カテゴリー「2007年の作品」の54件の記事

2020年7月19日 (日)

NINE INCH NAILS『YEAR ZERO』(2007)

2007年4月にリリースされたNINE INCH NAILS通算5作目のオリジナルアルバム。

前作『WITH TEETH』(2005年)が約6年ぶりのオリジナルアルバムだったこともあり、この『YEAR ZERO』までの2年というインターバルはNINE INCH NAILSにとって非常に短いもので、当時かなり驚かされた記憶があります(その驚きは、続く『GHOST I-IV』や『THE SLIP』でさらに更新されるのですが)。全米1位を獲得した『WITH TEETH』からの流れで、今作も最高2位という好記録を樹立しています。

作風としては、前作『WITH TEETH』が生音を軸に“インダストリアル・ロックバンドNINE INCH NAILS”を表現したものだとするならば、今作は“トレント・レズナーのインダストリアル・ユニットNINE INCH NAILS”をより濃く表したものかなと。事実、ジョシュ・フリース(Dr)による生ドラムによるトラックは2曲のみで、それ以外は打ち込み主体の、良い意味で初期NINを彷彿とさせる楽曲ばかり。もっと言えばデビューアルバム『PRETTY HATE MACHINE』(1989年)を約20年後に、最新の技術を用いて焼き直した、そんな印象すら受けます。

言い方は正しくないかもしれませんが、前作を「ロックバンドとしての初期衝動を、大人になったトレント・レズナーなりの表現で手堅くまとめた」ものだとしたら、今回は「アーティストとしての初期衝動を、大人になったトレントが今の知識・技術を用いて手堅くまとめた」……そう受け取ることはできないでしょうか。

「手堅く」と書くと、ちょっとネガティブに受け取られるかもしれませんが、これはもちろん褒め言葉。アーティスティックな側面は前作よりも本作のほうが色濃く表れているものの、しっかり「プロダクツ」としての完成度も考えられている。そのへんを「手堅く」と言い表したのですが……理解していただけますか?

ぶっちゃけ、NINE INCH NAILSとしてやるべきこと、やりたいことって90年代のうちに(1999年発売の大作『THE FRAGILE』で)やり尽くしてしまったわけで、そこを踏まえて『WITH TEETH』や『YEAR ZERO』を聴くと改めて“NINの再生”というテーマが見えてくる……のではないでしょうか。その“再生”が果たしてうまくいったのか、失敗だったのかはわかりません。しかし、新しい“何か”を見つけることができなかったから、この数年後にトレントはNINとしての活動を一度止めることになるわけでして。

とはいいつつ、本作にはブラックミュージックからの影響も見え隠れする。ファンクというよりはヒップホップ以降のリズム感が、エレクトロニック・ボディ・ミュージック(EBM)とミックスすることで生まれる、歪なインダストリアル感……そこに関しては、ひとつ新たな発見や成長を得られたのかな。NINがここで終わらずにもう数年延命したのは、そういった影響も少なくないと思います。

終始安心して楽しめる1枚だけど、作り手としてはそういう作品は求めていなかったのかな。個人的には先の『WITH TEETH』とあわせて二部作的なポジションで楽しむべき、NINの集大成的1枚だと思っています。

 


▼NINE INCH NAILS『YEAR ZERO』
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2020年7月10日 (金)

LED ZEPPELIN『THE SONG REMAINS THE SAME』(1976/2007)

1976年10月にリリースされたLED ZEPPELIN初のライブアルバム。

同作はアルバム発売と同タイミングに劇場公開された映画『レッド・ツェッペリン狂熱のライヴ(THE SONG REMAINS THE SAME)』のサウンドトラック的立ち位置の2枚組作品で、1976年3月発売の7thアルバム『PRESENCE』から約半年という短いスパンでリリースされたにも関わらず同作以上の売り上げを記録しました(全英1位、全米2位)。

映画のほうは1973年7月末に行われたマディソン・スクエア・ガーデンでのライブ映像を軸に、メンバー4人のイメージ映像などがフィーチャーされたサイケデリックさを併せ持つ内容。80年代前半にVHSにて販売され、当時は唯一手に入れることができる「ツェッペリンの公式ライブ映像」としてかなり重宝しました。と同時に、このライブアルバムもスタジオワークとは異なる、生々しい演奏と歌を味わうことができるという点で、オリジナルアルバム以上にリピートしたというリスナーも少なくなかったと思います(筆者も含む)。

