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カテゴリー「2013年の作品」の28件の記事

2021年8月 5日 (木)

BIFFY CLYRO『OPPOSITES』(2013)

2013年1月28日にリリースされたBIFFY CLYROの6thアルバム。日本盤は同年1月22日に先行発売。

バンド最大のヒット作となった5thアルバム『ONLY REVOLUTIONS』(2009年)から約3年2ヶ月ぶりに発表された今作は、初のCD2枚組/全20曲(デラックス盤は22曲)というボリューミーな内容。にもかかわらず全英1位を獲得し、「Black Chandelier」(全英14位)、「Biblical」(同70位)、「Opposite」(同49位)、「Victory Over The Sun」(同152位)というヒットシングルを続発させました。シングルはチャート的には小粒ですが、それでもロックが低迷しつつあった2010年代半ばにしては大健闘ではないでしょうか。

プロデュースは過去2作を手がけたガース・リチャードソン(RAGE AGAINST THE MACHINEMELVINSSKUNK ANANSIEなど)のほか、バンドもコ・プロデュースで名を連ねています。ミックスはこれまでのアンディ・ウォレスからライアン・ウィリアムス(ATREYU、THE BLACK DAHLIA MURDER、THE VANDALSなど)に交代。1曲(「The Fog」)のみマイク・“スパイク”・ステント(マドンナOASISKEANEなど)が手がけています。

各ディスクはそれぞれ『THE SAND AT THE CORE OF OUR BONES』(DISC 1)、『THE LAND AT THE END OF OUR TOES』(DISC 2)と韻を踏んだサブタイトルが付けられており、1枚1枚を独立したアルバムとして楽しむことも可能です。ちなみに本作、2枚のディスクに収録された20曲から厳選した14曲で構成されたCD1枚ものの編集版も用意されているので、購入する際はご注意を。

『THE SAND AT THE CORE OF OUR BONES』はゆらゆらとしたオープニングから一気にギアが入る「Different People」で幕開け。以降は「Black Chandelier」などいかにも彼ららしいポップ&キャッチーなミディアムナンバーで独特の世界観を構築していきます。前作で確立させたBIFFY CLYROらしい個性が見事な形で拡張されており、フォローアップ作としては文句なしと言えるのではないでしょうか。

一方で、DISC 2『THE LAND AT THE END OF OUR TOES』はヘヴィなリフを持つ「Stingin' Belle」から幕開け。オープニングで慄くものの、歌が入ればいつもどおりの彼ららしいポップさ全開なので、ご心配なく。また、このディスクのみならず全編を通して散りばめられたストリングスアレンジは、前作から引き続きデヴィッド・キャンベル(ベックの実父)が担当。特に今回は「Stingin' Belle」でバグパイク、「Spanish Radio」でブラスなどもフィーチャーされており、音的な広がりは前作以上ではないかと思っています。

2枚のディスクの違いを言葉にするのは難しいですが、1枚目よりも2枚目のほうが少しだけ先鋭的な気がするのですが、それも誤差範囲と言ってしまえばそれまでかな。2枚の異なるディスクというよりは、それぞれにストーリーを持たせた対となる兄弟的な2枚といったほうが正しいのかもしれません。

なお、本作のデラックス盤(デジタル版含む)には各ディスクにボーナストラックとして、それぞれのサブタイトルと同名のインストゥルメンタル曲を追加。どちらも1〜2分程度の小楽曲なので、エピローグ的なものと捉えてもらえれば。このインストが入るバージョンも余韻を作ってくれていいんですよね。

 


▼BIFFY CLYRO『OPPOSITES』
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2021年7月 6日 (火)

SKID ROW『UNITED WORLD REBELLION: CHAPTER ONE』(2013)

2013年4月16日にリリースされたSKID ROWのEP。日本盤未発売。

新作音源としては5thアルバム『REVOLUTIONS PER MINUTE』(2006年)から約7年ぶり。参加メンバーはジョニー・ソーリンガー(Vo)、デイヴ・スネイク・セイボ(G)、スコッティ・ヒル(G)、レイチェル・ボラン(B)、新加入のロブ・ハマースミス(Dr)。

