カテゴリー「2006年の作品」の93件の記事

2023年3月12日 (日)

WINGER『IV』(2006)

2006年10月20日にリリースされたWINGERの4thアルバム。日本盤は同年10月25日発売。

前作『PULL』(1993年)での活動を経て、1994年にバンド活動を停止させたWINGER。その後、キップ・ウィンガー(Vo, B)はソロ活動に専念し、レブ・ビーチ(G)はアリス・クーパーのツアーサポートやDOKKENに参加するなど精力的な活動を続けます。そんな中、2001年にキップ、レブ、ロッド・モーゲンスタイン(Dr)、ポール・テイラー(G, Key)のオリジナルラインナップに後期メンバーのジョン・ロス(G)を加えた5人編成で復活。ベストアルバムのために新曲「On The Inside」をレコーディングしたほか、ツアーも実施しました。

その後ポールが再びバンドを離れ、『PULL』期の4人にセンク・エログル(G, Key)が加わった新編成で13年ぶりの新作を制作。キップ自身がプロデュース、エンジニアリング、ミックスを担当したWINGERの新章開始を告げる1枚を完成させます。

リリース当時、このアルバムを初めて聴いたときの印象は「地味。そしてムズイ!」。『PULL』のダークな世界観を継承しつつ、『IN THE HEART OF THE YOUNG』(1990年)などに見られたプログメタル的側面も随所に散りばめられたテイストなのですが、いかんせん楽曲に華がない。初期2作とは完全に別モノという気がしてしまいます。

おそらくキップ自身も、本来はこのアルバムはソロ作品の延長で手がけたものだったんじゃないでしょうか。そこにWINGERとしての新作制作が重なり、WINGERとして当時のキップのモードを表現しようとした。じゃなければ、もうちょっとわかりやすい内容になっていたと思いますし。

キーボーディストはフィーチャーしているものの、ギターバンド的なアレンジを全面に打ち出していること、録音も80年代〜90年代初頭的なファットなものではなく生々しさを重視したことが影響し、『PULL』をさらにオルタナメタル化させたような印象も強い。かつ、「Blue Suede Shoes」などを筆頭にフレージングやアレンジからTOOL以降のモダンメタルの影響も感じ取ることができる。もし『PULL』を“グランジ以降”と評するのならば、今作は“ニューメタル以降”といったところでしょうか。

個人的には「Your Great Escape」〜「Disappear」の組曲的構成や、後者におけるプログメタル的側面に初期のWINGERの香りも見つけられ、決して嫌いにはなれない1枚。ここに1曲くらい、わかりやすくキャッチーなメロディの楽曲(別にシングル向けのポップチューンという意味ではなく)が含まれていたら、もうちょっと入りやすかったんじゃないかな。まあ、これがあったからこそ続く『KARMA』(2009年)がああいう作品になったと思えば、経験しておいてよかった作品なのかもしれません。

 


▼WINGER『IV』
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2022年12月 6日 (火)

KISS『ALIVE! THE MILLENNIUM CONCERT』(2006)

2006年11月26日リリースのライブボックスセット『ALIVE! 1975-2000』に同梱された、KISSの未発表ライブアルバム。その後、2014年10月14日にアナログ&デジタルで単品リリースされています。

本作はそのタイトルからもわかるように、1999年12月31日にカナダ・バンクーバーのBC Place Stadiumで実施された年越しコンサートの模様を収録したもの。今の若い世代の方には馴染みが薄いかと思いますが、当時は20世紀から21世紀に移り変わることがお祭り騒ぎだったんですよ(「2000年問題」とか知らないんでしょうね。苦笑)。

ポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、エース・フレーリー(G, Vo)、ピーター・クリス(Dr, Vo)のオリメンで制作した19年ぶりのスタジオアルバム『PSYCHO CIRCUS』(1998年)を携え、1年がかりで実施したワールドツアーのクライマックスとなったバンクーバー公演は、記録によると全20曲が披露されているとのこと(エースのギターソロ、ジーンのベースソロを除く)。しかし、アルバム本編には厳選された15曲が収録。現在出回っているデジタル盤は「2,000 Man」「God Of Thunder」がボーナストラックとして追加された17曲バージョンで、アナログ盤はさらに「Detroit Rock City」を加えた全18曲バージョンとなっています。なお、アルバム未収録となったのは「Shock Me」と「Cold Gin」。

この頃になるとオリメン編成にも関わらず「Heaven's On Fire」や「I Love It Loud」「Lick It Up」もセットリストに復活。『PSYCHO CIRCUS』という新作を制作したことで、全体的にバランスが取れるようになったことが大きいのかな。とはいえ、同作からはタイトルトラックとエース歌唱の「Into the Void」のみなんですよね。『PSYCHO CIRCUS』を引っ提げたジャパンツアーは実現しなかっただけに、記録としてもう少し残してほしかったなあ。

