ALICE IN CHAINS『ALICE IN CHAINS』(1995)
早いもので、レイン・ステイリーがこの世を去ってから2年近くも経ってしまった。いや、ことALICE IN CHAINSの不在という意味で考えれば、ベスト盤リリースから約5年、オリジナルアルバムでいえば約10年ということになるのかな‥‥え~っ、そんなに時間が経ったの!?って疑ってしまう程、俺の中での「ALICE IN CHAINSに対する想い」はずっと1994~5年頃で止まったまま。もっと言っちゃえば、唯一の来日公演となった93年秋から時間が止まったまま。あの時の衝撃は未だに忘れられないし、自分の中でのロック史上、歴史的瞬間だったことは改めて書くまでもないでしょう。
そんな3度目の春を迎える前に、改めてALICE IN CHAINSの功績について語っていきたいと思います。今回はサードアルバムにして、オリジナル作品としてはラスト作となった、このセルフタイトルのアルバムを紹介したいと思います。
前作『DIRT』(92年)リリース後、暫くしてベーシストが交代、最後まで在籍したマイク・アイネズ(元OZZY OSBOURNE)が加入し、93年秋には初来日を果たし、そのすぐ後にミニアルバム『JAR OF FLIES』(94年)をリリース。これがミニアルバムにも関わらず、全米初登場1位を記録。純粋たる新作というわけではなく、肩の力を抜いた、遊び心満載な1枚なのにも関わらず1位‥‥時代が彼らを求めていたということでしょうか?
その後、レインのドラッグ問題等が公になり、表立った活動が少なくなっていくのですが、秘密裏に新作制作は続いており、結局『JAR OF FLIES』から2年、『DIRT』から数えて3年という期間で完成~リリースとなったのが、このサードアルバムというわけ。当然ながら、このアルバムも初登場1位を記録、レインのドラッグ癖が原因でツアーらしいツアーがなかったものの、アルバムは見事に2~300万枚も売り上げたのでした。
このアルバムというと、やはりそのサウンド以上に「日本盤リリース遅延&ジャケット変更事件」が話題となり、そちらの方で覚えている人が多いんじゃないでしょうか? 理由はこう‥‥右のアメリカ盤ジャケットでは、3本足の犬が描かれていたり、アルバム・ブックレットや裏ジャケに「奇形」ばかりを集めた、正しく「フリークス」写真&イラスト満載なアートワークで、これに日本側が難色を示し、バンド側に「日本盤のジャケット変更」を依頼したものの、却下され続けた、というお話。結局、右下のようにシンプルな形ならOKということで、US盤リリースから約1年後にようやくリリースとなったのでした。
さてさて。続いてアルバム内容について。前2作にあったようなヘヴィメタリックで硬質な色合いが後退し、もっと生々しくてラフな印象が強くなりました。カッチリ作り込まれたかのようなサウンドだった『DIRT』との大きな違いは、その「ライヴっぽさ」に表れていると思います。これはプロデューサー/エンジニアが変わったことも大きいでしょうし、楽曲の質感や構成がそれまでと大きく変わったことも影響していると思います。
演奏自体も1曲1曲が長尺なものが多く、それらは計算した構成というよりも、もっと即興性を重視したジャム・セッション風のアレンジになっていて、その辺も「ライヴっぽさ」を強調してるのではないでしょうか? バンドがこういう方向に走ったのは、恐らく‥‥ドラッグによるレイン不在が大きく影響してるのではないでしょうか。歌えるような状態になかったとも言われていますし、実際歌のパート以上にインストパートが長い曲もありますし、ギタリストのジェリー・カントレルのボーカル比重もかなり増えています。彼がリードボーカルを取る曲すらありますからね。またそのレインのボーカルも、そのまま使えるようなテイクがなかったのか、電子的なエフェクトを掛けていたり、ワザとボリュームを絞っていたりして、「それらしく」聴こえるように工夫されています。これが却って「らしい」雰囲気を醸し出していて、アルバムに好影響を与えています。
そういったこともあって、前2作のような「一聴して判るような派手さ」はないものの、もっと精神世界に訴えかけてくるヘヴィさが特徴といえるでしょう。また、ただヘヴィ一辺倒というわけでもなく、『JAR OF FLIES』で得た要素‥‥メジャーキーを多用したポップでフォーキーな路線等も上手く取り込み、アルバムとしてのバランス感は全3作中一番なのでは?と個人的には思ってます。そういった意味では「ALICE IN CHAINSの完成型」がこのアルバムだったのかな、と‥‥なんて、ここで「止まって」しまったから、そういう風に言えるわけですが。
どの曲がヘヴィで、どの曲がポップで、どの曲がイチオシとか、そういった類のことは今回書きません。何故なら、このアルバムこそ頭からラストまで、ぶっ通しで聴いて欲しい「世界観」を持った作品集だから。あまりに(精神的に)ヘヴィ過ぎて、途中でストップボタンを押してしまう人もいるかもしれませんし、「日本盤のボーナストラック(「Agains」のリミックス2種類)、邪魔!」って思う人もいるでしょうし、「これよりも、もっとヘヴィな作品、いくらでもあるじゃん!」って不満をこぼす人もいるでしょう。けどね‥‥もしあなたが、このアルバムを日本盤で購入したのなら、まず1度通して聴いてもらい、その後歌詞(というよりも、対訳)を読みながらもう1度聴いてもらいたい‥‥ここで初めて「ALICE IN CHAINSの世界観」が完成するのですから。
今現在、若い子達……リアルタイムでの実働を知らない世代がALICE IN CHAINSに対してどういった評価をしているのか判りません。正直に言ってしまえば、知りたくもない……10年前、一部を除いて全くといっていい程盛り上がってなかった「シアトル」「グランジ」といったキーワード。単純に「ハードロック」「パンク」「オルタナ」といった括りで接することの多かった俺からすれば、正直どうでもいいんですよ、シアトルだのグランジだのは‥‥ただただ、ALICE IN CHAINSやNIRVANA、PEARL JAM、SOUNDGARDEN、SMASHING PUNPKINSといった最高にカッコいいバンドが、最高に素晴らしいアルバムをリリースしていた、と。ただそれだけなんですよ。
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