THE SMASHING PUMPKINS『ZEITGEIST』(2007)
2007年7月10日にリリースされたTHE SMASHING PUMPKINSの7thアルバム。日本盤は同年7月11日発売。
THE SMASHING PUMPKINSは2000年末に解散。メンバーのビリー・コーガン(Vo, G)とジミー・チェンバレン(Dr)は新バンドZWANを結成するも、アルバム1枚を残して2003年に解散。ジェイムズ・イハ(G, Vo)はソロ活動と並行してA PERFECT CIRCLEに加入(2004年に活動停止)。それぞれ停滞気味だったところ、2006年春にビリーがTHE SMASHING PUMPKINS再結成をアナウンス。オリジナルメンバーはビリーとジミーのみで、ほかのメンバーに関しては未発表のままアルバム制作に突入します。
アルバムリリース前の2007年5月、ついに新生THE SMASHING PUMPKINSは初ライブを実施。ここでステージに立ったのはビリー&ジミーのほか、ジェフ・シュローダー(G)、ジンジャー・レイエス(B)という布陣でした(このほか、サポートキーボーディストとしてリサ・ハリトンも参加)。しかし、そこから1ヶ月強を経て届けられた7年ぶりのアルバムのクレジットに目をやると、レコーディングはビリー&ジミーのみで制作されたことが明らかになります(ドラム以外のパートはすべてビリーが担当)。
バンドとの共同プロデューサーにロイ・トーマス・ベイカー(QUEEN、CHEAP TRICK、オジー・オズボーンなど)とテリー・デイト(DEFTONES、PANTERA、SOUNDGARDENなど)を迎えた本作。ジミーの派手なドラミングから始まるオープニングトラック「Doomsday Clock」や3連ビートが新鮮な先行シングル「Tarantula」など、アルバム前半はメタリックでダイナミックなハードロックチューンで固められています。ある意味では解散直前の『MACHINA: THE MACHINES OF GOD』(2000年)や『MACHINA II: THE FRIENDS & ENEMIES OF MODERN MUSIC』(2000年)の延長線上にある作風と言えるでしょう。ただ、そのハード&ヘヴィ具合がよりプリミティヴなものへと昇華されている点が解散前とは大きく異なる。そこはバンドとして心機一転、再スタートを切るぞという意気込みにも感じられます。
そんな雰囲気が少々変わるのが、中盤に配置された約10分にもおよぶ大作「United States」から。トライバルなリズムをフィーチャーしたこの曲は聴き手に革命を促すような1曲で、本作のハイライトと言える重要なナンバーです。そこからグロッケンを取り入れたエモーショナルなロックチューン「Neverlost」、マイナーキーのパワーポップ的な「Bring The Light」、ゴシックロック調の「For God And Country」などの変化球を交えつつ、エレクトロとシンフォニックさを織り交ぜたスローナンバー「Pomp And Circumstance」で締めくくり。全12曲/50分強と彼らにしては比較的コンパクトにまとめられています。
アルバム後半にメランコリックな楽曲がいくつか用意されているものの、それでも印象に残るのはガッツのあるハードロックナンバーばかり。もちろんこれはこれで彼ららしくもあるのですが、やはりこのバンドはそこだけではないわけで。もっと繊細さだったり悲哀さだったりダークさだったり、そういったハードロックとの対比を生み出すようなテイストも重要なわけです。そこが足りないという意味で、バンドとして不完全と捉えるべきなのか、それとも新生スマパンはこういう形で進んでいくのか……どう受け取るかで、本作への評価は大きく変わる気がします。
決して悪いアルバムではないですし、2024年までの長い歴史の中で考えればこういうテイストのアルバムが1枚くらいあっても不思議じゃないわけですが、全キャリアの中でも印象が薄い作品に分類されてしまうのは仕方ないかな。だって、日本では本作のみサブスク配信されていないわけですから(本作やZWANのアルバム、ビリーの1stソロアルバムといった、Warnerから発表された作品群はすべて未配信のまま)。
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