前作『PULL』(1993年)での活動を経て、1994年にバンド活動を停止させたWINGER。その後、キップ・ウィンガー(Vo, B)はソロ活動に専念し、レブ・ビーチ(G)はアリス・クーパーのツアーサポートやDOKKENに参加するなど精力的な活動を続けます。そんな中、2001年にキップ、レブ、ロッド・モーゲンスタイン(Dr)、ポール・テイラー(G, Key)のオリジナルラインナップに後期メンバーのジョン・ロス(G)を加えた5人編成で復活。ベストアルバムのために新曲「On The Inside」をレコーディングしたほか、ツアーも実施しました。
リリース当時、このアルバムを初めて聴いたときの印象は「地味。そしてムズイ!」。『PULL』のダークな世界観を継承しつつ、『IN THE HEART OF THE YOUNG』(1990年)などに見られたプログメタル的側面も随所に散りばめられたテイストなのですが、いかんせん楽曲に華がない。初期2作とは完全に別モノという気がしてしまいます。
個人的には「Your Great Escape」〜「Disappear」の組曲的構成や、後者におけるプログメタル的側面に初期のWINGERの香りも見つけられ、決して嫌いにはなれない1枚。ここに1曲くらい、わかりやすくキャッチーなメロディの楽曲(別にシングル向けのポップチューンという意味ではなく)が含まれていたら、もうちょっと入りやすかったんじゃないかな。まあ、これがあったからこそ続く『KARMA』(2009年)がああいう作品になったと思えば、経験しておいてよかった作品なのかもしれません。
本作はそのタイトルからもわかるように、1999年12月31日にカナダ・バンクーバーのBC Place Stadiumで実施された年越しコンサートの模様を収録したもの。今の若い世代の方には馴染みが薄いかと思いますが、当時は20世紀から21世紀に移り変わることがお祭り騒ぎだったんですよ(「2000年問題」とか知らないんでしょうね。苦笑)。
ポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、エース・フレーリー(G, Vo)、ピーター・クリス(Dr, Vo)のオリメンで制作した19年ぶりのスタジオアルバム『PSYCHO CIRCUS』(1998年)を携え、1年がかりで実施したワールドツアーのクライマックスとなったバンクーバー公演は、記録によると全20曲が披露されているとのこと(エースのギターソロ、ジーンのベースソロを除く)。しかし、アルバム本編には厳選された15曲が収録。現在出回っているデジタル盤は「2,000 Man」「God Of Thunder」がボーナストラックとして追加された17曲バージョンで、アナログ盤はさらに「Detroit Rock City」を加えた全18曲バージョンとなっています。なお、アルバム未収録となったのは「Shock Me」と「Cold Gin」。
この頃になるとオリメン編成にも関わらず「Heaven's On Fire」や「I Love It Loud」「Lick It Up」もセットリストに復活。『PSYCHO CIRCUS』という新作を制作したことで、全体的にバランスが取れるようになったことが大きいのかな。とはいえ、同作からはタイトルトラックとエース歌唱の「Into the Void」のみなんですよね。『PSYCHO CIRCUS』を引っ提げたジャパンツアーは実現しなかっただけに、記録としてもう少し残してほしかったなあ。
ピーターの叩く「Psycho Circus」は若干もっさりした印象で、ライブのオープニングにしては弱いような。けど、「Into The Void」での歯切れよいリズムはカッコいいんだよなあ(レコーディングでピーターが叩いたのは「Into The Void」だけみたいですしね)。
内容に関しては“いつもどおり”が強くて、評価が難しいところなんだけど……本作に関しては、オリジナル編成で「Heaven's On Fire」や「I Love It Loud」「Lick It Up」をプレイしているという点に尽きるかな。「Heaven's On Fire」はリズムが若干ゆったりめだけど、「I Love It Loud」は想像以上にヘヴィだし、「Lick It Up」も軽やかさがしっかり伝わる。ピーターのみならず、エースも彼なりに頑張っているのが伝わりますしね。
当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、エース・フレーリー、エリック・カー(Dr, Vo)。日本やオーストラリアなどアメリカ以外の諸国で先行発売。当時はここでしか聴くことができなかった新曲4曲(「I'm A Legend Tonight」「Down On Your Knees」「Nowhere To Run」「Partners In Crime」)がかなり話題となりました。ジャケットにエースの姿はあるものの、当時はすでにバンドから脱退しており、新曲のレコーディングにはのちにバンドに加入するブルース・キューリック(G)の実兄ボブ・キューリック(G)がリードギターとして参加しています。
