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カテゴリー「2012年の作品」の27件の記事

2022年3月21日 (月)

FEAR FACTORY『THE INDUSTRIALIST』(2012)

2012年6月5日にリリースされたFEAR FACTORYの8thアルバム。日本盤は同年5月30日に先行発売。

ディーノ・カザレス(G)が復帰して制作された『MECHANIZE』(2010年)から2年4ヶ月ぶりの新作。前作はバートン・C.ベル(Vo)、ディーノ、バイロン・ストラウド(B)、ジーン・ホグラン(Dr)という布陣で制作されたものの、バイロンとジーンが相次いで脱退。新メンバーとしてマット・デヴリーズ(B)、マイク・ヘラー(Dr)が加入するものの、次作のレコーディング自体はバートンとディーノの2人体制で進められました。

もともと正確無比でマシーナリーなリズムセクションが魅力のFEAR FACTORYですが、本作ではそのドラムトラックをすべてプログラミング(打ち込み)で対応。よって、機械的な冷徹さがより極まる結果となり、前作でのスペーシーかつエクストリームな作風がより強まった内容に仕上がりました。

オープニングトラック「The Industrialist」の長く仰々しいイントロダクションにジラされつつ、いざリズムセクションが入ってくるとそのひんやりとしたマシーンビートとザクザクしたギターリフに心をエグられ、バートンのパワフルなボーカルに感情を奪われる。これぞFEAR FACTORYと言える王道の1曲ではないでしょうか。

以降は緩急を付けつつ、いかにも彼ららしい楽曲が続きます。インパクトという点においては1曲目以降はどんどん弱まっていく気もしますが、「God Eater」のような“NINE INCH NAILS meets インダストリアルメタル”みたいなフックの効いた曲も含まれており、衝撃度は前作よりも若干劣るかもしれませんが、視野を広くしてみると“ポストパンクを通過したインダストリアル/オルタナティヴメタル”の良質な作品と受け取ることもできるのではないでしょうか。

機械的なビートならではの軽さと、低音よりも中音域を強調したギターサウンドが織りなす、王道ヘヴィメタルとは一線を画する質感は「これぞオルタナティヴメタル」と呼べるもの。実はメタルメタルした音が苦手なリスナーにも受け入れられる可能性を秘めた1枚ではないでしょうか。個人的にはFEAR FACTORY究極のアルバムとして挙げたい傑作です。

 


▼FEAR FACTORY『THE INDUSTRIALIST』
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2022年2月 9日 (水)

ACCEPT『STALINGRAD』(2012)

2012年4月6日にリリースされたACCEPTの13thアルバム。日本盤は同年5月2日発売。

前作『BLOOD OF THE NATIONS』(2010年)から1年8ヶ月ぶり、アメリカン人シンガーのマーク・トーニロ(ex. T.T. QUICK)を迎えた新編成での第2弾アルバム。マーク、ウルフ・ホフマン(G)、ハーマン・フランク(G)、ピーター・バルテス(B)、ステファン・シュヴァルツマン(Dr)という前作と同じメンバー、プロデューサーもアンディ・スニープ(ARCH ENEMYJUDAS PRIESTMEGADETHTESTAMENTなど)と前作から引き続きと、ほぼ成功が約束されたような布陣で制作。本国ドイツで最高6位、アメリカでは名作『METAL HEART』(1985年。最高94位)以来27年ぶりとなるTOP100入り(81位)を果たしました。

前作の時点で80年代のACCEPTを踏襲しつつもマークらしさをふんだんに取り入れた作風でしたが、今作ではそのスタイルにより磨きがかかり、バンドとしても非常に脂が乗った状態に。かつメロディアスさも前作以上の仕上がりで、メロディアスなパワーメタルとしては最高峰と言える完成度ではないでしょうか。アルバム冒頭を飾るドラマチックなファストチューン「Hung, Drawn An Quartered」からミドルヘヴィ「Stalingrad」への流れも完璧で、以降も緩急に富んだ構成で聴き手を惹きつけ続けます。