本作は三部作の第1弾となる新録作品で、5曲のオリジナル曲と2曲のカバー曲で構成されています。『REVOLUTIONS PER MINUTE』がレイチェルのカラーが強く反映されたパンク/オルタナ路線で、新生SKID ROWのスタイルがいよいよ確立されたか……そう思わせておいて、7年後に発表された今作では先祖返りしているという(笑)。

そうなんです。ここで聴けるオリジナル曲の大半がメガヒットを記録したデビュー作『SKID ROW』(1989年)や、全米1位を獲得した2作目『SLAVE TO THE GRIND』(1991年)の延長線上にあるスタイルなのです。どちらかというと『SKID ROW』寄りのテイストなのかな、オープニングを飾る「Kings Of Demolition」といい、王道パワーバラード「This Is Killing Me」といい、古き良き時代のキャッチーなハードロックを思わせるテイストで、楽曲の出来自体も決して悪くない。ジョニーのボーカルも4作目『THICKSKIN』(2003年)ではあまり声域が広くないんだなと感じていたものの、ここではセバスチャン・バック(Vo)の影がチラつくくらいにまでパワフルな高音域ボーカルを聞かせてくれている。バズの影がチラつくのはどうかと思うものの、これはこれで古くからのファンはうれしいんじゃないかな。

ダークな「Get Up」や「Stitches」も『THICKSKIN』や『REVOLUTIONS PER MINUTE』のカラーとは異なる、明らかに90年代前半的なものだし。これを貶すのはもう、単にバズがいないというイメージだけで判断してしまっているんじゃないでしょうか。そう思わずにはいられないほど、初めて聴いたときは「続編はよ!」ってワクワクしたよなあ。

気になるカバーですが、E・Z・Oの「Fire Fire」とJUDAS PRIEST「United」。この選曲センスもバズ時代に回帰した感があるし、かつ仕上がりも期待値以上。特に「Fire Fire」はジョニーのボーカルにMASAKIが憑依していて、本家にも匹敵する好演だと思いますよ。

過去2作はなんだったんだ……と疑問を呈したくなりますが、これはこれでいいんじゃないでしょうか。SKID ROWがSKID ROWであることを選んだわけですからね。

 


▼SKID ROW『UNITED WORLD REBELLION: CHAPTER ONE』
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2021年6月28日 (月)

LEPROUS『COAL』(2013)

2013年5月20日にリリースされたLEPROUSの3rdアルバム。日本盤は同年10月2日発売。

EMPERORイーサーン(Vo, G)の義理の弟にあたるエイナル・スーベルグ(Vo, Syn)が在籍しているつながりから、2011年のイーサーン初来日公演でバックバンドを務めたLEPROUS。この時点ではLEPROUSは2枚のアルバムを発表していましたが、どちらも日本未発売。2013年のイーサーン再来日に合わせて、本作にてついに日本デビューを飾ることになります。

僕もこのタイミングに初めてLEPROUSの音に触れたのですが、「なるほど、イーサーンのソロ作品にも通ずる聴きごたえのあるアヴァンギャルドなプログミュージックだな」という印象を受けたことをよく覚えています。エクストリームミュージックの範疇にあるサウンドで、メタリックな質感はあるもののヘヴィメタルそのものではなく、かといってかつてのプログレッシヴロックとも質感が異なる。要所要所で独特な変態性(褒め言葉)が感じられ、それがついついクセになって、気づいたら何度もリピートしている。そんな中毒性を持った不思議な1枚なんです。

全8曲(日本盤ボーナストラック除く)で約56分、7〜9分台の長尺曲が大半を占める構成はかつてのプログレそのものなのですが、オープニングトラック「Foe」で見せる特異性、続く「Chronic」でのオルタナロックとエクストリームミュージックの融合、モダンメタルとプログレッシヴロックがバランスよくミックスされたタイトルトラック「Coal」から間髪入れずに続く浮遊感の強い「The Cloak」という曲構成など、とにかく“アルバム・オリエンテッド”なイメージが強い作風からは、目の前の音とじっくり腰を据えて向き合うべきだという主張が伝わってきます。

