カテゴリー「2014年の作品」の46件の記事

2024年8月11日 (日)

THE SMASHING PUMPKINS『MONUMENTS TO AN ELEGY』(2014)

2014年12月9日にリリースされたTHE SMASHING PUMPKINSの9thアルバム。日本盤は翌2015年2月25日発売。

前作『OCEANIA』(2012年)から約2年半ぶりの新作。再結成以降、Warner(『ZEITGEIST』)〜EMI(『OCEANIA』)とアルバムごとに移籍を繰り返しているスマパン。それは今作も同様で、新たにBMGと契約(日本では新たにソニーからリリース)。ニコール・フィオレンティーノ(B)、マイク・バーン(Dr)と新メンバーが相次いで脱退する中、ビリー・コーガン(Vo, G)はジェフ・シュローダー(G)という再結成後の新たな右腕に、ゲストドラマーとしてMÖTLEY CRÜEトミー・リーを迎えて制作に取り組みます。

全9曲、大半の楽曲が4分に満たないコンパクトな構成で、トータル32分強という彼らのオリジナルアルバムとしてはもっとも短尺。その後に訪れるサブスク中心の音楽シーンを予兆するような内容と言えなくもありません。また、楽曲の作風自体も前作『OCEANIA』で確立した“新生スマパン”らしさの延長線上と言えるものではなく、キャッチーなオルタナロックという装いの楽曲が中心。どこか『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995年)前後の作風を彷彿とさせるものがあるも、かといって焼き直しというわけでもない。もちろん、聴きやすさという点においては前作にも負けず劣らずの仕上がりだと思います。

確かに、前作は名手ジミー・チェンバレンの後釜としてハタチそこそこの若手ドラマーを迎えたことで、リズム面に関しては若干地味だったのは否めません。そこを考慮して、今回は80'sスタジアムロックの象徴といえるMÖTLEY CRÜEのメンバーを迎えたのだとしたら、なるほどと言わざるを得ません。実際、リズム面に関しては前作よりも強調されている印象がありますし、そのノリのよさや軽やかさはトミーのドラミングによるものが大きいと思います。

また、サイケ色が強めに出ていた前作と比較すると、今作はニューウェイヴ的な色合いが強い。それはアレンジやサウンドメイクに顕著で、過去の『ADORE』(1998年)のようなゴシックテイストとはまた異なるものでもある。そう、ダークさよりも陽の印象が強い質感なんですよね。『ZEITGEIST』はビリー&ジミーの2人が中心となって作り上げたものでしたが、今作もビリー&ジェフの2人が中心と同じ傾向。しかし、そこにトミー・リーといよ陽の塊のような存在が加わることでこの軽やかさが生まれたのだとしたら、そのコラボレーションは大成功だったと言えるでしょう。ただ、バンドの新作というよりはスピンアウト的な実験作という印象も否めないので、個人的には評価が難しいところです。

個人的には前作の方向性がツボで、ここからどんな方向へと進化していくのかと楽しみにしていたのですが、結果は短命に終わってしまったため、また新たな形で仕切り直すことに。バンドって難しいですね。

 


▼THE SMASHING PUMPKINS『MONUMENTS TO AN ELEGY』
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2024年4月30日 (火)

V.A.『NASHVILLE OUTLAWS: A TRIBUTE TO MÖTLEY CRÜE』(2014)

2014年8月19日にリリースされた、カントリー系アーティストによるMÖTLEY CRÜEトリビュートアルバム。日本盤未発売。

かのテイラー・スウィフトを輩出したナッシュビルのカントリー系レーベルBig Machine Recordsが企画した本作。そのテイラーを中心に、当時はカントリーミュージックもロックやハードロックを通過したオルタナティヴなものが増え始めていた時期でもあり、本作はそうした若い世代を中心に、カントリーとクラシックロック/ハードロックのクロスオーバーを目指して制作されたようです。

アルバムにはRASCAL FLATTS、FLORIDA GEORGIA LINE、リアン・ライムス、ジャスティン・ムーア、BIG & RICH、クレア・ボウエン&サム・パラディオ(2人とも俳優で、ドラマ『ナッシュビル カントリーミュージックの聖地』出演)、ELI YOUNG BAND、ローレン・ジェンキンス、THE CADILLAC THREE、THE MAVERICKS、ブラントリー・ギルバート、グレッチェン・ウィルソン、ダリアス・ラッカー(HOOTIE & THE BLOWFISHのフロントマン)と、カントリーに限定せずその周辺で活躍するアーティストが多数集結。また、ポップパンクバンドHEY MONDAYのキャサディー・ポープ(Vo)、ニューメタルバンドSTAINDのアーロン・ルイス(彼はソロではカントリーにチャレンジ)といった変わり種も名を連ねているほか、CHEAP TRICKのロビン・ザンダー(Vo)や、本家からヴィンス・ニールもゲスト参加しています。

アルバムはRASCAL FLATTSによる「Kickstart My Heart」からスタート。「えっ、これカントリー?」って疑問が生じそうサウンドメイクは、モロにハードロック。本家ほどのドギツさこそないものの、ヘアメタルバンドのカバーと言われても通用しそうな仕上がりです。続くFLORIDA GEORGIA LINE「If I Die Tomorrow」もダウンチューニングしたディストーションギターを使用していることから、ハードロック的側面が強く打ち出されている。その一方で、マンドリンのようなアコースティック楽器を取り入れることで、カントリーらしさもしっかり漂わせたアレンジに「なるほど」と納得。この2曲はHR/HMリスナーも入っていきやすいのではないでしょうか。

