代、DEF LEPPARDみたいな音楽性のバンドだったというのはもはや有名な話で、'90年代に入りメジャーデビューを果たすと共に現在のようなヘヴィメタルとハードコアを足したようなラウドでエクストリームなサウンドへと移行していったわけです。メジャーファーストとなる「COWBOYS FROM HELL」('90年)ではまだ中途半端さが目立ちますが、大出世作となった「VULGAR DISPLAY OF POWER」('92年)で現在のスタイルがほぼ完成型に達し、このアルバムによって多くのメタルファンに注目されることになるのです。

俺とPANTERAとの出会いは、多分'91年頃だったと記憶してます。当時大好きだった(いや今でも好きは好きだけどね)MOTLEY CRUEの(当時)ドラマーだったトミー・リーが「PANTERAはいい!」と大絶賛してたことでその名前を知ったんだよね。けどその時は音を聴いてみようとは思わなくて。で、そんなことも忘れていた'92年2月。当時イギリスにホームステイしてたんだけど、現地で愛読していた「ケラング!」や「メタル・ハマー」(そこそこ、懐かしい!とか言わない)でPANTERAという聞き覚えのある名前のバンドの「VULGAR DISPLAY OF POWER」というアルバムが5つ星で大絶賛されてたわけですよ。が、これを読んだ時にはまだリリースされておらず。結局このアルバムを最初に見かけたのはドイツに旅行中の時で、我慢できずに現地で買っちゃったんですよね、帰国しないと聴けないのにも関わらず。

もう1曲目 "Mouth For War" から鳥肌立ちまくり。"A New Level"、"Walk" と来て、究極のスラッシュチューン "Fucking Hostile"!!! "This Love" みたいな聴かせる曲もちゃんと入ってる。勿論、当時これを純然たるヘヴィメタルとは思えなかったし、かといってハードコアとも違うし、一体何だこれは!?と頭を悩ませたものです。当時俺がやってたバンドのギタリストはスラッシュとかコアは一切聴かない(苦手な)人だったんですが、それでもPANTERAのギター、ダイムバッグ・ダレルのプレイ(リフワークやハーモニクスの使い方、そしてソロの運び方等)をべた褒めしてたんですよ。それくらい、当時のロックファン(ま、主にメタル通過組)には衝撃だったわけですよ。

そして'94年には「FAR BEYOND DRIVEN」というアルバムをリリースし、全米初登場1位を記録してしまうわけです。グランジ全盛の'94年にね! カート・コバーンが亡くなる、ほんのちょっと前のことですが‥‥

その後、2枚のオリジナルアルバムとライヴ盤を1枚リリースしてますが、毎回買って聴いてはいたものの、以前程夢中になって聴くことはありませんでした。いや、それでも気に入ってたんですけどね。きっと俺自身、ラップメタル的なラウドロックを愛聴するようになったからかもしれません。

このベストアルバムは正直、選曲はダメダメだと思います。選出されてるのは全てPVになったりシングルカットされたりラジオ用プロモーションに使われた曲だったりするわけですが、実際にはそれ以外の曲の方が重要なものが多かったりするんですよね。初回限定盤に付いてるDVDには入ってますが "Primal Concrete Sledge" だったり "Psycho Holiday" だったり。あるいは上記の "A New Level" や "Fucking Hostile"、"Strength Beyond Strength" とか "The Great Southern Trendkill" とか "War Nerve" とか "Hellbound" とか‥‥もっと入れるべき曲はあったはずなんですよ。結局レコード会社主導でメンバーが一切関わっていないという点が大きいわけですが。そういう事実からも「現在のバンドの状態」が何となく伺えてくるようで、ちょっと嫌だなぁ‥‥

曲順もただ発表順に並べただけなので、いきなりアルバムトップの "Cowboys From Hell" の次に名バラード "Cemetery Gates" が来ちゃう。曲順は聴く人が好きなように並べ替えるべきかもしれませんね。個人的には1曲目は "Mouth For War" で決まりなんですが。

ま、悪いことばかり書いてもしょうがないんで‥‥だからといって曲が悪いとかそういったことは一切ないです。まだPANTERAを聴いたことがないっていう若いファンには持ってこいのベスト盤なんじゃないでしょうか。レアトラックも数曲入ってますし(テッド・ニュージェントのカバー "Cat Scratch Fever" やBLACK SABBATH のカバー "Hole In The Sky" とかね)。このアルバムでPANTERAにピンと来た人なら、オリジナルアルバム聴いて絶対に損はしないはず。むしろもっと好きになるだろうから。

やっぱりこのアルバムの売りは「日本盤の初回限定盤に付いたPV集」なのかもしれませんね。彼等が発表したPV全てが収録されてるわけですから。更に以前「VULGAR」というセルビデオに収録されていた'92年夏のライヴも2曲入ってるので、その凄さをビジュアル付きで更に味わうことが出来るわけですから、もう買うなら絶対に初回盤ですよ。

というわけで‥‥PANTERAの不在から2年近くの歳月が流れたわけですが‥‥METALLICAみたいな劇的復活を期待しつつ、このベスト盤を聴きながら彼等の「第二章」の始まりを一緒に待とうではないですか(いや、DVDの方を観ながらですね)‥‥



▼PANTERA『THE BEST OF PANTERA : FAR BEYOND THE GREAT SOUTHERN COWBOYS' VULGAR HITS!』
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投稿: 2003 10 24 03:11 午後 [2003年の作品, Pantera] | 固定リンク

2003/10/11

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『エレクトリック・サーカス』(2003)

  THEE MICHELLE GUN ELEPHANTはこの曲のリリースと同時に本日10月11日、幕張メッセでのライヴを最後に解散します。そういうことを踏まえてこの曲を評価しようとすると、どうしても違った見方・違った解釈をしてしまいそうなので、敢えて解散という現実から目を逸らしてこのシングルについて語ってみたいと思います。難しいとは思うけど‥‥

  ミッシェルのシングル曲でここまでメロウな曲は多分初めてなんじゃないかな。いや、当然これまでの楽曲全てが冴えたメロディを持ったロックナンバーばかりだったけど、これはちょっと異色作かな、と。勿論これまでと比べればの話だけど。ただね、これは今年に入ってからリリースされた2枚のアルバム、「SABRINA HEAVEN」と「SABRINA NO HEAVEN」、そしてそこから派生したシングル「Girl Friend」の流れから誕生した、いわば延長線上にある楽曲ですよね。特にタイトル曲、"エレクトリック・サーカス" なんて正にそれだし。ズッシリとしたリズムに乗る歪みまくったギターのストローク、そこに重なる枯れたアルペジオ、そしてチバユウスケの絶叫。何も変わってない。何も変わっていないんだけど、何かが違う。質の違い? いや、もっと本質的なものが変化した? ただ、ライヴを観る限りでは、俺が最後に観た'97年頃と今年のフジロックとではその違いは判らなかったんだよね。バンドとしてのオーラはモンスター級になっていたけど、何も変わっていないような。けど何かが違う。

  例えばこれが、カップリングの "デビル・スキン・ディーバ"みたいなタイプだったら判りやすいのね。これはもう完全にアルバムの流れにある、ある意味プログレッシヴな1曲。コード自体は4つしか使っていなくて、所謂『強弱法』(Aメロで静か/弱く演奏・歌い、サビで一気に爆発する表現方法。THE POLICEの "Every Breath You Take" が始まりと言われ、その後NIRVANAの "Smells Like Teen Spirit" やRADIOHEADの "Creep" といった楽曲で更に広まった。グランジ以降に多い表現手段)を用いたアレンジなんだけど‥‥ミッシェル流グランジといえば聞こえはいいけど、もっとこうプログレッシヴというか。ジャンルとしてのプログレじゃなくてさ‥‥単調なようでかなり起承転結がしっかりしてるし、6分以上って単調なコード進行なのに全然飽きさせない。もうそれってミッシェルの完全勝利じゃない? そういう意味では完全にアルバムと同方向の流れなんだよね。

  しかし、タイトル曲は同じ方向を向きながらも、ちょっと『質』の違いを感じさせる。それは何故だろう‥‥チバの歌い方? サウンドのミキシング? 各楽器のタッチの違い? いや、判らない。本当に判らない。ミッシェルらしさを十分に感じさせながらも、歌詞やメロディから‥‥閉鎖感みたいなものをちょっと感じたり。

  ってここまで書いて、結局「解散」という事実からは逃れられないのかな‥‥と改めて思ったり。ああ、ダメだ。これ何回か書いては消して、また書き直しては消してということを、かれこれ2時間もやってるんだよね。解散に触れずに曲について書こうと思ったけど‥‥どうしてもそこに行き着いてしまう。

  単純に、いいメロディを持った、男らしいロックナンバーと言いたいだけなのにね。

  よりによって、何で最後の最後にこんな泣きのメロディを持ったミディアムテンポの曲をシングルで出すかなぁ。確かに "デビル・スキン・ディーバ" はシングル向きじゃないよ。人によっては疾走感に溢れるアンセムナンバーを期待してたはずなのに。そういう意味では「本当にこれがファンが望んでいた『世界の終わり』なのか?」と思うわけで。ま、思い悩んだところで彼等の解散に変わりはないわけで。

  でも、この曲に出会えたこと、それは素直に嬉しいよ。やっぱり昨年以降のミッシェルはバンドとして本当にいろんなことにトライしようとしていた、そしてそれを実践してきたんだなぁ、と。改めて思いますよ、ホントにすげーバンドだとね。

  さぁ。泣いても笑っても今日が最後の日。決して俺にとって「世界の終わり」でも何でもないわけだけど‥‥やっぱり気持ち的に晴れやかじゃないよね。いつも思うけど‥‥こうやって偉大なバンドの最後の日って、何だか「ロックのお葬式」を執り行うみたいで凄く嫌な感じなんだよね‥‥。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『エレクトリック・サーカス』
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投稿: 2003 10 11 12:00 午前 [2003年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/10/05

THE DARKNESS『PERMISSION TO LAND』(2003)

久々にこういう濃くてバカバカしいバンドがイギリスから登場してくれて、とても嬉しく思ってます。そもそもイギリスは「センス・オブ・ユーモア」の国。時々そのセンスが度を超すこともありますが、個人的にはそういうところも含めてそういったものを気に入っています。

それは例えば「モンティ・パイソン」といったものだけでなく、音楽(ロック)の世界からも存分に感じられるものでした。そう、BEATLESの時代から。しかしここ最近、そういったコテコテなものを見せ聴かせてくれるアーティストが少ないこと少ないこと‥‥特にロックの世界ね。みんなクール過ぎるんだよ。そりゃカッコイイにこしたことはないけどさ、やっぱり「ブリティッシュ・ロック」ならではの、そういった世界観に十分浸りたいじゃない?

そんな中登場したのが、このTHE DARKNESSという4人組。もうね、ルックスからしてバカっぽい。いやいや、これって最高の褒め言葉ですよ? ボーカルのジャスティン・ホーキンスなんてフレディ・マーキュリーも真っ青な全身タイツ着てるし。しかも虎縞だし。胸からへそ下までしっかり開いてるし。他のメンバーに関してもとても2003年のファッション/ルックスじゃないし。明らかにパンク勃発前の、古き良き時代のブリティッシュ・ロックバンドを彷彿させるものだし。普通だったら時代錯誤だ、ハイプだといって切り捨てられてるんだろうね。実際、彼らが登場した頃はそういった声も少なからず聞こえてきたし。

しかし、この春頃からでしょうか、彼らに対する評価がどんどん高まっていったのは‥‥イギリス国内ではIRON MAIDENからロビー・ウィリアムズまで、とにかく幅広いアーティスト達とツアーを重ね、この7月に本国でリリースされたこのアルバム「PERMISSION TO LAND」はチャートで初登場2位を記録、その後も夏フェス出演等の効果もありトップ10圏外に落ちることもなく、リリースから2ヶ月経った9月にはとうとうチャート1位を獲得、しかも4週連続で。再リリースされたシングル"I Believe In A Thing Called Love"もチャート初登場2位。本国での音楽賞でも最優秀新人賞は勿論、最優秀ライヴバンドみたいな賞まで獲得、彼らがその奇抜なルックスではなく「実力(=ライヴ)」で人気を獲得したことを証明することになるのです。

そして本国でのリリースから2ヶ月遅れでこのアルバムはアメリカで、更に1ヶ月遅れてここ日本でも発表されることになったのでした。遅い、遅過ぎだよ! アメリカを見習いなさいよ!(アメリカでは当初、来年初頭にリリース予定だったものの、イギリスでの大ブレイクに煽られ急遽リリースを大幅に繰り上げることになったのです)

もう何も言うことはないでしょう。QUEENでありAC/DCでありTHIN LIZZYであり、SLADEでありSWEETでありゲイリー・グリッターであり‥‥そういった古き良き時代のブリティッシュ・ロック(まぁ厳密にはAC/DCはオージーですが)からの影響バリバリ受けまくりなサウンドで、一歩間違えば本当に時代錯誤で切り捨てられていたはずなのに、上手い具合に最近の「リバイバル・ロック」や「リフ・ロック」といった流れに便乗できた。これは偶然なんだろうけど、本当にラッキーだったと思います。もう2~3年登場が早かったら、間違いなくハイプとして切り捨てられてたでしょうから。だってさ、歌だけ聴いたらホントにね‥‥ハイトーンボイスとファルセットを織り交ぜた歌唱法なんて、一歩間違えばギャグ以外の何ものでもないしね。若い子達からするとこういうのって笑いのネタなのかな、それとも新鮮に映るのかな?

ギターにしても(ボーカルのジャスティンの実弟、ダン・ホーキンスが担当。ジャスティンも曲によってギター弾いてます。ツインリードとかあるしね)ジミー・ペイジや上記のブリティッシュ・バンド‥‥特にTHIN LIZZYを彷彿させるプレイが所々に見つけられるんですよね。事実、ダンはTHIN LIZZYのスコット・ゴーハムの大ファンらしく、実際ライヴでもTHIN LIZZYのロゴTシャツとか着てますしね(THIN LIZZYのロゴTシャツ着てライヴやる人なんて、'88年頃のW・アクセル・ローズ以来じゃないの?)。

確かに万人に受け入れられるタイプのサウンドではないかもしれません。が、俺は10代の頃からこういうのを聴いて育ったんだよな。そして今でもそういうサウンドに飢えている。それが判っただけでも大収穫。勿論、このバンドと出逢えたこともね。

既に11月の初来日公演はソールドアウトと聞いています。日程が日程だったので(全部平日、しかも東京はZepp Tokyo)俺は断念したんですが‥‥やっぱり観たいですよね! 来年のフェスでの再来日に期待しますか。とにかく観れる環境にある人は絶対に観ておいた方がいいって!



▼THE DARKNESS『PERMISSION TO LAND』
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投稿: 2003 10 05 12:00 午前 [2003年の作品, Darkness, The] | 固定リンク

2003/10/03

ELECTRIC SIX『FIRE』(2003)

この夏、初来日にしてフジロックフェスティバルへの出演も果たし、更に11月には単独来日公演も控えているデトロイトの新星・ELECTRIC SIX。メンバーが5人しかいないのにバンド名に「Six」と付いていたり、デトロイト出身のくせしてディスコパンクだったり(それはあんまり関係ないか)、本国アメリカよりも先にイギリスでブレイクしてしまったり、とにかく風変わりなのに妙に親近感を感じてしまう、そういうサウンドを持ったバンドなんですね。自分は最初、シングル曲の"Danger! High Voltage"を聴いてこのバンドの存在を知ったんですが、正直これ1曲でどういうバンドだ、というのは判断つかなかったんですよ。'80年代的なバンドなのかな?と最初に感じたものの、どうも昨今のリフ・ロックの枠で括られてるみたいだし(それもどうかと思うけど)。で、続く"Gay Bar"のバカバカしいまでの爆走振りに更に惹かれて。気づけばアルバム買って、フジロックのステージ観て余計にハマって。そこで演奏されていたQUEENの "Radio Ga Ga" カバーを聴いて、何となくこのバンドの方向性みたいなものが見えてきたりして。いや本当はまだこのバンドのこと、何も判ってないのかもしれない‥‥といった具合に、どこまでがマジでどこまでが冗談なのかが正直判断つかないんですよね。ま、それがこのバンドの魅力なんでしょうけど。

ディスコ・ロックというかディスコ・パンクというか、とにかくそういったダンスビートを取り入れたパンキッシュなリフ・ロック‥‥大まかに言えばそんな感じなんじゃないでしょうか。サウンドは意外と骨太で男っぽいんだけど、そこに乗る歌は完全に聴き手をおちょくってるし。デトロイト出身ってことで、古くはイギー・ポップ率いるTHE STOOGES、最近では日英米で大成功を収めたTHE WHITE STRIPESといったバンドと比較されてるみたいだし、厳密に言えばデトロイト出身じゃないけどKISSなんかとも比較されることがあるみたいですね。"Detroit Rock City" を歌っただけで‥‥ま、"I Was Made For Loving You" というディスコ・チューンもヒットさせてるから余計に比較されるんでしょうけどね。エンターテイメント的要素で語れば、確かにKISSからの影響ってのもあるんでしょうね。ま、QUEENのカバーをやるくらいですからね。

'80年代から時代が一巡りも二巡りもして、今やあの時代にヒットしたニューウェーブやニューロマンティック、ヘヴィメタル等が新鮮に響く現在、同じような意味でこのELECTRIC SIXもヒットしたのか、それともTHE STROKESやTHE HIVES、あるいはANDREW W.K.と同じ流れで「次世代の○○○」みたいな感じでブレイクしたのか(ま、ANDREW W.K.も上記の'80年代リバイバルの流れにいるアーティストだと思いますけどね)。ただひとつだけ、確実に言えるのは、このELECTRIC SIXの楽曲が非常にポップでカッコよかったこと。じゃなかったら俺、絶対に見向きしてなかったって。上に挙げたシングル2曲以外にも引っ掛かる曲が沢山あったし、アルバムとしても十分楽しめたし。今年登場した新人の中では、個人的に一番面白いと思ったバンドですよ、彼等は。

やっぱりね、何か人と違ったことをやるには、徹底的に何かを演じ切らなきゃならないんですよ。このおバカさん達も、全てにおいて徹底的におバカですしね(そのサウンドに反してね)。まぁこのバンドに次作があるのかどうかはまた別の話ですが‥‥



▼ELECTRIC SIX『FIRE』
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投稿: 2003 10 03 08:40 午前 [2003年の作品, Electric Six] | 固定リンク

2003/09/26

カーネーション『LIVING/LOVING』(2003)

  カーネーション通算11作目にして、3人編成になってから初のアルバム「LIVING/LOVING」。実は俺、カーネーションのアルバムを聴くのって「EDO RIVER」以来なんですよ。だから‥‥(と、手元にあるCDのリリース日に目をやる)‥‥げっ、9年振りですか!? そんなに経つんだ。結構聴いてるつもりだったんだけど、全然聴いてなかったのね。反省。

  それまで5人編成だったバンドからギターとキーボードが脱退して、辛うじてスリーピース編成が残ったわけですが、そういう事も影響してか、内容的には荒々しさと大人の色気が非常に上手くブレンドした素晴らしい1枚になっています。

  前半はどっちかっていうとポップで落ち着いた印象の楽曲が続くのですが、特にブラス(東京スカパラダイスオーケストラの面々)が参加した"春の風が吹き荒れているよ"のポップ感や、"LOVERS & SISTERS"のソウルフィーリングがいいですね。勿論、頭3曲の流れは個人的にもかなり好みなんですけどね。

  ところが4曲目で空気は一変、ヘヴィなディストーションサウンドが格好いい"あらくれ"はまんまタイトルの通り、埃っぽいシンプルなロックンロール。直枝政広のシャウトも若々しさよりも大人の色気を感じさせるもので、何故か先月取り上げたオリジナル・ラヴを思い浮かべてしまいました。ただ、荒々しいサウンドを取り入れても、そこはカーネーション。サビになると甘くて切ない程ポップなメロディが炸裂するんですね。そして再び落ち着いた"永遠と一秒のためのDIARY"。ブルージーというかソウルフルというか、そういうアダルトなバラード。この曲だけ今年1月のライヴテイク。"あらくれ"の後にこのテイクを持ってくる辺りに、彼等のセンスを感じますね。すっげー格好いいし、痺れる。とても20代のバンドには真似出来ない世界観・空気感。

  そして後半戦。攻撃的で荒々しいロックンロールショーが再開します。"COCKA-DOODLE DOOO"、ちょっとファンキーなロックンロール"ハイウェイ・バス"‥‥この2曲を聴いてて思ったんですが、直枝の歌声やちょっとした節回しってHEATWAVEの山口洋に似てないですか? 勿論山口の方がもっと太くてハスキーな声なんですが。特にこの"ハイウェイ・バス"のAメロを聴いてたらそう感じたんですよね。あれ?って。

  2曲走ったところで、更に埃っぽいブルーズナンバー"愚か者、走る"でクールダウン。個人的にはベストトラックですね。いや、捨て曲なしで全部いいんだけど、単純に好みの問題というか。ああ、こういう曲自分で歌ってみたいよなぁ、って。直枝のファルセットといい枯れた感じを上手く表現したギターといい、とにかくお見事。そしてちょっとだけテンポアップして、黒っぽいロックンロール"BLACK COFFEE CRAZY"。シンプルな曲は徹底的にシンプルなアレンジで、コード進行的にも基本はスリーコードなんだけど、サビになると「カーネーションらしさ」が炸裂しまくるという。その辺が数いるロックバンドとの違い。続く"USED CAR"も真似出来そうで実は簡単には真似出来ないという、ホント独特な色を持った曲。アルバム最後もブルージーなロックンロールナンバー"OOH! BABY"で閉めるという構成。頭3曲がちょっとお洒落な雰囲気を醸し出していたので「3人になってもサポートメンバーを迎えたりして、凝ったことをやっていくのかな?」と思わなくもなかったんですが、その後の展開は上記の通り。最後まで通して聴いてしまうと、決して頭3曲が浮いているわけでもなく、むしろ統一感がしっかり出てるなと再認識できるんですよね。徐々に体温を上げていくような、そんな構成というか。スロースターターという表現が合っているかどうか判りませんが、例えば「国産車やスポーツカーみたいなスタートダッシュで勝負をつける」ような若手バンドのそれと違って、カーネーションの新作の場合は「アメ車」的な印象を受けるんですね。勿論これ、最大級の誉め言葉ですよ。でも普通のアメ車と違って、日本人が乗りやすいように要所要所を改造してるという。その辺が「大味なアメリカンポップ」との違い。日本人による、日本人ならではの味わいといいましょうか。そんなところがこのアルバムの魅力なんじゃないでしょうかね。

  もしかしたら俺、10年前だったらこういうアルバムをこんな感じに楽しむこと、出来てなかったかもね。それって結局、俺も歳を取ったってことなんでしょうかね? だとしたら‥‥俺は歳を取ることを決して恥じたりしないし、むしろ大歓迎ですね。ここ数ヶ月のオススメ盤はこういった「30代後半以上の大人が鳴らすロック」を取り上げてきましたが、ホントしっくりくるんですよね。今年の秋はこのアルバム聴きながらドライヴしまくりたいです。



▼カーネーション『LIVING/LOVING』
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投稿: 2003 09 26 12:00 午前 [2003年の作品, カーネーション] | 固定リンク

2003/09/25

RIDE『WAVES』(2003)

今この時代にRIDEの凄さ・良さを伝えるには、どういう風に言えば上手く伝わるんでしょうねぇ? 「MY BLOODY VALENTINEと共に'90年代初頭のUKシューゲイザー・シーン(そんなシーンあったか?)を支えた4人組」、「その後ボーカル/ギターの奴がOASISに入ってベース弾いてる、そんなブリットポップの元祖的存在」、あるいはもう純粋に「轟音の中にもUKバンドらしい繊細さが存在する、素晴らしいギターロックバンド」と言った方がいいのか‥‥この時期に活躍したバンドで結局その後伝説的に有名になってしまったのはSTONE ROSESとHAPPY MONDAYS、それと今でも現役で頑張るPRIMAL SCREAMくらいになっちゃうのかなぁ。RIDEというバンドがそこまで重要視されて雑誌の表紙を飾るなんてこと、今じゃもう有り得ないもんなぁ‥‥

というわけで、ここ2年くらいの間に一部で「RIDE再評価」熱が高まりつつある中、2001年のベスト盤&ボックスセットに続き、2003年という時代に唐突にリリースされたのが今回紹介する「WAVES」というアルバム。サブタイトルにあるように、イギリス国営放送BBCの「RADIO 1」で放送されたスタジオライヴ5回分の演奏、合計17曲がここに収められているわけです。

時期的にも最初のEPをリリースした直後の1990年2月というごく初期から、サードアルバム「CARNIVAL OF LIGHT」リリース前後である1994年7月までの約4年間、それらの音源が収録年代順に並んで収録されている、さながら「ライヴで追うRIDEの歴史」的な内容になってるわけです。特に彼等はバンド存続中、公式ライヴ盤というのが一枚もなかったし(非公式で「LIVE LIGHT」というのがあったけど、あれも今では廃盤だし)、一昨年出たボックスに入ってた「LIVE - READING FESTIVAL 1992」というのもありましたが、あれも限定盤だったので今では手に入りにくいし。そういう意味では今回のリリースは広い範囲の時期で収録されているんで、解散後にファンになった人にとっては非常に有り難い1枚なのではないでしょうか?

とはいってもこのアルバム、純粋なライヴアルバムとは違うんですよ‥‥まずスタジオライヴってことで、オーディエンス一切なし。つまりバンド4人がライヴ演奏してるだけ。臨場感に欠けるかもしれませんが、バンドの持ち味は存分に堪能できるはず、それももうひとつ、ラジオ放送を意識してかフェイドアウトで終わる音源が幾つかあるんですよ。特にド頭"Like A Daydream"でいきなりですから‥‥あの名曲で! ちょっとガックリしてしまうんですが、まぁRIDEのライヴがどんな感じだったかはそれでも伝わるんじゃないですかね。

ホント、このアルバムの面白い点は収録年代が曲を追う毎に進んでいくんで、サウンドの変化・楽曲の柔軟性・バンドのスタイル・アーティストとしての成長がたった75分の間に味わえちゃうわけですよ。デビュー間もない頃の完全にシューゲイザー・バンドであった頃の音源(4曲。他に"Dream Burn Down"、"Perfect Time"、"Sight Of You"を収録)、ファーストアルバムリリース後、既にシューゲイザー路線から幅を広げつつあった1990年9月の音源("All I Can See"、"Decay"、"Severance")、更に数歩前進したセカンド「GOING BLANK AGAIN」リリース時、1992年2月の音源("Time Of Her Time"、"Not Fazed"、"Mouse Trap")、その後のOASISにも通ずる「男気ロック」路線へと移行していく過程の1993年2月の音源("Birdman"、"Walk On Water"、"Since Then"、"Crown Of Creation")、そして音楽的にもビルドアップしたサード「CARNIVAL OF LIGHT」リリース前後である1994年7月の音源("Let's Get Lost"、"1000 Miles"、"I Don't Know Where It Comes From")。ブロック毎に区分けして解説すればそれなりに違いや成長を指摘することもできるでしょうけど、こうやって1枚にまとめて、しかも続けて鳴らすと自然に聴けるんですよね。その成長が急激な変化ではなくて、徐々に、着実に変化していったんだなぁとこのアルバムを聴いて再確認しました。だってアルバムラストの"I Don't Know Where It Comes From"が終わった後に、再びトップの"Like A Daydream"や"Dream Burn Down"に戻ると‥‥サウンドだけ取ると完全に別のバンドみたいですからね。

けど‥‥そういう風に自然に聴けちゃうっていうのは、やはり楽曲の素晴らしさであり、メロディの親しみやすさだったりするんでしょうね。2003年の今、デビュー時から既に13年以上経ってる訳ですが、全然色褪せてないですからね。スタジオ盤だと多少時の流れを感じさせるサウンドプロダクションがあったりするもんですが、ことライヴ盤になるとそんなに違和感てないですからね。単純にカッコイイ。後期の、ある種その後アンディ・ベルが結成したHURRICANE #1にも通ずる男泣きの世界観もカッコイイし、初期のただひたすら轟音を鳴らす世界観もカッコイイ。そしてそういったサウンドプロダクションの中心にあるメロディ、これもひたすらカッコイイ。そう、RIDEってこんなにカッコイイバンドだったんだよ、みんなもっと気づいてあげてよ!

あの当時、ローゼズとかハピマンが苦手で、とにかくひたすらRIDEやJESUS JONESやEMFといったバンドばかりを追っていた俺。結局あれから13年経った今でもよく聴くのはローゼズやハピマンではなくて、RIDEやJESUS JONESだもん。やっぱり心底好きだったんだよね。

再結成は望んでないけど、もっとこういった「お宝音源」が発掘されて世に出てくれないかな、と当時のファンは切に願うわけです。

みんな、もっとRIDE聴こうよ! RIDEを評価しようよ!



▼RIDE『WAVES』
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投稿: 2003 09 25 04:10 午後 [2003年の作品, Ride] | 固定リンク

2003/09/19

ANDREW W.K.『THE WOLF』(2003)

ANDREW W.K.の約2年振りとなる2枚目のアルバム『THE WOLF』がリリースされました。海外では01年秋にリリースされたファーストアルバム『I GET WET』ですが、ここ日本では昨年2月のリリースだったので、まだ1年半なんですよね。その間にも3回くらい来てるから、非常に満腹感を感じていたんですが‥‥そんな我々の「もういいよ」感で一杯のお腹を力ずくで殴り倒すんじゃなくて、柔軟性を持ったいろんな方法でまたライヴへ行きたくなるような方向へ持っていく、非常に優れ物な1枚に仕上がってます。

ANDREW W.K.というと、どうしてもあのショッキングな「鼻血ジャケ」のイメージが強く、更に「やたらとタイトルに『Party』という単語が登場する」という如何にも「ただのロック馬鹿兄貴」というパブリックイメージを植え付けられてしまってるわけですが、今回の新作ではそういったイメージを引継ぎつつも更に次の地平へと進み始めたことを力強く宣言してるんですね。

ファーストの時点でANDREW W.K.のサウンドをよくDEF LEPPARDといった「如何にも80年代的なビッグ・サウンドプロダクションのハードロック」と比較してたりしましたが、その傾向はこのセカンドでも更に強まっていて、例えば全ての楽器をアンドリューが担当し多重録音していった点もLEPPS的といえなくないし、更にドラムは完全に打ち込みですから、この人工的リズムトラックは正に「HYSTERIA」以降のLEPPSと同方向にあると言っていいでしょう。ファーストシングルとなった「Tear It Up」なんてまんまLEPPSの流れにある1曲ですしね。

更に今回は、そんなLEPPSもお手本にしたQUEENやMEAT LOAFといった「ドラマチックな展開を持つサウンド」からの影響もかなり見受けられます。ポップな異色作「Free Jumps」はどことなくQUEENからの影響を感じるし、既に名バラードの仲間入りを果たしたと言える「Never Let Down」なんてイントロの大袈裟な展開からしてMEAT LOAFだし。楽曲そのものはホント'80年代的なんだよね。こんな時代にこういった曲を聴ける喜び。ホント素晴らしい。

勿論これまでの流れにあるファストチューン「Long Live The Party」や「Your Rules」といった曲もあるんだけど、前作以上にピアノやキーボードの音量が大きくフィーチャーされていて、本当に煌びやかで派手といったイメージが増幅されてるんだわ。これが人によっては鼻についたりして苦手ってことになりかねないわけだけど。特にANDREW W.K.を「次世代ラウドロック/リフロックの救世主」みたいに思ってた人にとっては「The Song」や「Really In Love」みたいなメロウで聴かせる曲をどう受け取るんでしょうね?