録音からリリースされるまでに6年以上かかっていること、その後エースもピーターも脱退していることなどもあり、あとから追加修正はあまりされていないんじゃないかな。ポールのボーカルも冒頭の「Psycho Circus」を聴く限りでは修正しているようには思えないし。せいぜい歓声を大きめに被せた程度かな。

ピーターの叩く「Psycho Circus」は若干もっさりした印象で、ライブのオープニングにしては弱いような。けど、「Into The Void」での歯切れよいリズムはカッコいいんだよなあ(レコーディングでピーターが叩いたのは「Into The Void」だけみたいですしね)。

内容に関しては“いつもどおり”が強くて、評価が難しいところなんだけど……本作に関しては、オリジナル編成で「Heaven's On Fire」や「I Love It Loud」「Lick It Up」をプレイしているという点に尽きるかな。「Heaven's On Fire」はリズムが若干ゆったりめだけど、「I Love It Loud」は想像以上にヘヴィだし、「Lick It Up」も軽やかさがしっかり伝わる。ピーターのみならず、エースも彼なりに頑張っているのが伝わりますしね。

そもそも本作が2000年に入ってから『ALIVE IV』としてリリースされていたら、また歴史も変わったのかな。本作がヒットしていたら、オリメン時代がもう少し続いていたのかもしれませんが、そんな「たられば」話を今さらしてもね。

 


▼KISS『ALIVE! THE MILLENNIUM CONCERT』
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2022年12月 4日 (日)

KISSのベストアルバムを総括する(2022年版)

ブライアン・アダムスAEROSMITHに続く「ベストアルバムを総括する」シリーズ第3弾(シリーズだったのか……)はKISS。まあとにかくベスト盤やコンピ盤、ボックスセットが多い方々ですが、今回は数あるベスト盤の中からレーベル主導で制作された『MILLENNIUM COLLECTION』シリーズを除く、バンド側の公式リリースに絞ってセレクトしております。中には新曲やレアトラックなど含まないもの、現在廃盤でサブスクでも配信されていないものも含まれていますが、あえて掲載してみます。

とにかく非常に長いエントリーなので、心してお読みください……(苦笑)。

 

 

『DOUBLE PLATINUM』(1978)

 

1978年4月2日にリリースされたKISS初のグレイテストヒッツアルバム。アナログ2枚組、CD1枚もの。

リリース当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、エース・フレーリー(G, Vo)、ピーター・クリス(Dr, Vo)のオリジナル編成。新曲こそ皆無ですが、既存楽曲に加え「Strutter」のリテイクバージョン「Strutter '78」やリミックステイクなどが豊富。サブスクではApple Musicはフルで楽しめますが、Spotifyでは「Calling Dr. Love」と「Black Diamond」が歯抜け状態。Amazon Musicでは配信すらされていないようなので、どうにかしていただきたいものです。

詳しくはこちらのエントリーを参照のこと。

 


▼KISS『DOUBLE PLATINUM』
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『KILLERS』(1982)

 

1982年6月15日にリリースされた、KISSにとって2作目の公式コンピレーションアルバム。アナログ/CDともに1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、エース・フレーリー、エリック・カー(Dr, Vo)。日本やオーストラリアなどアメリカ以外の諸国で先行発売。当時はここでしか聴くことができなかった新曲4曲(「I'm A Legend Tonight」「Down On Your Knees」「Nowhere To Run」「Partners In Crime」)がかなり話題となりました。ジャケットにエースの姿はあるものの、当時はすでにバンドから脱退しており、新曲のレコーディングにはのちにバンドに加入するブルース・キューリック(G)の実兄ボブ・キューリック(G)がリードギターとして参加しています。

詳しくはこちらのエントリーを参照ください。

 


▼KISS『KILLERS』
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『CHIKARA』(1988)

 

1988年5月25日に日本限定でリリースされたコンピレーションアルバム。CD1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。この年の春に10年ぶり(ノンメイクアップ時代としては初めて)の来日公演が決定したことを受け、それにあわせて日本のみ10万枚限定で制作されたレアアイテム。今となっては10万枚も刷ったのか!って驚きですけどね。内容は「Rock And Roll All Nite」や「Love Gun」などの70年代ヒットよりも、「Creatures Of The Night」や「Lick It Up」「Heaven's On Fire」「Tears Are Falling」などの80'sヘアメタル期が中心。主にシングルカット/MV制作された楽曲が中心で、そんな中に「I Was Made For Lovin' You」のリミックスバージョンという初CD化レア音源が含まれているのが売りかな(のちに「Psycho Circus」シングルのカップリングで世界的にCD化されました)。

枚数限定生産ということで、現在は廃盤。ただ、中古盤ショップを回れば意外と簡単に見つけられるはず。値段もそこまで張っていないので(Amazonは論外!)、気になる方はぜひチェックしてみてください。