リアン・ライムス「Smokin' In The Boys Room」は、原曲がもともとカバーということもあって、どうとでも料理しようがありますよね。かなりレイドバックしたアレンジで、ここでようやく本作がカントリーミュージックによるトリビュートだと強く認識し始めます。ジャスティン・ムーア「Home Sweet Home」にはヴィンス・ニールがゲスト参加しており、原曲のダイナミックさを後退させたスモーキー&ソウルフルな仕上がり。キャサディー・ポープ&ロビン・ザンダー「The Animal In Me」はカントリーというよりも、ロック系アーティストによる普通のカバーといった印象かな。

アーロン・ルイス「Afraid」は原曲を一度解体して再構築した、これぞカバーと呼べるような1曲。歌詞のみ一緒といった印象で、言われないと同じ曲だと気づかないのではないでしょうか。BIG & RICH「Same Ol' Situation (S.O.S.)」も同様のテイストで、テンポ感やコード感を変えることで王道カントリー色を強めることに成功しています(ただ、こちらはサビになってようやく「ああ、あの曲か」と気づくのでは)。

クレア・ボウエン&サム・パラディオという俳優さん2人によるカバー「Without You」は、原曲のイメージを残しつつアーシーにカバー。ELI YOUNG BAND「Don't Go Away Mad (Just Go Away)」は原曲が持っていたロッド・スチュアート(というかFACES)色をさらに枯れさせるとこうなるかな、な印象。ローレン・ジェンキンス「Looks That Kill」は原曲の邪悪さ皆無の、レイドバック感満載の良質なカバー。THE CADILLAC THREE「Live Wire」は原曲の印象的なキメフレーズは残しつつもテンポダウンし、スライドギターを取り入れることで滑らかさが強調されています。THE MAVERICKS「Dr. Feelgood」はチカーノミュージック的テイストを強めることで、原曲とは別の意味でのノリのよさが際立つ仕上がりです。

ブラントリー・ギルバート「Girls, Girls, Girls」は原曲に沿ったアレンジ/サウンドメイクで、1オクターブ下で歌うことで“らしさ”を表現。グレッチェン・ウィルソン「Wild Side」は“もしもZZ TOPがMÖTLEY CRÜEをカバーして、女性ボーカルで表現したら?”というお題で制作されたような、なかなか面白な1曲。ダリアス・ラッカー「Time For Change」は「HOOTIE & THE BLOWFISHにこういう曲、ありそうだよね?」って仕上がりで、全然アリ。

以上、全15曲。普段HR/HMしか聴かないというハードコアな方々には少々厳しいかもしれませんが、1枚のロック/ポップスのコンピとしては比較的楽しめる内容ではないでしょうか。リリース当時、結構な頻度でリピートした記憶がありますし、久しぶりに引っ張り出して聴いてみてもその印象は変わることはありませんでした。MÖTLEY CRÜEファンのためのものよりも、MÖTLEY CRÜEをお題にしたカントリー系コンピとしてフラットに接するほうがより本質を掴めるかもしれません。

本作はリリース当時、Billboard 200(アルバムチャート)で最高5位、同Top Country Albumsで2位を記録。なお、リリースから5年後の2019年3月22日には「Home Sweet Home」のシングルエディットとライブバージョン(ともにジャスティン・ムーアのもの)を追加したExtended Editionも配信されています。

 


▼V.A.『NASHVILLE OUTLAWS: A TRIBUTE TO MÖTLEY CRÜE』
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2024年4月 6日 (土)

ACCEPT『BLIND RAGE』(2014)

2014年8月15日にリリースされたACCEPTの14thアルバム。日本盤は同年8月13日発売。

前作『STALINGRAD』(2012年)から2年4ヶ月ぶり、3代目シンガーのマーク・トーニロ(Vo)加入後3作目のスタジオアルバム。マーク、ウルフ・ホフマン(G)、ハーマン・フランク(G)、ピーター・バルテス(B)、ステファン・シュヴァルツマン(Dr)という再々結成後不動の布陣での最後のアルバムとなります。

プロデューサーはもはやお馴染みのアンディ・スニープ(ARCH ENEMYJUDAS PRIESTMEGADETHなど)。楽曲面においても過去の良い面を十分に残しつつ、それらを現代的にバージョンアップさせることに成功しており、もはや何の不安も感じられない。そういう意味でも、新たな黄金期を迎えつつあることが伺える良質なメタルアルバムに仕上がっています。

オープニングのファストチューン「Stampede」こそ彼らにしては若干平均点的な仕上がりですが、続く「Dying Breed」「Dark Side Of My Heart」のキラーチューンぶりには目を見張るものがあり、キャッチーなメロディラインや重厚で男臭いコーラスワーク、パワフルなギターリフとタイトなバンドアンサンブル、ウルフによるクラシカルかつメロウなギターソロといった、このバンドに必要不可欠な要素がすべて揃っている。文句の付けようがありません。

〈Oh Oh〜〉コーラスやロシア民謡的メロディを取り入れたミドルヘヴィ「Fall Of The Empire」、泣きメロパワーメタル「Trail Of Tears」、冒頭のアコギ含め哀愁味漂う「Wanna Be Free」、ギャロップビートが軽快な「200 Years」、ストレートなメタルチューン「Bloodbath Mastermind」など、楽曲のバリエーションも比較的幅広く、似たようなタイプの楽曲で固められることの多いこの手のバンドにしては、最後の最後まで飽きずに楽しめるのも本作の魅力。終盤に用意されたメタルバラード的な「The Curse」や、恒例のなったクラシックからの引用ギターソロ(今回はエドヴァルド・グリーグ『PEER GYNT(ペール・ギュント)』より「Morning Mood(朝)」)をフィーチャーした締めくくりに相応しい疾走ナンバー「Final Journey」までの全11曲、スルッと聴くことができるはずです。