ファーストは正にジャケット通りの音/内容でした。いや、ああいう暴力的という意味ではなくて、あれすらもエンターテイメントなんだよ?という、ね。で、今度のアルバムジャケットは‥‥色男振りをアピール。自分の顔のアップをジャケットに用いるなんてある意味ナルシストか自分にかなりの自信を持っている証拠。そしてそんなジャケット通り、このアルバムの内容は本当に彼が自信を持って我々にオススメするものなんだろうね。俺はこういうロックを聴いて育ってきたんだよ、このアルバムはそんな俺に影響を与えたロッカー達への恩返しなんだよ、だからみんなで「I Love Music」と歌おうよ‥‥みたいな。いやーまさかANDREW W.K.のアルバム聴いて、こんな感動的な気持ちになるんなんて思ってもみなかったよ。

そういえば、11曲目の「The End Of Our Lives」を聴いてると、思わず「負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じるぅ~こと♪」って歌いたくなるのは俺だけでしょうか?

冗談はさておき‥‥ホント、今年一番ビックリしたアルバム。そして安心して何度もリピート出来る1枚。



▼ANDREW W.K.『THE WOLF』
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投稿: 2003 09 19 12:00 午前 [2003年の作品, Andrew W.K.] | 固定リンク

2003/09/17

『ロッカーズ』オリジナルサウンドトラック盤(2003)

  陣内孝則初監督作品、「ロッカーズ」の公開が迫ってますが、それに先駆けて映画のサウンドトラック盤が今月発売になりました。先日、本家TH eROCKERSを取り上げたばかりですが、今回はそのサントラ盤を紹介してみたいと思います。これがね、ただのサントラと思って見過ごすとホント勿体ない1枚なんですよ‥‥

  映画の方はご存じの通り、最近人気の若手俳優5人(中村俊介、玉木宏、岡田義徳、佐藤隆太、塚本高史)がバンド「ロッカーズ」役を演じるわけですが、他にも玉山鉄二等が出演してるんですね。はい、ここまで聞いて「おお!」と唸った人、テレビの観過ぎです。過剰に反応し過ぎ。「ウォーターボーイズ」に「木更津キャッツアイ」に「百獣戦隊ガオレンジャー」かぁ‥‥とか言わないそこ。

  で、そういった若手俳優が実際に映画の中では楽器を弾いているわけですが(とりあえず玉木以外はそれぞれの楽器、経験者ですしね)、実際にサントラの方で彼等のパートを演奏しているのは、かのROCK'N'ROLL GYPSIES‥‥つまり、ロッカーズとはライバルといっていいだろうTHE ROOSTERZの面々なわけですよ。ルースターズのメンバーがロッカーズの曲をプレイする、これだけでも一大事なのに、更にサントラ盤の方ではそのロッカーズの代表曲("どうしようもない恋の歌"や"恋をしようよ")まで新録で収録されている、しかもそれを歌うのが花田裕之ではなくて、映画で陣内役を務める中村俊介なんだから‥‥この辺は賛否両論あるだろうけど、個人的には「映画のサントラ」という特殊なシチュエーションなわけだから、全然許せるんだよね。一種お祭りみたいなもんだしね。

  実はこのサントラのプロデュースを手掛けるのが、かのスマイリー原島。フジロックに行ったことがある人ならご存じかもしれませんね、あのグリーンステージで司会をやってる人です。この人、'80年代の「めんたいロック」シーンでも切っても切り離せない存在なんですね。そんな彼にプロデュースを託した陣内‥‥やるな、と。もうこれだけで個人的には安心なんですけどね。

  勿論ロッカーズの曲も多数収録されてますよ。ROCK'N'ROLL GYPSIESをバックにPOTSHOTのRYOJIが歌う"ロックンロールレコード"(コーラスにはそのスマイリー原島や、元SOUL FLOWER UNIONのうつみようこ等が参加)や、中村が歌う"キスユー"~"ジャッキー"のメドレー、テレビでも披露済み"可愛いアノ娘"、"ショック・ゲーム"といった代表曲の数々。演奏は文句なしにカッコイイ。歌は‥‥この程度なら別に気にする程でもないかな、と。そりゃもっとカッコ良くて上手いシンガーはいるけど、意外と陣内の歌い方や癖を真似してるんだよね、中村の歌。曲名を叫ぶところとかカウントする声とか、ちょっとした節回しとか特に。その辺は非常に好感持てるかな、と。やっぱり役者だね。

  それ意外には最近知名度を上げつつあるバンド‥‥勝手にしやがれやゴーグルエースといった若手、POTSHOTやザ・スリルといったベテラン勢も参加して華を添えてます。そのザ・スリルが玉山をシンガーに迎えてカバーする"ソーダポップ"。これ、「めんたいロック」の裏番長的存在として君臨する、知る人ぞ知るといった存在、モダンドールズのカバー。このバンドについては後日レビューで取り上げますので、知らない人はその時までお待ち下さい。とにかく、このバンドの曲を入れるということに個人的には感慨深いものを感じますね(とかいって、俺もにわかファンなんですが)。あと、GYPSIESバックに中村が歌う"メリージェーン"のカバー。これも笑った。ワンコーラス目は普通にバラード調なんだけど、途中から‥‥まぁ後は聴いてのお楽しみってことで。パンクにありがちな、あの展開ですよ、ええ。それをGYPSIESがやるんだから、もうね。

  そういえばここに参加してるThe TRAVELLERSってバンド。メンバーに武田真治の名前があるんだけど、ギター&ボーカルの人の名前も武田圭治っていうんだわ‥‥兄弟? って兄弟なのは間違いないみたいだけど、あの武田くんとは同姓同名の別人でした(→オフィシャルサイト)。ああ、このバンドも福岡のバンドなのか。成る程ね。そういう「新しい繋がり」も取り入れつつ(恐らくスマイリー原島のアイデアだろうね)、過去と未来を繋ぐサントラ盤‥‥ただの「過去の振り返り」系とか同窓会で終わってないところがさすが。

  サントラにありがちなインストナンバーも数曲入ってるんですが、それを担当するのが朝本浩文であったりキハラ龍太郎(元オリジナル・ラヴのキーボードの人ですよね?)や鈴木俊介(ハロプロ界ではお馴染み)等といった、その筋では有名な方々ばかり。特にキハラと鈴木による"アメイジング・グレイス"はなかなかの出来かと。鈴木のギターがかなりいい感じですね。

  最後に総括。企画モノとしては非常によく出来たアルバムだと思います。勿論リアルタイム通過組は「こんなので満足してるなんて、ありえねー!」とか怒ってるかもしれませんが、これって結局「今の若い子達」に向けて発してるんじゃないの? 映画にしてもさ、だからああいった若手人気俳優陣を起用したんだと思うし。そういう意味では俺、この企画は大成功だと思いますよ。勿論、映画の方はまだ観てないんでオールOKとは言い難いですが‥‥

  けどね‥‥やっぱり一番最後に入ってる本家ロッカーズの"涙のモーターウェイ"(多分「LIP SERVICE」バージョン)になると、急に胸がキューンとなっちゃうんだよね‥‥これって結局、俺が年寄りだってこと?



▼『ロッカーズ』オリジナルサウンドトラック盤
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投稿: 2003 09 17 12:00 午前 [2003年の作品, Compilation Album, ロッカーズ] | 固定リンク

2003/09/16

KORN『DID MY TIME (EP)』(2003)

'90年代のアメリカが生んだ『暗部』のひとつと言えるだろうKORN。そんな彼等も現在までにアルバム5枚リリース、とかなり順調に活動していて、早くもこの秋には初セルフプロデュース作となる6枚目のアルバムがリリース予定。それに先駆けてこの夏リリースされたのが、今回取り上げるシングル"Did My Time"。一部で(?)話題のアクション映画「トゥーム・レイダー」続編のテーマ曲として採用され、映画でも流れているようですね(日本公開はこれからなので、実際にどの辺りで流れているのかは判りませんが。ま、そもそも観に行かないと思いますが)。アメリカでは既にメガバンドのひとつとして数えられる彼等、前作「UNTOUCHABLES」ではそれまでのような難解さが薄れ、よりメロウで聴きやすく、更に爆音の壁も崩壊し、隙間すら伺えるスペーシーな側面すら見せる方向転換で我々を驚かせましたが、続くニューアルバムではどうなっているのか‥‥たった1曲で次のアルバムの方向性を占うのはちょっと厳しいとは思いますが‥‥

そう、このシングルには純粋な新曲はたった1曲しか入っていないんですよ。全3曲入りですが2曲はタイトル曲のバージョン違い、残る1曲もカバー曲ですから。そういった意味では本当にこれ1曲でアルバムの方向性は伺い知ることは出来ないと思います。しかしここで聴ける"Did My Time"という曲は、前作のサウンドプロダクションや方向性の延長線上にある作風と断言しても間違いではないでしょう。映画のサントラ用ということで最もポピュラリティの感じられる楽曲を選んだのだと思いますが、それと同時に「KORNらしいサウンド」を誇示する楽曲でなくてもいけないわけで。そういう意味では「今のKORN」を象徴する1曲と言っても過言ではないでしょう。ドラムサウンドは前作同様非常にタイトで、ギターリフにしても空間を埋め尽くすような類のものではなく、グルーヴ感はこれまで同様大切にしながらも非常に「隙間・空間」を重視したアレンジになってるように感じます。バックの演奏が強く自己主張していた初期の頃と比べると印象はちょっと薄くなっているんですが、その分歌(メロディ)が完全に前に出てきてるんですよね。勿論この辺の変化は3作目「FOLLOW THE LEADER」の頃から芽生えてきた変化・成長であり、前作で完全開花したといっていいでしょう。ということは、間違いなく次のアルバムでもこういった「空間を大切にしたグルーヴィーなバックにメロディアスなボーカル」といった方向性は間違いなく重視されてるようですね。

一方、カップリングとなるリミックスではデジロック寄りのバックトラックに差し替えられていますが、まぁこれが新しい方向性とは一概に言い切れないんですよね。というのもKORNは過去にもシングルではこういった類のリミックスは結構取り入れているので、これをアルバムに全面導入するとは‥‥まぁ多少は取り入れてるかもしれませんが、全面的にというのはないでしょうね。楽器隊は根っからのハードロック/メタル好きらしいですから(ということは、こういったエレクトロ方面を好んでいるのはジョナサン・デイヴィスなのか‥‥まんまGUNS N'ROSESと同じような構成だわ)。個人的にはリミックスの方が気に入ってるんですけどね、この曲。

で、最後が問題の1曲。かのMETALLICAの名曲、"One"のカバー。この5月にMTVで放送された「MTV ICON : METALLICA」という特別番組内でのスタジオライヴ音源をそのまま収録したもので、如何にもKORNらしい重厚なアレンジになってます。ま、基本的なアレンジは原曲のままなんですが、所々「ショートバージョン」化していて、例えばイントロが短かったり、途中の間奏やソロパートも短くされてる、最後の一番盛り上がるパート(テンポが速くなる後半部~ギターソロ)なんてバッサリ切られてるし。正しく「寸止め」な1曲。番組の構成上こういう尺になったのか(放送時間の関係でね)、それとも後半部を練習する時間がなかったのかは判りませんが‥‥どうせならフルバージョンで聴いてみたかったなぁ。そういえばKORNって以前もライヴで "Enter Sandman" をカバーしたことなかったでしたっけ? LIMPBIZKITにウェスが在籍してた頃はよく "Master Of Puppets" のカバーはやってたけど‥‥要するに「みんなMETALLICA聴いて大きくなりました」ってことですよね、うん。

‥‥というわけで、次作の参考になったでしょうか? いや、なりませんよね‥‥正直、俺にもどうなってるのか判りませんもの。まぁ‥‥この方向性を維持してくれていれば、間違いなく「悪い方向」には行かないと思いますが。どうせなら大袈裟なまでに聴かせるアルバムを作ってくれたら、いっそ初期の方向性を愛する俺としても諦めがつくんですが‥‥いや、今の方向性も嫌いじゃないですよ? ただね‥‥何か‥‥一時期のMETALLICAみたいじゃないですか、今のKORNって。正に「LOAD」や「RELOAD」をリリースした頃のね。そういう鬱屈をはね除けるような名作を期待してます!



▼KORN『DID MY TIME (EP)』
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投稿: 2003 09 16 12:00 午前 [2003年の作品, Korn] | 固定リンク

2003/09/10

THE WiLDHEARTS『THE WiLDHEARTS MUST BE DESTROYED』(2003)

‥‥やっと届いた。いや、発売延期には慣れっこになっていたものの、やはり実物を手にするまでは安心できないんだよね。特に先行リリースされたUK盤はコピーコントロールCDだったこともあって、尚更心配になったのも事実。けどそんなの無用でした。

THE WiLDHEARTSが最後に発表したオリジナルアルバムは'97年11月の「ENDLESS, NAMELESS」。それも活動休止宣言をした後のこと。あれから6年近い月日が経ち、ようやくそれに続くオリジナル・フルアルバムが完成しました。フルアルバムとしてカウントすると‥‥まだ通算4作目という‥‥笑えないな。とにかく約6年振り、そして2001年春の復活以来初となるオリジナルアルバム、それがこの「THE WiLDHEARTS MUST BE DESTROYED」という如何にもジンジャーらしいタイトルの付いた11曲(日本盤はボーナストラック2曲追加の全13曲)入り作品集。ここ日本では昨年秋に「RIFF AFTER RIFF AFTER MOTHERFUCKING RIFF」というミニアルバムがリリースされましたが、あれは本国で発表されたシングル "Vanilla Radio"のCD-1&2+7インチに収録された全6曲と、後にリリースされることになる復活第2弾シングル曲 "Stormy In The North - Karma In The South" の計7曲を1枚にまとめた編集盤。単なるシングル曲とそのカップリング曲の寄せ集めなんですね(その割りには1枚のアルバムとしての構成・完成度は異常に高かったですが)。なので本当の意味での復活作はこの「THE WiLDHEARTS MUST BE DESTROYED」だということになるんでしょうかね。ま、個人的にはどっちでもいいか、って気がしないでもないですが。

そんなわけでとうとう我々の前にその姿を現した復活アルバム。その内容はというと‥‥確かにどこから切っても「ワイハー印」といった印象の強い、ポップでパンキッシュで親しみやすい粒ぞろいの楽曲が並んでいるわけですが‥‥最初通して聴いた時、期待が大きすぎたからでしょうか、とてもあっさりし過ぎてるように感じたんですよ。というのも‥‥どの曲にも言えることなんですが、非常にコンパクトにまとまってるのはいいとして、とにかく変化球なしの直球勝負ばかりなんですよね。つまり「RIFF AFTER RIFF AFTER MOTHERFUCKING RIFF」でいうところの "O.C.D." とかシングル "So Into You" 収録の "Lake Of Piss" 等といった複雑な構成を持つプログレッシヴな曲がひとつもないんですね。シングルのカップリングでは散々そいうう変化球を放って我々のような古くからのファンを期待させておいて、いざフルアルバムになると全部ストレート球という。だから最初「はっ、こんなもん!?」って呆気にとられちゃったのよ。収録時間も30分ちょっとで更にあっさり聴けちゃったし。

けどね、何故こういう作風にしたのかも判る気がするんですよ。シングルが本国イギリスで好意的に受け入れられ、古いファンだけでなく新しくファンになった子供達も多く増えた。となると、そういった人達‥‥'90年代の彼等をリアルタイムで体験していない今の子供達に向けてアルバムを作ったのではないかな、と。ここ日本でも去年の「SUMMER SONIC」出演が切っ掛けで多くの新参ファンが増え、同年12月の単独公演では初めてワイハーを観たって人もかなり多かったようです。そういう子達に向けて「ひねった変化球」を狙いすまして放つのではなく、「最もワイハーらしいストレート球」を最高のコンディションで全力で投げ込む。このアルバムの狙いはそこにあったように思います。決してそういった複雑な構成を持つ曲が書けなかったわけではなくて、敢えて外したのではないか、と。だって現にシングルにはそういう曲、必ず毎回入ってるわけだし。

それと驚いたことがひとつ。「RIFF AFTER RIFF AFTER MOTHERFUCKING RIFF」ではソングライティングのクレジットがバンド名義になってたんですが、このアルバムではソングライティング、ジンジャー名義が殆どなんですよ。"Out From The Inside" がCJ単独、"So Into You" がジンジャーとCJの共作名義になってるんですわ。「バンド」ということに拘っていたように感じられた昨年までの彼等、今年に入って何か心境の変化でもあったのでしょうか。その原因のひとつなのか‥‥このアルバムにはダニーのクレジットが一切ありません。敢えて「現在のバンド編成」をぼかしてるようにも感じられるのですが‥‥とにかく、ここにきて「これまでの殆どの曲を書いてたのは実はジンジャーだった」という真実が突きつけられたわけです。まぁ全てをひとりで書いたとは思いませんが、とにかくソロシングルよりは面白い曲が沢山生まれてるんで、個人的には安心したんですけどね。

で、以上のことを踏まえた上でリピートを繰り返すこと数十回‥‥ジワジワと効いてきましたよ、俺にも。ド頭の "Nexus Icon" でまずはガツンとやられて、続くBEATLESライクな "Only Love" のメロディにやられ、王道中の王道 "Someone That Won't Let Me Go" にまたまたやられ、シングル曲の再録音である "Vanilla Radio" が更に格好良くなっててやられ‥‥って頭4曲は既に何度もさわりを耳にしていた曲ばかりなのに、決して飽きることなく何度でも惹き付けられてしまう魅力を持ってる。ちょっと落ち着いた印象の "One Love, One Life, One Girl" もジワジワ効いてくるし、THERAPY?のアンディ・ケアンズが参加した2分にも満たない爆走チューン "Get Your Groove On" に失神寸前。後半戦1発目は既に名曲の域に達しつつある "So Into You"、風変わりなリフやギターフレーズが印象深い "There's Only One Hell"、アルバム中最も異色作といえるミドルヘヴィチューン "It's All Up To Me"、「あれっ、もしかしてリードで歌ってるの、CJ?」な "One From The Inside"、そしてアルバム最後を飾るこれまた王道チューン "Top Of The World"‥‥ここまで約30分ちょっと。全ての曲が2~3分前後。4分を越える曲はたった1曲。まぁ日本盤の場合はこの後にボーナストラックが2曲("Stormy In The North - Karma In The South" シングルに収録されていた "Bang!" と "Move On")入って結局40分弱の作品になったわけですが‥‥それにしても集中して聴いてると、あっという間に終わってしまうのがこのアルバム。確かに何度もリピートして聴きたくなる作風ですし、実際何度聴いても疲れないですしね。適度にハード、適度にヘヴィ、そしてそれらを包み込むような甘美なメロディ。今回のWiLDHEARTSはそういう球を選んだってことでしょう。へっ何? いいか悪いか、だって!? そんなの、いいに決まってるじゃないか! 間違いなくこれは「あのWiLDHEARTS」が生みだしたアルバムですよ。そして俺はそんなアルバムに収録された楽曲達を愛していきますよ!

こうなると、ライヴでこれらの曲をどう表現するのか、そして過去の名曲達とどういうバランスで披露されるのか‥‥ちょっと意地悪な見方をしちゃいそうですが、やっぱり12月の来日公演は観なきゃいけないみたいですね。




▼THE WiLDHEARTS『THE WiLDHEARTS MUST BE DESTROYED』
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投稿: 2003 09 10 06:39 午後 [2003年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

2003/09/09

the pillows『TERMINAL HEAVEN'S ROCK』(2003)

  「あれっ、こんなもん!?」。それがthe pillows待望の新作を初めて聴いた時の感想でした。期待が大き過ぎたのか、それとも俺の耳がどうにかしちまったのか‥‥

  前作「Thank you, my twilight」が昨年を代表する大傑作だったし、先日リリースされたこの新作からの先行シングル「TERMINAL HEAVEN'S ROCK」も十分期待に応えてくれた楽曲だったんだけど‥‥どうにもこの「PENALTY LIFE」の第一印象は、地味。何か前作を通り越して再び「Smile」辺りにまで戻ってしまったかのような地味さだったのね。いや、悪くはないのよ。悪くはないんだけど、一発で唸ってしまうような衝撃度は皆無だったのね。シングルに収められてた3曲には少なからずそういった要素を感じていたんだけど‥‥あー、何か悪い方に空回りしてるんじゃないかな、考えすぎなんじゃないかな、とかいろいろと勝手に考えちゃいましたね。

  楽曲自体はどれも小粒でポップなロックチューンばかりで、それはそれで問題ないんですよ。多分1曲1曲を取り出して聴いてみたら、絶対にシングル「TERMINAL HEAVEN'S ROCK」を聴いた時と同じような反応をすると思うし。けど、これが1枚のアルバム、11曲入りの作品集として聴いてみた時、どうしてもシングルの時に感じたようなドキドキ感が体感できなくて。何故なんでしょうね? 絶対に悪い作品集だとは思わないし、曲も全然悪いとは思わないのに‥‥

  自分自身の心境とか今現在聴いてる音楽の趣味とかも多少影響してるとはいえ‥‥いや、それでもpillowsの新作には大変期待してたんですよ? 来年行われる単独ライヴにも足を運ぶつもりでいたし。あー何でこんなことになっちゃったのかなぁ‥‥って。

  もし俺自身に理由がないのなら‥‥pillows側に変化があったってことですよね。で、これも勝手に想像で書いちゃうんですが‥‥このアルバムを制作するに当たって、相当苦労したんじゃなかろうか?なんて思うのですよ。このアルバムを聴いた時に「あれっ、こんなもん!?」って思ったのと同時に「考えすぎじゃねぇの?」とも感じたんですね。多分、前作を踏まえてこの新作の制作に当たったと思うんですが‥‥煮詰まっちゃったのかなぁ、と。「pillowsとして平均点以上の楽曲」を作ることは難なく出来たと思うんですよ。現に前作のツアー中に、このアルバムにも収められてる "TERMINAL HEAVEN'S ROCK" と "Moon Marguerite" の2曲を制作、ライヴで発表してたわけですし。このアルバムで聴いてもこれら2曲はやっぱり素晴らしいと思うし、勿論それ以外の楽曲もこれら2曲に勝るとも劣らない内容なわけですし。ところが、これがアルバムとなると前作を超えられなかった。何故だろう? これがpillowsとしての限界なのか、それとも‥‥いや、前作が特別過ぎたんだ、なんて考え方もあると思うんですね。波に上手く乗れたんだ、と。で、その波に再び乗ろうとした結果、いろいろ考えすぎたのかな、と。

  アルバムを通して聴くと、何となく曲順に難があるような気がするんですね。それとアレンジ。非常にロックしてるんですが、ちょっとソフトコーティングしてない!?って感じたんですよ、今回の楽曲。メロが前作以上にポップになってるように感じられるし、それに対応したアレンジだったと思うんですが、どうにもそれが良くなかったんじゃないか、と‥‥いや、その辺はもう俺個人の趣味の問題ですからね。

  何度も聴いているうちにドンドン気に入っていく‥‥というのもあるんですが、これってもしかして「自分が聴き慣れただけなんじゃないの?」なんて穿った見方もしてしまいたくなる程、このアルバムに対するテンションが下がり気味なんですよ、俺。当然聴く頻度も前作程じゃないし‥‥「iTunes」に落として曲単位でシャッフルして聴くことは今後多々あると思うんですが‥‥う~ん‥‥

  まさかpillowsの新作に対して、こんなにキツいことを書こうことになろうとは‥‥ファンの皆さん、期待に応えられなくてゴメンナサイ。けどこれが偽らざる俺の感想なんですわ。pillowsを好きだからこそ、愛してるからこそ、正直に書いておこうと思います。大して気に入ってもないのに「今回もサイコーでしたねっ!」なんて嘘は書けないですからね。それに、数ヶ月経ったらここに書いたことを否定する程に気に入るようになってるかもしれないし。

  そうそう、ライヴにはちゃんと行こうと思ってますよ。ライヴで聴いたらまた感想が判るかもしれないしね。いや、絶対にそうだと信じてるし!

  最後に‥‥俺がこのアルバムで一番気に入ったのが、実はシークレットトラックのあの曲だったってことは、ここだけの秘密ですよ。「本編気に入ってないのかよ!」ってツッコミはナシの方向でねっ。



▼the pillows『TERMINAL HEAVEN'S ROCK』
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投稿: 2003 09 09 12:00 午前 [2003年の作品, pillows, the] | 固定リンク

2003/09/05

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『Girl Friend』(2003)

  THEE MICHELLE GUN ELEPHANTが今年リリースした2枚のアルバム、「SABRINA HEAVEN」と「SABRINA NO HEAVEN」は共にアルバム最後を同じ曲の別バージョンが飾っています。「SABRINA HEAVEN」では "NIGHT IS OVER"、「SABRINA NO HEAVEN」では "夜が終わる" といったタイトルで。彼等にしては珍しい、ピアノを導入したスローバラード風のインストナンバーなのですが、実はこの曲、同時に歌の入ったバージョンもレコーディングされていて、そちらは単独シングルとしてリリースされることになったのでした。それが今回紹介する"Girl Friend"という曲。

  確かにこれ、ミッシェルにしては異色作ですよね。ガツガツしたイメージの楽曲ばかりがシングルとしてリリースされてきたわけですが、特にここ2枚‥‥"太陽をつかんでしまった"といい、この"Girl Friend"といい、それまでの彼等からするとかなりイメージの違うシングルナンバーなんですよね。特に"Girl Friend"はその楽曲スタイルだけでなく、歌詞の面においても異色作と呼ぶに相応しい内容になってるんですから。

  最初この曲を聴いた時‥‥絶対にそういう人が多かったと思うんですが‥‥BLANKEY JET CITYの "悪いひとたち" を思い出しちゃったんですよね。いや、比べること自体が間違ってること、ちゃんと判ってますよ。ただね、ブランキーにとってあの曲がいろんな意味でターニングポイントになったのと同様、ミッシェルにとってもこの"Girl Friend"ってもしかしたら‥‥って思ってたんですよね。それまでの彼等と比べるとかなり実験色が強い「SABRINA HEAVEN」と同時にレコーディングされたものですし、このままいったらこのバンド、どんどん変化し続けていくのかなぁ、けどそれって似合ってないよなぁ、とか何とか考えたりしてね。よくミッシェルってTHE ROOSTERSと比べられることが多いと思うんですが、このシングル曲を聴いてしまうと否が応でもTHE ROOSTERSの中期以降を思い浮かべちゃいますよね。ま、結局は要らぬ心配だったわけですが。

  歌詞については、つい最近(というは、たった今放送を観終えたばかりなのですが)放送された「トップランナー」という番組内でチバユウスケが話していたので、それを観てもらえば判ると思うんですが‥‥いや、俺の口から今更説明するまでもないよな。あれが全てだし。

  そういうスタイルの楽曲でも、「歌う」のではなくて「がなる」チバ。正直なところ、その一点が安心要素なんですよね。もっと落ち着いた歌い方も出来るはずだし、むしろこういう静かな曲にはそっちの方が似合ってるんじゃ!?なんてこっちが余計な心配をしてしまったり。けど、チバはそうしなかった。「僕はあの娘と二人でぶっとんでいたいのさ」と歌い、でも「この子達は守りたい/I LOVE YOU.」と何度も繰り返す。歌の表現スタイルはいつもと同じようでも、内容はいつも以上に愛や優しさに溢れてる。どちらかというと排他的な歌詞が多かったチバにしてみれば、単純に気まぐれなのかもしれないけど‥‥こういうミッシェルを、もっと観てみたかったなぁ、聴いてみたかったなぁ‥‥

  正直なところ、この曲がラストシングルにならないでよかったなぁって思ってます。最後の最後、「けじめ」としてリリースするシングルは恐らく王道スタイルの疾走チューンなんでしょうね。ま、そんな散り際も彼等らしいんですけどね。

  これ‥‥ライヴで聴いたら俺‥‥絶対に泣くわ。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『Girl Friend』
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投稿: 2003 09 05 12:00 午前 [2003年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/09/01

Mr.Children『タガタメ』(2003)

  まずはオフィシャルサイトに目を通して欲しい。この曲を聴く前に、何故彼等は「CDリリース」という形体を取らずにまずラジオでオンエアしてもらうことを選んだのか、どうしてこの曲だったのか、そういったことをちょっとだけ考えて欲しいな、と。そこにはスタッフの説明(何故この曲が通常のプロモーション形体を取らずリリースが決まる前にラジオでオンエアすることを決めたのか)、桜井和寿本人からのメッセージ、そして最後に問題の楽曲、"タガタメ"の全歌詞が載っています。

  Mr.Childrenの新曲がそろそろ出るぞ、という噂はちょっと前から耳にしていました。早ければ年内には何らかの形で聴くことができると。しかしそれは我々が想像していたような形での発表ではありませんでした。CDとしての発表でもなく、ましてやライヴを行うのでもなく、まず出来た曲をラジオで流すというこれまでには考えられないような手段を取ったのです。

  オンエア解禁は9月1日。未だリリース日程も、本当にリリースされるのかも決まっていない曲。とにかくただ早くみんなの耳に届けたかった。それだけの理由で、彼等はラジオオンエアという手段を選びました。

  幸運にも、本日某FM局で放送されたその音源を手に入れることができました。6分40秒以上にも及ぶ大作。およそシングルには選ばれそうもない、彼等にしては地味な曲。単調な曲進行とメロディ、そこには「メガヒットを飛ばすミスチル」の姿はありません。ただ、彼等をよく知る人ならこれが「彼等の別の側面」であることもご存じでしょう。過去の楽曲のタイプでいえば"Hallelujah"や"終わりなき旅"に通ずる、曲自体はシンプルなのに桜井の歌とバンドの演奏でドンドンと熱く盛り上げていくタイプ。アルバム後半のハイライトになるようなタイプの楽曲、それがこの"タガタメ"だといっていいでしょう。

  何故桜井が、そしてバンドがこの曲を早く世に出したいと願ったのか。それは歌詞の内容も大きいでしょうけど、俺はそれと同時に「如何に今このバンドのポテンシャルがもの凄いことになってるか」というのを上手く表現できているから、この曲を選んだんじゃないか‥‥そんな気がします。曲としてはAメロがあってBメロがあってサビがある、そしてその繰り返しというシンプルさが耳につくタイプなんですが(最初はカントリー調のアレンジで‥‥と桜井も書いているし)、バンドの4人+キーボード(小林武史か?)+ブラス&ストリングスという壮大な楽器隊。更に曲が進むにつれてドンドン盛り上がりを見せるアレンジ。レコーディングの現場が非常にいい状態にあることが何となく伺えますよね、これ聴いちゃうと。

  そして‥‥やはり桜井のボーカルは今まで以上に強く、そして優しく、時には刺々しく我々の胸に飛び込んできます。後半、特にエンディングでのリフレインで声を枯らしながらシャウトする桜井は、これまでには見られなかったような一面ではないでしょうか?

