2018年2月12日 (月)

MANIC STREET PREACHERS『REWIND THE FILM』(2013)

MANIC STREET PREACHERSが2013年9月に発表した通算11枚目のスタジオアルバム。前作『POSTCARDS FROM A YOUNG MAN』(2010年)から3年ぶりの新作にあたるのですが、その3年の間にはシングルコレクションアルバム『NATIONAL TREASURE - THE COMPLETE SINGLES』(2011年)、デビューアルバム『GENERATION TERRORISTS』(1992年)の20周年記念盤(2012年)があったので、実は意外とそこまで空いた感がなかったんですよね。

本作発売前に、まずリードトラックとしてアルバムタイトル曲「Rewind The Film」がYouTubeで公開されたのですが、6分半ある穏やかなこの曲を聴いてまず驚かされるわけです。だって、曲の序盤をジェームズ・ディーン・ブラッドフィールド(Vo, G)ではなく、ゲストシンガーのリチャード・ハーレイ(元LONGPIGS)が歌っているんですから……「あれ?」と思うわけです。しかも曲調的にも大ヒットした『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』(1998年)の延長線上にある、“非常にエモくて、それでいてどこか枯れた”スタイルなんですから。しかも、正式な1stシングル「Show Me The Wonder」にしてもブラスをフィーチャーしつつも、全編アコースティックテイストだし。「ロックバンド・MANIC STREET PREACHERS」を求めるリスナーには、不安要素しかないですよね。

本作制作にあたりバンドはアルバム2枚分以上の楽曲を作り、結果としてテイストの異なる2枚のアルバムにまとめることを決めたそうで、その1枚目がこの全編穏やかでアコースティック色の強い『REWIND THE FILM』なわけです。歌詞も黙想的かつ内省的で、サウンドも無駄な装飾を限りなくそぎ落とし、ディストーションを一切必要としない。メロディ自体は間違いなくあのマニックスなんだけど、それまでとまったく違って聞こえる。これこそが、デビュー20周年を経て次の20年に向けて新たに歩みだしたバンドの出した答えだったと。そういう冒険作なわけですね。

にしても、自らもう若くないことを認め、同時に昔に戻りたいと吐露するこの作風は『GENERATION TERRORISTS』以上の衝撃的内容ですよ。結成時は20代のうちに大成功して解散することを求めていたバンドが、気づけば40代に突入して、ブヨブヨに太ったり髪が薄くなったりした姿を晒し続けながら、20代の頃のヒット曲を歌い続ける。その反動が本作だと考えれば、非常に納得がいくし、それはそれでパンクなんじゃないか……という気がします。現実の残酷さを余すところなく晒すという意味での、パンクですけどね。

あともうひとつ。本作は『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』で表現すべき世界観の究極形だったのかなと。30前後では表現できなかった旨みや深みが完璧な形で表現された、究極の“負け犬の遠吠え”……うん、だから嫌いになれないんですよ、このアルバム。

約1年後にリリースされる、本作と対になるアルバム『FUTUROLOGY』(2014年)を並べることで、本作の魅力はより増すことになるとは、発売当時考えてもみなかったけどね。



▼MANIC STREET PREACHERS『REWIND THE FILM』
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2017年12月23日 (土)

I SEE STARS『NEW DEMONS』(2013)

アメリカ・ミシガン州出身のピコリーモ/エレクトロニコアバンド、I SEE STARSが2013年秋に発表した通算4作目のオリジナルアルバム。本作はBillboard 200で28位を記録した、彼らの出世作となった1枚です。事実、僕もこのアルバムで初めて彼らの音に触れたので、非常に印象に残っています。

ポストハードコア/メタルコアサウンドに電子音やサンプリングなどをミックスしたピコリーモ/エレクトロニコアは、ここ日本だとFear, and Loathing in Las Vegasあたりが人気ですが、このアルバムはそういった国内バンドのファンにも存分にアピールする内容と言えます。つい先日、日本のCrossfaithが主催するイベント『ACROSS THE FUTURE』で来日したばかりですが、Crossfaithやcoldrain目当てで来場したオーディエンスにも存分にアピールし、大きな盛り上がりを見せました。

