カテゴリー「2008年の作品」の67件の記事

2020年11月26日 (木)

THUNDER『BANG!』(2008)

2008年11月3日にリリースされたTHUNDERの9thアルバム。日本盤は同年11月19日発売。

再結成後初のアルバム『SHOOTING AT THE SUN』(2003年)からハイペースで新作を制作し続けてきたTHUNDERですが、本作も前作『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』(2006年)から丸2年と順調に音楽活動を続けているように映りました。しかし、リリースから数ヶ月後の2009年1月下旬、結成20周年を迎えたこのタイミングにバンドは夏のライブをもって再び解散することを発表。理由は各メンバーがTHUNDER以外の活動で忙しくなり始めたため。もともと期間限定で復活した彼らでしたが、持ち前のワーカホリックぶりが災いしたのか(苦笑)。

おそらく本作の制作中にもそういった予感が、メンバーの間にはあったんじゃないかと思います。そして、その決断を下すにふさわしい内容のアルバムが完成したと思えたから、リリース後に正式発表したのではないでしょうか。そう思わずにはいられないほど、本作は再始動後のTHUNDERにおける集大成的な1枚だと断言できます。

過去2作と比べて躍動感の強かった『ROBERT JOHNSON'S TOMBSTONE』を経て、今作『BANG!』は全体のバランス感に優れた1枚と言えるでしょう。オープニングを飾るダイナミックはハードロック「On The Radio」やLED ZEPPELIN的ダイナミズムの塊みたいな「Stormwater」、これぞTHUNDER!と断言できるソウルフルなロックチューン「Carol Ann」など、冒頭から“らしい”楽曲がずらりと並ぶものの、4曲目「Retribution」では変拍子を用いた異色のアコースティックロックで意表を突き、続く「Candy Man」や「Have Mercy」で再び王道のTHUNDER節を届けてくれる。この緩急に富んだ構成、正しく再始動後の集大成と呼べるものでしょう。

アルバム後半も、アンディ・テイラー(ex. DURAN DURAN、THUNDERの『BACKSTREET SYMPHONY』プロデューサー)と共作したソウルフルなミディアムバラード「Watching Over You」や豪快なハードロック「Miracle Man」、肩の力の抜けたアコースティック&サイケデリックロック「Turn Left At California」、レゲエ的なギタープレイが耳に残るミディアムロック「Love Sucks」、渋みを増したアダルトなバラード「One Bullet」、ポップで軽やかなロックンロール「Honey」とバラエティに富んだ楽曲が並びます。90年代のTHUNDERらしさをしっかり残しつつ、再結成後の魅力も随所に散りばめたこれらの楽曲は、THUNDERというバンドにとってひとつの到達点だったのかもしれません。

と同時に、こんなに優れたロックアルバムが本国で最高62位までしか到達しなかった事実も、彼らに再び解散という道を選択させた、というのは言い過ぎでしょうか。そういう意味では、再々結成後のアルバムがどれも全英TOP10入りしている現実は、非常に喜ばしいことだと思うのです。

90年代前半のような動きが何も“起きなかった”のは時代のせいだったのか、それとも彼らに魅力がなかったのか。なんにせよ、この『BANG!』というふざけた名前のアルバム(笑)を完成させたことで、すべてやりきった感が強かったんでしょうね。それも頷けるくらいに、“普通に最高”な1枚です。

 


▼THUNDER『BANG!』
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2020年9月25日 (金)

BRING ME THE HORIZON『SUICIDE SEASON』(2008)

2008年11月中旬にリリースされたBRING ME THE HORIZONの2ndアルバム。日本盤は翌2009年1月下旬に発売されました。

BRING ME THE HORIZONの名を幅広く知らしめる最初の結果を生み出した、記念すべき1枚。ジャケットのグロさから、知らない人にはデスメタルとかゴアグランドのバンドかと間違えられそうですが(デビュー作を知らなかった僕も、店頭でそう勘違いして手にしたひとりです)、1stアルバム『COUNT YOUR BLESSINGS』(2006年)で提示したデスコアサウンドをさらに一歩推し進めた、モダンなメタルコアサウンドを楽しむことができます。