ギターソロやちょっとしたアレンジのこだわりで1曲1曲が5分前後と、比較的長尺な楽曲が並び、トータルで60分近くあるので、本当に好きな人じゃないと厳しいかなと思いつつも、前半を難なく楽しめたなら最後まであっという間なはず。歴史に残るような名曲やバンドを代表するような1曲は見当たらないかもしれないけど、すべてが平均点もしくはそれ以上の完成度なので、結果としてアルバムの充実度は100点に近い。トニー加入後の第3期(80年代を第1期、90年代を第2期と大雑把に分けてます)における、この時点での代表作と断言してしまっていいと思います。

事実、本作は本国ドイツで初のチャート1位を獲得。アメリカでも35位と過去最高記録を樹立し、イギリスでも7thアルバム『RUSSIAN ROULETTE』(1986年。最高80位)以来のTOP100入り(85位)を果たしています。そんな好状況だっただけに、2014年末にハーマン、そしてステファンが相次いで脱退してしまったことは残念でなりません。

 


▼ACCEPT『BLIND RAGE』
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2023年3月24日 (金)

PANTERA『FAR BEYOND BOOTLEG: LIVE FROM DONINGTON '94』(2014)

2014年6月2日にリリースされたPANTERAのライブアルバム。

本作はもともと、同年3月24日にリリースされたPANTERAのメジャー3rdアルバム(通算7作目)『FAR BEYOND DRIVEN』(1994年)の20周年デラックスエディションにボーナスディスクとして付属していたものを、アナログ&デジタル限定で単独販売したもの。本ライブアルバムの日本盤単独リリースは実現していませんが、『FAR BEYOND DRIVEN』20周年盤は国内盤化もされているので、フィジカルで入手したい方はそちらを探してみることをオススメします(アルバム本編もリマスタリングが施され、迫力が増していますしね)。

さて、このライブアルバムですが、PANTERAがもっともノリにノッていた1994年のライブを収めたもので、1994年6月4日にイギリス・ドニントンパークで開催された野外フェス『Monsters Of Rock』出演時の音源となります。同年春に『FAR BEYOND DRIVEN』が初の全米1位を獲得、イギリスでもキャリア最高の3位を獲得したタイミングであり、当然彼らはフェスのメインステージに出演。AEROSMITHがヘッドライナーを務めた年で、PANTERAはPRIDE & GLORYTHERAPY?に次ぐ3番手としてステージに立っています(その後、SEPULTURAEXTREME、AEROSMITHという出順)。

当日のセットリストは以下のとおり。

01. A New Level
02. Use My Third Arm
03. Walk
04. Strength Beyond Strength
05. Domination / Hollow
06. Slaughtered
07. Fucking Hostile
08. This Love
09. Mouth For War
10. Primal Concrete Sledge
11. Cowboys From Hell

このうち、アルバムには「A New Level」「Primal Concrete Sledge」を除く9曲を収録。当時の触れ込みでは「『Monsters Of Rock』出演時の模様を完全収録」と謳われていましたが、録音状態の不備が理由でしょうか。結果としてこういう中途半端な形となっています。ライブのオープニング定番曲である「A New Level」をカットし、当時の新曲「Use My Third Arm」からスタートする形は少々意外かもしれません。

PANTERAの公式ライブアルバムとしてバンド存命中に唯一残されたライブアルバム『OFFICIAL LIVE: 101 PROOF』(1997年)と比べると、ボリューム的には物足りないかもしれません。しかし、ドニントンパークで数万人のオーディエンスを前に繰り広げられる圧巻のステージの雰囲気は、この音源からも十分に伝わってきますし、人間関係的にも良好だった(つまり、バンドとしてもっとも脂の乗っていた)時期の鉄壁のライブを追体験できるという点では、非常に重要な意味を持つ音源だと言えるでしょう。

圧倒的なバンドアンサンブルは言うに及ばず、もはや獣のようにスクリームしまくるフィル・アンセルモ(Vo)は唯一無二。個人的には「Slaughtered」から「Fucking Hostile」へと傾れ込む怒涛の構成がハイライトかな。特に後者はなかばヤケクソ気味なスピード感で、サビやエンディングで〈Fucking hostile!〉と一斉に叫ぶオーディエンスの声には鳥肌が立ちます。

ちなみに、本作には『OFFICIAL LIVE: 101 PROOF』に未収録の「Mouth For War」のライブテイクも収録。こちらの熱量も何ものにも変え難い魅力があるので、必聴です。まあ要するに……PANTERAのライブ音源はすべてマストで押さえておくべきってことですね。

 


▼PANTERA『FAR BEYOND BOOTLEG: LIVE FROM DONINGTON '94』
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2023年3月18日 (土)

CARCASS『SURGICAL STEEL』(2013)、『SURGICAL REMISSION / SURPLUS STEEL』(2014)