  曲の歌い出しの一声で、フッと肩の力が抜けて、ああミスチルがホントに帰ってきたんだな‥‥という安心感を感じ、しかし曲が進むに連れてそういう安堵感は高揚感へと変化していき、最後には‥‥自分でも上手く表現できないような、何とも言えない気持ちに。それがこの曲を最初に聴いた時の第一印象でした。かれこれこの数時間で何度リピートしているでしょうか、モニターに映る歌詞とにらめっこしながら、何度も、何度もこの曲を噛みしめています。

  これはシングルにすべき曲ではない。だからこういう形でまず世に出したんでしょう。今制作しているアルバムの中で、間違いなくハイライトのひとつとなる曲。一体今度のミスチルはどういうことになっているのか‥‥何の不安要素もないですね、これを聴いちゃったら。「深海」の方へも行かないでしょうし、かといって「Atomic Heart」へも行かない。「IT'S A WONDERFUL WORLD」を更に濃厚にしたような、そんな凄いモノが我々を待ち受けているんでしょうね。

  最後に‥‥この歌詞を斜に構えて斬ることはいくらでもできるでしょう。単純に曲が好みでない人もいるでしょう。けど俺は目の前にある、この楽曲と素直に向き合っていくつもりです。



▼Mr.Children『シフクノオト』
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投稿: 2003 09 01 11:30 午後 [2003年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2003/08/30

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『SABRINA NO HEAVEN』(2003)

  結果論でしかないけど、確かにここ数年のTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを見ていて「‥‥そろそろ(解散)かなぁ?」なんて思ってた人、いたんじゃないでしょうか? 少なくとも、自分はそうでした。アルバム「CASANOVA SNAKE」以降は特に、ね(実際、その類のことを掲示板等にも書いてきたしね)。でもこのバンドの場合、そういった噂と対峙していきながら、どんどんデカクなっていくんだろうなぁ‥‥そういう期待感も同時にあったのも確か。だから嫌いになれなかったんだよね、どんなに醒めた目で見つめていようと。

  この3月にリリースされたアルバム「SABRINA HEAVEN」は久々の傑作と呼ぶに相応しい内容でした。その気持ちは今でも変わりありません。このアルバム制作におけるレコーディングでは、アルバムに収まりきらない程沢山の楽曲を制作・録音したと聞いていたし、実際アルバムリリースと同時に「初夏にミニアルバム「SABRINA NO HEAVEN」リリース決定!」と発表する程でしたしね。そして約4ヶ月後、ツアー終了前後にリリースとなったのがこのアルバム。全6曲、31分というランニングタイムは決して長くはないし、曲数的にもミニアルバムと呼べるものでしょうけど、内容的にはフルアルバム以上に濃いものになってるのではないでしょうか?

  「SABRINA HEAVEN」がどちらかというと(それまでの彼等からすれば)実験性の強い内容だったように思えるのですが、この「SABRINA NO HEAVEN」はよりプリミティヴで我々がよく知るミッシェルが顔を覗かせます。が、ただの「過去の焼き直し」に終わっていないのは聴いた人ならお判りいただけるでしょう。だって同時期に制作された楽曲だもん、ここの6曲だけが違ったものになるはずはないでしょう。単純に「あっちにはあの10曲が相応しかった、あっちの10曲を先に出したかった」からああいう選曲になっただけ。元々あるもの(録音した楽曲)全部を出すつもりだったみたいだし、でも2枚組にはしたくなかったからこういう形になっただけ‥‥ホントそれだけの理由なんでしょうね、こういう形にまとまったのは。

  ここには昨年秋のツアーでもいち早く演奏されていた楽曲も入っているし、アルバムリリース後に出演した「ミュージックステーション」で生演奏したことで話題となった2曲も入ってるし、チバユウスケが昨年やったバンド・ROSSOを彷彿させる楽曲も入ってる(当たり前だって、両方のバンドで曲作りに参加し、歌ってるのはそのチバ本人なんだから)。6~7分ある曲もあれば、いつも通りの疾走チューンもある。そう、逆に発表する順番は間違ってなかった。「SABRINA HEAVEN」という意欲作を先に発表することで我々の度肝を抜き、実はその延長線上にある作風ながらも何故か「従来通りの安定路線」的安心感を与えてくれる「SABRINA NO HEAVEN」を続けざまにリリースする。2枚組じゃなくてホントよかったな、と。これ2枚組だったら、衝撃強過ぎるのと同時にボリュームもあり過ぎて、1曲1曲とちゃんと向き合おうとしなかったかもね、俺ならさ。

  確かに普通のアルバムとして考えると6曲って短いし、ひとつのストーリーとしてのトータル・コンセプトみたいなのは皆無かもしれないけど‥‥だからこそ、純粋に楽曲の1曲1曲と向き合おうという気にさせてくれるし、そして改めてその1曲1曲の濃度に驚愕するという、ね‥‥ホントにスゲェバンドだわ、ミッシェルは。

  今後、バンドとして発表される新曲は10/11リリースの「エレクトリック・サーカス」というシングルに収録される2曲のみ。それ以降にリリースされる楽曲って、多分バンドの意思に反してリリースされる未発表曲だったりするのかもしれないけど‥‥バンドのイメージを著しく落とすようなモノなら正直この世に出さないで欲しい。それだけこのバンドに対しては「常にフルテン状態」というイメージがあったし、そして最後の最後までそうであって欲しいから。最後のシングルがどういった作風になるのかは現時点では判らないけど、真面目な話どういう曲を持ってくるのかが興味深いなぁと。



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『SABRINA NO HEAVEN』
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投稿: 2003 08 30 12:00 午前 [2003年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/08/27

後藤真希『抱いてよ!PLEASE GO ON』(2003)

  後藤真希、今年3枚目、通算8作目のシングルとなる"抱いてよ!PLEASE GO ON"は、シングル曲として過去最速のBPMを記録するダンスナンバー。後藤本人が「みんながイメージする後藤」と言うように、歌詞にしろ曲調にしろ『ゴマキというパブリックイメージ』をそのまま形にしたかのような楽曲なんだけど‥‥これがね、いいんですよ。「またかよ‥‥いつも誉めてるし‥‥」と思われるでしょうけど、ホントにそう感じるんだから仕方ない。何つーか、そういった外野のパブリックイメージを逆手に取った、かなり攻撃的なナンバーなんですよ、これ。

  アレンジはカップリング曲"おふざけKISS"共に、お馴染み鈴木Daichi秀行。今年のシングルは全て彼が手掛けてるわけですが、意外と相性いいのかなぁ‥‥って気がしないでもない、かな? ま、確かにこれまでの楽曲では詰めの甘さが目立ってた彼ですが、ここ最近のアレンジ‥‥特にシャッフル以降は意外といい仕事してると思うんですよ、個人的に。今回の"抱いてよ!PLEASE GO ON"も、この手のアレンジとしてはかなり良い出来なんじゃないかな、と。系統的にソニンの"東京ミッドナイトロンリネス"と同じ流れにある楽曲だと思うんですが、こちらの方がより完成度が高い。いや、ソニンの方はああいう「狙い」だったとは思うんですが‥‥個人的には後藤の方に軍配を挙げたいかな、と。

  もうね、ボーカルパフォーマンスもかなり素晴らしいんですよ。この春に行われたツアーの成果が端的に表れてるんじゃなかろうか、と思うわけです。曲調もあるんだろうけど、こういう力んだ歌い方って妙に合ってるんだよね。特に後半の煽り部分なんて、もう‥‥

  歌詞もね、前作"スクランブル"とは正反対の女の子(というよりも、「女」か)で、前作が自然体で本来の彼女に近いものだとすると、こちらは他人が彼女に対してイメージする「後藤真希」像をそのまま演じたような形ですよね、良くも悪くも。今回、後藤自身が「みんながイメージする~」と語ってる辺り、確信犯なんじゃないかな?なんて思える程、躊躇や隙が一切なく完璧に演じきってますよね。その辺はビジュアルが一切ない音源の状態からも伺えるはずです。

  一方、カップリング曲"おふざけKISS"は、ミディアムテンポのラテン系。ボッサと呼んでいいんですか、こういうのも‥‥曲調だけなら中澤裕子やソニン辺りが歌っても違和感ないんですが、歌詞はやはり後藤っぽいというか。「ああ、何となくだけど、ゴマキってこういう感じかなっ?」って思っちゃうんでしょうかね、ファンでもない普通の人達って。だとしたら、制作側の思惑に見事ハマッてるという。まぁそういうのは個人的にどうでもいいんですが、こういうタイプの楽曲もこれまでの後藤にはなかったものだし、ここで聴けるパフォーマンスもまた今の彼女らしさを十分に堪能できるものなので、個人的にはかなり好きな部類です。

  多分、この9月からスタートする2度目の全国ツアー(現時点で全国20カ所、39公演)はこの"抱いてよ!PLEASE GO ON"からライヴがスタートすると思うんですが‥‥ピッタリじゃない、1曲目に? 間違いなくつんく♂が「こういう曲、ライヴに欲しいやんか?」とか言って作ったんだろうなぁ。1曲目じゃなかったら、本編終盤辺りとか(けど絶対にラストではないという、ねっ?)。

  散々「モーニング娘。を卒業したはいいけど、恵まれてない」と言われ続ける彼女。確かにアルバムはちょっと‥‥だったけどさ、"うわさのSEXY GUY"といい、"スクランブル"といい、個人的には彼女のこと(パーソナリティではなくて、実力的な部分)をよく判ってるな、と感じるんですけどね。与えられた課題を毎回見事にこなしてみせる後藤真希。そろそろ本格的に本領発揮しそうな予感。今度のツアーを経て、年末年始辺りが最初にピーク‥‥になるかも。



▼後藤真希『抱いてよ!PLEASE GO ON』
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投稿: 2003 08 27 12:58 午前 [2003年の作品, ハロー!プロジェクト, 後藤真希] | 固定リンク

2003/08/26

THE WiLDHEARTS『SO INTO YOU (EP)』(2003)

2003年5月に英国でリリースされた復活シングル第3弾「So Into You」。またもや全英チャートでトップ30入りを記録しました。バンドとしての活動も順調、いよいよ夏にはアルバムが‥‥という時期に、何度目かのダニー離脱。替わりにSILVER GINGER 5でベースを弾いていたジョン・プールが参加してツアーが続いたわけですが‥‥またもやここにきて、「ワイハーらしさ」全開という。いや、そんなところまで復活させなくていいから。

今回も恒例のCDシングル2枚+7インチアナログ、という3種類にそれぞれダブらないように新曲が各2曲ずつ入っているという構成。ただ、CD-1とアナログに入ってる"Dancin'"はバージョン違いなのでご注意を。

タイトルトラック"So Into You"は、これぞワイハーという王道チューン。Aメロのらしさ、そしてBメロからサビにかけての盛り上がり方等、とにかく全盛期に匹敵するソングライティング。単調なんだけど飽きさせないというか。絶対にライヴで盛り上がる曲でしょうね。"Dancin'"は離脱したダニーがボーカルを取る、1分少々のファストソング。如何にも彼らしいストレートな曲調は、やはりTHE YO-YO'S的といいましょうか。"Lake Of Piss"は転調が如何にもなポップロック。意外と大らかなノリを持った1曲で、イントロのリフもそういう空気感を持ってるような。メロの持ってき方とかアレンジは、この編成で作った「EARTH VS THE WiLDHEARTS」の頃に非常に近いのではと思います。特に中盤のギターソロとかね。"Action Panzer"はどことなくTHE HELLACOPTERSやBACKYARD BABIESを彷彿させる疾走チューン。とにかくカッコイイの一言に尽きると思います。最後はちょっとALICE COOPERっぽいかな?というポップな"The People That Life Forgot"。勿論これも間違いなくワイハー的な1曲。これだけ録音状態が他の曲と違うのね(ちょっとチープな印象)。もしかしたら、前回のアウトテイクとか‥‥ま、それにしては水準が高いんですけどね。

あ、残念ながらアナログ盤は入手できなかったので、ここでは割愛させていただきます(音源自体は持ってるんですが)。

何度も言うように、ジンジャーが完全に復調してきているのか、それとも「4人組バンド」としてちゃんと機能してきているのか‥‥真相は本人達じゃなきゃわかりませんが、とにかくこれだけ聴いちゃうとアルバム、メチャメチャ期待できそうな感じだよね。実際、数曲試聴しましたが、これまでの楽曲に勝るとも劣らない名曲揃いっぽいし。

でもねぇ‥‥だからこそ、「あの4人」揃った状態でアルバムリリースにこぎ着けて欲しかったなぁ。勿論レコーディング自体は「あの4人」で行われたものだと思うんですが‥‥多分冬頃にはその「THE WiLDHEARTS MUST BE DESTROYED」というアルバムを引っ提げて来日を果たすと思うんですが‥‥もう1度、サマソニは昨年12月みたいな奇跡を起こして欲しいな、と。ソングライティングも面も、受け入れる側の状態も既にベストな状態なんですよ。後は‥‥あなた方だけですよ。



▼THE WiLDHEARTS『COUPLED WITH』(シングルカップリング全曲を収録)
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投稿: 2003 08 26 06:49 午後 [2003年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

2003/08/24

フラワーカンパニーズ『発熱の男』(2003)

今年の4月にリリースされた、フラワーカンパニーズ通算8作目、インディーズから2枚目のオリジナルアルバムとなる「発熱の男」。フジロックでの「フラワーカンパニーズ34歳、今日から全盛期に入らせていただきます」って発言がホントだったことを実感させてくれる、本当に素晴らしい1枚。何でこんなにいいバンドがメジャーから切られたの?とかいろいろ思うことはあるのですが、逆にこういう逆境に陥ったからこそ、ここまでの傑作を生み出せたんじゃないか、とも思えるわけで。特にインディー落ちしてからの2枚(前作「吐きたくなるほど愛されたい」と今作)の充実振りを考えると、それも納得が行くというか。

基本的には古き良き時代のブリティッシュロックからの影響が強いサウンドに、馬鹿で情けないんだけど、どこか憎めない、そして愛着が湧いてしまう歌詞。俺の中でRCサクセション以降の日本のロックシーンの、一番いい形を体現してるバンドのひとつがフラカンなんじゃないかな、なんて思うんですね。RCが撒いた種のひとつだ、と。それらの種はブルーハーツだとかSOUL FLOWER UNIONだとか、その後登場するいろんなバンドとして成長したわけですが、遅咲きながらもフラカンもそのひとつだと、間違いなく言い切れるわけですよ、このアルバムを聴いてしまうと。いや、過去のどのアルバムを聴いてもその予感はあったわけですが、特にこのアルバムはその決定打といっても間違いないでしょう。

それこそTHE WHOであり、KINKSであり、QUEENであり。そういったバンドの色を感じることの出来る個々の楽曲。それぞれが個性的で、荒々しさを残しつつも、完成度は高い。しかも各楽器のアンサンブルも素晴らしい。そうそう、ロックってこうじゃなきゃ!みたいな。30代半ばのオッサン4人が、ここまで初心を忘れずにロック出来るってのは、ある種奇跡なんじゃないかな、と。そう、フラカンの存在というのは、奇跡そのものだと。なのに何故、人々は彼等を無視し続けるのか。もっと注目すべきですよ!

ライヴを一度観れば、絶対にやられるはずなんですよ。実際、俺もライヴでやられた口ですから。中毒性のあるライヴは、ある種先のソウルフラワーにも通ずる要素があると思うんですね。土着的な"真冬の盆踊り"の存在が更にその思いを強くさせてるわけですが、ブリティッシュビートに拘る辺りも、ソウルフラワーの前身、NEWEST MODELにも通じるしね。

とにかくね、ロックは部屋の片隅で膝を抱えておセンチ気取る為の道具じゃないんですよ。このアルバムを聴いてると、そういう小難しいことがどうでもよくなる、とにかく大音量で鳴らして頭振るのが一番なんだっていう至極簡単なことに気づかせてくれるわけ。今年の10本指に入る傑作。間違いなく5年後も聴いてるであろう1枚。



▼フラワーカンパニーズ『発熱の男』
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投稿: 2003 08 24 03:50 午前 [2003年の作品, フラワーカンパニーズ] | 固定リンク

レミオロメン『電話』(2003)

  前回の「雨上がり」の時に「メジャーに行ってどこまで化けるのか、そして『駄目押しの決定打・その2』が今から気になって仕方ありません」と書いていた俺。そんな役割を十二分に果たすであろうレミオロメンの新シングル、「電話」。曲自体はメジャーデビュー決定前からライヴで演奏されていた楽曲で、先日のROCK IN JAPAN FES.でも演奏されていた2曲。予感めいたものは十分感じていましたが、改めて音源として聴いてみると、うん、これは売れるわ。そう実感するのです。

  メディア側も完全に売る態勢に入ってるしね、レコード会社含めて。うちの近所のCDショップでさえも、このシングルを大プッシュしてる程ですから。特に大きなタイアップが付いたわけでもなく、テレビ出演したわけでもないのにこの扱い。それはきっと「かの小林武史が関わっている」というポイントが大きく影響してるんでしょうね。彼が過去に手掛けたアーティストを考えれば、まぁそれも判らなくないですが。「雑誌で話題騒然」とか言われても、騒いでるのって「あの」雑誌でしょ‥‥騒げば騒ぐ程、うちを観てるような人達には悪影響なんじゃないかって気がしないでもないですが、ここはまぁ無視しましょう。

  さてさて、肝心の楽曲。まずタイトルトラックの"電話"を聴いての第一印象。とにかく「いきなりスケールがデカくなった」の一言に尽きると思います。それまでがインディー制作だったことも影響してか、小難しいことをやろうとしても録音状況や技術がそれに追いついていないように感じられた「雨上がり」までの音源。勿論曲の良さやバンドの良さは十分に伝わっていたんですが、今回のは今までの比じゃない位にデカい。多分小林プロデュースではないだろうけど、彼の元で仕事をしてきたスタッフが携わることによって、そこで培ったノウハウを今回レミオロメンに使った結果、予想以上の効果を発揮した、といったところでしょうか。曲は問題ない。このスケール感のデカさを上手く活かすアレンジもさすがだし、ボーカル・藤巻の歌声もホントにいい。ああ、これで完全に人気がホンモノになるわな。

  カップリングの"タクシードライバー"もグルーヴィーなロックチューンで、好印象。"電話"とはまた違ったタイプで、どっちかっていうと流れ的にはそれまでのインディー時代のものに近いかな、全てにおいて。まぁカップリング曲、アルバムの中の1曲といったタイプかな。

  多分、こういうタイプのロック(サウンドだったり、歌われている歌詞だったり)が苦手、興味の範囲外という人も多いでしょう。けど、もし貴方がこういったタイプのロックが好きなのに「雑誌で騒がれてるから」とか「BUMP OF CHICKENみたいだから嫌」といった理由で敬遠してるのなら、それは間違い。まずは偏見持たずに"電話"聴いてみな。現在、CSの音楽番組でもPVをよく目にするし、多分大手CDショップでも大プッシュしてるはずだから‥‥ちゃんと聴いて判断して欲しいな。バンドとしてもしっかりしてるし、この手のバンドの中ではとにかく面白い存在だと思うな。まぁ最後に判断を下すのは、聴いた貴方ですえけどね‥‥



▼レミオロメン『電話』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 08 24 12:00 午前 [2003年の作品, レミオロメン] | 固定リンク

2003/08/20

ROMANS『SEXY NIGHT~忘れられない彼~』(2003)

  ハロー!プロジェクト内、久し振りの問題作の登場です。モーニング娘。の矢口真里と石川梨華、メロン記念日の斎藤瞳、カントリー娘。の里田まい、ココナッツ娘。のアヤカの5人から成るROMANS(ロマンス)というユニット。関東地区では毎週月~金曜深夜0時50分から放送されている「セクシー女塾」という番組があるのですが、そこに出演しているこの5人がセクシーなユニットを結成してデビューする為に修行する的内容で毎晩バカなことをやらかすわけですよ。って番組内容の説明はこの辺にしといて‥‥当初このユニットは4人組で、石川・斎藤・里田とモーニング娘。加入前の藤本美貴が参加してたんですが、1ヶ月で脱落(番組的に。恐らくこの辺でカントリーへの助っ人参戦が決まったのでは!?)、代わりに矢口が加わり、更に1ヶ月後にアヤカが加わり現在の5人に。恐らく番組自体は2クール(6ヶ月)の予定みたいですから、この9月いっぱいで終わる運命だと思います。だとすると、このシングル自体リリースされる事が奇跡というか‥‥たった1回の企画モノ、として捉えた方が賢明かと思われます。

  最初に書いたようにこのユニット、賛否両論‥‥というよりも、明らかに否の方が多いような気が‥‥それはこのビジュアルイメージと、発表された楽曲"SEXY NIGHT~忘れられない彼~"が大きな原因となってるわけですが‥‥

  確かにね、俺も最初ラジオ音源をネットで拾って聴いた時、悪いとは思わなかったけど微妙だったのね。更にその後、テレビでの歌う姿を観たんですが‥‥正直厳しいと。歌メロが微妙というか、表現が難しそうなメロディかな、と。タダでさえ危うそうなメロなのに、それを歌う石川ときたら‥‥メロメロなわけですよ。矢口とか里田はかなり頑張ってるんですが‥‥もうね、正直「あー、CD買うかどうか疑問。レビューはとりあえずナシだな、こりゃ」と考えてたんですね。

  けどさ、買っちゃったと。勢い余って。

  確かにクリアーな音源(CD)を聴くと、印象がかなり良くなるわけですよ。アレンジにはAKIRAが全面的に参加(c/w曲含めて)してるせいもあってか、かなり手の込んだR&B歌謡といった印象で、テレビで聴くとちょっと平面的に聞こえたサウンドも、大音量で聴くと印象がガラリと変わり、確かに軽めなんだけど意外とゴージャス、みたいなそんな感じ。特にカーステレオで聴くと(まぁ我が車の設定もあるでしょうけど)更に良く聞こえたのね。もしかしたら安物のラジカセとかで聴くと更に良く聞こえたりして(avexモノが比較的そう聞こえるように、ね)。

  正直なところ、何で斎藤を歌に加えないんだよ!?とかいろいろ思うことはあるんですが、こうやって完成品を聴くと石川もそんなに悪くないし、むしろいい雰囲気出てると思うんですよね。矢口も歌い出しは結構いい感じなんですが、途中でちょっと印象が薄くなる場面が‥‥そういう意味ではこの曲、里田がかなり目立ってるように感じます。メインボーカルの3人(矢口・石川・里田)の個性が三者三様なこともあり、また普段のユニットみたいに歌パートが1小節のみとかそういったこともなく、安心して聴いていられるんですね。またラップ担当(斎藤・アヤカ)もそんなに耳障りでもなく、むしろつんく♂に同じ事やられるよりマシというか。

  決して「最高!」とは言い難いですが‥‥まぁ実験作ですしね。本来ならこういうの、T&Cボンバー辺りがやってた路線ですから。そういう「つんく♂にとっての捌け口」がなくなった今、こういう企画モノで消化するのも悪くはないかな、なんて思うんですよね。

  で‥‥話はここでは終わらないのです。カップリング曲"ロマン"の話題に移るわけですが‥‥これがね、予想外の出来で正直ビックリしてます。みんな、これの為にこのシングル買ってもいいんじゃない?って思える程、「ROMANS」というユニット名からは想像できないタイプの楽曲だったんですよ、これが。

  セクシーでもなく、R&Bでもなく。どちらかというと可愛らしい路線とでもいいましょうか‥‥ゴージャスなポップスというか‥‥例えば初期のモーニング娘。がやっても違和感がないタイプのポップス、と言えば判ってもらえるかなぁ‥‥いや、判ってもらえないか。タイプとしては小西康陽がアレンジしてもおかしくないような方向性。でね、これが石川や矢口の声に非常に合ってるわけですよ。勿論、里田や斎藤、アヤカも頑張ってるんですが、個人的にはどうしても石川と矢口の声に耳がいってしまう。で、気づくと脳内で飯田圭織や加護亜依の声をプラスしてシュミレートしてる自分がいたりで‥‥つまりはそういう楽曲。決してこの4人が例のユニットでやってたような方向性とは言い難いけど、別にやったとしても何ら違和感はないですよね、これ。途中に挿入されるフレンチっぽいスキャットや、急に登場するラテンアレンジとかはメロン記念日的と言えなくもないけど‥‥ああ、これって隠れた名曲の仲間入りしそうな1曲じゃない? 正直レベルはかなり高いと思うんですが。

  というわけで、タイプの違う2曲が収録されたこのシングル。「表」と「裏」、「光」と「影」といった2面性を持つこのユニット。別にセクシーに拘らなければ何でもこなせそうな5人が揃ってるって意味では、本当にアルバム向きなのかもしれませんね。あのビジュアルイメージに騙されず、一度このシングルを手にとってみてください。きっと新たなる発見が各自あるはずですから‥‥



▼ROMANS『SEXY NIGHT~忘れられない彼~』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 08 20 12:00 午前 [2003年の作品, ROMANS, ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

2003/08/19

CHEAP TRICK『SPECIAL ONE』(2003)

正直に申します。最初このアルバムを聴いた時「あちゃーっ、6年待たされてこれかよ。俺‥‥ダメだ‥‥緩すぎる‥‥」……期待が大きかっただけに、凄く大きなショックを受けたのね。こんなの俺が思い描いた、俺が望んだCHEAP TRICKの新作じゃない、って。そりゃね、確かに聴けばそれがチートリのものだって判るのよ。けどね、違うのよ。俺が待ってたのは、「6年分の穴を埋め合わせるどころか、そんな穴無視して猪突猛進してくようなサウンド」だったはずなのよ。

俺、誰が何と言おうが、世間的には駄作呼ばわりされてる前作『CHEAP TRICK』(1997年)が、凄く好きなのね。何故なら、守りに入ってなかったから。恐らく多くの人達が待ち望む「70年代全盛期の、古き良き時代のチートリ・サウンド」を再現するでもなく、あくまで「90年代のバンドとしてのCHEAP TRICK」を体現していて、彼等から影響を受けたであろう若手バンドと対峙してこうという意気込みと、20年以上に渡って活動してきたバンドの貫禄が同居する、非常に印象深いアルバムだと思ったのね。確かに懐メロツアーみたいなのもいいよ。けどさ、今の状況でそれやっちゃダメでしょ。VENTURESと変わらなくなっちゃうでしょ? KISSくらい派手に割り切ってやるならまだしも、今のチートリはそういう環境にないわけだし‥‥

だからこそ、この新作『SPECIAL ONE』を聴いた時、あまりに落ち着き過ぎてて、思いっきり拒否反応を示しちゃったのさ。ハッキリ言って、全部聴かないで、全曲の頭出し数十秒聴いて判断してそれっきり。1回も通しで聴かないまま、1ヶ月以上放置していたのでした。

ところがね。時間が経って気持ちも落ち着き、改めて通しで聴く時間が取れたんですよ。で、じっくりと腰を据えて耳を傾けたわけですよ、ネガな感情を抱えつつ。

これがね、悪くないのよ。いや、むしろアルバムの出来としてはこの10数年の中では一番良いんじゃないか?って断言できる程、トータル的に優れてると思ったのね。最初、全てが全てまったりしたバラード調、あるいは肩の力を抜いた埃っぽいアメリカンロックばかりといった印象だった各楽曲も、実はかなり考えられて作り込まれているな、という風に印象が変わったり、確かに落ち着いているんだけど、その中にもちゃんと「チートリらしい奔放さ」は封じ込まれているのね。そりゃさ、確かに10~20年前の作品と比べればその奔放さのレベルも格段と落ちますよ。正直、前作よりも年取った感は拭えないし。でも、いいんだわ。今なら素直に言えるもん。これいいよ!って。

大体さ、ここ数作(といっても彼等、この10年でオリジナル・アルバムってこの『SPECIAL ONE』を含めて3枚しか発表していないわけですが)必ずトップは勢いのいいのか、あるいはヘヴィでガッツのあるナンバーだったんだけど、今回の「Scent Of A Woman」ってちょっとタイプが違うよね。静かに始まって、一瞬「バラード!?」と思わせるものの、曲が進むにつれてテンションが高くなっていって、最終的にはチートリ以外の何者でもない楽曲になってるわけで。おいおい、BON JOVIじゃないんだから‥‥って思ったものの、確かにこれもチートリ。曲が良いんだもん、これ以上悪く言いようがないし。

そこからミディアム~スロウな曲が続くんだけど、確かに1曲1曲のクオリティは過去数作の中でも一番優れてるんだわ。ま、70年代に拘る方々には少々厳しいのかもしれないけど、80年代から入っていった人達(俺を含む)はむしろこういった方向性、有り難いんじゃない? ま、俺はどちらの路線も好きなんだけど、ちょっと頭からこういった曲調が続くと‥‥ねぇ?