当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。この年の春に10年ぶり(ノンメイクアップ時代としては初めて)の来日公演が決定したことを受け、それにあわせて日本のみ10万枚限定で制作されたレアアイテム。今となっては10万枚も刷ったのか!って驚きですけどね。内容は「Rock And Roll All Nite」や「Love Gun」などの70年代ヒットよりも、「Creatures Of The Night」や「Lick It Up」「Heaven's On Fire」「Tears Are Falling」などの80'sヘアメタル期が中心。主にシングルカット/MV制作された楽曲が中心で、そんな中に「I Was Made For Lovin' You」のリミックスバージョンという初CD化レア音源が含まれているのが売りかな(のちに「Psycho Circus」シングルのカップリングで世界的にCD化されました)。
当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。日本では『CHIKARA』から間を空けずに発表されることになりましたが、『KILLERS』未発売だった北米などの海外諸国では『DOUBLE PLATINUM』以来10年ぶりのベスト盤。考えてみたら「I Was Made For Lovin' You」はもちろん、80年代の楽曲をまとめたコンピが10年も出ていなかった事実に驚かされます。
内容は「Let's Put The X In Sex」「(You Make Me) Rock Hard」の新曲2曲や、一部楽曲のリミックス、そしてエリック・カーが歌唱した「Beth」など、単なるベスト盤では片付けられない楽曲が多数。北米盤ではなぜか直近の新作『CRAZY NIGHTS』(1987年)からの楽曲が含まれていません(ヨーロッパ盤には「Crazy Crazy Nights」「Reason To Live」収録)。とはいえ、ヘアメタル期のヒットシングルが簡単におさらいできるので、実はもっとも手軽に楽しめる入門盤かもしれません。
これまでのコンピのように新曲やリミックス曲は皆無で、既発曲がリマスタリングされている程度。ただ、それだけでは売りがなさすぎるので、1996年6月28日のデトロイト公演から「Shout It Out Loud」のライブ音源を追加。こちらは当時MVも制作されています。
オリメン時代にこだわった選曲なので、『SMASHES, THRASHES & HITS』以降に生まれたヒット曲「Hide Your Heart」「Forever」「Unholy」などは未収録。ただ、北米盤以外では「God Gave Rock 'N' Roll To You II」が選出されているのが謎かも。なお、日本盤のみ海外盤未収録の「C'mon And Love Me」「Rock Bottom」がセレクトされております。このへん、いかにもですね。
MOTLEY CRUE、METALLICA、GUNS N' ROSESの現役/元メンバーが名を連ねていることもあり、サウンド的にはこの3バンドをミックスしたようなものを安易に想像しがちですが、そもそもブッチのプロデュース&ソングライティングが軸にあることから別モノになることは間違いなく、実際ここで展開されているサウンド/楽曲の大半は適度なハードさを備えたメロディアス&キャッチーなロックが中心。オーディションを勝ち抜いたルーカスのボーカルは適度なハスキーさを備えた、非常に心地よくて聴きやすいもので、ハードロック的アレンジが施されたブッチ流パワーポップ/ハードポップナンバーとの相性も抜群です。
オープニングの「It's On」や「Make No Mistake... This Is The Take」のようなストレートでメロディアスなハードロックも存在するものの、むしろこのバンドは「Leave The Lights On」や「Be Yourself (And 5 Other Cliches)」みたいなパワーポップ然とした楽曲群を、トミーの派手なドラムとギルビーによる色彩豊かなギタープレイをバックに、ルーカスが耳障りのよい声質で歌うというポイントがミソかなと。適度な打ち込みを取り入れたミディアムナンバー「It's All Love」やモダンなテイストを散りばめたスローバラード「Can't Bring Myself To Light This Fuse」などは往年のハードロック/ヘアメタル的でもあるし、ポップパンクを通過したパワーポップと受け取ることもでき、意外と幅広くロックファンにアピールする内容ではないかと思いました。