『SURGICAL STEEL』は2013年9月13日にリリースされたCARCASSの6thアルバム。日本盤は同年9月4日発売。

2007年にジェフ・ウォーカー(Vo, B)、ビル・スティアー(G, Vo)にマイケル・アモット(G)、体調面を考慮して不参加となったケン・オーウェーンに代わりARCH ENEMYのダニエル・アーランドソン(Dr)という布陣で再結成ツアーを行ったCARCASS。2012年にはマイケル、ダニエルがバンドを離れ、ジェフとビルは新作制作を前提として活動を継続します。

その後、現在までバンドに在籍するダニエル・ワイルディング(Dr)が正式加入。この3人で『SWANSONG』(1996年)以来17年ぶりとなるアルバム制作に臨みます。プロデューサーには名盤『HEARTWORK』(1993年)や『SWANSONG』を手掛けたコリン・リチャードソン(FEAR FACTORYNAPALM DEATHBULLET FOR MY VALENTINEなど)が担当したことからもわかるように、グラインドコアを通過した初期メロディックデスメタルやスラッシュメタル的テイストのアルバムが完成。そこに、ミックスでアンディ・スニープ(OPETHKILLSWITCH ENGAGETESTAMENTなど)が加わることにより、単なる原点回帰では終わらないモダンさも随所で感じられる1枚へと到達します。

『SURGICAL STEEL』というタイトルが、JUDAS PRIESTにおける『BRITISH STEEL』(1980年) のオマージュだという話もありましたが、そういった点からも彼らがこの復活作で「90年代以降のブリティッシュメタル/エクストリームメタル」を現代によみがえらせようとした……そう解釈できる音ではないでしょうか。アルバム冒頭を飾るアンセミックなインスト「1985」もどこか往年のヘヴィメタル的な空気感があり、ちょっと及び腰になってしまいますが、そこから唐突に雪崩れ込む「Thrasher's Abattoir」の残虐さに一安心(笑)。以降も(レコーディングではビルひとりですべてのギターパートを録音したものの)このバンドらしさ満点のツインリードギター&リフが随所に用意され、曲が切り替わるたびに思わずガッツポーズしたくなるほどの高揚感を味わえます。

復活作としては文句なしの仕上がりで、軽く平均点越えの内容だと思うのですが、CARCASSというエクストリームな存在にとってはいささかお行儀が良すぎるような印象も。1枚のヘヴィメタルアルバムとしては100点に近いクオリティですが、ことエクストリームの観点で接すると「もう一声」という本音も漏れてきます。

とはいえ、ライブで聴くと文句なしの高揚感が味わえるので、そういった意味では「ライブで化ける」曲たちが並んだ良作なのかもしれませんね。

 


▼CARCASS『SURGICAL STEEL』
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その後、『SURGICAL STEEL』に収録されなかったアウトテイク(日本盤および海外諸国でのデラックス盤に追加されたボーナストラックを含む)で構成されたEP『SURGICAL REMISSION / SURPLUS STEEL』が2014年11月10日にリリースされます。日本盤未発売。

新たなツアーを行うために海外で発売された本作は、『SURGICAL STEEL』セッションから生まれた全5曲を収録。『SURGICAL STEEL』日本盤に追加収録された「A Wraith In The Apparatus」「Intensive Battery Brooding」といった耳馴染みの強い曲のほか、完全未発表の「Zochrot」「Livestock Marketplace」、『SURGICAL STEEL』冒頭を飾ったインスト「1985」のリプライズ・バージョンという『SURGICAL STEEL』との関連性の強さを感じさせる作品となっています。

「A Wraith In The Apparatus」「Intensive Battery Brooding」はスピード感よりも重さ重視したテイストで、アルバム本編と比べたらインパクトは若干弱め。ただ、「Intensive Battery Brooding」は終盤にアップテンポにギアチェンジするアレンジがカッコいいので、これはこれでアリ。

「Zochrot」も前2曲の延長線上にある作風ですが、仕上がり的にはアルバムに入っていても不思議じゃないレベル。アルバムに含まれていたら、よいフックになっていたかもしれません。「Livestock Marketplace」は『HEARTWORK』期のCARCASSというよりも『SWANSONG』期に近い内容で、ビルのカラーが強く表出した1曲ではないでしょうか。これもフックとしては十分な役目を果たしてくれそうな良曲です。

 


▼CARCASS『SURGICAL REMISSION / SURPLUS STEEL』
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そして、これら2枚の作品を1枚のCDにまとめたのが、2015年10月30日にリリースされた『SURGICAL STEEL (COMPLETE EDITION)』です。日本盤は海外に先駆けて、同年10月7日発売。

当初はEP『SURGICAL REMISSION / SURPLUS STEEL』が日本盤未発売だったことを受け、『SURGICAL STEEL』日本盤に未収録だった『SURGICAL REMISSION / SURPLUS STEEL』からの3曲を追加する「『SURGICAL STEEL』ワークス完全版」として『LOUD PARK 15』での再来日にあわせた日本限定リリースの予定でしたが、のちに別ジャケットで海外でも発売。結果として、似たようなアートワークの作品が3枚も並ぶこととなります。

内容に関しては上で触れた通りですが、EPがミドルテンポ中心でクオリティ的にもアルバムより若干落ちること、かつトータル全16曲/約65分という長尺作品となってしまったことで、アルバムの魅力が良い形で伝わりきらないような印象も受けます。ただ、「1985」で始まり「1985 (Reprise)」で終わる構成はドラマチックで良いと思うので、EPからの4曲をカットして「Mount Of Execution」〜「1985 (Reprise)」でアルバムが終了していたらアルバムの持つ抒情性がより強調されたんじゃないかなと、今さらながらに思ってしまいます。