 


▼KISS『CHIKARA』
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『SMASHES, THRASHES & HITS』(1988)

 

1988年11月15日にリリースされた、KISSにとって3作目の公式コンピレーションアルバム。CD1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。日本では『CHIKARA』から間を空けずに発表されることになりましたが、『KILLERS』未発売だった北米などの海外諸国では『DOUBLE PLATINUM』以来10年ぶりのベスト盤。考えてみたら「I Was Made For Lovin' You」はもちろん、80年代の楽曲をまとめたコンピが10年も出ていなかった事実に驚かされます。

内容は「Let's Put The X In Sex」「(You Make Me) Rock Hard」の新曲2曲や、一部楽曲のリミックス、そしてエリック・カーが歌唱した「Beth」など、単なるベスト盤では片付けられない楽曲が多数。北米盤ではなぜか直近の新作『CRAZY NIGHTS』(1987年)からの楽曲が含まれていません(ヨーロッパ盤には「Crazy Crazy Nights」「Reason To Live」収録)。とはいえ、ヘアメタル期のヒットシングルが簡単におさらいできるので、実はもっとも手軽に楽しめる入門盤かもしれません。

詳しくはこちらのエントリーを参照ください。

 


▼KISS『SMASHES, THRASHES & HITS』
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『GREATEST KISS』(1997)

 

1997年4月8日にリリースされたKISSの公式コンピレーションアルバム第4弾。日本盤は1997年1月の来日公演にあわせて、1996年12月9日発売。CD1枚もの。

リリース当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、エース・フレーリー、ピーター・クリス(Dr, Vo)。オリジナル編成およびメイクアップ期へと回帰した彼らのワールドツアーにあわせて制作されたもので、北米、ヨーロッパ、日本とそれぞれ収録曲が一部異なるのが特徴。

これまでのコンピのように新曲やリミックス曲は皆無で、既発曲がリマスタリングされている程度。ただ、それだけでは売りがなさすぎるので、1996年6月28日のデトロイト公演から「Shout It Out Loud」のライブ音源を追加。こちらは当時MVも制作されています。

オリメン時代にこだわった選曲なので、『SMASHES, THRASHES & HITS』以降に生まれたヒット曲「Hide Your Heart」「Forever」「Unholy」などは未収録。ただ、北米盤以外では「God Gave Rock 'N' Roll To You II」が選出されているのが謎かも。なお、日本盤のみ海外盤未収録の「C'mon And Love Me」「Rock Bottom」がセレクトされております。このへん、いかにもですね。

サブスクでも聴くことができますが、Apple Musicでは日本盤バージョンで配信、Spotifyはヨーロッパバージョンでの配信のようです。

 


▼KISS『GREATEST KISS』
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2022年11月20日 (日)

ROCK STAR SUPERNOVA『ROCK STAR SUPERNOVA』(2006)

2006年11月21日にリリースされたROCK STAR SUPERNOVA唯一のオリジナルアルバム。日本盤未発売。

ROCK STAR SUPERNOVAは米・CBSのリアリティーショー番組『Rock Star』2ndシーズンを通じて結成されたスーパーバンドで、メンバーはトミー・リー(Dr/MOTLEY CRUE)、ジェイソン・ニューステッド(B/NEWSTED、ex. METALLICA、ex. VOIVODなど)、ギルビー・クラーク(G/ex. GUNS N' ROSES、ex. CANDYなど)と、同オーディションを勝ち抜いたルーカス・ロッシ(Vo, G)の4人。2006年初夏から始まったオーディションをルーカスが同年9月に勝ち抜き、その2ヶ月後にはアルバムリリースとなりました。

アルバムのプロデュースを担当したのは元MARVELOUS 3のフロントマンで、ソロアーティストとしてのみならずP!NKやアヴリル・ラヴィーンPUFFYなどとのコラボでも知られるブッチ・ウォーカー。楽曲制作にはブッチのほか、トミーと彼の仲間でもあるスコット・ハンフリー(MOTLEY CRUE、ロブ・ゾンビMETHODS OF MEYHEMなど)、ギルビー、そしてルーカスなどが名を連ねています。

MOTLEY CRUE、METALLICA、GUNS N' ROSESの現役/元メンバーが名を連ねていることもあり、サウンド的にはこの3バンドをミックスしたようなものを安易に想像しがちですが、そもそもブッチのプロデュース&ソングライティングが軸にあることから別モノになることは間違いなく、実際ここで展開されているサウンド/楽曲の大半は適度なハードさを備えたメロディアス&キャッチーなロックが中心。オーディションを勝ち抜いたルーカスのボーカルは適度なハスキーさを備えた、非常に心地よくて聴きやすいもので、ハードロック的アレンジが施されたブッチ流パワーポップ/ハードポップナンバーとの相性も抜群です。