ポップでメロウなクリーンボーカルを主軸にしつつ、重々しくて汚らしい(笑)なグロウルもフィーチャーされており、ギターもエッジの立ったヘヴィなサウンドが気持ち良く、エレクトロ要素が苦手なラウドファンにもとっつきやすいテイストだと思います。

が、このバンドの場合、そこにEDMや8ビット風サウンド、あるいはヒップホップやレゲエなどの味付けが加えられることで、ほかのメタルコアバンドとは一線を画する個性を見せてくれる。そこで好みが分かれてしまうのは仕方ないのですが、そこで敬遠してしまうには勿体ない完成度なんですよね。

例えば、昨日紹介した近年のBRING ME THE HORIZONが気に入っている人なら、意外と入っていきやすいと思いますし、なんなら若干ヘヴィめの音が平気なEDMファンにも受け入れられるであろう要素も豊富に存在する。あるいは、「Murder Mitten」のような楽曲はドラマチックなメタルが好きな人にも響くものがあるかもしれない。そういういろんな可能性を秘めた、全方位に向けたメタルコア/ラウドロックアルバムと言えるかもしれません。

とにかく頭6曲の流れが完璧すぎるし、それ以降も一瞬たりとも気が抜けない完成度の高さ。繊細な音も含まれているものの、まずは限りなく大音量で楽しみたい1枚です。

残念ながら、このアルバムを最後にリズムギターのジミー・グレガーソンとシンセ/スクリーム担当のザック・ジョンソンが脱退。バンドにとってかなりの痛手となりましたが、2016年には5thアルバム『TREEHOUSE』を発表しています。チャート的には最高93位と大きく順位を落としてしまいましたが、ヘヴィさが減退してクリーン&エレクトロ/ダンス色が濃くなった意欲作だと思うので、特にBMTHの『THAT'S THE SPIRIT』が好きな人は試してみてはどうでしょう。



▼I SEE STARS『NEW DEMONS』
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2017年12月22日 (金)

BRING ME THE HORIZON『SEMPITERNAL』(2013)

2013年春にリリースされた、BRING ME THE HORIZON(以下、BMTH)の4thアルバム。本作の制作途中でギタリストのジョナ・ウィーンホーフェンが脱退し、それと替わるようにキーボーディストのジョーダン・フィッシュが正式加入。これまでのツインギター編成からシングルギター+キーボードという、メタルコアバンドとしてはちょっと異色のバンド編成となりました。

正直、このメンバーチェンジに不安を覚えたファンは少なくなかったはずです。だって、確実にそのサウンドに変化を及ぼすわけですから。しかし、この変化こそがBMTHをさらに一段上へとステップアップさせるための重要なトピックとなったのでした。

初期こそデスコアなんてジャンルで括られた彼らですが、前作『THERE IS A HELL, BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN, LET'S KEEP IT A SECRET.』(2010年)で若干その片鱗を見せていたプログレッシヴな方向性が続く本作『SEMPITERNAL』でさらに進化し、シンセなどエレクトロの要素が加わったことでモダンな色合いを強めることになります。

そのカラーが顕著に表れたのが、リードトラック「Sleepwalking」や「Go To Hell, For Heaven's Sake」「And The Snakes Start To Sing」あたりではないでしょうか。ヘヴィさを保ちながらもシンセやサンプリングなどの装飾を施すことで、不思議とポップにも感じられるこのアレンジは、メタルコアバンドがモダンな要素を取り入れるとこうなるという見本的な仕上がりに。これらの楽曲および本作の成功が、続く大ヒット作『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)へとつながったことは想像に難しくありません。

もちろん、従来のメタリックで攻撃的でファストな要素も失ったわけではありません。「The House Of Wolves」「Antivist」はアレンジこそ以前よりシンプルですが、間違いなく過去のBMTHの延長線上にありますし、全体を覆うエッジの立った作風は、前作の流れを汲むものだと思います。

そういった楽曲と先の「Sleepwalking」や、ドラマチックなアレンジの「Crooked Young」「Hospital For Souls」が並ぶ本作は、一気に振り切ってポップになった『THAT'S THE SPIRIT』とヘヴィでプログレッシヴな前作(タイトルが長いので省略)の中間に位置する、このバンドの歴史を語る上で非常に重要な1枚と言えます。つまり、過去と現在をつなぐ、非常にバランスの良い内容ではないかと。新作は苦手だけど、このアルバムは受け入れられるという初期からのファンも少なくない気がしますが、いかがでしょう?

