カテゴリー「2008年の作品」の74件の記事

2023年3月11日 (土)

EXTREME『SAUDADES DE ROCK』(2008)

2008年8月12日にリリースされたEXTREMEの5thアルバム。日本盤は同年8月13日発売。

1996年にヌーノ・ベッテンコート(G, Vo)の脱退、ゲイリー・シェローン(Vo)のVAN HALEN加入などで解散の道を選んだEXTREMEですが、2004年以降何度か再結成ライブを行い、2005年にはパット・バッジャー(B)を除く3人にサポートメンバーを加えた形で来日公演も実施。その後、パットが正式に復帰し、新たなドラマーにケヴィン・フィグェリド(Dr)を迎えた新体制で2007年から本格的に活動再開。最後のオリジナルアルバムとなった『WAITING FOR THE PUNCHLINE』(1995年)から約13年ぶりの新作を完成させます。

ヌーノがプロデュースを手がけた本作は、全13曲からなる60分超の大作。ファンクメタルと呼ばれた初期のスタイルやQUEENからの影響を感じさせる中期のポップ/サイケデリック感、グランジを意識したオルタナティヴメタル感の強い後期スタイルなど、EXTREMEが歩んできた道のりをひとまとめにした集大成的内容でありながらも、“この雑多さこそがEXTREMEの極み”とも受け取れるバラエティ豊かさの中にも一本しっかりした軸が感じられる聴き応えのある1枚に仕上がっています。

彼ららしい分厚いコーラスワークが特徴の「Star」からスタートする本作ですが、オープニングは若干地味な印象も。そのへんは『WAITING FOR THE PUNCHLINE』と同じ匂いかもしれません。その後、「Comfortably Dumb」「Learn To Love」とグルーヴ感の強い楽曲が並び、バンドの軸にあるファンクメタル的要素をたっぷり楽しむことができます。ヌーノのギターもしっかり暴れまくっており、ゲイリーの歌とともに存在感の強さがしっかり示されています。

かと思えば、アップテンポのブルースロック「Take Us Alive」では新たな魅力も見受けられ、集大成の先を掴み取ろうとする前向きな姿勢も伝わる。その後もポップなヘヴィファンク「Run」、ダークなヘヴィバラード「Last Hour」、ストレートなアップチューン「Flower Man」、『WAITING FOR THE PUNCHLINE』の流れを汲むオルタナ調ミドルナンバー「King Of The Ladies」、ピアノを軸にしたミディアムバラード「Ghost」、ギター&ベースのユニゾンが気持ち良い極太ファンク「Slide」、アコースティックギター主体のスローナンバー「Interface」、クライマックスに相応しいサイケファンク「Sunrise」とEXTREMEらしい楽曲がずらりと並び、最後は繊細さの伝わるピアノバラード「Peace (Saudade)」で締めくくり。サウンド的には『III SIDES TO EVERY STORY』(1992年)のようなコンセプチュアルなテイストこそ感じられないものの、復活したバンドのリハビリとしては申し分のないクオリティだと思います。

ここから再びEXTREMEの快進撃が始まると当時は思っていましたが、今作を携えたツアーを終えて以降はマイペースなライブ活動を続け、気づけば10数年が経過。コロナ禍に入る前のインタビューで、ヌーノはすでに次作の準備は整っている的な話をしていましたが、待望の6作目『SIX』(2023年)が届けられるまでに15年も要するとは、誰もが想像していなかったと思います。リード曲「Rise」を聴く限りでは、本作『SAUDADES DE ROCK』の延長線上にあるテイストのようなので、ブランクを感じさせないバンドの健在ぶりに期待したいところです。

 


▼EXTREME『SAUDADES DE ROCK』
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2023年3月 6日 (月)

BRYAN ADAMS『11』(2008)

2008年3月17日にリリースされたブライアン・アダムスの11thアルバム。日本盤は同年3月19日発売。

オリジナルアルバムとしては前作『ROOM SERVICE』(2004年)から約3年半ぶり。その間に新曲入りベストアルバム『ANTHOLOGY』(2005年)を挟んでいるので、そこまで空いた感覚はなかったですよね。制作に関しては2005年頃からスタートし、2007年までじっくり時間をかけて続けられたようです。

前作同様、基本的にはブライアンのセルフプロデュースにて制作。オープニングトラック「Tonight We Have The Stars」と5曲目「We Found What We Were Looking For」のみプロデュースに盟友ロバート・ジョン・“マット”・ラングが関わっています。また、ソングライティングに関してもジム・ヴァランスやマット・ラングのほか、グレッチェン・ピーターズ、エリオット・ケネディ、トレヴァー・ラビンといった錚々たる面々が名を連ね、レコーディングにはキース・スコット(G)、ミッキー・カリー(Dr)などブライアンと縁の深いミュージシャンが多数参加しています。