サントラとはいえ、収録曲の曲順は映画の流れに沿ったものではなく、中には映画で使用されていない「Celebration Day」も含まれている。かつ、映画にはアルバムには未収録の「Black Dog」「Since I've Been Loving You」「Heartbreaker」も(フルではないものの)収録されている。つまり、どちらも実際のライブをフル収録したものではないことが伺えます。とはいえ、1973年当時(時期的には5thアルバム『HOUSES OF THE HOLEY』リリース後)のベスト選曲的なライブ音源を楽しむことができるし(選曲は5枚目に偏ってますけどね)、なによりも「弾けているようで弾けていないジミー・ペイジ」や「どんどん高音域が出なくなっているため初期の楽曲をうまくごまかしながら歌うロバート・プラント」「ライブでキーボード主体の曲を演奏するときは、ベースはフットペダルで対応するジョン・ポール・ジョーンズ」「どんなときでもすごいジョン・ボーナム」という奇跡の4人(笑)の実力を思う存分堪能できるので、90年代半ばまではかなり重要な作品だったと言えます。

それこそ、よく言われる「ライブだとインプロヴィゼーションが加わり、1曲の長さがどんどん延びていく」という現象も「Dazed And Confused」や「Moby Dick」「Whole Lotta Love」で存分に理解できるはず。「Dazed And Confused」なんて27分にもおよぶ熱演で(それでも編集されて若干短くなっているわけですが)、アナログ盤では片面で1曲使うほどでしたからね(笑)。

さて、そんな本作ですが、2007年11月にはリリース30周年を記念したリミックス/リマスター/再編集盤を発表。こちらは映画でのみ聴くことができた3曲のフルバージョンと、2003年発売のDVD『LED ZEPPELIN DVD』で初公開された「Misty Mountain Hop」「The Ocean」と、これまで未公開だった「Over The Hills And Far Away」の6曲が追加された全15曲入り作品としてリパッケージされたもので、2020年現在流通しているのはこちらのバージョンとなります。つまり、旧オリジナルバージョンは現時点では廃盤状態というわけです(まあ中古で簡単に手に入りますけどね)。

リマスタリングされたのは非常にありがたいのですが、ペイジお得意のリミックス(音の足し引き・編集)が随所に発揮されており、「Dazed And Confused」のように30分近くにまで引き延ばされた(実際の演奏に近づけた)ものもあれば、「No Quarter」や「Moby Dick」「Whole Lotta Love」みたいにオリジナル盤から1〜2分ほど短く編集されたものもあるので、オリジナル盤を数十年にわたり聴きまくった耳には違和感が残ります(それ以上に、リミックスによる違和感が大きいわけですが)。

さらに、オリジナル盤に未収録だった6曲が加わったことで、曲順も再構成。もともとは序盤に収められていた「The Rain Song」や「Dazed And Confused」が終盤に置かれているなどの変化に、リマスター盤発売から13年経った今も追いつけていません(苦笑)。そりゃあ一長一短ありますわな。

現在各種ストリーミングサービスで聴くことができるのは、この2007年バージョンのほうのみ。なので、このバージョンから触れたというリスナーには逆に1976年盤は耳馴染みの悪い内容なんでしょうね。まあ、あれです。要は両方聴いてくれと。今でこそ公式リリースされたライブCDや映像作品が複数存在しますが、活動現役期間は本作しかなかったわけですから。バンドが意図してリリースした、唯一のライブ作品としていろんな楽しみ方をしてみては如何でしょう。

 


▼LED ZEPPELIN『THE SONG REMAINS THE SAME』
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2019年11月23日 (土)

POISON『POISON'D!』(2007)

2007年6月にリリースされた、POISONのカバーアルバム。スタジオ作品としては本作が、現時点での最新アルバムとなります(残念ながら、現在まで日本盤リリースはなし)。