本作や『THAT'S THE SPIRIT』が、以降のメタルコアシーンに与えた影響は計り知れないものがあります。もちろん、BMTHだけではなく、同系統のバンドが同じタイミングにいくつかいたからこそ、メタルコア/ラウドロックシーンに新たな扉が開かれたわけですが……そういった史実を抜きにしても、本作は非常に優れた、ラウドロック/メタルファンが聴くべき傑作だと断言します。



▼BRING ME THE HORIZON『SEMPITERNAL』
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2017年5月 7日 (日)

STONE TEMPLE PILOTS with CHESTER BENNINGTON『HIGH RISE』(2013)

LINKIN PARKのチェスター・ベニントンはバンド活動以外にも、さまざまな音楽ユニット/バンドに参加しています。例えば2009年にアルバム『OUT OF ASHES』を発表したバンドDEAD BY SUNRISE、そして2013年に加入したSTONE TEMPLE PILOTSあたりは有名かと思います(前者は最近のファンには身近ではないかもしれませんが)。

スコット・ウェイランドが脱退し、ボーカリスト不在となったストテンはチェスターをボーカルに迎え、新たに“STONE TEMPLE PILOTS with CHESTER BENNINGTON”名義で活動を続けていくことを発表。2013年春にはこの編成で初のオリジナル曲「Out Of Time」を配信し、秋には同曲を含む5曲入り『HIGH RISE』をCDリリースするのでした。

スコットが再加入して2010年に発表したアルバム『STONE TEMPLE PILOTS』は“いかにも”な作風で、古くからのファンを喜ばせてくれました。そこから3年後に制作されたこの『HIGH RISE』も、基本的には従来のストテンサウンドなんですが、そこにチェスターのボーカルが乗ることで若干の違和感が生じる結果に。スコットほどのアクの強さもないし、線も細いチェスターの歌声はこういうオーソドックスなロックには向いてないのではないか。一聴したときはそう思ったものでした。

しかし、何度か聴き返すうちに不思議と馴染んでくるんです。これはこれで悪くないかも、と。もともと楽曲自体は過去のストテンのアルバムに入っていても不思議じゃないナンバーばかりだし、チェスターが入ったからといって特に新しいことをやろうとしていない。「いや、むしろ俺たちはこれがやりたいんだ!」という従来のストテンメンバー3人からの強い意志が感じられる、“この先”へつなげるための重要な作品集なんですね。

バンド名の「with〜」表記からもわかるように、この編成は永遠ではない。実際、2015年秋にはチェスターはストテンからの離脱を発表。その1ヶ月後にはスコットも急逝しており、バンドは今も新ボーカリストを探している最中です。オーバードーズという形でこの世を去り、ロックシーンにその名を刻み込んだスコット。LINKIN PARKという世界的に大成功したバンドから少し離れて、大先輩たちの共演でアク抜きしてバンドへと戻っていったチェスター。そして地道に続けることを選んだストテン。どの生き方が正しいとか間違ってるとか言いがたいけど、今は再びSTONE TEMPLE PILOTSとしての新作を気長に待ちたいところです。



▼STONE TEMPLE PILOTS with CHESTER BENNINGTON『HIGH RISE』
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投稿: 2017 05 07 12:00 午前 [2013年の作品, Linkin Park, Stone Temple Pilots] | 固定リンク

2017年4月23日 (日)

MUTATION『MUTATION II - ERROR 500』(2013)