ですが、このメンツならではといいますか、ROCK STAR SUPERNOVAというバンドならではの個性や「これ!」といえるキメの1曲は、本作からは見つけることができません。なので、スーパーバンド奇跡のデビュー作と受け取るよりも「鳴物入りでデビューしたルーカス・ロッシというシンガーを名うての名プレイヤーたちがバックアップしました」と解釈するのが正解かもしれません。各メンバーが在籍するバンドのファンがマストで聴くべき1枚とは言いませんが、トミー・リーが本作直前に発表したソロアルバム『TOMMYLAND: THE RIDE』(2005年)を気に入っていたリスナーやブッチ・ウォーカーworksファンなら問答無用で楽しめる内容だと思います。
なお、2007年にはジェイソンが脱退。代わりに元THE BLACK CROWESのジョニー・コルトが加わるものの、2008年には自然消滅してしまいます。アルバムも全米101位とそこまで大きな結果を残せなかったのも、自然消滅の一因かもしれません。
▼ROCK STAR SUPERNOVA『ROCK STAR SUPERNOVA』 (amazon:海外盤CD)
2006年9月12日にリリースされたTHE MARS VOLTAの3rdアルバム。日本盤は同年8月30日先行発売。
全米4位という高記録を残した前作『FRANCES THE MUTE』(2005年)から1年半という短期間で届けられた今作は、全8曲/約76分という非常にボリューミーな内容。往年のKING CRIMSONにも通ずるプログレッシヴロック的アレンジとサイケデリックロック的な空間系の味付けが見事にフィットした、混沌としながらも実に聴きやすい1枚ではないでしょうか。
プロデュースをオマー・ロドリゲス・ロペス(G, Synth)、ミックスをリッチ・コスティ(MUSE、SIGUR ROS、BIFFY CLYROなど)、さらにゲストメンバーとしてバンドと親交の深いジョン・フルシアンテ(G/RED HOT CHILI PEPPERS)が全面参加という豪華な布陣が参加した本作は、2005年のSYSTEM OF A DOWNとのツアー中に制作を進行。7分を超える楽曲が全8曲中6曲、うち3曲は10分超えという大作揃いながらも、前作のように組曲という形をとっておらず、ある意味では前作以上にカオティックな内容と言えるかもしれません。
3曲目「Vermicide」(4分強と本作で最短)まで聴いて気付くのですが、過去2作や前身のAT THE DRIVE-INにあったカオティックハードコアやカオティックなエモの要素が減退しており、激しさや派手さよりも“ムード”を重視しているように映ります。実験性はもちろん強いのですが、その実験色に唐突さや異端さはまったく感じられず、すべてが必要な要素・ピースで組み立てられていることにも気付かされる。これを“成熟”という表現でまとめるのは違うのかもしれませんが、バンドとしてひとつのピーク(到達点)にたどり着いたのではないか……そう感じる1枚ではないでしょうか。それがアバンギャルドさとキャッチーさの共存につながっているのではないか、と。
その結果、本作の完成とともにバンドの地盤を固めてきたジョン・セオドア(Dr)が脱退。第1期THE MARS VOLTAは否が応でも完結せざるを得ない状況に追い込まれるのでした。そういう意味も含め、個人的にはTHE MARS VOLTAというバンドにおける(現時点までの)最高傑作だと思っています。
収録曲のうち、「Same Old Song And Dance」「Sweet Emotion」「Kings And Queens」はイントロを短くした“シングル・エディット”バージョンで収録。「Walk This Way」もアルバムバージョンより10秒近く短い形にエディットされています。オリジナルバージョンに勝るものはありませんが、本作リリース当時は70年代の代表的シングル曲をひとまとめに楽しめるアルバムとして、非常に重宝されましたし、80年代後半の本格的復帰以降も『PERMANENT VACATION』(1987年)や『PUMP』(1989年)とともにこのアルバムを愛聴したファンは少なくなかったはずです(注:Apple Musicなど一部ストリーミング配信版は各シングルエディットがアルバムバージョンに差し替えられているのでご注意を)。
『PERMANENT VACATION』(1987年)の大ヒットを受けて、前レーベルのColumbia Recordsが企画したコンピ版で、シングル曲中心でまとめられた前作『AEROSMITH'S GREATEST HITS』と比べるとその内容はかなり地味なもの。ただ、ライブで演奏される機会の多い「Mama Kin」や「Lord Of The Thighs」「Train Kept A-Rollin'」なども含まれていることから、“裏ベスト”的側面の強い1枚かなと。
