カテゴリー「2009年の作品」の29件の記事

2024年4月25日 (木)

PEARL JAM『BACKSPACER』(2009)

2009年9月20日にリリースされたPEARL JAMの9thアルバム。日本盤は同年9月30日発売。

セルフタイトルの前作『PEARL JAM』(2006年)から3年4ヶ月ぶりの新作。本作からバンドが新たに設立した自主レーベル・Monkeywrench Recordsからのリリース(配給はUniversal Musicが担当)で、プロデューサーには5thアルバム『YIELD』(1998年)以来となるブレンダン・オブライエンを迎えて制作されています。

シリアスさの際立つ前々作『RIOT ACT』(2002年)、その流れにありながらも自分たちの置かれた状況を打破しようとした前作『PEARL JAM』を経て、本作では軽快さの際立つシンプルなロックンロールを展開。大半の楽曲が3分前後とコンパクトにまとめられており、全11曲で36分半というトータルランニングはPEARL JAM史上最短でかなり聴きやすい仕上がりです。

頭3曲(「Gonna See My Friend」「Got Some」「The Fixer」)のストレートなノリの良さに初めて直面したときは、「どうした、PEARL JAM!?」とびっくりしたものです(もちろん良い意味で)。歌詞に関しても非常にポジティブなものが多いのですが、これは2009年1月にアメリカ大統領に就任したバラク・オバマからの影響が強かったと、エディ・ヴェダー(Vo)は当時のインタビューで語っています。また、そうしたポジティブなヴァイブスは作曲面にも影響を及ぼし、大半の楽曲は制作に30分かかっていないとも公言されています。

個人的な印象ですが、2ndアルバム『VS.』(1993年)が真の意味でバンドの1stアルバムだと捉えると、1990年代初頭のどんよりした空気感を引き摺ってたバンドがようやくその葛藤を払拭し、今作では新たな価値観を掴み取った。もちろん、ここで表現されていることがすべての答えではないと思いますが、バンドがこの先も長く続いていくことを想定したとして、その糸口になるようなメッセージとサウンドに辿り着けたのがこの『BACKSPACER』というアルバムだったのかなと、2024年時点での最新作『DARK MATTER』を聴いた今、そう再認識しています。

PEARL JAM流の“(音楽的)パンク”アルバムと捉えることもできる本作。混迷の第1章(グランジ期)、葛藤の第2章を経て、バンドはついに第3章に突入した。新たな始まりを高らかに宣言するこのアルバムは、彼らのキャリアにおける代表作のひとつだと断言します。

 


▼PEARL JAM『BACKSPACER』
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2023年2月25日 (土)

U2『NO LINE ON THE HORIZON』(2009)

2009年2月27日にリリースされたU2の12thアルバム。日本盤は同年2月25日発売。

オリジナルアルバムとしては、前作『HOW TO DISMANTLE AN ATOMIC BOMB』(2004年)から4年3ヶ月ぶりの新作。原点回帰と過去の変遷の総括を併せ持つ『ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND』(2000年)からの三部作最終章と捉えられる本作のプロデューサーには、前作から引き続きブライアン・イーノ、ダニエル・ラノワ、スティーヴ・リリーホワイトという“U2を昔から深く知る偉人たち”を迎え、「I'll Go Crazy If I Don't Go Crazy Tonight」にのみBLACK EYED PEASのウィル・アイ・アムがアディショナルプロデューサーとしてゲスト参加しています。

本作でやろうとしていることは明らかに『HOW TO DISMANTLE AN ATOMIC BOMB』の延長線上にあることなのだと思うのですが、通して聴いてみると前作から地続きのようで別モノにも映る、非常に不思議で厄介な1枚。正直に言うと、最初に聴いたときに一発で好きになれなかった初めてのU2アルバムだったのです。

まず、過去2作でいうところの「Beautiful Day」や「Vertigo」のようにわかりやすいロックアンセムが皆無。本作からのリード曲「Get On Your Boots」はモダンな質感のカッコいいオルタナサウンドですが、“歌”としてはちょっと“届かない”。実は本作、そういう志向の楽曲が多いんですよね。