作風的には『ON A DAY LIKE TODAY』(1998年)や前作『ROOM SERVICE』の流れを汲む、落ち着いた“大人のロックンロール”が中心。内省的な質感は引き続きですが、ロック感は前作よりも強まっている印象も強く、個人的には最初に聴いたときに『RECKLESS』(1984年)をより大人にさせた空気感」という感想を持ちました。そういった意味では、『INTO THE FIRE』(1987年)にも似ているのかな。ただ、あちらが背伸びをした大人感だったのに対して、こっちは2008年当時のブライアンの等身大という空気感なのが大きな違い。自然体だからこそ、聴き手側もナチュラルに受け取ることができる。そういう1枚ではないでしょうか。

序盤3曲はリラックスした演奏と歌が楽しめるミディアムロック中心ですが、4曲目「Oxygen」でギアが一段高く入り、80年代後半のU2にも通ずるテイストの5曲目「We Found What We Were Looking For」で表現により広がりが加わる。その後はアコースティックギターを軸にした楽曲がいくつか続きますが、打ち込みと同期させたM-9「She's Got A Way」をフックに、続く「Flower Grown Wild」で終盤に向けた盛り上がりを見せつつ、最後は3分にも満たない「Walk On By」でしっとりと締めくくります。アルバムタイトルにちなんだ全11曲/約44分(ボーナストラック除く)という適度な聴きやすさ含め、前作同様にロックアーティストとしての潔さが伝わる1枚です。

なお、日本盤やデジタル版では「The Way Of The World」などのボーナストラックが追加されており、アルバム自体が持つ“11”というコンセプトが崩れてしまっています。「The Way Of The World」自体はアルバム本編に足りなかった豪快なハードロックナンバーなので、これを本編に入れていたらまた流れや感じ方も違ったのかなという気もしますが、やっぱり「Walk On By」のあとに置くにはちょっと場違いかなという印象も。

本国カナダでは『WAKING UP THE NEIGHBOURS』(1991年)以来17年ぶりにオリジナルアルバムでの1位獲得、アメリカでも『SPIRIT: STALLION OF THE CIMARRON』(2002年)ぶりとなるTOP100入り(最高80位)を記録するなど、やはり世間は彼にこういった力強いロックンロールとセンチメンタルなバラードを求めていることが伺えます。どちらか一方だけが突出したものではなく、双方がバランスよく混在してこそのブライアン・アダムスなのだということですね。

 


▼BRYAN ADAMS『11』
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2023年1月23日 (月)

BUCKCHERRY『BLACK BUTTERFLY』(2008)

2008年9月16日にリリースされたBUCKCHERRYの4thアルバム。日本盤は同年9月10日発売。

日本先行で2005年10月に発表され、北米では翌2006年4月に発売された前作『15』でしたが、同作から「Crazy Bitch」(全米59位)、「Sorry」(同9位)とヒットシングルが生まれたことで、アルバム自体もロングヒット。最高39位と順位的にはそこまで高くはないものの、売上的には最終的に200万枚を超えるセールスを残しています。

このヒットを受けて、アメリカでは2年5ヶ月ぶりとなる本作(日本ではほぼ3年ぶり)。新たなプロデューサーに、「Sorry」でコライトしたマーティ・フレデリクセン(AEROSMITHDEF LEPPARDMOTLEY CRUEなど)を迎えて制作され、前作の流れを汲む“新生BUCKCHERRY”らしい仕上がりとなっています。

マーティは「Tired Of You」や「Talk To Me」など全12曲中4曲で、ジョシュ・トッド(Vo)&キース・ネルソン(G)と共作。「Too Drunk...」(正しいタイトルは「Too Drunck To Fuck」)のような初期の彼ららしいいかがわしいロックンロールを含むものの、基本的には整合感の強い正統派スリージー/ハードロックが中心で、『15』からファンになったリスナーには入っていきやすい作りと言えるでしょう。

アルバム冒頭の「Rescue Me」からして、かなり毒気が抜けていることが伝わりますが、カッコよければ問題なしう。哀愁味を漂わせるミディアムナンバー「Dreams」や「Don't Go Away」、ワイルドさの伝わる「Talk To Me」や「A Child Called "It"」、初期の彼らのイメージを引き継ぎつつモダンにアップデートさせた「Fallout」、アーシーなアコースティックナンバー「All Of Me」、今や彼らのライブには欠かせないアンセムソング「Cream」と、どの曲も完成度は非常に高く、アルバムとしてのバランス感も非常に優れている。ただ、先にも書いたように毒気が薄まっていることで、初期からのファンには物足りなさを残してしまう懸念は否めません。ですから、BUCKCHERRYに何を求めるかで大きく評価が分かれる1枚かもしれませんね。

