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2005/01/27

MANIC STREET PREACHERS『LIFEBLOOD』(2004)

 遅ればせながら、MANIC STREET PREACHERSの通算7作目のアルバム(冷静に考えて、誰がデビュー当時彼等が7枚も、それぞれ個性的なアルバムを作るなんて想像したでしょう?)「LIFEBLOOD」についていろいろ書いてみたいと思います。10月末のリリースタイミングを逃し(というかその頃ってまだこのブログ、一般公開してなかったし)、本当は年末の「MY BEST OF 2004」公開に併せて書こうと思ってたんですが、想像してた以上にプライベートが忙しかったもんでね‥‥結局来日直前のタイミングになっちゃいましたよ。ま、ある意味ではこれでよかったのかな、とも思うんですが。

 オリジナルアルバムでいうところの前作「KNOW YOUR ENEMY」の発表が2001年3月。約3年半振りの新作ということで、MANICSにしてはかなり長いブランクだったといえますが、個人的にはそこまで長いブランクとは感じてなくて。というのも、その3年半の間にベストアルバムと2枚組B面曲集がそれぞれ2002年、2003年にリリースされているし、来日も2度、2001年夏のフジロックと2003年1月のベスト盤ツアーで来てくれてるから、そこまでの飢餓感ってのはなかったのね。考えてみて。古いファンなら「THE HOLY BIBLE」以降、ああいう不幸な出来事があって活動休止して、そして大ヒット作「EVERYTHING MUST GO」の時は来日せず、結局1993年秋以降次の来日まで5年半近く待たされたんだから‥‥それを思えば、この状況はまだマシだよね。いや、マシどころか歓迎すべきというか。

 さてさて。そんな前振りはこの辺にしておいて。作品について書いてみましょう。

 まずこのアルバム、作風としては前作「KNOW YOUR ENEMY」の延長線上ではなく、むしろそれ以降‥‥ベスト盤に収録された新曲群("There By The Grace Of God"、"Door To The River")の流れを組む楽曲集になっていると言えるでしょう。打ち込みと同期したバンドプレイ、ヒンヤリとした質感、感情の盛り上がりを抑えた中音域での歌唱、等。ポップな作風は代表作といえる4th「EVERYTHING MUST GO」や5th「THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS」の流れにあるといえるでしょうけど、そこともまた違う地平にたどり着いたかな、と。ただポップで穏やかなだけじゃないんですよね、今度のアルバムは。

 アレンジ等の装飾部分に関して言えば、ふたつの流れがあると思います。ひとつは制作中にメンバーが聴いていたというDEPECHE MODEやNEW ORDER(JOY DIVISIONもか)、「ベルリン三部作」時代のデヴィッド・ボウイ(思えばベスト盤ツアー時のオープニングSEはそのボウイの「LOW」でしたしね)からの影響と思わしき、エレクトロ・ポップ路線。プロデューサー陣にその方面の方々を迎えていることも大きいでしょう。ただ、完全な打ち込み方向へは進まず、あくまでも「バンド演奏の装飾としての同期プレイ」という姿勢は崩しておらず、そういう意味で未だに「ロックバンド」としての拘りみたいなものが感じられるかな。

 そしてもうひとつが、恐らくMANICSのメンバー自身が上記のようなバンド達と同じように影響を受けた'80年代初〜中盤に活躍した、ニューウェーブ〜ギターロックバンドからの影響。U2やTHE CURE、ECHO & THE BUNNYMEN等‥‥勿論それらからの影響はこれまでの作品からも垣間見ることができましたが、ここでは更に際だっているように感じられます。轟音系のギターが大幅に後退し、エフェクターを使いまくり、コードストロークよりもアルペジオ等のフレーズを駆使したギタープレイに、そういった要素が見出せるのではないでしょうか。個人的にはこれまであまり感じられなかった初期U2辺りからの影響を見つけることができたのは、かなり大きな収穫かな。