方法論自体は先にも述べた「原点回帰と過去の変遷の総括」にあるものの、過去2作がその志向を歌に焦点を合わせていたのに対し、本作では外堀=サウンドメイキングに焦点を移したものに変化しているような気がするんです。そういった意味では、何気に『POP』(1997年)でやろうとしていたことに方法論としては似ているのかもしれません。ただ、個人的には『POP』ほどの革新性も充実度も感じられず、そこだけが残念でなりません。

タイトルトラックを筆頭に、「Magnificent」や「Moment Of Surrender」「Unknown Caller」など楽曲1つひとつを取り上げると決して悪くはないですし、むしろロックバンドとしては平均点を軽く超えている。だけど、歌モノとして捉えるとスペシャルさが感じられる曲が見当たらない。そのもどかしさが最後まで付きまとい、終始ぼんやりモヤがかかった状態のまま。だから、アルバムとして強く印象に残らないし突き抜けた楽曲がひとつも存在しない。『HOW TO DISMANTLE AN ATOMIC BOMB』でバンドとして新章に突入したものの、早くも過渡期を迎えたような、そんな迷いも見え隠れする1枚かもしれません。

そういう事実も影響してか、本作は英米でチャート1位こそ獲得するものの、セールス自体は前作から半減。シングルに関しても「Get On Your Boots」(英12位/米37位)、「Magnificent」(英42位/米79位)、「I'll Go Crazy If I Don't Go Crazy Tonight」(英32位)と大きなヒットにつながりませんでした。僕自身、このアルバムを機にU2に対する興味が少しずつ薄れ始めてしまった、そんな悪い意味でのターニングポイントとなった異色作。リリースから14年ほど経ちますが、まだ本作を再評価するタイミングには至っていないようです。もしかしたら、そこに到達するには新作があと1、2枚は必要なのかもしれませんね。

 


▼U2『NO LINE ON THE HORIZON』
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2023年2月13日 (月)

HALESTORM『HALESTORM』(2009)

2009年4月28日にリリースされたHALESTORMの1stアルバム。日本盤は『LOUD PARK 10』での初来日にあわせて、2010年10月27発売。

リジー(Vo, G)&アージェイ(Dr)のヘイルきょうだいを中心に1997年から活動を続けてきたHALESTORMですが、ジョー・ホッティンジャー(G)&ジョシュ・スミス(B)が加わった2003〜4年以降に活動が本格化。2005年には現在も所属するメジャーのAtlantic Recordsと契約し、翌2006年春には5曲入りライブEP『ONE AND DONE』をリリースします。

そこから地味なライブ活動を展開していき、ハワード・ベンソン(HOOBASTANKDAUGHTRYIN FLAMESなど)をプロデューサーに迎えてじっくり時間をかけて1stアルバムを完成させます。ミキシングエンジニアにクリス・ロード-アルジ、マスタリングエンジニアにテッド・ジェンセンという一流どころを起用し、ゲストプレイヤーにはのちにBON JOVIに加入するフィル・X(G/「Bet U Wish U Had Me Back」のみ)、楽曲制作のコライトには元EVANESCENCEのベン・ムーディー(G)やSIXX: A.M.のジェイムズ・マイケル(Vo)、現MOTLEY CRUEのジョン・5(G)、SLIPKNOTSTONE SOURコリィ・テイラー(Vo)、AEROSMITHなどとのコラボで知られるマーティ・フレデリクセンなど著名アーティストが顔を揃えており、いかにレーベルがこのバンドに力を入れているかが伺えます。

そのサウンド的には正当的なアメリカンハードロックが下地になっており、スピードよりもグルーヴ感やヘヴィさを重視したテンポからはすでに大モノ感すら伝わります。アメリカ人、基本的にこういったミドルテンポの楽曲が好きですものね。あと、クレジットを確認するとすべての楽曲はリジーを中心に執筆されているものの、どれも単独で書いたものではなく、より良いものへとまとめ上げるために複数のコライターが名を並べている。かなりいろんな思惑の働いた作品ではあるものの、だからこそデビューアルバムにも関わらず異常に完成度が高い。世が世ならHEARTみたいに産業ロック呼ばわりされそうですよね。

そうそう、僕が初めてこのアルバムを聴いたときの印象が、まさに80年代のHEARTだったんです。心地よいテンポ感でまとめられたアメリカンハードロックに、これまた心地よく響くリジーのボーカルが乗る。全体を通してラジオフレンドリーな作風で、ゆっくり時間をかけて丁寧に売っていこうとする、そういう姿勢が見え隠れしたんです。リスナーによってはそういった作風に嫌悪感を示すのかもしれませんが、捻くれ者な自分はこういう力の入った“売れ線”も大好物なので、当時からよく聴いていた記憶があります。