ただ、本作は配信/ストリーミングで聴くとインパクトが弱い印象を受けます。というのも、「Too Drunk...」がそのタイトルや歌詞の内容を理由にカットされており、代わりにDEEP PURPLEの代表曲「Highway Star」に差し替えられているのです。一応「Too Drunk...」は今作からのリードシングルなんですけど……。

なもんですから、一番パンチの強い曲が削られたことで、初期ファンからはさらに印象の薄い1枚になってしまったのではないでしょうか。僕も久しぶりにストリーミングで聴いて、その違和感に驚いたほどですから。なので、できることならリイシュー前の初盤を中古盤ショップで探してみることをオススメします。

 


▼BUCKCHERRY『BLACK BUTTERFLY』
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2022年12月 4日 (日)

KISSのベストアルバムを総括する(2022年版)

ブライアン・アダムスAEROSMITHに続く「ベストアルバムを総括する」シリーズ第3弾(シリーズだったのか……)はKISS。まあとにかくベスト盤やコンピ盤、ボックスセットが多い方々ですが、今回は数あるベスト盤の中からレーベル主導で制作された『MILLENNIUM COLLECTION』シリーズを除く、バンド側の公式リリースに絞ってセレクトしております。中には新曲やレアトラックなど含まないもの、現在廃盤でサブスクでも配信されていないものも含まれていますが、あえて掲載してみます。

とにかく非常に長いエントリーなので、心してお読みください……(苦笑)。

 

 

『DOUBLE PLATINUM』(1978)

 

1978年4月2日にリリースされたKISS初のグレイテストヒッツアルバム。アナログ2枚組、CD1枚もの。

リリース当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、エース・フレーリー(G, Vo)、ピーター・クリス(Dr, Vo)のオリジナル編成。新曲こそ皆無ですが、既存楽曲に加え「Strutter」のリテイクバージョン「Strutter '78」やリミックステイクなどが豊富。サブスクではApple Musicはフルで楽しめますが、Spotifyでは「Calling Dr. Love」と「Black Diamond」が歯抜け状態。Amazon Musicでは配信すらされていないようなので、どうにかしていただきたいものです。

詳しくはこちらのエントリーを参照のこと。

 


▼KISS『DOUBLE PLATINUM』
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『KILLERS』(1982)

 

1982年6月15日にリリースされた、KISSにとって2作目の公式コンピレーションアルバム。アナログ/CDともに1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、エース・フレーリー、エリック・カー(Dr, Vo)。日本やオーストラリアなどアメリカ以外の諸国で先行発売。当時はここでしか聴くことができなかった新曲4曲(「I'm A Legend Tonight」「Down On Your Knees」「Nowhere To Run」「Partners In Crime」)がかなり話題となりました。ジャケットにエースの姿はあるものの、当時はすでにバンドから脱退しており、新曲のレコーディングにはのちにバンドに加入するブルース・キューリック(G)の実兄ボブ・キューリック(G)がリードギターとして参加しています。

詳しくはこちらのエントリーを参照ください。

 


▼KISS『KILLERS』
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『CHIKARA』(1988)

 

1988年5月25日に日本限定でリリースされたコンピレーションアルバム。CD1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。この年の春に10年ぶり(ノンメイクアップ時代としては初めて)の来日公演が決定したことを受け、それにあわせて日本のみ10万枚限定で制作されたレアアイテム。今となっては10万枚も刷ったのか!って驚きですけどね。内容は「Rock And Roll All Nite」や「Love Gun」などの70年代ヒットよりも、「Creatures Of The Night」や「Lick It Up」「Heaven's On Fire」「Tears Are Falling」などの80'sヘアメタル期が中心。主にシングルカット/MV制作された楽曲が中心で、そんな中に「I Was Made For Lovin' You」のリミックスバージョンという初CD化レア音源が含まれているのが売りかな(のちに「Psycho Circus」シングルのカップリングで世界的にCD化されました)。

枚数限定生産ということで、現在は廃盤。ただ、中古盤ショップを回れば意外と簡単に見つけられるはず。値段もそこまで張っていないので(Amazonは論外!)、気になる方はぜひチェックしてみてください。

 


▼KISS『CHIKARA』
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『SMASHES, THRASHES & HITS』(1988)

 

1988年11月15日にリリースされた、KISSにとって3作目の公式コンピレーションアルバム。CD1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。日本では『CHIKARA』から間を空けずに発表されることになりましたが、『KILLERS』未発売だった北米などの海外諸国では『DOUBLE PLATINUM』以来10年ぶりのベスト盤。考えてみたら「I Was Made For Lovin' You」はもちろん、80年代の楽曲をまとめたコンピが10年も出ていなかった事実に驚かされます。