THE WiLDHEARTSのフロントマン、ジンジャー・ワイルドハートが2012年に結成したノイズメタルプロジェクト・MUTATION。彼らが2013年、メールオーダーで限定リリースした2枚のアルバムのうち、今回は2ndアルバムにあたる『MUTATION II - ERROR 500』を紹介します。

MUTATIONのアルバムは当時、PledgeMusicを通じてメールオーダー限定で発表されましたが、この『MUTATION II - ERROR 500』のみマイク・パットン(FAITH NO MORE)のレーベル・Ipecaから輸入盤として少数ながら一般流通。当時は日本にほぼ未入荷という話ですが、僕は当時店頭でこのアルバムを購入した記憶があります。Amazonではなく、間違いなく店頭、しかもレコファンあたりだったと思います(CDに貼ってあるポップに「あのジンジャーの新プロジェクト」と記されていたので購入したのですから)。

前回のブログにも書いたように、このメタルノイズユニットMUTATIONはTHE WiLDHEARTSのアルバム『ENDLESS, NAMELESS』で試みた実験に再び挑戦したといえる内容。1曲の中に数曲分のアイデアが混ぜられたような非常に複雑な展開を持ち、ツーバスがドコドコ鳴り続けたかと思えば、急に耳障りの良いハーモニーやメロディが聴こえてくる。言い方が合っているかわかりませんが、プログレをよりモダンに、かつ暴力的にしたものがこのMUTATIONの本質ではないかと思います。

同時リリースとなった『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』(同作のみ一般流通なしで、この6月に日本限定でリマスター盤の流通開始)と比較すると、本作のほうがよりぶっきらぼうで投げっぱなし感が強いイメージ。それもそのはず(なのかどうかわかりませんが)、本作にはNAPALM DEATHのシェーン・エンバリー(B)が全面参加しているほか、日本が誇るMERZBOWが5曲目「Mutations」に演奏で、さらにTHE FALLのマーク・E・スミスが「Mutations」「Relentless Confliction」でリードボーカルでゲスト参加しているのです。

実はMUTATIONのアルバム中、初めて聴いたのは本作だったこともあり、バンドのもっともエクストリームな部分にいきなり触れて拒絶してしまった過去があります。しかし、あれから3年以上経った2016年末、リマスター再発された『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』を聴いたときはすんなり受け入れることができた。で、『MUTATION II - ERROR 500』を久しぶりに引っ張り出して続けて聴いてみたら……以前よりもすんなり楽しむことがでいた。けど、聴きやすさでは『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』のほうが一歩勝るかなと。2枚は同時期に制作されながらも、『MUTATION II - ERROR 500』のほうにゲストアーティストを多数迎えたことにより、ノイズミュージックとしての実験要素が強くなった。それが最初に聴いたときの“よくわからない、聴き手としての拒絶感”につながったのかもしれません。

本作は現在もAmazonで購入できるようですが、リマスターされデモ音源が追加された国内盤が6月21日にリリースされるようなので、ジンジャーの解説含めて堪能したい方はそちらの発売を待ってみるのも良いかもしれません。



▼『MUTATION II - ERROR 500』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 04 23 12:00 午前 [2013年の作品, Ginger Wildheart, Mutation, Napalm Death] | 固定リンク

2017年4月22日 (土)

MUTATION『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』(2013)

THE WiLDHEARTSのフロントマン、ジンジャー・ワイルドハートが2012年に結成したノイズメタルプロジェクト・MUTATION。2013年にメールオーダーで限定リリースした2枚のアルバムが新作発売にあわせ、ついにここ日本でも6月に一般流通することになりました。ということで、今回はCDリリースに先駆けてMUTATIONの3作品について連日紹介していきたいと思います。

この『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』はPledgeMusicを通じてジンジャーのレーベルRound Recordsから流通され、すぐに廃盤。昨年末には同作のリマスター盤が再びPledgeMusicにて配信リリースされています。

聴いた順番でいうと、私は2013年にMUTATIONの2ndアルバムにあたる『MUTATION II - ERROR 500』を最初に聴きました。2枚同時にPledgeMusicから発表されたMUTATIONのアルバムでしたが、『MUTATION II - ERROR 500』のみマイク・パットン(FAITH NO MORE)のレーベル・Ipecaから一般流通され、当時店頭にて手に入れることができたのです。