プロデュースを手がけたのは、北欧メロディックデスメタルシーンで知られるフレドリック・ノルドストローム(ARCH ENEMYDIMMU BORGIRSOILWORKなど)。前作でのアンダーグラウンド感が良い意味で薄れ、鋭角で低音重視ながらも全体的に聴きやすい/聞き取りやすいバランス感でまとめられています。初めて聴いたときは冒頭2曲「The Comedown」「Chelsea Smile」のアグレッションに若干引きつつも、それでも不思議と聴きやすいその作風に違和感を覚えたものです(もちろん、良い意味での違和感なんですけどね)。

緩急の起伏が激しいアレンジ/バンドアンサンブルと、デジタルテイストを随所に散りばめた味付けは、前作での(良くも悪くも)アングラの帝王感から一線を画するものがあり、短期間でメジャー感を強めることに成功。今思えば、次々作『SEMPITERNAL』(2013年)の片鱗と言えなくもないですが、この時点ではあくまで「アグレッシヴなバンドサウンドとの対比」という意味での味付けだったはず。なので、デジタル感をバンドの軸足に起き始めた『SEMPITERNAL』とは直接的な関連性はそこまで考えなくてもいいのかなと。むしろそれよりは、楽曲のプログレッシヴ度が急激に増す次作『THERE IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.』(2010年)とのつながりを考えたほうが正しいのかもしれません。

1作目から順に追っていくと、5作目『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)までは非常に真っ当で正しい進化の仕方をしているなという事実に、改めて気づかされるはず。とはいっても、前作『COUNT YOUR BLESSINGS』と本作との差は一番大きなものがあり、そういった意味では今作を真のスタート地点と捉えることもできるのかなと。この『SUICIDE SEASON』から『THAT'S THE SPIRIT』までの流れ/成長は非常にわかりやすいものがありますしね。

リリースから12年経った今の耳で聴くと、当時は激しすぎると若干の拒否反応を示した本作も不思議とキャッチーに思えてくる。慣れって恐ろしいですね(笑)。なお、本作中の「Football Season Is Over」にはメルボルンのハードコアバンドDEEZ NUTSからJJ・ピーターズ(Vo)が、「The Sadness Will Never End」ではイギリスのメタルコアバンドARCHITECTSからサム・カーター(Vo)がそれぞれゲスト参加。本作から10数年後、BMTHもARCHITECTSもイギリスと代表するメタル/ラウドバンドにまで成長するとは、この頃には想像もしていませんでしたね。

BMTH初心者が初期の作品に触れる際、本作から入っていくと現在とのあまりの違いに拒否反応を示すかもしれません。そういう意味では次作『THERE IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.』のほうが入りやすいのかな? 同作が問題なくいけたら、こちらにさかのぼってみるのがベストかもしれませんよ。

 


▼BRING ME THE HORIZON『SUICIDE SEASON』
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2020年8月10日 (月)

THE WiLDHEARTS『STOP US IF YOU'VE HEARD THIS ONE BEFORE VOL.1』(2008)

2008年5月にデジタルリリースされたTHE WiLDHEARTS初のカバーアルバム。当初は12曲入りで配信されましたが、のちに同年7月に3曲追加した全15曲入りでフィジカルリリースされています。

ジンジャー(Vo, G)、C.J.(G, Vo)、リッチ(Dr)、スコット・ソリー(B, Vo)という編成で制作された前作『THE WILDHEARTS』(2007年)から約1年という短いスパンで届けられた今作は、単にバンドに影響を与えたレジェンドたちのみならず、彼らが敬愛する新旧のバンドたち、楽曲にもう一度耳を傾けてほしいという隠れた名曲などをピックアップ。そのセレクトもかなり多岐にわたる、非常に興味深い内容になっています。