本作最大の注目ポイントは、『LIVE! BOOTLEG』(1978年)のみで聴くことができた「Chip Away The Stone」の未発表スタジオテイクが収録されていること。この1曲のために当時本作を購入したというファンも少なくなかったはずです。実際、この曲は本作からシングルカットもされ(既存ライブ映像を使用したMVも制作)、ラジオヒットも記録しています。
今のようにサブクスやYouTubeも存在せず、過去のスタジオアルバムにまで手を出せなかった当時の中高生には本作に収録された「Rats In The Celler」や「Nobody's Fault」「Round And Round」「Jailbait」などはかなりカッコよく響いたものです。ここから『ROCKS』(1976年)や『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)にも手を伸ばしていったビギナーは80年代後半、かなりの数存在していたはずですから。
全米2位、全英1位という好記録を残した前作『BY THE WAY』(2002年)のあと、Warner移籍後の楽曲を中心とした初の本格的なベストアルバム『GREATEST HITS』(2003年)、バンド初のライブアルバム『LIVE IN HYDE PARK』(2004年)を立て続けに発表したレッチリ。長期にわたるワールドツアーを経て、バンドは2004年秋から1年以上かけて新作制作に臨みます。
本作は前々作『CALIFORNICATION』(1999年)、そして前作『BY THE WAY』の流れを汲む、同路線の決定版的内容。要するに、地味なのです。オープニングを飾る「Dani California」からして地味。派手なギミックで惹きつけるようなタイプではなく、じっくり聴かせる“作り込まれた”楽曲からスタートし、そのトーンを一定に保ちながらグラデーションを付けていく、そういう作風なのです。なもんですから、全28曲/約2時間を通して大きな波もなく、ユラユラと流れていくような印象を受ける。それに対して「退屈」や「オッサン趣味」と片付けることは簡単です。でもね、聴けば聴くほど奥が深い作品集なのです。
個人的にはDISC 1の後半、「Torture Me」以降から高まる熱量と、同じくDISC 2の後半、「Make You Feel Better」以降の流れがロックバンドの理想形だと思うのですが、如何でしょう?(それと比べると、各DISCの前半はちょっと地味すぎかな?という印象も) 曲順次第ではさらに聴きやすいような気がして、そこだけが残念でなりません。
なんにせよ、『CALIFORNICATION』から始まった第2期フルシアンテ政権(苦笑)の究極の形が本作なのは、間違いなく、事実本国アメリカではついに初の1位を獲得するのですから。このほか、イギリスなど世界24ヶ国でアルバムチャート1位を記録。ここ日本でもオリコン総合チャート1位という快挙を成し遂げ、『FUJI ROCK FESTIVAL '06』でのヘッドライナーと、2007年6月の東京ドーム&京セラドーム大阪公演と二度の来日が実現し、「Dani California」と「Snow ((Hey Oh))」は映画『デスノート』および『デスノート the Last name』の主題歌にそれぞれ採用されるなど、ここ日本でも人気がピークに達しましたしね。しかし、ここですべてを出し切ったフルシアンテは2009年に再びバンドを脱退することになります。そういった意味でも、本作は究極であり臨界点でもあったわけですね。罪作りな大作アルバムです。
グルーヴメタル的な楽曲も存在するのですが、それらがオルタナ路線からの派生という形でうまく消化されており、土着的オルタナ路線やパンキッシュな楽曲群と並んでも違和感なく楽しめる。また、パンクロック度が高まったことで、どこか『SLAVE TO THE GRIND』にも似た感触もある。これがマイケル・ワグナー効果でしょうか。
THE ALARMが80年代半ばに生み出したヒットシングル「Strength」のカバーも収録されていますが、原曲のイメージから外れないアレンジは今作のテイストにも見事にマッチしている。きっとセバスチャン・バック(Vo)がいた頃ならセレクトしなかった1曲だと思いますが、ジョニーの声質や声域を考えると見事なカバーだと言えるでしょう。
唯一難点を挙げるとするならば、前作にあったバラードタイプの楽曲が皆無なこと。今作はレイチェル・ボラン(B)単独で書いた楽曲が全11曲中7曲と、彼のパンク魂がダイレクトに反映されたことも大きく、楽曲の幅は前作ほどではありません。統一感は文句なしですが、そういった点では物足りなさも感じてしまう。一長一短あるかと思いますが、『SLAVE TO THE GRIND』が好きなリスナーにも多少はアピールできる1枚だと断言しておきます。
