カテゴリー「2014年の作品」の29件の記事

2020年7月 6日 (月)

CODE ORANGE『I AM KING』(2014)

2014年9月にリリースされたCODE ORANGEの2ndアルバム。同タイミングにDaymare Recordingsから発売された本作にて、彼らは日本デビューを飾っています。

1stアルバム『LOVE IS LOVE // RETURN TO DUST』(2012年)はCODE ORANGE KIDS名義でのリリースだったので、CODE ORANGE名義では本作がデビューアルバム。とはいえ、参加メンバーは前作と同一なので、ここは素直に2作目とカウントしていいと思います。

前作から引き続きDeathwish Inc.からのリリース、プロデュースをカート・バルーが担当するという、デビュー時からのCONVERGEとのつながりもそのまま。すでに次作『FOREVER』(2017年)への布石が多数表出しており、メロディアスな要素皆無、一筋縄ではいかないメタリックなハードコア・サウンドで聴き手を翻弄してくれます。

スピードよりも重さや淀みを前面に打ち出したドゥーミーな作風は、先輩格のCONVERGEとは似て非なるもので、CODE ORANGEのほうがスラッジ・メタルあたりに近しい印象を受けます。また、電子的なエフェクト(カットイン/アウトなど)もすでに武器として随所に用いられており、ところどころでハッとさせられる。このインパクトの付け方がCODE ORANGEならではの魅力で、改めてこのタイミングから別格だったんだなと気づかされます。

オープニングの「I Am King」からラスト「Mercy」までの全11曲/32分半、正直息をするのを忘れてしまうほどの挟撃を受けるはず。それくらいの強烈さが伝わるこの力作を、できることならリアルタイムで体験したかった……。

というのも、僕はこのアルバムに関しては完全に後追いなんです。『FOREVER』から入ったリスナーなので、そのあとにこの『I AM KING』を聴くと(若干の違いはあるものの)そのつながりやバンドの成長ぶりには驚かされるばかり。内容的にも甲乙付け難い魅力が感じられます。

本作制作時点でメンバーが20歳前後〜20代前半という事実にも驚かされますが、このダークでカオティックな世界観こそが「2014年のリアルなアメリカ」だったのかな。そういう意味でも、このバンドは2010年代〜2020年代のUSモダンメタル/ハードコア・シーンを語る上で欠かせない存在なんでしょうね。

なお、本作はBillboard 200(アルバムチャート)で最高96位を記録。最新作『UNDERNEATH』(2020年)からこのバンドを知ったリスナーは、絶対に本作と次作『FOREVER』はあわせて聴いていただきたいなと。どれもハズレなしですから。

 


▼CODE ORANGE『I AM KING』
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2020年6月14日 (日)

MANIC STREET PREACHERS『THE HOLY BIBLE 20』(2014)

2014年12月にリリースされた、MANIC STREET PREACHERSの3rdアルバム『THE HOLY BIBLE』(1994年)の20周年記念エディション。日本盤未発売。

1994年8月に発売された『THE HOLY BIBLE』は、オリジナルメンバーのリッチー・エドワーズ(G)を含む4人編成としては最後の作品。2004年12月には本作のリリース20周年を祝して、最新リマスター盤+当時完全未発表だったUSリミックスバージョンの『THE HOLY BIBLE』+未発表のデモやライブ音源の2枚組CDと、ライブ映像やテレビ出演時の映像を含むDVDからなる3枚組エディションが発売されており、『THE HOLY BIBLE』のデラックス盤としてはこれが2作目にあたります(日本盤限定で2009年、シングルC/W曲を追加した2枚組紙ジャケ・エディションも発売されています)。

20周年盤は『THE HOLY BIBLE』の最新リマスター盤(DISC 1)、『THE HOLY BIBLE』USリミックスの最新リマスター盤(DISC 2)、シングルのカップリング&リミックス集(DISC 2)、ライブ音源やBBCセッションなどをまとめたライブ集(DISC 4)のCD4枚組に『THE HOLY BIBLE』最新リマスターのアナログ盤、写真集を同梱したボックスセットとなっており、これさえあれば『THE HOLY BIBLE』期のマニックスの音源は完璧!と呼べる内容……だと思っていたんです。ところが、10周年エディションに含まれていたデモやライブ音源は20周年ボックスには未収録。ありゃりゃ……と思ったら、最近気づいたんですが、デジタル版およびストリーミング版には新たにDISC 5が追加されており、こちらに10周年エディションのみで聴くことができた音源がまとめられており、映像を除けば確実にこのデジタル版で網羅することができます。

ということで、豪華な箱やアナログ盤、写真集などが欲しい人はフィジカル(ボックスセット)で購入し、音源だけあればいいという方はiTunesやAmazon Musicなどでデジタル版を購入すればいいかなと(Amazon Musicは6000円ですべて手に入りますしね)。

名盤『THE HOLY BIBLE』に関しては、19年前に熱と愛がこもったテキストを残していますので、そちらに譲ります。最新リマスターでは音の生々しさとダイナミズムはより極まっているんじゃないでしょうか。1994年当時の若干チープなサウンドも、実はこのスタイルにはぴったりなので、どちらが最高とは断言し難いのですが……。

で、今回はUSリミックスを中心に書いていこうかなと思います。このUSリミックス、その名のとおり1994年当時にアメリカでのリリースに向けてトム・ロード・アルジがリミックスを担当したもの。最終的には契約などの関係でUSリリースが実現せず、2004年までお蔵入りされていたわけですが、当時はオリジナル版よりもリバーブが効いてウェットさが増したリミックスに「!?」と疑問を感じたものですが、何度か聴いていると意外と悪くないことにも気づきます。質感的には前作『GOLD AGAINST THE SOUL』(1993年)で展開したアリーナロック的なものに若干近づけたかったのかな。でも、グランジ全盛だった1994年だからこそ、オリジナル版の『THE HOLY BIBLE』は光り輝いたわけで、そこの読みは実際のところどうだったんだろう?と思わざるを得ません。結果、リリースは叶わなかったわけですが、もしUSリミックス版があの当時世に放たれていたら、少しは歴史が変わったのでしょうか。

ギターの音像/押し引きがオリジナル版以上にメリハリが効いていて、ドラムのタイトさも嫌いじゃないし、「Yes」のエンディングや「She Is Suffering」のエフェクトなどオリジナル版にはないものも追加されており、そのへんの聴き比べも非常に面白いんじゃないでしょうか。

DISC 3にはシングルのカップリングで聴くことができた「Too Cold Here」や「Love Torn Us Under」などの隠れた名曲などを網羅。このへんは続く『EVERYTHING MUSG GO』(1996年)への布石だったんだなと気づかされる部分もあるので、改めて興味深いものがあると思います。このほか、オリジナル・リリース時の日本盤にボーナストラックとして収められたライブ音源や、バーナード・バトラー(G)がゲスト参加したSUEDE「The Drowners」のカバーライブ音源、THE CHEMICAL BROTEHRSなどによるリミックス音源、さらには「Revol」の未発表バージョンも聴くことができます。

DSIC 4はリリース当時、英BBCで収録されたAstoriaでのライブ音源や、2014年にBBC Radio 4のために収録されたスタジオライブ音源4曲を収録。Astoriaでのライブはフルスケール収録ではありませんが、それでも全13曲とかなりボリューミーな内容となっています。そして、新録のスタジオライブはすべてアコースティックアレンジを施されたもので、「This Is Yesterday」といったいかにもな楽曲のほか、「Faster」や「P.C.P.」などパンキッシュな楽曲が日和ることなくアコースティックバージョンで生まれ変わっています。これはこれで今のマニックスらしくて、個人的には嫌いじゃないかな。

『THE HOLY BIBLE』をこれから初めて聴く人には、まず13曲入りのオリジナル版をオススメします。ストリーミングなら1994年のオリジナル版も2014年のリマスター版も両方聴けますので、どちらから入ってもいいかな。で、本作を気に入ってマニックスというバンドを十分理解した上で、このボックスを存分に味わうといいんじゃないでしょうか。なので、まずは10数枚におよぶオリジナルアルバムを先に堪能して、デラックス・エディションは余生のお楽しみとして残しておいてもいいと思いますよ(笑)。

 


▼MANIC STREET PREACHERS『THE HOLY BIBLE 20』
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2020年6月10日 (水)

VANDENBERG'S MOONKINGS『VANDENBERG'S MOONKINGS』(2014)

2014年2月リリースの、VANDENBERG'S MOONKINGSデビューアルバム。

VANDENBERG'S MOONKINGSは元VANDENGERG(当時)、元WHITESNAKE、元MANIC EDENのエイドラン・ヴァンデンバーグ(G)を中心に、ヤン・ホーフィング(Vo)、セム・クリストフェル(B)、マルト・ナイエン・エス(Dr)という故郷オランダの若手ミュージシャンたちとともに結成した4人組ハードロックバンド。エイドリアンにとって自身が全面参加するスタジオアルバムはWHITESNAKEの『RESTLESS HEART』(1997年)以来17年ぶりとなります。その間にはVANDENBERGのベストアルバム『DIFFERENT WORLDS: THE DEFINITIVE VANDENBERG』(2004年)のために名曲「Burning Heart」を再録するなどありましたが、基本的にはこの期間音楽活動はほぼ行っておらず、基本的にはエアブラシの絵画アーティストとしてひっそり暮らしていたようです。

そんな彼が17年ぶりに音楽活動を再始動させ、満を辞して完成させたVANDENBERG'S MOONKINGSのデビューアルバム。展開されているサウンドは、基本的には『RESTLESS HEARTS』やMANIC EDEN唯一のアルバム『MANIC EDEN』(1994年)で聴くことができたブルース・ベースのオールドスクール・ハードロックです。ただ、曲の派手さや親しみやすさはそういった過去の作品よりも突出したものがあり、このへんは若手ミュージシャンたちから触発されたものも大きかったのでしょうか。エイドリアンのギタープレイも、気持ちフレッシュさが増しているような印象を受けます。

