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2008/11/23

GUNS N' ROSES『CHINESE DEMOCRACY』(2008)

オリジナルアルバムとしては、前作「USE YOUR ILLUSION I」「同 II」('91年)から17年ぶり。実はこれが3rdアルバムなんですよね、「CHINESE DEMOCRACY」って。この17年の間に、カバー集やらライブアルバムやらベスト盤やらが発売されたけど、純粋な新曲としては1999年の「Oh My God」以来ということになります。

正直、GUNS N'ROSESの新作はもう出なくてもいいや、むしろ出さないほうがみんなのためだと本気で考えていた時期がありました。2002年でしたっけ、サマソニで来日したの。あのとき、僕はSUEDEを屋内で観て、数十分遅れでスタートしたマリンスタジアムのライブを、音のないモニターで観てました。太ったアクセル・ローズ、単独公演で観たことがあるバケットヘッドが同じステージにいる違和感。知ってるメンバーが誰もいないのに、アクセルだけでGUNS N'ROSESを名乗っている現実。すべてが受け入れがたくて、結局マリンスタジアムには足を運ばすに、そのまま宿に戻ったのでした。

でも、数年後に「CHINESE DEMOCRACY」収録予定曲の音源が流出して、それを聴いてるうちにジャパンツアー(2007年)が決まったり。その頃には考えも変わり、「出るんであれば聴いてみたい」と思うようになってました。実際に武道館で観たガンズは、確かにGUNS N'ROSESでした。いや、自分が1988年に武道館で観たガンズとも、1993年に東京ドームで観たガンズとも違う、新たなGUNS N'ROSESでしたが。それでも、自分はあのガンズを受け入れることができました。だってカッコよかったもの。「カッコいい」か「カッコ悪いか」でしょ、結局。

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GUNS N'ROSESには、固定したスタイルというものはないんです。

いきなり何を言い出すんだ、こいつは?とか思ったかもしれません。でも、よくよく考えてみればわかること。1stアルバム「APPETITE FOR DESTRUCTION」みたいなアルバムは、またあの5人が揃ったところで作れないし、2008年に「USE YOUR ILLUSION」みたいなアルバムを再び作ることもできないでしょう。そう、ガンズというバンドはアルバムごとにその音楽スタイルを変化(進化?)させていくバンドなのではないでしょうか。

どうしてもデビュー作「APPETITE〜」のイメージが強いから、ガンズはスリージーで(今どき「スリージー」ってのもどうなのよ)いかがわしくて、ルーズで生々しいロックンロールバンド的なパブリックイメージが植え付けられてしまった。それはそれで間違いではないと思うし、ある意味では正しいと思います。

でも、実はこのことがガンズというバンドのその後の変化に不幸をもたらしてるような気がします。いや、ガンズに不幸をもたらしたんじゃなくて、一部のファンに不幸をもたらしたのかもしれませんね。

「GN'R LIES」のアコースティックサイドは、あくまでお遊びだし、「APPETITE〜」から一歩足を踏み出したものと言えなくもないけど、想定の範囲内の音ですよね。でも、1stから4年後に発売された「USE YOUR ILLUSION」の2枚はどうでしょう。確かに1stの延長線上にある楽曲もあるけど、ドラマーが変わったことによる『バンドの芯』の変化、キーボードの加入およびアクセルのピアノ使用、曲調の幅の広がり、大作の増加などなど……とにかく、1stからさらに数歩先に進んだ内容になっていたはずです。それを拒否したファンもいるし、自分みたいに『ガンズはどこまでいっちゃうんだ!?』と腰を抜かした者もいる。この時点で、まだガンズの本質に気づいていた人はほんのわずか、いやもしかしたらいなかったかもしれませんね。

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「CHINESE DEMOCRACY」というアルバムは、前作「USE YOUR ILLUSION」にあったヒリヒリ感こそないものの、聴きやすくて耳に残るメロディ/歌が多いアルバムだと言えます。ここにある楽曲の大半は、2001年からライブで演奏され続けてきたものばかり。アレンジなどの味付けが若干変化しているものもありますが、基本的な構成やメロディそのものは当時のまま(のはず)。ぶっちゃけ、7年前かそれ以上前に制作された楽曲のはずなのに、まったく古くささを感じさせないんです。

実はアクセル・ローズという男は、これから何年先も聴き続けることができる「スタンダード」的な作品を作りたかったんじゃないでしょうか。それがこの「CHINESE DEMOCRACY」というアルバムで実践したかったことなんだと思います。

事実、「APPETITE〜」も「〜ILLUSION」も、音の感触は時代を感じさせるものの、曲自体は2008年の今聴いても古びてないはず。いつまでも歌っていける、聴いていける楽曲を作り、その時代、その時代でやりたいことを色づけしていく。それが過去の作品なのではないか、と自分は思うわけです。

今年に入ってから改めて「CHINESE DEMOCRACY」の流出音源を聴き返したとき、上記のように「ガンズには固定のスタイルなんてものはないのでは」ということを改めて考えました。1st「APPETITE FOR DESTRUCTION」こそがガンズ本来のスタイルなのではなく、あれはあのメンバーだったから、たまたまああいう音になっただけなんだと。

続く「USE YOUR ILLUSION」では、1987年のプロダクションでは実現できなかったことを全部試したし、さらに4年の間に成長した自身を見せるためにやれることを全部やった(主にアクセルが)。だからどんどん拡散していったし、1stみたいに焦点を絞った内容になっていない。1stだって「Sweet Child O'Mine」があるとないとでは、ぜんぜん印象が違いますよね。あの曲だって、一番最後にできてアルバムに追加したわけだし。実は「Sweet Child O'Mine」こそが、続く「USE YOUR ILLUSION」への布石だったのではないか……そんなことさえ考えもしました。

