EXTREME『SAUDADES DE ROCK』(2008)
2008年8月12日にリリースされたEXTREMEの5thアルバム。日本盤は同年8月13日発売。
1996年にヌーノ・ベッテンコート(G, Vo)の脱退、ゲイリー・シェローン(Vo)のVAN HALEN加入などで解散の道を選んだEXTREMEですが、2004年以降何度か再結成ライブを行い、2005年にはパット・バッジャー(B)を除く3人にサポートメンバーを加えた形で来日公演も実施。その後、パットが正式に復帰し、新たなドラマーにケヴィン・フィグェリド(Dr)を迎えた新体制で2007年から本格的に活動再開。最後のオリジナルアルバムとなった『WAITING FOR THE PUNCHLINE』(1995年)から約13年ぶりの新作を完成させます。
ヌーノがプロデュースを手がけた本作は、全13曲からなる60分超の大作。ファンクメタルと呼ばれた初期のスタイルやQUEENからの影響を感じさせる中期のポップ/サイケデリック感、グランジを意識したオルタナティヴメタル感の強い後期スタイルなど、EXTREMEが歩んできた道のりをひとまとめにした集大成的内容でありながらも、“この雑多さこそがEXTREMEの極み”とも受け取れるバラエティ豊かさの中にも一本しっかりした軸が感じられる聴き応えのある1枚に仕上がっています。
彼ららしい分厚いコーラスワークが特徴の「Star」からスタートする本作ですが、オープニングは若干地味な印象も。そのへんは『WAITING FOR THE PUNCHLINE』と同じ匂いかもしれません。その後、「Comfortably Dumb」「Learn To Love」とグルーヴ感の強い楽曲が並び、バンドの軸にあるファンクメタル的要素をたっぷり楽しむことができます。ヌーノのギターもしっかり暴れまくっており、ゲイリーの歌とともに存在感の強さがしっかり示されています。
かと思えば、アップテンポのブルースロック「Take Us Alive」では新たな魅力も見受けられ、集大成の先を掴み取ろうとする前向きな姿勢も伝わる。その後もポップなヘヴィファンク「Run」、ダークなヘヴィバラード「Last Hour」、ストレートなアップチューン「Flower Man」、『WAITING FOR THE PUNCHLINE』の流れを汲むオルタナ調ミドルナンバー「King Of The Ladies」、ピアノを軸にしたミディアムバラード「Ghost」、ギター&ベースのユニゾンが気持ち良い極太ファンク「Slide」、アコースティックギター主体のスローナンバー「Interface」、クライマックスに相応しいサイケファンク「Sunrise」とEXTREMEらしい楽曲がずらりと並び、最後は繊細さの伝わるピアノバラード「Peace (Saudade)」で締めくくり。サウンド的には『III SIDES TO EVERY STORY』(1992年)のようなコンセプチュアルなテイストこそ感じられないものの、復活したバンドのリハビリとしては申し分のないクオリティだと思います。
ここから再びEXTREMEの快進撃が始まると当時は思っていましたが、今作を携えたツアーを終えて以降はマイペースなライブ活動を続け、気づけば10数年が経過。コロナ禍に入る前のインタビューで、ヌーノはすでに次作の準備は整っている的な話をしていましたが、待望の6作目『SIX』(2023年)が届けられるまでに15年も要するとは、誰もが想像していなかったと思います。リード曲「Rise」を聴く限りでは、本作『SAUDADES DE ROCK』の延長線上にあるテイストのようなので、ブランクを感じさせないバンドの健在ぶりに期待したいところです。
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