DEFTONES『DEFTONES』(2003)
前作『WHITE PONY』(2000年)から約3年半振りに届けられた、DEFTONES通算4作目のオリジナルアルバム。このタイミングにセルフタイトルのアルバムを発表するということは、恐らくそれなりに自信があるのか、それともこれまでの活動の集大成となるような作品になるのか。とにかく、前作があまりにも恐ろしい傑作だったこともあり(そして予定されていたフジロックのキャンセル等、いまだに大ブレイク後の来日が果たせていないことも付け加えて)いろいろ期待していたのですが……。
ニューメタルとかスクリーモとかいろいろ呼び名はあると思うんですが、こういった“ポストロックとのクロスオーバー”的サウンドを実践した先駆者として、今後フォロワーとの差別化を図るためにどういう方向に進んでいくのか。この3年間にニューメタルと呼ばれるタイプのバンドは飽和状態に陥り、平凡なバンドはどんどんと消えていき、成功を収めたバンドはさらに自らの個性に磨きをかけ独自の方法論で新作をリリースしていく。そんな中、このDEFTONESだけはしばらく沈黙を守り続けていたような思えます。
海外からツアーやフェスなどに参加した情報は伝わってきたものの、やはり前作に伴う来日公演が実現しなかったことから、ここ日本では盛り上がりに欠け、いまだに「どこがそんなに凄いのか!?」といった感じで静止するロックファンが多いのではないでしょうか。考えてみれば過去、彼らが来日した際にはクワトロクラスでのツアーでしたからね。それだけ観た人が限られるわけで……だからこそ、フェスのような大舞台で彼らの魅力を余すところなく見せつけてほしかったんですけどね(結局、この『DEFTONES』リリースから1年近く経った今現在においても、来日は実現していません)。もしかしたら彼らって、2001年までのTOOLに近いものがあるのかもしれませんね(あれは初来日だったけど)。
そんな彼らの新作、悪いわけがない。いや、普段ヘヴィロックやラウド系をバンバン聴いてるファンにとっては、この程度のラウドさは日常茶飯事でしょう。しかし、最近この手のバンドを聴く機会が少なくなった自分からすると、良い意味で聴きやすいサウンドなんですね。もちろん、依然ラウドなサウンドには違いないのですが、前作あたりから顕著になりだした「RADIOHEADやMOGWAIなどにも通ずるポストロック感」が一部の楽曲で激化しているように感じます。
頭数曲はこれまでの流れを汲むミドルテンポのヘヴィナンバーで、適度にグルーヴィーで気持ちいいのですが……3曲目「Minerva」あたりから、少しずつですがMOGWAIあたりの色合い……静と動のコントラストを強調したアレンジが強まります。5曲目「Deathblow」になると、もはやラウド系やニューメタルということさえ忘れそうになるくらい空気が変わり、打ち込みを多用した8曲目「Lucky You」になると完全に『AMNESIAC』(2001年)あたりのRADIOHEADとイメージが被り、10曲目「Anniversary Of An Uninteresting Event」ではそのRADIOHEADやMASSIVE ATTACKの色合いすら感じられる……すでにラウドロック/ニューメタルなんて域を完全に抜け切っていることに気づかされます。ゴスとも違うダークさ、例えば同時期にリリースされたEVANESCENCEと比べても、まったく方向性や到達する場所が異なることに気づくはずです。
が、そういった要素だけでアルバム全体が覆われているわけではなく、それはあくまで「バンドとしての、何分の一かの個性」であり、残りの楽曲はこれまでのフォーマッ……いわゆるニューメタル/スクリーモの系譜に属するものなんですね。そこがその手のファンにとっての安心要素であり、かつ残念な点でもあるんですが。完全に向こう側に突き抜けることなく、あくまでこっち側に居座ってその居場所の面積/間口を広げている。それがDEFTONESの立ち位置なのかな、と。
もちろん、それはそれで否定しませんが、NEUROSISのようなバンドもいるわけですし、今後はラウド系だけでなく、そういったポストロック系との付き合いも深めてみてはどうでしょうね? この手のサウンドを好むポストロック系アーティストも多いでしょうし、最近では普通にUKギターロックバンドでも、こういったバンドとツアーをする人たちがいるみたいだし。そうやってどんどんクロスオーバーを重ねていき、次のアルバムでは更なる“深化”を進めていってもらいたいものです。
やっぱり僕がこのバンドに望むのは、現状維持しつつ間口を広げていく形ではなく、いっそのことあっち側に完全に振り切って、「ポストロック側から鳴らされるラウドロック」という手法でアルバムを1枚作って欲しいんですけどね……ちょっとズレてますかね?
ま、とにかく。前作やこのアルバムを引っ提げて、是非再来日してもらいたい。今年のフジロックやサマソニ……一気にブレイクするチャンスだと思うんですけどね。
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