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2004/05/18

BON JOVI『THESE DAYS』(1995)

いろいろ異論反論はあると思うけど、間違いなくBON JOVIの最高傑作は、1995年という時代にドロップされた6枚目のオリジナルアルバム『THESE DAYS』だと思う。世間的にはBON JOVIの第二のピークは『CRUSH』以降ってことになるんだろうけど、それってアメリカでの話ですよね? 確かにアメリカでの彼らは「KEEP THE FAITH」以降、失速していったように見えます。が、それって80年代と比べてってことでしょ? あの時代に、こんなメインストリームロックがチャートのトップ10内にアルバムを送り込んで、尚かつミリオン(=100万枚以上)セールスを、どれだけ記録した? せいぜいBON JOVIとDEF LEPPARDくらいじゃないの?(ま、そのLEPSもアメリカではドンドン苦戦を強いられていくわけですが)

94年秋にリリースされた初のベスト盤『CROSS ROAD』もチャート10位内にランキング、ミリオンセールスを記録。そこからのシングル「Always」はチャートのトップ5入りする大健闘を見せた。けど、時を同じくしてベーシストのアレック・ジョン・サッチが脱退・引退を表明。丁度新しいオリジナルアルバムの製作時期だったこともあり、バンドはそのまま活動がストップしてしまうのかと思いきや、ジョン・ボン・ジョヴィ含めメンバーと古い付き合いのベーシスト、ヒューイ・マクドナルドを準メンバーに迎え(BON JOVIは今後、4人として活動し、レコーディングとライヴにはサポートとしてヒューイが加わる形となった。ビル・ワイマンが抜けたROLLING STONESみたいなものですよ)、年末のチャリティー・ライヴで新生BON JOVIを初お披露目、そのまま6作目となるオリジナルアルバムのレコーディングに突入。そうして完成したのが、この『THESE DAYS』という傑作アルバム。逆境だったはずのメンバー脱退なんだけど、殆どバンドに影響しなかったのは、当時のジョンやリッチー・サンボラがソングライターとして如何に充実していたか、また久々の大ヒットが追い風となって、バンドとしていい波に乗れたというのも大きかったんでしょうね。

が、このアルバム。そんな勢いを感じさせるような作品かというとそうでもなく、実はBON JOVI史上最も地味な作品として挙げられることが多い1枚でもあるんですよね。ベスト盤収録の新曲群も手掛けたピーター・コリンズを共同プロデューサーに迎え、ジョンの自宅内にあるスタジオで制作されたこのアルバム、かなり「バンドのアルバム」としてのライヴ感を重視しているんですが、楽曲がとにかく地味。ボブ・ロックを迎えて制作した作品群と比べても、ハードロックとルーツロック、それくらいの違いが感じられる程なんですね‥‥音の触感という面でもそうだけど、やはりちょっとした曲のタッチやメロディ、歌詞の内容等、明らかに以前よりも高いハードルを目指しているのが伺えます。ただのパーティーロック、ティーンエイジャーの心の内を歌ったようなものではなく、30代を迎え父親となったジョンの、大人としての視点で描かれる物語‥‥既にそれはアメリカン・ハードロックといった枠で括れないような次元に達していると思います。言ってしまえば、「Livin' On A Prayer」で歌われたトミーとジーナの10年後‥‥そんな世界観でしょうか。英語が理解され難いここ日本で、果たしてそこまでの内容が認識されているかは疑問ですが、とにかくこのバンドの成長は、デビュー時から共に成長してきた俺にとっても非常に感慨深いものでした。

