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2004年2月 4日 (水)

安倍なつみ『一人ぼっち』(2004)

モーニング娘。卒業から10日経った2月4日。安倍なつみは「モーニング娘。の安倍なつみ」から「ソロシンガー・安倍なつみ」としての第一歩を踏み出しました。その第一歩とは初の単独ミュージカルのスタートであり、同時にこのソロアルバム『一人ぼっち』の発表でもあるわけです。まだ彼女の喪失から立ち直っていないファンも多いかと思いますが、最終的に「進む」ことを選んだのは安倍本人なのだ、そう信じているからこそ、俺はこのファースト・ソロアルバムにも失望することもなく、また過剰な期待を寄せることもなく、とてもフラットな状態で臨んでいけたのかもしれません……。

既に一部では「新曲が少ない」「やっつけ仕事で作られた感が強い」といったネガティブな声が聞こえてきていますが、最終的には自分の耳を信じよう、そう思いこのアルバムを手にしました。さて、1曲ずつ簡単に解説していきましょう。

●M-1:22歳の私
2003年8月リリースのソロ・デビューシングル。詳しいレビューはこちら。言うまでもなく、彼女の「モーニング娘。卒業へのカウントダウン」はこの曲からスタートしたといっていいでしょう。「彼女自身のこれまで、そしてこれからを示唆するような内容」というようなことを書いたら、一部の方から「そういう風に限定されない、もっと広意義なことを歌ってるんだよ」と指摘を受けました。勿論そんなことは判ってますよ。でもね、歌の解釈はひとそれぞれでしょう。それを踏まえつつも、やはり俺はどうしてもこの曲の歌詞を「安倍なつみ」本人と重ねてしまう。それはそんなにいけないことなのでしょうか?……と、アルバムとしては結構重い雰囲気でスタートしていきます。

●M-2:Memory 青春の光(安倍 Version)
1999年2月リリースの、モーニング娘。として4枚目のシングル曲の安倍ソロバージョン。オリジナルバージョンは安倍と福田明日香によるツートップの良い面を強調した、非常にしっとりとした味わい深い名曲でした。今回は安倍のボーカルを除いて全てオリジナル・バージョンとまま。だから当然バックトラックも豪華だし(NYにて録音された、名うてのR&B/フュージョン系スタジオ・ミュージシャンによるバックトラックがもう生唾モノ!)、コーラスも録音当時のモーニングによるもの。ま、オリジナルよりもコーラスの音量が抑え気味ですけどね。安倍のボーカルは確かに成長を感じさせるものになってると思います。そりゃ17歳の歌と22歳の歌とを比べるのはね……それなりに経験も積んできただろうし、それがちゃんと歌に表れてると個人的には感じますよ。ただ、原曲にあった「エロさ」が殆ど感じられなくなってしまった点に関しては残念というか。もうそういったモノをつんく♂自身も、そして聴き手も求めてないんでしょうね。

●M-3:恋した女の子どすえ
アルバムの為に用意された新曲その1。アレンジャーは鈴木俊介。打ち込みを多用したヘヴィなロカビリーといった印象で、ギターの歪み具合とノリが気持ちいい1曲に仕上がってます。安倍のボーカルも、例えばモーニング時代の「Mr.Moonlight ~愛のビッグバンド~」辺りで聴けた男らしさを強調したものになっていて、特にここではムスムン以上にハードボイルドな印象を受けます。モーニング時代は「こういうのって安倍に合ってないのかな?」なんて思ったこともあったけど、とにかくソロとして「バラエティ豊かな歌い手」を目指そうとしてるのか、思った以上にハマっています。うん、かなりいいですね。藤本美貴辺りが歌ったらもっとハマったんだろうけど……。

●M-4:晴れ 雨 のち スキ♡(安倍 Version)
2003年9月にモーニング娘。さくら組デビューシングルとして発表された曲の、安倍ソロバージョン。原曲のレビューはこちら。つい最近の曲っていうのもあるし、さくら組のテイクが耳に馴染んでることもあってか、全編安倍の声で歌われるとちょっとだけ違和感がありますね。ま、その違和感が消えるのも時間の問題かと思いますが。これもバックトラック等は原曲のまま。矢口真里による高音コーラスがそのまま残されているのが、個人的には嬉しかったなぁ。矢口のこういうコーラスの声は、とにかく気持ちいい。タンポポ時代からずっとそうだけど、最近そういう機会が減ってるだけに……もっと「歌手」として使ってあげてください。