1996年にC.C.デヴィル(G, Vo)がバンドに復帰し、新録5曲を含むライブアルバム『POWER TO THE PEOPLE』(2000年)、オリジナルアルバム『HOLLYWEIRD』(2002年)をそれぞれインディーズレーベルから発表。ライブ活動を精力的に続けることで動員を伸ばし続け、2006年にはデビュー20周年を記念した新録曲「We're An American Band」(GRAND FUNK RAILROADのカバー)を含むベストアルバム『THE BEST OF POISON: 20 YEARS OF ROCK』をリリースして全米17位という好記録を残しています。

そんな好状況を受け、先のベストアルバムから立て続けに制作されたのが本作。全13曲(デジタル盤のみ14曲)すべてが新録とはいかず、5曲(KISS「Rock And Roll All Nite」、THE WHO「Squeeze Box」、ジム・クロウチ「You Don't Mess Around with Jim」、LOGGINS AND MESSINA「Your Mama Don't Dance」、そして先の「We're An American Band」)が既発テイクとなりました。なので、カバー・コンピレーションという呼び方が正しいのかもしれませんね。

新録はデジタル盤のみ収録のジャスティン・ティンバーレイク「SexyBack」を含む全9曲。SWEET、デヴィッド・ボウイアリス・クーパー、TOM PETTY AND THE HEARTBREAKERS、THE MARSHALL TUCKER BAND、THE ROMANTICS、THE ROLLING STONESTHE CARSと、2000年代のジャスティンの除けばすべて70年代の楽曲(THE ROMANTICSのみ1980年とギリですが)。つまり、POISONというバンドのルーツナンバー/アーティストということになるのでしょうね。既発の5強もすべて70年代前半の楽曲ですし、そういう意味ではトータル性の高い選曲だと思います。

POISONらしいという点においてはボウイやアリス・クーパー、SWEETといったグラマラスなバンドの存在が挙げられるでしょう。既発のKISS含め、これらのアーティストはバンドのパブリックイメージまんまなので、選曲含めまあ納得かな。

TOM PETTY AND THE HEARTBREAKERSやTHE MARSHALL TUCKER BAND、あるいはジム・クロウチやLOGGINS AND MESSINAはバンドのフォーキーでソウルフルなパートを担っていると捉えることができるでしょう。特に、本作における「Can't You See」は3rdアルバム『FLESH & BLOOD』(1990年)や4thアルバム『NATIVE TONGUE』(1993年)での路線に通ずるものがありますしね。

意外性という点においては、THE ROMANTICSやTHE CARSの存在が挙げられるのではないでしょうか。ニューウェイヴ流れのバンドですが、バブルガム・ポップ的立ち位置で考えると、実は意外とPOISONとの親和性も高い気がしますし。あ、ストーンズやTHE WHOはとりあえずやっておかないと、くらいのポジションでいいんじゃないでしょうか(笑)。

で、本作における最大の聴きどころって実はボーナストラック的立ち位置の「SexyBack」なんですよね。この曲の出来が非常に素晴らしくて、僕はリリース当時よくこの曲を自分のDJ時に使用したものです。思えばPOISONってHR/HMがラウド&ヘヴィやインダストリアル勢に押しつぶされそうになった時期も、一貫として自身のスタイルを崩さなかった珍しい存在なんですよ。そんな彼らが、いわゆるモダンなサウンドと融合したときどうなるのか……その答えがこの1曲に込められているような気がするんです。POISONらしさは皆無かもしれませんが(笑)、僕はこのカバー大好きなんですよね。

さて。そんなPOISONは本作以降、新曲や新録曲を一切発表していません。ブレット・マイケルズ(Vo)はソロ作を発表しているのですが……もはやバンドは集金ツアーのために必要不可欠な存在に成り下がってしまったのかな。それはそれでいいんだけど……1曲くらいは。ね?

