2017/08/19

MANIC STREET PREACHERS『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』(2010)

MANIC STREET PREACHERSが2009年5月に発表した9thアルバム『JOURNAL FOR PLAGUE LOVERS』はスティーヴ・アルビニをエンジニアに迎え、今でも“4人目のメンバー”であるリッチー・ジェイムズが残した詩を用いて制作した、15年ぶりの「4人で制作した」新作でした。同作はコマーシャル的成功を一切無視しつつも、この15年間に彼らが血肉として得た知識・技術も取り入れられており、シングルカット一切なしでも全英3位という好成績を残しました。

それから1年4ヶ月で届けられたのが、今回紹介する通算10枚目のスタジオアルバム『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』です。本作は前作にも携わった、MANICSではおなじみのデイヴ・エリンガとバンドがプロデュース。リリース時には「マスコミへの最後の一撃」というメッセージが印象的でしたが、その内容は前々作『SEND AWAY THE TIGERS』(2007年)や大ヒット作『EVERYTHING MUST GO』(1996年)の延長線上にあるサウンド、楽曲目白押しで、決して革新的なものではありませんでした。

10年前に『SEND AWAY THE TIGERS』を聴いた僕は、当時のレビューで「素晴らしいロックアルバムだけど、過渡期を感じさせる」と書きました。悪くないんだけど、良すぎもしない。MANICSにしては普通のアルバムだったのです。

では、この『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』も同じ流れにあるだけに、そういう普通のアルバムなのかというと、実はそうじゃなかったりする。全部が全部、“突き抜けて”いるんです。確かに『SEND AWAY THE TIGERS』にもそういう曲はいくつかあったけど、決してすべてではなかった。が、『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』では1曲1曲の濃度が濃い。ポップな曲もロック度強めで表現されていたり、どこかモータウンを感じさせるカラーがあるのにそれをハードロック調で表現していたりと、どの曲からも過剰さが感じられるのです。

この過剰さって、実はQUEENに通ずるものがあるんじゃないか……実は最初の本作を聴いたときに思い浮かべたのが、まさしくQUEENでした。嫌われ者が国民的バンドにまで成長するという過程もQUEENそのものですしね。

『SEND AWAY THE TIGERS』では覚悟が足りなかった……とは言いませんが、続く『JOURNAL FOR PLAGUE LOVERS』で過去を清算したことで、ようやく過渡期を抜けることができたんでしょうね。と、僕が勝手に解釈している作品です。

そういえば、ニッキーは当時のインタビューで「『SEND AWAY THE TIGERS』が俺たちにとっての(AEROSMITHの)『PERMANENT VACATION』なら、次のアルバム(『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』)は俺たちの『PUMP』になる」というようなことを言ってましたが、完成したアルバムを聞くとあながちそれも間違っていなかったようですね。そういう意味では『SEND AWAY THE TIGERS』は当時のMANICSにとって必要な踏み台だったんでしょうね。

とにかく捨て曲なし、どれもシングルカットできるようなポップでキャッチーで、それでいてどこかソリッドさもある良曲ばかり。そうそう、90年代半ば以降のMANICSってそんなバンドだったよね、という当たり前の事実を思い出させてくれる2000年代の名盤です。



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投稿: 2017 08 19 12:00 午前 [2010年の作品, Manic Street Preachers] | 固定リンク

2017/06/17

MR. BIG『WHAT IF...』(2010)

2009年にエリック・マーティン(Vo)、ポール・ギルバート(G)、ビリー・シーン(B)、パット・トーピー(Dr)のオリジナル編成で復活したMR. BIG。まずは日本を含むワールドツアーを行い、バンドの健在ぶりを存分にアピールしました。そのツアーでの手応えを制作活動に向け、日本で2010年末(海外では2011年初頭)に発表した通算7枚目のスタジオアルバムがこの『WHAT IF...』です。

オリジナル編成としては1996年の『HEY MAN』から14年ぶりの新作となった本作は、IRON MAIDENやAEROSMITHとの仕事で知られるケヴィン・シャーリーをプロデューサーに迎えて制作。作風的にはリッチー・コッツェン在籍時の2枚よりもむしろ、『HEY MAN』までのMR. BIGに近いかもしれません。オープニングがファストチューンではなく、ずっしりとしたリズムでじっくり聴かせる「Undertow」というところは『HEY MAN』やリッチー時代にも通ずるものがありますが、続く「American Beauty」は初期ファンには嬉しいファストチューン。ギター&ベースのユニゾンプレイもふんだんに取り入れられており、「なぜこの曲を1曲目にしなかった!?」と憤るファンも多いのではないでしょうか。