今回はCDバージョンを中心に話を進めますが、まずは収録内容(および原曲アーティスト名)を紹介します。

01. AC Rocket [FOIL]
02. Geez Louise [THE UNBAND]
03. Understanding Jane [THE ICICLE WORKS]
04. The World Comes Tumblin' [THE DISTILLERS]
05. Unsung [HELMET]
06. Waiting Room [FUGAZI]
07. Ice Hockey Hair [SUPER FURRY ANIMALS]
08. Possum Kingdom [TOADIES]
09. Pep Talk [THE DESCENDENTS]
10. Rocket 69 [THE LEE HARVEY OSWALD BAND]
11. Battleship Chains [THE WOODS / THE GEORGIA SATELLITES]
12. Rearrange You [BABY CHAOS]
13. Everyday Formula [REGURGITATOR]
14. The Judge [SOUL ASYLUM]
15. Carmelita [ウォーレン・ジヴォン]

配信バージョン(現行のSpotify海外配信分含む)はここから「AC Rocket」「Everyday Formula」「The Judge」の3曲を省いた12曲で、曲順も異なるものです。

FOILやTHE UNBANDなど初見のバンドも含まれていますが、それ以外は名前をよく知るバンド/アーティストであったり、THE WiLDHEARTSと同時代に活躍したバンド、かつジャンル的にあまり交わりのなかった存在などばかりで、先にも述べたようによくある「ルーツを紹介する」形とは異なり、お気に入りの曲を気楽にカバーしてみたという内容と言ったほうがいいでしょう。

実際、過去のカバー曲と比較してもストレートにカバーしていますし(まあ以前のカバー曲も音像で遊んではいたりするものの、基本的には原曲に忠実でしたが)、「THE WiLDHEARTSならでは」みたいなカラーはそこまで強く感じないかな。曲によってC.J.やリッチ、スコットもリードボーカルを担当していますし、そういう意味では次作『¡CHUTZPAH!』(2009年)への布石も見つけられるかな……まあそれ以上に、メンバー全員が肩の力を抜いて好きな曲で遊んでいる、その程度の1枚なのかな。なので、前作『THE WILDHEARTS』と次作『¡CHUTZPAH!』の間をつなぐ1枚というよりは、バンドとしてのアク抜きを行ったぐらいに捉えて、こちら側も構えず気楽に“お楽しみ盤”として接すればいいのではないでしょうか。

と同時に、本作で取り上げた楽曲の原曲を探して聴いてみることもオススメします。本来、そっちを目的として作られた作品でもあると思うので。それに、本作リリース当時は原曲を探すことが難しかったけど、今ならSpotifyやApple Musicを通じて手軽に原曲を見つけることができますしね(ということで、原曲プレイリストを作成したので、最後に貼っておきます。THE WiLDHEARTSのオリジナル盤が国内でストリーミング配信されていないので、こちらで雰囲気を味わっていただけると幸いです)。

 


▼THE WiLDHEARTS『STOP US IF YOU'VE HEARD THIS ONE BEFORE VOL.1』
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2020年8月 2日 (日)

SHINEDOWN『THE SOUND OF MADNESS』(2008)

2008年6月にリリースされたSHINEDOWNの3rdアルバム。日本盤は同年10月に発表されています。

デビューアルバム『LEAVE A WHISPER』(2003年)が全米53位、続く2作目『US AND THEM』(2005年)が同23位と着実に順位を上げ続け、両作ともアメリカで100万枚を超えるセールスで成功を収めたSHINEDOWN。この3rdアルバムはその人気を確実な形で決定づけるものとなり、全米8位まで上昇したほか、「Second Chance」(全米7位)、「Sound Of Madness」(同85位)、「If You Only Knew」(同42位)、「The Crow & The Butterfly」(同97位)といったヒットシングルまで生み出しました。結果、アルバムは全米のみで200万枚を超える、現時点までで最大のヒット作となりました。

PEARL JAM以降の陰りのある土着型ポスト・グランジ的スタイルで人気を博した彼らですが、新たにロブ・キャヴァロ(GREEN DAYMY CHEMICAL ROMANCE、GOO GOO DOLLSなど)をプロデューサーに迎えた本作ではそのダークさを払拭し、強靭なハードロックサウンドと適度な湿り気を持つメロウなミディアム/スローナンバーを武器に、一気にメインストリームへと躍り出ることになります。