リズム隊は非常にらしいヘヴィさを醸し出しているものの、楽曲の邪魔をすることなくオーソドックスなプレイに徹している印象。とはいえ、トミーは彼らしい派手なプレイやフレージングを随所に散りばめており、その一方でジェイソンは特に彼らしいさが前面に出ているとは言い切れない、縁の下の力持ち的プレイを心がけている。ギターに関しては、そもそもギルビー自身がGN'Rの前に元CANDYの一員をいう事実を思い出させてくれる、曲の魅力を見事に盛り上げるプレイ&アレンジを披露しており、本作の中でもっとも結果を残しているのではないでしょうか。

オープニングの「It's On」や「Make No Mistake... This Is The Take」のようなストレートでメロディアスなハードロックも存在するものの、むしろこのバンドは「Leave The Lights On」や「Be Yourself (And 5 Other Cliches)」みたいなパワーポップ然とした楽曲群を、トミーの派手なドラムとギルビーによる色彩豊かなギタープレイをバックに、ルーカスが耳障りのよい声質で歌うというポイントがミソかなと。適度な打ち込みを取り入れたミディアムナンバー「It's All Love」やモダンなテイストを散りばめたスローバラード「Can't Bring Myself To Light This Fuse」などは往年のハードロック/ヘアメタル的でもあるし、ポップパンクを通過したパワーポップと受け取ることもでき、意外と幅広くロックファンにアピールする内容ではないかと思いました。

ですが、このメンツならではといいますか、ROCK STAR SUPERNOVAというバンドならではの個性や「これ!」といえるキメの1曲は、本作からは見つけることができません。なので、スーパーバンド奇跡のデビュー作と受け取るよりも「鳴物入りでデビューしたルーカス・ロッシというシンガーを名うての名プレイヤーたちがバックアップしました」と解釈するのが正解かもしれません。各メンバーが在籍するバンドのファンがマストで聴くべき1枚とは言いませんが、トミー・リーが本作直前に発表したソロアルバム『TOMMYLAND: THE RIDE』(2005年)を気に入っていたリスナーやブッチ・ウォーカーworksファンなら問答無用で楽しめる内容だと思います。

なお、2007年にはジェイソンが脱退。代わりに元THE BLACK CROWESのジョニー・コルトが加わるものの、2008年には自然消滅してしまいます。アルバムも全米101位とそこまで大きな結果を残せなかったのも、自然消滅の一因かもしれません。

 


▼ROCK STAR SUPERNOVA『ROCK STAR SUPERNOVA』
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2022年6月26日 (日)

THE MARS VOLTA『AMPUTECHTURE』(2006)

2006年9月12日にリリースされたTHE MARS VOLTAの3rdアルバム。日本盤は同年8月30日先行発売。

全米4位という高記録を残した前作『FRANCES THE MUTE』(2005年)から1年半という短期間で届けられた今作は、全8曲/約76分という非常にボリューミーな内容。往年のKING CRIMSONにも通ずるプログレッシヴロック的アレンジとサイケデリックロック的な空間系の味付けが見事にフィットした、混沌としながらも実に聴きやすい1枚ではないでしょうか。

プロデュースをオマー・ロドリゲス・ロペス(G, Synth)、ミックスをリッチ・コスティ(MUSE、SIGUR ROS、BIFFY CLYROなど)、さらにゲストメンバーとしてバンドと親交の深いジョン・フルシアンテ(G/RED HOT CHILI PEPPERS)が全面参加という豪華な布陣が参加した本作は、2005年のSYSTEM OF A DOWNとのツアー中に制作を進行。7分を超える楽曲が全8曲中6曲、うち3曲は10分超えという大作揃いながらも、前作のように組曲という形をとっておらず、ある意味では前作以上にカオティックな内容と言えるかもしれません。

アルバム冒頭を飾る7分超えの「Vicarious Atonement」こそ調和が伝わるミディアム/スローナンバーですが、続く「Tetragrammaton」は約17分にもおよぶ超大作で、複雑な展開が繰り広げられるアレンジは変態そのもの。ですが、セドリック・ビクスラー・ザヴァラ(Vo)による艶やかな歌声とキャッチーなメロディの効果か、非常に聴きやすい仕上がりなんですよね。実はこのへん、先のKING CRIMSONにも通ずるものがあるなと。もちろん、オマーとセドリックのルーツでもあるラテンの要素も随所に散りばめられていることから、KING CRIMSONとも異なる独自性がかなり強まっているのですが。