ところがね、このアルバム。中盤から後半にかけて、徐々にテンションが高くなってくのよ。決して初期のアッパーな曲みたいなのがあるわけじゃないんだけど、何ていうか、こう‥‥静かに熱が高まってくような、台風がゆっくりと、徐々に、徐々にと近づいてくるような、そんな雰囲気なのね。特に4曲目「Pop Drone」でチートリ流「LED ZEPPELINの "Kashmir"」を体現し、5曲目「My Obsession」でサイケなポップロック、6曲目「Words」で甘くとろけるようなポップソングで小休止し、7曲目「Sorry Boy」と8曲目「Best Friend」で「ヘヴィ&ダークサイド of CHEAP TRICK」の決定版を至極自然体に表現してみせるという。完全にこの辺がアルバムのハイライトといっていいでしょう。更にアルバム本編のラストとなる2曲(「Low Life In High Heels」「Hummer」)は、同じ曲を違うプロデューサーに預け、それぞれの持ち味を活かした形へと成長した2曲を並べることによって組曲のようになっているという、非常に面白い仕組みになってるんですね。前者をかのスティーヴ・アルビニに、そして後者をGORILLAZ等でお馴染みのDan The Automatorに任せることで、シンプルで地味なこの曲もいろんな意味でカラフルになっています。それでいてチートリらしさは損なわれていないんだから、さすがというか(ま、この場合はチートリの個性がそれだけ強いんだ、と解釈しておきましょう)。

あ、日本盤ボーナストラックの「Special One」日本語バージョンはこの際無視。蛇足だと思ってます、個人的には。こんなの入れるくらいだったら、ボーナストラックなんていらなかったのに‥‥。

と、最初はかなり否定的な感情が付きまとったこのアルバム。最終的には「非常に良いアルバム」という結論に落ち着いています。ただ、それでもこれは俺が思い描いたチートリの姿ではないし、残念ながらそういった姿はもう二度と観られないのかもしれませんね‥‥そこは割り切るべきなのか、それとも諦めずに夢を追い求めるべきなのか悩むところですが。まぁこの6年、散々ベスト盤だのライヴ盤だのでそういった溌剌とした面は散々味わってきたので(実際に観たライヴでもそういった面を堪能できたし)、これはこれで楽しむことにしましょう。だってこれ‥‥決して名盤とは言わないけど、忘れた頃に聴きたくなる、恐らく付き合いが長くなりそうな1枚になると思うからさ。



▼CHEAP TRICK『SPECIAL ONE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 08 19 11:37 午前 [2003年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2003/08/18

ROCKBOTTOM『THROW AWAY』(2003)

  TREEBERRYSのボーカル/ギターのINAGAKI氏が参加するもうひとつのバンド、ROCKBOTTOM。このバンドは昨年5月のFLASHCUBESのライヴで初めて観て、一発で気に入ってしまったんですよ。もうね、サウンド・スタイル・佇まい‥‥全てにおいて、自分が愛して止まない'70~ '80年代のアメリカン・ハードロックやパワーポップの香りがプンプンしまくってるんだもん。正直、カッコイイを通り越して「羨ましい‥‥」って嫉妬に駆られる程。

  そんな彼等が、待望のファーストアルバムをリリース。全10曲、予想通りの、そして予想外の内容に正直驚きを隠せないでいます。勿論、良い方の、ねっ? このアルバム、プロデュースとレコーディング及びミックスをFIRESTARTERのFINK氏が手掛けているんですね。だからなのか判りませんが、ROCKBOTTOM本来が持つ荒々しさが更に強調された、正にライヴレコーディングと呼ぶに等しい程の生々しさがそのまま真空パックされてます。インディーズの低予算だから、とも取れるわけですが、こういうバンドの場合は極端に派手なサウンドになるか、逆にこういう極端に装飾を剥ぎ取った生々しいサウンドになるか、どちらかだと思うんですね、個人的に。ファーストアルバムってことで、彼等の持ち味を上手く活かした結果がこれだった、と俺は確信しています。

  楽曲はライヴで定番の、バンドのテーマ曲ともいえる"ROCKBOTTOM"からスタートするんですが、これが以前ライヴで聴いたものよりも、そして昨年流通していた3曲入りCD-Rのテイクよりも更にカッコ良くなってるんですわ。大まかなアレンジはそのままなんですが、細かな味付け‥‥ドラムのフレーズだったり、ボーカルの歌い方だったり、そういった辺りに成長を感じずにはいられない程頼もしくなってるのね。

  それ以降もヘヴィだけどポップな"FEEL LIKA DANCE TONITE"、ハードポップ/パワーポップファンにこそ聴いて欲しい名曲中の名曲"TV KILLS"、ベースのKOZY氏がボーカルを取る"SHAME ON YOU"と"THROW AWAY"(特に"THROW AWAY"はRAMONESにも通ずる色合いを感じずにはいられませN)、ライヴでは大合唱間違いなしの"IT'S ALRIGHT (TO ROCK'N'ROLL)"、サミー・ヘイガーが在籍していた頃のMONTROSEを彷彿させる疾走チューン"ROCK'N'ROLL TERRORISTS"等‥‥とにかく捨て曲なし、どの曲も「心のヒットチャート」上位にランキングしそうな名曲・佳曲揃い。洋楽ロック、特に30代以上の人が彼等の曲を聴いたら絶対に胸キュン状態に陥るはず。そういうバンドなんですよ、彼等は。

  俺ね、常々思ってたのは‥‥このバンドの凄みって、「ポール・スタンレー(KISS)とロビン・ザンダー(CHEAP TRICK)が同居する」ようなそのスタイル(サウンドや楽曲・、ボーカルスタイル等も含めて全てにおいて)だと思ってたのね。TOMMY氏、INAGAKI氏のどっちが誰ってことじゃなくて、共にそういう要素を持っていて、それが相互上手く滲み出てる、と。それでいてバンドは'70年代ハードロックやパワーポップ的な色合いと、RAMONESのようなパンクの色合いとを兼ね備えている。更にこのアルバムでは新たに「エース・フレーリー(KISS)的ポジションの第3の男」まで登場するわけですよ。最近のライヴを観てなかったので、ベースのKOZY氏がボーカルを取ること、知らなかったから余計に驚いたわけですよ。決して上手いとは言わないけど、それこそエースみたいな雰囲気モノのシンガーとして、既にバンド内でのポジションも獲得してるし、なくてはならない要素にもなってると思うんですね。それだけこの1年ちょっとの間でパワーアップしていた、と。もうね、それが嬉しいのと同時に、悔しいの何のって‥‥だって、俺がこんなバンドやりたかったもんマジ。

  ‥‥って愚痴っても仕方ないんですが、とにかくこのアルバム、上記のように俺と同年代のロックファンだけでなく、10代、20代のファンにも聴いて欲しい1枚。絶対にどこか引っ掛かる箇所があるはず。メジャーとかインディーとかじゃなしに、ロックの一番カッコイイ部分、気持ちいい部分をよく知り尽くした男達が作り出すサウンド、悪いわけがない。とにかく聴いて!



▼ROCKBOTTOM『THROW AWAY』
(tower records:国内盤CD

投稿: 2003 08 18 12:00 午前 [2003年の作品, ROCKBOTTOM] | 固定リンク

2003/08/01

O.P.KING『O.P.KING』(2003)

  YO-KING、奥田民生、Theピーズのはる、the pillowsのシンイチロウによる今夏限定ユニット、O.P.KING。まさかアルバムまで作る程本格的に活動するとは思ってもみなかったよね?

  事の発端は、今年3月に行われたこのイベント。YO-KING主催で、彼の友人や親しいミュージシャンが集ったイベントなわけですが、この時出演したのは他でもない、民生とピーズなわけですよ。で、そのイベントの最後にはこの4人で、いわば「プレO.P.KING」と呼べるようなライヴをやったわけ。その時に演奏されたカバー曲("BAD BOY"、"RIP IT UP ~ Ready Teddy"、"Hippy Hippy Shake")は全て今回のアルバムに収録されているんだけど、そういったカバー曲のみならず、O.P.KING名義での作品2曲、YO-KING、民生、はるによるオリジナル曲がそれぞれ1曲ずつ、計8曲の最高にイカすロックンロールが詰まったミニアルバムがここに完成したわけです。

  いきなりこのメンツでバンド組みましたって言われると、普通は「おおっ、スゲエ! スーパーバンドだよ!!」って興奮するんだろうけど、冷静に考えるとこの組み合わせって、単に初期YO-KINGバンド(倉持・はる・シンイチロウ)に民生がゲスト出演したような形ともいえるんだよね。実際、民生ってYO-KINGのセカンドアルバムにも2曲ゲスト参加してるんでしょ? その片鱗みたいなものはずっと前から見え隠れしたたわけか‥‥

  ハッキリ言っちゃえば、YO-KINGの楽曲はまんまだし、民生の曲もまんま民生、はるの曲もピーズでやっても何ら違和感のない、当たり前の曲。つうかそれが当たり前の話だろってことなんですが。それだけ色や個性が強いミュージシャン/ソングライター/シンガーが3人も揃ってるんだもん、普通は個性のぶつかり合いみたいな、どぎつい世界観をつい想像してしまいがちだけど、ここにあるのはそういった「若さ故の争い」的サウンドはゼロ。目立つ時は思いっきり目立ちまくり、他者を立てる時は日陰の人として地味にする、でもそのスター性がそれでも滲み出てしまう、みたいなそんな内容。要するに「大人が頑張ってやんちゃしちゃいました!」的1枚。30代後半、40代に手が届きそうなオッサン4人による「夏の想い出音日記」なサウンドトラック盤。それがO.P.KINGなんじゃないでしょうか?

  ま、言い出しっぺは間違いなくYO-KINGでしょう。民生が進んでこのメンツを揃えて「バンドやろうぜ!」なんて言うわけないし、はるはピーズで精一杯だと思うし、シンちゃんにしろピーズとpillowsで手一杯だからYO-KINGバンド辞めたわけだし。もうね、王様のワガママから始まったといっていいんじゃないかな? だからって、決してYO-KINGが悪者だと言いたいんじゃなくて、よくぞ実現させてくれた、ありがとう!と心から感謝したいわけよ。だってさ、それぞれがそれぞれのバンドのリーダー格な存在ばかりでしょ?(ま、ソロのYO-KINGと民生は当たり前だけど、ドラマーのシンちゃんはちょっと違うかも)そういった人間がリーダーでもなく、単に「バンドの一員」としてステージに立つ姿、あんま観れないわけじゃない? 特に民生なんてユニコーン解散してから10年近くだよ!? これを面白くない・楽しめないって言ったら嘘になるんでないの?

  そういう偏った楽しみ方もありつつ、肝心の音はもうストレートすぎる程のロックンロール。それぞれのソロ曲は上に書いた通りだけど、それらの音も一本筋が通ってる感じかな。そして問題の「O.P.KING」としての共作曲"O.P.KINGのテーマ"と"通り過ぎる夏"。これってどういう風に作っていったんでしょうね。前者は民生がメインで歌うパートが多く、ブリッジ1でYO-KING、ブリッジ2ではるといった感じで、それぞれが歌うパートのメロはやっぱりそれぞれが書く楽曲のそれに近いのね。更に後者に関しては、はる~YO-KING~民生~シンちゃん(!)という具合に各コーラスを歌っている構成で、コード進行とサビメロは一緒なんだけど、それぞれのメロディが全く違うという‥‥多分さ、それぞれが歌うパートに関してはそれを歌う人がメロディや節回しを作ってると思うのね。特に"通り過ぎる夏"の場合は確実にそれ。もう笑っちゃう位にそれらしいメロディだもん。んん、だとしたらシンちゃんのは‥‥おおっ!

  こういうのはね、レビューでいろいろ解説・分析するもんじゃなくて、爆音でひたすらリピートするのが正しい楽しみ方だと思うのね。この夏必須、特に同年代のオッサン達にこそ聴いて欲しい1枚。



▼O.P.KING『O.P.KING』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 08 01 12:00 午前 [2003年の作品, O.P.KING, pillows, the, YO-KING, ピーズ, The, 奥田民生] | 固定リンク

2003/07/23

カントリー娘。に紺野と藤本(モーニング娘。)『浮気なハニーパイ』(2003)

  新メンバー、みうなが加入したのが今年の春。その後、「カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)」としての活動(形体)を一旦白紙に戻し(=石川梨華のレンタル終了)、今後の動向が注目されていたカントリー娘。。1~2ヶ月前に急遽、新しい助っ人に石川と同じモーニング娘。の紺野あさ美と藤本美貴が選ばれ、過去最大の5人体制となり、名前も新たに「カントリー娘。に紺野と藤本(モーニング娘。)」と更に長くなってしまったわけで。

  というわけで、カン娘。関連としては昨年11月の"BYE BYE 最後の夜"以来、8ヶ月振りとなるシングル。これがかなりの曲者です。多分、古いファンになればなる程、賛否両論なんじゃないでしょうか?

  タイトルチューン"浮気なハニーパイ"は、思わず「"James Brown Is Dead"(ジュリアナ東京全盛期に流行ったダンスチューン。今から10年以上も前の曲ですね)かよ!」とツッコミを入れずにはいられないディスコチューン。あのメインリフがまんま流用されているわけですが、実際バックトラックはそこまで昔のジュリアナ・サウンドという程でもなく、もっと昨今のサイバートランス系の打ち込みなんですよね。よく作られていると思いますよ。ただ、練られているとは思わないけど(ここが微妙なポイントなんですよね)。この辺が気にならなければ、メロディもしっかりしてるし(ホント、ここ最近のつんく♂の冴え具合は目を見張るものがあるよなぁ)、新加入したみうなの歌唱もそれ程悪くないし、ハマったら抜け出せなくなる中毒性の高い1曲になってると思うんですよね。

  藤本のファンだからというのを差し引いても、彼女の声というのはもうそこにあるだけで存在感抜群なわけで。この曲の中でもズバ抜けて耳に残るのが藤本の歌声。続いて印象深いのが、藤本とパートを二分してるように感じる里田まい。正直デビューしたての頃はそれ程印象に残らなかったんですが、特にここ最近(シャッフル以降?)の成長には目を見張るものがありますよね? あさみも適材適所で役割を旨くこなしているように感じるし、逆にみうなはその初々しさが印象深いし。そういう観点からすると、紺野の声の薄さがここではちょっと足を引っ張ってるように感じるんですが‥‥まぁそれも彼女の個性だし。タンポポのような組み合わせだと見事に栄えるんですけどね。ちょっと今のカン娘。はパワーゲーム化しつつあるように感じますね。

  そして、カップリング曲。これが本当の問題作で(少なくとも旧来のカン娘。ファンにとっては、ね)‥‥りんね&あさみ時代の名曲、"恋がステキな季節"の2003年バージョンなんですわ。これ、発表になった時点で既に「否」の声が圧倒的に多かったんですよね。俺!? 俺はフラットな気持ちで「聴いてみなきゃ判断つかん」って思ってた。んで、聴いてみて。バックトラック及びあさみのボーカルは当時のままを流用し、そこに里田・みうな・藤本のボーカルを被せたようですね。紺野は歌ってるのかな‥‥全然判らないよ。ただ、クレジットにはコーラスにあさみと紺野の名前があるし、ハーモニーに紺野の声を見つけることができるので、そういう参加の仕方なのかもね。

  これは「りんねさんの歌」という風に捉える人が多いと思うけど‥‥俺、敢えてこの曲にしたのは制作側からの善意を感じるんだよね。だってさ、この曲の前のシングルまでは「北国」とか「北海道」をテーマにした曲ばかりだったじゃない? それこそが道産子のりんねさんの為の曲であって、むしろこの"恋がステキな季節"ってのはもっと違う次元の、普遍的なポップソングを目指したものだと思うのよ。もう、この時点で「りんねさん限定」というのはちょっと違うかなぁ、という気がするのね。そりゃファンからすりゃ「りんねさんの歌」には間違いないんだけど‥‥歌って本来、時間を経て、巡り巡って歌い継がれていくものなわけじゃない。敢えてこの曲を選んだのは、そういったファンに対する可能な限りの善意からと、そして「埋もれてしまうには勿体ない曲。これを切っ掛けにもっと多くの人の耳に届いて欲しい」という願望からだったんじゃないですかね? だから俺は今回のカバーを否定できないのね。むしろ好意的に捉えてます。だって、思ったより出来が良かったんだもん。これであさみのボーカルも再録してたらもっと良かったのにね。

  というわけで、新生カン娘。に新たな助っ人2人。俺は支持しますよ。今回の再編成が「ソロで歌う場を失った藤本を遊ばせる場」であったとしてもね(そういえば、藤本って「hachama」所属だったわけでしょ。今まで「zetima」等他のレーベルの音源に参加した時はそういうクレジットが入ってたんだけど、今回のシングルにはそのクレジットが一切なし。ということは、モーニング娘。編入と共に「hachama」との契約が終了、そのまま「zetima」に移籍になったってことなんでしょうかね?ってのは、邪推しすぎ??)。



▼カントリー娘。に紺野と藤本(モーニング娘。)『浮気なハニーパイ』
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投稿: 2003 07 23 12:00 午前 [2003年の作品, カントリー娘。に紺野と藤本(モーニング娘。), ハロー!プロジェクト] | 固定リンク

2003/07/21

RON RON CLOU『SECOND RUNNER』(2003)

  8年振りのセカンドアルバム。もうこれだけで感動なのに、その内容が文句なしに素晴らしいんだから、もう‥‥間違いなく、今年前半にリリースされた中でもトップ3に入る1枚だと思います。そんなRON RON CLOUのアルバム、「SECOND RUNNER」。全14曲で約40分、全ての楽曲が2~3分台、4分を超える曲なんて1曲もなし。ただひたすら突っ走り、ギターがザクザクリフを刻み、メロディアスなメロディに心ときめかす。そんなポップパンク/ギターポップ/パワーポップ‥‥呼び名なんてどうでもいいや、とにかくそんな傑作ロックアルバム。

  ギター&ボーカルのアライ・ヒトシが'90年代末からNORTHERN BRIGHTとしての活動も並行して行っていたため、ちょっとスローペースになっていたRON RON CLOUの活動も、ここに来て急に活発に。まさか2003年の今年にアルバムを聴けるなんて思ってもみなかったもんだから、最初その知らせを聞いた時はビックリしましたよ。そしてその知らせから数ヶ月、あっという間に我々の手元に届いたこのアルバム。何度も言うけど、この手のサウンドが好きな人には文句なしでしょう。少なくとも俺に関しては、この半年間にリリースされたこの手のものの中でブッチギリの1位ですから。

  全14曲中、5曲("STANDING IN THE SHADOWS"、"THE GOLDEN COUNTRY"、"DO SPORTS!!"、"SMASH IT UP"、"LUCKY STAR")がシングルでの既発曲なんだけど全てこのアルバム用に再レコーディングされたバージョン。加えてボーナストラック扱いの2曲("READY STEADY GO!"と"I DON'T MIND")は'96年にリリースされた"STANDING IN THE SHADOWS"のアナログ盤及びピクチャー盤に収録されていたカバー曲。現在は共に廃盤の為、ここでしか聴けない音源になってます。ちなみに前者がGENERATION Xの、後者がBUZZCOCKSのカバー。アルバムには他にもMY BLOODY VALENTINEのカバー、"SUNNY SANDAE SMILE"も収録されています。

  とにかくね、いきなり1曲目"MERRY-GO-ROUND"の疾走感&美メロにやられてしまうんですね。下手なメロコアバンドより気持ちいいし、何よりも主旋律&ハーモニーが気持ちいいの何のって。そのまま名曲"STANDING IN THE SHADOWS"、"THE GOLDEN COUNTRY"へと流れていく構成もさすが。中盤に並ぶ新曲群も安心して聴いてられるし、その後に訪れるシングル曲の数々も言うまでもなく。そして"LUCKY STAR"の余韻を引きずったままフェイドインする"DON'T BE AFRAID TO FLY"、本編ラストの"TEENAGE SONG"のミディアム2曲。これがもう素晴らし過ぎ。TEENAGE FANCLUBにも通ずる美メロ&コード進行にゾクゾクしっぱなし。いやーマジかっけー!

  ライヴでいうところのアンコール的なボーナストラック2曲も、カバー曲なので特に問題なし。アルバムの構成を壊すどころか、むしろそのままリピートして1曲目に戻ってしまうという。まんまとRON RON CLOUのペースにはめられっぱなし。

  こういうバンドの、こんなに充実したアルバムを聴いてしまうと‥‥ホントにバンドがやりたくてたまらなくなるんだよね。ギターとベースとドラム、3人揃ってスタジオで「いっせーのーせー!」でガツーンとデカイ音でこういう曲を勢いよく‥‥10代だろうが30代だろうが、年齢なんて関係なく、ねっ!



▼RON RON CLOU『SECOND RUNNER』
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投稿: 2003 07 21 12:00 午前 [2003年の作品, RON RON CLOU] | 固定リンク

2003/07/18

BON-BON BLANCO『BEAT GOES ON』(2003)

  3月末にリリースされた、BON-BON BLANCO待望のファーストアルバム、「BEAT GOES ON」。正にタイトル通りの、一本筋の通った高純度ポップアルバムに仕上がってます。シングル曲 "愛 WANT YOU!!"、"だって、女の子なんだもん!"、"愛のナースカーニバル"、"涙のハリケーン" のクオリティがあまりに高かったことから何となく凄いアルバムになりそうだなぁというのは想像できたんですが、まさかここまで完成度が高いとは思ってもみませんでした。

  全11曲中既発曲は上記の4曲に加え "涙のハリケーン" のc/w曲、"White♡" の計5曲。他の6曲がこのアルバム用の未発表新曲ってことになると思うんですが、ボンブラの場合既にライヴのみで披露されていた未発表曲というのが沢山あるそうなので、恐らくそういった「既にファンなら知ってる、ライヴで披露済みの楽曲」が数多く収録されているんだろうと想像します。

  んで、そういった新曲のクオリティもシングル曲に負けず劣らずの完成度。大体アルバムの頭3曲をそういった新曲で固める辺り、非常に挑発的ですよね? ハロプロに慣れてしまってる身としては、これはちょっと意外、というか驚き(ハロプロ系はアルバムトップに、その時点での最新シングルやヒット曲を持ってくるっていうパターンが殆どですからね)。アイドルとかそういった枠を超えた、評価されるべきJ-POPアルバムと呼んでも差し支えないと思います。

  頭3曲("この手につかんだ未来地図(ストーリー)"、"だいじょうぶ!! my firend"、"LIVE")に比較的落ち着いたミドルテンポのポップチューンを持ってきてるんですが、そのリズムパターンは様々で、"この手につかんだ未来地図(ストーリー)" がサンバ調のリズムだったり、"だいじょうぶ!! my firend" はレゲエだったりして、ミドルテンポながらも単調にならず、ちゃんと考えられているのはさすが。ちょっとまったりしてきたところに、ヒットチューン "涙のハリケーン" が出てきて高揚し、その後にこのアルバム最大のハイライトであろう名バラード "The sea of the time" を持ってくる構成、ホント良いよね。とにかくこの曲は特筆すべき出来で、何故これが現時点での最新シングル "バカンスの恋" のc/w曲としてリカットされたのかが何となく理解できますよね。

  後半になると知ってる曲が増え、ちょっと安心感が。ヒット曲 "だって、女の子なんだもん!"、"White♡" でいい感じに高揚したところにミディアムスロウの聴かせどころ "世界の始まりのように" で一息つき、ダンサブルな "Mysterious Heaven" で再び盛り上がり、デビュー曲 "愛 WANT YOU!!"、そして現時点での最大のヒット曲 "愛のナースカーニバル" で最高潮を迎え、アルバムは幕を閉じるわけです。ホント、隙のない完璧な作り。

  実は俺、ボンブラがBEING系所属のグループだなんて知らなかったんですよ、今回のアルバムクレジットを見るまで。「PRODUCED BY ZAIN PRODUCTS」、そして参加ミュージシャンにDEMENSIONや宇徳敬子の名前を見つけ、何となく彼女達の立ち位置が判ったような気がしたのでした。

  この完璧過ぎるアルバムに、ひとつだけ難癖をつけるとするなら‥‥「完璧過ぎて、面白味に欠ける。意外性が少ない」ってとこですかね。無理して嫌味のひとつでも言いたくもなるような、とにかく良く出来たアルバムですよ。同時期にリリースされたモーニング娘。の「No.5」と‥‥比べるまでもないか。同じ「ダンスミュージック」を骨格に持つポップスとして聴き比べるのも面白いし、ああいったダンサブルなアイドルポップが好きな人なら絶対に何か感じるものがある作品だと思いますよ。偏見持たずに是非聴いてみてください。



▼BON-BON BLANCO『BEAT GOES ON』
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投稿: 2003 07 18 12:17 午前 [2003年の作品, BON-BON BLANCO] | 固定リンク

2003/07/14

JET『DIRTY SWEET EP』(2003)

ここ数年、「リフロック」バンドがもてはやされています。このサイトでもそういったバンドを取り上げることが多いですが、特に昨年後半辺りからTHE WHITE STRIPESの英米での大成功、THE DATSUNSのブレイク、そして最近では昨年夏にこのサイトでもいち早く取り上げた「THE ELECTRIC SWEAT」がメジャーから再リリースされたTHE MOONEY SUZUKIといった辺りが人気を得ていますが、ここにもうひとつ、そういったバンドに負けず劣らずな存在になるであろう新人がいます。それが今回紹介するJETです。

オーストラリアはメルボルンにて結成され、結成から間もない頃にROLLING STONESのオーストラリア・ツアーの前座に抜擢されたというだけで話題性十分なのに、間もなくリリースされるであろうデビューアルバムがデイヴ・サーディー(オルタナ系・ラウド系ではお馴染み)のプロデュースでLAにて制作された、既にイギリスではライヴはソールドアウトで雑誌でも大絶賛されている、更に日本への初来日が今夏のフジロック等、とにかく既に大物としての貫禄十分なわけですよ。ここ日本でも7月にはリリースされたこのEP、昨年夏にレコーディングされ、限定盤としてリリースされたものの、すぐにソールドアウト。急遽メジャー配給で今年の春に海外でリリースされたという代物。俺もこの春に手に入れていたのですが、常習性十分なrawでアーシーなロックンロールを堪能できる、本当にいいバンドだと思いましたね。

昨今の爆走ロケンローの流れを組む勢い十分な"Take It Or Leave It"。同郷ということもあってか、よく名前の挙がるAC/DCからの影響を十二分に表現した"Cold Hard Bitch"、何故ストーンズが彼等を絶賛したのかが理解出来るカントリーテイストのバラード"Move On"(コーラスの入り方が、'70年代のミックとキースを彷彿させますしね!)、「ホントにこれが2003年のバンドかよ!?」と思えてしまうサウンドと空気感を持ったユルユルのロックンロール"Rollover D.J."と、EPということでたったの4曲しか入ってないのですが‥‥物足りないよ! 間違いなく、この手の音が好きな人にはたまらない1枚になってるんだけど、多分このバンドの凄さはこんなもんじゃないと思うのね。間違いなく「顔見せの名詞的内容」なんだけどさ、確かに名詞としては十分な役割を果たしてるんだろうけど、きっとフルアルバムやライヴではここにはないタイプの楽曲が幾つかあるんだろうなぁ、と大きな期待を寄せてしまうわけですよ。たった4曲ではあるんだけど、そう感じさせるだけの魅力がプンプン匂ってくるもの。

上に書いたようなバンド‥‥それこそストーンズであったりAC/DCであったり、そういったストレートなロックンロールを信条としてるようだけど(ジャケット写真でもストーンズやAC/DCのTシャツ着てるし、ギターリストがフライングVを使用してたりとか、それだけでも十分判りやすいよね)、多分30才超えたような人達は「リバイバルロックだろ!?」といって彼等に見向きもしないような気がするのね。けどさ、そういった30才超えたような俺らからすると、こういったサウンドをハタチそこそこの小汚いアンチャン達が勢いよくやる、そこに意味があるんじゃないかな? 10代~20代前半の子達はリアルタイムでLED ZEPPELINもSEX PISTOLSやTHE CLASHもGUNS N'ROSESもNIRVANAも実体験してないわけよ。そういったバンド達が持ってた「ライヴ感」であったり「リアル感」を、今もてはやされている「リフロック」バンド達に求めてるんじゃないのでしょうかね、彼等は。

‥‥なんて小難しい事を書いちゃったけど、早い話が「カッコ良ければ、それでいいじゃない!」ってわけですよ。俺が視聴して一発で気に入ったように、彼等も即効性を持ったこのサウンドにやられてしまったわけですから。とにかく、今からフジロックが待ち遠しくてたまらないよ!



▼JET『DIRTY SWEET EP』
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投稿: 2003 07 14 03:15 午前 [2003年の作品, Jet] | 固定リンク

2003/07/12

KULA SHAKER『KOLLECTED - THE BEST OF』(2003)

もはや彼等KULA SHAKERをリアルタイムで通過していない世代すら多くなりつつあるこのサイトですが、やはり開設当初に取り上げた彼等のセカンドアルバム「PEASANTS, PIGS & ASTRONAUTS」は今でも名作であり、結局最後の来日公演となってしまった'99年6月の2度目のジャパンツアーも強烈なインパクトを我々に残しました。その後、彼等は同年9月にクリスピアン・ミルズ脱退という想像もつかなかった形でバンドの終焉を迎えるわけです。その後、3年以上ものブランクを経てクリスピアンがTHE JEEVASを率いてシーンにカンバックしたことは、記憶に新しいでしょう。昨年夏のフジロック、今年1月のジャパンツアーに続いて、早くも今年の夏、再びフジロックに登場し、帰国後の9月には約1年振りとなるセカンドアルバムのリリースが決定しています。

そんな、今でこそ活動が順調なクリスピアン。THE JEEVASのライヴでもお馴染みのKULA SHAKERナンバーを多数収録した、所謂ベストアルバムが今回紹介する「KOLLECTED - THE BEST OF」という1枚。ヨーロッパでは'03年初頭、ここ日本では同年3月にリリースされました。

ベストアルバムというと、普通は数枚のアルバムをリリースした後、活動の節目となる時期(メンバーチェンジや解散・活動休止、レコード会社移籍等)に発表されることが多いのですが、今回の場合は単純にTHE JEEVASのヨーロッパ・デビューに合わせて、ということでしょう。それにしても、KULA SHAKERはたったの2枚しかアルバムをリリースしていないわけですよ。そんな彼等がベスト盤だなんて‥‥STONE ROSESのベスト盤というのも多少無理があると感じたことがありますが、まぁ彼等の場合はシングル・オンリーの楽曲やカップリング曲が充実してるから、意外と曲が多いんですよね。けど、KULAの場合は‥‥カップリング曲を含めても40数曲なわけですよ‥‥って、そんなにあったのか‥‥まぁ、なら出そうと思えば出せるのか。意外とKULAもシングルにしか入ってない曲、多かったのね?

