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2004年3月23日 (火)

DEF LEPPARD『HYSTERIA』(1987)

DEF LEPPARDが1987年夏にリリースした通算4作目のアルバム『HYSTERIA』は今でこそ「通算1000万枚を超えるセールスを記録」「全米チャートにおいて、リリースから1年以上経ってから1位を獲得」「HR/HMの枠を超えた、ポップ/ロックの金字塔」なんて言われて絶賛されることの多い80年代を代表する1枚なわけですが……俺ね、リリース当時このアルバムが大嫌いだったの。正確に言えば、ガッカリさせられたというか。

俺が洋楽ハードロックにのめり込む切っ掛けを作ったアルバムの内の1枚が、彼らの『PYROMANIA』だったんだけど、もうね、完全にあの世界観であったりサウンドであったり楽曲であったりが、全部が大好きだったわけですよ。当時12~3才だった「とみぃ少年」にとって、これほどまでに完璧なロックアルバムはあるだろうか!?というほどに。今でもあのアルバムがある種の指針になっているところがあるんだけどね(結局自分が“ブリティッシュ”にこだわるようになったのも、あのアルバムが切っ掛けだったしね)。

ところが、『PYROMANIA』から4年待ってリリースされたこの『HYSTERIA』というアルバム。リリース当時高校1年生だった自分は夏休みにプールでバイトして小遣い貯めて、それで購入したわけですよ。あの頃は洋楽CDでもまだ3200円くらいした時代。しかもこれ……今現物が手元にあるんですが、直輸入盤に帯と解説を付けた代物なわけ。「Made In West Germany」という懐かしい響き。この頃はまだ、こういった盤が結構国内でも流通してたんだよね。輸入盤CDも3000円近くした時代だもの。

でね。そこまで一生懸命働いて買った、大好きなバンド待望の新作。1回聴いて、かなり凹んだのよ。似てるようで全然違う、って。まぁリック・アレン(Dr)が交通事故で片腕を失って、それに対応したシモンズ・ドラムを開発。それを導入してのレコーディングということで、どうしても当時の技術じゃシンセドラムっぽくなってしまうのは仕方なかったんだけど(今なら生音をサンプリングすればいいだけの話ですからね)……にしても、ドラム含めて全体的な雰囲気が人工甘味料をまぶしたような、コテコテに甘ったるい曲調で、ギターサウンドも前作以上に歪みまくっていて若干作りものっぽい。シンセも多用してるし、曲によってはQUEEN以上にコーラスを重ねているパートもある(実際、120声以上も重ねたパートもあるとか)。前作にあったようなタフな雰囲気は減退し、角の取れた柔らかい印象に「これ、ハードロックじゃねぇじゃんか!」と当時16才だった「とみぃ少年」は憤りを感じたわけです。

事実、このアルバムはリリース当初こそアメリカ/イギリス両国で期待されたほど大きなヒットにはならなかったのね。アメリカでは4位くらいまで上昇したのかな。シングルも第1弾の「Women」がコケて……待望の新作からの1stシングルに適していたかどうかって話ですが。

そんなだから、翌1988年5月に実現した再来日公演にも足を運ばなかったんだよね(まあ、正しくは高校の中間テストがあったので、とても東京まで出ていける状況ではなかったのですが)。代々木体育館、満員にはならなかったそうだけど……結局、その3年後に悔やんでも悔やみきれないほどに、行かなかったことを後悔しまくるわけですけどね。

この頃からかな、このアルバムからのシングルがどんどんアメリカでヒットしていったのは。まず第2弾「Animal」がトップ20入りし、第3弾「Hysteria」で初のシングル・トップ10入りを記録。その後「Pour Some Sugar On Me」が全米2位まで上昇し、同年秋には「Love Bites」がとうとう1位を獲得してしまうのです。当然その頃までにはアルバムも10位圏内を行ったり来たりしていて、最終的には1位に。実はDEF LEPPARDにとってこれが、シングルのみならずアルバムも初の1位だったんですよね。この時点で、すでにアルバムは売り上げ700万枚を突破。以降も第6弾シングル「Armageddon It」が3位、第7弾シングル「Rocket」が12位にランクイン……1枚のアルバムからシングル7枚って! 12曲収録のアルバムですよ!? ホント、マイケル・ジャクソンの『THRILLER』にも匹敵するアルバムですよ。

こうして当時、MTVやラジオなどで『HYSTERIA』からのシングル曲を耳にする機会がどんどん増えていき、しばらく距離を置いていたこのアルバムを聴き返す機会がどんどん増えていきました。すると、最初は「前作ほど良くない」という先入観が植え付けられていたこのアルバム、聴くたびに新しい発見があり、ハードじゃないから嫌ってたのに逆にポップさに魅了され、気づけば学校から帰宅すると毎日リピートしまくりな1枚へと変化していったのです。

決して「シングル曲がいっぱい入ってるから」ではなく、これはもう単純にスルメ的要素を持ったアルバムだったからというのが大きいのではないか、と今になって思うわけです。当時としては破格の62分という収録時間も驚異的だったし(恐らくハードロック系で初めて「CD」を意識して作られたアルバムではないでしょうか。全編デジタル録音というのもあるし)、実は曲のバラエティ豊かさも前作の比じゃない。

当時はBON JOVIWHITESNAKEといったバンドがチャート上位を席巻していたのですが、そんな中でこのアルバムは異色だったかもしれません。いや、HR/HM側からしたら異色かもしれないけど、ポップス畑からするとそんなに不思議じゃない作品だった。だからこそ、ここまで支持されたんだろうな。ラジオで普通にポップスとして機能するし、MTVでビジュアル付きで聴けば完全にハードロックしてる。ある意味無敵な作品、それが『HYSTERIA』というアルバムだったのかな、と。その後の彼らの活動をみると、結局はここで得てしまったメガヒットを意識して、『HYSTERIA』の延長線上にある作品作りに励んでいるように映りますし。幸か不幸か、ね。

このアルバムを最後に、ギタリストでありメインソングライターのひとりでもあったスティーヴ・クラークはこの世を去るわけですが(1991年1月に死去)、そういう意味でも忘れられないアルバムになってるんですよ、自分にとって。

確かにドラムサウンドは今聴くとちょっと時代を感じますけど、楽曲自体のクオリティや普遍性はさすがと言わざるを得ない。2004年の現在においても、これを超えるようなアルバムはなかなか登場していないわけですから。

最近ではANDREW W.K.などの若手バンドがDEF LEPPARDの功績を讃え、その影響をあからさまに表したサウンドで世を賑わしてますが、当のDEF LEPPARDは残念ながら以前のようなヒットを飛ばしているとは言い難い状況です。あの頃、少年少女だった俺達にとって最高だったものが、今の少年少女にどう映るのか。どう響くのか。ハードロックとかポップとか関係なく、偏見なしに一度は触れてもらいたい名盤。「Love Bites」や「Love And Affection」に感動の涙を流し、「Gods Of War」で緊張感を味わい、「Rocket」や「Excitable」で踊り狂い、「Pour Some Sugar On Me」 や「Armageddon It」で拳を振り上げてシンガロングしようじゃないですか。そういう判りやすいアルバムなんですから。



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投稿: 2004 03 23 08:01 午前 [1987年の作品, Def Leppard] | 固定リンク