 


▼POISON『POISON'D!』
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2019年9月27日 (金)

BIFFY CLYRO『PUZZLE』(2007)

2007年6月発売の、BIFFY CLYRO通算4作目のスタジオアルバム。日本盤は少々遅れ、同年10月にリリースされています。

それまで名門インディレーベルBeggars Banquetから3作のアルバムを発表してきた彼らですが、チャート的にはTOP50に入るのが精一杯。ところが、Roadrunner Records移籍第1弾アルバムに当たる今作は、全英2位という大成功を収め、「Saturday Superhouse」(全英13位)、「Living Is A Problem Because Everything Dies」(同19位)、「Folding Stars」(同18位)、「Machines」(同29位)、「Who's Got A Match?」(同27位)と計5作ものシングルヒットを生み出すことになります。

プロデューサーにガース・リチャードソン(RAGE AGAINST THE MACHINE、MELVINS、SKUNK ANANSIEなど)、ミキサーにアンディ・ウォレス(NIRVANASLAYERHELMETなど)というアメリカでの売れっ子を起用した本作は、文字通りワールドワイドな活躍を目標として制作された1枚。アートワークなんて、かのストーム・ソーガソンですからね。ポスト・グランジ的手法のハードロックサウンドをベースに、時にエモ、時に古典的ブリティッシュロック、時にプログレ、時に正統派ポップスなど、さまざまな要素を器用に取り入れることで、ひとつの枠に収まりきらない変幻自在なサウンドを繰り出しています。

まあ、このアルバムはオープニングの「Living Is A Problem Because Everything Dies」を聴いた時点で「優勝!」と思わずにはいられないのでは。ストリングスをフィーチャーしたスリリングなイントロといい、オペラ調のコーラスを散りばめたアレンジといい、そのあとに続く疾走感の強いハードロックサウンドといい、キャッチーな歌メロといい、すべてが高品質で緻密に作り込まれているわけです。

その後も、上に書いたようなテイストを含む楽曲群が続くわけですが、これがどれも捨て曲なし。歌メロは本当にポップで親しみやすいものばかりだし、サウンドもヘヴィすぎない適度なハードさが備わっており、HR/HMが苦手なリスナーにも取っ付きやすい魅力的なものに仕上げられている。

そうそう、これってアメリカのFOO FIGHTERSがやっていたことをイギリス(正確にはスコットランドですが)というフィルターを通すとこうなりますという、ひとつの回答ではないのかなと。もちろん、BIFFY CLYROはここからアルバムを重ねるごとにその音楽性をどんどん進化させていき、結果として国民的バンドへと成長を遂げるわけです。

もちろん、それ以前の3作からここで大きく方向性が変わったわけではないですし、Beggars Banquet時代のアルバムも今聴いてもイカしてると思います。が、世界規模で通用する“垢抜けた”感は確実にこの『PUZZLE』から始まっており、この転換期がなかったら彼らはイギリスでの大成功も得られていなかったと思います。

残念ながらアメリカでの成功はいまだに収めることができていませんが、現時点での最新オリジナルアルバム『ELLIPSIS』(2016年)はスコットランド&UKで1位を記録したほか、ドイツやスイス、アイルランドでも1位を獲得。オーストリアで5位、フィンランドで10位、オランダで13位とヨーロッパ圏ではそれなりの結果を残せているわけですから、彼らの選択は間違っていなかったんだと思います。

 


▼BIFFY CLYRO『PUZZLE』
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2019年7月22日 (月)

FOO FIGHTERS『ECHOES, SILENCE, PATIENCE & GRACE』(2007)

FOO FIGHTERSが2007年9月にリリースした通算6枚目のオリジナルアルバム。

初の2枚組アルバムとなった前作『IN YOUR HONOR』(2005年)から2年3ヶ月ぶりの新作となりますが、その間にアコースティックライブアルバム『SKIN AND BONES』(2006年)を挟んでいるので、この時期は毎年何かしら音源が発表されていた印象が強いかな。本作からは「The Pretender」(全米37位)、「Long Road To Ruin」(同89位)といったヒットシングルが生まれており、アルバム自体も全米3位(ミリオン)、全英1位を獲得しています。

ロックサイドとアコースティックサイドをディスクごとに分けて表現した『IN YOUR HONOR』で、完全にUSロック界の頂点にまで登りつめたFOO FIGHTERS。続く本作は基本的には前作の延長線上にある作風で、進化というよりは深化に務めた1枚かなという印象を受けました。