●M-5:…ひとりぼっち…
アルバムの為に用意された新曲その2。アレンジャーは小西貴雄。安倍と小西の相性ってホントに悪いんだよなぁ……ってずっと思ってたんだけど、ここではかなりいい味を出していて、アルバムの中でもひと際印象に残るトラックとなっています。例えば、モーニングでいうと『3rd -LOVEパラダイス-』辺りでやってそうなことを再び‥‥といった印象でしょうか。バックトラック自体は全部打ち込みなんだけど、それも全然嫌味じゃないし、むしろここでメインになるのは安倍による多重録音コーラスなのだから……うん、こういう方向性でもっといろんなことに挑戦して欲しいな、彼女には。

●M-6:黄色いお空でBOOM BOOM BOOM(安倍 Version)
2000年3月にシャッフルユニット・黄色5で発表された曲の、安倍ソロバージョン。原曲のレビューはこちら。これもバックトラックは当時のまま……と思ったら、ラップが被せられてる! 始まってすぐにラップが入ってきてビックリ。ま、曲をぶち壊す程の酷さではないし、ボリューム的にも抑えられてるので、そんなに気にならないかも。安倍のボーカルも当時のテイクと比べても格段の成長をみせていると思うし、何よりもこうやって安倍の歌声を思う存分堪能出来るって意味では、本当に有り難いと思います。ちなみに、この曲でサックスを吹いてるのは、DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENやSPANK HAPPYでお馴染み、菊地成孔。ファンの間では有名なエピソードですね。

●M-7:あなた色
アルバムの為に用意された新曲その3。アレンジャーは鈴木Daichi秀行。Daichiが得意そうなラテン系打ち込みダンスチューン、といった印象かな、大雑把に言うと。全編打ち込みなので、全体を覆う安っぽさだけは拭えないんだけど……それでもこれ、結構いいと思うのは俺だけ? 例えば過去にDaichiが手掛けたこの手のタイプの曲と比べても、俺は今回のが一番優れてると思うんですけど。多分、安倍が歌っているというのも大きく影響してるとは思いますけど‥‥やっぱり安倍って、ダンス☆マン的ファンク路線よりもこういった路線や上記のカバー曲にあるようなR&B色が強い緩い路線の方が合ってるよな、うん。改めて実感しましたね。

●M-8:トウモロコシと空と風
2000年4月にリリースされたコンピレーション盤『プッチベスト ~黄青あか~』に収録されていた、安倍にとって事実上初のソロ楽曲。レビューはこちら。この曲のみ特に「New Version」とかその手の表記がないので、多分当時と同じテイクだと思います。ボーカルもこの曲のみ妙に若々しいし、今程艶っぽくもない。悪くないんだけど、この中に入っちゃうとね……ちょっと浮いちゃうという。勿体ないなぁ。折角だからこれも録音し直せばよかったのに。けど、「18歳」の少女だった安倍……その「18歳らしい歌声」を味わえるという意味では、これはこれでアリなのかな。曲の良さに関しては言うまでもないでしょう。シャンプーのCMが懐かしいよね、うん……。

●M-9:ふるさと(安倍 Version)
1999年7月リリースの、モーニング娘。通算6枚目のシングル曲の、安倍バージョン。といっても、そもそもこの曲の原曲の時点で「安倍ソロ」なわけでして、要するに今回ボーカルを録音し直して、更にストリングスを追加して今まで以上に劇的に盛り上げるアレンジにしてしまった、と。1/25のラストを彷彿させる劇的さもあり、また安倍のボーカルもオリジナルバージョンよりも方の力が抜けた印象で……ふと、あの日の夜を思い出してしまいます。しかもコーラスはモーニングによるものをそのまま使ってるわけだし(ま、このオリジナル音源録音に参加しているメンバーで今でも残ってるのは飯田と矢口だけなんだけど)……この曲を今後、安倍はひとりで背負っていくわけか……。