実際、このアルバムから「I Get Off」「It's Not You」「Familiar Taste Of Poison」「Bet U Wish U Had Me Back」といったラジオヒットが生まれ、アルバム自体も全米40位まで上昇。現在までに50万枚以上を売り上げるヒット作になりました。ここでの地道な成功があったから、続く2ndアルバム『THE STRANGE CASE OF...』(2012年)での大成功(全米15位、ミリオン獲得)へとつなげていけたんでしょうね。

 


▼HALESTORM『HALESTORM』
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なお、本作リリースから10年後の2019年12月20日には、10thアニバーサリー・エディションもアナログ&デジタルで発売されています。こちらはCD未発売ということもあり、日本盤も発売されておりません。

本バージョンはアルバム本編11曲に加え、メジャー契約後の2006〜8年に録音された12ものデモ音源をボーナストラックとして収録。その多くが1stアルバム未収録で、音質こそ劣るもののメジャー感の強いアルバム本編とは異なるオルタナメタル/ポストグランジ的なテイストは非常に新鮮に響くはずです。

こうした歴史を踏まえつつこのデモテイクを、時系列に沿って追っていくと、どのような段階を踏んで完成度の高い1stアルバムへと到達していったか、その過程を確認できるはず。本編をしっかり楽しんだあとに、こちらもチェックしてみるといろいろ発見も多いと思いますよ。

 


▼HALESTORM『HALESTORM: THE 10TH ANNIVERSARY EDITION』
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2021年9月27日 (月)

NEW YORK DOLLS『'CAUSE I SEZ SO』(2009)

2009年5月5日にリリースされたNEW YORK DOLLSの4thアルバム。日本盤未発売。

2004年に再結成を果たし、2006年にはデヴィッド・ヨハンセン(Vo)とシルヴェイン・シルヴェイン(G)のオリジナルメンバーに元HANOI ROCKSサミ・ヤッファ(B)、菅野よう子とのコラボレーションで知られるスティーヴ・コンテ(G)、そしてブライアン・デラニー(Dr)にブライアン・クーニン(Key)の6人で制作した32年ぶりのオリジナルアルバム『ONE DAY IT WILL PLEASE US TO REMEMBER EVEN THIS』で完全復活を果たしたNEW YORK DOLLS。しかし、ブライアン・クーニーはアルバム発表後にバンドを脱退、以降は残された5人で活動を続けることになります。

レーベルをRoadrunner RecordsからAtlantic Records傘下のATCO Recordsに移籍して、約3年ぶりに届けられた再結成後2作目のアルバムは、バンドのデビュー作を手がけたトッド・ラングレンを再度プロデューサーに起用。前回は新たな門出を祝福するようにさまざまなゲストミュージシャンが参加していましたが、今回は5人のみでがっつりレコーディングに臨んでいます。この時点で、バンドが何を求めていたのかが想像できそうですね。

基本的には前作の延長線上にある、少々硬質感を強めたロックンロール/ガレージロックがベース。ただ、楽曲の質感や適度なユルさが前作以上といいますか、良い形で70年代の往年の雰囲気を取り戻し始めている。そこに楽曲の良さ(R&Bを下地にしたガレージロック)が加わり、良い作用を生み出しています。ぶっちゃけ、前作は30数年ぶりの復活ということもあり、力みも多少あったのかな。このナチュラルさ、随所に漂うユルさこそNEW YORK DOLLSだろうと膝を叩きたくなる仕上がりです。

基本的にはヨハンセン&シルヴェインがソングライティングの基礎を作っているのですが、そこにスティーヴ・コンテが4曲で名を連ねている。のちに加入するマイケル・モンロー・バンドでもその才能を遺憾なく発揮していますが、すでにこの時点で最高の仕事ぶりを見せていたことを再確認できます。

ヨハンセンのボーカルも加齢とともに深みが加わり、誰にも真似できないヘタウマぶりを展開。これに合わせて、バックの演奏も硬くなりすぎず、ヘタウマとまではいかないものの適度な緩やかさを漂わせる。このバランスの取り方が非常に的確で、正直今のAEROSMITHストーンズとは異なる魅力が伝わってきます。これがクセになって、たまらんのですよ。