が、しかし。この曲を2曲目に配置することで、「Undertow」も「American Beauty」も映えると思うんですよ、実際のところ。そこから若干ダークなバラード「Stranger In My Life」(終盤のポールのギターソロが最高)、パーカッシヴなドラムパターンがクールな「Nobody Left To Blame」、再びアッパーな「Still Ain't Enough For Me」と続いていく前半の構成も、より新鮮に聴こえるんじゃないでしょうか。実際、僕はそうでした。

エリックの高音が出にくくなったことから、再結成後は半音下げチューニングでライブもレコーディングも実施していることから、必要以上にダークさが前に出てしまいがちですが、それが本作の作風にはぴったり合っていると思う。

それと『HEY MAN』以降減少傾向にあった、曲中の“オカズ”が一気に増えていること。ちょっとしたギター&ベースのユニゾンや、いきなり飛び込んでくるギターやベースの速弾きフレーズ。この“オカズ”という名の無駄があってこそ、MR. BIGなんだよなぁ〜と、このアルバムを聴いたときにふと考えたことを、今思い出しました。

大ヒット作『LEAN INTO IT』(1991年)というよりは、バンドのルーツである1stアルバム『MR. BIG』(1989年)に『HEY MAN』の手法でもう一度チャレンジした。そんな印象を受けるのが、再結成1作目のこのアルバム。佳曲は多いけど、突出した名曲はない。だけど、全体で勝負する。結果、アルバムを聴き終えたときに「ああ、MR. BIGの新作だった」と納得させられる。もう今さら“ドリルソング”や「To Be With You」の第二弾なんて望んでないし、今はこの体制で再び長く続けてくれることを祈るばかり。そう、リリース当時はそう思っていたんです……。



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投稿: 2017 06 17 12:00 午前 [2010年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/05/04

LINKIN PARK『A THOUSAND SUNS』(2010)

『MINUTES TO MIDNIGHT』(2007年)発表後、世界7都市で同時開催されたチャリティイベント「LIVE EARTH」にて、東京公演に出演したLINKIN PARK。その後も同年秋の来日ツアー、2009年夏の「SUMMER SONIC 09」ヘッドライナーなど定期的に日本公演を行い、改めてトップバンドとしての存在感を見せつけました。

また、その間にも定期的に新曲/企画アルバムを発表していきます。2008年春にはラッパーのバスタ・ライムスとのコラボ曲「We Made It」、同年秋にはライブアルバム『ROAD TO REVOLUTION: LIVE AT MILTON KEYNES』をリリース。2009年春には映画『トランスフォーマー:リベンジ』の主題歌として新曲「New Divide」を書き下ろし、ヒットさせます。2010年初頭にはハイチ地震支援のチャリティアルバムに新曲「Not Alone」を、同年4月にはゲームアプリ「エイト・ビット・リベリオン!」に新曲「Blackbirds」をそれぞれ提供し、ニューアルバムが発表間近であることを感じさせました。

そして2010年9月、ついに4thアルバム『A THOUSAND SUNS』が発売。プロデュースは前作から引き続きリック・ルービンとメンバーのマイク・シノダが担当。シンプルなバンドサウンドを前面に打ち出した前作『MINUTES TO MIDNIGHT』から一変し、本作ではPro Toolsを大々的に使用したエレクトロ色の強い1枚に仕上げられています。また、本作は核戦争を題材にしたコンセプトアルバムでもあり、歌詞も政治的なメッセージの比率が高くなっています。それにより、チェスター・ベニントン&マイク・シノダのボーカルワークも前作以上に攻撃的で、曲によっては“4 Letter Word”の使用、ラップボーカルやスクリームが増えています。

そして、ビートも打ち込みを多用したほか、ラウドなギターが登場する場面が減退。バンドスタイルで各楽器が鳴らされるのではなく、各プレイがひとつの素材として存在している。それらをPro Toolsを通じて再構築していることから、バンド色が過去4作中もっとも希薄かもしれません。そういう点においては前作『MINUTES TO MIDNIGHT』とは異なる意味で、ラウドロックからの脱却が図られています。