さて、その内訳を見てみますか‥‥ファースト「K」から7曲(内シングル曲4曲)、セカンド「PEASANTS, PIGS & ASTRONAUTS」から4曲(内シングル曲3曲)、シングルオンリー1曲、シングルC/W曲3曲、そして未発表曲1曲の計16曲となっております。まぁファーストから一番多いのは判るとして、セカンドから4曲ってのは正直少ないかな、と。まぁコンセプトアルバム色が強い内容だったので、バラして収録するには厳しい楽曲もあるにはあるんだけどね。あとさぁ‥‥シングルのカップリング曲、もっと多くていいんでないの? ここに入らなかった、ライヴでの定番曲って沢山あるわけじゃない? ファーストの頃だったら "Under The Hammer" とか "Gokula" 辺り、セカンドの頃だったら "Hurry On Sundown" や "Guitar Man" とか‥‥ってここで気づいたんだけど、今挙げた楽曲ってKULA特有のリズム重視のアップテンポの曲ばかりなのね。で、実際に収録されたカップリング曲をみると"Drop In The Sea"、"Light Of The Day"、"Dance In Your Shadow"という、彼等のもうひとつの側面‥‥メロディアスでメランコリックなミディアムナンバーばかりなのね。前者が"Hey Dude"や"Grateful When You're Dead"のような路線であり、後者は"Tattva"や"Govinda"的な路線といっていいでしょう。どちらがよりKULA SHAKERらしいか‥‥この辺の認識の差が出ているのかもしれませんね。

つまり、我々日本人はどうしてもアッパーでグルーヴィーな前者を彼等に求める。STONE ROSES亡き後の救世主として彼等を見ていた人達にとっては、こういった楽曲こそKULA SHAKERだったと。しかし、当のクリスピアンにとっては後者のようなインド信仰的なミドル・グルーヴィーな曲こそKULA SHAKERだったと。彼等を嫌う人にとって最も鼻についたのが、このインド信仰だったわけですよね(特にここ日本でもそういった声をよく耳にしました)。ここに大きな溝があるわけですよ。だからこのベスト盤の選曲をしたクリスピアンにとっては、これが普通の流れであり、ファンの側からすると「グルーヴィー~ミドルでメロウ~グルーヴィーでアッパー~ミドルでメロウ‥‥」という繰り返しに違和感を感じたりする。結局、この辺に対する理解の差によって、KULA SHAKERに対する評価が大きく分かれるように思います。

俺自身、最初は「イマイチな流れだなぁ‥‥」と思っていたんですよ、上記のように。けど、聴き込んでいくうちに、そういったことに気づいていき、実際"Tattva"や"Govinda"も大好きな自分としては「こういうのもありだな」とさえ思えるようになっていったわけです。

このアルバムでしか聴けないボブ・ディランのカバー"Ballad Of A Thin Man"も、如何にも彼等らしい出来ですし、これが日の目を見ただけでも意味あるリリースだったのではないでしょうか?

確かにそれでも不満は沢山ありますよ。変な編集や中途半端なエディットをした曲("Sound Of Drums"や"Mystical Machine Gun"等。特に"Mystical Machine Gun"は酷すぎ。何でギターソロをカットするかなぁ。しかもアルバムバージョンの方だし。この曲、シングル用に別バージョンがあるんだから、そっちを入れた方がお得感が強かったと思うのに。ま、楽曲を作った当の本人が選んだのでこれでいいのでしょうけど‥‥)や曲の並べ方、お約束のシークレットトラック等々‥‥THE JEEVASのファーストが淡泊だっただけに、ここで今一度遊んでおくか!?って気合い入れたんですかね? まぁ何にせよ、これを手にした若い子達がKULA SHAKERに興味を持つにはよい参考書程度にはなってると思います。折角アルバムは2枚しかないんだから、これ聴いて気に入ったらTHE JEEVAS聴く前にKULAのオリジナルアルバムを聴こうよ、ねっ?

最後に。日本初回盤にはボーナスDVDが付いてます。KULAの全PVを収録している、唯一の映像作品です。悪いことは言いません、初回盤をゲットすべき!



▼KULA SHAKER『KOLLECTED - THE BEST OF』
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投稿: 2003 07 12 05:35 午前 [2003年の作品, Kula Shaker] | 固定リンク

2003/07/02

ORIGINAL LOVE『踊る太陽』(2003)

  オリジナル・ラヴの新作を聴くのって、一体どれくらい振りだろう。多分、最後に買って聴いたオリジナルアルバムは「DESIRE」だから‥‥'96年ですか。ってことは‥‥まる7年振り!? そんなに経つのか‥‥俺が好きなオリジナル・ラヴのアルバムってのが、実は東芝時代のラスト作となった「風の歌を聴け」と、ポニーキャニオン移籍後1作目の「RAINBOW RACE」の2枚なんですよね。要するに、田島貴男のソロ体制へと移行していく過程で生まれた2枚。完全なるソロ作と言えるだろう「DESIRE」は当時、アクが強すぎると感じて苦手だったんだよなぁ(が、先日久し振りに引っ張り出して聴いてみたら、これがいいんですよ。何だかんだいって "プライマル" は名曲だしね)。

  で、それ以来疎遠になっていたオリジナル・ラヴ。この7年の間にリリースされたアルバムは1枚も聴いて来ていないし、せいぜいシングル曲はラジオやテレビで目にする程度。お金を出して買ってまで聴こうっていう気にはならなかったのね。

  ところが、この1年くらい、俺の周りでのオリジナル・ラヴ熱が結構高いんですよ。ま、切っ掛けはこの人なんですが、確かに耳にする曲全部がビビッとくるものばかりだったのね。でも、まだまだ俺の中で何かが燻ってて、手を出すまでに到らず。

  しかし、とうとう俺にアルバムを買わせるまでに心を動かす曲が登場するのですよ。それが先行シングル曲である"Tender Love"と"恋の彗星"。ゴージャスでセクシーな前者に、上で挙げた名曲 "プライマル" にも匹敵するメロディを持つキラーチューンな後者。この2曲だけで俺的には十分だったわけ。そして前のアルバムが素晴らしかったというこの人の言葉も頭に残っていて‥‥迷わず買いましたよ、ええ。

  で、どうだったかだって? ここで取り上げてるんだよ、いいに決まってるじゃんかよ! いや、予想以上の内容でホントに驚いた。ゴージャス、グラマラス、グルーヴィー、セクシー、ポップ、メロディアス。そういった要素全てが1枚のアルバムに詰め込まれてるわけ。ある種「大人のおもちゃ箱」だよな、このアルバムは。肩の力がいい具合に抜けまくっていて、それでいて力強い。マニアックなことをやっていながらも、判りやすい表現方法を用いているから聴きやすい。多分、俺が苦手と感じた「DESIRE」ってアルバムは、マニアックなことをそのまま表現してしまったからアクが強すぎたんだろうね。

  ここ数作を聴いてないから比較のしようがないんだけど、グラムロック的な曲が多く目立ってますね。頭2曲("ブギー4回戦ボーイ"と"ふられた気持ち")なんて、ソウルフルなんだけど、どこかグラマラス。マーク・ボランがエルヴィス・プレスリーをカバーしたかのような感触。そしてモロにグラムロックな"Hey Space Baby!"みたいな曲まで出てくる。それでいて初期にやってたようなことを現代的解釈でアレンジした"美貌の罠"なんて曲もある(これもシングルナンバーなんだよね、ある意味冒険だよな)。そして和的なメロディやアレンジが心を打つ"のすたるぢや"(名曲!)やマーヴィン・ゲイの "I Want You" を和訳(しかも訳詞は友部正人)カバーした"欲しいのは君"、アルバムラストにお見舞いされる強烈なブギー"こいよ"(作詞は町田康)。全ての曲がポップでグルーヴィーでセクシーで‥‥ってクドイか。とにかく、そういった曲が10曲詰まった、本当に優れたロック/ポップ・アルバムなわけですよ。

  いろいろあるながらも、再びこうやってオリジナル・ラヴにたどり着いたわけですが‥‥本当に素晴らしいアルバムですよ。多分、今年の夏はこのアルバムをカーステでガンガンに鳴らしながら海や山へと出かけることでしょうね。若い人達にも聴いて欲しいけど、是非自分と同年代の人達に聴いて欲しい1枚。大人だからこそ鳴らすことが出来る「音」がここにはあります。



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投稿: 2003 07 02 12:00 午前 [2003年の作品, ORIGINAL LOVE] | 固定リンク

2003/06/18

後藤真希『スクランブル』(2003)

  みんなこういう曲を待っていたんじゃないでしょうか? 後藤真希のソロ名義での7枚目のシングル「スクランブル」はカップリング曲含め、快心の出来となっております。

  今や「最もごっちんらしい名曲」として代表曲のひとつに数えられている "やる気!IT'S EASY" というポップで明るくて溌剌とした楽曲。それと相反する"うわさのSEXY GUY"みたいな似非セクシー路線。前者はファンが熱望する、そして「最も素の後藤真希に近い」というイメージであり、後者はそれ程詳しくなくても彼女の名前くらいは知ってるという一般人にとってのパブリックイメージ。それくらいの格差が常に後藤真希には付きまとっているわけです。モーニング娘。としての搭乗時のイメージが強烈過ぎた為、いくらプッチモニで年相応なことをやっても、その後のシャッフルユニットやソロデビュー曲 "愛のバカやろう" 等一連の流れによって、彼女のことをよく知らない人には更にそういうイメージが強く植え付けられていく。だから、いくら"手を握って歩きたい"みたいな子供受けしそうな童謡的ポップスを歌おうと、ミュージカル用に "サン・トワ・マミー" みたいなスタンダード曲をカバーしても、一般的には「違う」と判断されてしまう。いくら素晴らしいパフォーマンスを披露しようとも‥‥

  個人的には、その両方の面を持ち合わせ、尚かつそれを完璧にこなしてしまうのが「後藤真希」だと認識してるんですね。だから"うわさのSEXY GUY"も個人的には全然「アリ」だったし、むしろ好きな曲なのね。けどさ‥‥やっぱりこの曲を前にしてしまうと、そして笑顔で歌う彼女の姿を観てしまうと‥‥判るでしょ、俺の考えてること?

  タイトル曲"スクランブル"のアレンジはお馴染み鈴木Daichi秀行。オール打ち込み&ギター、全てDaichi氏の手によるものなんだけど、これが特に悪いアレンジでもないのよ。むしろ今回は曲調やメロディに助けられてるのかな。初期のモーニング娘。にあったようなポップチューン‥‥あえて例えれば "真夏の光線" とか、あのライン。後藤のソロなら "やる気!IT'S EASY" やアルバム「マッキングGOLD①」収録の "晴れた日のマリーン" の流れを組む、アップテンポで心弾むようなポップチューン。彼女の歌も素晴らしいし、なによりも昨今のつんく♂ワークスに多い「アーイェー」みたいなコーラスが皆無なのがいい。サウンド的にもストリングス系のシンセが前面に出ていて、Aメロのバックで鳴るディレイのかかったギターや、サビで盛り上げるのに一役買うブラス系シンセ等、普段だったら安っぽいと切り捨てそうなDaichiサウンドが、今回ばかりは上手く機能してるように感じられます。もっとも、これらの打ち込みサウンド(リズムやベース、更にブラスやストリングス)が全て生音だったら、この曲は本当の意味での「名曲」になっていたでしょう‥‥その点は残念。けど、現在のような状況の中でここまでやったんだから、個人的には高く評価したいと思います(あくまで「つんく♂ワークス」の括りの中での話ね)。

  カップリング曲"長電話"はSHO-1がアレンジ。過去のハロプロワークスでは主にリミックス仕事が多かった彼ですが、今回はタイトルチューンにも匹敵するポップチューンに仕上がっています。勿論元のメロディが最近のつんく♂作品の中でもかなり良い出来というのもあるんですが、上に挙げたような楽曲の流れを組む‥‥もっと言っちゃえば、 "やる気!IT'S EASY" とプッチモニの「ちょこっとLOVE」c/w曲の "DREAM & KISS" とを足して2で割ったようなアレンジ‥‥と言えば判ってもらえるでしょうか? そういう流れを組むシンセ主体の1曲。途中、ブレイク部で挿入されるごっちんのセリフが、曲のイメージと相反するような色っぽさを持っていて、これまた良い感じ。その後で暴れまくるギターソロも耳障りにはならない程度で、好印象。ホント、いい曲ですよ。

  アルバムや前回のシングルの時に、彼女が与えられる楽曲に対する不運振りについて書きましたが、これはある意味勝負曲、勝負作ではないでしょうか‥‥主演映画の主題歌だからってのもあるんでしょうが、やはりここらでモーニング娘。卒業後、本格的ソロ活動開始後の大きな一発が欲しいところなんですよね。「ごまっとう」がいい起爆剤になったものの、続くソロシングルが "サン・トワ・マミー" でしたからねぇ‥‥個人的には1位にしてあげたいものの、まぁ1位にならなくてもいいからロングヒットを飛ばしてもらいたいものです。それだけの作品だと思うしね。



▼後藤真希『スクランブル』
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投稿: 2003 06 18 12:55 午前 [2003年の作品, ハロー!プロジェクト, 後藤真希] | 固定リンク

2003/06/15

EVANESCENCE『FALLEN』(2003)

売れてますねぇ、EVANESCENCE。3~4月頃から輸入盤店でよく見かけるようになったこのジャケット。丁度同じ頃に映画「デア・デビル」が公開され、その主題歌となった"Bring Me To Life"が大ヒットしたこともあり、アルバムはいきなり全米チャートのトップ5入り、今現在もトップ3前後を維持してる大ヒット振り。"Bring Me To Life"もシングルチャートの10位前後を維持し、イギリスにおいてもこの曲が初登場1位を記録。ここ日本ではまだアルバムがリリースになっていないものの(6月末リリース予定)、既にラジオでは"Bring Me To Life"がバンバンかかってる中、7月末には「FUJI ROCK FESTIVAL」出演の為、初来日決定。非常にいい時期にこのバンドの全貌を見ることが出来るわけですね。非常に楽しみであります。

さて、そんなEVANESCENCEですが、最初この"Bring Me To Life"を聴いた時(PVで観たんですよね)、既に下火となっているラウド・ロックやラップメタル一連の流れから登場したバンドだと思ったんですよ。実際この曲では女性シンガーの歌に絡むように男性ラップボーカルが登場しますし。やはり女性シンガー(しかもまだ10代という話ですが‥‥)がこの手のバンドで歌っているというのが物珍しくてヒットしてるのかな、なんて思ってて。けど、耳にしたこの曲は確かにいい曲なんですよね。1回しか耳にしなかったにも関わらず、それから数日間脳内でこの曲が延々リピートされていて、結局数日後にはこのデビューアルバム「FALLEN」を買ってしまったのですから。

アルバムを聴くまで、全体的にそういった感じ‥‥女性が歌い、男性がラップするラウドロック‥‥だと思ってたんですよ。LINKIN PARK以降の流れ、みたいな。俺、LINKIN PARKって出てきた時から苦手だったんですよね(以前どこかにも書きましたが)。このバンドの登場によって俺自身、この手のラウドロックに対する興味が薄らいでいった程。先日出たセカンドアルバムはちょっといいかな!?程度に感じられるまで嫌悪感は薄れましたが‥‥それでも「もうラウドロックとかニューメタルとか、そういう遠回しな言い方、やめれば? 普通にハードロック/ヘヴィメタルでいいじゃん??」っていう気持ちは消えないわけで。

んで、このアルバム。聴いてまずビックリしたのは、あの手のラップが絡む曲は"Bring Me To Life"1曲のみだということ。そしてPV等のビジュアルイメージからも何となく伝わってきてましたが、ゴスの影響を色濃く感じるということ。ラウドなナンバーに匹敵するだけのピアノバラードが数曲収録されていること、等々。とにかく新鮮だったのね。全体的にミドルテンポのマイナーチューンが殆どなんだけど、これもギターやベースがローキー(ダウンチューニングか7弦ギター/5弦ベースを使用してる?)為、昨今のラウド系の流れを組んでるように感じるけど、根本にあるのは'80年代的なメロディアス・ハードロック。そこに加えて'80年代後半にイギリスから登場したゴスやニューウェーブの影響を受けたハードロック調のバンドの色合い、その他にもビョークやトリ・エイモスといったオルタナ世代の女性ソロ・シンガーからの影響‥‥そういったものが融合した結果がEVANESCENCEかな、という気がします。

個人的には、アメリカっぽくないメロディの湿り気がモロ好みで、尚かつそこに乗るシンガー、エイミー・リーの声質が非常に心地よいんですよ。この声、絶対に日本人好みのはず‥‥だってさ、ちょっとした節回しやブレスが、どことなく宇多田ヒカルに似てるんだから‥‥って感じたのは俺だけ? ヒッキーがこの手のハードロックを歌ったら、きっとこうなるのかな‥‥なんて考えながら聴いてると、ちょっと面白いかも。

1曲1曲はやはりよく出来てますよね。ギターも出しゃばりすぎず、どっちかっていうとピアノの方が耳に残るという、ねっ? 要所要所に登場するストリングスも心地よいし、オペラチックな分厚いコーラスもいい感じ。これが'80年代だったら「産業メタル」に括られたんだろうけど、正直そんなのどうでもいいです。独特な世界観を持ち、曲が素晴らしく、演奏もしっかりしてる。個人的にはそれで十分。「話題の新人」的な大きなエピソードとかその手のやつは、流行のリフロック勢に任せればいいし。暴れる為のニューメタルではなくて、リスニング‥‥あくまで曲の良さで勝負する、そして歌をしっかり聴かせるニューメタル、それでいいんじゃない?

そういえば、ドラムにジョシュ・フリースの名前があったからってわけじゃないけど‥‥ある種、A PERFECT CIRCLEにも通ずる要素を感じるよね。最初に聴いた時、ドラムがジョシュだって知らなかったんだけど、やっぱりこのバンド名を思い浮かべたもんなぁ。その手の流れを組むサウンドが好きで、女性ボーカルものが好きって人なら絶対に気に入る1枚ですよね。話題の云々ってのは気にしないでさ。いいものはいい、それでいいじゃない?



▼EVANESCENCE『FALLEN』
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投稿: 2003 06 15 07:12 午後 [2003年の作品, Evanescence] | 固定リンク

2003/06/13

FUTURESHOCK『PHANTOM THEORY』(2003)

ヨーロッパでは既に3月末にリリース済み、ここ日本ではいよいよ8月にリリース決定したイギリスのテクノユニット、FUTURESHOCKがやっとリリースしたファーストアルバム「PHANTOM THEORY」。何故「やっと」なのかというと、彼等これまでの活動歴が結構長いんですね。以前はリミックスが主な音源でしたが(UNDERWORLDやMOBY、CHEMICAL BROTHERS、NEW ORDER等のリミックスを手掛けてきた)、ここにきてようやくオリジナルアルバムのリリース。しかもアルバムリリース前にシングルカットした"On My Own"も英国及びヨーロッパで大ヒットを記録。英国音楽雑誌の表紙を飾る程、今注目されているテクノユニットではないでしょうか。

俺はもう完全にこのアルバムで彼等を知ったくちで、そういうリミックスをやってるってのを知ってから家のCD棚を漁ると、確かに彼等が手掛けたリミックス音源が結構出てきましたよ。そういう凄い人達が、やっとオリジナルソングを収録したアルバムをリリースした‥‥なんか初期のCHEMICAL BROTHERSと印象が重なるところですが、実はこのFUTURESHOCKもそのCHEMICAL BROTHERSと同じ「JUNIOR BOY'S OWN」(現在は「JUNIOR」)レーベルからのリリースなんです。ダンス系では名門と呼ばれるレーベルで、過去にはUNDERWORLDやX-PRESS 2なんかも所属してた、と言えばその凄さが何となく判ってもらえるんじゃないでしょうか?

既にCD屋なんかでは「ポストUNDERWORLD」という売り文句でプッシュされているので、ジャケットを目にしたことのある人も多いかもしれませんし、実際に視聴した人もいるんでしょうね。俺も視聴してハマッたんですが‥‥言われてる程、UNDERWORLDっぽいと感じなかったのは、俺だけでしょうか? どうしても今の‥‥"Born Slippy" 以降の彼等と比べてしまいがちなんですが、例えば「DUBNOBASWITHMYHEADMAN」辺りと比べると、意外と共通するものが見えてくるような‥‥あと、個人的にはLEFTFIELD辺りとの共通点も感じ取れたし、DJ/リミキサーとして有名になって後にオリジナルアルバムでデビュー‥‥という流れは先輩のCHEMICAL BROTHERSと同じですし、その音楽にも彼等との共通点を感じずにはいられません。

基本的にはこういうの、ハウスになるんでしょうかね? プログレッシヴ・ハウスっていうのかしら? う~ん、その手の細かい名称までは俺、把握してないっつうか‥‥そんなの気にしながら聴いてないしね。基本的には俺、この手の音楽の場合は「気持ちよく踊れるか否か」だから。その点、このアルバムは聴いてるだけで身体が勝手に動くし、正直モニターの前でジッとしながら聴くタイプの音楽ではないよね。夜中、大音量でカーステで聴いたり、爆音のフロアで身を委ねたり、そういう楽しみ方をする音楽だと思います。

確かに曲が複雑な展開をする点なんかはUNDERWORLDに近いと思うけど、最大の違いが‥‥カール・ハイドの役目をする人間がいないのと、ギターの音がないことが大きいよね。それらが加わることで、UNDERWORLDの音楽ってよりロック的に感じられるんだけど、FUTURESHOCKの場合は完全にテクノやハウスのそれだと聴いて理解できます。どっちが良いとか悪いって意味じゃなく、取っ掛かりとしての「ポストUNDERWORLD」っていう触れ込みはいいんだけど、全く同じようなものを求めて接すると痛い目を見るよ、ってことです。FUTURESHOCKにはFUTURESHOCKの良さが沢山あるんですから。

あ、爆音って点では、ヘッドフォンで聴いても楽しめると思いますよ。勿論ジッとしながらじゃなく、踊りながらね。非常にスペイシー且つトランシーなシンセサウンドを堪能することができるはず。そういう点では特に目新しさは感じないんだけど、昨年のX-PRESS 2のアルバム同様、安心して楽しめる作品だな、と。個人的にはそういうの、大事だと思うんで。何もテクノは常に革新的でなければならないとは限らないし。ま、本来は常に革新的であるべきなのかもしれないけどさ。

さてさて、日記の方にも書きましたが、このアルバムにはCCCDの疑いが掛けられています。現在出回っているEU盤なんですが‥‥まっ、詳しい内容は日記の方をご参照ください。CCCDは絶対に嫌!って人にはちょっと博打になっちゃうと思うんですが‥‥勿体ないなぁ、いいアルバムなのにさ。



▼FUTURESHOCK『PHANTOM THEORY』
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投稿: 2003 06 13 07:31 午後 [2003年の作品, Futureshock, 「CCCD」] | 固定リンク

2003/06/10

BLUR『THINK TANK』(2003)

99年3月にリリースした『13』から4年振り、通算7枚目のオリジナルアルバムとなる『THINK TANK』。その4年の間にblurとしてのベストアルバムをリリースしたり(1曲のみ新曲入り)、各メンバーのソロ活動があったり。その中でも、最も現在のバンドに影響を及ぼしたであろう活動が、デーモンがやっていた覆面ユニットGORILLAZ。ヨーロッパのみならず、アメリカでも成功を手中に収めてしまったこのユニットのお陰で、バンドのレコーディング開始が延びに延びたり、またその後デーモンがいろんな活動に手を伸ばしたりで‥‥痺れを切らしたグレアムはソロアルバムを出したりしてその場を何とか持ち堪えたものの、結局は脱退。バンドにとっては相当大きな打撃だったのではないでしょうか? 事実、俺がこのバンドを愛してきたのは、勿論楽曲の良さ・ひねくれ具合というのもありますが、それ以上にグレアムの弾くギターがそういった楽曲に絡まった時の凄みなんですよね。そういう魅力が薄れてしまうんじゃないか‥‥この新作を聴く前は、そう危惧していたわけです。

が、結果としては‥‥確かにギターに関しては物足りなさも残るものの、これはこれで非常に充実した「ポップアルバム」になったのではないでしょうか。そう、あくまでこれは「ポップアルバム」なのですよ。勿論、それまでロックだったものがポップになった、とかそういった次元の話ではなく。

音楽的には前作の延長線上にあるともいえるし、更に拡散方向へと暴走しているともいえるんだけど、思ってた以上に統一感があるのね。デーモンが歌ってるってのもあるだろうし、各楽曲のトーンが比較的似たようなものだからというのもあるでしょう。一聴して暴走気味なパンクチューン「Crazy Beat」や「We've Got A File On You」でさえも、その他のまったりとした楽曲達と似通ったトーンで表現されているし。唯一、そこから突き抜けてしまってるのは、アルバムラストに収められた「Battery In Your Leg」のみ。これだけグレアムが参加したテイクなんですが‥‥やっぱりギターは一聴しただけでグレアムのそれと判りますよね、ファンなら。そうそう、曲調云々は抜きにして、こういった演奏を聴きたかったわけですよ、俺は。

だからといって、それ以外の曲がダメだというわけではないですよ。ただね‥‥これまでのアルバムのように「1枚のアルバムに、アンセムソングと呼べるような超名曲が1~2曲は収録されている」といったお約束は、今回守れそうにはないようです(詳しくは『13』レビュー参照)。確かにヨーロッパでシングルカットされた「Out Of Time」やアメリカでのシングル「Crazy Beat」等はそれに肉迫する内容ですが、決定打に欠けると言わざるを得ません。その他の楽曲も非常に優れているんですよ。けど、以前の様な絶対的な存在となる1曲がないんですね。「For Tomorrow」だったり「Girls & Boys」だったり「The Universal」だったり「Beetlebum」だったり「Song 2」だったり「Tender」だったり‥‥そういう1曲が残念ながらここには見当たらないのです。勿論、ファンにとっては「そんなことはない!○×だってそれらに匹敵する名曲だぞ!!」って反論もあるとは思いますが、少なくとも俺の中ではそうなんですよ。あと一歩‥‥そういう印象が非常に強い楽曲ばかりなんですよ。

ところが、これらの楽曲をアルバムとして通して聴いてみると、決して悪くないんです。むしろ、トータルでなら前作よりも上をいってるとさえ感じましたし。きっとこれって、先に書いた「トーン」も影響してるんだろうなぁと思うわけで。同じようなトーンで表現されているものの、個々の楽曲が決して似通ってるわけではない。微妙な表現ですが、そこがかなり大きなポイントだと個人的には感じています。

それは楽曲毎にプロデューサーを多数導入したりといった事も大きく影響してるんでしょう。今回はバンドとBEN HILLIERという人が共同プロデュースで殆どの楽曲に名を連ねている他に、前作でも関わったウィリアム・オービット(「Sweet Song」)、FATBOY SLIMことノーマン・クック(「Crazy Beat」と「Gene By Gene」)といった大物がそれぞれ関わっています。殆どが味付け程度といった仕事ぶりなんでしょうけど、見事にそれらしい仕事ぶりを披露してくれてます。

全体的なトーンがダウナーで、決して初期のような高揚感溢れるサウンドはここにはありません。アッパーな曲にしろ、初期とも「Song 2」辺りとも違う次元の狂気を感じさせるし、まったりしながらも実はそういう「迫り来る狂気」みたいなものをジワジワ感じるアルバム。一番最後の「Battery In Your Leg」で、その狂気は静かに爆発する‥‥しかも対外的にではなく、自分の脳や心の奥底で破裂する。これはそういうアルバムなのではないでしょうか。

名盤か否か、と問われると‥‥正直答えに困ります。何故なら‥‥もっと聴き込んで初めて答えが出てくる‥‥いや、その断片が見えてくるアルバムなんじゃないかな、と思うからです。好き嫌いがハッキリする作風ではありますが、俺はこれを評価したいと思います。確かにこれをライヴでどう表現するのか、気になるもんなぁ。



▼BLUR『THINK TANK』
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投稿: 2003 06 10 12:00 午前 [2003年の作品, Blur] | 固定リンク

2003/06/06

レミオロメン『雨上がり』(2003)

  自分の耳を信じてるからこうやって取り上げるわけで。「rockin'on JAPAN」で騒いでるらしいね、今年の大型新人とかって。大型かどうかはこの際どうでもよく、確かに面白い存在だと思いますよ、このレミオロメンって。

  この3月にリリースされたファーストミニアルバム「フェスタ」を経て、5月にリリースされたファーストシングルがこの「雨上がり」。「フェスタ」の時点で何となくいいなぁ~程度だった気持ちが、"雨上がり"1曲で一気に突き抜けてしまったっていう点においては、BUMP OF CHICKENが「THE LIVING DEAD」からシングル「天体観測」で一気に化けたのと同じような衝撃を受けました。つうかこの曲、ホントにいいんだわ、うん。バンプとの比較で申し訳ないんだけど(実際メディアでは早くも「第二のバンプ」みたいな盛り上げ方してるみたいだしね。全然別のバンドなのに)、まずシンガーの声質が全く違う点。バンプみたいにハスキーなんだけどちょっと線が細い、おセンチなイメージがこのレミオロメンには全くないのね。太くて、ちょっと曇ったような声というか。まぁギターロックで等身大の自分達を歌うという点においては確かに共通しますが‥‥つうかさ、もう止めようや、そういう「第二の○×」ってのさ!