個人的ピークは、アルバムのおへそ部分(M-5)に配置されたメロウなミドルチューン「Shadow Soldiers」。この曲で聴くことができるウルフ・ホフマン(G)の流麗なギターソロは圧巻の一言で、これを聴くためだけに本作を手に取っても間違いじゃないくらい。もちろん、そのほかの楽曲も出色の仕上がりで、同曲の余韻を引きずりながら始まる「Revolution」や、これまでありそうでなかったタイプの「Against The World」の「Twiste Of Fate」、ボーナストラック(DVD付きデラックス盤と配信のみ)にしておくには勿体ない仕上がりの「Never Forget」、約7分半におよぶグルーヴィーなミドルナンバー「The Galley」と聴きどころ満載です。

前作には「Kill The Pain」のようなスローバラードが収録されていましたが、今回はバラードタイプの楽曲は皆無。しかし、そこに対して不満を一切感じさせないほど、本作の内容は非常に充実しているのです。アップチューンひとつとっても、どれもタイプが異なりますし、ミディアムテンポの楽曲もBPMやリズム、メロディラインやコーラスワークでひと工夫もふた工夫も施されており、どれひとつとして同じような楽曲が存在しない。マークの歌唱スタイルも基本的には前任のウド・ダークシュナイダー(現U.D.O.)を倣ったもので、ある意味では単調な歌唱法なのですが、そんな歌い方でもまったく飽きさせない内容になっているのだから、本当に楽曲が充実しているという表れなのでしょう。

この充実作を携えたワールドツアーを経て、バンドは次作『BLIND RAGE』(2014年)でついに初の本国チャートで1位を獲得。アメリカでも過去最高の35位を記録したほか、UKチャートでも『RUSSIAN ROULETTE』(1986年)以来となるTOP100入り(85位)という快挙を成し遂げるのでした。

 


▼ACCEPT『STALINGRAD』
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2022年1月28日 (金)

LAMB OF GOD『RESOLUTION』(2012)

2012年1月24日にリリースされた、LAMB OF GODの6thアルバム(前身バンドBURN THE PRIEST時代の作品を含めると7枚目のオリジナルアルバム)。日本盤は同年1月18日に先行発売。

Roadrunner Records移籍第1弾アルバムとなった『WRATH』(2009年)は、全米2位という過去最高記録を残すことに。バンドとしても最高潮といえる時期を迎えていたものの、2010年5日にチェコ共和国プラハで行ったライブで当時19歳の少年が公演後に死亡。この死因が、少年がステージに上がってきたところをランディ・ブライ(Vo)に押し返され、落下した際に負った傷が元であるとされ、今作のツアーで再びチェコを訪れた際の2012年6月にランディが傷害致死罪で逮捕され、2ヶ月ほど勾留されるというトラブルもありました(その後、裁判により2013年3月に無罪が確定)。

そんな不穏な時期にドロップされた本作ですが、『WRATH』からの勢いを引き継ぐヘヴィかつグルーヴィーなモダンUSメタルをたっぷり堪能することができます。ドゥーミーな「Straight For The Sun」からじわじわと盛り上がっていき、続く「Desolation」で一気に爆発するという流れも最高ですし、「Guilty」などでみせるグルーヴ感はPANTERAから引き継いだ伝統芸を感じるし、適度なアップテンポさに加え気持ち良いリフワークとメロウなギターソロ、クリス・アドラー(Dr)の足技が圧巻なドラミングが織りなす絶妙のハーモニーが問答無用のカッコよさを表現する「The Undertow」など、アルバム序盤から聴きどころ満載。

中盤はマーク・モートン(G)&ウィリー・アドラー(G)のアコギ&フィードバックギターが作り出す不穏さがたまらないインスト「Barbarosa」から、ブルータルなリフワークで問答無用の世界観を築き上げる「Invictus」へとつないでいく構成も文句なし。聴き手を思考停止させるファストナンバー「Cheated」や、適度なメロウさが新鮮に響くグルーヴチューン「Insurrection」、正統派ヘヴィメタル的側面を垣間見せるムーディー&ドラマチックな「King Me」など、後半にかけても非常に良い流れを作っており、バラエティに富んだ楽曲群含めこのバンドにとっての集大成とも言える仕上がりではないでしょうか。