 歌の面に関しても、これまでの作品にあったような高音域でのシャウトや絶叫・絶唱がなくなり、おちついた歌い方や、新境地といえる低音域での歌唱等、今まで以上に冒険が感じられます。前作がどちらかというと原点回帰的なモチベーションで即興的に作られたようなイメージが強いのに対し、この「LIFEBLOOD」はより練り込まれた、作り込まれたイメージが強いですよね。歌詞の面にしろ、歌の面にしろ、そして全体的なスタイルにしろ。過去の作品をみても、1枚ポップな作品集を作ると、その反動で次が攻撃的でギラギラした作風になる、というような振り幅をみせてきてます(過去、同じような作風を連続で発表したのは、4th〜5thの流れのみ)。そういう意味でも、実は前作がリリースされた時点で、「やっぱりここまで(攻撃的に)やり尽くしちゃうと、次は落ち着いた路線なのかな?」と思っていた人は多いと思います。そしてベスト盤に収録された新曲を聴いて、その考えはあながち間違ってないことに気づくわけですよ。

 最初にシングル曲である "The Love Of Richard Nixon" を聴いた時は、さすがに衝撃を受けましたね。いい意味/悪い意味でいえば、俺は断然いい意味でだったんですが。けど中には悪い方に捉えた人も多かったみたいですね。攻撃的でパンキッシュなギターロックを期待してた人も、そして「EVERYTHING MUST GO」や「THIS IS MY TRUTH〜」路線を期待してた人も裏切るような、エレクトロ・ポップでしたからね。さらにギターは相当音数少ないし、暴れまくってない。単なる装飾品としての引っ込んだプレイだし、ボーカルも低音域とファルセットによるダブルボイスで、これまでとは完全に一線を画する作風。そりゃ、従来のMANICSを期待してた人からは苦情が挙がるはずだわ。けど、これを聴いて「MANICSぽくない」と感じたかというと、決してそんなことはないわけですよ。どこからどう聴いてもMANICSの楽曲そのものなわけですよ。この辺はもう、個々の価値観だったり、MANICSというバンドに対して求めるものだったり、個人の許容範囲(音楽の趣味)の問題ですよね‥‥まぁ盲目的に「MANICSなら何でもあり!」という人は別としてさ。

 アルバムは想像してた以上の内容でしたよ、個人的には。もっと全面的にエレクトロ寄りなのかと思ったけど、良い意味で2nd「GOLD AGAINST THE SOUL」や4th〜5thの流れを組みつつ、今の彼等にしか生み出せない要素を見事に融合させた、非常に素晴らしい作品集だと思ってるし、下手すると過去の作品の中でもかなりの上位に位置する程に好きな1枚ですよ。俺、「THE HOLY BIBLE」を別とすると、一番好きなアルバムって2ndか5thですからね。そういう意味では、それらの作品集を気に入っているという人には好意的に受け入れられるアルバムじゃないかな。ただ、攻めの要素が希釈なため、「MANICSはこうでなきゃ」という固定観念を頭に強く描いている人にはちょっと厳しい作品かもしれませんね(実際にそういう声、よく聴くし)。

 今のイギリスの流れ(COLDPLAYを始め、KEANEやSNOW PATROLといったバンド達がもてはやされる現状)を考えれば、これでもか!?ってくらいにフィットする作品であり、実際これまでにリリースしたシングル2枚("The Love Of Richard Nixon"、"Empty Souls")はどちらもチャートで上位入りしたものの、アルバムは何故か初登場13位(注釈:1位と書きましたが、どうやら13位だったみたいです。どこかで1位と読んだ気がしたんだけど‥‥)」。ライヴの方は大盛況みたいで、先日の地元・カーディフでのチャリティ・ライヴには英国過去最大の61,000人が集まったそうですよ。まぁそこには上に書いたようなKEANEやSNOW PATROLといったバンドも出演してたわけですが。

 それにひきかえ、日本での状況ときたら‥‥悲惨な有様ですよ。何だろう‥‥MANICSが日本で盛り上がるには、あと5年くらい必要なのかな‥‥あの「デビューアルバム1枚を全世界で1位にさせて解散する」とほざいた若造共が、20年も第一線で活躍しちまったぜ、ってな状況にでもならないとさ‥‥メディアも盛り上げ辛いのかな。精神構造とか、非常に難解なバンドだしな。

 そんな俺も、初めて彼等と英国で出会ってから、もう干支が一回り以上しちゃいましたよ。当時ハタチだった俺も、今や30代。ま、彼等とほぼ同年代だし、当たり前の話なんですが。

 もうすぐ、「あれ」から10年‥‥「彼」は今、このアルバムをどこかでちゃんと聴いてくれてるのかな‥‥



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投稿: 2005 01 27 12:00 午前 [2004年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク

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