ギターに比重を置きすぎないアレンジであったり、「The Valley」で聴けるDjent的なリズム遊びや音の隙間を効果的に用いたアンサンブル、“これぞ北欧”と言いたくなるほど透明感の強いエイナルのボーカルワークなど、USやUKの同世代プログバンドとは一線を画する存在感は、すでにこの時点で完成されていたんだなと、久しぶりに聴き返して強く実感しました。タイプは異なるけど、現在の立ち位置含めOPETHTOOLあたりにもっとも近い存在なんじゃないでしょうか。

なお、本作のラストを飾る超大作「Contaminate Me」には盟友イーサーンがゲストボーカルで参加。楽曲自体もっともエクストリームミュージック色が強く、その中で彼らしいスクリームを楽しむことができます。さらにイーサーンは「Chronic」でストリングスのアレンジも手がけており、どのようにしてLEPROUSをフックアップしようかという当時の良好な関係が伺えます。

2021年8月27日には待望のニューアルバム『APHELION』のリリースも控えています。新境地を打ち出しながらも好評を博した前作『PITFALLS』(2019年)を超える傑作になるのか、今から発売が楽しみでなりません。

 


▼LEPROUS『COAL』
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2020年10月24日 (土)

ERRA『AUGMENT』(2013)

2013年10月29日にリリースされたERRAの2ndアルバム。日本盤未発売。

ERRAは2009年に結成されたアラバマ州バーミングハム出身の5人組バンド。2011年の1stアルバム『IMPULSE』が一部で話題となり、当時は日本盤もリリースされたほど。とはいえ、僕は同作の頃はスルーしてしまっており、この2作目で初めてそのサウンドに触れ、ハマったのでした。

当時のメンバーはギャリソン・リー(Unclean Vo)、ジェシー・キャッシュ(G, B, Clean Vo)、アラン・リグドン(G, B)、アレックス・バルー(Dr)の4人。前任ベーシストのアダム・ヒックスが2012年に脱退したことを受け、レコーディングはギタリストの2人が兼任したようです。なお、ギャリソンとアランは本作リリース後の2014年に脱退しています。

プロデューサーは前作から引き続きブライアン・フッド(Crystal LakeTHE DEVIL WEARS PRADA、MEMPHIS MAY FIREなど)が担当。軸はメタルコアなのですが、ギターのリフワークやリズムの変拍子などジェントの流れにあるスタイルで、曲によってはプログレメタル的なテイストも見え隠れします。基本的にはアンクリーンボーカルのスクリームで押し、サビで壮大なメロディをクリーンボーカルが歌うという形。これはほかのメタルコア/ジェント系と一緒なのですが、クリーンパートのメロディが非常に練られており、サビに入った瞬間に目の前が開けるような錯覚に陥る……この感覚が非常に気持ちよく、凡百のメタルコア/ジェントメタルバンドとは一線を画する存在であることがご理解いただけるはずです。

リフワークもただジェント的な刻みをするのみならず、メロディアスな単音弾きを多用したリフも豊富で、これが楽曲の色付けが多彩さを増している。この2つを巧みに使い分けることで、ヘヴィさとキャッチーさをバランスよく備えることに成功。インストゥルメタルのみに耳を傾けていてもまったく飽きることがないのは、非常に大きな個性と言えるのではないでしょうか。

かと思えば、メロディックハードコア的なカラーも内包しており、そういった顔が突如現れてリスナーをドキリとさせる。こいつら、相当な曲者だな(笑)。

まあ、そうはいってもメインになるのは上記に挙げたようなジェント的側面と、壮大さを伴うプログレメタル的な色合いかな。PERIPHERYとも異なるそのカラーは2作目とは思えないほどの貫禄があるし、一度聴いたらクセになる要素満載なんですよね。購入以来、久しぶりに引っ張り出して聴いてみたけど、その魅力はやっぱり色褪せないですわ。