例えば、オープニングを飾る「The Pretender」は4thアルバム『ONE BY ONE』(2002年)で得た経験をさらに強化させたスタイルだし、続く「Let It Die」の静と動のコントラストを活かしたアレンジは(本来彼らが持ち合わせていた個性とはいえ)特に『IN YOUR HONOR』を通過したことでより深みを増したのでは。

また、「Long Road To Ruin」のような朗らかな楽曲もデビュー時から存在はしていましたが、ここではよりルーツに回帰した印象を受けますし、「Come Alive」みたいな静の中でジワジワと熱を帯びていく表現方法もより説得力が増している。もはや王道ハードロックバンドのど真ん中を突き進んでいると言っても過言ではありません。

全体的にアコースティックギターを効果的に用いた楽曲が増えているのは、『IN YOUR HONOR』や『SKIN AND BONES』といった作品を経たからこそなのでしょうか。その使い方もハードロックの中にぶっこんでみたり(先の「Let It Die」のように)、純粋にアコギと歌のみでグイグイひっぱる「Stranger Things Have Happened」やアコギによるインスト「Ballad Of The Beaconsfield Miners」(本作中この2曲のみがデイヴ・グロール単独制作曲)のような曲もある。

そしてアコギというわけではないですが、ピアノが曲を牽引する「Statues」は最新作『CONCRETE AND GOLD』(2017年)でのポール・マッカートニーとの邂逅を思うと非常に納得のいくポップソング。同じくビートルズチックな「Summer's End」のような曲もあるし、思えば『IN YOUR HONOR』やこのアルバムあたりから現在のスタイルへのヒントは散りばめられていたんですね。久しぶりに聴き返してみて妙に納得しました。

ラストはアコギ主体から徐々に盛り上がりを見せる「But, Honestly」、メランコリックなピアノバラード「Home」の2曲で幕を下ろします。リリース当時はあまり良い印象のないアルバムだったけど(前作の焼き直し的なイメージがつきまとっていたので)、こうやって冷静に聴き返すと非常によく作り込まれたロックアルバムなんだと気付かされます。ごめんねデイヴ。

 


▼FOO FIGHTERS『ECHOES, SILENCE, PATIENCE & GRACE』
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2018年10月28日 (日)

CHRIS CORNELL『CARRY ON』(2007)

SOUNDGARDENのフロントマン、クリス・コーネルによる2作目のソロアルバム。SOUNDGARDEN解散後に制作された初ソロアルバム『EUPHORIA MORNING』(1999年)から8年ぶりとなりますが、その間にはRAGE AGAINST THE MACHINEのメンバーと結成したAUDIOSLAVEとして3枚のアルバムを発表しており、本作はそのAUDIOSLAVEからの脱退直後に発表されたもの。特にソロとしては、その前年に映画『007 カジノ・ロワイヤル』の主題歌「You Know My Name」(全米79位)を発表しており、良い流れでアルバムも発表されたことになります。

内容的には前作『EUPHORIA MORNING』にあった内省的な作風を引き継ぎつつも、よりエモーショナルで力強くなっているのではないでしょうか。オープニングを飾る「No Such Thing」なんてそれまで封印していたSOUNDGARDEN的ヘヴィ路線を用いているし、かと思えば「Arms Around Your Love」ではAUDIOSLAVEで得たエモい歌モノ路線が引き継がれている。確かに多少内省的ではあるものの、ここには2つのアメリカのトップバンドを渡り歩いたクリスならではの「ど真ん中で戦う」という意思が強く感じられるのです。

その表れとして、かどうかはわかりませんが、本作にはマイケル・ジャクソンの大ヒット曲「Billie Jean」のカバーも収録。もちろん“まんま”ではなく、いかにもクリスらしい落ち着いたトーンのアレンジで生まれ変わっており、完全に自分のモノにしてしまっています。

かと思えば「Safe And Sound」みたいに大らかなソウルナンバーがあったり、「Scar On The Sky」といったサイケデリックカントリーソングもあるし、「Your Soul Today」のギターリフなんてストーンズAC/DCみたいなど直球さがにじみ出ている。すべてにおいて彼のキャリアを総括するような意思が感じられ、と同時に文字どおり「ここから続けていく(=Carry On)」という決意表明も受け取れる。アルバムのラストに、そのきっかけとなった映画主題歌「You Know My Name」(007主題歌らしく、ストリングスをフィーチャーしたスタンダード色の強い1曲)が置かれているという構成からも、彼がここから何を成し遂げようとしているのかが感じられるのではないでしょうか。