とにかく、モダンなアメリカン・ハードロックとしてかなり細部にまで神経の行き届いた作り込みで、「詰め込みすぎず、かといってスカスカでもない」バンドアンサンブルとブレント・スミス(Vo)の「高音域の伸びが良い」ボーカルが非常に気持ちいいんです。アルバム構成もアップチューンとミディアムナンバーでの緩急の付け方が非常に上手で、適度な緊張感を持って楽しむことができるスリリングな作風はさすがの一言。「Devour」や「Cry For Help」のようなアゲ曲ではしっかり気持ちを高揚させ、ストリングスなどを効果的に取り入れたミディアムバラード「Second Chance」や「The Crow & The Butterfly」ではロックとしての強度とポップソングとしてのクオリティが両立されているんですから、完璧としか言いようがありません。

2000年代半ばのUSロックシーンはGREEN DAYが『AMERICAN IDIOT』(2004年)をバカ売れさせ、カナダ出身のNICKELBACK『ALL THE RIGHT REASONS』(2005年)で1000万枚級のメガヒットを達成し、MY CHEMICAL ROMANCEが『THE BLCK PARADE』(2006年)で一時代を築き上げるなど、新たな潮流が生まれ始めていた時期。このSHINEDOWNも今作にて、間違いなくその仲間入りを果たすことになるわけです。

しかし、この成功がのちにブレントに大きなプレッシャーを与えることになり、以降の苦悩が現時点での最新作『ATTENTION ATTENTION』(2018年)にて描かれることになるわけです。

なお、この『THE SOUND OF MADNESS』は2010年にボーナストラック9曲とボーナスDVDを追加したデラックス・エディションも発売されています。このボートラの中にはリジー・ヘイル(HALESTORM)をフィーチャーした「Breaking Inside」なども収められているので、あわせてチェックしてみてください。

 


▼SHINEDOWN『THE SOUND OF MADNESS』
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2020年2月15日 (土)

DON DOKKEN『SOLITARY』(2020)

DOKKENのフロントマン、ドン・ドッケンが2020年1月末に発表したソロアルバム。日本盤未発売。

ドン・ドッケンはDOKKENの最初の解散(1989年)にソロプロジェクトから派生したバンドDON DOKKEN名義で『UP FROM THE ASHES』(1990年)というアルバムを発表していますが、今作は純粋なる個人名義での1枚となります。

もともとは2008年10月、当時行われたドンのソロツアーにあわせてライブ会場で限定販売された同タイトルの9曲入りアルバムがオリジナル。その後、2016年のDOKKENオリジナルラインナップでの日本公演でも同作品が限定販売されましたが、どちらも一般流通はなし。それが3曲の未発表トラックを追加&ジャケットのアートワークをリニューアルして、急遽一般発売されたわけです。

聴いてもらえばおわかりのとおり、本作はアコースティックサウンドをベースにした、HR/HMとは程遠い内容。もともとテクニックだったり歌唱力の高さが売りのシンガーではありませんでしたが、そこに加えてパワフルさや高音域がてんでダメになってしまった2000年代以降のドンにあわせた、中音域の魅力が存分に楽しめる楽曲が並んでいます。

でね、これがなかなか良いんですよ。パワー不足が否めない今のドンにはこの手のサウンドが本当にぴったりですし、この下手に歌い上げない(悪く言えば抑揚のあまりない)歌唱が隙間の多いアコースティック編成にも合っている。もっと言えば、ピアノとの相性がここまで良いんだと驚かされました。

演奏で参加している面々もなかなかのもので、トニー・フランクリン(B/ex. BLUE MURDERなど)やヴィニー・カリウタ(Dr/フランク・ザッパ、スティングMEGADETHなど)、マイケル・トンプソン(G)など普段の彼の作品からかけ離れた面々ばかり。そこに、『UP FROM THE ASHES』でもタッグを組んだウィン・デイヴィスがプロデュースや楽器演奏でも加わり、ドンの魅力を見事に引き出すことに成功しています。

ビートルズであったり、あるいはアコースティック編成のLED ZEPPELINだったり、いろいろルーツが垣間見える1枚ですが、唯一いただけないのがセリーヌ・ディオンの大ヒット曲カバー「My Heart Will Go On」。

