AEROSMITH『GET YOUR WINGS』(1974)
AEROSMITHが1974年に発表したセカンドアルバム。ファーストからのシングル「Dream On」が全米チャート・トップ100に入る小ヒットを記録したことから、レコード会社はセカンドアルバムを勝負作と考え、プロデューサーに当時アリス・クーパーの諸作品で既に成功していたボブ・エズリンを起用。ボブはKISSやPINK FLOYD等で知られている通り、緻密に作り込まれた作品を得意とする人。しかし当時のエアロは「よりシンプルに、よりストレートにロックした」作品を目指していたため、意見の食い違いが生じ、結局バンド側の意向を汲んだボブが身を引き、代わりにジャック・ダグラスを紹介。ここでの出会いが、後の名盤連発へと繋がるのでした。
■全曲解説■
●M-1. Same Old Song And Dance
アルバムからのシングルとなった、小気味良いシャッフルナンバー。軽快そうな印象なんだけど、意外とリズムが重い。そう、これがファーストとの大きな違い。ストレートで軽い印象があったファーストと比べ、全体的にどんより且つドッシリしてるリズムがこのアルバムの肝だと思ってます。勿論それだけじゃないですけどね。ポップで親しみやすいメロディを持ちながらも、演奏は結構重いという、後の彼らのプロトタイプとなった1曲かも。途中から被さるブラスもいい味出してますしね。
●M-2. Lord Of The Thighs
イントロでのヘヴィで、いろんなエフェクトをかけたギターと、ピアノの音色が印象的なミドルチューン。とにかくヘヴィ。スティーヴン・タイラーの、低音から高音へとどんどんキーが高くなっていくメロディの流れが絶妙。とにかくただひたすらカッコいい1曲。『GET A GRIP』ツアーまではよく演奏されてましたが‥‥また聴きたいですね。
●M-3. Spaced
一聴して地味な印象が強い曲だけど、メロディやコード進行、中盤での展開には非凡で光るものが感じられる不思議な曲。ちょっとソウルっぽい印象もありますよね。ギターサウンドも面白い音色を使っていて、本当にライヴを意識した作品なのかどうかはちょっと疑問。だって所々、ボブ・エズリンっぽいアイディア満載だし。アドバイスくらいはしたのかな?
●M-4. Woman Of The World
これまた重いリズムを持ったヘヴィーロック。イントロでのアコギのアルペジオや、ミドルテンポで始まって、途中でアップテンポにシフトチェンジして、また元に戻るという展開が面白い(ちょっとFACESの「Stay With Me」っぽい?)1曲で、とにかくギターのフレーズ/重ね方が凝ってる。ライヴでは殆ど演奏される機会がないだろけど、今だからこそやって欲しい、意外性の1曲。
●M-5. S.O.S. (Too Bad)
イントロのリフがカッコいい、ソウルフルなロックチューン。『LIVE BOOTLEG』での名演が有名だけど、このスタジオバージョンもただただカッコいい。やはりこのアルバムって、ギターのアンサンブルに時間をかけてるんだよね。リフやバッキングひとつ取っても、とにかくひとつの曲にいろんなフレーズが出てくる。シンプルを目指したはずなんだけど、実はかなりプログレッシヴな曲が多いのもこのアルバムの特徴。そんな中でこの曲は一番シンプルなんだよね(唯一の2分台ってこともあるしね)。一度でいいからライヴで聴いてみたい1曲。
●M-6. Train Kept A Rollin'
もはや説明はいらないでしょう。原曲以上に「エアロのバージョン」で有名になってしまったこの曲、元は1950年代のロカビリー・ナンバーなんですが、その後60年代にYARDBIRDSがカバー。このエアロ・バージョンはそのYARDBIRDSのバージョンを参考にしたと言われています。ライヴでのストレートなバージョンと違って、このスタジオテイクは2部構成。前半はミドルテンポのヘヴィなアレンジになっていて、これはこれでカッコいいのね。で、一旦終わったと思わせてからスタートする疑似ライヴテイク。こちらが現在でも演奏されているライヴバージョンの元。もはやロックンロールのスタンダードのひとつですね。このリフ、絶対に弾きたくなるもんね。
●M-7. Seasons Of Wither
アコギのアルペジオが印象的な、一風変わったバラード調ナンバー。バラードといっても「Dream On」とは対照的な、穏やかな流れで、途中で劇的に盛り上がるでもなく、どことなくサイケな雰囲気でゆったりと最後まで流れていくといった印象。俺、この曲がかなり好きでして。隠れた名曲揃いのセカンドの中でも一番好きな曲かも。ライヴ受けは悪そうだけどね。
●M-8. Pandra's Box
アルバムラストを飾るのは、ROLLING STONESの「Crazy Mama」を彷彿させる、ミドルヘヴィなロックンロール。やはりこの曲もリズムとリフが要。けど、ストーンズみたいにカラッとならず、どこかジメッとしててひねくれた印象が強いのが、エアロらしいというか、既にサードへの伏線を見せているんだよね。そういえばこの曲、珍しくクレジットにジョーイ・クレイマー(Dr)の名前が。リズム面でのアイディアが採用されてのことでしょうか。この曲でもピアノとかブラスが大活躍してて、とにかくゴージャス。
■総評■
ファーストが「ガレージロック」風な色合いが強いブルーズロックだとしたら、このセカンドは「サイケ」風ヘヴィロックンロールといった感じでしょうか。エアロの作品の諸作品の中でも特に地味な印象が強いこのアルバム、実は隠れた名盤としてフェイバリットに挙げる人が意外と多いのも事実。実際、俺にとってこの『GET YOUR WINGS』って、ストーンズにおける『BLACK AND BLUE』みたいな1枚なんだよね。実は凄いことやってるんだけど、全然そういうふうには聴こえない、非常に損な役回りの1枚。みんな騙されるなよ!?
「よりシンプルに、よりストレートにロックした」作品を目指したはずが、いざ完成してみれば、ライヴで再現できないくらいギターを重ねてみたり、転調/展開が多い曲調だったり、メンバー5人以外のサポートメンバー(ピアノやブラス隊)を積極的に導入してみたりと、考えようによっては続く3作目への伏線が見え隠れし、そういう意味では「サードへのプロトタイプ的」作品と呼べなくもないですね。けど、決定的な違いはリズム感。とにかく重い。この重さは後に『ROCKS』というアルバムで再び再現されるのですが、本当にこれがあのファーストを作ったのと同じバンドか?と疑ってしまう程の成長が伺えます。エアロに手を出す時、まぁまず最初に聴くべき作品ではないものの、深く付き合ってしまうとたまらなく魅力的に思える、そんなアルバムです。
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