全14曲/56分という尺を妥当とするか、長すぎると受け取るかで本作の評価は大きく変わる気もします。集大成として受け取ると、これくらいのボリュームはギリギリ“アリ”のラインだけど、この手のスタイルは正直言えば50分前後がベストかなと思わなくもない。前作『WRATH』が44分、出世作となった前々作『SACRAMENT』(2006年)が46分だったことを考えると、少々やりすぎかな?という気もしてきます。その後の『VII: STURM UND DRANG』(2015年)、『LAMB OF GOD』(2020年)が50分以下とコンパクトなので、やはり後々「やりすぎた」と感じたのかもしれませんね。

集大成的内容にもかかわらず彼らにとってのベスト作とはちょっと断言できないところもある本作、ビギナーにはちょっとハードルが高い1枚かもしれません。だって、日本盤や配信されているデジタルバージョンはさらにボーナストラックが追加された60分超の長尺さですから(苦笑)。もちろん悪いアルバムではないですし、むしろ仕上がりは良好なので、60分前後あっても飽き足りないと感じられるダイハードなリスナーには打って付けかもしれませんよ。

 


▼LAMB OF GOD『RESOLUTION』
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2022年1月27日 (木)

GOJIRA『L'ENFANT SAUVAGE』(2012)

2012年6月26日にリリースされた、GOJIRAの5thアルバム。日本盤は『ランファン・ソヴァージュ〜野性の少年〜』の邦題で、同年6月20日に先行発売。

前作『THE WAY OF ALL FLESH』(2008年)から約3年半ぶりの新作。Roadrunner Records移籍第1弾作品であると同時に、全世界へと彼らを広めるきっかけの1枚に。ここ日本でも本作がデビュー作となりました。

本国フランスでは最高7位、アメリカでも34位という好成績を残した本作。プロデューサーにはメンバーのジョー・デュプランティエ(Vo, G)に加え、ジョシュ・ウィルバー(LAMB OF GODHATEBREEDTRIVIUMなど)を迎えて制作した意欲作は、リリースから10年経った今聴いてもまったく色褪せない、強烈なテクニカル&ブルータルメタルアルバムです。

オープニングを飾る「Explosia」やタイトルトラック「L'Enfant Sauvage」でのクセの強いピッキングハーモニクスやトレモロリフ、グルーヴィーだけどどこか変則的に感じられるリズムワーク、そしてジョーのパワフルな咆哮からは、プログメタルとテクニカルデスメタルを掛け合わせたような魅力が伝わり、この1曲だけでも魅力が十分に伝わるはず。かと思えば、「The Wild Healer」のように浮遊感の強い楽曲で心洗われたり、それに続く豪快な「Planned Obsolescence」で再び後頭部を殴られた気分に陥ったりと、問答無用の殺傷力を誇る1枚ではないでしょうか。個人的には「Liquid Fire」や「Mouth Of Kala」のような、どこかゴシックテイストを漂わせたヘヴィチューンがど真ん中で、ドスの効いたグロウルと淡々としたメロウなボーカルがミックスされた歌唱パートとの相性も抜群です。

序盤は圧迫感の強いヘヴィさが際立ちますが、後半からは「The Gift Of Guilt」や「Pain Is A Master」などメランコリックさが散りばめられた楽曲がその空気感を一変。特に「Born In Winter」に見られるテイストは、どことなくフランスのバンドらしさが伝わってきます。先のゴシックテイスト含め、僕自身はこのダークなメランコリックさが特に大好物なので、序盤のブルータルさとのバランス感含めて最高の1枚と言えるでしょう。

この後半のスタイルは続く傑作『MAGMA』(2016年)や最新作『FORTITUDE』(2021年)でさらに磨きがかけられ、結果彼らは唯一無二の存在へと成長していくことになります。そういった意味では、初期の彼らと現在の彼らとを結ぶ橋渡し的役割を果たした重要な作品と言えなくもないのかな。何にせよ、大きな転機を作った重要作なわけです。

ちなみに彼らは約3年後の2015年10月、(当時)国内最大級のメタルフェス『LOUD PARK 15』出演を通して初来日が実現。同タイミングにSLAYER東京単独公演のサポートアクトも務めました。僕もこの際に初めて彼らのライブを体験して、一発でノックアウト。ライブと前後してこのアルバムの輸入盤(2009年のフランスでのロックフェス出演時のライブ映像DVD付きスペシャルエディション)を購入したのでした。

Roadrunder移籍後の3作中、アグレッシヴさにおいては本作がマックス。まだGOJIRAに触れたことがない方はこの『L'ENFANT SAUVAGE』から入るのもよいけど、別に最新作から入ってもよし。要はどのアルバムも最高なので、どこから入っても何ら問題なくGOJIRAのことを理解できるはずです。

 


▼GOJIRA『L'ENFANT SAUVAGE』
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2022年1月24日 (月)

EUROPE『BAG OF BONES』(2012)

2012年4月18日にリリースされたEUROPEの9thアルバム。

本国スウェーデンで4thアルバム『OUT OF THIS WORLD』(1988年)以来21年ぶりのチャート1位を記録した『LAST LOOK AT EDEN』(2009年)に続く、2年半ぶりのオリジナルアルバム。再始動後4作目のアルバムとなりますが、今作はプロデューサーにケヴィン・シャーリー(IRON MAIDENDREAM THEATERAEROSMITHJOURNEYなど)を迎えて制作されあした。それもあってか、レコーディングにはジョー・ボナマッサ(G)が「Bag Of Bones」でスライドギター、アントン・フィグ(Dr)がパーカッション、ジェフ・ボヴァ(Key)がオーケストレーションでそれぞれゲスト参加しています。

基本的な路線は前作『LAST LOOK AT EDEN』の延長線上にあり、再結成後初のアルバム『START FROM THE DARK』(2004年)から脈々と続くシンプルなブルースロック路線(に適度なヨーロピアンテイスト)が貫かれています。要するに、メガヒット作『THE FINAL COUNTDOWN』(1986年)やその前後の作品……2ndアルバム『WINGS OF TOMORROW』(1984年)や『OUT OF THIS WORLD』などのメロディアスハードロックを期待する、少々肩透かしを喰らう可能性が高い1枚でもあるわけです。

しかし、『START FROM THE DARK』や続く7thアルバム『SECRET SOCIETY』(2006年)で多少なりとも迷いを見せていたスタイルは『LAST LOOK AT EDEN』で焦点が定まったことで、このアルバムではより純度の高い“第2期EUROPE”を楽しむことができます。実際、シンプルで地味ながらも味わい深い楽曲の数々は、巧みなアレンジ力で聴き手を飽きさせることなく、聴き返すたびに新たな発見があるクオリティの高さは特筆に値するものがあります。

オープニングを飾る「Riches To Rags」といい続く「Not Supposed To Sing The Blues」といい、聴き始めたときは「うわっ、地味!」と腰砕けそうになりますが、聴き進めていくうちにそのアレンジの多彩さには驚かされるものがある。特に「Riches To Rags」後半の展開は手に汗握るスリリングさがあり、再結成から10年前後経ったこともありバンドが円熟期に突入したことが伝わるのではないでしょうか。

かと思えば、タイトルトラック「Bag Of Bones」やイントロダクション「Requiem」から続くヘヴィバラード(という呼び方がふさわしい)「My Woman My Friend」でのディープな表現力は、80年代の彼らには感じられなかったものであり、(若干の衰えは致し方ないものの)その艶やかさはピークに達しつつあるジョーイ・テンペスト(Vo)のボーカルも聴き応え満点。しかし、ここで声を出しにして伝えておきたいのは、ジョン・ノーラム(G)の生き生きとしたギタープレイではないでしょう。

本作の直前にはブルースに傾倒したソロアルバム『PLAY YARD BLUES』(2010年)を発表していたこともあり、てっきり今作のソングライティング面で主導権を握っていたのかと思いきや、アルバムの大半はジョーイ主導で執筆されており、ジョンが関わったのは12曲(日本盤ボーナストラック含む)中2曲(「Demon Head」「Mercy You Mercy Me」)のみ。意外といえば意外ですが、ジョンは与えられた環境下でギタリストに徹することで、そのプレイヤーとしての才能を遺憾なく発揮したということなのでしょうか。なんにせよ、このバランス感が当時のEUROPEにとってちょうどよかったのかもしれませんね。

本作は本国スウェーデンで最高2位を記録。また、イギリスでは5thアルバム『PRISONERS IN PARADISE』(1991年)以来21年ぶりにTOP100入り(最高56位)という数字を残しています。リリース翌年(2013年)にはデビュー30周年という節目だったこともあり、同年6月開催の『Sweden Rock Festival 2013』ではマイケル・シェンカー(G)、スコット・ゴーハム(G/THIN LIZZY)をゲストに迎えた大掛かりなパフォーマンスを展開。10月には国内HR/HMフェス『LOUD PARK 13』への出演も実現しました。

 


▼EUROPE『BAG OF BONES』
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2022年1月23日 (日)

RUSH『CLOCKWORK ANGELS』(2012)

2012年6月12日にリリースされた、RUSHの19thアルバムにして最後のオリジナルアルバム。日本盤は同年6月13日発売。

16thアルバム『TEST FOR ECHO』(1996年)以降、ほぼ5年というスパンで創作活動を続けてきたRUSH。もちろんその間には大掛かりなライブツアーが存在し(当然のように日本は外されていましたが)、そういったツアーの映像作品&ライブアルバムを定期的に発表し続けていたので、意外と“空いた”という感覚は少ないのかもしれません。特に前作『SNAKES & ARROWS』(2007年)のあとには『SNAKES & ARROWS LIVE』(2008年)、『TIME MACHINE 2011: LIVE IN CLEVELAND』(2011年)と2枚のライブアルバムと『WORKING MEN』(2009年)と題したライブベストアルバム、そして1989年から2008年のスタジオ音源で構成されたコンピレーションアルバム『RETROSPECTIVE III: 1989-2008』(2009年)と、編集・企画盤が相次ぎましたからね。

結果的にはラストアルバムとなってしまった本作ですが、実はそれまで所属したAtlantic RecordsからRoadrunner Recordsへと移籍して最初(にして最後)のオリジナルアルバムでした。プロデューサーは前作『SNAKES & ARROWS』から引き続き、バンドとニック・ラスクリネクツ(MASTODONKORNCODE ORANGEDEFTONESなど)が担当。低音をブーストさせた、非常に現代的なサウンドメイキングで表現された“モダンなRUSH”を堪能することができます。

メタリックな質感は前々作『VAPOR TRAILS』(2002年)以降のテイストをそのまま引き継いだものですが、今作はプログメタル的な側面とTOOLにも通ずるひんやりとした幾何学的アレンジが随所から伝わる作風で、これが70年代から活動を続けるバンドの音か!?と驚かされるものがあります。この“攻め”の姿勢こそが彼らの醍醐味であり、その変化の方向は時に従来のファンにそっぽを向けるものかもしれません。しかし、それでも“守り”に入ることなく道の領域へと突き進む姿勢には感服させられるものがある。そういった意味では、このアルバムで示される音や方向性は賛否を生むものなのかもしれません。

ですが、自分のようなリスナーにとって作品ごとに進化を繰り返し、時代の変化を瞬時に察知する彼らの才能は特筆に値するものがあると思うし、だからこそ毎回驚かされることはあってもがっかりさせられることはない。このアルバムを初めて聴いたときも「うわっ、今の音じゃん!」とびっくりしながら、夢中になってリピートしたものです。

オープニングを飾る「Caravan」から伝わる緊張感にはゾクゾクさせられるし、「The Anarchist」にみられるエキゾチックさ(と同時にこのタイトルよ)、オープニングで若干リラックスさせつつアレックス・ライフソン(G)が極太ヘヴィリフを繰り出す「Carnies」、ゲディ・リー(Vo, B)&ニール・パート(Dr)による極上のリズムアンサンブルが冒頭からうねりをあげる「Seven Cities of Gold」、本作ではポップ寄りな「The Wreckers」や「Wish Them Well」、その疾走感にぐいぐい引っ張られる「Headlong Flight」など印象的な楽曲も多数。全12曲/約66分と、過去最長だった『VAPOR TRAILS』(約67分)に次ぐ長尺さですが、最後まで飽きずに楽しめる充実度の高さを誇る1枚ではないでしょうか。

本作を携えたツアーを経て、2015年にはデビュー40周年記念ツアー『R40』を開催。ニールの腱鞘炎悪化を理由の、これがバンドとしては最後のツアーとなりました。さらに、2018年にはニールが引退したため、バンドとしての活動を完全停止。そこから約2年後の2020年1月7日、脳腫瘍のためニールがこの世を去ってしまい、真の意味でのRUSH解散を迎えるのでした。

 


▼RUSH『CLOCKWORK ANGELS』
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2022年1月22日 (土)

MUSE『THE 2ND LAW』(2012)

2012年9月28日にリリースされたMUSEの6thアルバム。日本盤は『ザ・セカンド・ロウ〜熱力学第二法則』という邦題で同年10月3日発売。

3作連続全英1位のみならず、初の全米TOP3入り(最高3位)という好記録を残した前作『THE RESISTANCE』(2009年)から3年ぶりの新作。バンドの勢いはそのままに、今作も全英1位&全米2位と記録を更新し続け、アメリカでも100万枚以上を売り上げました。また、「Madness」(全英25位、全米45位)、「Supremacy」(全英58位)というヒットシングルも生まれています。さらに、本作収録の新曲「Survival」は2012年ロンドン五輪の公式ソングに採用。まさにノリにノったタイミングの1枚と言えるでしょう。

ただ、本作を最初に聴いたときの印象はそこまで良くなかったことはここに記しておきます。オープニングを飾る「Supremacy」でのクラシカルなシンフォニックメタル調アレンジ、1分に満たないイントロダクション「Prelude」から続く「Survival」へのクラシック調な作風などが妙に鼻につき、リード曲「Madness」の穏やかなエレクトロサウンドも、骨太ファンクロック「Panic Station」も最初は取って付けたようにしか感じられなかったのです。

ただ、本作の印象が大きく変化したのは2013年1月のさいたまスーパーアリーナ単独公演と、同年8月の『SUMMER SONIC 2013』でのヘッドライナー公演を観て以降。幸運にも僕はどちらも現地で観ることができたのですが、特に最初のたまアリ公演でのスケールの大きなアリーナライブと、本作で鳴らされる無駄にスケールの大きな音が見事にマッチしていることを実感したことで、先のクラシカルな楽曲群はもちろん、新たなアンセムにまで成長したダンサブルな「Follow Me」も、初期の彼らを彷彿とさせる「Animals」、ドリーミーなポップチューン「Explorers」、一時期のU2のダンサブルさと重なる「Big Freeze」、クリス・ウォルステンホルム(B, Vo)がリードボーカルを担当した「Save Me」「Liquid State」の2曲、そしてアルバムのハイライトとなる組曲「The 2nd Law: Unsustainable」「The 2nd Law: Isolated System」……そうだった、このバンドってもともとすべてが無駄に過剰だったじゃないかと気付かされたのです。前2作(4thアルバム『BLACK HOLES AND REVELATIONS』(2006年)と前作『THE RESISTANCE』)でのワールドワイドな成功で忘れかけていたけど、このすべてに全振りな大袈裟さこそMUSEの真髄じゃないか、と。

もしQUEENというバンドが2012年現在もフレディ・マーキュリー健在のまま続いていたら、ここまでとは言わないまでも、これに近い破茶滅茶で過剰すぎるミクスチャー感たっぷりのロックアルバムを作っていたはず。つまり、MUSEがこのアルバムで挑戦したことは古き良き時代のブリティッシュロックの伝統継承だったのです(それは言い過ぎか)。そこにEDMといった当時の流行を見事にミックスさせることで、伝統継承しつつも適度にモダナイズされ、2012年の耳で聴いても過剰すぎると思える1枚を完成させた。たったそれだけのことだったんですよね。

クラブミュージックに全振りもすればHR/HMにも全振りする。ダンスロックもあればオルタナティヴロックもあるし、クラシックやムード音楽、モダンポップもある……ちょっと早すぎる“プレイリスト的な”アルバムだったんですよね、これ。そう思って聴き返すと、すべてが腑に落ちるんじゃないでしょうか。実際、僕自身このアルバムはリリース当時より、そこから10年経った今のほうが理解できている気がするし、むしろ今の耳に非常にフィットするんです。

続く『DRONES』(2015年)ではとうとう全米1位まで獲得し、人気的には頂点に達したといっても過言ではないMUSEですが、音楽的な充実度における頂点こそ実はこの『THE 2ND LAW』という怪作だったのではないでしょうか。

 


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2021年11月24日 (水)

QUEEN『HUNGARIAN RHAPSODY: QUEEN LIVE IN BUADPEST』(2012)

2012年9月20日にリリースされたQUEENのライブ作品。日本盤は同年12月19日発売。

本作はもともとBlu-ray/DVDの映像作品で、同作品のライブ音源を収めた2枚組CDが初回限定エディションにのみ付属。その後、音源のみデジタルリリース/ストリーミングサービスでの配信が行われ、デラックス版パッケージを買い逃した方も手軽に楽しめる作品となりました。

収録されたのは1986年6月7日から8月9日にかけて実施された『Magic Tour』から、7月27日のハンガリー・ブダペスト公演。『Magic Tour』の音源は『LIVE MAGIC』(1986年/未配信)『LIVE AT WEMBLEY '86』(1992年)と複数発売されていますが、この作品が大きな意味を持つポイントはそこではなく、1986年当時はまだヨーロッパでは冷戦状態下にあり、中でも「鉄のカーテン」の中であるハンガリーでイギリスのバンドがライブを行うという事実が非常に画期的だったわけです。

『Magic Tour』は本数も26本と決して多くなく、セットリストは基本的に大きく変わりません。しかし、初めて訪れたブダペストで、QUEENはこの日ならではの楽曲も用意しました。それが「Love Of My Life」と「Is This The World We Created...?」の間に披露されたハンガリー民謡「春の風(Tavaszi Szél Vizet Áraszt)」。約6万人のキャパシティに対し約8万人も集まった聴衆による大合唱の理由も納得です。

そんなカバーのあとに、「(You're So Square) Baby I Don't Care」「Hello Mary Lou」「Tutti Frutti」といったアメリカンポップス/ロックのスタンダードを披露するというのは、非常に大きな意味を感じます。もともと今ツアーに組み込まれていたカバーではあるものの、この流れは冷戦時代の“壁”をぶち破ろうとするQUEENの気概を感じずにはいられません。

ちなみにこれらのロックンロールメドレーや「Another One Bites The Dust」など一部楽曲は、映像版には未収録。「Tie Your Mother Down」「I Want To Break Free」「Crazy Little Thing Called Love」も映像版はエディットされているのでご注意を。バンドの意志を汲み取るという点では、ぜひ音源での完全版を味わってもらいたいところです。

とはいえ、8万人も集まった圧巻の映像もぜひBlu-rayやDVDにて体験しておきたいところ。なのでここはひとつ、ボーナスCD付きのデラックス版を入手しておくことをオススメします。残念ながら国内デラックス版はDVDのみなので、Blu-rayで楽しみたい方はすでに廃盤状態の輸入盤でご購入を。

 


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2021年7月29日 (木)

SLIPKNOT『ANTENNAS TO HELL』(2012)

2012年7月23日(UK/USは24日)にリリースされたSLIPKNOT初のグレイテストヒッツアルバム。日本盤は同年7月25日発売。

2010年5月にポール・グレイ(B)が急逝するものの、バンドは初期メンバーのドニー・スティール(G)をサポートベーシストとして迎え、2011年夏の『Sonisphere Festival』からライブ活動を再開。2012年8月には主催イベント『Knotfest』を初開催し、その健在ぶりを証明することになります。

時系列的に考えると、このベストアルバムは『Knotfest』初開催にあわせて制作されたといっても過言ではありません。ポールを欠いたバンドが次に進む上でのインターバルを考えても、『ALL HOPE IS GONE』(2008年)に続くオリジナルアルバムをすぐに制作するよりは、ここでコンピ盤を出してひと区切りつけるというのは、バンドを長く続けていく上でも必要不可欠なトピックになるでしょうし。

また、これは結果論ですが、ジョーイ・ジョーディソンも2013年にバンドを脱退することを考えると、続くオリジナルアルバム『.5: THE GRAY CHAPTER』(2014年)の前に本作を出しておくことは必須だったのかなと。メンバーチェンジによる変化がどうしても生じてしまいますし、結果やっぱり出してよかったんでしょうね。

さて、内容に関してですが、特に目新しさはありません。シングルとして既発だった「My Plague」のリミックスバージョン(映画『バイオハザード』サントラ収録)や「Vermilion」のテリー・デイトによるリミックスがアルバム初収録になったほか、ライブ映像作品『DISASTERPIECES』収録の「The Heretic Anthem」「Purity」が音源化されたことくらいが大きなトピックで、ここでしか聴くことができない未発表曲などは皆無。つまり、オリジナルアルバムをすべて持っている人には無用な産物と言えるのかもしれません。

しかし、そんなコアリスナーにとってスルーできないのが本作のデラックスエディション。2CD+DVD仕様で発表され本作、CDのDISC 2には2009年の『Download Festival』でのヘッドライナー公演がほぼ完全収録されているのです。同ライブの映像は2010年発売の2枚組映像作品『(sic)nesses』に完全収録されているものの、完全音源化はこれが初めて。ポール&ジョーイを含む編成の記録としても、またSLIPKNOTデビューから10年の節目を飾るタイミングの集大成としても、このライブはファン必聴の内容。映像のみならず、音源として所持しておきたいアイテムのひとつです。

また、特典DVDは『THE COMPLETE MUSIC VIDEOS』と称して「Spit It Out」から「Snuff」までのMV(別バージョン含む)と、「People = Shit」「Psychosocial」などのライブ映像を総括。こちらもファンならば手に入れておきたい代物ではないでしょうか。

『IOWA』(2001年)や『ALL HOPE IS GONE』の10周年デラックスエディションにもリリース当時の貴重な音源で構成されたライブアルバムが付属していますが、それはそれ。『9.0: LIVE』(2005年)を聴いたあとに手にするべきライブ関連のアイテムとしては、実は本作のデラックスエディションではないかと筆者は断言しておきます。

最後に。ジョーイ・ジョーディソンのご冥福をお祈りいたします。

 


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2020年10月26日 (月)

PERIPHERY『PERIPHERY II』(2012)

2012年7月3日にリリースされたPERIPHERYの2ndアルバム。日本盤は同年9月19日に発売されました。

デビューアルバム『PERIPHERY』(2010年)、EP『ICARUS EP』(2011年)に続く本作は、ジェントと呼ばれるコアなジャンル(セグメント)をよりわかりやすい形でシーンに広める役割を果たした重要作。全米チャートでも初めてTOP100入り(最高44位)を達成するなど、名実ともに彼らの代表作と呼んでいいのではないでしょうか。

僕自身、このアルバムでPERIPHERYに初めて触れたのですが、それまでジェントというジャンルに持っていたイメージ(それは非常に極端かつ限定されたものでしが)をいい意味で壊してくれた作品でもあり、また「ジェントっていうけど、これってプログレメタルじゃないの?」という新たな気づきも与えてくれた1枚でもあります。いや、今聴いても新種のプログレメタルだよね?(笑)

オープニングの「Muramasa」でゆらゆら、ジワジワと空気を温めて、続く「Have A Blast」で一気に爆発するこのオープニングの構成、何度聴いても痺れますね。特に「Have A Blast」は冒頭のストリングス系音色を使ったフレーズから、エレクトロチックなフレーズを経てのブラストビート、しかもメジャーキーを軸にした軽やかなメロディといういかにもアメリカンな構成が本当に気持ちよくて。ぶっちゃけ、DREAM THEATERあたりを好きなリスナーにも引っかかるものがあると思うし、逆にDREAM THEATERほど世界観がカッチリと作り込まれていないからこそ入っていきやすいというのもあるんじゃないかな(とかいって、「Erised」にはそのDTからジョン・ペトルーシがゲスト参加しているんですが)。

……ってそれ、完全に僕のことですけどね(笑)。

以降も激甘要素を散りばめつつも、多弦ギターを巧みに駆使した気持ち良いリズム&フレーズの応酬、と同時にしっかり口ずさめる耳なじみの良いメロディラインが挿入されており、70分近い長尺作品ながらも最後まで飽きずに楽しむことができます。そうそう、ギターに関しては低音にこだわったリフワークよりも、メロウなソロワークのほうに耳が行くことが多いのも、本作の特徴ではないでしょうか。

「Muramasa」や「Masamune」といった名刀をモチーフにしたタイトルや、その「Masamune」あたりにフィーチャーされたゲーム効果音的なエフェクト(というかフレーズ)、偏った趣味趣向が感じられるMVもオタクっぽくて最高だし(笑)、日本盤のほか一部海外限定盤にはボーナストラックとしてSLIPKNOT「The Heretic Anthem」のカバーなども収録。徹底した作り込みなど含め、この人たちいろんな意味でオタクなんだろうな……という親近感込みで、もっと広く愛されるべき1枚だと思っています。

 


▼PERIPHERY『PERIPHERY II』
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