ということで、『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』自体を聴いたのはリマスター盤からで、つい最近のこと。そこを踏まえた上でお読みいただけたらと思います。

“ノイズメタルユニット”と銘打っているとおり、MUTATIONのサウンドは非常にノイジーで耳障りの悪いものです。ジンジャーが過去に携わった作品でもっとも近いものといえば、おそらく1997年発売のTHE WiLDHEARTSのアルバム『ENDLESS, NAMELESS』でしょう。薄皮も何枚も被せたように奥にこもったサウンドと、その先からビリビリと聴こえてくるノイズ混じりの轟音。でもよく耳を澄ませると、そのもっと奥底にあるメロディは実にポップでキャッチー。それが『ENDLESS, NAMELESS』という実験作でした。

で、このMUTATIONで試されていることは、あの実験をさらに数歩押し進めたものと受け取ることができます。楽曲自体はとっつきにくいイメージの強い、変拍子を多用したリズムとギターリフ。そこにヒステリックにシャウトするジンジャーのボーカルが乗り、たまに耳馴染みのよい女性コーラスが登場する。1曲の中にいろんな要素が詰め込まれており、ぶっちゃけアイデア自体は数曲分がミックスされているんじゃないかと思わされるものばかり。でも全10曲ともに1曲3〜4分程度で、トータル39分に満たないという近年のアルバムの中でも非常にコンパクトなもの。なのに聴き終わったときにドッと溢れ出てくる疲労感。これぞ、1997年にジンジャーが目指したものだったのではないかと思わされるわけです。

あのときは、その実験を自身のバンドTHE WiLDHEARTSでやろうとしたことが失敗だった。でも、今は自由の身で、新たにやりたいことがでいたらその都度新しいプロジェクトを作ればいいだけのこと。そんな軽いフットワークのジンジャーが2012年というタイミングにこのプロジェクトに向かっていったのは、とても健全なことなのかもしれません。

そういえば本作のラストナンバー、「Carrion Blue 喜怒哀楽」という日本語混じりの不思議なタイトルになっています(原題表記がこうなっているのです)。また、この曲のハードコアぶり&サビのキャッチーさがたまらないんですよね。最近のユルいジンジャーに疑問を感じていた古くからのファンには、全力でオススメしたい1枚です。

正直、『MUTATION II - ERROR 500』を初めて聴いたときはそこまで良いとは思えなかったのに、2016年末に初めて『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』を聴いたときはすんなり入り込むことができた。単に聴くタイミングの良し悪しもあるでしょうけど、個人的には『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』のほうが少々とっつきやすい印象があります。とはいえ、それもMUTATIONというノイズメタルユニット限定でのお話ですので、初めてジンジャー・ワイルドハーツというアーティストの作品に触れるという方には本作はオススメしません。あくまであの偏屈なアーティストのことを理解できる方限定の勧め方ですので、誤解なきようお願いします。



▼MUTATION『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』
(amazon:国内盤CD
(PledgeMusic:配信音源

投稿: 2017 04 22 12:00 午前 [2013年の作品, Ginger Wildheart, Mutation] | 固定リンク

2017年3月20日 (月)

RED DRAGON CARTEL『RED DRAGON CARTEL』(2013)

HAREM SCAREM、オジー・オズボーンと続いたので(『TRIBUTE』は3月19日に紹介しようとは決めていましたが、その前にHAREM SCAREMを取り上げるというこの流れは意図的ではありませんでした)、今回はその2つが絶妙な形で合体したRED DRAGON CARTELを紹介したいと思います。