そういった要素がバンドを良き方向へと導き、結果本作は初の全米チャート入り(最高117位)を記録。次作『DRIFT』(2016年)からは名門Sumerian Recordsへと移籍しましたが、2020年夏にはUNFDに移籍し新曲「Snowblood」をリリースしたばかり。こちらもクセになる要素満載で、来年初頭あたりにリリースされるであろう5thアルバムへの期待も高まるばかりです。

 


▼ERRA『AUGMENT』
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2020年8月25日 (火)

ALICE IN CHAINS『THE DEVIL PUT DINOSAURS HERE』(2013)

2013年5月下旬にリリースされたALICE IN CHAINS通算5作目のオリジナルアルバム。日本盤は同年6月中旬に発売されました。

レイン・ステイリー(Vo)亡きあと、新たにウィリアム・デュヴァールをフロントマンに迎え2005年に再始動したALICE IN CHAINS。新編成によるアルバム『BLACK GIVES WAY TO BLUE』(2009年)は全米5位、50万枚を超えるヒットとなり、再結成は好意的に受け入れられました。

それから約4年を経て届けられた、新編成2作目のアルバム。再びニック・ラスクリネクツ(FOO FIGHTERSMASTODONSTONE SOURなど)をプロデューサーに迎え、見事に前作を上回る完成度の良作を届けてくれました。

オープニングを飾る「Hollow」のヘヴィさ、ボーカルパートに入ると聞こえてくる不穏なハーモニー……そう、どこからどう聴いてもALICE IN CHAINSの新曲に他なりません。続く2曲目「Pretty Done」も同系統のスタイルながらも、決して同じような作風にならないような工夫が施されています。それは3曲目の「Stone」も同様。

で、ここで気づくのです。あ、ジェリー・カントレル(Vo, G)のソロ(リード)ボーカルは聞こえてくるけど、レイン・ステイリーの声はもう聞こえてこないんだ、と。当たり前のことですが、前作を聴いたときは復活したこと、再び新曲、新作が聴けたことがうれしすぎて、そこまで気が回らなかったんですね。だけど、2作目ともなるとさすがに気づくわけですよ、2度と戻ってこない宝に。

あのアクの強さがないぶん、全12曲で67分という長尺作品に引きつけるには相当な技量がないと難しいと思います。しかし、結果はどうでしょう? どの曲にもフックが用意されていて、1枚のロックアルバムとしては確かに高品質で最後まで安心して楽しめる。だけど、もう“あの”ALICE IN CHAINSは戻ってこない……そこだけが引っかかってしまうのです。

ジェリーがメインとなる楽曲ばかりに目が(耳が)行きがちですが、ウィリアムも良い声しているんですよね。ただ、どうしても「型」にこだわりすぎてしまい、新しい編成を上手に使いこなせていない印象を受ける。欠点を挙げるとすれば、そこが一番大きいのかな。レインの不在については今さらどうにもなりませんし、もしそこだけがずっと引っかかるのであれば新譜なんて聴かずに90年代のアルバムだけを聴いていればいいわけですから……。

前作にかけられた魔法がこのアルバムで解けてしまうものの、バンドはさらに新たな魔法を手に入れる。それが次作であり現編成での最高傑作『RAINIER FOG』(2018年)になるわけですが、そこに到達するまであと5年待たねばならないわけです。

とはいいながら、本作は90年代のキャリアに接近する全米2位という好記録を樹立。売上枚数は50万枚に満たなかったものの、ちゃんとリスナーから支持されていたことが伺えます。

 


▼ALICE IN CHAINS『THE DEVIL PUT DINOSAURS HERE』
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2020年7月15日 (水)

TRIVIUM『VENGEANCE FALLS』(2013)

2013年10月にリリースされたTRIVIUMの6thアルバム。日本盤は海外より1週間先行で発売されました。

前作『IN WAVES』(2011年)で初の本格的変化に挑んだTRIVIUM。そのモダン化した楽曲群には賛否両論ありましたが、個人的には好印象を受けましたし、なにより(タイミングもよかったとはいえ)全米13位という初のTOP20入り(現時点での最高位)を果たした事実がすべてを物語っていたように思います。