映画『タイタニック』でおなじみの1曲ですが、これに関しては……忘年会の二次会で、酔っ払った上司が自分の歌にうっとりしながら聞かせるジャイアン・リサイタルのようで、ぶっちゃけ興醒めです(笑)。なんでもしっとり表現すればいいってものではないのですよ。特にこの曲に関しては、原曲のイメージおよびパワーが壮絶すぎるので、“歌えない”フロントマンにこういう形でカバーされても……これがパワーバラード調でがっつり歌い上げていたら、また違ったんでしょうね。残念極まりない。

でも、それ以外は平均点以上の出来だと思うので、心や耳を休めたいときにBGMとして楽しむのに最適な1枚です。

 


▼DON DOKKEN『SOLITARY』
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2020年2月 8日 (土)

AVENGED SEVENFOLD『DIAMONDS IN THE ROUGH』(2020)

2020年2月初旬に発表されたAVENGED SEVENFOLDの最新コンピレーションアルバム。アナログ盤およびデジタルのみでのリリースとなります。

本作はもともと、2008年9月に『LIVE IN THE LBC & DIAMONDS IN THE ROUGH』というタイトルで発売された作品集に付属したCDがオリジナルで、2006〜2008年頃に録音された未発表曲およびコンピに提供したカバー曲、4thアルバム『AVENGED SEVENFOLD』(2007年)収録曲の別バージョンの全11曲で構成されたものでした。つまり、大半の未発表曲は『AVENGED SEVENFOLD』からのアウトテイクということになります。

当時聴いた限りでは、クオリティ的にはほかの『AVENGED SEVENFOLD』収録曲に劣るわけではないものの、アルバムの方向性や今後見せたいスタイルとは異なったものだったのかなと感じました。つまり、従来のA7Xらしさを維持した、ファンとしては安心して楽しめる楽曲が目白押し。全体的にも大ヒットした3rdアルバム『CITY OF EVIL』(2005年)と『AVENGED SEVENFOLD』と中間/過渡期的内容といったところでしょうか(これまた“過渡期”って表現すると、完成度的に一歩劣ると捉えられそうですが、まったくそんなことないのでご心配なく)。

また、カバー曲としてIRON MAIDENのカバー「Flash Of The Blade」と、当時よくライブで披露されていたPANTERAのカバー「Walk」も収録。どちらも原曲の良さをそのまま残したコピーに近い仕上がりですが、不思議とA7Xのスタイルにも合っている。さらにアルバム『AVENGED SEVENFOLD』から「Almost Easy」のクリス・ロード・アルジによる別ミックスや「Afterlife」の別バージョンも収録されています。

で、今回改めてアナログ&配信で単独リリースとなった最新バージョンの『DIAMONDS IN THE ROUGH』は最新リマスタリングが施され、既出11曲に5曲追加した全16曲を収録。こちらは『AVENGED SEVENFOLD』以降のアルバム未収録曲やコンピ提供曲……つまり、大半はザ・レヴ(Dr)逝去後の音源となります。

内訳としては「Lost It All」と「4:00 AM」が5thアルバム『NIGHTMARE』(2010年)期の音源で、ドラマーはマイク・ポートノイ(ex. DREAM THEATERSONS OF APOLLOなど)。ともに既出音源です。

そして「St. James」と「Set Me Free」が6thアルバム『HAIL TO THE KING』(2013年)期の音源で、ドラマーはアリン・アイルジェイ。さらに、ラストに収められた「Paranoid」はご存知BLACK SABBATHのカバーで、2009年3月に発売されたコンピレーションアルバム『COVERED , A REVOLUTION IN SOUND』に提供した1曲。タイミング的には「Flash Of The Blade」などと同時期に録ったものだと思われるので、ドラマーはザ・レヴ。この中で完全なる未発表曲は「Set Me Free」のみで、こちらは先月から先行配信されていたのですでに耳にしていた方も少なくないでしょう。いかにも彼ららしいパワーバラードで、ネットリしたギターソロがいい味を出しております。