RED DRAGON CARTELはオジー・バンドの二代目ギタリスト、ジェイク・E・リーがBADLANDSの2ndアルバム『VOODOO HIGHWAY』(1991年)以来22年ぶりに本格始動させたバンドRED DRAGON CARTELの1stアルバム。日本では2013年12月、海外では2014年1月にリリースされています。アルバムではHAREM SCAREMのドラマー、ダレン・スミスが大半の楽曲でボーカルを務めていますが、4曲でゲストボーカルも採用。「Feeder」にはロビン・ザンダー(CHEAP TRICK)、「Wasted」にはポール・ディアーノ(元IRON MAIDEN)、「Big Mouth」にはマリア・ブリンク(IN THIS MOMENT)、「Redeem Me」にはサス・ジョーダンと男女/ジャンル問わずさまざまなシンガーがジェイクの楽曲を歌っています。

1曲目「Deceive」の冒頭、オジーの「Bark At The Moon」を彷彿とさせるカミソリギターリフに歓喜したHR/HMリスナーは非常に多いのではないでしょうか。僕も間違いなくそのひとりで、それにつづくダレンのハスキーなボーカル含め非常にカッコよくて「これは期待できる!」とすぐに確信。もちろんその確信に間違いはなく、曲によってはインダストリアル調のアレンジを含むものもありますが、基本的にはジェイクのキャリアを知っている人なら納得できるものばかりでした。しかもBADLANDSで傾倒したブルースロックではなく、オジー・バンド在籍時を思わせる楽曲やプレイも豊富で、「ようやくこっちの畑に戻ってきてくれた!」とアルバムを聴き進めるうちに頰が緩んでいったものです。

「Wasted」でのモダンなアレンジはどことなく最近のオジーにも通ずるものがあるし、「War Machine」なんて完全にBLACK SABBATHリスペクトなアレンジだし。そりゃそうだ、本作のエグゼクティヴ・プロデューサー&ミキサーはオジーの近作を手がけるケヴィン・チャーコなんだから。それにザックはオジーの代表作『BARK AT THE MOON』(1983年)、『THE ULTIMATE SIN』(1986年)のメインソングライターでもあるわけで、“オジーっぽさ”がゼロなわけない。ダレンがライブでもボーカルを務めていることから、この形態がバンドとしては正しいんだろうけど、アルバム制作時はそこまでパーマネントなものとしては考えてなかったから、こういう作品になったのかもしれないですね(そのダレンも一時、バンドを脱退していますし。ますますバンド感が薄いような)。

オジーやサバスが好き、特にジェイク時代が好きという人なら間違いなく気に入る1枚。オジーっぽい曲を女性ボーカルが歌うと……という興味深い試みも楽しめますし。バンドっぽさは本当に希薄だけど、HR/HMファンならジェイク・E・リーというアーティストの実験の場として素直に受け入れられるはずです。



▼RED DRAGON CARTEL『RED DRAGON CARTEL』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 03 20 12:00 午前 [2013年の作品, Badlands, Cheap Trick, Harem Scarem, Ozzy Osbourne, Red Dragon Cartel] | 固定リンク

2015年10月 7日 (水)

MEGADETH『SUPER COLLIDER』(2013)

ムステイン、エルフソン、クリス・ブロデック、ショーン・ドローヴァー編成では2作目にして最後のアルバム。再結成後はアルバムごとに編成が変わっていたけど、ここでようやく安定したかに見えたものの、後にクリスとショーンが脱退(後にAct Of Defianceを結成)。レーベルもUniversalに移籍して心機一転、かと思いきや……個人的には久しぶりの問題作という印象の1枚。

彼らの新作を聴くときは毎回それなりに高いハードルを設けるという非常に意地悪な聴き方をしているのだが、その中でも本作を初めて聴いたときにやるせなさといったら。ムステインのボーカルキーが(徐々に落ちつつあったが)全体的に低くなり、これまでだったらもっとカッコよくなっていたはずの1曲目「Kingmaker」も尻切れトンボ感強し。

続くタイトルトラックのポップソング感……ゴメンなさい、これにはさすがに拒否反応示した。その他の曲も演奏はそれなりに良いもののボーカルが低いキーでがなってるだけ。カントリー&スワンプの要素を取り入れた「The Blackest Crow」、ブルーステイストのイントロを持つ「Don't Turn Your Back...」みたいな遊び要素のみが悪目立ちしてしまい、本編最後をカバー曲(Thin Lizzyの「Cold Sweat」)で締めくくるという始末。