ぶっちゃけ『SURGICAL STEEL』1枚持っていれば問題ありませんが、CARCASSのすべてを知っておきたくて『SURGICAL STEEL』未聴の方ならこのコンプリートエディションを入手しておけば大丈夫でしょう。

なお、『SURGICAL STEEL』に関連したこの3作品は、国内サブスクでは未配信。配信で購入したい、聴きたいという方はBandcampで購入できますので、こちらをチェックしてみてください

 


▼CARCASS『SURGICAL STEEL (COMPLETE EDITION)』
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2023年3月 7日 (火)

BRYAN ADAMS『TRACKS OF MY YEARS』(2014)

2014年9月30日にリリースされたブライアン・アダムスの12thアルバム。日本盤は同年10月8日発売。

スタジオアルバムとしては『11』(2008年)から約6年半ぶりの新作となる本作は、カバー曲中心で構成された1枚。THE BEATLESやボブ・ディラン、チャック・ベリー、CREEDENCE CLEARWATER RIVIVAL(CCR)、THE BEACH BOYSの名曲の中に、オリジナル新曲「She Knows Me」をミックスした全11曲入りの作品集となっており、デラックス盤にはさらに5曲(うち1曲は、ディズニー映画『OLD DOGS』のために制作したオリジナル曲「You've Been A Friend To Me」)、日本盤にはここにもう1曲追加されたボリューミーな内容となっています。

ちなみに、カバーの内訳は以下のとおり。

01. Any Time At All [THE BEATLES]
02. She Knows Me [オリジナル新曲]
03. I Can't Stop Loving You [ドン・ギブソン、レイ・チャールズ]
04. Kiss And Say Goodbye [THE MANHATTANS]
05. Lay Lady Lay [ボブ・ディラン]
06. Rock And Roll Music [チャック・ベリー、THE BEATLES]
07. Down On The Corner [CREEDENCE CLEARWATER RIVIVAL]
08. Never My Love [THE ASSOCIATION]
09. Sunny [ボビー・ヘブ]
10. The Tracks Of My Tears [SMOKEY ROBINSON & THE MIRACLES]
11. God Only Knows [THE BEACH BOYS]
12. You've Been A Friend To Me [オリジナル曲]
13. Help Me Make It Through The Night [クリス・クリストファーソン]
14. C'mon Everybody [エディ・コクラン]
15. Many Rivers To Cross [ジミー・クリフ]
16. You Shook Me [マディ・ウォーターズ、LED ZEPPELIN]
17. Let It Be Me [THE EVERLY BROTHERS]

60's中心の選曲ですが、これはブライアンが幼少期から10代にかけて夢中になったルーツミュージックということなのでしょう。実際、アートワークに使用された写真も、彼が16歳の頃の写真ですし(今の彼からは想像もつかないロン毛時代!)。ビートルズで「Any Time At All」を選出するあたりに、彼のこだわりや音楽的嗜好が見え隠れしますね。

本作に関しては当時の所属レーベルからの提案だったものの、すでにジェフ・リン(ELO)とともに次のオリジナルアルバム『GET UP』(2015年)の準備に取り掛かろうとしていたこともあり、当初はブライアンはこのアルバムを制作することに消極的だったんだとか。しかし、気心知れたボブ・ロック(「Kiss And Say Goodbye」「Rock And Roll Music」のみ)と、これが初タッグとなるデヴィッド・フォスターとの共同作業が与えた影響はかなり大きなものがあり、結果として非常にポジティブに受け取ることができたそうです。

レコーディングはキース・スコット(G)&ミッキー・カリー(Dr)、ブライアン(B, Acoustic G)といったお馴染みの布陣に加え、デヴィッド・フォスターからの流れで名手マイケル・トンプソン(G)も参加。さらに、ピアノやキーボードでデヴィッド自身も演奏に加わっています。アレンジや演奏自体は原曲の雰囲気を残しつつ、2000年代以降のブライアンのスタイル……アルバム『ROOM SERVICE』(2004年)や『11』で見せた“大人になった青春ロック”路線が展開されており、カバー中心ながらもスタジオ作品としてのつながりもしっかり感じられる仕上がりです。

原曲が名曲ばかりなので、内容は悪いわけがない。あと、ここでの経験は確実にジェフ・リンとの作業にも影響を与えているはずで、結果として本作から1年後に発表されたオリジナル作『GET UP』との共通点もたくさん見つけることができます。そういった意味では、本作と『GET UP』は表裏一体の兄弟関係にあると言えるでしょう。『GET UP』を楽しむ上でも、このカバー集の存在は欠かせない……というのは過言でしょうか。

大袈裟な言い方になりますが、本作を軸に過去へ遡ると『11』や『ROOM SERVICE』があり、未来に目を向けると地続きで『GET UP』あり、そこからモダンな形にシフトさせた『SHINE A LIGHT』(2019年)があり、そういった経験を経ての原点回帰となる最新作『SO HAPPY IT HURTS』(2022年)がある。(あえてこういう言い方をさせていただきますが)ブライアンの音楽活動後期において、実は本作の存在ってかなり大きなものがあると個人的には思っています。

 


▼BRYAN ADAMS『TRACKS OF MY YEARS』
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2022年12月 6日 (火)

KISS『ALIVE! THE MILLENNIUM CONCERT』(2006)