3曲目「Vermicide」(4分強と本作で最短)まで聴いて気付くのですが、過去2作や前身のAT THE DRIVE-INにあったカオティックハードコアやカオティックなエモの要素が減退しており、激しさや派手さよりも“ムード”を重視しているように映ります。実験性はもちろん強いのですが、その実験色に唐突さや異端さはまったく感じられず、すべてが必要な要素・ピースで組み立てられていることにも気付かされる。これを“成熟”という表現でまとめるのは違うのかもしれませんが、バンドとしてひとつのピーク(到達点)にたどり着いたのではないか……そう感じる1枚ではないでしょうか。それがアバンギャルドさとキャッチーさの共存につながっているのではないか、と。

その結果、本作の完成とともにバンドの地盤を固めてきたジョン・セオドア(Dr)が脱退。第1期THE MARS VOLTAは否が応でも完結せざるを得ない状況に追い込まれるのでした。そういう意味も含め、個人的にはTHE MARS VOLTAというバンドにおける(現時点までの)最高傑作だと思っています。

 


▼THE MARS VOLTA『AMPUTECHTURE』
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2022年4月12日 (火)

AEROSMITHのベストアルバムを総括する(2022年版)

先日ブライアン・アダムスで試してみた、いちアーティストの公式ベストアルバム/コンピレーションアルバムをひとつのエントリーの中で総括する記事AEROSMITH版です。

AEROSMITHは1973年のデビュー以降、Columbia Records(1973〜1984)→Geffen Records(1985〜1997)→Columbia(1997〜2021)→Universal(2021〜)と移籍を繰り返してきましたが、現在は全カタログの権利をUniversalが取得したことで、今後Columbia/Sony時代の音源もUniversalからフィジカル再発/デジタル配信されることになりそうです。

そういった意味では、ここに記す代表的なコンピレーションアルバムのいくつかは今後、姿を消すことになるかもしれません。それでもこの機会に改めて、ひとつの記録として記事を残しておくのはアリかなと思い、今回の執筆に至りました。

選出したベストアルバムは、レーベル主導によるシリーズ企画(Universalの『THE MILLENNIUM COLLECION』など)を除く、新曲やレア曲などを含む9作品。中には廃盤になっていたりサブスクで聴けないものも含まれていますが、ご了承ください。また、すでに単独エントリーで公開済みの作品もありますが、その場合は該当記事のリンクを貼っておきますのでご参考ください。

 

 

『AEROSMITH'S GREATEST HITS』(1980)

 

1980年11月にリリースされた、バンド初のベストアルバム。

そのタイトルどおり、収録内容はシングル曲を中心にしたもので、アナログ時代ということで全10曲/約38分というコンパクトな内容でまとめられています。また、構成的にもリリース順に並べられているので、いきなり「Dream On」から始まるという曲順はロックバンド的にどうなのかな?という疑問も残ります。

収録曲のうち、「Same Old Song And Dance」「Sweet Emotion」「Kings And Queens」はイントロを短くした“シングル・エディット”バージョンで収録。「Walk This Way」もアルバムバージョンより10秒近く短い形にエディットされています。オリジナルバージョンに勝るものはありませんが、本作リリース当時は70年代の代表的シングル曲をひとまとめに楽しめるアルバムとして、非常に重宝されましたし、80年代後半の本格的復帰以降も『PERMANENT VACATION』(1987年)『PUMP』(1989年)とともにこのアルバムを愛聴したファンは少なくなかったはずです(注:Apple Musicなど一部ストリーミング配信版は各シングルエディットがアルバムバージョンに差し替えられているのでご注意を)。

また、映画サントラに提供したビートルズのカバー「Come Together」が収録されている点も注目ポイントかな。『LIVE! BOOTLEG』(1978年)ではライブバージョンを先に聴くことができましたが、スタジオテイクがエアロのアルバムに収録されるのはこれが初めて。そこも本作が長く愛された要因のひとつかなと。

なお、本作がリリースされた頃にはすでにバンドの人気も低迷期に突入しており、チャート的には大きな成功を収めることはありませんでしたが、そこから数年後の再ブレイクも手伝い、セールス的には現在までに1000万枚を超えるメガヒット作となっています。

 


▼AEROSMITH『AEROSMITH'S GREATEST HITS』
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『GEMS』(1988)

 

1988年11月にリリースされたAEROSMITHのコンピレーションアルバム。

『PERMANENT VACATION』(1987年)の大ヒットを受けて、前レーベルのColumbia Recordsが企画したコンピ版で、シングル曲中心でまとめられた前作『AEROSMITH'S GREATEST HITS』と比べるとその内容はかなり地味なもの。ただ、ライブで演奏される機会の多い「Mama Kin」や「Lord Of The Thighs」「Train Kept A-Rollin'」なども含まれていることから、“裏ベスト”的側面の強い1枚かなと。

本作最大の注目ポイントは、『LIVE! BOOTLEG』(1978年)のみで聴くことができた「Chip Away The Stone」の未発表スタジオテイクが収録されていること。この1曲のために当時本作を購入したというファンも少なくなかったはずです。実際、この曲は本作からシングルカットもされ(既存ライブ映像を使用したMVも制作)、ラジオヒットも記録しています。

