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2004年5月24日 (月)

SLIPKNOT『VOL.3 : (THE SUBLIMINAL VERSES)』(2004)

バンドがビッグになるに連れて、いろんな煩わしさと対峙していかなければならないのはもはや必然というか‥‥いや、可能ならばそういった音楽以外の煩わしさからは距離を取って、ただひたすら作品作りとライヴにのみ集中できればいいんだけどね。けどそうもいかないのが、この世界。それをただ「芸能界チック」云々で切り捨てて、小さい世界の中で殻に籠って同じ穴の狢相手にチマチマ活動をするのもいいでしょう。それはそれで否定しないよ。けど俺はそういった人種には惹かれない‥‥それだけのことです。

SLIPKNOTが前作「IOWA」リリース前後からかなりヤバい状態だった、というのは既に周知の事実なわけで、それはここ2年くらい(=バンドとしてのツアー終了後)の各メンバーの精力的なソロ活動(ジョーイによるMURDERDOLLSやコリィによるSTONE SOUR、ショーンによるTO MY SURPRISE、シドによる変名DJ活動・DJ STARSCREAM等)をみればお判りでしょう。バンドから距離を置きたい、あるいはもうウンザリしているメンバーもいたかもしれない‥‥事実、コリィは2002年末にSTONE SOURの公式サイトで「SLIPKNOTはあと1枚アルバムを作って、そのツアーをやったら解散する」って自ら発言しちゃったしね(後に撤回)。そのくらい、いろんな意味で追い詰められていたんだろうな、と想像に難しくないわけで。

バンドは2003年も活動することなく、その年の夏には各メンバーのユニット/バンドで夏フェスに出演する予定でした。ここ日本の「FUJI ROCK FESTIVAL 03」にも最初STONE SOURの名前が挙がり、後にMURDERDOLLSの名前もアナウンスされました。が、後に双方キャンセルに。理由は「SLIPKNOTのアルバム作りに突入する」から。急に決まったかのようなこの事実。多分、メンバーとしても「このタイミングを逃したら、もう‥‥」みたいに感じてたのかもね。

その後、プロデューサーに過去2作を手掛けたロス・ロビンソンではなく、SLAYERやRED HOT CHILI PEPPERS、SYSTEM OF A DOWNといったラウドロック界の名プロデューサー、リック・ルービンを迎えていることが発表され、2004年前半にリリースされるだろうことも判明。更に2004年1月末から日本で開催される「SONIC MANIA 04」への出演も決定。レコーディングをそれまでに終了させる予定だったのか、それとも合間に抜けて息抜きのつもりだったのかは判りませんが、とにかく約2年振りの来日が決まり、急に慌ただしくなり始めたんですよね。

ところが、その来日は実現しませんでした。理由は「アルバム作りに専念したい」から。相当アルバム作りに集中したかったのか、それとも予定より難航して遅れていたのか‥‥とにかく、この時点でアルバムリリースが「GW明け=5月中旬にリリース」という新しい情報も。間違いなく、2004年前半の山場のひとつになるに違いないアルバムの登場を、今か今かと我々は待ち続けたのでした。

そして今、俺はそのSLIPKNOTのサードアルバム「VOL.3 : (THE SUBLIMINAL VERSES)」を何度もリピートしています。うん、これは間違いなくSLIPKNOTのアルバムだ。と同時に、これまでのSLIPKNOTからすれば「らしくない」新しい要素も数多く発見できる、非常に興味深い内容になってます。

まず、史上最強(狂)だった前作「IOWA」と比べれば明らかにブルータル度が減退しています。レコーディング中のメンバーに花瓶を投げつけてわざと怒らせてレコーディングさせたという曰く付きの前作とは異なる作風‥‥プロデューサーが変わっているんだもん、そりゃ異なるでしょう。今回、バンドが何に対して怒りを覚え、そしてそれを音にぶつけたのか‥‥いや、もしかしたらそんなに怒ってないかもしれない。判らないけど。ただ、明らかに「SLIPKNOTの音」ですよね。残虐度はかなり下がったものの、それでも十分にヘヴィだし(ま、普段からこの手の音楽ばかり聴いてる人にとっては物足りないんでしょうけど)。全米チャートのトップ5入りを果たしたバンドの3作目と考えれば、この変化は自然な流れかな、とも思います。

