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2004年1月13日 (火)

QUEEN『MADE IN HEAVEN』(1995)

すでにいろんなところで話題になっているのでご存知の方が多いと思いますが、QUEENの名曲群がテレビドラマの主題歌や挿入歌として起用されました。いわゆる「月9」枠でのドラマ、しかも主演は……ってここで書くまでもないか。僕なんかよりも、皆さんのほうがよくご存知でしょうからね。

で、このドラマの主題歌に起用されたのが、今回紹介するQUEENのアルバム『MADE IN HEAVEN』に収録され、何度もCMソングに起用されている名曲中の名曲、「I Was Born To Love You」だったりするんですが……これってどうなの? 安直かな??という気がするんだけど。ベタとか言わないよ。けどさ……よりによってQUEENの、しかもこの曲なのな。個人的にはね、この『MADE IN HEAVEN』ってアルバムに関して、そしてそこに収録されている楽曲に関して、非常に「聖域」みたいに感じてるところがあるので、できるなら一番やってほしくなかったことなんだよね。まぁ今回のドラマによって、それまでQUEENを知らなかった層に対してもアピールして、どんどん消費されていくのもまた彼ららしいかな、という気もしないではないけど。

さてさて。知らない人のために、この作品について解説しておきますと……『INNUENDO』(1991年)のレビューで触れているとおり、QUEENのシンガー:フレディ・マーキュリーは1991年11月24日に亡くなっています。が、この『MADE IN HEAVEN』がリリースされたのはそれから4年後の1995年11月。ここに収められている楽曲の大半がその時点で未発表だった楽曲であり、また残りの楽曲は過去にフレディやブライアン・メイ、ロジャー・テイラーがソロ名義で発表してきた楽曲の、フレディが歌うQUEENバージョン。つまり、これは正真正銘の「『INNUENDO』に続く、QUEEN通算15作目のオリジナル・アルバム」なのです。

フレディは自身の健康状態が芳しくなく、そう長くは生きられないであろうことを察したのか、1986年リリースの『KIND OF MAGIC』に伴うツアー終了後、ライヴという表舞台から遠ざかり、ただひたすら作品作りに没頭するようになります。バンドのメンバーも彼の意向に添い、それに付き合うわけです。そうやって完成したのが1989年の『THE MIRACLE』であり1991年の『INNUENDO』だったのです。当初、1990年頃に『GREATEST HITS』の第2弾をリリースしたいとレコード会社から打診されたそうですが、どうしても先にオリジナル作品を出しておきたいというフレディの意向から、ベストが後回しにされ、先に『INNUENDO』がリリースされた、なんていう逸話もあるほど、晩年のフレディの創作意欲は半端じゃなかったと(のちにそのベスト盤は『INNUENDO』からのヒット曲も含んだ『GREATEST HITS II』として1991年11月上旬、つまりフレディが亡くなる数週間前にリリースされたのでした)。

『INNUENDO』リリース後のQUEENおよびフレディは、そこからのシングル用にMVも数本制作しつつ、さらに次作のレコーディングに挑んだようですが、結局アルバム1枚分には至らず。フレディの病状も悪化し、そのまま帰らぬ人となってしまったのです。

当時、恐らく誰もが「二度とQUEENのニューアルバムは聴けない」と思っていたはずです。事実、1992年4月に行われたフレディのトリビュートライヴ以後、残されたQUEENのメンバーはそれぞれにソロ活動を開始し、特にブライアン・メイは「Driven By You」といったヒット曲も連発し、順風満帆といった感じでしたしね。しかし、彼らは秘密裏にこの『MADE IN HEAVEN』のために追加レコーディングや編集作業を行っていた。そして、1995年に入る頃には「QUEENの未発表曲集が出るかも!?」という噂が飛び交うのです。

実際にリリースされたアルバムは、未発表音源集と呼ぶにはあまりにも「QUEENのアルバム」然としていて……しかも、こんなにもポジティブなアルバムが完成してしまうとは。誰もそんな作品が手元に届くとは思ってもみなかったでしょうね。『INNUENDO』が厳かで、どこか悲壮感が漂い、「終末感」が強い作風だったこともあり、その落差に驚いた人は多かったはず。けど、このポジティヴさこそがフレディ・マーキュリーであり、QUEENであった、と。この世を去ってから4年経ち、忘れた頃にいきなり届けられた、まるで生きているかのような語り口調の手紙。それがこの『MADE IN HEAVEN』なんです。