なお、アルバムには1stアルバム『NEW YORK DOLLS』(1973年)収録の代表曲「Trash」を、レゲエアレンジでセルフカバーしたトラックも収録。こちらも今ならではの味わい深さがあります。この遊び心も嫌いになれません。

初期2作は別格として、再結成後ではベストワークでは?と当時は確信したものですが、実はそのあとにもう1枚、最高な1枚を届けてくれることになるとは……それについては、また別の機会に。

 


▼NEW YORK DOLLS『'CAUSE I SEZ SO』
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2021年9月10日 (金)

CHEAP TRICK『THE LATEST』(2009)

2009年6月23日にリリースされたCHEAP TRICKの16thアルバム。日本盤は同年7月22日発売。

前作『ROCKFORD』(2006年)から3年ぶりの新作。2000年代のCHEAP TRICKは『SPECIAL ONE』(2003年)が前作から6年ぶりの新作だったものの、以降は3年間隔で新作を届けてくれ、年齢のわりにハイペースで創作活動を続けているバンドでした。

今作から制作陣に、2021年時点での最新作『IN ANOTHER WORLD』まで関係が続くジュリアン・レイモンドが初参加。キーボードには元JELLYFISHのロジャー・ジョセフ・マニング・Jr.が参加したほか、アディショナル・ミュージシャンのクレジットに同じく元JELLYFISHのジェイソン・フォークナーや、トッド・ユース、LINUS OF HOLLYWOODといったパワーポップ界隈の名前を多数見つけることができます。

だからということはないでしょうけど、今作はパワフルなロックチューン全開だった前作と比較すると幾分落ち着いた印象を受けます。良い感じに“枯れた”大人のパワーポップ(オルタナカントリー寄り)に、職人受けしそうな高品質なポップソングの数々は、30年を超えるキャリアに相応しい仕上がりで、CHEAP TRICKに憧れてミュージシャンになったパワーポップ界隈の人たちにとっては理想的な1枚ではないでしょうか。

友人の死からインスパイアされたという、讃美歌のような「Sleep Forever」から厳かに始まったかと思えば、SLADEのカバー「When The Light Are Out」で弾けんばかりのパワーポップを響かせる。かと思えば「Miss Tomorrow」「Sick Man Of Europe」で王道のCHEAP TRICK節を響かせ、「These Days」「Miracle」といったバラードでリスナーのハートを鷲掴みにする。アルバム後半もストレートなロックチューン「Everyday You Make Me Crazy」「California Girl」「Alive」でノリにノセたかと思えば、ミディアムバラード「Everybody Knows」「Time Of Our Lives」「Closer, The Ballad Of Burt And Linda」でしっかり浸らせ、最後は極上のピアノバラード「Smile」で締め括り。

全体的にミディアム/スローナンバーの目立つ作風ですが、いっときの売れ線バラードやパワーバラード路線とは異なり、しっかりルーツの見えるミディアムナンバー中心なので、そこは嫌悪感を覚えることはないかと。先にも書いたように、本作は30年選手による“大人のパワーポップ”がテーマですからね(本人たちにその覚えがなくても、我々はそう受け取っています)。そんなアルバムに『THE LATEST』(=最新作)という、身も蓋もないタイトルを付けるセンスも嫌いになれません。

なお、本作は結果的にバン・E・カルロス(Dr)が参加した最後のスタジオアルバムになってしまいました。

 


▼CHEAP TRICK『THE LATEST』
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2021年8月 5日 (木)

BIFFY CLYRO『ONLY REVOLUTIONS』(2009)

2009年11月9日にリリースされたBIFFY CLYROの5thアルバム。日本盤は同年12月23日発売。

前作『PUZZLE』(2007年)が初の全英1位を獲得し、名実ともに英国を代表するロックバンドの仲間入りを果たしたBIFFY CLYRO。続く今作は1位こそ逃すものの全英2位まで上昇し、初のダブルプラチナムを達成。現在までバンドの最高売り上げを記録する代表作として知られます。また、本作からは「Mountains」(全英5位)、「That Golden Rules」(同10位)、「The Captain」(同17位)、「Many Of Horror」(同8位)、「Bubbles」(同34位)、「God And Satan」(同36位)と6枚ものヒットシングルが生まれています。