この手のバンドの場合、1枚目で衝撃的なデビューを飾り、2作目では更に衝撃度を追求した作品作りに走り、3作目で「(1)よりポピュラリティーある方向へ進む」「(2)迷いが生じていろいろ実験をした意欲作を生む」「(3)とりあえず前作の延長線上にある作品を増産する」のどれかに分岐する、というパターンが多いと思います。KORNなんて正に(1)だし、limpbizkitは典型的な(3)でしたし。で、SLIPKNOTの場合はというと‥‥これ、(1)と(2)の中間かな、という気がします。

いきなりダークでドゥーミーなゴシックソング "Prelude 3.0" からスタートした時点で「あ、すっげー悩んで考えた構成だろうな?」と感じましたね。こんな変化球する必要ないのに‥‥要するに、今1stや2ndでやったようなことをまた再現することは、「2004年のSLIPKNOT」にとっては自分を偽っていることになっちゃうんでしょう。勢いだけで圧せる、そんな時代は終わったんだ、と。これって結局、各メンバーのソロ活動も影響してるんでしょうね。

で、全体的な印象として比較的スピード感を抑えたようなイメージが。暴虐性が薄れたと感じたのは、この辺の影響もあるのかな、と。ブラストビートが心地よくひたすら突っ走るような印象の "Three Nil" にしろ、どこか考え尽くされた印象があるし。とにかくひと捻りもふた捻りもあるアレンジの曲が多いかな、と。

スピードを抑えた反面、直線的だったSLIPKNOTのイメージが、ちょっとだけグルーヴィーになった印象を受けた‥‥それもこのアルバムから感じられた新しいイメージ。ミドルの曲からそういったものを若干感じ取れたんですが、これはやはりリック・ルービンによるものなのかな? いやよく判らないけどさ。そんな印象があるからさ。

あとはね、メロディアス度が急上昇してますよね。スローな曲(中にはアコースティック・バラードまで!)がかなり増えたこと、1曲のヘヴィソングの中に急にポップでメロウなラインが登場する "The Nameless" みたいな曲もあるし、イントロのツインリードがメロデス(メロディック・デスメタル)並にメロウなハーモニーが登場する "Opium Of The People" とか、これまでには考えられないような新境地がそこら中に散りばめられてます。が、聴き終えた後の感想は「あーSLIPKNOTのアルバムだー」というもの。けど、過去2作を聴き終えた時に感じた爽快感みたいなものは今回感じられませんでしたね。

バンドとして相当煮詰まっていたんだろうな、試行錯誤したんだろうな、というのがここまで感じられる作品も珍しいですよね。これ、ファンには賛否両論激しい1枚になると思いますよ。ただ激しいだけの作品を期待してたファンからは「ぬるい!」と一喝され、1stにあったような「絶妙なメロディアスさ」を求めるファン(=2nd否定派)からは「もうダメぽ」と切り捨てられる‥‥そんな運命を辿りそうな予感が‥‥

けど、俺に関して言えば‥‥これ、かなり気に入ってますよ。まぁ前作を超えてはいないと思うし、現時点では1stとどっちが上かと言われれば、まぁ1stと答えちゃうんですけど、それでもこれ、かなりリピートしてますよ。まぁ俺がだんだんとこの手のラウド系から離れていってるので、そういう人にとっては非常に親しみやすい内容になってるかな、と。これまでこのバンドに対して嫌悪感を持っていた一部の層にも結構アピールする内容じゃないかな、と感じてます。

METALLICAだって3rd以降はアルバムをリリースする度に旧来のファンから非難され続け、どんどん古いファンが離れていったにも関わらず、それと引き換えにチャート上でどんどん成功していき、その数倍以上もの新しいファンを獲得していった。MEGADETHもそうでしょう。恐らくこのSLIPKNOTも(もしこの先も活動が順調に続いていくなら)そういう道を辿っていくのかもしれませんね。まぁこのバンドが数年後に「LOAD」みたいなアルバムを作っているとは想像できませんけどね。



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投稿: 2004 05 24 01:16 午後 [2004年の作品, Slipknot] | 固定リンク