今のようにサブクスやYouTubeも存在せず、過去のスタジオアルバムにまで手を出せなかった当時の中高生には本作に収録された「Rats In The Celler」や「Nobody's Fault」「Round And Round」「Jailbait」などはかなりカッコよく響いたものです。ここから『ROCKS』(1976年)『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)にも手を伸ばしていったビギナーは80年代後半、かなりの数存在していたはずですから。

コアなファンの中には、先述の『AEROSMITH'S GREATEST HITS』より本作のほうが好きという方も、意外と多かったりして。かくいう僕も本作、大好物ですからね。

 


▼AEROSMITH『GEMS』
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2022年2月21日 (月)

RED HOT CHILI PEPPERS『STADIUM ARCADIUM』(2006)

2006年5月9日にリリースされたRED HOT CHILI PEPPERSの9thアルバム。日本盤は同年5月10日発売。

全米2位、全英1位という好記録を残した前作『BY THE WAY』(2002年)のあと、Warner移籍後の楽曲を中心とした初の本格的なベストアルバム『GREATEST HITS』(2003年)、バンド初のライブアルバム『LIVE IN HYDE PARK』(2004年)を立て続けに発表したレッチリ。長期にわたるワールドツアーを経て、バンドは2004年秋から1年以上かけて新作制作に臨みます。

ジョン・フルシアンテ(G)を中心に楽曲制作が進められ、最終的に38曲もの新曲をレコーディング。当初はCD3枚組アルバムも計画していたそうですが、そこからさらに厳選された28曲を2枚のCDにまとめ、DISC 1を“JUPITER(木星)”、DISC 2を“MARS(火星)”とそれぞれ命名した大作アルバムが完成しました。

通常、ロックバンドが2枚組アルバムを制作すると、その内容はカラフルでバラエティ豊かなものになることが多いと思います。THE BEATLESなら『ホワイト・アルバム』(1968年)LED ZEPPELINなら『PHYSICAL GRAFFITI』(1975年)GUNS N' ROSESなら『USE YOUR ILLUSION I』および『同II』(1991年)SMASHING PUMPKINSなら『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995年)あたりがその代表的な例でしょう。ところが、レッチリの本作の場合は必ずしも上記のような過去の名盤とリンクするわけではありません。

本作は前々作『CALIFORNICATION』(1999年)、そして前作『BY THE WAY』の流れを汲む、同路線の決定版的内容。要するに、地味なのです。オープニングを飾る「Dani California」からして地味。派手なギミックで惹きつけるようなタイプではなく、じっくり聴かせる“作り込まれた”楽曲からスタートし、そのトーンを一定に保ちながらグラデーションを付けていく、そういう作風なのです。なもんですから、全28曲/約2時間を通して大きな波もなく、ユラユラと流れていくような印象を受ける。それに対して「退屈」や「オッサン趣味」と片付けることは簡単です。でもね、聴けば聴くほど奥が深い作品集なのです。

僕も正直、最初に聴いたときは「これは長く愛聴できるような内容ではないな」と若干肩をすくめた記憶があります。実際、本作を携えたライブ(同年夏のフジロック)の寒々しさといったら……野外、しかも苗場の夜に聴くにはちょっと地味だったのは否めません。それ以降、本作を聴く頻度はレッチリの全カタログ中、もっとも低かったのもまた事実です。

ところが、フルシアンテ再復帰&ニューアルバム『UNLIMITE LOVE』(2022年)を前に過去のアルバムを聴き返してみたところ……この2枚組アルバムはバンドのキャリアにおいて、もっとも濃厚で奥が深い作品であることに気付かされたのです。

1曲1曲の完成度は非常に高い。それは間違いない事実です。かつ、派手なアレンジで惹きつけるような細工は皆無で、むしろ職人による玄人好みのプレイが随所に散りばめられており、それらが過不足なく絶妙なバランス感でまとめ上げられている。特にフリー(B)&チャド・スミス(Dr)のリズム隊にフルシアンテが加わった鉄壁のアンサンブルに関しては、過去2作でのトライがひとつの頂点に達したが本作だと断言できます。

アンソニー・キーディス(Vo)のボーカルもエモーショナルなメロディを歌い上げるに十分な表現力が加わり、各楽曲の完成度をさらに高めている。また、フルシアンテもすべての楽曲でしっかりギターソロをフィーチャーし、地味な中にもロックバンドのシンプルなカッコよさを最良の形で体現している。ぶっちゃけ、ここまですべてがカチッと噛み合っているロックアルバム、そうはないと思いますよ。