『HYBRID THEORY』(2000年)から10年。もはやLINKIN PARKはデビュー時とは別のバンドになってしまった……と嘆くファンも少なくなかったと思いますが、ちゃんと聴けば『A THOUSAND SUNS』には『HYBRID THEORY』での彼らを見つけることができますし、『HYBRID THEORY』にもこの『A THOUSAND SUNS』へとつながる布石がちゃんと散りばめられている。つまり、彼らは決していきなり変化を遂げたのではなく、デビュー時から持っていたさまざまな可能性のひとつをこの4枚目のアルバムで試しただけ。そう受け取ることはできないでしょうか?

他のインダストリアルロックバンドやエレクトロロックバンドと比べても聴きやすさがしっかり保たれているのは、ちゃんと『HYBRID THEORY』から地続きなんだという証明だと、個人的には解釈しています。そういった意味でも、LINKIN PARKの全作品中もっとも好きな1枚です。



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投稿: 2017 05 04 12:00 午前 [2010年の作品, Linkin Park] | 固定リンク

2017/04/12

MICHAEL MONROE『ANOTHER NIGHT IN THE SUN: LIVE IN HELSINKI』(2010)

2001年から始まった“再生”HANOI ROCKSが2009年に活動終了し、再びソロアーティストとして音楽活動を続けると思われていたフロントマンのマイケル・モンロー。しかし彼はあくまでバンドにこだわり、“MICHAEL MONROE”というバンドを組むことを決意するのです。あれですね、初期のアリス・クーパーがALICE COOPERという名前のバンドとして活動していたのと一緒で。MARILYN MANSONもある意味一緒だし。

2010年1月、マイケルのもとに集まったのは“再生”HANOI ROCKSには未参加だった旧友のサミ・ヤッファ(B)、THE WiLDHEARTSのシンガーとしてもお馴染みのジンジャー(G)、DANZIGへの在籍経験を持つトッド・ユース(G)、そしてDEMOLITION 23.のメンバーだったジミー・クラーク(Dr)という布陣。しかしリハーサル段階でジミーが脱退し、代わりにカール・ロックフィスト(Dr)が加入。続いて、そのカールを推薦したトッドもバンドを離れ、ある者には再結成したNEW YORK DOLLSのギタリストとして、またある者には菅野よう子とのコラボレーターとして知られるスティーヴ・コンテ(G)が加わり、第1期MICHAEL MONROEの布陣が完成します。

この第1期メンバーで制作したのが、今回紹介するライブアルバム『ANOTHER NIGHT IN THE SUN: LIVE IN HELSINKI』。本作は2010年6月7日にフィンランド・ヘルシンキのクラブでライブレコーディングされたもので、内容はHANOI ROCKSからソロ、DEMOLITION 23.とマイケルのキャリアを総括するオリジナルナンバーのほか、ジョニー・サンダースやTHE DAMNED、THE STOOGES、DEAD BOYSなどマイケルのルーツとして重要なバンドのカバー曲、そして新バンドMICHAEL MONROEとして制作中の新曲2曲を含む、“過去・現在・未来”をつなぐ豪華なセットリストとなっています。

個人的にはHANOI ROCKSと同じくらいTHE WiLDHEARTSのファンでもあるので、あのジンジャーがHANOI ROCKSの名曲たちをプレイするというだけで生唾モノ。楽曲は新曲含め、どれも“いかにもマイケル”といったものばかりなので、悪いわけがない。演奏も名うてのプレイヤーが揃っているので、タイトでカッコいい。“再生”HANOI ROCKS終了から間髪入れずに動いたことも功を奏し、マイケルの状態もベストに近いものと言えます。

まぁ本作は、翌2011年春にリリースされる1stスタジオアルバムへの前哨戦として録音されたもので、ここ日本では2010年8月の『SUMMER SONIC 10』に出演したことから、興奮冷めやらぬうちに出しておこうということで同年9月に先行リリースされたのでした(海外では10月発売)。そこから半年足らずで真の1stアルバム『SENSORY OVERDRIVE』が届けられるわけで、ファンの熱量を保つという意味でもこのライブアルバムは重要であり、“再生”HANOI ROCKSを終えて改めてマイケル・モンローというシンガーのキャリアを振り返るという意味でも非常に意味のある作品なのです。