そんな新機軸を経て、彼らが2年ぶりに届けた新作。プロデュースを手掛けたのが、同業者でありモダンメタル界の先輩であるDISTURBEDのデヴィッド・ドレイマン(Vo)という事実に、まず驚かされるのではないでしょうか。エンジニアにはアンディ・スニープ、ミックスにはコリン・リチャードソンというメタル界の優秀なブレインを迎えて完成させたそのサウンドは、前作ほどの新機軸は感じられず、むしろ“守り”に走ったかな?という印象を最初に受けます。

楽器隊が一丸となるアンサンブルは『IN WAVES』でも見受けられましたが、ここで実践されているのはむしろDISTURBEDが得意とするそれに近いような気がしませんか? つまり、「前作でのモダンメタル路線を通過しつつも、楽曲自体はそれ以前のスタイル、かつそれらをDISTURBED風味で味付け」というような。それって穿った見方をしすぎでしょうか。

確かに、マシュー・キイチ・ヒーフィー(Vo, G)が歌えばどれもTRIVIUMらしくなります。このアルバムだって、首尾一貫TRIVIUMらしさが貫かれていると思いますが、前作がトップギアを一気に入れて確変!みたいな印象だっただけに、今回はちょっと印象が薄く感じられてしまうのです。

あと、どの曲もクオリティは高いものの、突出した1曲(いわゆるキラーチューンやアンセム)が見当たらないというのも、本作の印象をぼかしてしまう一因になっているのかな。オープニングを飾る「Brave This Storm」やスラッシーな味付けをした「No Way To Heal」あたりはそれにもっとも近いと思うものの、最後まで聴き終えてもっとも印象に残ったのがMISFITSのカバー「Skulls... We Are 138」と、日本盤のみ収録のR.E.M.カバー「Losing My Religion」だという。後者に関しては決してベストカバーとは言い切れないものも、やはり楽曲の強さが優ってしまい、否が応でも耳に残ってしまう。う〜ん、勿体ない。

1枚のメタルアルバムとしては非常に高品質で、水準以上の完成度(一般的に90点以上)だと思いますが、TRIVIUMのアルバムとしては平均点的内容(辛口だけど70〜80点くらい)かな。前作からの勢いで全米15位という好記録を残していますが、本作は続く『SILENCE IN THE SNOW』(2015年)以降の、特に『THE SIN AND THE SENTENCE』(2017年)から始まる充実期への過渡期的1枚かもしれません。

 


▼TRIVIUM『VENGEANCE FALLS』
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2020年7月13日 (月)

グリーン・インフェルノ(2013)

あらすじ
過激な慈善活動をしている学生グループは、資源を狙った企業の森林伐採により絶滅の危機に瀕しているヤハ族を救おうと現地へ乗り込む。しかし、彼らの乗った飛行機はエンジントラブルを起こし、熱帯雨林に墜落。生き残った学生たちは助けを求めるのだが、そこにいたヤハ族とは、人間を食べる習慣をもつ食人族だった…。捕らわれた彼は一人、また一人と喰われていく―。

『ホステル』シリーズでおなじみ、イーライ・ロス監督による『食人族』(1980年)モチーフのホラー映画。モチーフというか、現代的にリブートしたと言ったほうが正しい仕上がりかもしれません。

『食人族』がフェイク・ドキュメンタリー的作風だったのに対し、本作は完全にホラー映画としての体で進行。先住民族までの出会いもネットのストリーミング中継を使った「熱帯雨林破壊に対する抗議運動」→拘束→釈放され飛行機で離脱→エンジントラブルで墜落、と完全に『食人族』とは異なる流れ。ここまではホラー要素皆無ですが、先住民族のヤハ族と出会ってから恐怖が一気に加速していきます。

以降、かなり直接的なエグい表現が出てくるので、改行&改ページしておきます。グロ耐性のある方のみ「続きを読む」を押してください。











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2020年5月 4日 (月)

BON JOVI『WHAT ABOUT NOW』(2013)

