BACKYARD BABIES『STOCKHOLM SYNDROME』(2003)
前作『MAKING ENEMIES IS GOOD』から約2年半振りに届けられた、BACKYARD BABIES通算4作目のオリジナルアルバム『STOCKHOLM SYNDROME』。日本でその地位を確立したセカンド『TOTAL 13』と比べて明らかにスピード感を抑えたその作風に賛否両論だったけど、今回はどうだろう……スピード感とか爆走ロックにこだわるファンにとっては今度のアルバムも期待を裏切る内容なのかもしれないね。けどさ、そうじゃねぇだろ?と。そういった点でここ日本でブレイクしたからといって、それを水増しし続けて作品を重ねていくことを選ばなかった時点で、俺はこのバンドを信用できると思ったし、何よりもソングライティングの能力がアルバムを重ねる毎に向上し続けているんだから……そこに焦点を当てた場合、このアルバムは間違いなく過去最高の完成度を誇る1枚と呼んでいいと思います。
今回のアルバムの面白い点って、俺はそういった楽曲面での向上と、そして「聴く人によっていろんな聴こえ方をする」という点だと思うのね。例えばさ、俺はこのアルバムを「80年代末以降に登場したアメリカン・パンクの流れを汲む」作風だと思ってるのね。ところが、別に人に言わせると「LAメタル的」だと解釈され、また別の人は「オルタナの延長線上にあるダークな作風」と解釈し、またある人は「北欧らしさをこれでもかと強調したポップなロックンロール」と解釈。自分の周りの人間だけでも、これだけバラバラな解釈をしてるわけですよ。で、全員の言ってる意味も理解できるのね。確かにそういった要素も十分感じるし。けど、絶対にそれだけに固執してるわけでもない。恐らくそういった路線を狙ってるようで、実は全く狙っていない……限定しないからこそ人によっていろんな解釈ができ、いろんな魅力が見えてくる。そんなアルバムじゃないですかね、これ。
で、メロディーだけを抜き出してみると、確かに「哀愁漂う北欧さしさを強調」してるようにも感じられる。けど俺の場合、特に今回のアルバムの楽曲を聴いてると、例えばアメリカのBAD RELIGION辺りに共通する色合いを感じるのね。そこから「80年代末以降に登場したアメリカン・パンクの流れを汲む」作風と解釈したんだけど。勿論、BAD RELIGIONだけでなく、いろんなバンドからの要素も感じるわけですよ。それは決して借り物じゃなくて、ちゃんと「BACKYARD BABIESのオリジナル」として昇華できてるからさすがなわけで。
確かに、ここにセカンドにあったようなスピード感が加われば無敵だったかもしれません。けど、2003年の彼らはそれを選ばなかった。何故なら「周りがやってるから」でしょうね……他人と同じことをやっても……っていう「別に俺等はそれがなくても勝ち続けられるぜ?」的な自信の表れとでもいいましょうか、とにかくそんな心強さをアルバム全体から感じるわけ。速い曲もあるにはあるけど、アルバムの核を形成するのはあくまでミドルテンポの楽曲達。ミドルテンポにすることで、更にメロディの素晴らしさを際立たせようという試みなのか……だとしたら、思いっきり大成功してますよね。シングルにもなった「Minus Celsius」という曲があるんですが……これ、完璧過ぎませんか? 前作以降、彼らが目指していたモノの完成形がこれなんじゃないか?と思える程、素晴らし過ぎるんですよ。マイナーキーで、アッパーミドルテンポで、適度に隙間があって、メロウで、ギターがカッコ良くて、男臭くて……俺が今、このバンドに求める要素の全てがこの曲に凝縮されているんです。名曲。名曲中の名曲。誰が何と言おうと絶対に食い下がらないからね。名曲なんだからさ。
勿論、他にもいい曲が沢山あるし、適度にスピード感がある曲も後半に進むに連れて登場するし、前作に引き続きドレゲンがリードボーカルを取る「One Sound」もある。AC/DC的なノリを持つ「Friends」ではゲストとしてマイケル・モンロー(HANOI ROCKS)、今は亡きジョーイ・ラモーン(RAMONES)、昨年のフジロックにも出演したダンコ・ジョーンズ、タイラ(DOGS D'AMOR)、ニナ・パーソン(THE CARDIGANS)、コリー・クラーク(元WARRIOR SOUL)がそれぞれ数小節分の歌詞を書き、それぞれのパートを自ら歌っていて、コーラスにTHE HELLACOPTERSやL7のメンバーが参加しているという、正に曲名通りの「酒呑み友達によるパーティーチューン」に仕上がってるし、ノリ的に一辺倒だった気がする前作と違いかなりバラエティ豊かに仕上げたように感じます。これもアメリカ人プロデューサー、ジョー・バレッシによるところが大きいのでしょう。そして、そういったことが上手く影響したのか、前作以上に「Roll」しまくってる作品に仕上がった。これもスピードを抑えた結果なのかもしれませんね。
多分、このアルバムも賛否両論激しいんでしょうね。けどそれくらいでいいと思いますよ。全然話題にならない/印象に残らないアルバムではない、強過ぎる程の個性を持った作品集なんだからね。
▼BACKYARD BABIES『STOCKHOLM SYNDROME』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD)
« モーニング娘。おとめ組『友情 ~心のブスにはならねぇ!~』(2004) | トップページ | DEFTONES『DEFTONES』(2003) »
「Backyard Babies」カテゴリの記事
- SAMI YAFFA『SATAN'S HELPERS, WARLAZER EYES & THE MONEY PIG CIRCUS』(2024)(2024.03.15)
- THUNDERMOTHER『HEAT WAVE』(2020)/『HEAT WAVE (DELUXE EDITION)』(2021)(2021.06.05)
- 2019年総括:③HR/HM、ラウドロック編(2019.12.31)
- BACKYARD BABIES『SLIVER & GOLD』(2019)(2019.03.09)
- BACKYARD BABIES『DIESEL & POWER』(1994)(2019.02.07)
「2003年の作品」カテゴリの記事
- LINKIN PARK『METEORA: 20TH ANNIVERSARY EDITION』(2023)(2024.04.18)
- 2003年4月〜2004年3月発売の洋楽アルバム20選(2024.01.08)
- BLACK LABEL SOCIETY『THE BLESSED HELLRIDE』(2003)(2023.03.22)
- 2002年4月〜2003年3月発売の洋楽アルバム20選(2023.01.09)
- KISS『KISS SYMPHONY: ALIVE IV』(2003)(2022.12.05)