2006年11月26日リリースのライブボックスセット『ALIVE! 1975-2000』に同梱された、KISSの未発表ライブアルバム。その後、2014年10月14日にアナログ&デジタルで単品リリースされています。

本作はそのタイトルからもわかるように、1999年12月31日にカナダ・バンクーバーのBC Place Stadiumで実施された年越しコンサートの模様を収録したもの。今の若い世代の方には馴染みが薄いかと思いますが、当時は20世紀から21世紀に移り変わることがお祭り騒ぎだったんですよ(「2000年問題」とか知らないんでしょうね。苦笑)。

ポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、エース・フレーリー(G, Vo)、ピーター・クリス(Dr, Vo)のオリメンで制作した19年ぶりのスタジオアルバム『PSYCHO CIRCUS』(1998年)を携え、1年がかりで実施したワールドツアーのクライマックスとなったバンクーバー公演は、記録によると全20曲が披露されているとのこと(エースのギターソロ、ジーンのベースソロを除く)。しかし、アルバム本編には厳選された15曲が収録。現在出回っているデジタル盤は「2,000 Man」「God Of Thunder」がボーナストラックとして追加された17曲バージョンで、アナログ盤はさらに「Detroit Rock City」を加えた全18曲バージョンとなっています。なお、アルバム未収録となったのは「Shock Me」と「Cold Gin」。

この頃になるとオリメン編成にも関わらず「Heaven's On Fire」や「I Love It Loud」「Lick It Up」もセットリストに復活。『PSYCHO CIRCUS』という新作を制作したことで、全体的にバランスが取れるようになったことが大きいのかな。とはいえ、同作からはタイトルトラックとエース歌唱の「Into the Void」のみなんですよね。『PSYCHO CIRCUS』を引っ提げたジャパンツアーは実現しなかっただけに、記録としてもう少し残してほしかったなあ。

録音からリリースされるまでに6年以上かかっていること、その後エースもピーターも脱退していることなどもあり、あとから追加修正はあまりされていないんじゃないかな。ポールのボーカルも冒頭の「Psycho Circus」を聴く限りでは修正しているようには思えないし。せいぜい歓声を大きめに被せた程度かな。

ピーターの叩く「Psycho Circus」は若干もっさりした印象で、ライブのオープニングにしては弱いような。けど、「Into The Void」での歯切れよいリズムはカッコいいんだよなあ(レコーディングでピーターが叩いたのは「Into The Void」だけみたいですしね)。

内容に関しては“いつもどおり”が強くて、評価が難しいところなんだけど……本作に関しては、オリジナル編成で「Heaven's On Fire」や「I Love It Loud」「Lick It Up」をプレイしているという点に尽きるかな。「Heaven's On Fire」はリズムが若干ゆったりめだけど、「I Love It Loud」は想像以上にヘヴィだし、「Lick It Up」も軽やかさがしっかり伝わる。ピーターのみならず、エースも彼なりに頑張っているのが伝わりますしね。

そもそも本作が2000年に入ってから『ALIVE IV』としてリリースされていたら、また歴史も変わったのかな。本作がヒットしていたら、オリメン時代がもう少し続いていたのかもしれませんが、そんな「たられば」話を今さらしてもね。

 


▼KISS『ALIVE! THE MILLENNIUM CONCERT』
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2022年12月 4日 (日)

KISSのベストアルバムを総括する(2022年版)

ブライアン・アダムスAEROSMITHに続く「ベストアルバムを総括する」シリーズ第3弾(シリーズだったのか……)はKISS。まあとにかくベスト盤やコンピ盤、ボックスセットが多い方々ですが、今回は数あるベスト盤の中からレーベル主導で制作された『MILLENNIUM COLLECTION』シリーズを除く、バンド側の公式リリースに絞ってセレクトしております。中には新曲やレアトラックなど含まないもの、現在廃盤でサブスクでも配信されていないものも含まれていますが、あえて掲載してみます。

とにかく非常に長いエントリーなので、心してお読みください……(苦笑)。

 

 

『DOUBLE PLATINUM』(1978)

 

1978年4月2日にリリースされたKISS初のグレイテストヒッツアルバム。アナログ2枚組、CD1枚もの。

リリース当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、エース・フレーリー(G, Vo)、ピーター・クリス(Dr, Vo)のオリジナル編成。新曲こそ皆無ですが、既存楽曲に加え「Strutter」のリテイクバージョン「Strutter '78」やリミックステイクなどが豊富。サブスクではApple Musicはフルで楽しめますが、Spotifyでは「Calling Dr. Love」と「Black Diamond」が歯抜け状態。Amazon Musicでは配信すらされていないようなので、どうにかしていただきたいものです。

詳しくはこちらのエントリーを参照のこと。

 


▼KISS『DOUBLE PLATINUM』
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『KILLERS』(1982)

 

1982年6月15日にリリースされた、KISSにとって2作目の公式コンピレーションアルバム。アナログ/CDともに1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、エース・フレーリー、エリック・カー(Dr, Vo)。日本やオーストラリアなどアメリカ以外の諸国で先行発売。当時はここでしか聴くことができなかった新曲4曲(「I'm A Legend Tonight」「Down On Your Knees」「Nowhere To Run」「Partners In Crime」)がかなり話題となりました。ジャケットにエースの姿はあるものの、当時はすでにバンドから脱退しており、新曲のレコーディングにはのちにバンドに加入するブルース・キューリック(G)の実兄ボブ・キューリック(G)がリードギターとして参加しています。

詳しくはこちらのエントリーを参照ください。

 