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結局、数多くいる「『APPETITE FOR DESTRUCTION』こそがガンズ!」と言ってる「APPETITE FOR DESTRUCTION」原理主義者の人たちは、「GUNS N'ROSESが好き」なのではなく、「『APPETITE FOR DESTRUCTION』を演奏するガンズ/『APPETITE〜』の中のガンズ」が好きなだけなんじゃないかな。そりゃ仕方ないよね、「USE YOUR ILLUSION」は「APPETITE〜」じゃないもの。「APPETITE〜」の中のガンズは永遠だものね。

確かにデビュー当時の5人……アクセル・ローズ、スラッシュ、イジー・ストラドリン、ダフ・マッケイガン、スティーヴン・アドラーは奇跡に近かったけど、じゃあ今、2008年にあの5人がまた集まってライブをやったり、あの音を出そうとしても絶対に無理だよね。「APPETITE〜」みたいなことはできるけど、決して再現はできないし、「APPETITE〜」を超えることはできない。それは、過去10数年の間に復活/再結成したバンドの数々を見れば一目瞭然でしょう。結局のところは、VELVET REVOLVERか「CHINESE DEMOCRACY」のガンズみたいな方向に落ち着くんじゃないでしょうか。

ガンズはアクセルが歌っていればそれで成立するバンドになってしまいました。僕は今回の新作を聴いて、それでいいと思ってます。だけど、VELVET REVOLVERの曲をアクセルが歌うのは想像できないし、それは単なるセルフパロディでしかないし、「CHINESE DEMOCRACY」の曲をスラッシュが弾くことも想像できないし、したくない。本当にみんな、それを望んでるのでしょうか? 僕にはそれが考えられないし、本当に信じられないんです。

過去の想い出は想い出として、大切に取っておくことはいいことだと思います。でも、その想い出を再現しろと強く念じるのは、単なるオナニーじゃないかな。もちろん、考え方はそれぞれ自由だし、それをずっと心の中に秘めて生きていこうが、つねに口に出していこうがその人の自由。でも、結局のところ本当にその夢……ガンズのオリジナルメンバーでの復活が実現したところで、誰も得しないと思うんだよね。金銭的にはガンズの5人は得するだろうけど、1987年当時を知る者にとっては「現実」を突きつけられるだけ。もう21年経ったんだよ、1987年から。

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多分、「CHINESE DEMOCRACY」という作品が糞みたいなアルバムだったら感想も違ったのかもしれないけど、結局のところ2001年当時に発表された楽曲が今聴いてもまったく古びていないという事実が、すべてを物語ってると思います。

ここにある音は、「APPETITE FOR DESTRUCTION」とも「USE YOUR ILLUSION」とも違う。ましてやNINE INCH NAILSとも、KORNとも、その他諸々のガンズ以降に登場したバンドとも違う。本当にこれがNINE INCH NAILSのコピーに聞こえる? だとしたら、その人は何も聴いてないし、聞こえてないんだろうね。

「APPETITE〜」原理主義者が「CHINESE DEMOCRACY」を受け入れるには、ちょっと勇気がいるだろうし、心や頭を柔らかくしないといけないのかもしれない。でも、そこまでして受け入れる必要もないだろうし、これをガンズの新作として聴かなくてもいいし、単純に「2008年にリリースされたハードロックアルバムの内の1枚」として聴いてもいい。すべては聴き手の自由。これを「『APPETITE〜』のガンズの新作」として聴くのもね。気に入るも気に入らないも、すべては聴き手の自由なんです。

そういう観点からいえば……僕はこのアルバム、素晴らしいと思ってます。今年の10枚に入れるかどうかは、もっと聴き込んでみないとわからないけど、何度も聴ける、飽きのこないアルバムだと断言できます。「Better」も「I.R.S.」も「Madagascar」も「Chinese Democracy」も「Street Of Dreams(旧「Blues)」も、何度も何度も、それこそ何百回も聴いてきたはずなのに、このアルバムで聴くと新鮮だし、聴き返すたびに新たな発見がある。きっと、このアルバムの曲順で聴くからなんでしょうね。

そうそう。「CHINESE DEMOCRACY」というアルバムは、何だか映画のサウンドトラックみたいなアルバムですよね。ミディアム〜スローナンバーが多いから余計そう聞こえるのかもしれないけど。きっと「USE YOUR ILLUSION I」「同 II」を1枚にまとめてたら、こんな作品になったのかもしれませんね。今回のアルバムも寄せ集めといえば寄せ集めなのかもしれないけど、実際には「〜ILLUSION」よりもまとまってる。そう、「APPETITE〜」のときみたいに焦点を絞ったからこそ、まとまりを取り戻したんじゃないかな。そんな気がします。

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ダラダラと長文を書いてみたけど、結局のところ「2008年最大の問題作」であることには違わないわけで、これは何度も聴いて判断してほしい1枚だと思います。

まぁSKID ROWの3rdやMOTLEY CRUEのジョン・コラビ・アルバム、EXTREMEの4thアルバムを傑作と褒め称えるような人間の発言ですからね。どこまでを信用するか、すべては読んだあなた次第です。

いや、読む前に買え。聴け。聴け。何度も聴け。話はそれからだ。



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投稿: 2008 11 23 01:39 午前 [2008年の作品, Guns N' Roses] | 固定リンク

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