それと「You're Next」と「Motorheaded For A Fall」と題された、『SENSORY OVERDRIVE』の片鱗を感じさせる新曲2曲の存在も重要です。「You're Next」はDEMOLITION 23.をよりタイトにさせたスタイルのロックンロールで、「Motorheaded For A Fall」はその名のとおりどこかMOTORHEADを彷彿とさせる疾走ナンバー。マイケルがMICHAEL MONROEで何をやろうとしてるのか、この2曲からも存分に伝わるはずです。ちなみに前者は『SENSORY OVERDRIVE』海外盤のボーナストラックとして、後者は「Debauchery As A Fine Art」と改名され、さらにかのレミー(MOTORHEAD)をフィーチャーした形で『SENSORY OVERDRIVE』に正式収録されています。



▼MICHAEL MONROE『ANOTHER NIGHT IN THE SUN: LIVE IN HELSINKI』
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投稿: 2017 04 12 12:00 午前 [2010年の作品, Demolition 23., Ginger Wildheart, Hanoi Rocks, Michael Monroe] | 固定リンク

2017/02/22

OZZY OSBOURNE『SCREAM』(2010)

2017年2月現在、オジー・オズボーンの最新オリジナルアルバムが本作『SCREAM』。2010年6月にリリースされ、全米4位を記録しました。前作『BLACK RAIN』(2007年)ではザック・ワイルドがギターおよびソングライティングで参加していましたが、本作からFIREWINDのガスG.が正式加入。ソングライティング面での貢献度はゼロですが、レコーディングではザックとはひと味違ったヘヴィ&ワイルドさをアピールしています。

プロデューサーは前作『BLACK RAIN』も手掛けたケヴィン・チャーコ。彼はPAPA ROACHやROB ZOMBIE、FIVE FINGER DEATH PUNCH、IN THIS MOMENT、DISTURBEDなどのプロデュースやソングライティングで知られる人で、そのラインナップからもわかるようにとてもモダンな作風を信条とする方です。事実、オジーの前作『BLACK RAIN』はそのひとつ前のオリジナルバム『DOWN TO EARTH』(2001年)とも異なる、モダンなヘヴィロックが軸になっていました。どこかBLACK SABBATHを思わせるような楽曲が“まんまサバス”にならなかったのは、彼の手腕によるところが大きかったと思います。

そのケヴィンは『BLACK RAIN』同様、今作『SCREAM』でもメインソングライターとして制作に参加。ほぼすべての楽曲をオジーとのコンビで書き上げ、残りの数曲はオジー&ケヴィンとアダム・ウェイクマン(YESのリック・ウェイクマンの息子)のトリオで制作しています。ザックのカラーがなくなったことで、モダンな中にもそこはかとなく感じられたアーシーさは今作では減退。「Life Won't Wait」には若干ザック在籍時の匂いが残っている気がしますが、ザックのアーシーサよりもオルタナ感のほうが優っているかなと。

「Let Me Hear You Scream」みたいにドライヴ感の強い楽曲もあるにはあるけど、アルバムの軸になるのはミドルテンポで重苦しいサウンドを持つナンバー。オープニングの「Let It Die」はまさにその象徴といえる1曲だし、不穏なイントロとギター&ドラムのユニゾンリフが気持ちいい「Diggin' Me Down」などは“2000年代のオジー”だからこそできる楽曲かなと。かたやBLACK SABBATHでは王道感の強いHR/HMに挑み、かたやソロでは同時代性を大切にしたヘヴィメタルにチャレンジする。これが(リリース当時)60歳を超えたジジイのやることかよと。ただただ脱帽です。

そして、こういうモダンなサウンド&楽曲だからこそ、ガスG.のギターワークが活きるというのも納得。ザックが弾いていたら、もっといなたくなっていたんでしょうね(まぁそもそもザックが弾く時点でソングライティングにも携わるだろうから、こんな作風にはならないでしょうけど)。このアルバムから早7年。BLACK SABBATHの活動終了を経て、オジーはスティーヴ・スティーヴンスなどとソロアルバムの準備をしていると聞きます。それがソングライティングのみなのか、はたまたレコーディングにも参加するのか。そしてガスG.の処遇はいかに。なんにせよ、早く“2017年のオジー・オズボーン”が聴きたいし、生で観たいものです。