先に挙げた「I Was Born To Love You」や「Made In Heaven」といった楽曲はフレディのソロアルバム『MR. BAD GUY』(1985年)に収録され、シングルとしても中ヒットを記録したナンバー。ソロアルバムの音源からボーカルだけを抜き取り、バンドとしてバックトラックを録音して差し替えたテイクです。また、「Heaven For Everyone」はロジャーのソロユニット・CROSSが過去に発表した楽曲で、その音源でもフレディがゲストボーカルとして参加していたことから、ボーカルを抜き出しバックトラックを再録音したテイク。さらに、「Too Much Love Will Kill You」はブライアンがフレディの没後にリリースしたソロシングルのQUEENバージョンで、当然ここで歌っているのはフレディ。この曲が公の場で初披露されたのは先のフレディ・トリビュートライヴで、ブライアンによるエレピでの弾き語りが印象的だったこの曲も、まさかQUEENバージョンが録音されていたとは誰が想像したでしょうか? 事実、僕も最初にトリビュートライヴでこの曲を聴いたとき、フレディのことを想って書いた曲かな?なんて思ったほど。あ、けどあの時のMCで「古い曲」ってブライアンが言ってたような記憶が……あとでビデオを観直してみよう。

とまぁ、全11曲中4曲が既発曲で、残りの7曲(別バージョンも含むので実際には6曲)が本邦初公開、正真正銘の新曲。アルバムはいきなりフレディのポジティヴな声明である「It's A Beautiful Day」からスタート。過去、「I don't wanna die~」と歌っていた男が、死を目前にして「It's a beautiful day~」と声高らかに歌うわけですよ……もうね、それだけで号泣モノ。このアルバムのテーマともいえる1曲ですね(事実、アルバムは最後にもう一度この曲が歌われて幕を閉じるのですから)。非常に「愛に満ちた」アルバム。それは愛する女性や男性に対してだけではなく、家族であったり、仲間であったり、そしてもっと大きく……世界中すべての人々に対してだったり。フレディは最後まで愛を送ることを惜しまなかった。それを証明したのがこの作品といえるでしょう。

そしてフレディだけではなく、彼を支えるほかの3人の、フレディに対する愛情もこれでもか!?というほどに堪能できる作品でもあるわけです。アルバム1枚に満たない程度のボーカルトラックしか残されなかった状態から、こうやって1枚のまとまりあるアルバムに仕立て上げた事実。1曲としてみた場合、あまりにフレディが歌うパートが少なかったことから、ロジャーやブライアンにもソロパートを設け、まるで本当に「QUEENが一丸となって作った楽曲」に聴こえる、いや、実際にそう仕上がった「Let Me Live」や「Mother Love」といった名曲たち。

優しく歌うフレディをさらにもり立てる演奏。個人的にツボなのが「A Winter's Tale」なんですよ。これ、どうってことのない曲なのかもしれないけど、ここでのブライアン・メイのギタープレイがね、ホントに良いんですよ。音数が少ないながらもちゃんと自己主張し、なおかつフレディの歌の領域までは侵さないという、絶妙なギターソロ。彼の派手なプレイは今までいくらでもあったし、味わい深い感動的なプレイも沢山あった。けど、こういったプレイは過去なかったんじゃないか?なんて思えたんですよ。なんかね、それだけでこう胸が熱くなるというか。うん、本当にフレディはメンバーに愛されていたんだな、というのが実感できる1曲です。

アルバムは再び「It's A Beautiful Day」で幕を閉じるのですが、オープニングと違い(オープニングではフレディのピアノ弾き語り風)、途中からバンドサウンドが被さるんですけど、それがね……過去の名曲群をサンプリングしたものだったりするのね。コラージュっていうんですか? で、そのまま20分近く続くシークレットトラックで余韻を引きずったまま、気づいたら終わっているという。まるで夢でも見ていたかのような錯覚に陥るわけですよ、この終わり方。そう、本当に夢を見たんです。このアルバムを聴いた人たちみんなが、目の前でフレディ・マーキュリーを含むQUEENが再び現れて、新曲を演奏していく夢をね。

このアルバムに対する評価ってホント分かれると思うんですが……個人的には『INNUENDO』が最終章であり最終回、そして『MADE IN HEAVEN』は後日談的なエピローグ、というふうに捉えています。いかがでしょう?

……ほらね? 本当に心底好きなアーティストについて書こうとすると、こんなに長くなっちゃうのよ。これでわったでしょ、何で僕が今までそんなにQUEENの作品を取り上げてこなかったかが。そして、いかにこのアルバムが自分にとって意味のある1枚か、ということも。だからこそ、キムタクごときに汚されたくなかったんだけどなぁ……まぁあのドラマを観てQUEENに少しでも興味を持ったなら、CCCDではないこのオリジナル盤をまず聴いてみてください。手っ取り早いベストには収まりきらない、彼らの本当の魅力がタップリ詰まってますから。



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