SKUNK ANANSIE『POST ORGASMIC CHILL』(1999)
今回紹介するこのSKUNK ANANSIE。既に2001年春に解散しているバンドで、この「POST ORGASMIC CHILL」というアルバムは'99年春に日英で(アメリカは夏)リリースされた通算3作目にしてラスト作となってしまった1枚。当時、殆ど話題にならなかったように記憶してるんだけど‥‥悪いけどこれ、名盤よ? もし彼らの存在すら知らなかったって人がいたなら、まず無知な自分を恥じないと。それくらいいいバンドだったんだから。
所謂「ラウドロック」「オルタナティヴ」の範疇に入るバンドなんだろうけど、このバンドが異色だったのは‥‥文字通りスキンヘッドという出で立ちで我々を威嚇/魅了した紅一点・スキンというシンガーの存在でしょう。見た目完全に強面なのに、話すと非常に女の子らしい繊細さを見せる。喧嘩強そうなルックスに相反して実はかなり知的。そういった二面性を持ったフロントマン。しかも彼女の歌が凄い。まずはこのアルバムを黙って聴いて欲しいな‥‥俺が言いたいこと、嫌という程判ってもらえると思うから。
1曲目の "Charlie Big Potato" は、イントロのインダストリアル調SEだけ聴くと「ラガマフィン風?」とか「ドラムンベース??」なんて声が聞こえてきそうだけど、その先に待ち構えてるのは、戦車の如く重厚なヘヴィサウンド。更にその上を滑らかに這いずり回るスキンのボーカル。時にエロティックに、そして時にヘヴィメタルばりのハイトーンで圧倒する。この1曲でノックアウトされなかったら嘘だと思う。実際、このアルバムがリリースされた年のフジロックに彼らは出演してるんだけど、殆どがノーマークだった彼らのステージ、この曲でオープニングを迎えると‥‥曲がドラマチックな展開を見せるに連れて、客が後ろの方からどんどん前へと駆け寄ってくのね。あれを目撃した者としては本当に圧巻でしたよ。
でね、ただヘヴィなだけじゃない。完全な歌モノといっていいポップな "Lately"、ストリングスがドラマチックな展開をサポートするスローな "Tracy's Flaw"、ちょっとインダストリアル風な "Secretly"、アコースティックやストリングスを導入したことでよりスキンの歌の繊細な部分が浮き上がった名バラード "You'll Follow Me Down" や "I'm Not Afraid"。こういった「歌」を中心に据えた楽曲と、先のヘヴィでラウドな楽曲が半々で存在している。しかもどちらか一方に偏ることなく、またどちらか一方がもう一方の邪魔をすることもなく、非常に良いバランスでアルバムが構成されている。楽器隊の頑張りも凄いんだけど、やはりここはスキンというシンガーの存在感が全てなんでしょうね。彼女以外のシンガー‥‥男性でもいいし女性でもいい‥‥が同じことをやってたとしても、ここまで上手く機能してなかったんじゃないか‥‥そう思わせる程の内容なのですね。
決して気軽に聴けるタイプの音楽じゃないと思います。特に頭3曲("Charlie Big Potato"、"On My Hotel T.V."、"We Don't Need Who You Think You Are")の怒濤の攻めは呼吸するのを忘れてしまう程の威圧感ですしね。アメリカの同系統のヘヴィロックバンドと比べても何ら劣る部分はないし、むしろ当時こういうタイプのバンドってアメリカには少なかったと思うんですね。みんなKORNやlimpbizkitといったデスやヒップホップの方向に走ってたじゃないですか。RAGE AGAINST THE MACHINEからアイディアを拝借してる部分も少しはあるでしょうけど、根本にあるのはスキンという類い稀なるシンガーの存在ですから。アメリカでも若干遅れてこういった「ラウドロックにメロディアスな歌モノ」という方向性が登場し、この1年でEVANESCENCEのようなタイプまで登場しています。残念ながらSKUNK ANANSIEはアメリカで大成功を収めることはありませんでした。アルバムの知名度もイマイチでしょうし‥‥だからこそ、俺みたいな奴が忘れ去られないように、ここでこうやって紹介する‥‥もしこれを読んで「じゃあ聴いてみるかな‥‥」って思ってくれる人がひとりでもいたなら‥‥
最後に解散後のメンバーの近況など。スキンは昨年ソロアルバムをリリース、8月には「SUMMER SONIC」でソロとしての初来日公演を行うはずでしたが、直前になってキャンセル。その後影を潜めています。アルバムも日本/英国共にCCCDだったお陰で未だに聴けずにいます。サウンドの要だったギターのエースはプロデュースやセッション等を行いながら、昨年「STILL HUNGRY」というソロアルバムをリリースしました。これは各曲にいろんなシンガーをフィーチャリングした、如何にもギタリストらしい1枚となっています。
今後、再結成することなないと思いますが‥‥やっぱりロックンロールするスキンが観たいよなぁ、もう1回。
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