2013年3月中旬に発表されたBON JOVIの12thアルバム。

前作『THE CIRCLE』(2009年)から3年4ヶ月ぶり、新曲を含むベストアルバム『GREATEST HITS』(2010年)から数えても2年4ヶ月と、現代においては比較的短いスパンで届けられた本作。10thアルバム『LOST HIGHWAY』(2007年)から続く記録を更新し、連続3作/通算5作全米1位という快挙を成し遂げました。しかし、セールス的には世の中の流れに沿うように下降気味で、アメリカでは初めてゴールドディスク(50万枚以上)獲得ならず、世界的にもトータル150万枚と前作から半減する結果となりました。

リッチー・サンボラ(G, Vo)曰く「ロックンロールに回帰した、至るところに大合唱できるようなコーラスがあって“これぞBON JOVI”って内容」だった前作『THE CIRCLE』は、全体のトーンが暗めで落ち着いた大人のハードロックを展開したBON JOVIでしたが、続く今作では前作のテイストを少し残しつつも9thアルバム『HAVE A NICE DAY』(2005年)や『LOST HIGHWAY』で顕著だった「レイドバックしたカントリーロックテイスト」が復活。全体の空気感もポジティブさに満ちたもので、『LOST HIGHWAY』がお気に入りというリスナー(そう多くないかもしれませんが)には好意的に受け入れられる内容かと思います。

でも、このテイストってBON JOVIというよりもジョン・ボン・ジョヴィ(Vo)個人のものなんじゃないか?という気もしていまして。実際、ソングライティングのクレジットに目をやると、ジョン単独およびジョンと外部ライターとの共作による楽曲が全12曲中7曲と過半数を占め、海外デラックス盤だと全15曲中10曲がジョン単独制作に近い楽曲(日本盤は全17曲と最多収録曲数なのですが、さらに1曲増えて11曲がジョン単独制作に近い楽曲)になるわけです。これ、現時点での最新作『THE HOUSE IS NOT FOR SALE』(2016年)とほぼ同じ流れなんですよね。そう考えるとこの2作って、いろいろ共通点や似ているポイントも多くないですか?

リッチーとの共作(およびジョン&リッチー+外部ライター)曲が少ないのは、リッチーのアルコール依存症治療も大きく影響しているのでしょうか(2011年の来日時はそのため不参加)。また、本作の完成前後にリッチーが3rdソロアルバム『AFTERMATH OF LOWDOWN』(2012年)に取り掛かったことも大きかったのかな。のちにリッチーはこのアルバムの楽曲に対して「もっと練り込むべきだった。もうひと手間かけるべきだったのでは」と疑問を呈していましたが、バンドのアルバムとして考えるとその声も頷ける気がします(自身がソングライティングに思うように参加できなかったからこその、外側からの貴重な意見ですよね)。

そういう意味でも、本作はジョンのソロ色が強く表出し始めた最初のアルバムであり、結果リッチーはバンドを離れることになってしまうわけです。もちろん、それだけが理由ではないと思いますが。

そんなネガティブな要素を孕む本作。確かにザッと聴く限りでは突出した1曲が少ない、全体像がぼんやりとした印象のアルバムかもしれません。また、特に日本盤は全17曲と無駄に曲数が多いのも災いして、なかなか通して聴く気の起きない1枚でもあるんですよね(苦笑)。

でも、リリースから7年を経た今聴くと、(『THE HOUSE IS NOT FOR SALE』を通過したせいもあってか)意外と楽しめる1枚なんですよね。ボーナストラックを除く12曲入りアルバムとして接すれば、そこまで悪い印象は受けないし、確かにジョンのソロ色は強いけど、しっかりリッチーの個性も感じられるし、バンドとしてのアンサンブルもしっかり“らしさ”を主張している。ここにキラーチューンが1曲含まれていたら、もうちょっと高く評価されていた1枚なのかなと、改めて思いました。

あと、デラックス盤のボーナストラックにバンド以外の楽曲(ジョンやリッチーのソロ名義による楽曲)を入れるのは如何なものかと思いました。この行為も本作に対するネガティブイメージを後押ししているような気がしてなりません。だって、AEROSMITHスティーヴン・タイラージョー・ペリーがソロで制作した楽曲は収録されていないし、ストーンズだってミックキースはバンドとソロの間に一線を引いている。そりゃバンド崩壊するわ……。