内容は「Let's Put The X In Sex」「(You Make Me) Rock Hard」の新曲2曲や、一部楽曲のリミックス、そしてエリック・カーが歌唱した「Beth」など、単なるベスト盤では片付けられない楽曲が多数。北米盤ではなぜか直近の新作『CRAZY NIGHTS』(1987年)からの楽曲が含まれていません(ヨーロッパ盤には「Crazy Crazy Nights」「Reason To Live」収録)。とはいえ、ヘアメタル期のヒットシングルが簡単におさらいできるので、実はもっとも手軽に楽しめる入門盤かもしれません。

詳しくはこちらのエントリーを参照ください。

 


▼KISS『SMASHES, THRASHES & HITS』
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『GREATEST KISS』(1997)

 

1997年4月8日にリリースされたKISSの公式コンピレーションアルバム第4弾。日本盤は1997年1月の来日公演にあわせて、1996年12月9日発売。CD1枚もの。

リリース当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、エース・フレーリー、ピーター・クリス(Dr, Vo)。オリジナル編成およびメイクアップ期へと回帰した彼らのワールドツアーにあわせて制作されたもので、北米、ヨーロッパ、日本とそれぞれ収録曲が一部異なるのが特徴。

これまでのコンピのように新曲やリミックス曲は皆無で、既発曲がリマスタリングされている程度。ただ、それだけでは売りがなさすぎるので、1996年6月28日のデトロイト公演から「Shout It Out Loud」のライブ音源を追加。こちらは当時MVも制作されています。

オリメン時代にこだわった選曲なので、『SMASHES, THRASHES & HITS』以降に生まれたヒット曲「Hide Your Heart」「Forever」「Unholy」などは未収録。ただ、北米盤以外では「God Gave Rock 'N' Roll To You II」が選出されているのが謎かも。なお、日本盤のみ海外盤未収録の「C'mon And Love Me」「Rock Bottom」がセレクトされております。このへん、いかにもですね。

サブスクでも聴くことができますが、Apple Musicでは日本盤バージョンで配信、Spotifyはヨーロッパバージョンでの配信のようです。

 


▼KISS『GREATEST KISS』
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2022年11月25日 (金)

QUEEN + PAUL RODGERS『THE COSMOS ROCKS』(2008)

2008年9月15日にリリースされた、「QUEEN + PAUL RODGERS」名義唯一のスタジオアルバム。日本盤は同年9月17日発売。

それまでも何度か共演経験のあったブライアン・メイ(G, Vo)とポール・ロジャース(Vo/ex. FREE、ex. BAD COMPANY)でしたが、2004年にフェンダー・ストラトキャスター発売50周年イベントで一緒になったことを機に、ロジャー・テイラー(Dr, Vo)を含む3人でのコラボレーションを画策。2005年に入り、先の名義によるワールドツアーを開催し、1986年の『Magic Tour』以来19年ぶりとなるQUEENを冠したライブツアーが実現しました。

ここ日本にも同年10月に訪れており、当方も10月30日の横浜アリーナ公演を訪れております。同じタイミングには、同ワールドツアーをパッケージ化したライブ作品『RETURN OF THE CHAMPIONS』(2005年)もリリースされ、ここでひと段落かなと思っていたら、活動はさらに続き、今度は完全新作を完成させるに至りました。

全13曲すべてが書き下ろし楽曲で、それぞれがブライアン、ロジャー、ポールの単独名義で制作されています。クレジットを見ると、ブライアンが3曲、ロジャーが6曲、ポールが5曲というバランス。3分の2がQUEENで残りがFREEもしくはBAD COMPANYと受け取ることもできますが、どの曲も“らしい”多重ハーモニーとブライアンのギターオーケストレーションが加えられることで、“それっぽく”聴こえてくるから不思議です。あと、「Still Burnin'」みたいに過去の楽曲をサンプリングする(ここでは「We Will Rock You」のリズムパターン)ことで「QUEEN」らしく聴かせることに意識的なポイントも散見されます。

しかし、やはりボーカリストがまったく異なると、最終的には似て非なるものになってしまう。もともとフレディ・マーキュリーのように華のある歌い手ではないポールですから、どうしても地味で小さくまとまってしまう。「Cosmos Rockin'」みたいに従来のQUEENがやっていそうなロックンロールナンバーも、ポールが歌うと不思議とこじんまりした形に落ち着く。言い方は悪いですが、力技で突き抜けるような爽快感は皆無です。が、ポールの節回しなど含め、深みのある歌唱スタイルは聴き込めば聴き込むほど味わいが伝わってくる。と同時に、ポールに引っ張られるようにブライアンのギタープレイもQUEENではあまり見せなかったフリーキーさーを見せてくれる。「Voodoo」あたりで披露されるフレージングは、まさにそういった好演の代表例ではないでしょうか。