▼KISS『KILLERS』
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『CHIKARA』(1988)

 

1988年5月25日に日本限定でリリースされたコンピレーションアルバム。CD1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。この年の春に10年ぶり(ノンメイクアップ時代としては初めて)の来日公演が決定したことを受け、それにあわせて日本のみ10万枚限定で制作されたレアアイテム。今となっては10万枚も刷ったのか!って驚きですけどね。内容は「Rock And Roll All Nite」や「Love Gun」などの70年代ヒットよりも、「Creatures Of The Night」や「Lick It Up」「Heaven's On Fire」「Tears Are Falling」などの80'sヘアメタル期が中心。主にシングルカット/MV制作された楽曲が中心で、そんな中に「I Was Made For Lovin' You」のリミックスバージョンという初CD化レア音源が含まれているのが売りかな(のちに「Psycho Circus」シングルのカップリングで世界的にCD化されました)。

枚数限定生産ということで、現在は廃盤。ただ、中古盤ショップを回れば意外と簡単に見つけられるはず。値段もそこまで張っていないので(Amazonは論外!)、気になる方はぜひチェックしてみてください。

 


▼KISS『CHIKARA』
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『SMASHES, THRASHES & HITS』(1988)

 

1988年11月15日にリリースされた、KISSにとって3作目の公式コンピレーションアルバム。CD1枚もの。

当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、ブルース・キューリック、エリック・カー。日本では『CHIKARA』から間を空けずに発表されることになりましたが、『KILLERS』未発売だった北米などの海外諸国では『DOUBLE PLATINUM』以来10年ぶりのベスト盤。考えてみたら「I Was Made For Lovin' You」はもちろん、80年代の楽曲をまとめたコンピが10年も出ていなかった事実に驚かされます。

内容は「Let's Put The X In Sex」「(You Make Me) Rock Hard」の新曲2曲や、一部楽曲のリミックス、そしてエリック・カーが歌唱した「Beth」など、単なるベスト盤では片付けられない楽曲が多数。北米盤ではなぜか直近の新作『CRAZY NIGHTS』(1987年)からの楽曲が含まれていません(ヨーロッパ盤には「Crazy Crazy Nights」「Reason To Live」収録)。とはいえ、ヘアメタル期のヒットシングルが簡単におさらいできるので、実はもっとも手軽に楽しめる入門盤かもしれません。

詳しくはこちらのエントリーを参照ください。

 


▼KISS『SMASHES, THRASHES & HITS』
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『GREATEST KISS』(1997)

 

1997年4月8日にリリースされたKISSの公式コンピレーションアルバム第4弾。日本盤は1997年1月の来日公演にあわせて、1996年12月9日発売。CD1枚もの。

リリース当時のメンバーはポール・スタンレー、ジーン・シモンズ、エース・フレーリー、ピーター・クリス(Dr, Vo)。オリジナル編成およびメイクアップ期へと回帰した彼らのワールドツアーにあわせて制作されたもので、北米、ヨーロッパ、日本とそれぞれ収録曲が一部異なるのが特徴。

これまでのコンピのように新曲やリミックス曲は皆無で、既発曲がリマスタリングされている程度。ただ、それだけでは売りがなさすぎるので、1996年6月28日のデトロイト公演から「Shout It Out Loud」のライブ音源を追加。こちらは当時MVも制作されています。

オリメン時代にこだわった選曲なので、『SMASHES, THRASHES & HITS』以降に生まれたヒット曲「Hide Your Heart」「Forever」「Unholy」などは未収録。ただ、北米盤以外では「God Gave Rock 'N' Roll To You II」が選出されているのが謎かも。なお、日本盤のみ海外盤未収録の「C'mon And Love Me」「Rock Bottom」がセレクトされております。このへん、いかにもですね。

サブスクでも聴くことができますが、Apple Musicでは日本盤バージョンで配信、Spotifyはヨーロッパバージョンでの配信のようです。

 


▼KISS『GREATEST KISS』
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2022年11月26日 (土)

WILKO JOHNSON / ROGER DALTREY『GOING BACK HOME』(2014)

2014年3月25日にリリースされた、ウィルコ・ジョンソン(G/ex. DR. FEELGOOD)とロジャー・ダルトリー(Vo/THE WHO)のコラボアルバム。日本盤は同年4月2日発売。

2013年に末期のすい臓がんと診断され、本人の意向で延命治療は行わないことをアナウンスしたウィルコ。その後、残された時間を有効に使うため、なんとTHE WHOのロジャー・ダルトリーをフロントマンに迎えたスタジオアルバムを制作することを発表し、我々を驚かせたのでした。

アルバムのレコーディングは、ウィルコと活動を共にしてきた永遠の相棒ノーマン・ワット・ロイ(B)、YESのスティーヴ・ハウ(G)の実子であるディラン・ハウ(Dr)の鉄壁トリオに、THE STYLE COUNCILなどで知られるミック・タルボット(Key, Piano)を迎えた編成で実施。プロデューサーにはMANIC STREET PREACHERSの諸作を手がけることで知られるデイヴ・エリンガという(彼らからしたら)若手を迎えて、たった1週間で録音を済ませたそうです。

収録された全11曲(デラックス盤ボーナスディスク収録曲除く)のうち、10曲はウィルコがこれまでに制作・発表してきた楽曲のセルフカバーで、残り1曲はボブ・ディランの「Can You Please Crawl Out Your Window?」カバーとなります。アルバムタイトルにも用いられた「Going Back Home」からもわかるように、DR. FEELGOOD時代の楽曲も複数含まれており、リリースから40年近くを経たいぶし銀のプレイ&演奏に、より深みが増したロジャーのボーカルが乗ることで、原曲とはまた違った魅力を感じ取ることができるはずです。

そりゃあ原曲で聴ける「若き日のパブロック/パンクロック/ガレージロック直系のストレートさ」も間違いなくカッコいいですが、今の年齢だからこそ生み出せるこの空気感と説得力も誰にも真似できないもの。自分の人生の終わりが数ヶ月後に近づいたウィルコのギタープレイは、かつての鬼気迫るものとは若干異なるものの、最後の最後に文字通り「音を楽しむ」こと=音楽と向き合った結果がこの音/演奏であり、そこに真摯に応えるロジャーの(まったく年齢を感じさせない)パワフルな歌声と、そこから伝わる生命力の強さにはただただ圧倒されます。

個人的にはオルガンやピアノの入ったロックンロールが大好きなので、ここで聴けるミック・タルボットのプレイは最高の一言。原曲を知るリスナーにもぜひ味わってもらいたい魅力のひとつです。こういうアルバムはしのごの言わず、無心で楽しむのが一番。ひたすら大音量で再生しまくってください。

ちなみに、本作は全英3位という好記録を樹立。2014年11月には先にも触れたボーナスディスク付き2枚組デラックス・エディションも発表されています(日本盤は2015年2月リリース)。こちらには本編未収録の「Muskrat」に加え、「Some Kind Of Hero」「Keep On Loving You」「Turned 21」のウィルコ歌唱バージョン、2014年2月のWILKO JOHNSON BANDのライブ音源やロジャーとのコラボライブ音源など全18トラックが収められているので、アルバム本編がご自身の感性にフィットした方はぜひチェックしてみることをオススメします

なお、その後のウィルコですが、2014年3月に本作を提げた来日公演を行うも、4月下旬にはすべてのスケジュールをキャンセル。5月には腫瘍摘出手術を行い、見事回復したことを宣言します。余命数ヶ月と言われたものの、その後8年間もサバイブ。2022年11月21日にこの世を去りました。

 


▼WILKO JOHNSON / ROGER DALTREY『GOING BACK HOME』
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2022年7月13日 (水)

NIGHT RANGER『HIGH ROAD』(2014)

2014年6月10日にリリースされたNIGHT RANGERの10thアルバム(“MOON RANGER”と呼ばれる特殊編成で1995年にリリースした『FEEDING OFF THE MOJO』を含めると11枚目)。日本盤は同年5月21日先行発売。

ジャック・ブレイズ(Vo, B)、ケリー・ケイギー(Vo, Dr)、ブラッド・ギルス(G)、ジョエル・ホークストラ(G)、エリック・レヴィー(Key)という布陣による、『SOMEWHERE IN CALIFORNIA』(2011年)に続く2作目のスタジオアルバム。原点回帰ともいえる王道アメリカンハードロックが展開された前作の流れを汲む作風で、前作の79位には及ばなかったものの全米で最高105位という数字を残しています。

タイトルトラック「High Road」に見られるように、全体を通してミディアムテンポ中心で若干落ち着いた感が強いテイストですが、1曲1曲の作り込みは前作以上。どの曲も基本的にジャック/ブラッド/ケリーのオリメン3人によるもので、ジョエルは「I'm Coming Home」「L.A. No Name」の2曲のみ、エリックは「Don't Live Here Anymore」「Only For You Only」「Brothers」の3曲に名を連ねています。

王道感の強いポップロック調のタイトルトラック、ミドルテンポのハードロック「Knock Knock Never Stop」と序盤はアゲるテイストではないものの、3曲目「Rollin' On」での起伏に富んだアレンジで一気に熱量が高まる。バラードとまではいかないムーディーな「Don't Live Here Anymore」、比較的アップテンポ寄りのポップロック「I'm Coming Home」と、前半はかなりバラエティに富んだ楽曲が並びます。なんとなくですが、印象的には3作目『7 WISHES』(1985年)に似ているような。ただ、バラードで勝負している感があまり前面に出ていないところは今作の良いところかな。

後半は豪快なロックチューン「X Generation」で勢いを付けたかと思うと、彼ららしいピアノバラード「Only For You Only」でワンクッション起き、ミドルヘヴィの「Hang On」、流麗なギターフレーズが耳に残るハードチューン「St. Bartholomew」、ビートルズチックなサイケさをはらんだポップバラード「Brothers」とジョエルのアコギプレイを全面にフィーチャーしたインスト「L.A. No Name」でしっとりと締めくくります。

全体を通して「あれ、このフレーズ聴いたことあるぞ?」と思う瞬間が多々あるものの、どれも単なる焼き直しでは済まない良質な仕上がりで、前作で再び手に入れた“NIGHT RANGERらしさ”を見事に更新できているのではないでしょうか。今聴くと、実は何気に完成度の高い良盤であることに気付かされます。

ただ、リリースから間もなくしてジョエルが突如バンドを脱退し、WHITESNAKEに移籍するというひと波乱が起こり、このアルバムやジョエルに対してネガティブな感情が付いて回るようになりました。それもあって、しばらく本作に対して正当な評価を下せていなかった気がします。これは再結成後のアルバムで3本指に入る良作。ごめんよジャック、ケリー、ブラッド、エリック(ジョエルには謝らないスタイル)。

 


▼NIGHT RANGER『HIGH ROAD』
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