▼SKID ROW『REVOLUTIONS PER MINUTE』 (amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3)
2006年7月下旬に発表された、NEW YORK DOLLSの3rdアルバム。日本盤もほぼ同タイミングでリリースされています。
彼らがスタジオアルバムをリリースするのは『TOO MUCH TOO SOON』(1974年)以来、実に32年ぶりのこと。とはいえ、黄金期メンバーのジョニー・サンザース(G)もジェリー・ノーラン(Dr)も90年代前半に亡くなっているし、アーサー・ケイン(B)も2004年夏に白血病で亡くなっており、前作から残っているのはデヴィッド・ヨハンセン(Vo)とシルヴェイン・シルヴェイン(G)のみ。
そんな彼らをサポートしたのが、元HANOI ROCKSのサミ・ヤッファ(B)、日本では菅野よう子とのコラボレーションでも(一部で)知られるスティーヴ・コンテ(G)、そしてブライアン・デラニー(Dr)にブライアン・クーニン(Key)という編成。この6人で新生NEW YORK DOLLSとして本格的活動再開を果たしたわけです。
このアルバムのプロデュースを手がけたのは、AEROSMITHやCHEAP TRICKなどでおなじみのジャック・ダグラス。さらにゲストアーティストとしてイギー・ポップやマイケル・スタイプ(当時R.E.M.)、トム・ゲイブル(AGAINST ME!/のちのトランスジェンダーを告白し、現在はローラ・ジェーン・グレイスと改名して女性として生活)といったシンガーや、ボ・ディドリー(G)などがプレイヤーとして参加。NEW YORK DOLLSの復活に華を添えています。
さて、気になる内容ですが……うん、ちゃんとNEW YORK DOLLSです。デヴィッド・ヨハンセンの声が年相応の老け方をしており、往年のグラマラスさはもはや見る影もありませんが、この年齢じゃないと醸し出せない渋みがこの音楽スタイルと見事に合致し、より説得力の強い音楽を生み出すことに成功しています。
楽曲的には初期の彼らにすでに備わっていたソウルやR&B……要するにモータウンの要素が強いロック/ポップスが中心で、オープニングを飾るハードドライヴィングな「We're All In Love」こそゴリゴリ感が若干強いですが、それでも彼らならではのしなやかさもにじみ出ており、最初から好感触。その後も時代を超越したスタンダードナンバー/ロックンロールが続いていきます。
恐らくですが、本作においてはオリジナルメンバーからしたらガキンチョでしかないサミやスティーヴの演奏面&ソングライティングでの活躍が非常に大きかったと思うのです。そしてそれは、続く4thアルバム『CAUSE I SEZ SO』でさらに強くなります(だからこそ、2人の脱退がバンドの寿命を縮めてしまったとも言えるわけですが)。
▼NEW YORK DOLLS『ONE DAY IT WILL PLEASE US TO REMEMBER EVEN THIS』 (amazon:国内盤CD / 国内盤CD+DVD / 海外盤CD / MP3)
前作『THE MAGNIFICENT SEVENTH!』(2005年)から1年9ヶ月と、再結成後も相変わらず勤勉さが目立つTHUNDERですが、そういった地道な活動も影響してか、今作は前作の全英70位を超える最高56位を記録。「The Devil Made Me Do It」(全英40位)というシングルヒットも生まれています。
その結果、本作のサウンドは再始動後の過去2作と比べても非常に躍動感の強いもので、ハードロック然とした楽曲が多いような印象を受けます。それは前作のヘヴィさとはまた違う種類のもので、ライブバンドとして再び脂が乗ってきた感が伝わってきます。これ、過去のキャリアに重ねると2ndアルバム『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』(1992年)にとても近いような……そう思いません?
「A Million Faces」や「My Darkest Hour」のような渋みの増したアコースティックバラードも、「It's All About You」といったピアノバラード(こちらはちょっとビートルズ的な香りもします)もあるんですけど、過去の作品ほど強いインパクトを残すものではない気が。
そのぶん、どこかLED ZEPPELIN的でもある「Last Man Standing」なんていう変化球があったりと、やっぱり本作の軸にあるのはダイナミックでハードなロックナンバーなんですよね。そういった点においては、バラードも珠玉の名曲が多かった『LAUGHING ON JUDGEMENT DAY』ともまた違うのかもしれませんが。