とはいえ、クリスのソロは実験的な次作『SCREAM』(2009年)でひと区切りつけることになってしまう。その理由は、SOUNDGARDEN再結成によるものなので仕方ないのですが……もしあのまま、バンドを復活させることなくソロアーティストとして細々と音楽活動を続けていたら、彼は……それでも同じ道をたどったのでしょうか。ここでたられば話をしても仕方ないですが、この『CARRY ON』から始まった新たな旅の行方を見届けてみたかったものです。



▼CHRIS CORNELL『CARRY ON』
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2018年6月19日 (火)

MACHINE HEAD『THE BLACKENING』(2007)

2007年3月にリリースされた、MACHINE HEAD通算6枚目のスタジオアルバム。前作『THROUGH THE ASHES OF EMPIRES』(2003年)でグルーヴメタル路線から原点回帰と言わんばかりに、スラッシーなスタイルを強めてファンを喜ばせた彼ら。アメリカでも3rdアルバム『THE BURNING RED』(1999年)に続くTOP100入り(最高88位)を記録したことで、新作でもその路線を踏襲しつつ、よりメタリックに煮詰めたサウンドが展開されています。

このアルバム最大の魅力は、1曲が異常に長いところ。全8曲で61分というトータルランニングはどこかMETALLICAの傑作『MASTER OF PUPPETS』(1986年)を彷彿とさせます。なにせこっちは、1曲目「Clenching The Fists Of Dissent」からして10分半超えの大作ですから。初めてこのバンドに接するという初心者にはある種踏み絵のような1曲ですが、ここでハマれたらこっちのもの。あとはメタルファンにとって極楽のような世界が首尾一貫繰り広げられるのですから。

起承転結はっきりしていて、聴き手の心を揺さぶる「Clenching The Fists Of Dissent」を筆頭に、9分超えの楽曲が全8曲中4曲と半数を占め、オープニング以外の3曲はラスト3曲に並ぶという嫌がらせっぷりも嫌いじゃありません(笑)。それ以外の4曲は5分前後が3曲、6分半が1曲と、決して短いとは言えない長さ。けど、オープニングで「Clenching The Fists Of Dissent」を経験してしまえば、続く4曲は特段長く感じることはありません。確実に麻痺してるんですけどね。

けど、これが悪い曲や退屈なアレンジだったら途中離脱してしまうんですが、どの曲にもメタルファンが喜びそうなリフやソロ、劇的な展開が用意されており、飽きるわけがない。「Aesthetics Of Hate」や「Slanderous」のカッコよさはもちろん、何も考えずに頭を触れるし、9分超えの「Halo」なんて完全に泣きのメタルバラードですからね。

この大作主義は、続く『UNTO THE LOCUST』(2011年)へと引き継がれますが、次作はもうちょっと整理された感が強いかな。なんにせよ、『THROUGH THE ASHES OF EMPIRES』から『UNTO THE LOCUST』までの期間は、今振り返るとちょっと神がかっていたように思います。その中でも、本作『THE BLACKENING』は2000年代を代表するHR/HMアルバムのひとつと断言してしまっても問題ないと思います。今聴いても滾る曲ばかり。

あと、この時期はとにかくライブがすごかった。2年連続(2007年、2008年)で出演した『LOUD PARK』での熱演や、2008年3月に実現した単独ツアー、どれも素晴らしくて、今でもよく覚えています。個人的にも、彼らに対してめっちゃ入れ込んでいた時期ですしね。



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2018年4月11日 (水)

HANOI ROCKS『STREET POETRY』(2007)

2007年9月にリリースされた、HANOI ROCKS通算7枚目のスタジオアルバム(コンピレーション盤『SELF DESTRUCTION BLUES』を除く)。“再生”(=再結成)後3枚目のアルバムとなりますが、本作を最後にバンドは再解散することになります。