リッチーファンのは後味の悪い1枚かもしれませんが、80〜90年代のスタイルにとらわれないBON JOVIのリスナーなら肩の力を抜いて楽しめる良作だと思います。散々ひどいこと書いてきましたが(苦笑)、まずは難しいこと考えずに触れてみてはどうでしょう。

 


▼BON JOVI『WHAT ABOUT NOW』
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2020年2月23日 (日)

BLACK SABBATH『13』(2013)

BLACK SABBATHが2013年6月に発表した、通算19作目にして最後のオリジナルアルバム。

オジー・オズボーン(Vo)、トニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)のオリジナルメンバー3人が揃ってのレコーディングは、1998年リリースのライブアルバム『REUNION』に収められたスタジオ新録曲「Psycho Man」「Selling My Soul」以来15年ぶり、フルアルバムとしては1978年の8thアルバム『NEVER SAY DIE!』以来実に35年ぶり。残念ながらビル・ワード(Dr)は不参加となりましたが(そもそも「Psycho Man」「Selling My Soul」もクレジットこそされているものの、実際のレコーディングはリズムマシーンを使用したものでした)、代わりにRAGE AGAINST THE MACHINEのブラッド・ウィルク(Dr)が参加しています。

プロデュースを手がけたのはリック・ルービン(RED HOT CHILI PEPPERSLINKIN PARKMETALLICASLAYERなど)。その組み合わせかぁ……とうれしさ半分、残念さ半分でしたが、実際に完成したアルバムは“オジー・サバス”の良き時代を40年後に見事に復活させた、非常に“らしい”1枚に仕上がっていると思います。

本作は全8曲で構成されたスタンダード仕様と、ボーナストラック3曲を加えたCD 2枚組のデラックス仕様の2形態を用意。スタンダード盤が8曲と昨今の作品としてはボリューム的に弱い印象を受けますが、実際には1曲1曲が長尺なものばかり(4〜5分台が3曲、7分が3曲、8分台が2曲)なので、トータル約54分と満足のいくボリュームかと言えます。

「End Of The Beginning」「God Is Dead?」と長尺のリードトラック2曲が続くオープニングからして、“あのオジー・サバスが戻ってきた!”感の強いもので、特に初期4作の彼らをなぞったリフ、アレンジ、メロディは新しさこそ皆無ながらも、オジーらしさとトニーらしさ(もちろんギーザーらしさも)が見事にミックスされた“ナウなサバス”に仕上げられているんじゃないでしょうか。

続く「Loner」もそれらしい1曲ですし、冒頭にオジーの笑い声がフィーチャーされたサイケデリックなアコースティックナンバー「Zeigeist」も2ndアルバム『PARANOID』(1970年)期を思わせるテイスト。後半の「Age Of Reason」もトニーらしいギターリフを楽しめるし、「Live Forever」も冒頭の一音(というか、バンドが一斉に出す音)からしてサバスそのもの(途中からの展開含め、らしさ全開)。全8曲、比較的ドゥーミーなミドル/スローナンバーばかりで構築されているため、若干気怠く感じてしまうかもしれませんが、好きな人にはたまらない流れなんじゃないでしょうか。

一方、DISC 2にはオジーのソロ作に比較的近いアップテンポな「Methademic」や、グルーヴィーなリフを持つ「Pariah」みたいに、アルバム本編に入れたらフックとなるような曲が用意されている。あれ、なんでこっちを本編に入れなかったの?と不思議に感じてしまうほど、曲の出来は悪くない。きっと、プロデューサーが初期サバスにこだわりすぎた結果、こういった楽曲はボーナストラックに回されてしまったんでしょうかね。日本盤ボーナストラックとして用意されたアップチューン「Naivete In Black」も然り。ああ、勿体ない。

最初の8曲だけ聴いたら「ああ、これで最後なの……なんだか歯切れ悪い最後だな」と消化不良で終わりそうですが、「Methademic」や「Pariah」「Naivete In Black」みたいな曲のおかげでなんとか気持ちを持ち返すことができた。これはもう、プロデューサー(と、その意見に従ったバンド側)の采配ミスですね、完全に。