  疾走感があって溌剌としててポップで親しみやすいメロディがあって演奏もサウンドもしっかりしてる。そして日常のひとコマを切り取ったかのような歌詞。決して斬新ではないし、手垢のついた手法かもしれないけど、俺達はこういった楽曲を心のどこかで待っていたんじゃないだろうか? 革新的なロックを求めながらも、バンプの "天体観測" を大歓迎してしまうような、そんな感覚、みんなにはないかい? 俺にはあるよ。そして、現時点においてこの"雨上がり"は俺にとってそういう1曲なんだよね。

  カップリング曲"昭和"は、タイトルナンバーとはタイプの異なる、ミディアムテンポでマイナー調の1曲。何故「昭和」なのか‥‥歌詞からはその理由が伝わってこないんだけど、もしかしたらこのバンドにとって曲名ってそんなに重要なものじゃないのかなぁ、なんて思ったりして。ま、この曲のみに関しての話ですが。

  ミニアルバム「フェスタ」は確かに良い作品でしたが、決定打になるようなものではありませんでした。が、このシングルは間違いなくその決定打となることでしょう。そして彼等はこのシングルを最後にインディーズを離れ、夏にメジャーから音源をリリースします。既にこのシングルの時点でMr.ChildrenやMY LITTLE LOVERが所属する「烏龍舎」(プロデューサー・小林武史が運営する会社)と契約しているレミオロメン(シングルにもクレジットされてますしね)。一瞬「もしかして、このシングルって‥‥小林プロデュース!?」と勘ぐったりしましたが‥‥メジャーに行ってどこまで化けるのか、そして「駄目押しの決定打・その2」が今から気になって仕方ありません。それまではこのシングルとミニアルバムを聴いて更にその期待を高めつつ、いろんな人にこのバンドの良さを伝えていきたいと思います。



▼レミオロメン『雨上がり』
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投稿: 2003 06 06 12:00 午前 [2003年の作品, レミオロメン] | 固定リンク

2003/06/01

ASIAN KUNG-FU GENERATION『崩壊アンプリファー』(2003)

ASIAN KUNG-FU GENERATIONが2002年11月にインディーレーベル「Under Flower Records」からリリースしたファースト・ミニアルバムがこの『崩壊アンプリファー』。しかしこれがどういうわけか、そのままの形態でメジャーレーベルから翌03年4月に再発売。通常、リミックスしたりジャケットを変えたりとかいろいろ手を加えてメジャーから再発、なんていうリイシューなら考えられるのですが、こういったケースはこれまであまりなかったのではないでしょうか。言い方を変えれば、それだけいじる箇所がない、既に完成された作品と呼ぶこともできます。

で、そんなこのアルバムなんですが、たった6曲にも関わらず今のアジカンの勢いが完全に伝わってくる作風となっています。いや、先日観たライヴでは既にこのアルバムをも超えるテンションだったので、そういう意味では「2002年後半の時点での」と呼ぶべきかもしれませんね。

恐らくこのバンドを語る時、ナンバーガールやくるりといったバンドが引き合いに出されるかもしれません。実際、ライヴのオープニングS.E.にナンバーガールの曲が使われたりメンバーが好きだったりというのもありそういった比較が成されるのだと思います。また、アルバムタイトルやそのジャケットから椎名林檎を彷彿させたりもします。実際のところ、そういったアーティスト達からの影響もあるのかもしれませんが、このバンド、インディーズ時代は英語詞でやってきたらしいんですね(彼等は当初、ブリットポップから影響を受けてバンドを始めたとのこと)。しかし、このアルバムから日本語で歌い出した。「日本語で歌うカッコイイバンドに影響された」とのことなので、上記のようなバンド達からの影響が強かったのかもしれませんね。

確かに「○○フォロワー」と表現することができるかもしれませんし、個性の面からいってもそういった先人達程確立されていないかもしれません。けど、俺は何故か惹かれた。何故か? 確かにこの半年間、ネット上でよく名前を目にしていた、ずっとライヴを観たかったというのもあるでしょう。音楽雑誌等でも大プッシュされているとも聞きます。しかし、そういった要素は二の次なんです。結果として、耳に残る楽曲、これが全てなんですね、俺にとって。アルバム1曲目の「遙か彼方」のイントロに、一発でノックアウトされたし、その後も続く「ポップで判りやすいメロディが載った、ガッツリしたギターロック」の嵐にやられっぱなしだったわけ。これ、6曲ってのは正直勿体ない。最近多いよね、こういう形態のアルバム。どうせならいきなりフルアルバムで勝負して欲しかったという気もしないでもないけど、まぁ寸止め感を興味を惹くという意味では大成功なんだろうな。こうやって俺みたいに「もっと聴かせろ!」って飢餓状態に陥ってライヴに足を運んじゃうようなファン、沢山いるはずだし。

8月には早くもメジャーからのファーストシングルがリリース決定(しかしソニー系列からなので、きっとCCCDなんだろうなぁ)、年内にはファーストフルアルバムのリリースも予定されているアジカン。きっとこの夏、いろんなところで彼等を目にするかもしれません。もし観る機会があったら、是非実際にライヴを観ることをオススメします。

最後に。彼等が雑誌やメディアで大プッシュされているからといった理由で聴かないのは正直バカバカしいと思います。メジャーかマイナーか、雑誌で取り上げられるか拒否するか、そういった問題ではなく、最後に判断するのは「その音を聴いた」あなたなんですから。そういった理由でアジカンが拒否/否定されることがあったとしたら‥‥ジョー・ペリー(AEROSMITHSのギタリスト)も昔から言ってるでしょ、「Let the music do the talking.」って。俺は初めて彼等をライヴで観た時の、あの感覚を信じています。



▼ASIAN KUNG-FU GENERATION『崩壊アンプリファー』
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投稿: 2003 06 01 12:00 午前 [2003年の作品, ASIAN KUNG-FU GENERATION] | 固定リンク

2003/05/04

MASSIVE ATTACK『100TH WINDOW』(2003)

イギリスはブリストル出身のユニットMASSIVE ATTACKによる4作目のアルバム「100TH WINDOW」は、いろんな意味で興味深い作品となっています。まず前作「MEZZANINE」から約5年振り(考えてみれば、デビューした'91年からの12年間に、たった4枚しかアルバム発表してないのね、このグループ)。完璧主義だという噂通り、今回も一旦作ったものをお蔵入りさせて新たに作り直した、なんて話も伝わってきてます。納得いくまで作り込み、結局世に出回った時点で「既に過去のもの」「完全には納得いってない」なんていう具合に、早くも次の作品に目が向いているという程、作品作りに関しては拘りをもっているようですね(ま、それが当たり前なんですけどね)。

第二に。3人組だったはずのユニットからマッシュルームが脱退。で、ふたり(ダディ・Gと3D)で作ったのかというと、ダディ・Gは殆ど作品作りに携わっておらず(クレジットにも名前はありませんしね)、完全に3Dによる独裁体制で作られたのがこのアルバムのようです。更に9曲中4曲にてボーカルまで取っている、完全に「3Dのソロアルバム」と呼べるような内容になってます。

第三に。アメリカを除く日本やヨーロッパではこのアルバム、コピーコントロールCDとしてリリースされたという点。これによって「聴きたいけど聴けてない」という人も多いのではないでしょうか(ま、こうやってここでレビューしているということは、俺も無事アメリカ盤で入手することができたということですが)。今後、こういうアルバムがどんどん増えていくでしょうから、これはかなり大きな問題となるでしょうね。

さてさて、そういったポイントを踏まえつつ(ま、3番目は蛇足ですが)このアルバムを聴いていくと、やはり前作との違いに気づく人が多いんじゃないでしょうか。所謂「トリップホップ」とジャンル付けされることの多かった彼等のサウンドですが、その延長線上にありながらも、もっと昨今のエレクトロニカ的感触が感じられます。また、前作では要所要所で耳にできたギターサウンドも新作では減退し、ニューウェイブ的な暗く重苦しい空気感はそのままに、更に現代的なエレクトロニックサウンドになっているように感じます。比較という意味でいえば、前作よりも全体的に音が太いように感じられるのは、時代性なんでしょうかね?

また、そういったサウンドを更に盛り上げているのが、ゲストボーカルであるシンニード・オコナーでしょう。彼女は3曲("What Your Soul Sings"、"Special Cases"、"A Prayer For England")で共作及びボーカルを務め、彼女にしか出せない独特な雰囲気を楽曲の中に閉じこめています。残念ながら彼女はこの夏で音楽活動から引退するそうですが、そういう意味でもこれらの共演トラックは貴重なものになったのではないでしょうか。出来れば引退する前に、ステージ上で彼等の共演を観てみたいものですが‥‥

基本的には全体的にミディアム~スロウでダークな曲調なのですが、そこに急に登場する比較的アッパーな"Butterfly Caught"や、アジア的というかインド的なストリングスが印象的な"Antistar"がいいアクセントになっています。けど、やはりこのグループはダウナーな曲のイメージが強いですよね。ニューウェーブやダブ、ヒップホップ、エレクトロニカといったいろいろなダンスミュージックから影響を受けた結果生まれたものがトリップホップなのだとすると、もしかしたらここにあるサウンドはその先に進もうと試行錯誤して生まれたものなのかもしれませんね。ハッキリ言ってしまえば、その試みは大成功したとは言い難いですが(明らかに前作の延長線上であり、革新的な変化は見られないしね)、実はこのアルバムは5年間の空白の時間の中で、最後の1年で作られたものらしいんですね。つまり、それまでの4年間に作られたものは全てボツにして、最後の最後にもの凄い勢いで制作されたのがこの「100TH WINDOW」だというのです。実際、ボーカルトラックに関してはほぼ一発録りだそうですし。これだけのことが出来るんだから、それまでの4年間に作ったものって一体どんなことになっていたのか‥‥非常に気になるところです。

多分、本当の意味で「トリップホップ」というジャンルをぶち壊すような、新しいサウンドは次のアルバムまでのお楽しみということになりますが‥‥3Dは年内にもう1枚アルバムを出したい、とか言ってるそうですね。ま、ミュージシャンは基本的に嘘つきですし、基本的にMASSIVE ATTACKとDEF LEPPARDはオリンピックイヤーにアルバムが聴ければいい方くらいの気持ちでいるんで、当てにしないで待つことにしましょう。きっとその頃には「トリップホップ」や「ブリストル・サウンド」なる言葉すら風化してるんでしょうけど(ま、トリップホップ自体はもう使ってる人、殆どいませんよね??)‥‥



▼MASSIVE ATTACK『100TH WINDOW』
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投稿: 2003 05 04 03:24 午前 [2003年の作品, Massive Attack] | 固定リンク

2003/04/30

aiko『蝶々結び』(2003)

aikoの通算12枚目のシングルにして、2003年最初のリリース音源となるこのシングル。いつも通りの3曲入りマキシシングルとなっております。にしても‥‥この人の楽曲のクオリティーの高さってハンパじゃないですよね。何時からだろう、俺が彼女に対してただならぬ感心を寄せるようになったのは‥‥Mr.Childrenの桜井和寿やスピッツの草野マサムネが彼女を注目していると発言してからだろうか。いやいや、もっと前かな。単純に "花火" や "カブトムシ" って楽曲が好きだったってのもあるし。でもね、彼女のルックスだけは‥‥惹かれるものがなかったのね。俺、女性シンガーを好きになる時ってやっぱりビジュアル面やルックスも含めて好きになる事が多いから。

けど、何時からだろう。aikoの事を本当にカワイイと感じるようになったのは‥‥少なくとも最新アルバム「秋 そばにいるよ」の時には完全にハマッてたような気がするし。けど「夏服」の頃はまだ楽曲にしか興味が湧かなかった。ということは、その2枚のアルバムの間‥‥1年数ヶ月の間に何かがあったってことか。その間といえば、aikoが声帯を痛めて休んだりしてた頃か‥‥それに何か関係があるのかな。いやないか。

で、今回の新曲ジャケット。まずビックリしたのは黒髪aikoですよ。aikoっていうとやっぱり茶髪ってイメージが強かったんだけど、ここまでハッキリした黒髪にされちゃうと、思わずドキッとしちゃう。しかもCDブックレットの写真を見るとどれも髪の長さが違ってたり、服装も表情も違ってて更にドキリ。

同意してもらえないかもしれないけど、aikoってやっぱり美人だと思う。しかもかなり古風な顔立ちのように思います。なんつーか、古き良き時代の日本人女性の顔立ちっていうか。それが黒髪に戻したことによって更に強調されてるのね。一般的に見たら美人ではないのかもしれないし、かなり個性的な顔だと思うんだけど‥‥どうも俺はそこに「エロ」を感じてしまうのね。

あ、そこ。「変態」とか言わない。言わない約束じゃないか。

んで、やっと曲の方に触れるわけですが(遅いよ)‥‥この人のメロディセンスといい歌詞のセンスといい、確かに上に挙げたようなアーティスト達がリスペクトを表明する意味がよく判りますよね、aikoの曲を聴くと。しかもそれが全く衰えない。リリースペースも上の大物クラスと比べると結構な枚数を出してるんですよね(年にシングル3枚、アルバム1枚ですから、少なくとも20曲近くは新曲を発表してるわけだし)。アレンジャーの力量もあるんでしょうけど、コード使いが本当に勉強になるというか、凄く難しいことを平気でやってのけてるんですよ。そしてそれに載る流れるようなメロディも非凡でドキリとさせられるものが多い。更にそのメロディに載る歌詞。男の俺から見てドキッとするような表現から、異性にも関わらず共感出来て胸が切なくなってしまう表現まで。比喩が上手いというのもあるけど、なんだろう、歌詞を読んでると情景が浮かぶんですよね。絵が浮かびやすい歌詞。決して難しい比喩を使ってるわけではなく、判りやすい表現なのにそのセンスが普通じゃない。このさじ加減が難しいんですよね。

表題曲"蝶々結び"は過去のaikoヒット曲同様、ストリングスやブラスを全面的に導入したファンキーなポップチューン。春っぽい爽やかで軽やかなノリの良いこの曲、メロディもさることながら、インスト部のコード進行が相変わらず難解。つうか普通のポップシンガーはこんなコード使わないし、ってなコードを沢山使ってるんだよなぁ。恐るべし。そして続く"雨の日"はちょっとBEATLESチックなマイナーポップ。何だかENUFF Z'NUFFにも通ずる要素があるよね。ピアノのリフに絡むギターのストロークといい、aikoのスキャットに絡むベースラインといい、メッチャ俺のストライクゾーン。正直、表題曲よりも好き。決してシングルのリーダートラックにはなることないだろうけど、こういう曲がカップリングやアルバムに入ってると、本当に嬉しかったりするんだよね。こういう曲があるからこそ、リーダートラックが更に映えるというね。更に3曲目"帽子と水着と水平線"はピアノとハモンドが気持ちいいアッパーなポップチューン。間奏のチープなリズムボックスだけになるパートとか、ピアノソロやオルガンソロ、そのバックを支える手数の多いドラムといい具合に歪んだベース。何だか豪華なBEN FOLDS FIVEって感じだよね(ちょっと聴いた限りではこの曲、実際にギターレスだしね)。

と、こうやって今回リリースされた3曲も文句なしに楽しめる作品に仕上がっていて、如何にも「春~初夏」をイメージさせるポップチューンばかり。ホントこういう時期に聴くには持ってこいの1枚。晴れた休日のカーステレオからは"蝶々結び"や"帽子と水着と水平線"みたいな明るいポップチューンが流れ、また雨の休日には部屋から"雨の日"が流れ出す‥‥ってまんまじゃないか!と突っ込まれそうですが、ホントそんな1枚なんですってば。

俺、aikoのシングルってまともに買ったためしがないんですよ。買ってもせいぜい中古流れ、しかもリリース時期からかなり遅れて買ってる程で。どういうわけか俺の中では「aiko=アルバムアーティスト」っていう図式が勝手に出来上がってしまってたんですが、勿論アルバムもいいけど、やっぱりこの人はこういうシングルでその魅力が更に発揮されるアーティストなのかなぁ、と今回改めて思い直しました。だってaikoのシングルに関しては、この3曲を視聴して、そのままCD持ってレジへ向かったのって、今回が初めてだもん。aiko好きには勿論のこと、こういうポップスに抵抗のないロックファンにもちゃんと聴いて評価して欲しいアーティスト/シンガーですよね。そういう魅力を十分に発揮するシングルです。



▼aiko『蝶々結び』
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投稿: 2003 04 30 06:11 午前 [2003年の作品, aiko] | 固定リンク

2003/04/13

AMERICAN HI-FI『THE ART OF LOSING』(2003)

新世代アメリカン・ハードロック・バンド、AMERICAN HI-FI待望のセカンドアルバム。当初はもっと早くリリースされる予定だったと思うんだけど(2002年7月に出演したFUJI ROCK FESTIVALでは「秋頃にリリース予定」とアナウンスしていたし)、慎重に作業した結果なのか、最終的には前作から約1年半というインターバルになりました。ファーストがここ日本でも、そして本国アメリカでもまずまずの成功を収めただけに、セカンドに対する意気込みは尋常じゃなかったと思うのですが、それに応えるに十分な内容になったのではないでしょうか。

個人的にはこのバンド、ファーストを手にした時もそんなに思い入れというか、最高にカッコイイという印象はなかったんですね。ボブ・ロックがプロデュースというのも関係してか、かなりカッチリ作られてた印象が強いし、楽曲にしてもかなり丁寧に作られた‥‥非常に優等生的な作品だと感じられたんですよ。勿論、それらの楽曲は素晴らしかったし、今でもあのアルバム自体はよく聴きますよ。けど‥‥新人のファーストアルバムにしては、妙に完成度が高すぎて‥‥キャリア5年目くらいのバンドの、サードアルバムっぽい作風に感じられたんですね。ま、中心人物であるステイシー・ジョーンズはこのバンド以前にVERUCA SALTにドラマーとして参加していたので、メジャーの世界での活動は今回が初めてってわけでもないんですよね(そういう経緯もあって、ファーストはボブ・ロックが手掛けたわけだし)。サウンドや楽曲の細かさ/高水準はそういったところから来てるのかもしれません‥‥。

で、そんなAMERICAN HI-FIに対して更に魅力を感じるようになったのは、上にも書いたFUJI ROCK FESTIVALでのライヴを観てからでした。残念ながら代表曲である「Flavor Of The Weak」を見逃すという大失態を犯してしまいましたが、それでも十分に楽しめる内容でした。ファーストの楽曲もライヴで聴くと全く違った印象を受けたし、そしてこのセカンドアルバムに収録される予定の新曲も何曲か演奏され、それらがかなりイイ感じだったこともあって、実は俺、このバンドを誤認してたんじゃないか‥‥とまで思うようになって。だからね、このリリースを本当に心待ちにしてたんですよ。

基本的にはファーストの延長線上にあるサウンドなんだけど、1曲1曲がもっとコンパクトになり(しかも計算されて短く凝縮されたのではなく、勢いで作ったらそうなっただけのような印象を受ける)、音の粒も粗くなったように感じられます。これはプロデューサが変わったことも大きく影響してると思うんですが(今作はLIVING ENDやSEMI-SONICを手掛けてきたニック・ロウネーを起用)‥‥乱暴に言ってしまえば、パンク色が若干強めに出てるかな、と。GREEN DAY辺りに通ずる曲調のファーストシングル「The Art Of Losing」や、ちょっとスカのリズムを取り入れた「The Breakup Song」、FOO FIGHTERS辺りにも共通する色が感じられる「Nothing Left To Lose」といった楽曲は、前作にありそうでなかったタイプの楽曲でしょう。また、アコースティック色を有する「Save Me」「This Is The Sound」からは新しい魅力が感じられますし(王道アメリカンロックですね)、「Beautiful Disaster」ではBACKYARD BABIES辺りの活きのいいバンドと同じような匂いを感じるし、「Built For Speed」なんてCHEAP TRICKの「He's A Whore」に似たリフ&コード進行を持ったパワーポップだし。楽曲の幅は明らかに広がったし、それぞれの曲は以前のような細やかさよりもワイルドさを強調しているんだけど‥‥やはりどこか優等生的なんだよね。無理して「俺達パンクだぜ!」みたいに悪ぶってる印象。それが決して悪いと言ってるんじゃなくて、非常に計算高いなぁ、と。

多分ステイシー・ジョーンズって男はとても頭のいい奴なんだと思うな。じゃなきゃ、あんな優等生的なファーストアルバムの後に「敗者の美学」ってタイトルのアルバム、作らないでしょう普通。GREEN DAY以降のパンクまで行かず、かといってここ数年ヒットチャートを賑わしたNICKELBACKみたいな音までいかず、ストレートなハードロックというわけでもなく、グランジの亡霊を追ってるわけでもなく(少なくとも前作には「グランジ以降」の文脈で語られてる楽曲が幾つか見受けられたけど、今作には皆無だし)‥‥そういう点から、俺の中でBON JOVIのジョン・ボン・ジョヴィと重なるんだよね、「策士」として。「インディー・バンドならMY BLOODY VALENTINE、メインストリームならFOO FIGHTERSが大好き」という発言にしろ、ライヴでCHEAP TRICKの「Surrender」をカバーしてること、そして勝負作となるセカンドでバラエティに富んだアルバムを作ったこと等‥‥VERUCA SALT時代に学んだことを、こうやって役立ててるのかも。だとしたら、この男はまだまだ化けると思いますね。そして、そんな策士を的確にサポートする他のメンバーの技量もさすがですね。まだ各メンバーの個性というのは感じられませんが(多分このアルバムにおけるライヴを観れば、また印象が変わるんでしょうね)、それが今後の課題といったところでしょうか。

やれ計算高いだの策士だのといろいろ書きましたが、そういうの抜きに十分楽しめるアメリカンロックが存分に詰まってるので、とりあえずこれを読む前に無心で一回聴くことをオススメします(そういうことは最初に書けよな俺)。ここ数ヶ月、頭を空っぽにして楽しめるアルバムとして我が家ではヘヴィローテーション中です。



▼AMERICAN HI-FI『THE ART OF LOSING』
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投稿: 2003 04 13 12:00 午前 [2003年の作品, American Hi-Fi] | 固定リンク

2003/04/01

BUCK-TICK『Mona Lisa OVERDRIVE』(2003)

BUCK-TICKがメジャーデビューして既に15年以上経っているわけですが、その期間特に落ちぶれることもなく常に第一線で活躍し、根底にあるポリシーは守りつつ、装飾を時代時代によって変化させ続け、尚かつメンバーチェンジのない不動の5人で活動をコンスタントに続けている‥‥考えてみると、とても不思議なバンドなんですよね。ファンに怒られるのを承知で書きますが、これほどファン層の見えてこないバンドというのも珍しいのではないでしょうか? 例えば80年代末からのバンドブーム。そして90年代中盤のビジュアル系ブーム。BUCK-TICKはそのどこにも属すことなく、常にマイペースな活動を続けていた(ま、バンドブーム時は多少恩恵を受けたと思いますが)。シングルを出せば常にトップ20入りするし、アルバムもトップ10入り。ツアーは常にソールドアウトだし、武道館をも満杯にする。けど、少なくとも自分の周りには「最近BUCK-TICKを好きになった」という若いファンはあまりいない、いるとすると自分と同年代の、古くから彼等を追っている年季の入ったファン‥‥恐らくこういったファンによって支えられているんだろうけど、果たして本当にそれだけなのかなぁ、と。常々不思議に思ってたんですよねぇ。

自分に関して言えば、BUCK-TICKは90年代中盤まではちゃんと追ってたんですが、ここ数年は完全にスルーしていた存在でして。ところが昨年、急に彼等の旧譜を聴き、自分の中で彼等に対する再評価が高まりつつあったんですね。そして今年に入ってシングル「残骸」がオリコンシングルチャートの6位を記録。おおっ!となったわけですよ。それで是非アルバムを聴いてみよう‥‥ということになりまして、2月にリリースされたこの『Mona Lisa OVERDRIVE』を先日購入。結構な頻度で現在に至るまで聴いています。

まず驚いたのは、基本的には彼等の音楽性ってある時期から一本筋の通ったものなんですよね。初期のゴス+ビートロック的サウンドもまた捨てがたいですが、90年代以降は常に現在のようなスタイルを貫いてきたように思います。アレンジ等の装飾はその時代時代にフィットしたサウンドを取り入れているので、一聴するとまず目新しさを感じますが、メロディのセンスは相変わらずだし、特に「流行モノに身売りした」というような印象は受けないんですよね。そういう意味では、例えばPRIMAL SCREAM辺りに共通するものを感じます。

普通にカッコイイ。もはやこれを「ビジュアルロック」だの「ゴス」だのといった名称で呼ぶ人もいないでしょう。既に「BUCK-TICKブランド」を確立しているし、誰の真似でもないオリジナリティがしっかり感じられます。そういえば、なかなかフォロワーが登場しないのもこのバンドの音楽性の特徴なんですよね。もしかしたらフォロワーはいることはいるのかもしれないけど、そういったバンドが登場した際には既にBUCK-TICK自体更に次の地点に到達してるから、大した才能のないフォロワーはそこまで追いつけずに終わってしまうのかも‥‥ってのは考えすぎ?

 あ、久し振りに聴いて驚いたのは、思ってた以上に今井寿がボーカルを取ってる曲が多かったこと。1曲とかならまだしも、数曲入ってるもんなぁ。作詞に関してもボーカルの櫻井敦司とほぼ同数(5曲。櫻井単独は5曲で星野との共作が1曲)というのも、もしかしたらこのアルバムのポイントなのかな? ここ数作の彼等を知らないので何とも言えないけど、この今井の比重の高さが新作のキーポイントなのかもね。

サウンドのカッコ良さは相変わらずで、もしかしたら昔よりも更に判りやすくなってるかも。1曲目「ナカユビ」のATARI TEENAGE RIOTばりの高速デジタルビートをバンドサウンドに取り込んだスタイルはさすがだし、シングル曲「残骸」の迫力は言うまでもなくだし、そのC/W曲だった「GIRL」のメジャー感溢れるポップセンスも脱帽モノ。そして「Sid Vicious ON THE BEACH」はそのタイトルの通り、ちょっとSEX PISTOLSっぽいパンクソングなんだけど、それでいてグラマラスなイメージを与えるのはやはり今井のボーカルのせいでしょうか。星野作曲の「BLACK CHERRY」も同じグラマラスでもまた違ったイメージを与えてくれるし、攻撃的な疾走ナンバー「原罪」や星野作曲のドラムンベース的シーケンス音が印象的な「MONSTER」等、とにかく印象的な曲の多いこと多いこと。「LIMBO」なんてモロにテクノだし、「BUSTER」は近作でのPRIMAL SCREAMと同じ文脈で語ることもできるし。多分、同時期に登場したバンドでここまで多彩な曲を書けるのは、他にいないんじゃないだろうか……とさえ思える程、とにかく聴いてていろんなことを考えさせられるアルバムだったなぁ。デビュー当時を知ってる人達(自分を含む)にとって、このアルバムの内容って本当に興味深いものなんじゃないでしょうか?

80年代後半に登場したバンドで、メンバーチェンジすることなく未だに第一線で活躍しているのって、間違いなくBUCK-TICKだけですよね。しかも解散も再結成もしてないわけだし。そしてフォロワーさえ生み出さない、唯一無二の存在。デビュー時、あの髪型を見て散々バカにしてた奴らは現在のBUCK-TICKを見て、今何を思うのでしょうか? 是非聞いてみたいね。そしてある意味、バンドブームの勝ち組は、奥田民生でもなく寺岡呼人でもなく、このBUCK-TICKなのでは?とさえ思えてくる今日この頃。これを読んでいるあなたは、BUCK-TICKと聞いて何を思い浮かべ、そしてこのアルバムを聴いてどう感じるのでしょうか。



▼BUCK-TICK『Mona Lisa OVERDRIVE』
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投稿: 2003 04 01 11:23 午前 [2003年の作品, BUCK-TICK] | 固定リンク

2003/03/29

CAROL『THE★BEST』(2003)

  ぶっちゃけた話、俺はキャロル及び矢沢永吉が大嫌いでした。ガキの頃‥‥なんていうか、彼等に対して「ヤンキーの音楽」「ヤンキーが好んで聴く音楽」っていう偏見があったんですよね。ほら、よくヤンキーが乗ってそうな車に「YA・ZA・WA」とかそういった文字がリアガラスに貼り付けてあったり塗装されていたり、とか‥‥そういった理由で。そう、音楽を聴く前からそういう強い偏見があったので、どうしても苦手意識があったわけ(同様の理由で、一時期RCサクセションやBOφWYも聴けなくなってしまった時期があったのを、ここで告白しておきます。ただ、このふたつに関しては最初は音楽を楽しんでいたのに、ある時期から苦手意識が働いて、時間が経ってまた聴けるようになった、というような経緯があるんですが)。だから、高校生の頃に同級生バンドがキャロルのコピーとかやってるのを見ると、「うわっ、ダッセー!」っていう風に小馬鹿にしてたところがあったんですよ。俺のやってるAEROSMITHやレッド・ウォリアーズの方がどうみてもカッコイイだろう、と。まぁ嫌なガキだったわけですよ、頭でっかちなね。

  ところが、それから10年近く経って、何故か急に永ちゃんを聴けるようになったんですね。単純に、当時親しくしていた人がやっていたバンドで永ちゃんやキャロルのコピーをやっていたってだけなんですけど。で、そこからまず永ちゃんのライヴ盤に手をだして‥‥純粋に感動したわけですよ、その音楽に。ただのロケンローバカ親父じゃなかったんだ、と。まぁハマるって程じゃなかったんですけど、偏見はなくなったんですね。で、今度はその注目がキャロルに向けられるわけです。けど、なかなか手が伸びなかったんですよ‥‥それから数年。ようやくこういう機会(リマスター・ベストとラストライヴのDVD発売)を得て、キャロルに手を出すことになったわけです。

  ‥‥ってすごい勢いでファンに刺されてもおかしくないようなことばかり書いてますが、これが事実なんですよ。ホントに苦手で、けどその苦手意識がなくなった今だからこそ、ちゃんとキャロルについて何か書いておこう、そう思ったわけです。

  ご存じの通り、キャロルは矢沢永吉が参加した4ピースのロックンロールバンド。その後役者としても活躍するジョニー大倉もギター/ボーカルで参加していたこと等は皆さんご存じかと思いますが、永ちゃんがベース&ボーカルってのはファンやそれなりに精通している人以外、あんまり知られていないんじゃないですかね。とにかく、この二人がある種中心になって楽曲を作っていったわけです(大倉が作詞、永ちゃんが作曲という形態が大半を占める)。そしてボーカルもこの二人が曲によって歌い分けるわけです。ハスキーで如何にもロックンロールを歌う為に生まれてきたかのような声を持った永ちゃんと、甘くセクシーな歌唱のジョニー。この好対照は性質はある意味、BEATLESのそれに通ずるものがあると思います。そしてそれは歌声だけでなく、その音楽にも端的に表れているわけです。

  キャロルを再評価するにおいて必ずといっていい程挙げられるのが、この「初期ビートルズからの影響」なんですね。「日本語ロックンロールの先駆者」という側面も確かに持っていますが、それ以上にこのビートルズとの比較の方が個人的には面白いと思ってます。

  ビートルズが大好きでロックバンドを始めた永ちゃんが、その自らの構想を形にし、自身の音楽オタク振り、ミュージシャンとしてのビートルマニア振りを遺憾なく発揮する場がキャロルというバンドだったわけで、更にそこにジョニー大倉という優れた作詞家/シンガーが加わることで、更にバンドとしての個性を高めたのです。ビートルズ好き、あるいはビートルズを極めたような人なら、このベスト盤を聴いても非常に楽しめるんじゃないでしょうか? ただの真似/パクリで終わっていない、オリジナルとしての完成度はかなり高いと思うんですね。

  初期のビートルズが持っていたR&Bやブルーズ、ロカビリー、モータウン等からの影響が強いロックンロールやポップスからの影響が強いそのサウンドからは、ただのヤンキー音楽では済まされないマニア度の高さを感じさせるし、普通に今聴いてもロックンロールアルバムとして楽しめる作品なんですね。メンバーの風貌(素肌に革ジャン、革パンツ、リーゼント等)のカッコよさからヤンキーが惹かれていったってのも判らなくないですが、単純にカッコいいからね、音楽も。

  けど、今回特に注目して欲しいのは、そういった3コード・ロックンロール的な側面ではなくて、例えば"二人だけ"や"CAROL(子供達に夢を)"、最近クレイジーケンバンドもカバーした"甘い日々"といったミディアム~スロウナンバーといった楽曲の完成度の高さなんですね。所謂ロックンロール的バラードとは違った‥‥例えばROLLING STONESの "As Tears Go By" とか "Ruby Tuesday" といったタイプ。ただの不良的イメージのロックンロールに終始することなく、音楽家としての高みを目指す曲作り。あるいは本気でビートルズを追い越すことを目標としたかのような曲作り‥‥特に"甘い日々"の途中での展開(ジャジーな雰囲気でスタートして、後半いきなりロックンロール風に曲調が展開する)等、当時のバンドとしてはかなりレベルの高いものだったのではないでしょうか?