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投稿: 2017 02 22 12:00 午前 [2010年の作品, Ozzy Osbourne] | 固定リンク

2017/01/23

RATT『INFESTATION』(2010)

バンドにとってボーカルは“顔”みたいなもの。その声が変われば、バンドの顔も変わる。つまり、リードボーカルさえずっと変わらなければ、多少音楽性が変化してもかろうじてそのバンドだと認識してもらえるし、音楽性が一環していてもボーカルがころころ変わればなんとなく違和感を覚えるのです。もちろん、RAINBOWのようにボーカルが変わることで、その音楽性を変化させていく手法を取ったバンドもいるわけですが、ここではギタリスト中心ではなく、あえてボーカルを軸にしたパーマネントなバンドという視点で語っていきたいと思います。

80年代に一世を風靡したRATTは、90年代に入ってすぐに解散。しかし90年代後半にロビン・クロスビー(G)を除く編成で再結成します。のちにロビンが亡くなり、全盛期のラインナップでの復活は叶わぬ夢となりますが、彼らの場合ボーカルのスティーヴン・パーシーとリードギターのウォーレン・デ・マルティーニさえ在籍していればRATTと名乗ってもなんら問題ないと思うのです。だから2000年代に入り、スティーヴンが脱退して元LOVE/HATEのジジー・パールをボーカルに迎えたと知ったときは「さすがにそれは……」と思ったものです。

ところが、2000年代後半に入りスティーヴンがバンドに復帰。彼とウォーレン、ボビー・ブロッツァー(Dr)の80年代ラインナップに元QUIET RIOTのカルロス・カヴァーゾ(G)、元VINCE NEIL BANDのロビー・クレイン(B)という布陣で制作されたのが、2010年に発表された11年ぶりのオリジナルアルバム(通算7枚目)『INFESTATION』です

アルバムからのリードトラック「Best Of Me」が初公開されたとき、そのあまりにも「RATTな音」に驚愕し、「俺たちのRATTが帰ってきた!」と歓喜したのを昨日のことのように覚えています。どれが「RATTの音」なのかと問われると、とても感覚的なものなのですが……ウォーレンのギターリフ、テンポ感、スティーヴンの声が合わされば、それは間違いなく「RATTの音」として成立するんじゃないかと思うのです。それはアルバムオープニングの「Eat Me Alive」にも言えることで、この2曲のみで間違いなく「ああ、あのRATTが帰ってきた」と断言できてしまうのだから不思議なものです。

アルバムは正直、80年代後半の数作よりもRATTらしい作風だったと思います。先に挙げた2曲は歴代のヒットシングルに並ぶ代表曲になりうる完成度ですし、それ以外の曲も聴けば「RATTらしい」と納得できるものばかり。「Last Call」のツインリードも、「Lost Weekend」のリフ〜リードの流れも、すべてが「RATTらしい」。ただ、100%RATTかと問われると……自信がないのも事実。何か物足りなさも感じる。それが何なのか、リリース当時は気づきませんでした。

ここ最近、ボビーが知らないメンバーをかき集めてRATT名義でツアーをしたことに対して、ウォーレンが抗議し、スティーヴン、ウォーレン、カルロス、そして全盛期メンバーのフォアン・クルーシェ(B)の4人がRATTの名曲たちを演奏するツアーを行うことを発表しました。このメンツを見て気づきました……「そうか、フォアンのコーラスだ!」と。アルバムに足りなかった要素はこれだったんです。確かに『INFESTATION』にもそれらしいコーラスが入っているんですが、微妙に違うんですよね。

ボビーの決してうまくはないドラム(ときどきモタるしね)、フォアンの個性的なコーラス、ウォーレンの独特なギターリフ、そしてスティーヴンの唯一無二な歌声。ここにQUIET RIOTで一時代を築いたカルロスのギターワーク&ソングライティングが加わることで、RATTは全盛期にも勝るような作品を作ることができるはずなのに……世の中、うまくいかないものですね。再びRATTがひとつにまとまることを願いつつ、今日はこの7年前のアルバムを聴きたいと思います。



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投稿: 2017 01 23 12:00 午前 [2010年の作品, Ratt] | 固定リンク