プロデューサーにガース・リチャードソン(RAGE AGAINST THE MACHINEMELVINSSKUNK ANANSIEなど)、ミキサーにアンディ・ウォレス(NIRVANASLAYERHELMETなど)という布陣は前作から引き続き。要所要所にストリングスをフィーチャーした豪快さやスリリングさを強要したアレンジが魅力的なのもこれまで同様。ただ、前作と大きく異なるのは1曲1曲の完成度がさらに高まっている点で、それが先に触れた数々のシングルヒットにつながっているし、またアルバムとして通して聴いたときもその1曲1曲の高品質さが相乗効果を起こし、結果アルバムとしてのまとまりの良さに一役買っている。そりゃ売れるわけですよ。

本作ではジュシュア・ホーミー(QUEENS OF THE STONE AGE)が「Bubbles」でギターにてゲスト参加。ストリングスアレンジではかのデヴィッド・キャンベル(かのベックの実父)が主導権を握り、「The Captain」や「Many Of Horror」のような楽曲でダイナミックさを強調しています。この繊細さが備わったアレンジこそ彼らの醍醐味であり、アメリカのFOO FIGHTERSとは一線を画する点ではないでしょうか(フーファイもそういったトライを何度もしていますが、正直ここまで武器にはしていませんし)。

「Booooom, Blast & Ruin」や「Cloud Of Stink」のようなアップチューンも存在しますが、むしろ彼らの魅力は大らかなノリを持つミディアムナンバー。アルバムの冒頭を「The Captain」のような楽曲が飾る時点で、彼らの余裕が伝わるのではないでしょうか(そこも前作『PUZZLE』との大きな違いで、今作で得た自信が今後のスタイルに大きくつながっていくわけですね)。

本作での成功は彼らを国民的バンドの座へと引き上げ、続く2枚組アルバム『OPPOSITES』(2013年)のヒットがさらにダメ押しすることになります。

 


▼BIFFY CLYRO『ONLY REVOLUTIONS』
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2020年6月22日 (月)

DEAD END『METAMORPHOSIS』(2009)

2009年11月にリリースされたDEAD ENDの5thアルバム。

1989年の4thアルバム『ZERO』を最後に、MINATO(Dr)が脱退。そのままMORRIE(Vo)やYOU(G)がソロ活動を開始するなど、バンドは事実上の解散状態に。そこから20年たった2009年夏、屋内フェス『JACK IN THE BOX2009 SUMMER』にてMORRIE、YOU、CRAZY COOL JOE(B)、MINATOのフルメンバーで再結成ライブを実施すると同時に、秋にオリジナルアルバムをリリースすることをアナウンスします。このライブの時点で新曲「Dress Burning」を披露しており、往年の楽曲に負けず劣らずのクオリティをアピールしました。

そこから3ヶ月を経て届けられた新作には、最初こそ期待半分、不安半分という複雑な心境で臨みました。仕事柄、確かリリース前に聴くことができたのですが、オープニング曲「摩天楼ゲーム」のイントロを聴いた時点で、小さくガッツポーズを取ったことは言うまでもありません。YOUの豪快なギターリフといい、MINATO&COOL JOEのダイナミックなリズムセクションといい、文句なしの仕上がりですし、さらにモダンな音像が「20年を経て進化したDEAD END」を物語っているように感じさせてくれました。

さらに、MORRIEのボーカル……この数年前からCreature Creatureとして第一線に復帰していたので、こちらに関しては何の不安もありませんでしたが、ソロやCreature Creatureを経てさらに個性的に、さらに濃厚になった歌声で新たに生まれ変わったDEAD ENDを表現してくれました。歌唱スタイルは80年代のそれとは異なるものかもしれませんが、Creature Creature以降身に付けたであろうスタイルがオーソドックスなハードロックにモダンなオルタナ感を掛け合わせた楽曲に非常にマッチ。20年前の続きでもあるようで、新しいバンドのようでもある、とても新鮮な気持ちで向き合わせてくれる良作だと断言できます。