QUEENもポールも、もともとブラックミュージックの影響下にあるロックを独自の形で昇華させてきたアーティスト。そのアプローチこそそれぞれ異なるものの、こうしてひとつに融合することで、“第3の解釈”をここに封じ込むことができたのではないでしょうか。もちろん、それはQUEENそのものではないし、もっと言えばFREEでもBAD COMPANYでもポールのソロとも違う。どっちつかずと言ってしまえばそれまでですが、僕は本作を「QUEENとソウルフルなロックを題材にした化学反応を楽しむ場」と受け取るようにしています。なので、リリースされた当時よりも大人になった今のほうが、フラットな気持ちでこの良作と向き合えているのではないかな。

なお、本作には今は亡きテイラー・ホーキンス(FOO FIGHTERS)が「C-lebrity」のバックコーラスで参加しています。いかにもブライアン・メイらしいエッジの効いたハードロックは、今聴いても抜群にカッコいいですね。

 


▼QUEEN + PAUL RODGERS『THE COSMOS ROCKS』
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2022年4月30日 (土)

NINE INCH NAILS『THE SLIP』(2008)

2008年5月5日にリリースされたNINE INCH NAILSの7thアルバム。バンドのオフィシャルサイトで無料配信されたのち、同年7月22日に全世界25万枚限定でCD+DVD仕様が発売されました。

2008年3月にCD 2枚組のアンビエントアルバム『GHOST I-IV』を発表し、その独創性/実験性の高さでリスナーを驚かせたトレント・レズナー。そこから2ヶ月と間を空けずに届けられた今作は、同年4月に約3週間という短期間で制作/完成させた1枚です。

約6年ぶりの新作『WITH TEETH』(2005年)でバンドとしての“NINらしさ”を取り戻したトレントは、続く『YEAR ZERO』(2007年)ではその延長線上にありながらも、“個”としてアルバム作りと向き合った。その延長線上にありながらも、より実験性を強めたインスト大作『GHOST I-IV』を経て、トレントは再び“NINらしさ”と向き合うことになるのですが、ここでは過去のように長時間をかけて煮詰めることをせず、短い時間の中で“NINE INCH NAILSとは?”という命題と向き合い、導き出したのがこの10曲ということになるのでしょう。

マスタリングから1日強で先行配信された王道感の強いロックチューン「Discipline」や「1,000,000」、その後のツアータイトルにも用いられたゴシックテイストのピアノバラード「Lights In The Sky」など、その大半の楽曲がNINのパブリックイメージに沿った作風と言えるものばかり。そのシンプルな作りは過去の作品や楽興群と比較すると淡白に映り、聴く人によっては多少の物足りなさを感じるかもしれません。しかし、バンド/プロジェクトとしての初期衝動性を取り戻すという点においては、あの時期にこうしたトライは必要不可欠だったのかもしれません。

それ以上に、本作は制作期間3週間、マスタリングから数日でデジタル配信、しかもアルバムまるまる無料配信という画期的な試みこそが評価されるべき1枚なのかな。序盤の“らしさ”から「Lights In The Sky」以降のアンビエントな流れ(「Corona Radiata」「The Four Of Us Are Dying」)を経て、無機質なインダストリアルチューン「Demon Seed」で締めくくるという構成は、2000年代のどのアルバムよりも、実は90年代への回帰を彷彿とさせる流れだと思うのですが、いかがでしょう?

この作品を携え、一度はバンドとして活動を終了させたNIN。しかし、2013年には再始動をアナウンスし、8thアルバム『HESITATION MARKS』(2013年)とともに完全復活するのでした。

 


▼NINE INCH NAILS『THE SLIP』
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2021年8月 1日 (日)

OASIS『DIG OUT YOUR SOUL』(2008)

2008年10月6日にリリースされたOASISの7thアルバム。日本盤は同年10月1日先行発売。

前作『DON'T BELIEVE THE TRUTH』(2005年)発表後、日本では同年8月(『SUMMER SONIC』ヘッドライナーおよび名古屋)と11月(代々木第一体育館、大阪城ホール)と1年に二度も来日公演を行ったOASIS。2006年には初のベストアルバム『STOP THE CLOCK』のリリース、ロードムービー『LORD DON'T SLOW ME DOWN』の公開、ノエル・ギャラガー(Vo, G)の単独来日(MySpaceの企画でアコースティックライブ実施)など、充実した濃厚な日々を送り続けました。