特に大きな驚きのないコンピかもしれませんが、現時点での最新オリジナルアルバム『THE STAGE』(2016年)に続くフルアルバムを待つ間の穴埋めとしては……ちょっと物足りないかも(笑)。2017年にはがっつり曲追加した『THE STAGE』デラックスバージョンもあったし、2018年にはアクションゲーム『CALL OF DUTY: BLACK OPS』シリーズに提供した楽曲を集めたEP『BLACK REIGN』も発売されているし、それらと比べたらちょっと……ね。

というわけで、個人的には『NIGHTMARE』を超えるフルアルバムに期待してますよ、A7Xの皆さん。

 


▼AVENGED SEVENFOLD『DIAMONDS IN THE ROUGH』
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2019年6月27日 (木)

AC/DC『BLACK ICE』(2008)

2008年10月にリリースされた、AC/DC通算14枚目(オーストラリア国内では15枚目)のオリジナルアルバム。前作『STIFF UPPER LIP』(2000年)から約8年半という全キャリアの中でもっとも長いスパンを経て発表された本作は、アメリカでは『FOR THOSE ABOUT TO ROCK WE SALUTE YOU』(1981年)以来実に27年ぶりの1位を獲得。そのほかにも本国オーストラリアやイギリス、カナダ、フランスなど29カ国で1位に輝いた、(現時点での)2000年代を代表する1枚です。

プロデューサーに初めてブレンダン・オブライエン(AEROSMITHPEARL JAMRAGE AGAINST THE MACHINEなど)を迎えて制作した本作は、全15曲で約56分とオリジナルアルバムとしては過去最長。じゃあ聴くのが大変かといいますと、まったくそんなことはなく、どの曲も3〜4分台で相変わらずのAC/DC節が終始貫かれており、カッコいいロックンロールがぎっしり凝縮された濃厚な作品集と言えます。

正直、ブライアン・ジョンソン(Vo)、アンガス・ヤング(G)、マルコム・ヤング(G)、クリフ・ウィリアムズ(B)、フィル・ラッド(Dr)という黄金期が復活して以降の2枚……『BALLBREAKER』(1995年)と『STIFF UPPER LIP』は「悪くはないけど、最高とまでは言い切れない」彼らにしては並な作品でした。いや、どれも“らしい”作風なんだけど、音源だけじゃ理解しきれない、ライブを体験しないとキツいかな……と思えてくるような“若干地味”なものばかりだったんですよね(だからこそ、『STIFF UPPER LIP』は来日公演をようやく目にすることができて、印象が少し良くなったわけですが)。

で、それと比べて今回の『BLACK ICE』はといいますと、全体的に軽やかさやキャッチーさが増しているように感じられました。『THE RAZORS EDGE』(1990年)みたいにどキャッチーではないですが、それでも同作に匹敵する“わかりやすさ”が備わっている。アップテンポの曲が1曲もなくったって、ここまでやれるんだぞ?という気概も感じられるし、ミドルテンポの中にも多少の上下を付けて変化を与えている。

聴く人が聴けばマンネリの一言で片付けられてしまうかもしれない。それはもう仕方ない、その人にとってAC/DCというバンドの本質がまったく必要としないものなのでしょう。けど、ロックンロールが好きで、AC/DCというバンドに多少なりとも魅力を感じたことがあるリスナーなら、このアルバムって最初から最後まで気持ちよく楽しめるものなんじゃないでしょうか。それこそオープニングの「Rock N Roll Train」のキャッチーさから、エンディングを飾るタイトルトラック「Black Ice」のヘヴィさまで、ノリノリでね。

思えば、本作を携えたさいたまスーパーアリーナ公演(2010年3月)が現時点で最後の来日なんですよね。あの巨大な機関車が登場する「Rock N Roll Train」でのオープニング、懐かしいなあ……。

黄金期ラインナップによる最後のオリジナル作品、そして同ラインナップでの最後の来日。いろいろ感慨深い記憶を残す1枚です。

 


▼AC/DC『BLACK ICE』
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2018年10月 7日 (日)

THE HELLACOPTERS『HEAD OFF』(2008)

2008年4月にリリースされたTHE HELLACOPTERSの通算7枚目にあたるスタジオアルバム。本作リリース前には同年での解散もされており、これがラストアルバムになることも事前にアナウンス済み。そんな中届けられたこのアルバムは、どこからどう聴いてもTHE HELLACOPTERS以外の何者でもない。誰もがそう、思ったはずです。いや、「でした」が正しいかな。