●M-10:腕組んで帰りたい
アルバムの為に用意された新曲その4。アレンジャーは高橋諭一。バンドサウンドを用いた、非常に「安倍なつみ」のイメージにぴったりなポップロック。これもいい曲だなぁ……なぁ、どうするよ、安倍にこの歌で歌ってるようなことを言われたりされたりしたら……なぁ、どうするよ?(クドイってば)ある意味、一番「等身大の安倍なつみ」に近い楽曲かもしれませんね、全てにおいて。モーニング時代の「せんこう花火」や「男友達」にも通ずる「色」と「空気」を持った1曲。ライヴでなら本編ラストに演奏されそうなイメージ‥‥そう、安倍は後藤真希や松浦亜弥とは違って、こういったイメージが強いんですよね。だから……現実的には少ないだろうこの手の曲を大切にして欲しいと思います。

●M-11:母と娘のデュエットソング
2003年5月に「おけいさんと安倍なつみ(モーニング娘。)」名義で発表された、安倍ソロ活動へのプレデビュー盤。レビューはこちら。前曲の空気をそのまま受け継いだノリで、この繋ぎは個人的には大成功だと思います。つうかこの曲、ここにしか持ってきようがないわな。ライヴだったらアンコール1曲目、本編ではなくて番外編といった印象かな。アルバム本編は前の曲で終わって、ここからの2曲はむしろボーナストラックとして考えた方がよさそうですね。

●M-12:ピ~ヒャラ小唄
2003年11月にアニメ映画「とっとこハム太郎」の為に、映画内キャラクターの「プリンちゃん」名義で発表された楽曲。レビューはこちら。ボーナストラックとして考えれば特に気にならないかな。本編は本編で充実してるので、これはおまけとして受け取った方が良さそうです。ムキになって「こんなクズ曲入れやがって!」って怒ってもねぇ……折角のアルバムが台無しじゃないかい?


●総評
多分、未だに安倍の卒業を受け入れられずにいる人にとっては、これ以下はないって程に酷いアルバムなんでしょうね。うんうん、その気持ち、判らないでもないですよ。

けどね、だからこそ俺は声を大にして言いたいのさ……

いいアルバムじゃんか、これ!

大体さ、既出の曲やモーニング等のソロバージョンは、原曲が良いんだから悪いはずがない。そしてアルバムの為に用意された新曲4曲も、非常にバラエティに富んだ内容で、良くいえば「安倍のいろんな魅力や可能性を魅せて」くれるし、悪くいえば「統一感がない、安倍をどんな方向に持っていきたいのか、製作陣も決めあぐねている」といった感じでしょうか。でも俺は、敢えて前者の意見を取りたいと思います。

モーニング娘。として6年間やってきたことを無駄にすることなく、それを踏まえた上で更にもう数段上に行くには……その課題がこのアルバムに詰め込まれているような気がします。そういう意味ではこの「一人ぼっち」というアルバム、“ファースト”アルバムではなくて、“ゼロ”アルバムなのだと個人的には解釈しています。これは「ソロシンガー・安倍なつみ」としての第一歩というよりは、「モーニング娘。として活躍してきたシンガー・安倍なつみ」としての、これまでの集大成であり、「本当のファーストアルバム」への“プレ”ファースとアルバムなのだ、と。

そう考えると、これが「やっつけ仕事」などではなくて、「今後の彼女の活動にとって、必要だった作業」だったのだと解釈することができます。ま、物事視点を変えるだけで、ポジティブにもネガティブにもなれますからね。俺はこのアルバム、一発で気に入ったし、そして購入してから既に4~5回ぶっ続けで聴きまくってます。決して「名盤」とは呼べない1枚なのですが、心に残る1枚にはなり得るよな……自分にとっては、そういう作品になりそうです。じゃなかったら、ワザと「今月のオススメ作品」になんか選出しませんよ! そう、上記のようなモーヲタにある種喧嘩を吹っかけてるようなもんですからね(別にホントに反論して欲しいとか、そういう意味じゃないですからね)……。

別に俺は安倍のファンでもないし、安倍に強い思い入れもないし、彼女のモーニング娘。卒業発表に対しても何の感想もなかった。けど、俺は彼女が歌う曲が好きで、彼女の歌声が好きなんです。それで十分じゃない?



▼安倍なつみ『一人ぼっち』
(amazon:国内盤CD

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