2007年夏から次作の制作に突入したバンドは、デイヴ・サーディを再度プロデューサーに起用。サポートドラマーにザック・スターキー、キーボーディストに2002年のツアーからサポート参加するジェイ・ダーリントン(ex. KULA SHAKER)を迎え、『DON'T BELIEVE THE TRUTH』で到達したスタイルの“次”を提示する意欲作を完成させます(ザックはツアーには不参加)。

前作ではノエルとの共同プロデュースでしたが、今作ではデイヴがひとりでプロデュース/ミックスを手がけたこともあってか、非常にモダンな音像なのが印象的です。その影響もあり、楽曲のスタイルもどこか目新しさが感じられ、リアム・ギャラガー(Vo)、ノエル、アンディ・ベル(B/ex. RIDE、ex. HURRICANE #1)、ゲム・アーチャー(G/ex. HEAVY STEREO)体制で早くもネクストステップに突入したことが伺えます。これを吉とするか無しとするかで、評価は大きく異なるのではないでしょうか。

ソングライティングに関してはノエルが全11曲中6曲を手がけており、「Bag It Up」「The Turning」「Waiting For The Rapture」「The Shock Of The Lightning」(全英3位)と冒頭4曲がノエル曲で占められているのも印象的。かつ、6曲目「(Get Off Your) High Horse Lady」と7曲目「Falling Down」(同10位)もノエル曲なので、アルバムの前半がほぼノエル色で染められていることになります。過去のOASISと比べたら比較的地味な部類に入るものの、モダンな音像と相まって同時代のガレージロックにも匹敵する豪快さが感じられるはずです。

他メンバーが書いた楽曲も良曲揃いで、リアムは「I'm Outta Time」(同12位)、「Ain't Got Nothin'」「Soldier On」の3曲を提供し、普段ノエルが提示していたセンチメンタルなカラーを補っている。アンディは「The Nature Of Reality」、ゲムは「To Be Where There's Life」と、やはりノエルにない色をそれぞれ提供しており、この対比が非常に面白いなと。バンドとして相互関係がしっかり築かれていることが、こういったクレジットからも透けて見えるような気がしてきます。

チャート的には全英1位、全米5位とひさしぶりに成功したように映りますが、売り上げ的には前作の半分程度まで落ち込み、1stアルバム『DEFINITELY MAYBE』(1994年)以来となる“全英1位シングルを含まないアルバム”という不名誉な記録を打ち立てることに。そして、2009年3月には東名阪と札幌を回るアリーナツアーを行い、同年7月には『FUJI ROCK FESTIVAL』初日ヘッドライナーとして再来日。しかし、その翌月にノエルが脱退を表明し、OASISは解散することになります。

結果として本作がラストアルバムとなってしまいましたが、ここには終わりを目前にした悲壮感もなければ、メンバー間の不和によるズレも見つからない。むしろ、“第3期OASIS”を確立させていこうとするポジティブさが伝わり、もしあのときノエルが脱退を思いとどまっていたら、幻の8thアルバムでどんなサウンドを聴かせてくれていたのか……なんて、たら・れば話を今さらしたくなってしまいます。

だからといって、彼らの再結成を望んでいるのかと言われると、実はまったくそんなことは思っておらず(苦笑)。あの時系列での続きが見たかっただけで、今のリアム&ノエルがまたOASISを再開させてもね……と思ってしまうわけです。それよりは、もっと気合いの入った双方のソロ作を聴きたいです。あと、アンディはRIDEで頑張っているので足引っ張らないで!(笑)

 


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2020年11月26日 (木)

THUNDER『BANG!』(2008)

2008年11月3日にリリースされたTHUNDERの9thアルバム。日本盤は同年11月19日発売。

再結成後初のアルバム『SHOOTING AT THE SUN』(2003年)からハイペースで新作を制作し続けてきたTHUNDERですが、本作も前作『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』(2006年)から丸2年と順調に音楽活動を続けているように映りました。しかし、リリースから数ヶ月後の2009年1月下旬、結成20周年を迎えたこのタイミングにバンドは夏のライブをもって再び解散することを発表。理由は各メンバーがTHUNDER以外の活動で忙しくなり始めたため。もともと期間限定で復活した彼らでしたが、持ち前のワーカホリックぶりが災いしたのか(苦笑)。

おそらく本作の制作中にもそういった予感が、メンバーの間にはあったんじゃないかと思います。そして、その決断を下すにふさわしい内容のアルバムが完成したと思えたから、リリース後に正式発表したのではないでしょうか。そう思わずにはいられないほど、本作は再始動後のTHUNDERにおける集大成的な1枚だと断言できます。