前作『ANOTHER HOSTILE TAKEOVER』(2005年)で固まったマイケル・モンロー(Vo, Sax)、アンディ・マッコイ(G)、コニー・ブルーム(G)、A.C.ことアンディ・クリステル(B)、ラク(Dr)という第二の黄金期と呼べる布陣での2作目(ただし、ラクは2008年に脱退。その後、解散までジョージ・アトラジックが参加)。前作発表後にじっくりツアーを体験したこともあり、本作は過去2作のスタジオ盤と比べるとより肩の力が抜けた、80年代のHANOI ROCKSが持っていた特有の“ユルさ”が復活しているように思います。そう、この感覚こそ我々がこのバンドに求める魅力であり、ソロ活動後のマイケル・モンローの硬派なハードロック的手法と絶妙なバランスでミックスされることで、2000年代のHANOI ROCKSのスタイルがついに完成した、と言い切ってもあながち間違いではないのかもしれません。

リードシングル「Fashion」での、隙間の多い緩やかなロックサウンドはまさに我々がよく知るHANOI ROCKSそのもの。この曲がフィンランドのチャートで1位を獲得したというのも頷ける話です。

もちろん、「Hypermobile」「Highwired」みたいな硬質なハードロックナンバーも多数含まれていますが、それと同じくらい「Power Of Persuasion」「Teenage Revolution」「This One’s For Rock 'N' Roll」「Walkin' Away」「Tootin' Star」といった初期を思わせるロックンロールも混在。こういう曲があることで、アルバム内の緩急の差が非常に面白いことになっている。

さらに、日本盤には「Self Destruction Blues」のセルフカバーも収録。マイケルがソロでカバーしたバージョンに近い、当時のライブテイクをもとにしたバージョンは非常にカッコいいもので、このアルバムにも見事にフィットしています。

良い意味で隙間だらけなのに、ある意味では寸分の隙もない、完璧なまでの“HANOI ROCKSのロックンロールアルバム”。そりゃあこんな究極のアルバムを完成させてしまったら、あとはもうこのクオリティを維持して、同じことを続けるのみになってしまうか……活動終了はメンバーのみならず、古くからのファンにとっても納得の結果だったと言えるかもしれません。

マイケルは今もソロでバリバリ活躍してくれていますが、アンディは……もっと表舞台に出てきてくれてもいいのに。それだけが心残りです。あ、コニー&A.C.は80〜90年代に活動をともにしたELECTRIC BOYSを復活させ、現在もスウェーデンを基盤に活動中。日本デビュー盤『FUNK-O-METAL CARPET RIDE』(1989年)は当時よく聴いたので、ぜひ一度生で観てみたいものです。



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2018年2月 8日 (木)

OZZY OSBOURNE『BLACK RAIN』(2007)

2007年5月にリリースされた、オジー・オズボーン通算10枚目のスタジオアルバム(2005年のカバーアルバム『UNDER COVER』を除けば、オリジナル作品としては9枚目)。2001年の『DOWN TO EARTH』では制作後期に盟友ザック・ワイルド(G)が参加し、曲作りやベーシックトラックでのギタープレイは叶わずソロのみを加えるにとどまりましたが、今作では全10曲中8曲にソングライターとして名を連ね、ギターも全編にわたりザックらしいプレイを聴かせてくれます。

正直『DOWN TO EARTH』が自分的に厳しい内容だったので、発売当時は『OZZMOSIS』(1995年)以来12年ぶりの新作くらいの勢いで聴きまくりました。とはいえ、何度も聴いていると……オジーのアルバムを楽しんでいるというよりも、BLACK LABEL SOCIETYの新作を聴いているような錯覚に陥る瞬間が多々あるのですが。

チューニングもザックらしいダウンチューニングで、音の太さも(プロデューサーのケヴィン・チャーコによるものがあるとはいえ)いかにもザックっぽい。そういった全編ヘヴィな雰囲気の中にも、オジー&ザックらしいポップでキャッチーなメロディがしっかり備わっている。だからこそ「I Don't Wanna Stop」のような楽曲もしっかりポップに響くわけです。

