QUEEN + PAUL RODGERS『RETURN OF THE CHAMPIONS』(2005)
QUEENはフレディ・マーキュリーが亡くなった時点で、ほぼ解散してしまったも同様なわけですよ。そう、1991年11月24日に幕を閉じたと言っても過言ではないのです。その翌年4月、残された3人のメンバーはさまざまなシンガーを迎えてチャリティーライヴを行い、それから数年後には生前に残されたフレディのボーカルトラックを用いて「ニューアルバム」を完成させ、さらに数年後には「フレディ抜きのQUEEN」として新曲まで発表しました。しかし、僕にとってのQUEENは間違いなく、あの日に終っていたんです。
QUEEN復活(敢えて「再結成」とは呼びません)について周囲がざわつき始めたのは、結構前の話です。当初はジョージ・マイケルをシンガーに迎えてアルバムを作るなんて話もありました。しかしここ数年、ロビー・ウィリアムスを迎えてツアーに出るのではないか?なんて噂が飛び交ったりもしました。
とあるイベントでブライアン・メイとポール・ロジャース(元FREE/元BAD COMPANY等)が共演したことが切っ掛けみたいですが、この両者とロジャー・テイラーが「QUEEN + PAUL RODGERS」名義でライヴツアーを行うことを発表。ライヴではポールがQUEENの曲を歌うだけでなく、FREEやBAD COMPANYの曲をQUEENのメンバーが演奏する、ということまで発表され、多くのQUEENファンは複雑な思いの中、その“復活の日”を待つことになったのです。さらにこのツアーにはQUEENのベーシスト、ジョン・ディーコンの姿はなく、バンドメンバーはQUEENやブライアン・メイのツアー・サポートメンバーによって固められていました。
当初、僕もこの組み合わせには疑問だったし、少々ガッカリしたのも確かでした。QUEENの歴史をあのままキレイに閉じてほしかった。しかし、この6月に新宿コマ劇場でミュージカル『WE WILL ROCK YOU』を観る機会がありまして。このとき、ああいう形でQUEENの名曲をライヴ形式で聴くことができ、ファンとしては非常に嬉しかったのも確かです。だって……僕、QUEENを生で一度も観たことなかったんですよ? 僕が彼らを知ったときには、すでに最後の来日公演が終了したあとだったんですから。ブラウン管の中でしか動くQUEENを観たことない世代なんですから……。
そんなことも手伝って、このライヴ盤『RETURN OF THE CHAMPIONS』にもフラットな気持ちで接することができたのです。QUEENの曲を、歌の上手いシンガー(しかもそれが大好きなバドカンのポール・ロジャース)が歌い、さらに懐かしい「All Right Now」や「Can't Get Enough」「Feel Like Makin' Love」といったFREE/バドカンの名曲まで聴くことができる。でも、それは決して自分の知ってるQUEENではない……そう素直に割り切ることができたのです。自分も大人になったんだなぁ。それが良いことなのか悪いことなのかは別としてね。
このライヴアルバム、非常に良い出来だと思います。ポール・ロジャースは十数年前に、マディ・ウォーターズのカバーアルバムをリリースした際にJOURNEYのニール・ショーンなどを引き連れた来日公演に観ているので、そのうまさに関しては熟知してるつもりですし、何気にBAD COMPANYも大好きなんですよ。昔、バンドでもコピーしてたほどですし。
そんな慣れ親しんだQUEENやバドカンの曲を2005年の現代に、ライヴで聴くことができるというのは、素直に喜ぶべきことなんじゃないですかね? 僕はそう思います。確かに曲によってはフレディのように歌えてないし、あるいはポールの声に合わせてキーを下げてる楽曲もあります。でも、逆にそれが「ポール・ロジャースらしさ」を垣間見せる機会となってるのも確か。フレディにはない枯れた感じ(共にソウルフルではあるけど、ブルージーさではポールのほうが数歩上じゃないでしょうか)が曲によってはマッチングしているし、またブライアン・メイがギターを弾く「All Right Now」というのも興味深い。ポール・コゾフは“向こう”でこれ聴いて、どう思うんですかね?
確かにこのアルバムの中で繰り広げられているのは、QUEENのあの名曲たちであり、僕の知ってるQUEENの断片なんだけど、でも……矛盾するけど、同時に僕の知ってるあのQUEENでもないんだよね。なんていうか、すごく庶民的で浮世離れしてない、素朴なQUEENというか。別にスケールダウンしてるわけじゃないんだけど、もっと手に届くところにいそうなイメージというか。それがポール・ロジャースによるものなのか、あるいはフレディの不在によるものなのかはわかりません。でも、それでも僕は素直に喜びたいと思う。だって来月、これらの曲を生で聴く機会を得ることができるんだから。
2005年10月30日。このアルバムを聴き込んで、横浜アリーナに臨もうと思います。二度とQUEENは観れないと思ってたのに、こういう形で実現する日が訪れようとは。少々複雑な心境もあるにはあるんですが……とりあえず、今はこのアルバムを心から楽しみたいです。

▼QUEEN + PAUL RODGERS『RETURN OF THE CHAMPIONS』
(amazon:日本盤/US盤)
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