さらにボーナストラックと称して2曲水増し。この2曲のおかげで、さらにアルバムの印象が薄まるという……本作後にクリス&ショーンが脱退してWデイヴが残り、新たにキコ・ルーレイロ(G / Angra)、クリス・アドラー(ゲストDr / Lamb Of God)とアルバムを制作。本作が単なる“二度目の過渡期”であり、続く15thアルバム『Dystopia』で再び完全復活することを願いたい。



▼MEGADETH『SUPER COLLIDER』
(amazon:国内盤CD / 輸入盤CD

投稿: 2015 10 07 12:10 午前 [2013年の作品, Megadeth] | 固定リンク

2014年1月 1日 (水)

2013年総括

気が向いたので、すげえひさしぶりにこっちを更新してみようかと思います。なんか昨年末の12月1日で旧「とみぃの宮殿」がオープン15周年を迎えたようなので(といっても10年前に更新終了してますが)。

Facebookなどには1年のまとめ的なものを書いてたので、こちらにも公開することにしました。2013年のお気に入りアルバムを洋楽10枚(+次点10枚)、邦楽10枚(+α、さらに+次点10枚)、そして2013年気になったアイドルソング5曲です。

■洋楽10枚(順不同)
August Burns Red「Rescue & Restore」
Bring Me The Horizon「Sempiternal」
Carcass「Surgical Steel」
Deafheaven「Sunbather」
Delorean「Apar」
Erra「Augment」
Fuck Buttons「Slow Focus」
Kakkmaddafakka「Six Months Is A Long Time」
Manic Street Preachers「Rewind The Film」
Michael Monroe「Horns And Halos」
<次点>
Black Sabbath「13」
Daft Punk「Random Access Memories」
David Bowie「The Next Day」
Dregen「Dregen」
Jake Bugg「Shangri La」
Motorhead「Aftershock」
Mount Kimbie「Cold Spring Fault Less Youth」
Savages「Silence Yourself」
The Strypes「Snapshot」
Toro Y Moi「Anything In Return」

■邦楽10枚(順不同)
BRAHMAN「超克」
coldrain「The Revelation」
LUNA SEA「A WILL」
OGRE YOU ASSHOLE「confidential」
Pay money To my Pain「gene」
Scott & Reviers「スコットとリバース」
きのこ帝国「eureka」
でんぱ組.inc「WORLD WIDE DEMPA」
東京酒吐座「turnaround」
マキシマム ザ ホルモン「予襲復讐」
ももいろクローバーZ「5TH DIMENSION」
<次点>
THE BAWDIES「1-2-3」
BBQ CHICKENS「Broken Bubbles」
J「FREEDOM No.9」
THE PINBALLS「ONE EYED WILL」
sleepy.ab「neuron」
tricot「T H E」
水曜日のカンパネラ「羅生門」
竹達彩奈「apple symphony」
ドレスコーズ「バンド・デシネ」
ナノ「N」

■アイドルソング(上位5曲)
乃木坂46「君の名は希望」
Juice=Juice「イジワルしないで 抱きしめてよ」
モーニング娘。「ブレインストーミング」
アップアップガールズ(仮)「リスペクトーキョー」
AKB48「恋するフォーチュンクッキー」

あとからScott & Riversを入れてないことに気付き、急遽追加。ていいうか洋楽か邦楽かで一瞬迷ったのですが、本人たちがJ-POPと言っているので邦楽に+αしてます。

個人的には僕の2013年は洋楽がCARCASS、邦楽がPTP、アイドルソングが「君の名は希望」の1年でした。あとはMetallicaにインタビューしたこと(昨年11月中旬発売の「TV Bros」誌に掲載されたジェイムズ・ヘットフィールド&ラーズ・ウルリッヒへのインタビュー)。自分にとっての2013年はこれがすべてだったような気がします。

ということで、2014年はもっとちゃんとここも更新していこうと思います。今年もよろしくお願いいたします。

投稿: 2014 01 01 11:59 午後 [2013年の作品, 「1年のまとめ」] | 固定リンク

2013年9月25日 (水)

