THUNDER『BANG!』(2008)
2008年11月3日にリリースされたTHUNDERの9thアルバム。日本盤は同年11月19日発売。
再結成後初のアルバム『SHOOTING AT THE SUN』(2003年)からハイペースで新作を制作し続けてきたTHUNDERですが、本作も前作『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』(2006年)から丸2年と順調に音楽活動を続けているように映りました。しかし、リリースから数ヶ月後の2009年1月下旬、結成20周年を迎えたこのタイミングにバンドは夏のライブをもって再び解散することを発表。理由は各メンバーがTHUNDER以外の活動で忙しくなり始めたため。もともと期間限定で復活した彼らでしたが、持ち前のワーカホリックぶりが災いしたのか(苦笑)。
おそらく本作の制作中にもそういった予感が、メンバーの間にはあったんじゃないかと思います。そして、その決断を下すにふさわしい内容のアルバムが完成したと思えたから、リリース後に正式発表したのではないでしょうか。そう思わずにはいられないほど、本作は再始動後のTHUNDERにおける集大成的な1枚だと断言できます。
過去2作と比べて躍動感の強かった『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』を経て、今作『BANG!』は全体のバランス感に優れた1枚と言えるでしょう。オープニングを飾るダイナミックはハードロック「On The Radio」やLED ZEPPELIN的ダイナミズムの塊みたいな「Stormwater」、これぞTHUNDER!と断言できるソウルフルなロックチューン「Carol Ann」など、冒頭から“らしい”楽曲がずらりと並ぶものの、4曲目「Retribution」では変拍子を用いた異色のアコースティックロックで意表を突き、続く「Candy Man」や「Have Mercy」で再び王道のTHUNDER節を届けてくれる。この緩急に富んだ構成、正しく再始動後の集大成と呼べるものでしょう。
アルバム後半も、アンディ・テイラー(ex. DURAN DURAN、THUNDERの『BACKSTREET SYMPHONY』プロデューサー)と共作したソウルフルなミディアムバラード「Watching Over You」や豪快なハードロック「Miracle Man」、肩の力の抜けたアコースティック&サイケデリックロック「Turn Left At California」、レゲエ的なギタープレイが耳に残るミディアムロック「Love Sucks」、渋みを増したアダルトなバラード「One Bullet」、ポップで軽やかなロックンロール「Honey」とバラエティに富んだ楽曲が並びます。90年代のTHUNDERらしさをしっかり残しつつ、再結成後の魅力も随所に散りばめたこれらの楽曲は、THUNDERというバンドにとってひとつの到達点だったのかもしれません。
と同時に、こんなに優れたロックアルバムが本国で最高62位までしか到達しなかった事実も、彼らに再び解散という道を選択させた、というのは言い過ぎでしょうか。そういう意味では、再々結成後のアルバムがどれも全英TOP10入りしている現実は、非常に喜ばしいことだと思うのです。
90年代前半のような動きが何も“起きなかった”のは時代のせいだったのか、それとも彼らに魅力がなかったのか。なんにせよ、この『BANG!』というふざけた名前のアルバム(笑)を完成させたことで、すべてやりきった感が強かったんでしょうね。それも頷けるくらいに、“普通に最高”な1枚です。
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