どの曲もこれまでのDEAD ENDにありそうでなかったタイプのものばかりで、そこに「Princess」のような王道ナンバーも含まれているのですが、単なる焼き直しで終わらない新たな魅力を放っている。さらに、Creature Creatureを経たからこそ生まれたであろうハードコア&スラッシーな「Devil Sleep」、10分近くにおよぶダーク&ドゥーミーな「冥合」という新機軸も用意され、いろんな場面でソングライター/プレイヤー/表現者としての20年の積み重ねを実感させられます。

だいたい再結成アルバムって昔からのリスナーの期待度に達しない場合が多いのです(もちろん、LUNA SEAのような例外もあります)が、本作は別格のカムバック作。この傑作がストリーミング含めて手軽に聴くことができない現状、どうかと思いますよ。

 


▼DEAD END『METAMORPHOSIS』
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2020年5月 2日 (土)

HEAVEN & HELL『THE DEVIL YOU KNOW』(2009)

2009年4月末にリリースされたHEAVEN & HELL唯一のスタジオアルバム。

HEAVEN & HELLはロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)、トニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)、ヴィニー・アピス(Dr)という『MOB RULES』(1981年)や『DEHUMANIZER』(1992年)を制作したBLACK SABBATHの面々による変名バンド。2007年にディオ在籍時の楽曲を集めたコンピレーションアルバム『BLACK SABBATH: THE DIO YEARS』をリリースした際、この4人による新曲を3曲制作しましたが、ここで得た手応えから再度スタジオ入りし、アルバムまで完成させるに至るわけです。

オジー・オズボーンとのBLACK SABBATHも“生きている”ちゃあ生きているタイミングだったので、サバス名義ではなくディオ・サバスの1作目に当たるアルバム『HEAVEN AND HELL』(1980年)のタイトルをそのままバンド名に用いて、ツアーやレコーディングを続けますが、本作リリースから1年後の2010年5月16日、ディオはこの世を去ることに。結果として、本作が生前最後のレコーディング作品となってしまいました。きっと、ディオ自身も死期を悟り、最後にもうひと花という意味でサバス復帰を選んだのでしょうね。

作風的には『HEAVEN AND HELL』や『MOB RULES』よりも、再編後に制作した『DEHUMANIZER』に近い、ミドルヘヴィナンバーを中心とした内容。ですが、『DEHUMANIZER』のようなモダンヘヴィネス的色合いはまったくなく、むしろ『HEAVEN AND HELL』や『MOB RULES』に含まれていたミドルヘヴィナンバーをより熟成させた、濃厚でねっとりしたディオ・サバス曲で構成されています。要するに、悪いわけがない。最高の仕上がりなのです。

当時のアイオミのスタイルを考えると、本作の次に制作されたオジー・サバスの最終作『13』(2013年)にも通ずる作風と言えるでしょう。つまり、アイオミが「BLACK SABBATHとは?」という命題と向き合い、2人の代表するシンガーとともに完成させた“答え”という意味で、本作と『13』は対となる2枚だと思うのです。

『13』ではひたすらドゥーミーでミドルスロウな楽曲ばかりにご執心でしたが、ここではミドルを軸に若干のアップダウンが用意され、その緩急が聴き手に心地よさを与えてくれる。つまり、同じミドル続きでも『13』ほど退屈しないのが今作最大の特徴であると。それには、ディオという稀代の名シンガーの尽力も大きいと思います。ディオ御大、最後の最後にベストパフォーマンスを残そうと制作に臨んだのでしょう。どこをどう切り取ってもディオ以外の何者でもありません。

わかりやすい派手さは皆無ですが、ディオ・サバスを愛する者、あるいはロニー・ジェイムズ・ディオというシンガーの歌が好きなリスナーなら間違いなくハマる1枚。モダンメタルが台頭する2009年という時代に、オールドスクール世代がかましたカウンターという意味においても非常に重要な作品だと断言できます。

日本盤CDには先のコンピ盤『BLACK SABBATH: THE DIO YEARS』に収録された新曲3曲が、ボーナストラックとして追加されています。つまり、『THE DEVIL YOU KNOW』日本盤を購入すれば、HEAVEN & HELLとしてレコーディングしたオリジナル曲はすべて手に入ることになるので、これから購入する際には迷わず日本盤をゲットしておきましょう。

 


▼HEAVEN & HELL『THE DEVIL YOU KNOW』
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2020年4月 3日 (金)

TINTED WINDOWS『TINTED WINDOWS』(2009)