かと思えば、「Lay Your World On Me」みたいに異色のサイケチューンがあったり、若干ヒップホップ的な色合いも見られる「The Almighty Dollar」もある。攻撃的なアップチューン「11 Silver」やグルーヴィーな「Civilize The Universe」、美しいピアノバラード「Here For You」、ダークだけどどこか80年代のオジーを彷彿とさせる「Trap Door」など、意外と多彩な楽曲群が揃っている。新しさを取り入れつつも、しっかりこれまでのオジーの作風を踏まえて制作されているわけです。

オジー本人は本作を「大ヒット作『NO MORE TEARS』(1991年)に続く作品」と捉えてるようですが、それはちょっと違うかな、と。確かにバラエティ豊かな点においては『NO MORE TEARS』と共通する点もあるのですが、あっちが原色豊富なカラフルさだとすれば、この『BLACK RAIN』はモノトーンとセピアが入り混じったような印象。ビビッドさは『NO MORE TEARS』のほうが上かなと思います。が、それも制作された時期や時代が反映されてこそなので、“2007年版『NO MORE TEARS』”と考えればあながち間違ってはいないのかもしれません。

現時点では、これがオジー&ザックのコンビによるラスト作ですが、もう1枚くらいこのコンビの作品を聴いてみたいなぁ。きっと今のザックなら、さらにバランス感の取れた作品を作ってくれるでしょうから。

 


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2017年6月27日 (火)

BON JOVI『LOST HIGHWAY』(2007)

このアルバム、今から10年前の6月にリリースされたんですね。そうか、もうそんなに経つのか……。

とういことで、今回紹介するのはBON JOVIが2007年6月にリリースした通算10枚目のオリジナルアルバム『LOST HIGWAY』です。7作目『CRUSH』(2000年)で本格的な復活を果たし、続く『BOUNCE』(2002年)『HAVE A NICE DAY』(2005年)がともに全米2位という好成績を残してきましたが、この『LOST HIGWAY』でBON JOVIは4th『NEW JERSEY』(1988年)以来19年ぶりに全米1位に輝きます。

プロデュースには現在も共同制作者としてバンドに携わるジョン・シャンクスと、元GIANTのギタリストで現在はカントリー系プロデューサーとして知られるダン・ハフが各6曲ずつ参加。前作『HAVE A NICE DAY』からのシングル「Who Says You Can't Go Home」がカントリーチャートでヒットしたこともあり、同アルバムで見せた「カントリーテイストをにじませたアメリカンパワーポップ」路線をさらに推し進めた、よりアーシーで土着的なカントリーロックが軸になっています。もともと持ち合わせていたカラーではあるものの、ここでその後10年のBON JOVIの路線を決定付けたという意味では、非常に重要な1枚と言えるでしょう。

パワフルなビートが心地よいハードロック「Summertime」や、黒っぽさが強くにじみ出た(かつギターワウを用いた)「We Got It Going On」など従来のBON JOVIらしさも残しつつも、全体を覆うのは「Lost Highway」や「Whole Lot Of Leavin'」みたいに肩の力が抜けたカントリーロック。もはや「Livin' On A Prayer」も「Bad Medicine」も「Born To Be My Baby」も、ここには存在しません。が、聴けばそれが「BON JOVIだ」と認識できる楽曲ばかりなのはさすがといいますか。

かと思えば、カントリー界の人気アーティストBIG & RICHをフィーチャーした「We Got It Going On」や、ジョン・ボン・ジョヴィとリアン・ライムスのデュエットが楽しめる「Till We Ain't Strangers Anymore」みたいなコラボ曲もある。このへんは「Who Says You Can't Go Home」がもたらした成功が大きかったんでしょうね。ただ、それによって「80〜90年代のBON JOVI」は遠くになりけり……ということになってしまったわけですが。

今聴くと本当にリラックスして楽しめるアルバムですし、前作『HAVE A NICE DAY』が好きなら問題なく気に入ってもらえるんじゃないかな。ただ、残念ながら「Have A Nice Day」や「It's My Life」みたいな“キメの1曲”が存在しないことで、本作の印象を弱めているのも事実。特に「80〜90年代のBON JOVI」が好きな人、そのイメージが強い人にとってはこの『LOST HIGHWAY』を素直に楽しめるかどうかで、その後の諸作品にスッと入っていけるかが決まるような気もします。



▼BON JOVI『LOST HIGHWAY』
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