4thアルバム『HIGH VISIBILITY』(2000年)から6thアルバム『ROCK & ROLL IS DEAD』(2005年)までの3作をメジャーのUniversal Recordsから発表しましたが、ラスト作はインディーズに戻ってのリリース。国内盤も初期3作などを発表してきたトイズ・ファクトリーから発売されました。なんだか、最後の最後で原点回帰的で泣かせる、なんて当時は思ったものです。

気になる内容ですが、3枚目の『GRANDE ROCK』(1999年)から顕著になりだした「ガレージロック+ソウルミュージック」的なスタイルの究極形と言いたくなるような楽曲ばかり。速さにこだわるのではなく、メロディとグルーヴを追求した結果がこのスタイルなんでしょうね。ガレージロックとしてのカッコ良さを保ちながらも、要所要所が“黒っぽく”てセクシー、そしてメロディアスで男臭い。ロックファンが追い求めるセンチメンタリズムがすべてここに詰まっている、と言っても過言ではないと思います。

THE HELLACOPTERS、最後に“らしい”アルバムで幕を降ろすんだな。そう、僕を含め誰もが最初にそう思ったのではないでしょうか。一部のディープなガレージロックマニアを除いて……。

これ、発売後にネタ明かしされたのですが、実はこのアルバム、(日本盤ボーナストラック「Same Lame Story」を除く)全曲(いわゆる)B級ガレージロックバンドのカバーだったのです。詳細はWikipediaを見てもらうとして、僕自身が当時知っていたバンド名はTHE PEEPSHOWS、NEW BOMB TURKS、THE BELLRAYS、GAZA STRIPPERSくらい。とはいっても、バンド名は知っていてもこれらの楽曲は知らなかったのですが……。

にしても、THE HELLACOPTERSが「偏見なく聴いてほしい」という理由でその詳細を明かさなかったこと、そして「俺らみたいなバンドのアルバムを通じて少しでもカバーしたバンドに金が入れば」という心意気。それを最後にやるか?という点含めて、すごいバンドだなと当時は呆気に取られたものです。

今も別にカバーアルバムと思って接していないし、純粋にTHE HELLACOPTERSのアルバムの1枚として楽しんでおります。だって、普通にカッコいいもの。それ以外の言葉、必要ないでしょ?



▼THE HELLACOPTERS『HEAD OFF』
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2018年8月23日 (木)

NICKELBACK『DARK HORSE』(2008)

2008年11月にリリースされたNICKELBACK通算6枚目のスタジオアルバム。前作『ALL THE RIGHT REASONS』(2005年)が全米だけで1000万枚を超えるメガヒット作となり、6曲ものUS TOP100ヒットシングルを生み出すという、まさにDEF LEPPARDにおける『HYSTERIA』(1987年)的な1枚となったわけですが、続く本作『DARK HORSE』は全米1位こそ逃したものの(最高2位)、アメリカだけで売り上げ300万枚を超え、前作同様に6曲ものヒットシングルを送り出しています。

先に“DEF LEPPARDにおける『HYSTERIA』的な1枚”と触れましたが、このアルバムではそのLEPPSで知られるロバート・ジョン・マット・ラングをプロデューサーに迎えて制作。ロバートはソングライティングにも数曲携わり、まさに“こういうのが作りたかったんだ!”という思いがまっすぐ伝わってくる力作に仕上がっています。

「Something In Your Mouth」のようにガッツのあるハードロックから始まり、そのままスポーツのスタジアム観戦にもピッタリな「Burn It To The Ground」と“いかにも”なサウンドメイキングのロックナンバーが続きますが、キャッチーなメロディを持つミディアムチューン「Gotta Be Somebody」やパワーバラードと呼ぶにふさわしい「I'd Come For You」、ゴリゴリに攻めるメタリックな「Next Go Round」、エモーショナルなマイナーチューン「Just To Get High」などなど、とにかくバラエティに富んだ良曲がズラリと並んでいます。