2009年4月に発売されたTINTED WINDOWS唯一のオリジナルアルバム。日本盤は1ヶ月遅れでリリースされています。

TINTED WINDOWSはテイラー・ハンソン(Vo/HANSON)、ジェイムズ・イハ(G/THE SMASHIN PUMPKINS、ex. A PERFECT CIRCLE)、アダム・シュレシンジャー(B/FOUNTAINS OF WAYNE、IVY)、バン・E・カルロス(Dr/ex. CHEAP TRICK)という名うてのプレイヤー/ミュージシャンたちによって結成されたスーパーグループ。テイラーとアダムは90年代半ばから親交があり、またイハとアダムも各バンドのツアーなどで顔を合わせる機会が多く、2000年代に入ってからはイハがIVYのレコーディングに参加したり、共同でレーベルやスタジオを設立していました。そんな3人が意気投合し、それぞれが影響を受けた70〜80年代のパワーポップやニューウェイヴをモダンな形で表現するバンドとして結成されたのがこのTINTED WINDOWSでした。

彼らは大切なルーツのひとつであるレジェンド・CHEAP TRICKからバン・Eを迎え、アダム&イハのプロデュースで完成したのが本作。ボーナストラックを除く全11曲中、「Back With You」をイハ、「Nothing To Me」をテイラー、「Take Me Back」をテイラー&アダムが手がけ、残りの8曲すべてをアダムが単独で書き下ろしています。

HANSONが持つ突き抜けるようなポップネス、FOUNTAINS OF WAYNEのベースにあるオルタナティヴロック経由のパワーポップ感、そしてバン・Eを除く3人が多大な影響を受けたであろうCHEAP TRICKの香り。本作はそのすべてが凝縮された、終始ストレートに突き進むキャッチーなギターロックを堪能できる1枚と言えるでしょう。

FOWが持つカントリーテイストやCHEAP TRICKに備わっていたサイケデリック感は残念ながらここには含まれておらず(いわゆるハードロック的側面もだいぶ弱いかと)、どちらかというと「テイラー・ハンソンというフロントマンを、才能ある作曲家アダムが調理してみました」という印象が強い内容かもしれません。聴く人によってはそこに物足りなさを感じるかもしれませんが、個人的にはそこを抜きにしてもよく出来たパワーポップ/ギターロックアルバムだと断言したいな。だって、何度聴いて飽きがこないですからね。爆音で、気持ちよく楽しめる1枚です。

本作を携えた来日公演(2010年1月)にも足を運びましたが、当日は本作からの楽曲にTHE KNACK「Let Me Out」、BUZZCOCKS「I Don't Mind」のカバーを披露したことが特に印象に残っています。本作に参加したメンバーの各メインバンド、そしてカバーでピックアップしたバンド。ここにTINTED WINDOWSの本質があるのではないでしょうか。

テイラーは近年、TINTED WINDOWSは決して解散したわけではないと名言していましたが、結局2作目が制作されることなくアダムは新型コロナウイルスが原因で4月1日(現地時間)、この世を去りました。アダムといえばFOWかIVY、もしくは彼が手がけた映画『すべてをあなたに』の劇中曲「That Thing You Do!」が有名でしょうけど、僕的にはこのスーパーバンドも忘れたくないな……。

 


▼TINTED WINDOWS『TINTED WINDOWS』
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2019年11月22日 (金)

MOTLEY CRUE『GREATEST HITS』(1998 / 2009)

MOTLEY CRUE、約4年ぶりにライブ活動再開。オフィシャルにて正式に、過去のツアー活動停止に関する契約書を“爆破にて破棄”したことがアナウンスされています(笑)。噂によると、2020年にDEF LEPPARDPOISONとともに北米ツアーを行うんだとか。

はい、予想通りの展開ですね(笑)。HR/HM系とプロレスの“辞めた/解散した/引退した”を真に受けてはいけません。特にこのオッさんたちの場合は、余計にね。

そもそも、2019年の流れ(自伝映画『ザ・ダート:モトリー・クルー自伝』公開と、それに伴う新曲4曲入りサウンドトラックアルバム『THE DIRT SOUNDTRACK』リリース、1989年の大ヒット作『DR. FEELGOOD』のリリース30周年エディション発売など)を考えれば、いずれライブ活動も再開させるだろうことは予想の範疇内。そもそも、映画と新曲を制作している時点で、ライブのスケジュールも調整していただろうしね。わかります。