個人的にはDISC 1の後半、「Torture Me」以降から高まる熱量と、同じくDISC 2の後半、「Make You Feel Better」以降の流れがロックバンドの理想形だと思うのですが、如何でしょう?(それと比べると、各DISCの前半はちょっと地味すぎかな?という印象も) 曲順次第ではさらに聴きやすいような気がして、そこだけが残念でなりません。

なんにせよ、『CALIFORNICATION』から始まった第2期フルシアンテ政権(苦笑)の究極の形が本作なのは、間違いなく、事実本国アメリカではついに初の1位を獲得するのですから。このほか、イギリスなど世界24ヶ国でアルバムチャート1位を記録。ここ日本でもオリコン総合チャート1位という快挙を成し遂げ、『FUJI ROCK FESTIVAL '06』でのヘッドライナーと、2007年6月の東京ドーム&京セラドーム大阪公演と二度の来日が実現し、「Dani California」と「Snow ((Hey Oh))」は映画『デスノート』および『デスノート the Last name』の主題歌にそれぞれ採用されるなど、ここ日本でも人気がピークに達しましたしね。しかし、ここですべてを出し切ったフルシアンテは2009年に再びバンドを脱退することになります。そういった意味でも、本作は究極であり臨界点でもあったわけですね。罪作りな大作アルバムです。

 


▼RED HOT CHILI PEPPERS『STADIUM ARCADIUM』
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2021年7月 5日 (月)

SKID ROW『REVOLUTIONS PER MINUTE』(2006)

2006年10月24日にリリースされたSKID ROWの5thアルバム。日本盤は同年12月20日発売。

ジョニー・ソーリンガー(Vo)を迎えて2作目のフルアルバム。ドラマーは前作参加のフィル・ヴァロン(ex. SIGON KICK)からデイヴ・ガラ(ex. BETTY BLOWTORCH、ex. BULLETBOYSなど)に交代しています。また、このアルバムではプロデューサーにデビュー作『SKID ROW』(1989年)や全米No.1アルバム『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)を手がけたマイケル・ワグナーが参加しています。

マイケル・ワグナープロデュース作ということで淡い期待をしてしまうわけですが……よせばいいのに(笑)。内容的には前作『THICKSKIN』(2003年)で展開したスタイルをより濃縮し、統一感を持たせた“USオルタナティヴロックの延長線上にあるハードロック”といったところでしょうか。前作でのぼんやりした印象から一転、今作からは迷いがまったく感じられないエネルギッシュな内容に仕上がっています。

グルーヴメタル的な楽曲も存在するのですが、それらがオルタナ路線からの派生という形でうまく消化されており、土着的オルタナ路線やパンキッシュな楽曲群と並んでも違和感なく楽しめる。また、パンクロック度が高まったことで、どこか『SLAVE TO THE GRIND』にも似た感触もある。これがマイケル・ワグナー効果でしょうか。

前作はジョニー加入前から制作していた楽曲も含まれていたでしょうし、なんなら90年代後半から書き溜めていた楽曲も多少は含まれていたでしょう。それもあって全体像が90年代的だったんですが、今作は(まだまだ90年代から抜け切れてはいないものの)2000年代に聴いてもあまり古臭さや時代遅れ感がない。バンドとしての一体感も良い形で作用して、新たなSKID ROWがようやくここで確立されたのかなという気がします。

THE ALARMが80年代半ばに生み出したヒットシングル「Strength」のカバーも収録されていますが、原曲のイメージから外れないアレンジは今作のテイストにも見事にマッチしている。きっとセバスチャン・バック(Vo)がいた頃ならセレクトしなかった1曲だと思いますが、ジョニーの声質や声域を考えると見事なカバーだと言えるでしょう。

唯一難点を挙げるとするならば、前作にあったバラードタイプの楽曲が皆無なこと。今作はレイチェル・ボラン(B)単独で書いた楽曲が全11曲中7曲と、彼のパンク魂がダイレクトに反映されたことも大きく、楽曲の幅は前作ほどではありません。統一感は文句なしですが、そういった点では物足りなさも感じてしまう。一長一短あるかと思いますが、『SLAVE TO THE GRIND』が好きなリスナーにも多少はアピールできる1枚だと断言しておきます。

 


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2019年10月 2日 (水)

NEW YORK DOLLS『ONE DAY IT WILL PLEASE US TO REMEMBER EVEN THIS』(2006)

2006年7月下旬に発表された、NEW YORK DOLLSの3rdアルバム。日本盤もほぼ同タイミングでリリースされています。

彼らがスタジオアルバムをリリースするのは『TOO MUCH TOO SOON』(1974年)以来、実に32年ぶりのこと。とはいえ、黄金期メンバーのジョニー・サンザース(G)もジェリー・ノーラン(Dr)も90年代前半に亡くなっているし、アーサー・ケイン(B)も2004年夏に白血病で亡くなっており、前作から残っているのはデヴィッド・ヨハンセン(Vo)とシルヴェイン・シルヴェイン(G)のみ。