その曲も一寸の隙も感じさせない、しっかり作り込まれており、このきめ細やかさ(いや、異常な執着ぶりと言ったほうが正しいか)に“ロバート・ジョン・マット・ラングのプロデュース作品”らしさが強く表れています。『HYSTERIA』はもちろんですが、ブライアン・アダムス『WAKING UP THE NEIGHBOURS』(1991年)にも通ずるものがある1枚かもしれません。

しかし、これれら過去の名盤と明らかに違うのが、アルバム全体が非常にコンパクトだということ。全11曲で43分というバランス感が、このアルバムをより親しみやすいものにしているのは間違いないと思います。

肩の力が抜けたラストナンバー「This Afternoon」ですら、思いっきり作り込みが感じられるあたり、リラックスして楽しんで……とは言いにくいですが(苦笑)、ヘッドフォンでがっつり、あるいはドライブのお供として爆音で楽しむには最適の1枚ではないかと思います。実は、『ALL THE RIGHT REASONS』よりも好きな作品だったりするんですよね、個人的に。



▼NICKELBACK『DARK HORSE』
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2018年8月15日 (水)

JOURNEY『REVELATION』(2008)

2008年6月に海外で(日本では同年10月に)リリースされた、JOURNEY通算13枚目のスタジオアルバム。前任のスティーヴ・オージェリー(Vo)に代わり、新たに加入したフィリピン・マニラ出身の新人シンガー、アーネル・ピネダを迎えて制作された第1弾作品となります。

また、本作はバンドにとって初の2枚組スタジオ作品となり、DISC 1が新曲で構成された純粋な新作(1曲のみ前作『GENERATIONS』収録曲のリテイク)、DISC 2は代表曲の数々をアーネル・ピネダのボーカルでレコーディングした再録ベストアルバムとなっています(さらにUS盤限定の付属DVDには、同編成でのライブ映像を収録)。ボリューミーながらも豪華な内容ということもあり、本作は前作の170位を大きく上回る全米5位にランクイン。現在までに100万枚以上を売り上げるヒット作となりました。

アーネルの歌声は、バンドの全盛期を支えたスティーヴ・ペリー(Vo)の歌声にそっくりということもあり、ある種“クリカン版『ルパン三世』”と同じようなイメージを持つ人も多いかもしれません。がしかし、アーネルが加入してすでに12年以上経っており、ここ日本のロックファンの間でも彼の存在は浸透したと言い切ってもいいでしょう。

確かにモノマネ上手かもしれませんが、スティーヴ・ペリーよりも太く、深みのある歌声は若干疲れ果てていたバンドに新たな潤いを与えたことは間違いありません。結果、本作のDISC 1に収録されている新曲の大半は、初めて聴くはずなのに「あれ、以前も聴いたことある?」と思えてしまうくらい、どこをどう切り取ってもJOURNEYの楽曲そのもの。しかも、そのクオリティが単なる焼き直しレベルで終わっておらず、耳に残るものばかりなのです。

また、随所随所には過去の名曲のフレーズが散りばめられていて、思わずニヤリとしてしまう場面も多いですしね。ぶっちゃけ、1996年の復活作『TRIAL BY FIRE』(1996年)以降の作品で、もっとも“らしい”内容で、かつ完成度の高い1枚ではないでしょうか。

そして、DISC 2ですが……サントラ収録曲「Only The Young」から始まり、そのまま「Don't Stop Believin'」「Wheel In The Sky」という流れ……そう、これって彼らのベストアルバム『GREATEST HITS』(1998年)の構成をなぞったものなんですよね。まったく一緒というわけではなく、元が15曲のところを11曲に減らし、しかもオリジナル盤にはなかった「Stone In Love」をピックアップしていたりと、アーネルや今のバンドのスタンスに合わせた選曲がなされているのではないんでしょうか。そこも含めて、『GREATEST HITS』とはまた違った楽しみ方ができるはずです。

ニール・ショーン(G)の弾きまくりっぷりもハンパないし、ディーン・カストロノヴォ(Dr)のヘヴィヒッターぶりも存分に楽しめる。バンドとしてフレッシュさを取り戻しつつも、しっかり円熟味も感じさせてくれる、強烈なアルバムだと思います。



▼JOURNEY『REVELATION』
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