とにかくアルバム前半の流れは完璧。エリック・クラプトンばりに弾きまくるリッチーのフレーズが印象深い「Hey God」(アルバムからの5thシングル)、日本では自動車のCMソングに起用されたので記憶に残っている人も多いだろうBON JOVIらしいアメリカンロック「Something For The Pain」(アルバムからの2ndシングル)、R&Bの要素さえ感じさせる初のロッカバラード「This Ain't A Love Song」(アルバムからの先行シングル)、アルバムのタイトルトラックにしてBON JOVI史上三本指に入る名曲中の名曲「These Days」(アルバムからの4thシングル)、中盤のメロトロンの音が印象深いバラード「Lie To Me」(アルバムからの3rdシングル)、そしてライヴでも定評があるファンクロック「Damned」‥‥ここまでの6曲の流れ、本当に素晴らしいんだよね。特に頭5曲は全部シングル曲ということもあり、耳に残る名曲ばかり。ただノリの良さで攻めるのではなく、しっかり聴かせる曲も3~5曲目に並んでる辺りはさすがというか。

で、後半なんですが‥‥いきなりサイケで重々しい空気でスタートし、どんどんと展開していくグランジ調ヘヴィロック「My Guitar Lies Bleeding In My Arms」(これがもう本当に名曲!)、元々はジョンのソロ曲としてスタートした弾き語り風アコースティックナンバー「(It's Hard) Letting You Go」、BON JOVIらしいポップなメロディを持つロッカバラード「Hearts Breaking Even」、ダークな印象が斬新な新境地「Something To Believe In」、これまた彼ららしい大陸的なミディアムナンバー「If That's What It Takes」、そして『NEW JERSEY』時代から何度かレコーディングしてみたものの上手くいかず、最終的にこういう形で落ち着いたという曰く付きの「Diamond Ring」でアルバムは一旦幕を閉じます(この後、日本盤とEU盤ではボーナストラックとして「All I Want Is Everything」と「Bitter Wine」という2曲が収録されています。アルバム本編の12曲と比べるとちょっとだけ劣る気もするけど、まぁ悪くない佳曲だと思います)。

 アメリカではアルバムはかろうじてトップ10入りし、ギリギリ100万枚に達したようだけど、ヨーロッパで5枚リカットされたシングルはアメリカではたった3枚、しかもどれも思った程のヒットを記録することもなく、ツアーもアリーナクラスを数ヶ月回った程度で終わったようです。しかし、日本では初登場1位を記録するという異例事態が発生。またイギリスでも同時期にリリースされたマイケル・ジャクソンのアルバムを抑えて初登場1位を獲得、同時期には7万人以上も入るウェンブリー・スタジアムで数日間のソールドアウト公演を実現‥‥そう、確かにこのアルバムを発表した時期は、バンドにとって第二の世界的大ヒットを迎えたピークだったといえるでしょう。

後の『CRUSH』や『BOUNCE』とも違うヘヴィさ、ダークさ。世が世だったというのも大きいでしょうけど、やはりもとを正せば、メンバーチェンジだったりアメリカでの不遇が彼らに影を落としていたのかもしれません。実際、後にジョンもこのアルバムを「ダーク過ぎた」と認めていますしね。

けどさ‥‥だから何!? ダークだろうがヘヴィだろうが地味だろうが、名盤には違いないでしょ? 俺にとっても、そして多くのファンにとってもこのアルバムってとても大切な1枚なんですよ。耳障りが良い近年のアルバムや80年代の大ヒット作の間に挟まれて肩身の狭い思いをしているであろう1枚。中古盤屋でも1枚200円くらいで売られているのを見かけると、かなり切なくなってしまう1枚。内容が内容なだけにね‥‥いや、本当に名作なんだってば!

BON JOVIがデビューしてから今年で20年。彼らの20年の歴史の上で、現時点でこのアルバムはどういう風に位置付けされるのか‥‥非常に気になるところではあるんだけど‥‥きっと、もうこういう作風のアルバムって作らないんだろうなぁ‥‥何となくだけど、そう感じています。けど、だからこそこのアルバムが「オンリーワン」として燦然と輝いているってのもあるんだけど。うん、まぁあれだ‥‥BON JOVI好きって奴でこのアルバムを聴いてない若いファンがいたら、そいつはもぐりだ!ということですよ。今からでも遅くないから、早く聴きなさいって!



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投稿: 2004 05 18 12:00 午前 [1995年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク