カテゴリー「2012年の作品」の18件の記事

2020年10月26日 (月)

PERIPHERY『PERIPHERY II』(2012)

2012年7月3日にリリースされたPERIPHERYの2ndアルバム。日本盤は同年9月19日に発売されました。

デビューアルバム『PERIPHERY』(2010年)、EP『ICARUS EP』(2011年)に続く本作は、ジェントと呼ばれるコアなジャンル(セグメント)をよりわかりやすい形でシーンに広める役割を果たした重要作。全米チャートでも初めてTOP100入り(最高44位)を達成するなど、名実ともに彼らの代表作と呼んでいいのではないでしょうか。

僕自身、このアルバムでPERIPHERYに初めて触れたのですが、それまでジェントというジャンルに持っていたイメージ(それは非常に極端かつ限定されたものでしが)をいい意味で壊してくれた作品でもあり、また「ジェントっていうけど、これってプログレメタルじゃないの?」という新たな気づきも与えてくれた1枚でもあります。いや、今聴いても新種のプログレメタルだよね?(笑)

オープニングの「Muramasa」でゆらゆら、ジワジワと空気を温めて、続く「Have A Blast」で一気に爆発するこのオープニングの構成、何度聴いても痺れますね。特に「Have A Blast」は冒頭のストリングス系音色を使ったフレーズから、エレクトロチックなフレーズを経てのブラストビート、しかもメジャーキーを軸にした軽やかなメロディといういかにもアメリカンな構成が本当に気持ちよくて。ぶっちゃけ、DREAM THEATERあたりを好きなリスナーにも引っかかるものがあると思うし、逆にDREAM THEATERほど世界観がカッチリと作り込まれていないからこそ入っていきやすいというのもあるんじゃないかな(とかいって、「Erised」にはそのDTからジョン・ペトルーシがゲスト参加しているんですが)。

……ってそれ、完全に僕のことですけどね(笑)。

以降も激甘要素を散りばめつつも、多弦ギターを巧みに駆使した気持ち良いリズム&フレーズの応酬、と同時にしっかり口ずさめる耳なじみの良いメロディラインが挿入されており、70分近い長尺作品ながらも最後まで飽きずに楽しむことができます。そうそう、ギターに関しては低音にこだわったリフワークよりも、メロウなソロワークのほうに耳が行くことが多いのも、本作の特徴ではないでしょうか。

「Muramasa」や「Masamune」といった名刀をモチーフにしたタイトルや、その「Masamune」あたりにフィーチャーされたゲーム効果音的なエフェクト(というかフレーズ)、偏った趣味趣向が感じられるMVもオタクっぽくて最高だし(笑)、日本盤のほか一部海外限定盤にはボーナストラックとしてSLIPKNOT「The Heretic Anthem」のカバーなども収録。徹底した作り込みなど含め、この人たちいろんな意味でオタクなんだろうな……という親近感込みで、もっと広く愛されるべき1枚だと思っています。

 


▼PERIPHERY『PERIPHERY II』
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2020年9月23日 (水)

DEFTONES『KOI NO YOKAN』(2012)

2012年11月9日にリリースされたDEFTONESの7thアルバム。日本盤は同年11月14日に発売されています。

前作『DIAMOND EYES』(2010年)から2年半ぶりの新作は、引き続きベーシストにセルジオ・ヴェガ、プロデューサーにニック・ラスクリネクツ(ALICE IN CHAINSHALESTORMMASTODONなど)を迎えて制作。2008年11月にチ・チェン(B)が交通事故で意識不明の重体に陥ってから、2作目の「不完全な形」でのアルバム制作となりました。

アルバムタイトルに日本語の「恋の予感」をそのまま用いた本作は、玉置浩二率いる安全地帯が如くメランコリックなAORを思わせるような……作品にはまったくなっておらず(笑)、前作からの流れを良い意味で引き継いだ、ヘヴィさとソフトさをバランスよく織り交ぜたエモーショナルな1枚に仕上がっています。チ・チェンを交えて制作する予定だった『EROS』という作品が怒りに満ちたヘヴィな作品になる予定だったところを、『DIAMOND EYES』では“Optimistic(=楽観的)”な作風を意識したと語られていましたが、そういった意味ではこの『KOI NO YOKAN』も“Optimistic”な1枚と言えるでしょう。

ただ、ゴリゴリした側面は若干後退したような印象も受けます。「Leathers」や「Poltergeist」のように味つけてエフェクトを多用した楽曲も含まれているものの、それらはポストロック的な用法というよりもヘヴィロック/ラウドロックの延長線上で用いられており、特に後者では楽曲を引き立てる上で良いフックになっているように感じました。

かと思えば、オルタナティヴロック/UKロック的なギターリフ/フレーズを取り入れた「Entombed」、ゴシックロック的なダークさを醸し出す「Rosemary」、ニューウェイヴ的な側面も見受けられる「Goon Squad」や「What Happened To You?」のような変化球もしっかり用意されている。轟音で力強く推し進めるというよりも、メロウさや気だるさを強調するためにヘヴィな音像を要所要所に配置する、むしろヘヴィさはおまけのようにすら感じ取れる。そういった意味では、これまでの作品とはスタート地点が真逆にあるような、不思議な印象を与えてくれるアルバムかもしれません。

なんというか、完全にひとつ完成してしまった……そんな1枚なわけですが、実はリリース当時は本作に対してあまりポジティブなイメージがありませんでした。なんというか……「コレジャナイ」感を抱いてしまったんです。「ああ、そっちに舵切ったか」と。次作『GORE』(2016年)を経た今聴くと、非常に前向きに受け取れるし、むしろ好みの音なんですけど。単純に2012年の自分の心境とフィットしなかっただけなんでしょうかね。謎です。

 


▼DEFTONES『KOI NO YOKAN』
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2020年7月29日 (水)

SOUNDGARDEN『KING ANIMAL』(2012)

2012年11月にリリースされたSOUNDGARDEN通算6作目のオリジナルアルバム。

『DOWN ON THE UPSIDE』(1996年)を最後に、翌1997年4月に解散を発表したSOUNDGARDEN。そこから約13年後の2010年1月にクリス・コーネル(Vo, G)、キム・セイル(G)、ベン・シェパード(B)、マット・キャメロン(Dr)がスタジオ入り。同年4月に復活ライブを行い、10月には未発表曲などを含むコンピレーション盤『TELEPHANTASM』をリリースしました。さらに、2012年春に映画『アベンジャーズ・アッセンブルズ』用への新曲「Live To Rise」提供を経て、ついに16年ぶりのフルアルバムが届けられたのでした。

アダム・カスパー(FOO FIGHTERSPEARL JAMQUEENS OF THE STONE AGEなど)とバンドの共同プロデュースという前作『DOWN ON THE UPSIDE』と同じ形で制作された本作は、我々がよく知るSOUNDGARDEN……つまり、メガヒット作『SUPERUNKNOWN』(1994年)と『DOWN ON THE UPSIDE』の延長線上にある、いや、この2作からの流れをベストな形で受け継いだ、文字通り「“あの”SOUNDGARDENのニューアルバム」として仕上がっています。なので、オープニングを飾る疾走チューン「Been Away Too Long」の時点で何の違和感なく、帰ってきたSOUNDGARDENを思う存分楽しむことができます。

「Live To Rise」は映画サントラ曲ということもあり、従来のらしさ以上にキャッチーさが目立つ、言ってしまえばクリス・コーネルのソロ曲の延長に近い作風でしたが、本作にはそんな日和った楽曲は皆無。ベン&マットのリズム隊はしなやかにグルーヴを生み出し、キムのギターも時にヘヴィに、時にサイケデリックに、耳に残るフレーズを奏でる。クリスの歌声はAUDIOSLAVE時代から感じ取れた若干の「老い」が感じられるものの、それでも自然体で「SOUNDGARDENのクリス」を表出させている……そう、このアルバムには不自然さや力みが皆無なんです。全員がSOUNDGARDENのメンバーでいること、SOUNDGARDENとして演奏することを、ある程度の余裕を持って楽しんでいる。そんな円熟味が伝わってくる内容なのです。

確かにここには『BADMOTORFINGER』(1991年)や『SUPERUNKNOWN』にあった先鋭性は少ないかもしれない。しかし、『SUPERUNKNOWN』から『DOWN ON THE UPSIDE』にかけて確立させたスタンダード的スタイルがさらに明確化され、個性として強まっている。もちろん、その間には16年という空白があり、そこで各メンバーはミュージシャン/表現者として自身を磨き続けた。その結果が、このナチュラルさなのかなと思うわけです。

SOUNDGARDENに一度でも心を動かされたことがあるリスナーなら、絶対に嫌いになれない音とメロディ。そんなシンプルな集合体こそ、バンドの復活作としてふさわしい1枚となるわけで、SOUNDGARDENはその使命を全うしたわけです。2017年にはクリス・コーネルが急逝し、結果としてこの編成でのオリジナルアルバムは本作が最後となってしまいましたが、もしあのまま成熟を積み重ねていったら、このバンドはどんな存在になっていたんでしょうね……。

 


▼SOUNDGARDEN『KING ANIMAL』
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2020年6月23日 (火)

DEAD END『Dream Demon Analyzer』(2012)

2012年3月にリリースされたDEAD ENDの6thアルバム。

復活作となった『METAMORPHOSIS』(2009年)MORRIE(Vo)、YOU(G)、CRAZY COOL JOE(B)、MINATO(Dr)というメジャーデビュー時のいわゆる黄金期メンバーで制作したものの、その後のツアーにはMINATOは不参加。代わりにLUNA SEAの真矢がサポートメンバーとして、バンドの屋台骨を支えました。

2011年からは新たなサポートメンバーとして山崎慶を迎えてライブ活動を継続。この布陣でレコーディングも行い、同年11月に「Conception」、12月に「Final Feast」、翌2012年1月に「夢鬼歌」とシングルを3ヶ月連続リリースし、その2ヶ月後の3月に満を辞して2年4ヶ月ぶりのフルアルバムを発表したのでした。

シングルでは「近親相姦」(「Conception」)、「食人」(「Final Feast」)、「殺人」(「夢鬼歌」)という三大禁忌をテーマに設定。その時点でDEAD ENDらしさや、彼らならではの攻めの姿勢が感じられましたが、当のアルバムもその姿勢が貫かれた、エネルギッシュさに満ちた1枚に仕上がっています。

パワフルかつテクニカルなプレイでリスナーを魅了したMINATOに慣れた耳には、最初こそツーバス&手数の多い山崎のドラミングに若干に違和感を覚えたものの、それもアルバムを聴き込むうちに慣れるはず。というか、彼のプレイが加わったことで、YOUやCOOL JOEのプレイも今まで以上に伸び伸びしている印象を受けますし、楽曲も過去数作以上にメタリック度が上がっています。だって、オープニングの「水晶獣<Crystal Beast>」からして、『METAMORPHOSIS』とは異なるパワフルさが伝わってきますし、「SSS」や「Seiren」のようなアグレッシヴなメタルチューンは過去にありそうでなかったタイプですし、4分の6拍子で進行する浮遊感の強い演奏がたまらない「虚無を超えて」やシングルカットできそうなキャッチーさを持つ「No Man's Dream」など、とにかく粒揃いなんですよ。

と同時に、シングルカットされた3曲もそれぞれタイプが異なるものの、DEAD ENDらしさと“ありそうでなかった、未知の領域”を兼ね備えた良曲で、聴けば「DEAD ENDの新曲だ!」とわかるのに、だからといって過去のどれに似てるというものでもない。確実に「ここから本当のDEAD END第二章が始まる」と実感させられる、そんなインパクト大の1枚なのです。

MORRIEというシンガー/アーティストの表現力の深み、YOUのギタリスト/ソングライターとしての(ここにきての)進化など、注目ポイントが非常に多く、だからこそ本作に続く7枚目のオリジナルアルバム(もしくはニューシングル)に大きな期待を寄せていたのですが、その夢は叶わぬまま8年が過ぎました。1曲だけでもいいから、『Dream Demon Analyzer』に続く最新型のDEAD ENDを聴きたかった。80年代に『ZERO』(1989年)で未知の領域へと到達したものの空中分解してしまった彼らですが、まさかあれから30年後にあんな悲劇が待ち受けているなんて、このアルバムを聴いたときは想像もできませんでした。だって、それだけ未来を見据えたアルバムでしたから。

 


▼DEAD END『Dream Demon Analyzer』
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2019年10月17日 (木)

ANGEL WITCH『AS ABOVE, SO BELOW』(2012)

ANGEL WITCHが2012年3月に発表した通算4作目のオリジナルアルバム。

ANGEL WITCHは70年代末にケヴィン・ヘイボーン(Vo, G)を中心に結成された、NWOBHM(New Wave of British Heavy Metal)シーンにおける代表的存在のひとつ。1980年にアルバム『ANGEL WITCH』をリリース後、80年代半ばまでに計3枚のオリジナルアルバムを発表しています。が、その後は活動が停滞。デモ音源を含むコンピ盤やライブアルバムのリリースこそあったものの、オリジナル作品の発表は20年以上途絶えていました。

今回紹介する『AS ABOVE, SO BELOW』はオリジナルアルバムとしては、1986年の『FRONTAL ASSAULT』以来26年ぶりの新作。一部メディアでは『RESURRECTION』(2000年)以来12年ぶりと報じられていましたが、同作は未発表のデモ音源を寄せ集めたものなので、純粋な新作としては26年ぶりが正しいのでしょう。

本作リリース時のメンバーはケヴィン、ウィル・パーマー(B)、アンディ・プレスティッジ(Dr)にビル・スティアー(G)という4人。ビルはご存知、CARCASSやFIREBIRD、GENTLEMANS PISTOLSでおなじみの方。ただ、のちの明らかになるのですが、ビルはレコーディングには不参加でライブのみの参加だということです(ただ、明らかにビルらしいギターフレーズも確認できるそうなので、実際のところどこまでが本当かは不明)。

楽曲そのものは、これぞANGEL WITCH!と言えるダークなHR/HMが中心で、オープニングの「Dead Sea Scrolls」こそ“枯れた”ハードロックで若干の不安を覚えますが、2曲目「Into The Dark」以降のアップダウンを繰り返す展開にホッと胸をなでおろすオールドファンは少なくないはず。とにかく「あのANGEL WITCH」そのものですよ、これは。

現代的なプロダクションで制作されたことで、デビューアルバム『ANGEL WITCH』にあったチープさが払拭され、間違いなく2000年代の音/バンドとしてここに存在する。僕自身、2作目も3作目も聴いておらず、完全に『ANGEL WITCH』との比較になってしまうのですが、そこから32年という長い時間を一気に飛び越してここに存在するこの音、間違いなく『ANGEL WITCH』からの“続き”なんですよ。そう確信できるほど、王道中の王道。もはや職人技と言いたくなるくらいの変わらなさと(制作面での技術的)進化を楽しめる1枚。聴かない理由はありません。

ちょうど同作を携え行われた来日公演(2012年6月)にも足を運び、さらにはANGEL WITCHの一員として来日したビル・スティアーへのインタビューまで実現してしまった(掟ポルシェさんがインタビュアーを務め、僕が原稿をまとめるという形で)。このアルバムを聴くと、7年前のあの頃のことを鮮明に思い出すことができる……そんな個人的な思い出が詰まった1枚です。

 


▼ANGEL WITCH『AS ABOVE, SO BELOW』
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2019年8月21日 (水)

KING 810『MIDWEST MONSTERS』(2012)

2019年6月末に突如デジタルリリースされた、KING 810の7曲入りEP。

新機軸を打ち出した3rdアルバム『SUICIDE KING』を今年1月に自主販売したばかりの彼らですが、本作はこれに続く新作というわけではなく、実は2012年に発表したインディーズ作品の再リリースに当たります。

なので、サウンド的にはメジャーデビューアルバム『MEMOIRS OF A MURDERER』(2014年)の延長線上にある(いや、『MEMOIRS OF A MURDERER』が本作の延長線上にあるというのが正しいんだけど)オールドスクールなハードコアサウンドが展開されています。

自主制作ということもあり、ドラムのこもり具合や若干の安っぽさは否めませんが、それでも『MEMOIRS OF A MURDERER』で我々を楽しませてくれたゴリゴリなヘヴィサウンドは存分に堪能できるはずです。冒頭の「Midwest Monsters」〜「The Death Posture」の構成などはドキッとさせられますし、この時点ですでに光るものを持っていたんだなと気づかされます。

全編押しまくりの内容で、ミドルテンポだけじゃなくてアッパーな楽曲/アレンジも要所要所に散りばめられている。この手のバンドはミドルテンポ一辺倒で淡白になりがちですが、だからこそ全7曲25分という内容は程よいなと感じました。

あと、その後のメジャーデビュー作で開花するダークなゴシックナンバーや、スポークンワーズを用いたスロウナンバー、ブルース色の強い楽曲やスローバラードといった変化球はこの時点では皆無。どういう経緯でそういった幅広さを手に入れたのかも気になるところです。

「Wolves」や「Dragging Knives」など評価すべき楽曲は少なくありませんが、これ!という突出したナンバーが見当たらないという意味では、KING 810もこの時点ではまだ“One of Them”でしかなかったのかなと。だからこそ、メジャーデビューまでの2年間は非常に重要なものだったんでしょうね。じゃなきゃ、かのRoadrunner Recordsと契約することもなかったでしょうし。

彼らのルーツを知る上では貴重な1枚ではありますが、ではまず最初に聴くべき作品かと問われると、それはどうかなと。個人的には1stアルバム、2ndアルバム『LA PETITE MORT OR A CONVERSATION WITH GOD』(2016年)で彼らの本質に触れたあとに、副読本的に聴く程度でいいんじゃないかと(3rdアルバムで彼らに失望したリスナーにとっては、本作は真っ先に聴くべき1枚かもしれませんが)。

 


▼KING 810『MIDWEST MONSTERS』
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2019年8月19日 (月)

THE DARKNESS『HOT CAKES』(2012)

2012年8月にリリースされたTHE DARKNESSの3rdアルバム。

前作『ONE WAY TICKET TO HELL... AND BACK』(2005年)発表後、2006年にジャスティン・ホーキンス(Vo, G)の脱退によりバンドは解散。それぞれ別々に音楽活動を続けてきましたが、2011年春にジャスティン、ダン・ホーキンス(G)、フランキー・ポーレイン(B)、エド・グラハム(Dr)というオリジナルメンバーでの再結成を発表。同年秋には『LOUD PARK 11』での来日も実現しました。

こうしたライブ活動を経て完成した3rdアルバムは、全英4位/全米43位というデビュー作『PERMISSION TO LAND』(2003年)にも匹敵する数字を残しています。

ミックスにボブ・エズリン(KISSPINK FLOYDアリス・クーパーなど)を迎え、ほぼセルフプロデュースで制作された本作は、どこからどう切り取っても「これぞTHE DARKNESS」と呼べる内容。オープニングの「Every Inch Of You」こそシンプルで拍子抜けしそうになりますが、続く先行シングル「Nothin's Gonna Stop Us」はQUEEN風多重コーラスを含む“いかにも”な1曲。そこから「With A Woman」「Keep Me Hangin' On」と“ポップでいかがわしい”ロックンロールが続きます。

そうそう、これこれ!と言いたくなるぐらいに当時のままで、だけど前作からの時間の経過もちゃんと伝わるアップデート感も至るところに散りばめられており、全11曲(デラックス盤ボーナストラックを除く)を聴き終えたときの満足感・充足感は相当なものがあるはずです。

もし7年のブランクがなかったら、5枚目か6枚目あたりで醸し出しそうな空気感なのかな、これ。確かに『PERMISSION TO LAND』にあった衝動は弱まって、大人になった落ち着きが全体を覆っているかもしれないし、『ONE WAY TICKET TO HELL... AND BACK』でのバキバキに固められた無敵感もここにはないかもしれない。でも、負けを認めた大人たちが「それでも前に進もう」という気概だけは失わず、ルーツを忘れることなく今のやり方で“俺たちらしさ”を表現した。それが、この復活作なんじゃないでしょうか。

そういう意味では、終盤に含まれたRADIOHEAD「Street Spirit (Fade Out)」のカバーは「若い奴に取り入ろう」という意図とは異なる、「何をしたってTHE DARKNESSはTHE DARKNESSのまま」という証明をしようとしたのではないか。そう思わずにはいられません。じゃないと、こんなバカバカしいほどの名カバー(いや、迷カバー?笑)、アルバム本編に入れようと思いませんよ。

ちなみに本作、日本ではSpotifyで聴くことができません。Apple Musicでは配信されているので、気になる人はそちらでチェックしてみてください。

 


▼THE DARKNESS『HOT CAKES』
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2019年7月15日 (月)

KISS『DESTROYER』(1976)/『DESTROYER: RESURRECTED』(2012)

1976年3月にリリースされた、KISS通算4作目のオリジナルアルバム。

前作『DRESSED TO KILL』(1975年)から1年ぶりの新作に当たりますが、同作が初の全米TOP40入り(最高32位)。続いて発表されたライブアルバム『ALIVE!』(1975年)がさらに全米10位という高記録を残したことで、このオリジナルアルバム『DESTROYER』に対する期待も高く、最高11位まで上昇(アメリカのみで200万枚以上の売り上げを記録)。「Shout It Out Loud」(全米31位)、「Flaming Youth」(同74位)、「Beth」(同7位)とヒットシングルも多数生まれました。

本作ではアリス・クーパーAEROSMITHルー・リード、Dr.ジョンなどとの仕事で名を上げてきたボブ・エズリンが初めてプロデュースを担当。それまでのシンプルで小気味良いロックンロールスタイルから一歩踏み出し、非常に手の込んだ楽曲が増えています。

例えばアルバムオープニングの「Detroit Rock City」ですが、冒頭のSE(車に乗ってカーステでKISSを聴き始める)から曲に入っていく構成、そして同曲の重厚なアレンジ、ラストに事故を起こしてエンド→そのまま「King Of The Night Time World」へと続いていく流れは圧巻の一言。2曲ともドラマチックなツインリードソロが入っているのも印象的で、思わずコピーしたくなるフレーズが満載なんですよね。

ジーン・シモンズ(Vo, B)の魔王感がハンパないミディアムヘヴィの「God Of Thunder」(もともとはこの曲、アップテンポだったんですよね。そのデモ音源は2000年代前半にリリースされたボックスセットで試聴可能)、そのジーンが続けて歌うストリングスと児童合唱団をフィーチャーした「Great Expectations」と、とにかくバラエティ豊か。

ここまでがアナログA面で、B面は軽快でキャッチーな「Flaming Youth」「Sweet Pain」で初期3作をアップデートさせた感を提示し、ポール・スタンレー(Vo, G)&ジーンのツインボーカルが最高な「Shout It Out Loud」で最高のキャッチーさを見せつける。

そこからピーター・クリス(Dr, Vo)がリードボーカルを担当したドラマチックなバラード「Beth」、シンプルでキャッチーなロックチューン「Do You Love Me」でクライマックスへ。さらにシークレットトラックとして、「Great Expectations」使ったリフレイン「Rock An Roll Party」で締めくくり。トータルで34分少々と今の感覚だと短いように思いますが、非常に濃厚な1枚なんですよね。

どの曲もボブ・エズリンが曲作りに関与しており、その結果バンドとしてひと皮剥けたのは間違いないでしょう。このアルバムをKISSの代表作として挙げる人も多いんじゃないでしょうか。事実、僕も本作と1stアルバム『KISS』(1974年)の2枚を「最初に聴くべきKISSの名盤」としてプッシュするでしょうし。

 


▼KISS『DESTROYER』
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2018年6月 6日 (水)

HALESTORM『THE STRANGE CASE OF...』(2012)

リジー・ヘイル(Vo)率いる4人組バンドHALESTORMが2012年4月にリリースした、通算2作目のスタジオアルバム。デビューアルバム『HALESTORM』(2009年)が全米40位、50万枚を超えるヒット作となったあとのアルバムだけに、さらなるヒットが期待されましたが、アルバムは最高15位まで上昇。前作同様に50万枚以上もの売り上げを記録しました。また、アルバムからシングルカットされた「Love Bites (So Do I)」「I Miss The Misery」がBillboardメインロックチャート2位、「Freak Like Me」が同チャート1位にランクインする好成績を残しています。まさしく、HALESTORMにとって大きな出世作と言えるでしょう。

プロデュースを手がけたのは、80年代末からHR/HMバンドの作品を数多く手がけているハワード・ベンソン。適度にモダンながらも、ど真ん中を突く王道感満載の豪快なハードロックが展開されています。

オープニングの「Love Bites (So Do I)」の疾走感と、リジーのパワフルなボーカルでいきなり心を鷲掴みにされることは、まず間違いないでしょう。この曲、昨年デビューした日本の女性メタルバンドLOVEBITESの、バンド名の由来にもなっている1曲で、ライブでもカバーされていました。

かと思えば、続く「Mz. Hyde」ではBLACK SABBATHを彷彿とさせるヘヴィなリフ、豪快なボーカルとリズムでワイルドさを表現。さらに「I Miss The Misery」ではシンガロングしたくなるフレーズも登場し、適度なポップさとハードさが混在する親しみやすい楽曲に仕上げられています。

と、ここまで聴いて実感したのは、こういう音が2000年代の王道なんだろうなということ。この質感や楽曲のテイスト、例えば2000年代半ばにメジャーデビューしたAVENGED SEVENFOLDあたりとも共通する点があると思うのです。本人たちは80年代の王道HR/HMからの影響を大きく受けながらも、それをそのままなぞるのではなく、しっかり90年代も通過したことで吐き出されるそのサウンドは、僕らリアルタム80年代通過組が想像するそれとはまったく違うものに仕上がっている。それは良い/悪いという次元ではない、これこそが“時代に沿った音”なのだという証明のような気がするのです。

そういう意味では、HALESTORMやAVENGED SEVENFOLDのようなバンドがメインストリームにいることは正しいような気がしてきます。

中盤にはポップなミディアムチューン「Beautiful With You」、パワーバラード「In Your Room」、ピアノバラード「Break In」としっかり聴かせる楽曲も。もちろん、後半に入ると「Rock Show」で再び攻めの姿勢に戻るし、AC/DCを彷彿とさせるミドルテンポのハードロックが並ぶ構成も、いかにもアメリカのバンドらしい。最後にアコギを用いたバラード「Here's To Us」で締めくくるあたりもさすがです。これが売れない理由が見つからない、納得の1枚です。

なお、本作には異なるボーナストラックを含むいくつかのバージョンが存在。日本盤には本作の前にリリースされたカバーEP『REANIMATE: THE COVER EP』(2011年)から、「Slave To The Grind」(SKID ROW)、「Bad Romance」(LADY GAGA)、「Hunger Strike」(TEMPLE OF THE DOG)、「All I Wanna Do Is Make Love To You」(HEART)、「I Want You (She's So Heavy)」(THE BEATLES)の5曲を追加(GUNS N' ROSES「Out Ta Get Me」のみ未収録)。海外ではジェームズ・マイケル(SIXX: A.M.)をフィーチャーした「Private Parts」など未発表曲3曲が追加されているほか、のちにリリースされたリイシューバージョンにはスラッシュ、ウルフガング・ヴァン・ヘイレン(VAN HALEN)、マイルズ・ケネディ(ALTER BRIDGE)、ジェームズ・マイケル、デヴィッド・ドレイマン(DISTURBED)などがゲスト参加した「Here's To Us」が収録されています。

どれを買うか迷いそうですが、HALE STORMを初めて聴くならルーツが垣間見れる日本盤がベスト。ちなみに、ストリーミング版では海外デラックス盤にリイシュー盤のボートラを加えた全16曲を聴くことができるので、こちらもオススメです。



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2018年5月 2日 (水)

THE HIVES『LEX HIVES』(2012)

スウェーデンの爆走ガレージロックバンド、THE HIVESが2012年6月に発表した通算5作目のフルアルバム。相変わらずリリース間隔の長いバンドではありますが、本作は前作『THE BLACK AND BLUE ALBUM』(2007年)から約5年という過去最長のインターバルを経て発売された1枚でした。

バンドのセルフプロデュース作品ですが、ミックスにデイヴ・サーディ(MARILYN MANSONSLAYEROASISなど)をはじめ3名のエンジニアを迎えた意欲作に仕上げられており、確かに曲によって若干カラーの異なる味付けがされているように感じられます(ボーカル処理が独特ですよね、今作)。

とはいえ、そこはTHE HIVESというバンドの個性を壊すことはない、誤差範囲内といいますか。基本はいつもどおりの、ご機嫌なガレージロックが展開されています。だって、全12曲(日本盤およびデジタル版は、ここにボーナストラックを追加)、全31分があっという間に過ぎていきますからね。

1曲目「Come On!」からして1分少々で突っ走り、そのまま「Go Right Ahead」へと突入。「I Want More」のようにAC/DC的な重々しいミディアムチューンもあるものの、基本は軽やかに突き進み、適度にパンキッシュさを感じさせるクールなロックンロールが展開されているわけですから、好きな人にはたまらない1枚だと思います。

ある種、金太郎飴的な作品を作る続けるバンドとも言えるわけですが、だからこそ作品を無闇に作りまくらない(3〜5年に1枚ペース)なのかもしれませんね。だって今の時代、1〜2年の1枚のペースでこの手の作品を作り続けたら正直飽きられそうな気がしますし。

そうそう、本作で特出すべき点として、日本盤とデジタル版にのみ追加収録されている2曲が挙げられるのではないでしょうか。この「High School Shuffle」と「Insane」のみバンドのセルフプロデュースではなく、QUEENS OF THE STONE AGEのジョシュ・ホーミがプロデュースを手がけているのですから。

ま、だからといって基本姿勢は崩していません(笑)。基本姿勢は崩していませんが、どことなくサイケデリックな雰囲気があったりと、ちょっとだけQUEENS OF THE STONE AGEの香りも……しないことはない……かな? 実際、どことなくスモーキーさを感じさせるそのサウンドには、両者共通するものがありますし。納得の組み合わせといったところでしょうか。

本作リリースから、間もなく6年が経とうとしていますが、いまだ新作リリースの情報なし。2015年に単発で「Blood Red Moon」という新曲を発表しましたが、これがまた枯れまくりの渋い作品でして……次のアルバム、どうなるんでしょうね。

「また同じじゃん!」とか文句言わないので、早く新しい音を聴かせてください。お願いします!

 


▼THE HIVES『LEX HIVES』
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