METALLICA『METALLICA: THROUGH THE NEVER』(2013)

この秋公開のMETALLICAによる一大エンタテインメントムービー『メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー』のサウンドトラック名義でリリースされる、ベストアルバム的内容のライブアルバム。映画はというと、下記のようなストーリー。

とある街でのMETALLICAのコンサートに使い走りとして雇われた青年トリップ(デイン・デハーン)が、とある“任務”を遂行する中でさまざまなトラブルに巻き込まれていく。その冒険とMETALLICAのライブが同時進行し、あるときには曲と出来事がリンクするという不思議なアクション&ロックムービー。IMAX 3Dによる迫力の映像は、ロックファンならずとも必見。日本では体験できない本場でのステージセット&演出を、この映画で疑似体験してほしい。

以下の収録曲解説は、ぜひ映画を観る際の参考にしてほしい。


M-1. The Ecstasy Of Gold
METALLICAのライブのオープニングでおなじみ、映画『続・夕陽のガンマン』のテーマソング。この曲が流れ始めたら、ライブ開始まであと少し!

M-2. Creeping Death
METALLICAのライブでは1曲目に演奏される機会の多い名曲中の名曲。曲中盤の「Die!」コールはぜひ映画館でもお忘れなく。

M-3. For Whom The Bell Tolls
『METALLICA(ブラック・アルバム)』以降に通ずるミドルヘヴィナンバー。イントロでのグルーヴィーなベースラインにも注目。

M-4. Fuel
1997年の迷作『RELOAD』から、今でも演奏される数少ない1曲。この曲の時点で映画館はライブ会場さながらの盛り上がりになるはず。

M-5. Ride The Lightning
1994年の2ndアルバム表題曲。映画ではアルバムジャケットを再現した、数万ボルトの電流を流す演出も。

M-6. One
METALLICAがオーバーグラウンドへと進出するきっかけとなった4th『...AND JUSTICE FOR ALL』収録の代表曲。曲後半の緊張感あふれるアレンジは圧巻。

M-7. The Memory Remains
原曲ではマリアンヌ・フェイスフルをフィーチャーしているものの、ライブでは観客が彼女のパートを大合唱。

M-8. Wherever I May Roam
名盤『METALLICA』からの1曲。映画では途中でカットされるが、サントラにはフルコーラス収録されてるのでご安心を。

M-9. Cyanide
現時点での最新作『DEATH MAGNETIC』から。映画ではジャケットをモチーフにした棺桶風スクリーンも見どころ。

M-10. ...And Justice For All
4thアルバムの表題曲。9分にわたる曲中、ジャケットに登場する女神像を組み立て最後に壊す流れにただただ感動。

M-11. Master Of Puppets
メタルファンの教科書的3rdアルバムの表題曲。映画では演奏シーンとクライマックスのバトルシーンが見事にリンク。

M-12. Battery
前述3rdアルバムのオープニング曲。ヤケクソ気味なノリと切れ味抜群のギターリフは、リリースから27年経った今も斬新。

M-13. Nothing Else Matter
メタリカが初めて挑戦した本格的なバラードナンバー。終盤の泣きメロギターソロはジェイムスによるもの。

M-14. Enter Sandman
『ブラック・アルバム』の冒頭を飾る超名曲。映画では曲終盤にとあるハプニングが発生。その一部始終を見逃すな!

M-15. Hit The Lights
30年前に発表されたデビューアルバム『KILL 'EM ALL』のオープニング曲。サマソニ幕張公演はこの曲からスタートしたのも記憶に新しい。

M-16. Orion
3rdアルバム終盤を彩る名インスト曲。ライブで披露される機会は少ないが、映画ではエンドロールとともにこの曲が完奏される。


※このレビューは同作リリース時に『TV BROS.』に掲載されものを一部加筆・修正して掲載しております。



▼METALLICA『METALLICA: THROUGH THE NEVER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2013 09 25 12:00 午前 [2013年の作品, Metallica] | 固定リンク