過去2作と比べて躍動感の強かった『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』を経て、今作『BANG!』は全体のバランス感に優れた1枚と言えるでしょう。オープニングを飾るダイナミックはハードロック「On The Radio」やLED ZEPPELIN的ダイナミズムの塊みたいな「Stormwater」、これぞTHUNDER!と断言できるソウルフルなロックチューン「Carol Ann」など、冒頭から“らしい”楽曲がずらりと並ぶものの、4曲目「Retribution」では変拍子を用いた異色のアコースティックロックで意表を突き、続く「Candy Man」や「Have Mercy」で再び王道のTHUNDER節を届けてくれる。この緩急に富んだ構成、正しく再始動後の集大成と呼べるものでしょう。

アルバム後半も、アンディ・テイラー(ex. DURAN DURAN、THUNDERの『BACKSTREET SYMPHONY』プロデューサー)と共作したソウルフルなミディアムバラード「Watching Over You」や豪快なハードロック「Miracle Man」、肩の力の抜けたアコースティック&サイケデリックロック「Turn Left At California」、レゲエ的なギタープレイが耳に残るミディアムロック「Love Sucks」、渋みを増したアダルトなバラード「One Bullet」、ポップで軽やかなロックンロール「Honey」とバラエティに富んだ楽曲が並びます。90年代のTHUNDERらしさをしっかり残しつつ、再結成後の魅力も随所に散りばめたこれらの楽曲は、THUNDERというバンドにとってひとつの到達点だったのかもしれません。

と同時に、こんなに優れたロックアルバムが本国で最高62位までしか到達しなかった事実も、彼らに再び解散という道を選択させた、というのは言い過ぎでしょうか。そういう意味では、再々結成後のアルバムがどれも全英TOP10入りしている現実は、非常に喜ばしいことだと思うのです。

90年代前半のような動きが何も“起きなかった”のは時代のせいだったのか、それとも彼らに魅力がなかったのか。なんにせよ、この『BANG!』というふざけた名前のアルバム(笑)を完成させたことで、すべてやりきった感が強かったんでしょうね。それも頷けるくらいに、“普通に最高”な1枚です。

 


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2020年9月25日 (金)

BRING ME THE HORIZON『SUICIDE SEASON』(2008)

2008年11月中旬にリリースされたBRING ME THE HORIZONの2ndアルバム。日本盤は翌2009年1月下旬に発売されました。

BRING ME THE HORIZONの名を幅広く知らしめる最初の結果を生み出した、記念すべき1枚。ジャケットのグロさから、知らない人にはデスメタルとかゴアグランドのバンドかと間違えられそうですが(デビュー作を知らなかった僕も、店頭でそう勘違いして手にしたひとりです)、1stアルバム『COUNT YOUR BLESSINGS』(2006年)で提示したデスコアサウンドをさらに一歩推し進めた、モダンなメタルコアサウンドを楽しむことができます。

プロデュースを手がけたのは、北欧メロディックデスメタルシーンで知られるフレドリック・ノルドストローム(ARCH ENEMYDIMMU BORGIRSOILWORKなど)。前作でのアンダーグラウンド感が良い意味で薄れ、鋭角で低音重視ながらも全体的に聴きやすい/聞き取りやすいバランス感でまとめられています。初めて聴いたときは冒頭2曲「The Comedown」「Chelsea Smile」のアグレッションに若干引きつつも、それでも不思議と聴きやすいその作風に違和感を覚えたものです(もちろん、良い意味での違和感なんですけどね)。

緩急の起伏が激しいアレンジ/バンドアンサンブルと、デジタルテイストを随所に散りばめた味付けは、前作での(良くも悪くも)アングラの帝王感から一線を画するものがあり、短期間でメジャー感を強めることに成功。今思えば、次々作『SEMPITERNAL』(2013年)の片鱗と言えなくもないですが、この時点ではあくまで「アグレッシヴなバンドサウンドとの対比」という意味での味付けだったはず。なので、デジタル感をバンドの軸足に起き始めた『SEMPITERNAL』とは直接的な関連性はそこまで考えなくてもいいのかなと。むしろそれよりは、楽曲のプログレッシヴ度が急激に増す次作『THERE IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.』(2010年)とのつながりを考えたほうが正しいのかもしれません。

1作目から順に追っていくと、5作目『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)までは非常に真っ当で正しい進化の仕方をしているなという事実に、改めて気づかされるはず。とはいっても、前作『COUNT YOUR BLESSINGS』と本作との差は一番大きなものがあり、そういった意味では今作を真のスタート地点と捉えることもできるのかなと。この『SUICIDE SEASON』から『THAT'S THE SPIRIT』までの流れ/成長は非常にわかりやすいものがありますしね。