  時代背景をみても、このバンドが結成された'72年頃というのは頭脳警察に代表されるような側面を持った時代だったといえるわけですよ。勿論、全てのロックバンドがそういう方向に進んでいたわけではなく、キャロルはただ単に「人間としての主義主張」を前面に出すよりも「ミュージシャンとしての主義主張」を前面に出したかったんだな、とこのベスト盤を聴いて何となく思いましたね。それはそれで間違っていないと思うし、だからこそこのバンドは成功し、矢沢永吉という人は今でも現役で活躍し、多くの人間の心を動かす曲を作ったり、観た人をハッピーにさせるエンターテイメントショーを年間数十本もやってのけているんですから。やはり「凄い」の一言に終始しますね。

  最近の、枯れた魅力も捨てがたいですが、やはり20代だった矢沢の若い声も魅力的だし、そして何よりもジョニー大倉の甘い声にこちらまで酔ってしまいそうになります。いや冗談抜きで。ロックのルーツを追ってビートルズやストーンズ、LED ZEPPELINやDOORSを聴き漁る洋楽ファンは多いと思いますが、例えば今の日本の若いロックバンドが影響を受けたような'70~'80年代のバンドを聴き漁る邦楽ファンってのは、正直なところどれくらいいるんですかね? はっぴいえんど等はよく話題にされると思いますが、同じような理由でキャロルに手を伸ばす人達がどれくらいいるのか、正直疑問です。幸い、このベスト盤はトップ10ヒットも記録したようですし、中年以上の「昔、少年少女だった」大人達だけでなく、それこそ10代のロックファンにも聴いてもらって、純粋に楽しんで欲しいですね。こうやって俺が偏見を乗り越え、純粋に楽しめたようにね。



▼CAROL『THE★BEST』
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投稿: 2003 03 29 12:00 午前 [2003年の作品, CAROL] | 固定リンク

2003/03/19

後藤真希『うわさのSEXY GUY』(2003)

  初のソロアルバム「マッキングGOLD①」をリリース後、最初のリリースとなる(ミュージカルのサントラを除く)後藤真希のシングル(通算6作目)は、大型タイアップ付きの"うわさのSEXY GUY"をタイトルチューンに持ってきた1枚。これまでのごっちんに対する外部でのパブリックイメージに沿った曲調と呼べる、ちょっと大人っぽくて、それでいて下世話なアレンジを持った曲(アレンジは、やはり鈴木Daichi秀行)なんだけど‥‥結構、周りの評判はよろしくないようですが‥‥俺、あややの「ね~え?」よりもこっちの方が好きかも‥‥もしかしたら俺って、こういう下世話で安っぽいアレンジを持った単純な曲が好きなのかもしれない。カン梨華「色っぽい女 ~SEXY BABY~」とか、ああいった流れの楽曲がね。

  この曲もあくまであややとの比較の上で「劣っている」とか「後藤が可哀想」なんて声が挙がると思うんだけど、果たして本当にそうなのでしょうか?と俺は疑問に思ってるわけよ。そもそもベクトルの向きが違うじゃないですか、あややとごっちんとじゃ。宇多田ヒカルと浜崎あゆみ程に向きが違うし、GLAYとラルクくらいにベクトルの方向が違ってる。どっちがどう、という決めつけはあえてしませんが、違うというのはご理解いただけると思うんですね。で、そういうあややとごっちんだからこそ、同じ "SHALL WE LOVE?" (ごまっとう)を歌っても、また違った印象を受けるわけだし、歌い方や発声、声質に違いがあるからこそ、それぞれに合った楽曲というのがあるわけですよ。で、やっぱり「ね~え?」はごっちんには無理があると思うし、逆にあややにこの"うわさのSEXY GUY"を歌わせてもそれなりに歌いこなせるとは思うんですが、ごっちん程ハマらないと思うんですね(そりゃ、実際にやらせてみないと判りませんけどね)。

  更に、何だかんだ言ってもこういう曲をごっちんに歌わせてみると、意外としっくりくるというか、合ってるんですよね。聴く前から我々にも「ごっちんに対して事務所や外界はこういうイメージを持ってる」ってのが、ある程度深層心理の中に植え付けられてるわけですよ。だから口では「またこういう曲調かよ!」と憤りを言葉にしてみても、実はそこまで違和感を感じてるわけでもないんですよね。要するに、元となる楽曲さえしっかりしてれば、この子には何を歌わせてみても(ある程度)我々は納得できてしまうんですよ。それはごっちんの才能であり、そして何だかんだいいながらもつんく♂の手腕によるもなのではないか、と思うわけです。つまりね‥‥「マッキングGOLD①」で "やる気!IT'S EASY" や "晴れた日のマリーン" のような曲を少数ながらも与えつつ、その大半は我々が「?」と感じるような曲ばかり。ごっちんにすればこれらって、公開スパーリングみたいなもんなんじゃないですかね? 何だかそういう気がしてきた‥‥このシングルを聴いてて。

  そりゃね、このジャケットでも身につけてる今回の歌衣装(ゴマキデビルですか?)といい、背中に生えた羽根といい、あややの今回の歌同様、普通の人は引くわけですよ。普通に引きますよ、あんな羽根を生やされた日にゃ。そこにきて、時節柄タイムリーなのかどうなのか疑問な某スパイ映画風のリフ、中途半端なラテンアレンジ、相当無理がある字余りなサビ。やっつけ仕事的な楽曲と捉えることもできますが、これをごっちんが歌うと‥‥あら不思議、そこまで駄曲に聞こえないんですよね(って思ってるの、俺だけ?)。もしかしたら俺、今までのごっちんソロの中で一番好きかもしんない、この曲が。ある意味"手を握って歩きたい"をも超えたかも。勿論、楽曲単体の良さでいったら向こうなんだけど‥‥何ででしょうね?

  んで、カップリングは更に今までなかったような、ボサノバ・テイストのナンバー。今まで味わえなかったようなごっちんワールドを堪能できます。ホント、こんな声/歌い方をするごっちん、聴いたことなかったよね? 彼女の新たな魅力を感じさせる1曲ではないでしょうか。アルバムに入っていたら、アクセントとしてかなりいい役割を果たしたと思うんだけど‥‥今更言っても遅いけどね。いやぁ、これもいい曲。カップリングやアルバムの中の1曲という印象が強いですが、"うわさのSEXY GUY"と好対照なイメージが上手く機能してます。タイプは違うけど、共に「背伸びした感じ」がいい具合ではないかと思いますね。

  もしかしたら、後藤真希というシンガー/アーティストはこのままずっと、固定されたイメージを持たぬまま、あるいは我々が望む路線をスルリとかわしながら、どんどん先へと前進してくのかもしれませんね。で、気づいたら思ってもみなかったような高みまで達していたりして‥‥ってのは楽観的ですかね?



▼後藤真希『うわさのSEXY GUY』
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投稿: 2003 03 19 12:52 午前 [2003年の作品, ハロー!プロジェクト, 後藤真希] | 固定リンク

2003/03/12

BUMP OF CHICKEN『ロストマン / sailing day』(2003)

  BUMP OF CHICKEN、2003年最初のリリースとなるシングルはダブルAサイド・シングルで、ジャケットも2種類。基本的には"ロストマン"の方が1曲目になる盤が一般普及盤(右ジャケットがそれ)で、限定盤として"sailing day"が1曲目がくるジャケ違い(アニメ「ワンピース」映画版主題歌ということで、黒地にルフィの海賊船マークをあしらったジャケット)も用意されています。多分、そっちはすぐ売り切れるでしょうけど、今回俺は一般盤の方を買いました。正直、どっちでもいいんですけどね。

  さて、バンプはアルバム「jupiter」を2002年2月にリリースした後、12月の "スノースマイル" まで一切新曲をリリースしてきませんでした。もっともこのバンド、リリースに関してはかなりのスローペースなので、まぁこれもいつものことか‥‥と納得できるんですが、今回はたった3ヶ月しか間が空いてないんですよね。まずそれに最初驚き、しかもその新曲がアニメ「ワンピース」主題歌となるという事実に二度驚き、とにかく驚き尽くめ。けど、何よりも驚いたのは、その新曲の完成度ではないでしょうか?

  まず"ロストマン"。メジャーデビュー後、「jupiter」までの路線の延長線上にあるといえるだろう作風なのですが、とにかくこの力強い「肯定」。これが全てですね。ある意味 "天体観測" も、そして "Stage of the ground" をも超えてしまった、本当の名曲なのではないでしょうか? そうえいば某音楽雑誌の方でもこの曲を名曲呼ばわりしてましたが、いろんな難しい理屈詰めで解説してたけど、これはもうとにかく聴いてもらうのが一番かと。歌詞をじっくり読んで、そのサウンドをしっかり受け止めて‥‥後は聴いた人の感じ方次第。勿論それでも「やっぱバンプ、クズだね?」って人もいるだろうし、「今までバンプ苦手だったけど、これはイイ!」って人もいるでしょう。とにかく変な偏見なしに耳を傾けてみてください。正直、俺もこんなにスゲェ曲だとは思ってもみなかったよ。

  そして"sailing day"の方も、完全無欠のバンプ節。第二の "天体観測" なんて安易に呼びたくはないけど、とにかく路線としてはああいうアップテンポの疾走ナンバー。サウンドもカッコイイと思うし、歌詞も好きだな。「ワンピース」に絡めて「船」や「航海」という言葉がキーワードとして登場しますが、今回の2曲に通していえるのは、大きな意味での「旅」がテーマになっている、と。それは長い人生の道のりを歌ったものであったりするわけですが、とにかくこのバンド、どんどん歌詞のテーマが壮大になってるのね。ま、これは今回に限ったことなのかもしれませんが、俺はこういう歌詞が嫌いじゃないんで、ちょっとこの路線を突き進めて欲しいな、と思ってたりして。 "天体観測" のような歌詞もいいんだけど、最近の彼等のサウンド自体がそういう壮大さを前面に出してきてるように思えるので、歌詞もそれに見合った素晴らしいものを提供して欲しいな、というのが素直な気持ち。期待してますよ。

  いやぁ、よく冗談で「バンプいいよね~」とか友人同士で言ったりしてるのですが、これはマジでイイ。バカに出来ませんよ。つうかこれが売れてるっての、よく判るよ。現時点では発売日のデイリーチャートでスマップや松浦亜弥を抑えての1位ですが、もしかしたら「ワンピース」効果も手伝って、 "天体観測" に匹敵する大ヒット曲に、そしてバンドにとっての第二章の代表曲になるんじゃないでしょうか?

  そうそう。今回も例のボーナストラック( "おもち" )、収録されてます。CDのトレイをパカッと開けると‥‥(笑)



▼BUMP OF CHICKEN『ロストマン / sailing day』
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投稿: 2003 03 12 03:04 午前 [2003年の作品, BUMP OF CHICKEN] | 固定リンク

2003/03/04

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『SABRINA HEAVEN』(2003)

  唐突ですが、まずは土下座します。ホントごめんなさい、ミッシェルファンの皆さん。

  正直、ここまですげーアルバムをミッシェルがまた作れるなんて、思ってもみなかったよ。俺の中ではやはり「GEAR BLUES」がピークなんだと判断下してたし。「CASANOVA SNAKE」も良いアルバムだったけど、決して100点をあげれるような作品だとは思わなかったし、「RODEO TANDEM BEAT SPECTER」なんてちゃんと通して聴いてもないしね。そんな感じだったので、完全に自分の中で盛り下がってたし、そこにきて2001年春から2002年末までバンドとしての新曲リリースが一切なし。更にチバはROSSOなんて始める始末。嗚呼、バンドってこうやって終わっていくのね‥‥と自分の中で決着がつきそうだったのに、レコード会社移籍しました、ツアー始めました、でアルバム作りました‥‥これがそれ、と。

  シングル「太陽をつかんでしまった」レビューで、俺は「これ1曲で今度のアルバムは名盤だ!と盲目的に決めつけたくない」と書きました。それはまだ、自分の中でミッシェルに対して何か燻ったものがあったからで、どうしても完全にスッキリしてなかったんだよね。きっと、このアルバム聴く前にライヴを観ちゃえば考え方も180度変わったんだろうけど、そうもいかず、結局今日この日までアルバムの視聴とか一切してきませんでした。いきなりアルバムを通して聴いて、そこで最終的な判断を下そう、自分の中で決着をつけよう、そう思ったのです。

  仕事が終わり、会社から一番近いCD屋に飛び込んでこのアルバムを購入しました。いつも使う近所のお店ではなく、会社周辺から自宅までの距離を爆音で、このアルバムを車内で聴きたかったからなんですね。

  もうね、1曲目"ブラック・ラブ・ホール"の、最初の一音で十分だった‥‥あの音が鳴らされた瞬間、空気が変わったもん。それに続くスキャット、そしてリフ‥‥ミッシェル以外の何者でもないのに、これまでの彼等とは違う何かも感じる。いや、四の五の言わず、とにかく最後まで聴けって‥‥かっけー‥‥それで十分。つうかそれ以外の言葉が浮かんでこないし。

  シングルのレビューでも書いたように、やはり全体的にジャムセッションから組み立てていったかのような楽曲が大半を占めていて、6分を越えるような長尺なナンバーが半数近くあるのね。けど、全然長さを感じさせないし、むしろシングルとして聴いた時は長さが気になった"太陽をつかんでしまった"ですら、全然8分超という事実を感じさせない。そんな長尺なナンバーの合間に"ヴェルヴェット"や"メタリック"のような、アッパーで短いナンバーが飛び込んでくる(短い、とはいっても全部4分超なんだけど)。"ブラック・ラブ・ホール"のギターソロに突入する前のアレンジとか"ヴェルヴェット"のメタルパーカッション辺りにKING CRIMSON的アプローチすら感じる今回のミッシェル。そう、ジャムの延長というよりも、そういうプログレッシヴな要素(ジャンルとしてのプログレではなく、文字通りの意味で)を所々で感じ取ることが出来ます。"ブラッディー・パンキー・ビキニ"の後半なんて、正にそれだしね。

  前半の、ヤケクソとも違う、テンションが異常に高いのにも関わらずヒンヤリとした冷たささえ感じる演奏に続いて、後半はジャジーな"マリアと犬の夜"で少々クールダウン‥‥すると見せかけ、途中から凄まじいテンションで音の塊を我々にぶつけてくる。"ジプシー・サンディー"なんてギターのストロークがレゲエ的なのでそれっぽい曲調なのかと思うと、また違った色を発してるし。決して派手な曲ではないんだけど、ユラユラと徐々に、徐々にと盛り上がっていく感じにゾクッとしたり。若干トーンダウンした空気を切り裂くようにスタートする"マリオン"は、ミッシェルの王道のように聞こえるけど、いやいや今までにないタイプじゃないか?とも思える、不思議な雰囲気の疾走ナンバー。叫びながらも、しっかり聴かせる要素を維持してるのはさすが。つうかホントかっけーの何のって。そしてハイライトとなる"サンダー・バード・ヒルズ"は、既に2001年のツアーから演奏されていたナンバー(だそう。俺はこの頃のライヴ観てないので、アレンジがどう変わったとか、その辺は全然判りませんが)。そうか、この曲から「今のミッシェル」はスタートしたのか‥‥いや、判らないけどさ。何だか判らないんだけど、とにかくもの凄い威圧感だったり刹那だったり高熱だったり絶対零度に近い冷たさだったり‥‥そういった「得体の知れないものの塊」がこの1曲の中でうごめいてる感覚‥‥カオスなんて一言では済ませられない「何か」を感じるわけですよ。決して「アルバムを大いに盛り上げて大団円」というタイプの楽曲じゃないんだけど‥‥何だかこのアルバムのラストにピッタリな気がする。そういう1曲。そして最後の最後に、エピローグともいえるインスト曲"NIGHT IS OVER"で静かに暗闇から抜ける、という‥‥"ブラック・ラブ・ホール"という「夜」に突入して、最後に"NIGHT IS OVER"‥‥計算されてるんだろうね、これ。

  まさかね‥‥まさか自分がまた、ミッシェルの新作でこういう気持ちになるとは思ってもみなかったのね。「GEAR BLUES」で感じた気持ちとはまた別のものなんだけど、何ていうか‥‥「ああ、こいつら、またやらかしやがったよ‥‥」という驚愕。恐怖すら感じるよね。で、こんなアルバム作っておいて、当のメンバーは「まだまだ行ける」とか言ってるし‥‥完成した時点で、既に「過去の通過点」として終了してしまってるのか!? 何だよ、このバンドは!?

  ‥‥とまぁ、グダグダと書いてはみたものの、まずはこれを読んだあなたがアルバムを聴かなきゃ何も始まらないよ。こんなの読んでる暇あったら、さっさとCDショップまで走りなって! へっ、買う金がないって!? 働け!そして稼いだ金でさっさと買って、可能な限りの爆音で聴けっ!!



▼THEE MICHELLE GUN ELEPHANT『SABRINA HEAVEN』
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投稿: 2003 03 04 11:30 午後 [2003年の作品, THEE MICHELLE GUN ELEPHANT] | 固定リンク

2003/02/27

後藤真希『マッキングGOLD①』(2003)

  後藤真希がモーニング娘。でデビューして早3年半。ソロデビューして約2年。モーニング娘。を卒業して約半年。そういう風に考えると、遅かったのか、それとも早すぎるくらいなのか‥‥ようやくごっちんのソロアルバムがリリースされました。

  が、その内容が‥‥全11曲中、シングル既発曲が4曲、そのシングル曲のバージョン違いが1曲(しかも既発曲と重複)、過去のユニット(シャッフルや「ごまっとう」)での曲のソロバージョンが2曲、そして残る4曲が新曲という、なんだかなぁ‥‥と思ってしまうような内容。デビュー曲 "愛のバカやろう" でさえもう2年も前の曲なのに、そこに3年も前のシャッフル曲("赤い日記帳")まで入れるなんて、どうかしてるよ!(ま、入れた理由も判らなくもないですが‥‥)

  というわけで、簡単ではありますが全曲解説をやってみたいと思います


M-1. 愛のバカやろう
  '01年3月リリースの、後藤真希としてのソロシングル第1弾。初登場1位を記録、約50万枚近くものセールスを記録しました。似非エスニック風ダンスサウンドに、ちょっと大人びた女の子的内容の歌詞という‥‥ある種、その前年に成功した "赤い日記帳"(シャッフルユニット「あか組4」のヒット曲)での路線の延長線上にある作風で、あそこでの成功をそのまま「これが後藤真希のキャラクター」と勘違いしたファンやスタッフが多かったのか、それとも一般的なパブリックイメージをそのまま曲にしてしまったのか‥‥リリース当時は正直「?」な曲でしたが、今こうやって聴いてみるといい曲なんですよね、不思議と。ただ、1曲目に持ってくるのはどうかな‥‥と個人的に思ったりして。

M-2. 手を握って歩きたい
  '02年5月リリースの通算3枚目となるシングルナンバー。詳しいレビューはこちらのシングルレビューを参照のこと。いきなり全然違う路線の楽曲が登場してビックリ。とても同じ女の子が歌ってるとは思えないよね? ま、そういう歌い分けが出来るってとこがごっちんの魅力でもあるんだけど‥‥この名曲がこのポジションってのは、正直曲の良さを100%引き出すことに失敗してるように思います。ま、細かいことは一番最後に述べますけどね‥‥

M-3. 愛ってどんな×××?
  このアルバム用の新曲その1。アレンジャーはAKIRA。如何にも彼らしい今風R&B調ポップソング。BoAとかあの辺を狙ったのか?ってのは邪推かな。ま、あんな感じの黒っぽいポップスです。後半にラップとも呼べないラップもどきが出てくるんですが、もうつんく♂が出しゃばり過ぎ。「アー、アー、イェー」だけ言ってりゃいいのに(エフェクトしてない生声なので、余計に耳に残る)。お陰で折角頑張ってごっちんがラップしてるのに、全然印象に残りやしない。ま、そういう曲です(どんなだよ!?)。ただ、悪い曲じゃないですけどね‥‥詰めが甘いっつうか‥‥ま、それはこのアルバムに収められた全ての新曲に言えることだし、それこそここ最近のハロプロ・ワークス大半に言えることなんですけどねぇ‥‥

M-4. 溢れちゃう...BE IN LOVE (A Passionate Mix)
  '01年9月リリースの通算2枚目となるソロシングル曲。当時はアメリカの某アイドルシンガーのヒット曲にそっくりなアレンジってことでかなり話題になりましたよね?(しかもPVもかなりの割合で激似だったし)そういう事情からか、ここではリミックスが施されていて(何故にこの曲だけ!?不自然じゃない??)、それを手掛けたのがSHO-1という人。過去にもごまっとう "SHALLWE LOVE?" やモーニング娘。"Do it! Now" のリミックスを手掛けてきた人。個人的にそれらのリミックスがかなり好みだったのですが、その期待通りの出来。ちょっとラテンテイストを加味しつつも、原曲よりも音数を減らしたことによってメロやコーラスを際立たせたアレンジはさすがだと思います。

M-5. デート注意報
  このアルバム用の新曲その2。アレンジャーは高橋諭一。ギターがザクザクした、かなりロック色の強いナンバー。高橋らしくないと言えなくもないけど、Bメロ~サビへの流れはやっぱり彼にしか表現できないアレンジかも。ドラムサウンドの独特な歪み具合は、一聴して彼のそれと判るんじゃないでしょうか? 肝心の曲は‥‥可もなく不可もなく、といった印象。つうかさ、なんでみんな、ごっちんにこういうマイナー調の曲(特にR&B寄り)を歌わせようとするのかね? パブリック・イメージに拘りすぎ。意外性が全然ないんだよね、このアルバムをここまで聴いた時点では。

M-6. SHALL WE LOVE? (後藤Version)
  '02年11月に「ごまっとう」がリリースした同名シングルの、後藤ソロバージョン。当然アレンジは全く変わっていて、ここではUZAという人が比較的原曲に近いイメージでリアレンジ。ま、当然この曲は後藤の為に作られたようなもんなので、こうやってソロで歌っても全然違和感ないし、むしろ安心して聴けるんですが‥‥逆に意外性や驚きもないんだよね。「ごまっとう」で聴いた時と、何ら変わらない印象。それ以上でもそれ以下でもなく。

M-7. やる気!IT'S EASY
  '02年8月リリースの通算4枚目となるソロシングル曲。結果として、モーニング娘。在籍時最後のシングル曲となったわけですが‥‥みんな、こういう曲を聴きたかったんじゃないの? ごっちんにはもっとこういう曲を歌って欲しかったはずなんだよね。"手を握って歩きたい" はちょっと対象年齢が低いかな?と感じる瞬間があったんだけど(アレンジ的な問題ね)、この曲は全然問題ないと思います。むしろ遅すぎたくらい。丁度この年、Tommy Feburary6がユーロビート歌謡でヒットを収めた後だけにね‥‥テレビやライヴでバックを務めるメロン記念日も豪華でした。

M-8. 盛り上がるしかないでしょ!
  アルバム用の新曲その3。アレンジャーは鈴木Daichi秀行。打ち込みメインのデジタルパンクとでもいいましょうか‥‥言っちゃあ悪いけど‥‥モーニング娘。の "ここにいるぜぇ!" のボツテイク‥‥いや、プッチモニの "WOW WOW WOW"(現時点ではリリース未定)を更に薄めたような印象なんですよ。勿論悪い意味で。見方によっては「DEF LEPPARDがカバーした "Action"(SWEETの名曲)的なアレンジ」とか「布袋寅泰っぽいデジロック風アレンジ」なんて表現も出来ると思うんですが、それにしてもバックトラックが安っぽすぎる。デモテープレベルなんですよね、これ‥‥なんでもっと重厚なサウンドに仕上げなかったんですかね? 例えば、これが鈴木俊介だったら、生バンドでバックトラックを録音したと思うんですよ。いや、Daichiが悪いってことじゃなくて‥‥これにOKを出したつんく♂に疑問を感じるわけですよ。嫌いじゃないだけに‥‥残念だよなぁ‥‥

M-9. 晴れた日のマリーン
  アルバム用の新曲その4。アレンジャーは同じくDaichi氏。路線としては "やる気!IT'S EASY" と同系統のユーロ歌謡。しかし、これが悪くないんですよね‥‥ただの二番煎じに終わってないという。メロが良いというのもあるんだけど、やっぱ何だかんだで、こういう曲調とごっちんの声が見事にマッチしてるんですよね。だから言ったじゃんか、もっとこういうアイドルポップ路線のごっちんが聴きたいんだって! アルバム後半、ここに来てようやく盛り上がり始めます。

M-10. 赤い日記帳 (後藤Version)
  '00年3月にリリースされた、ハロー!プロジェクト初のシャッフルユニットの内のひとつ、「あか組4」が発表したシングル "赤い日記帳" のセルフカバー。当時、加入間もないごっちんも参加していたので、ハロプロに疎い人でも憶えてる人、結構いるんじゃないでしょうか? あの曲のレビューにも書きましたが、当時のごっちんの歌唱はホントにどうしようもないものでした。が‥‥昨年9月のモーニング娘。卒業公演@横浜アリーナで歌われたこの曲は、本当に素晴らしいものでした。ごっちんの今後に一抹の不安を感じていた俺は、アリーナで聴いたこの曲、そしてごっちんの歌いっぷりに感動すらおぼえましたし。この曲をこうやってまた再録音して、アルバムにまで入れたというのは‥‥あざとい商売かもしれないけど、彼女のこの3年間の成長を知らしめるにはいい選曲ですね。ただ‥‥この手の楽曲がホント多すぎるんですよね、このアルバム‥‥そこが難点かな。

M-11. 手を握って歩きたい (Album Version)
  アルバム2曲目とは別アレンジ/別テイク。2002年9月23日の横浜アリーナ最終公演、一番最後に歌われたバージョンに比較的近いアレンジ、かな?(よく判らないって人は、その公演を収めたDVDを観ることをオススメします)あのね‥‥このバージョン、メチャクチャいいんですよ。アレンジは鈴木俊介。ねっ、この人がアレンジすると、こんなに手の込んだ作品になるんですよ。楽曲に対する時間のかけ方、愛情の込め方の違いなんですかね? シングルバージョンのコミカルで、それでいて愛に溢れたアレンジもいいんですが、もうこっちは完全に別格。名曲が更に名曲へと変化した瞬間を目撃してしまったかのような、そんなアレンジ。最後の2曲って結局、ごっちん卒業ライヴを彷彿させる構成なんですよね‥‥何でこういうことするかなぁ? ま、聴く人によっては涙ボロボロもんなんでしょうけどね‥‥まぁ、こういう配置しかないか。ま、名曲・名アレンジには違いないんで、万人に聴いて欲しい1曲ですね。


◎総評
  あのね‥‥俺、考えたんですよ、このアルバムの最大の欠点を。ただでさえ既発曲多くて、しかも音楽的にもてんでバラバラなのに、もうね、曲順が悪いんですよ。だから聴く側もどんどんネガに考えて(受け取って)しまう。なもんで折角のラスト2曲の並びで感動出来ない。小粒ながら折角いい曲があるんだから、それを何故最大限に活かそうとしないのか。

  というわけで、俺が考えた「マッキングGOLD①」の曲順を発表します。


◎後藤真希「マッキングGOLD①」とみぃ・セレクション
01. 手を握って歩きたい (Single Version)
02. やる気!IT'S EASY
03. 盛り上がるしかないでしょ!
04. デート注意報
05. 愛のバカやろう
06. 晴れた日のマリーン
07. 溢れちゃう...BE IN LOVE (A Passionate Mix)
08. 愛ってどんな×××?
09. SHALL WE LOVE? (後藤Version)
10. 赤い日記帳 (後藤Version)
11. 手を握って歩きたい (Album Version)


‥‥とまぁ、こんな感じ。かなり無理がある曲順かと思いますが、現行のオリジナルのよりはいいんじゃないの? ま、後半の流れは個人的に不満あるんですが、前半はこんな感じでいいと思うんですよ、掴み的に。あるいは "盛り上がるしかないでしょ!" と "愛のバカやろう" を入れ替えてもいいかなぁ、とか。前半をポップ/ロック色で盛り上げて、後半をR&B的なダンサブルナンバーでのせて、最後の2曲で歌を聴かせる(=成長を誇示する)‥‥やりようによっては、もっと評価出来るアルバムになったはずなんですよね。

  どうもスタッフは、まだごっちんの進むべき道、進ませる方向に迷いがあるようですね。変なカバーさせたりとかさ(ま、あれはミュージカル絡みだから仕方ないか)‥‥これだったらこの時期にアルバムを無理して出さないで、3月に出る新曲のリリースを待って、4~5月を目処にリリースすればよかったんじゃないのかな? もう1曲ポップなナンバーがあるだけで、全然印象が変わると思うんですけど‥‥

  結局、松浦亜弥と藤本美貴のソロアルバムに合わせて、無理矢理作りましたっていう悪い印象が残るんだよね、全体のイメージとしては。個々の楽曲は小粒ながら決して悪くないだけに、尚更残念だよなぁ‥‥ミキティの場合と違って「如何にシングル曲が優れていても、曲順次第でこうもイメージが変わる」ってことを示してしまった悪い例として、今後つんく♂及びスタッフはこれを肝に銘じて、続くセカンドアルバムは「後藤真希」のブランドに恥じない名作を、時間を掛けて丁寧に制作して欲しいものです。



▼後藤真希『マッキングGOLD①』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 02 27 12:42 午前 [2003年の作品, ハロー!プロジェクト, 後藤真希] | 固定リンク

2003/02/26

藤本美貴『MIKI①』(2003)

  デビューから11ヶ月。18歳の誕生日である2/26にリリースされる、藤本美貴のファーストアルバム「MIKI①」。全11曲中、シングルでの既発曲が6曲、「ごまっとう」での既発曲別アレンジ1曲。というわけで、完全なる新曲は4曲と、非常に淋しい感じ。先日リリースされた後藤真希のファーストソロ「マッキングGOLD①」も同様だった為、正直なところ「ああ、デビューだってぇのに、何か虐げられてるよなぁ‥‥」と凹んだもんでした。

  が、そういった印象を覆したのが、先日行われたファーストライヴで聴いたそれら4曲の新曲群の出来の素晴らしさでした。ライヴでの爆音で、アレンジや歌詞の細部までは聞き取り不可能でしたが、それでも全体像は把握できたし、それだけで十分でした。既発曲が大半ながらも、新曲があれだけ充実してるんだ、これはもしかしたらいいアルバムになるかも‥‥今度は逆に期待がドンドン膨らんでいったんでした。

  というわけで、ミキティのファーストソロアルバム、全曲解説をやってみたいと思います!(破格の待遇だな我ながら)


M-1. ブギートレイン'03
  '03年1月リリースの通算5枚目、現時点での最新シングル。詳しいレビューはこちらのシングルレビューを参照のこと。ライヴ同様、アルバムも1曲目ってことで、ここで勢いづきます。確かにトップにはもってこいのナンバー。「今の藤本美貴」を余すことなく表現した、奇跡的な1曲と確信しております。

M-2. ロマンティック 浮かれモード
  '02年9月リリースの通算3枚目となるシングルナンバー。詳しいレビューはこちらのシングルレビューを参照のこと。現時点で最も売れたシングル曲で、昨年末の紅白歌合戦でもこの曲が歌われたので、ミキティに疎い人でもこの曲は知ってるって人、いるんじゃないでしょうか。キラーチューンを2曲目に持ってくるとは。一体この先、どんな構成になってるんでしょうか?