そんな彼らをサポートしたのが、元HANOI ROCKSのサミ・ヤッファ(B)、日本では菅野よう子とのコラボレーションでも(一部で)知られるスティーヴ・コンテ(G)、そしてブライアン・デラニー(Dr)にブライアン・クーニン(Key)という編成。この6人で新生NEW YORK DOLLSとして本格的活動再開を果たしたわけです。

このアルバムのプロデュースを手がけたのは、AEROSMITHCHEAP TRICKなどでおなじみのジャック・ダグラス。さらにゲストアーティストとしてイギー・ポップやマイケル・スタイプ(当時R.E.M.)、トム・ゲイブル(AGAINST ME!/のちのトランスジェンダーを告白し、現在はローラ・ジェーン・グレイスと改名して女性として生活)といったシンガーや、ボ・ディドリー(G)などがプレイヤーとして参加。NEW YORK DOLLSの復活に華を添えています。

さて、気になる内容ですが……うん、ちゃんとNEW YORK DOLLSです。デヴィッド・ヨハンセンの声が年相応の老け方をしており、往年のグラマラスさはもはや見る影もありませんが、この年齢じゃないと醸し出せない渋みがこの音楽スタイルと見事に合致し、より説得力の強い音楽を生み出すことに成功しています。

楽曲的には初期の彼らにすでに備わっていたソウルやR&B……要するにモータウンの要素が強いロック/ポップスが中心で、オープニングを飾るハードドライヴィングな「We're All In Love」こそゴリゴリ感が若干強いですが、それでも彼らならではのしなやかさもにじみ出ており、最初から好感触。その後も時代を超越したスタンダードナンバー/ロックンロールが続いていきます。

無駄にスキャンダラスな要素がなくなったぶん、楽曲と演奏で勝負するしかないわけですが、本来このバンドはそっち側で戦うべき存在だったのではないでしょうか……そう思わずにはいられないほどに、32年の空白を感じさせない“つながり”が見出せる素晴らしい内容です。

恐らくですが、本作においてはオリジナルメンバーからしたらガキンチョでしかないサミやスティーヴの演奏面&ソングライティングでの活躍が非常に大きかったと思うのです。そしてそれは、続く4thアルバム『CAUSE I SEZ SO』でさらに強くなります(だからこそ、2人の脱退がバンドの寿命を縮めてしまったとも言えるわけですが)。

 


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2019年9月12日 (木)

THUNDER『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』(2006)

2006年10月末にリリースされた、THUNDER通算8作目のスタジオアルバム。ヨーロッパでは同年11月上旬に、日本では少々遅れ2007年2月下旬に発売されております。珍しいですね、THUNDERの日本盤がここまで遅れるのって。

前作『THE MAGNIFICENT SEVENTH!』(2005年)から1年9ヶ月と、再結成後も相変わらず勤勉さが目立つTHUNDERですが、そういった地道な活動も影響してか、今作は前作の全英70位を超える最高56位を記録。「The Devil Made Me Do It」(全英40位)というシングルヒットも生まれています。

本作の制作は、『THE MAGNIFICENT SEVENTH!』ツアー期間中の2005年11月から始動。206年2月のツアーファイナル後に制作が本格化し、ツアーで得た躍動感が良い形に曲作りやレコーディングに反映されたようです。

その結果、本作のサウンドは再始動後の過去2作と比べても非常に躍動感の強いもので、ハードロック然とした楽曲が多いような印象を受けます。それは前作のヘヴィさとはまた違う種類のもので、ライブバンドとして再び脂が乗ってきた感が伝わってきます。これ、過去のキャリアに重ねると2ndアルバム『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』(1992年)にとても近いような……そう思いません?

また、タイトルにあるロバート・ジョンソンの名前からも想像できるように、若干ブルース色も強まっているような。もっとも、完全にそれらしいのはオープニングトラック「Robert Johnson's Tombstone」のイントロぐらいなんですけどね。

「A Million Faces」や「My Darkest Hour」のような渋みの増したアコースティックバラードも、「It's All About You」といったピアノバラード(こちらはちょっとビートルズ的な香りもします)もあるんですけど、過去の作品ほど強いインパクトを残すものではない気が。

そのぶん、どこかLED ZEPPELIN的でもある「Last Man Standing」なんていう変化球があったりと、やっぱり本作の軸にあるのはダイナミックでハードなロックナンバーなんですよね。そういった点においては、バラードも珠玉の名曲が多かった『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』ともまた違うのかもしれませんが。

ロックバンドとして完全に息を吹き返した感の強い、生命力に満ちた1枚。だからこそ、ここからさらにバンドは続いていくと誰もが信じていたわけですが、二度目の終わりは意外と早くに訪れるのでした……。

 


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