リリースから12年経った今の耳で聴くと、当時は激しすぎると若干の拒否反応を示した本作も不思議とキャッチーに思えてくる。慣れって恐ろしいですね(笑)。なお、本作中の「Football Season Is Over」にはメルボルンのハードコアバンドDEEZ NUTSからJJ・ピーターズ(Vo)が、「The Sadness Will Never End」ではイギリスのメタルコアバンドARCHITECTSからサム・カーター(Vo)がそれぞれゲスト参加。本作から10数年後、BMTHもARCHITECTSもイギリスと代表するメタル/ラウドバンドにまで成長するとは、この頃には想像もしていませんでしたね。

BMTH初心者が初期の作品に触れる際、本作から入っていくと現在とのあまりの違いに拒否反応を示すかもしれません。そういう意味では次作『THERE IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.』のほうが入りやすいのかな? 同作が問題なくいけたら、こちらにさかのぼってみるのがベストかもしれませんよ。

 


▼BRING ME THE HORIZON『SUICIDE SEASON』
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2020年8月10日 (月)

THE WiLDHEARTS『STOP US IF YOU'VE HEARD THIS ONE BEFORE VOL.1』(2008)

2008年5月にデジタルリリースされたTHE WiLDHEARTS初のカバーアルバム。当初は12曲入りで配信されましたが、のちに同年7月に3曲追加した全15曲入りでフィジカルリリースされています。

ジンジャー(Vo, G)、C.J.(G, Vo)、リッチ(Dr)、スコット・ソリー(B, Vo)という編成で制作された前作『THE WILDHEARTS』(2007年)から約1年という短いスパンで届けられた今作は、単にバンドに影響を与えたレジェンドたちのみならず、彼らが敬愛する新旧のバンドたち、楽曲にもう一度耳を傾けてほしいという隠れた名曲などをピックアップ。そのセレクトもかなり多岐にわたる、非常に興味深い内容になっています。

今回はCDバージョンを中心に話を進めますが、まずは収録内容(および原曲アーティスト名)を紹介します。

01. AC Rocket [FOIL]
02. Geez Louise [THE UNBAND]
03. Understanding Jane [THE ICICLE WORKS]
04. The World Comes Tumblin' [THE DISTILLERS]
05. Unsung [HELMET]
06. Waiting Room [FUGAZI]
07. Ice Hockey Hair [SUPER FURRY ANIMALS]
08. Possum Kingdom [TOADIES]
09. Pep Talk [THE DESCENDENTS]
10. Rocket 69 [THE LEE HARVEY OSWALD BAND]
11. Battleship Chains [THE WOODS / THE GEORGIA SATELLITES]
12. Rearrange You [BABY CHAOS]
13. Everyday Formula [REGURGITATOR]
14. The Judge [SOUL ASYLUM]
15. Carmelita [ウォーレン・ジヴォン]

配信バージョン(現行のSpotify海外配信分含む)はここから「AC Rocket」「Everyday Formula」「The Judge」の3曲を省いた12曲で、曲順も異なるものです。

FOILやTHE UNBANDなど初見のバンドも含まれていますが、それ以外は名前をよく知るバンド/アーティストであったり、THE WiLDHEARTSと同時代に活躍したバンド、かつジャンル的にあまり交わりのなかった存在などばかりで、先にも述べたようによくある「ルーツを紹介する」形とは異なり、お気に入りの曲を気楽にカバーしてみたという内容と言ったほうがいいでしょう。

実際、過去のカバー曲と比較してもストレートにカバーしていますし(まあ以前のカバー曲も音像で遊んではいたりするものの、基本的には原曲に忠実でしたが)、「THE WiLDHEARTSならでは」みたいなカラーはそこまで強く感じないかな。曲によってC.J.やリッチ、スコットもリードボーカルを担当していますし、そういう意味では次作『¡CHUTZPAH!』(2009年)への布石も見つけられるかな……まあそれ以上に、メンバー全員が肩の力を抜いて好きな曲で遊んでいる、その程度の1枚なのかな。なので、前作『THE WILDHEARTS』と次作『¡CHUTZPAH!』の間をつなぐ1枚というよりは、バンドとしてのアク抜きを行ったぐらいに捉えて、こちら側も構えず気楽に“お楽しみ盤”として接すればいいのではないでしょうか。

と同時に、本作で取り上げた楽曲の原曲を探して聴いてみることもオススメします。本来、そっちを目的として作られた作品でもあると思うので。それに、本作リリース当時は原曲を探すことが難しかったけど、今ならSpotifyやApple Musicを通じて手軽に原曲を見つけることができますしね(ということで、原曲プレイリストを作成したので、最後に貼っておきます。THE WiLDHEARTSのオリジナル盤が国内でストリーミング配信されていないので、こちらで雰囲気を味わっていただけると幸いです)。

 


▼THE WiLDHEARTS『STOP US IF YOU'VE HEARD THIS ONE BEFORE VOL.1』
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