たぶんこの映画経由で初めてMOTLEY CRUEに触れたというビギナーも少なくないと思うんです。そんな人たちが今、ストリーミングサービス経由でまず最初にどのアルバムから手を出せばいいのか。もちろん、映画のサウンドトラックから入るのが筋でしょう。そこから、1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年)から順々に聴くのか、あるいは最大のヒット作『DR. FEELGOOD』から入るのか、聴き方はそれぞれだと思います。

ただ、このバンドの場合、アルバムごとにスタイルを変えていますし、90年代に入ってからはその方向性がさらに激化していると思うのです。あれです、デヴィッド・ボウイQUEENでまず最初に聴くべきオリジナルアルバムで迷うのと一緒。だったら、最初にベストアルバムから入っていこう……そう思われる方も少なくないと思います。

MOTLEY CRUEは現在までに、ベストアルバムを3タイトル“正式”リリースしています。“正式”と付けたのは、バンド側が意図して発表したという意味で、レーベル側がバンドの意図せぬところで発表したタイトルも複数あるので、ここではそれらは省くことにします。

その3タイトルというのが、1988年リリースの初のグレイテストヒッツ・アルバム『GREATEST HITS』と、“オリジナル4”の再々結成を記念した2枚組ベストアルバム『RED, WHITE & CRUE』(2005年)、そして2009年に発表された『GREATEST HITS』。このうち現在ストリーミングサービスで試聴できるのは2009年版の『GREATEST HITS』となっています。

『RED, WHITE & CRUE』に関しては過去に本サイトで取り上げているので、今回は『GREATEST HITS』と題した“内容の異なる”2つのグレイテストヒッツ・アルバムについて紹介したいと思います。

 

 

①1998年バージョン

モトリーはそれ以前、結成10周年を記念したコンピレーションアルバム『DECADE OF DECADENCE '81-'91』(1991年)を発表していますが、これは純粋なベストアルバムではないので、Elektra Recordsを離脱した1998年の時点で廃盤扱いになっています。それに代わるように同年秋、新たに設立された自主レーベルMötley Recordsからの第1弾アイテムとしてリリースされたのがこのベストアルバム。ヴィンス・ニール(Vo)在籍時(『TOO FAST FOR LOVE』から『DR. FEELGOOD』までの5作と、『DECADE OF DECADENCE '81-'91』収録の新録曲、1997年の最新作『GENERATION SWINE』)の既発曲に、ボブ・ロックがプロデュースを手がけた新曲2曲「Bitter Pill」「Enslaved」を追加した全17曲入りとなっています。

ただ、グレイテストヒッツと謳いながらも「Live Wire」や「Too Young To Fall In Love」といった初期のMV制作楽曲は含まれておらず、代わりに当時からライブで再び演奏するようになった「Too Fast For Love」、インダストリアル調にリテイクした「Shout At The Devil '97」、『GENERATION SWINE』収録曲「Glitter」のリミックスバージョンなどを聴くことができます。

正直、当時はこの選曲に「いかにもアメリカ人が作った感覚」と思った記憶があります。それは新曲2曲から始まり、その後は年代などめちゃくちゃで、構成とか考えてるのかな?と感性を疑いたくなるような曲順にも表れているんじゃないかな。まあ、慣れるとこれはこれで嫌いじゃないんだけどね。

肝心の新曲2曲は、直前に『GENERATION SWINE』みたいにインダストリアル風アレンジなしの、どストレートなハードロック。ボブ・ロックを交えて制作したということは『DR. FEELGOOD』よ再び、という気持ちがあったのかもしれないけど、『GENERATION SWINE』を通過した当時のモトリーにはすでに戻れない過去となっていたようで。若干ダークさを残しつつも適度な爽快感を表現した「Bitter Pill」も、いかにも彼ららしいグルーヴィーなミドルチューン「Enslaved」も決して悪くはないけど、特別素晴らしいとも言い難い“アルバムの中の1曲”というつなぎ曲の印象。今思えば、このスタイルが10年後の『SAINTS OF LOS ANGELES』(2008年)につながっていたのですね(この際『NEW TATTOO』のことは忘れよう)。

 


▼MOTLEY CRUE『GREATEST HITS』
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