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2004/03/01

KRAFTWERK『TOUR DE FRANCE SOUNDTRACKS』(2003)

オリジナルアルバムでいう前作「ELECTRIC CAFE」がリリースされたのが1986年。当時、中学生だった俺は「CGを駆使したPVが面白かったから」といった理由でこのアルバムをレンタルしました(LPの時代にね!)。これが俺とKRAFTWERKとの出会い。あれから17年以上もの月日が経ち、その間にリリースされたKRAFTWERKの新譜は‥‥ゼロ‥‥あ、いや、'91年に「THE MIX」っていうセルフ・リミックス集が出たっけ‥‥あの時でさえ俺、ハタチだもんなぁ‥‥十代に1枚、二十代に1枚、そして三十代になって1枚。次に彼らのアルバムが聴けるのは、あと7~8年経ってからとか? そんな皮肉さえも言いたくなってきますが、ま、こうやって久し振りのオリジナルアルバムも聴けて、更に来日公演も観れたんだから、良しとしましょうよ。

というわけで、正に前作から17年振り(!!)、通算10作目(「THE MIX」を含めても11作目)となるアルバム「TOUR DE FRANCE SOUNDTRACKS」。その名の通り、'83年にリリースされたシングル "Tour de France" から数えても20年、何故この時期に再び「Tour de France」なのか。何やら2003年で「Tour de France」という競技自体が100周年なんだそうで、それを記念して作られた公式認定サウンドトラックなんだそうですよ。20年前の時は協会から依頼されて作ったのか、単に競技からインスパイアされて作ったのかは知りませんが、まさか20年前のあの曲がこういう形で蘇り、またその曲を軸にオリジナルアルバムが完成するとは、当の本人達も、そしてファンの側も思ってもみなかったでしょうね。

そんなこのアルバム。20年前の "Tour de France" をリメイクし、更に2003年バージョンとして3つのバージョンを制作し(というよりも、3つの楽章からなる組曲といった方が正しいかも)、それらを軸にして「Tour de France」という競技をモチーフにいろいろ新曲が作られています。

とにかく一聴して感じたのは、全然古くさくないということ。当たり前か、大半が完全新曲なんだから。リメイクされた "Tour de France" はちょっと懐かしさが程よくブレンドされていて、逆に心地よかったりするんだけど、それ以外の曲‥‥例えば2003年バージョン組曲なんて、完全に今の音でテクノしまくってるからね。4つ打ち仕様、クラブ仕様。ビートも1983年のビートではなくて、2003年のビート。勿論これよりも今っぽい、真新しいビートはいくらでもあるし、聴く人が聴けばこれすら「古くさい」のかもしれないけど、俺にはそうは聴こえないし、全然「アリ」なわけ。UNDERWORLDやCHEMICAL BROTHERSというよりは、ORBITALとかLEFTFIELDといったイメージかな。そういうサウンドを持った1枚に仕上がってると思います。

で、勿論そういった "Tour de France" シリーズ以外の新曲も、良い意味でKRAFTWERKらしく、そして現代的なダンスチューンに仕上がっています。ミドルテンポでメロウなシンセが気持ちいい "Vitamin" もユニークだし、アッパー系の "Aero Dynamik" も単純にカッコいい。この曲が第二弾シングルというのも頷ける話(個人的には、もし第三弾リカットがあるなら、絶対に "Vitamin" だと思ってるんですが)。そして自転車競技という「孤独との戦い」「敵は自分」というテーマをそのまま音にしたかのような "Electro Kardiogramm" も如何にもな印象(ま、テーマは今俺が勝手に思いついて付けてみたんですが)。"La Forme" も従来の彼ららしさを包括しながらも今を主張してる印象。古めかしくもあり、今に通ずる色も見いだせたりもする。だから聴く人によって「止まってる(=時代遅れ)」とも「現代的」とも取れる。この辺がこのアルバムの面白味でもあるんですけどね。

ライヴを観てしまった後だから余計に感じるのかもしれないけど、全体的にストイックな空気が流れる中、最後の最後にオリジナルの "Tour de France" のシンセの音色が聴こえてくると、自然と顔がほころんでしまうんですよね‥‥孤独なレースからゴールした瞬間に似てるのかな。とにかく優しくて温かい印象。 "Tour de France" で始まり "Tour de France" で終わるという構成はそういうテーマがあったからこそなんですが‥‥けど、これは本当によく出来たアルバムだなぁ、と。

残念ながら2003年の10枚には選ばなかったのですが、それでも昨年後半よく聴いた1枚であり、その10枚に限りなく近い作品であるのは確か。もし昨年中にライヴが実現していたら、間違いなく10枚の中に入れてましたけどね。

「とりあえずKRAFTWERKを聴いてみたいんだけど‥‥」と思ってる若い子達には、まずこのアルバムから聴くことをオススメします。無理してアレンジ的にもサウンド的にも時代の流れを感じるアルバムを聴いて切り捨てられるよりは、現代的に処理されたこの「新作」から聴いた方が入りやすいと思いますしね。



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投稿: 2004 03 01 03:52 午前 [2003年の作品, Kraftwerk] | 固定リンク