アルバム本編から長尺曲をひとつ間引いて、ボーナストラック扱いの4曲から2曲付け加えることで、もうちょっと完成度の高い“スワン・ソング”が生まれたんじゃないかな……1つひとつのパーツが素晴らしいだけに、そこだけが残念でなりません。

 


▼BLACK SABBATH『13』
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2020年1月11日 (土)

NINE INCH NAILS『HESITATION MARKS』(2013)

2013年9月初頭にリリースされた、NINE INCH NAILS通算8作目のオリジナルアルバム。

前作『THE SLIP』(2008年)を携えたワールドツアーの終了(2009年秋)をもって活動を終了することを発表。以降は妻とのユニットHOW TO DESTROY ANGELS、アッティカス・ロスとタッグを組んで映画『ソーシャル・ネットワーク』のサウンドトラックなどを手掛けるにとどまりました。もちろん、その間にはNIN名義での新曲「Theme From TESTUO: The Bullet Man」を映画『鉄男 THE BULLET MAN』(2010年)のために書き下ろしたり、1stアルバム『PRETTY HATE MACHINE』(1989年)のリマスター盤発表(2010年)、U2の名盤『ACHTUNG BABY』(1991年)のトリビュートアルバム『AHK-toong BAY-bi Covered』(2011年)に「Zoo Station」のカバーを提供したりなどの動きもあり、完全に“終わった”わけではないことを匂わせ続けました。

そして2013年に入り、ついに活動再開を宣言。ニューアルバム発表前の7月末には『FUJI ROCK FESTIVAL '13』の初日ヘッドライナーとして4年ぶりの再来日も実現しました。このライブはネット中継もされたので、現地に行けなかったけど中継で観たというファンも少なくなかったはずです。僕は幸い現地で観ることができたのですが、2009年に続いてまた雷雨という……(苦笑)。しかし、いきなり未発表の新曲「Copy Of A」から始まり、ミニマルにリアレンジされた「Sanctified」、そして直前に配信リリースされた先行シングル「Came Back Haunted」という冒頭3曲の流れに(その演出含め)圧倒されたことを、今でもよく覚えています。当日のライブ音源はその後、オフィシャルサイトを通じて無料配信されたので、こちらで耳にしたというリスナーも少なくないです。

結局このフジロックでは、アルバムリリース1ヶ月前に「Copy Of A」「Came Back Haunted」「Find My Way」という3つの新曲を聴くことができましたが、いざ届けられたアルバムは想定の範囲内であると同時に、事前の想像を超える内容という構成でした。

まず、「想定の範囲内」というのは、「Copy Of A」や「Came Back Haunted」から想像できた路線であるということ。“らしさ”を残しつつも、よりミニマムな方向へとシフトしていくんだろうなという予想にかなり近い作風だったと思います。それゆえに、聴き方によっては淡白に感じられるかもしれません。

で、もうひとつの「事前の想像を超える」というのは、ブラックミュージック的解釈のアレンジを持つ楽曲が多い点。ファンクミュージックからの影響は過去数作にも散りばめられていましたが、今作におけるそれは直接的なものではなく70年代末〜80年代のニューウェイヴが持っていたブラックミュージックの色合いが強くにじみ出ているんじゃないか。そんな印象を受けました。

そういった意味では、先のミニマムかつシンプルな作風と相まって、NINの作品の中でもかなり聴きやすい1枚と言えるでしょう。初心者向けという点においては、『WITH TEETH』(2005年)にも近いかなと。しかし、作品の方向性としては実は傑作『THE FRAGILE』(1999年)に似ている……そんな「意図的に“らしさ”に照準を合わせた」ような作品なのかな。結局、この路線を軸にのちのEP三部作(『NOT THE ACTUAL EVENTS』『ADD VIOLENCE』『BAD WITCH』)も制作されているような印象を受けますし。

安心感は与えてくれるものの、90年代に受けたあの衝撃はもはや過去のもの。どこに焦点を置いて語るかによって、評価が大きく二分する1枚かもしれませんね。

 


▼NINE INCH NAILS『HESITATION MARKS』
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