M-3. 駅前の大ハプニング
  このアルバム用の新曲その1。アレンジャーは渡部チェル。如何にも彼らしいドリーミーなサウンドのシャッフルナンバー。ドラムとベースの歪み具合、そしてメインとなるブルースハープ(アンプを通して歪ませたオートハープ)といった楽器がローファイ的なんだけど、それ以外の上モノ(ストリングス系シンセ等)が非常にクリアで甘い雰囲気を作り出していて、その対照的なサウンドを繋ぐ役割をしてるのが、中音域メインで歌うミキティの声。ライヴで聴いた時よりも音が濁ってるように感じるのに、あの時以上にポップに聞こえるのは、このミキティの歌声によるものなのかもしれません。確かに松浦とか2期タンポポが歌ったらもっとハマるのかもしれないけど、これはこれでピッタリだと思いますよ。こういう曲も歌いこなせるんですね、ミキティは。もっと幅の狭いシンガーなのかと思ってました。

M-4. そっと口づけて ギュッと抱きしめて
  '02年5月リリースの通算2枚目となるシングル曲。初のトップ10入りを記録。詳しいレビューはこちらのシングルレビューを参照のこと。ここまでの流れ、完璧過ぎ。いろんな歌い方、いろんな音域、そしていろんな表情を見せるミキティ。彼女ってホントにこんなに多彩な面を持っていたっけ? もっと平面的なシンガーだと思ってたのに。特にこの曲がリリースされた頃は‥‥成長ってホント恐ろしい。

M-5. 涙GIRL
  このアルバム用の新曲その2。アレンジャーは鈴木俊介。ライヴレポにも書いたように、ハロプロ初のメタルナンバー。ジャーマンメタル系、特にGAMMA RAYとかマイケル・キスク在籍時のHELLOWEENを彷彿させる曲調・テンポ・演奏ですね。バスドラのブラストビート、ベースの歪み具合&ランニングフレーズ、ギターの歪み方等、これまでのハロプロ関係の楽曲からは見出せなかった要素満載です。ちょっとしたフレーズにIRON MAIDENとか、更には毛色は違うけどWiLDHEARTS系の爆走パンクロックの匂いも感じさせます。イントロなんてhideの "TELL ME" をちょっと思い出すしね‥‥まさか、つんく♂、俺が以前書いたあややシングルレビューでの「ハロプロがまだ手を出してないジャンル」を参考にしたんじゃ‥‥アワワワワ。
  それにしても、この曲でのミキティの歌いっぷりに感服。特に語尾のだらしなさが最高ですね。松浦や後藤が同じことやっても、つんく♂のコピーか、はたまた品が良すぎちゃうんですよね。この微妙さが彼女の売りのひとつだと信じて止まない俺です。

M-6. 会えない長い日曜日
  '02年3月リリースの、藤本美貴デビューシングルのタイトルナンバー。詳しいレビューはこちらのシングルレビューを参照のこと。歌いっぷりが初々しいですね。独特な硬さが苦手だったんですよね、当時の俺は。表情も今よりも更に硬かったし(それにちょっとボヤけた印象が強かったんですよね)。楽曲は今聴くと、特に悪いとも思わない。この流れで聴くと全然違和感ないし、取り立てて騒ぐ程の駄曲だなんて思えないんですが‥‥ま、言いたい人には言わせておきましょう。死んだ子供の歳を数えるのを続けるよりも、俺は今を、そしてその先を見据えて進んでいきますよ、ミキティと共に。

M-7. 銀色の永遠
  アルバム用の新曲その3。アレンジャーはAKIRA。彼得意のR&Bテイストのポップナンバーといった印象。「ブギートレイン'03」C/W曲 "大切"に通ずるタイプのナンバー、かな。あと、同じAKIRAが手掛けたモーニング娘。の "初めてのロックコンサート" にも似たアレンジですね。ただ、あそこまで派手な印象はなくて、もっと軽くて親しみやすい音。それはサビでマイナーキーからメジャーキーに転調するからかも。オープニングのオーケストレーションが一瞬MADONNAの "Papa Don't Preach" を思い出させます(ってそう感じたの、俺だけ?)これも既に名曲の域に達してると思うんですが、如何でしょう?

M-8. ボーイフレンド
  '02年11月リリースの通算4枚目となるシングル曲。詳しいレビューはこちらのシングルレビューを参照のこと。前半5曲の、てんでバラバラだけど「ポップ」をテーマにしたかのような構成に対して、"会えない長い日曜日"からの流れは「ダンサブル/R&B的」なイメージを受けます。この流れで聴くと、シングルとしてはちょっと弱かったかも‥‥と感じていたこの曲も非常に栄えてきます。メロの際立ちは他のシングル曲やアルバム曲同様、独特で素晴らしいものがあると思うんですけどね。

M-9. 満月
  アルバム用の新曲その4。アレンジャーは前曲から引き続き、鈴木Daichi秀行。彼だからというわけではないけど、EE JUMP辺りが歌ったらハマりそうな、適度にファンキーで適度にポップな、非常に印象に残るナンバー。このアルバム後半最大のハイライトといってもいいかもしれませんね。Aメロの運び方が黒人ファンクに影響を受けたニューロマンティック時代のDURAN DURANっぽいというか、そんなカッコ良さを持ってます。これ、ライヴで聴いた時は生バンドでの演奏だと思ってたら、実際には全部打ち込みだったんですね。ま、そんなの関係なしによく出来た楽曲。この曲での歌い方も、またそれまでとは違って、時に黒人ぽく喉を太くさせて歌ったり、時に可愛らしく歌ったり、そしてつんく♂ばりに「アー、アー、イェー」と合いの手入れたり。後半の「ダンサブル/R&B的」構成は、ここでひとつのピークを迎えるわけですね。この時点で、「もしかしてこのアルバム、名作の予感が‥‥」と誰もが思うことでしょう。

M-10. SHALL WE LOVE?(藤本Version)
  '02年11月に「ごまっとう」がリリースした同名シングルの、藤本ソロバージョン。当然アレンジは全く変わっていて、ここでは朝井泰生という人がバラード風R&Bとしてこの曲を蘇らせています。つうかこのアレンジ、お見事! ここまで、バラード曲が一切なかったので、丁度この辺りで聴きたいと思ってたところだったんですが、残り2曲は既発曲だし、ああ、バラードは今回望めないのか‥‥と思ってた矢先、この新たに生まれ変わった"SHALL WE LOVE?"が登場するわけです。松浦、後藤とそれぞれのアルバムの中でリアレンジされた"SHALL WE LOVE?"を披露してますが、もうミキティの一人勝ちといった印象。歌い方も当然、原曲のそれよりもちょっと力が緩んだかのような印象で、後半のフェイクは保田圭(モーニング娘。)のそれに匹敵するんじゃ!?と思わせる程。ミキティがモーニング娘。に編入後、保田のポジションを受け持つんじゃ‥‥という読みは、あながち間違ってないかもしれませんよ。

M-11. Let's Do 大発見!
'02年3月リリースの、藤本美貴デビューシングルのカップリング曲。詳しいレビューはこちらのシングルレビューを参照のこと。事実上のデビュー曲でアルバムを閉めるわけですか。後半のテーマとなった「ダンサブル/R&B的」構成は前曲"SHALL WE LOVE?"でしっとりと聴かせ、最後に原点であるこの曲で終わる形で完結。アルバムの構成としても完璧じゃないでしょうか? そして、こうやって聴くことで彼女の成長も一聴瞭然だし、このままリピートしてまた1曲目を聴くことで、それを具体的に体感したり。いろんな意味で興味深い1曲。そして「センキュー!」とミキティに言われて、「どういたしまして」と思わず返してしまいたくなる自分が、ちょっと好き。


◎総評
  途中で薄々気づいていたのですが‥‥これって名盤じゃないですか? 松浦が新曲7曲も入れながらファーストを越えられなかった点、後藤が満を持してのアルバムリリースだったにも関わらずコケた点を差し引いてこのアルバムと比べてみても、ダントツに「MIKI (1)」の方が優れてると思うんですよ。同じく既発曲が大半を占めた後藤の場合、古い楽曲のソロバージョン("赤い日記帳")や、同じ曲が別バージョンで2曲入ってる("手を握って歩きたい")といったマイナスポイントが目立つし、更にアルバムとしてのテーマもぼやけていて、統一感に欠けたんですよね(いい曲が多いだけに残念)。更に松浦も新曲7曲のクオリティーのバラつきが気になったし。新境地と呼べるようなナンバーもあるにはあったけど、誰もそういった路線を彼女に望んでいないというちぐはぐさ。悪くないアルバムなんですけどねぇ‥‥

  その点、ミキティのこのアルバムはどうでしょう。既発曲(シングル曲6曲)は当然クオリティが高いわけですが、それ以外の曲‥‥新曲4曲のバラエティー豊かさもハンパじゃないし、何よりもクオリティーの高さは折り紙付き。それぞれの楽曲を今のハロプロ界を代表するアレンジャー達によって手掛けられている点もさることながら、それらをミキティ自身が独特な色付けをしてる点も見逃せません。それはプロデューサーであるつんく♂によるところが大きいのは判っていますが、たった1年で彼の要求に十分応えられるだけの能力を身に付けたという事実には変わりないわけですからね。更に同じ曲を別のアレンジで、「ごまっとう」の3人に歌わせるというチャレンジも、ミキティは見事に戦いきったわけですよ。これはアレンジで得してますよね。松浦、後藤が原曲に比較的近いアレンジだったのに対し、ミキティのは違った印象を与える別モノ・アレンジとなっていたわけですからね。そういう意味では、藤本美貴のファーストアルバムっていうのは、我々が思っている以上に優遇されているんじゃないでしょうか?(その反面、後藤に対するケアが悪いように感じます。特にこれを聴いてしまうと尚更‥‥)

  誰もが期待してなかった作品が、実はかなり良かった、いや、もしかしたらこれは名盤なのかもと思えるようになってきた。そういうことってたまにあると思うんですが、これが正にそのアルバムですよね。松浦や後藤に期待するあまり、誰も藤本にまでそういった大きな期待を寄せていなかったのに、最後に勝ったのは松浦でも後藤でもなく、「ごまっとう」のナンバー3であるミキティだった、と。やはり2003年のモーニング娘。を、そしてハロプロを引っかき回すのは、間違いなくこのミキティですよ!

Name  けどね‥‥手放しで「名盤!」と叫べないんですよ‥‥ジャケットのミスプリントがねぇ‥‥(「last name : Miki」「first name : Fujimoto」って‥‥逆だろ普通!?)こんな凡ミスさえなければなぁ。ま、そこも含めてハロプロらしいってことで(いや納得出来るかぁ?)。セカンドプレスからちゃんと直ってるんですかねぇ‥‥未だオフィシャルから訂正が入ってないところをみると、今後はモーニング娘。加入を機に「姓を美貴、名を藤本」と改名するのかもしれませんね!(んなわきゃないって)



▼藤本美貴『MIKI①』
(amazon:国内盤CD


投稿: 2003 02 26 12:09 午前 [2003年の作品, ハロー!プロジェクト, 藤本美貴] | 固定リンク

2003/02/22

BON-BON BLANCO『涙のハリケーン』(2003)

  BON-BON BLANCO通算4枚目、2003年初のシングルはアニメのタイアップ付き。これまで以上にラテン色を前面に打ち出して、尚かつ過去最高のBPMとテンションを持つ攻めの1曲 "涙のハリケーン" と、脳天気なパーティーチューン "White♡" という毛色の全く違う2曲を収録。これまでのようにリミックステイクが入ってないのは、ちょっと残念(結構これを期待してたんだけどね、俺)。

  "涙のハリケーン" を最初に聴いてまず思ったのは、そのテンションの高さとメロディのいい意味での下世話さ。これまでの楽曲って、どこかオシャレで品の良さがあった気がするんだけど、この曲にはあまり知性みたいなものは感じられないし(いや、今までもそんなに感じなかったけど)、なんつーか本能のみで動いてるような感じを受けたのね。ちょっと例えが違うかもしれないけど、モーニング娘。でいうところの "サマーナイトタウン" と "LOVEマシーン" くらいの違いがあるっつうか、そんな感じ。楽曲の完成度からすると(この辺はまぁ個人の趣味も加味されますが)以前のシングル曲の方が高かった気がするんだけど、そういう問題じゃないんだよね。もう、全てにおいて勢いを感じるわけですよ。

  今までのシングル、どの辺の層を狙って制作された楽曲なのかがちょっと謎な部分がありましたが(以上に完成度の高い楽曲とか、クラブ受けを狙ったかのようなリミックスとか)、今回は完全に絞ってきたように思います。そしてそれは、本日放送された「ミュージックステーション」出演時のパフォーマンスを観て、更に強く感じました。いえ、決してモー娘。の後を追うとか、そういうことじゃないですよ。

  女性の中でアイドルらしいアイドルで成功してる人達って、今あまりいないじゃないですか。それこそ、そこそこ成功してるとなるとみんなハロプロだったりするし。アーティストなのかアイドルなのかバンドルなのか、とても微妙な存在が多すぎるんですよ。女優とかまでやっちゃって、妙な幅利かせたりして。で、その割りに歌はあんまり成功してなかったり、とかね。

  で、ボンブラを見ると‥‥もう、直球勝負に出たな、と。いや、これまでもそうだったんだろうし、俺がそれに気づいてなかっただけなんだろうけど、今回は特にその力の入れ具合の違いを感じるわけ。「Mステ」出演とかもその一環だと思うし、タッキー&翼やモー娘。と肩を並べて歌うってことにも、いろんな意味合いが見えてくると思うんですよ。

  とにかく‥‥これは売れますよ。ま、大ヒットとまではいかないまでも、かなりいいとこまで行くと思う。で、後はアルバム出してブレイク間近までいって、次のシングルで本格的にブレイクするという‥‥そんなシナリオが既に出来てるんじゃないでしょうか?

  クールな一面はタイトルナンバーに任せて、アイドルらしい可愛らしい路線はカップリングの "White♡" に任せるという、ね。有名曲 "La Bamba" とか、ああいうノリのラテンナンバー。ハロプロ系がこの手ををやるとちょっと嘘っぽさを感じてしまうんだけど(いや、ココナッツ娘。とかなら違和感ないんだろうけど。ま、偏見でしょうね俺の)、やっぱりボンブラのあの佇まいを見てしまうと‥‥ラテンパーカッションがあれだけ並んでて、それを派手に踊り、ジャンプしながら叩くというね。そういうイメージが強いんで、もう曲聴いただけで絵が浮かぶんですよね。

  奇しくもモー娘。は最新シングルの中でレゲエ/ダブに接近し(「ひょっこりひょうたん島」c/w曲の "宝石箱" )、ボンブラはもっと違った方向に行く。勝手な妄想だけど、俺的にはこれだけで十分に面白い。どっちが上とか下とかの問題じゃなくて、同じ「アイドル」と呼ばれるグループが、こうやって音楽的に遊んでるという点。勿論それを作ってるのは彼女達じゃなくて、製作陣の方なんだけど、こういう風に作り手が深みのある「遊び」をドンドン試してくれることを楽しみにしてます。

  つうわけで、今夜も我が家ではボンブラがヘヴィローテーション中です♪



▼BON-BON BLANCO『涙のハリケーン』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2003 02 22 12:27 午前 [2003年の作品, BON-BON BLANCO] | 固定リンク

2003/02/21

ANTHRAX『WE'VE COME FOR YOU ALL』(2003)

80年代前半に登場したスラッシュメタルと呼ばれたジャンルの中で、そのシーンを支えた「四天王」と呼ばれたバンドがいたわけですよ。METALLICAであり、SLAYERであり、昨年春に解散してしまったMEGADETHであり、そして今回紹介するANTHRAXの4バンド。METALLICAはベースのジェイソン・ニューステッドが脱退した後、結局ベーシストが決定する前にスタジオ入りし、未だ新作完成の朗報は飛び込んで来ないし、SLAYERはドラマーのチェンジがあったりしたものの、昨年末に2年連続で来日し、改めてその凄さを我々に知らしめました。しかし、MEGADETHは先に書いた通りだし、ANTHRAXなんて‥‥もっと悲惨ですからね。

ANTHRAXなんて名前を一昨年末からよくニュースで目にしたのを、皆さん憶えているでしょうか? 「9・11」以降、アメリカ全土を襲った「炭疽菌」騒動。その炭疽菌、英語では「Anthrax」というんですね。俺、この件で初めて知ったもん、意味。皆さん知ってましたか? こんなことでもない限り、誰もその意味なんて考えもしなかったんでしょうね(その昔、WOLFSBANEというバンドがいたのですが、その意味なんて「トリカブト」ですからね。バンド名考える方もいろいろ大変なわけですよええ)。

この炭疽菌騒動が尾を引き、ANTHRAXはその活動にストップがかかってしまうんですよ。しかもそれまでメンバー各自がソロ活動を行い、よしこれから再びバンドで暴れるぞって矢先にですから。一時はバンド名変えるんじゃないか!?なんて噂もありましたが、2001年11月末、ニューヨークで行われたテロで犠牲になった消防士の為のベネフィット・コンサートにて、ANTHRAXのメンバーは「WE'RE NOT CHANGING OUR NAME」と書かれた作業服を着て登場(メンバー5人それぞれの服に「WE'RE」「NOT」「CHANGING」「OUR」「NAME」と書かれていたという、ね)、改めて「バンドのANTHRAXは炭疽菌(Anthrax)とは無関係、これからもみんなをハッピーにしてくぜ」という力強い「無言のアピール」をしたのでした。

で、今回のアルバム。実は約5年振りのアルバムなんですよね。そうか、前作『VOLUME 8 : THE THREAT IS REAL!』ってそんな前になるのか。'98年と'03年じゃそりゃ時代も変わるわな。ひと回りどころかふた回りくらいしてそうだもんな、流行が。世間がまだラップメタルだ何だと騒ぐ前だしな。メタルにラップの要素を取り入れた、というか、ラップそのものをかのPUBLIC ENEMYと共にやっていた元祖的存在が、最もそういうジャンルが主流だった時に不在だったわけですよ。これは大きいですよね。

ところが彼等、この5年振り、通算9作目のオリジナルアルバムで、一切そういう要素を用いていないんですよ。つうかANTHRAXが初めてヒップホップをやったのが87年でしたっけ?(「I'm The Manという曲)ヒップホップユニットがハードロック的要素を用いたのと同じ頃(BEASTIE BOYSの「Fight For Your Right」のことね)、同じようにメタルバンドがヒップホップの要素を取り入れてたわけですよ、既に16年も前に。けど、彼等が常に「ヒップホップ要素をメイン」にしたことなんて、一度もなかったわけですよ。それは、彼等がヘヴィメタルバンドだったから。スラッシュとかハードコアとかパンクとかいろんな要素を飲み込んだヘヴィメタルバンド、ANTHRAX。彼等がそういった方向を主要素としてアルバムを作ったことがなかったから、流行に流されることがなかったから、こうやって未だに生き残っているわけですよ。つうかもう20年ですよ、登場して!

今回のアルバムも、基本的には前作の延長線上にある作風。つうか現ボーカルのジョン・ブッシュが加わって以降のアルバム(『SOUND OF WHITE NOISE』(93年)、『STOMP 442』(95年)、そして前作)って、どれも同じ方向性を持った音楽をやってるんですよ。前任ボーカルのジョーイ・ベラドナ在籍時後期から突き進めていったヘヴィな音像を持ったミディアム/スロウでメロディアスなヘヴィメタル。それをよりモダンにさせた『SOUND OF WHITE NOISE』は初の全米チャート・トップ10入りを記録し、続く『STOMP 442』は初期のザクザクしたギターサウンドと生々しいサウンドが融合させ、更に深い方向へ進んでいくんですね。で、ちょっとだけ時流に乗ったかのようなヘヴィロック色を散りばめた前作。新作もこういった方向にある1枚なんですが、個人的には前作以上に好きなアルバムかもしれません。ちょっとセカンドの頃の彼等を思い浮かべつつも、モダンなギターサウンドが2003年らしい「What Doesn't Die」でスタートし、その後はミディアムテンポのヘヴィナンバーが続く前半。特に「Any Place But Here」なんて本来METALLICAが進むべき方向だと思うんですよ、これ。それをANTHRAXが我流でやってしまうという。そういえばジョン・ブッシュって昔、METALLICAもシンガーとして向かい入れたかったという話があったんですよね‥‥そう考えると、非常に面白い曲ですねこれ。そしてこの曲を境に、後半は更にバラエティ豊かな方向に進みます。パンキッシュでグルーヴィーな「Nobody Knows Anything」、PANTERAのダイムバッグ・ダレルが如何にも彼らしいギターソロで参加する、ちょっと風変わりなアルペジオを持った「Strap It On」、超高速ブラスト・ビートがメチャメチャ気持ちいい「Black Dahlia」なんて、サビだけ聴いたらSLAYERみたいですからね! 更に「Taking The Music Back」にはゲストボーカルとしてTHE WHOのロジャー・ダルトリーが参加。とても判りやすいので、すぐ気づくと思いますが‥‥ジョンとの対比も面白いですよね。

普通にメタルをずっと聴いてる人にとっては「取るに足らないアルバム」かもしれないけど、最近のメタルから殆ど離れている俺にとっては、とても興味深い1枚でした。特出した1曲があるとか、超名盤ってわけではないんだけど、安心して聴けるアルバム。ガキの頃から知ってる馴染みのバンドが、今でもあの頃と変わらない「音」と「歌」を聴かせてくれる。それだけで十分じゃない? 今の時代、確かに革新的なサウンドも必要だし、実際そういうアーティストも魅力的で惹かれるんだけど‥‥それだけじゃないんだよね。こういうベテランが「聴き手から求められるものを、的確に表現し、尚かつそこに留まるんじゃなくて前進している」ことを続ける限り、まだロックシーンは大丈夫だと思う。だから、METALLICAも、デイヴ・ムステインも考え過ぎだってば。セールス的に失敗することとかファンが失望するだとか、そういうことを考える前に表舞台に立って音を出し続けるANTHRAXやSLAYERの方が、俺は信用できる。メジャーとかインディーズ落ちとか関係ないよ。

これは暫くの間、ヘヴィローテーションになりそうな予感。つうかここ数年のヘヴィ/ラウド系を中心に聴いてる子達にとって、こういう音ってどうなんでしょうね? METALLICAとかは聴くんだろうけど、ANTHRAXやSLAYERといった「あくまでメタル」なバンドの音がちゃんと届いてるんでしょうか? 現役メタラーでもないくせに、妙に心配してしまうわけですよ。



▼ANTHRAX『WE'VE COME FOR YOU ALL』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 02 21 12:00 午前 [2003年の作品, Anthrax] | 固定リンク

2003/02/10

藤本美貴『ブギートレイン'03』(2003)

  「化けた。」その一言が第一印象となる、ミキティ通算5枚目、2003年一発目‥‥そしてモーニング娘。編入前最後となるであろうシングルは、とにかくいろんな意味で面白いものとなりました。

  まず、楽曲の良さ。人によっては「相変わらずつんく♂はダメ」って思うかもしれませんが、俺的にはかなりのヒット。メロン記念日「赤いフリージア」同様、発売前からかなり注目していた1曲です。こうやってCD音源にてフルコーラス聴いてみて、改めて楽曲の良さを実感。鈴木Daichi秀行らしい大味なアレンジは相変わらずですが、敢えてギターとピアノ以外を全て打ち込みで表現したことで、重いボーカルとは相反するバックトラックが生きてきたように感じられます。ギターもナチュラルなトーンを基本として、ソロパートでの歪み具合もかなり抑えられてます。そしてピアノ。タイトル通りの、ブギウギピアノプレイを堪能することが出来ます。

  そして先にも書いた、ミキティのボーカルの「重さ」。この曲一番のポイントは「シンガー・藤本美貴」の覚醒ではないでしょうか。既に既発の楽曲からも感じられていたし、何よりも「ごまっとう」での後藤真希や松浦亜弥との比較で、よりその特異性が際立ったのではないでしょうか。今回、ブギウギということで、かなり乱雑で蓮っ葉な歌唱スタイルで、尚かつ所々に飛び込んでくるファルセットや男っぽく喉をギュッと締め歌ったり等、これまで以上にいろんな技術を要する楽曲となっていますが、彼女はこれを見事にこなしています。彼女のこれまでの歌唱は、伸ばすフレーズの末音が不安定気味で、それが微妙なビブラートと相俟って、後藤とも松浦とも違った「個性」として受け入れられてきたり、また他の二人と比べてもかなり声質が太く、そしてベタっとした重さを持った、ハロプロ内でもかなり独特なものだと俺は認識しています。アイドルアイドルした楽曲("そっと口づけて ギュッと抱きしめて"や"ロマンティック 浮かれモード")でも決して媚びたような歌い方ではなく、自己主張を感じさせるような力強さすら感じられたと思います(逆にいえば、そういう危うさの希薄な点が、後藤や松浦と違って彼女をアイドルとして数歩劣った見方をさせていたのかもしれません)。

  しかし、俺はミキティにはそういった路線ではなく、もっと男性的な路線を与えることで、逆に彼女の女性らしさ‥‥艶っぽさのようなものが強く感じられるようになるんじゃないのかな?なんて思ってまして。「ごまっとう」で与えた路線も確かに面白いものではありましたが、やはり今回の楽曲を歌いこなすミキティを知ってしまうと「やっぱりこれだよ!」と思うわけです。

  歌唱スタイル、ちょっとした節回しは完全につんく♂のそれなのですが、ここまでコピーするか!?というような細かな癖(吐き捨てるような語尾の微妙さ等)も見事にトレースし、同じ「つんく♂作品」でも松浦や後藤とは全く異なる空気感を持った1曲となってます。後藤や松浦もかなりつんく♂歌唱のトレースは上手いと思いますし、ミキティのそれはまだふたりには追いついていないかもしれませんが、この微妙なさじ加減が個人的にはかなりツボなんですよね。

  とにかく、最初の歌い出し。これだけでもかなりゾクッとしますよ。ああ、ミキティもいよいよここまで来たか‥‥と思わずにはいられません。

  一方、カップリング曲の"大切"は、お馴染みAKIRA氏による今風のR&Bテイストのポップソング。とはいうものの、バックトラックがそれ的なだけで、メロディラインや全体の雰囲気はそこまで黒っぽくはなく、路線としてはメロン記念日「香水」に近いといえます。ここで聴ける抑えた歌い方は、前作"ボーイフレンド"カップリングの"幼なじみ"でのそれですね。メロディ的にも近いものを感じますし。こういう切ない感じの曲になると、彼女の力の抜き具合がどの程度上手くできるかで勝敗が決まるわけですが、今回もいい感じになっているんじゃないでしょうか。ただ、もっと緩くてもいいかなぁ‥‥と、個人的な趣味だとそう感じますけどね。ま、この辺は人それぞれの感じ方があるでしょうから、一般的に見れば結果オーライかもしれませんが。

  タイトルナンバーではアッパーで男っぽい力強さを誇張し、カップリング曲では女性的な切なさを表現。シンガーの表裏をみせる1枚のシングルとしては、上出来じゃないでしょうか? 昨年出たどのシングル曲よりもこのシングル収録の2曲が好きですね、俺。如何に今の藤本美貴が波に乗ってるか、(それが事務所の綿密な策略だとしても)如何にして彼女がモーニング娘。編入への切符を手にしたのかを感じさせるに十分な出来となってるのですからね。



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投稿: 2003 02 10 12:24 午前 [2003年の作品, ハロー!プロジェクト, 藤本美貴] | 固定リンク

2003/02/07

Theピーズ『Theピーズ』(2003)

  もう、このアルバムに関しては下手な言葉はいらないと思います。つうか、オススメしておいて、レビューを放棄したいと思います。

  俺の言葉以上に、ここに収められた12曲が、全てを物語ってくれてます。

  「おいおい、毎月このオススメ盤レビューを期待してるのに、手抜きかよ!?」とお怒りの人。騙されたと思って、すぐCD屋に向かいなさい。そして買いなさい。話は聴いてからです。

  だって‥‥近所のCD屋7軒回っても何処にも売ってなくて、仕方なくて今日、会社を早退して高速道路に乗って、往復の交通費がCD代金よりも高くかかるところまで買いに行って、帰り道で3回は通しで聴ける距離を、爆音で聴きながら、車ブッ飛ばしながら帰ってきたんですから。少なくとも俺にとって、それだけの価値がある1枚だということです。これでオススメ文、十分じゃないですか?

  このアルバムに多くの言葉は要らないです。ただ一言、付け加えるとしたら‥‥2003年に入って40日にも満たない現時点で、このアルバムは今年度のベストアルバムに決定です。なので、ちゃんと買って聴いて、それで皆さんそれぞれが、それぞれの心の中でレビューしてみてください。いや‥‥レビューなんて要らないか。

  今日この日、こうやって生きていられること、そしてこのアルバムに出会えたことに感謝。



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投稿: 2003 02 07 03:57 午前 [2003年の作品, ピーズ, The] | 固定リンク