「Good Thing」のポップなソウルフィーリングは、MANIC EDENあたりでも感じられた要素ですが、ヤン・ホーフィングという癖の強すぎないシンガーが歌うこと、そして女性コーラス隊の厚みあるハーモニーが加わることで、かつてないキャッチーさが伝わってきます。かと思えば、「Breathing」ではVANDENBERG時代の北欧フィーリングを漂わせている。このテイストもMANIC EDENだともう少しブルース色が強かったのですが……うん、これはWHITESNAKEでいうところの「Sailing Ships」(1989年の『SLIP OF THE TONGUE』収録曲)と同じ香りですね。

で、その「Sailing Ships」も本作でセルフカバーしております。しかも、この曲限定でWHITESNAKEのデヴィッド・カヴァーデイルがボーカルを担当。「80年代は腱鞘炎でレコーディングに参加できなかったけど、本来はこういうアレンジにしたかったんだよ!」という心の叫びが伝わってきそうな、穏やかながらもエモーショナルな仕上がりはなかなかのものがあります(できれば若い頃のカヴァーデイルの声で聴きたかった……)。

その他のハードロックナンバーに関しても一長一短あるものの、ブルースロックに特化したエイドリアンが好きなリスナーなら文句なしで楽しめる内容だと思います。間違ってもVANDENBERGの幻影をここに求めてはいけません……。

2014年という時代に本作はどこまでアピールできたのか?という課題は残りましたが、普遍性の強い作風/楽曲は聴く時期を選ばず楽しめるものではないでしょうか。

 


▼VANDENBERG'S MOONKINGS『VANDENBERG'S MOONKINGS』
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2020年5月 2日 (土)

V.A.『RONNIE JAMES DIO: THIS IS YOUR LIFE』(2014)

2014年4月初頭にリリースされた、ロニー・ジェイムズ・ディオのトリビュートアルバム。日本盤は海外に先駆け、同年3月下旬に発売されました。

2010年5月にがんのためこの世を去ったディオを追悼すべく、メタル界の重鎮から次世代バンドまで幅広い層が一堂に会したこのアルバム。全14曲(ボーナストラック除く)中、本作のために録音された未発表テイクは10曲と単なる埋め合わせ的アルバムでないことが伺えます。

そのラインナップもロブ・ハルフォードJUDAS PRIEST)やグレン・ヒューズ(ex. DEEP PURPLE)、SCORPIONSMOTÖRHEAD、ビフ・バイフォード(SAXON)といった大御所からMETALLICAANTHRAX、DOROなど直接的なフォロワー、そしてHALESTORM、コリィ・テイラー(SLIPKNOTSTONE SOUR)、KILLSWITCH ENGAGEなどの次世代アーティスト、さらにはヴィニー・アピス、ダグ・アルドリッジ、ジェフ・ピルソン、ルディ・サーゾ、クレイグ・ゴールディ、サイモン・ライト、スコット・ウォーレンといったDIOオールスターズまで、世代的にもかなり広いものとなっています。

本編ラストに収められたDIO「This Is Your Life」(1996年の『ANGRY MACHINES』収録曲)を除く13曲中、RAINBOWナンバーを選んだのが5組、BLACK SABBATHナンバーが3組、DIOナンバーが5組とやはりRAINBOWへの人気が集中。METALLICAに至ってはメドレー形式で4曲取り上げてますからね。ズルいわ(笑)。

サバス曲は当然すべて80年代の……と思いきや、オニ・ローガン(Vo/ex. LYNCH MOB)は『DEHUMANIZER』(1992年)からの「I」を選ぶ通ぶりを発揮。こちらはジミー・ベイン(B)やローワン・ロバートソン(G)といった旧DIO組も参加しています。この曲、こうやって聴くと思ったほどモダンなテイストが少なくて、80年代のディオ・サバスを踏襲してたんだねと気づかされます。

1曲ずつ解説していたらキリがないので割愛しますが、ANTHRAX「Neon Knights」におけるジョー・ベラドナのモノマネぶりが相変わらず最高なことと、SCORPIONS「The Temple Of The King」が完全に自分のものと化していること、METALLICAメドレーの強引ぶりなどは特筆すべきものがあるかなと。もちろん、ほかの楽曲も最高なので、原曲を知らないリスナーでも楽しめるはずです。

なお、日本盤にはSTRYPERによる「Heaven & Hell」、DIO DISCIPLES(DIO最終ラインナップのディオ抜き)による「Stand Up And Shout」を追加収録。ストリーミングなどのデジタルバージョンではHATEBREEDのフロントマン、ジャスタによる「Buried Alive」を聴くことができます。ここはぜひ、日本盤を手に入れておきたいところです。

 


▼V.A.『RONNIE JAMES DIO: THIS IS YOUR LIFE』
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2019年7月30日 (火)

LOUDLION『DIE TOUGH』(2014)

カナダ出身のLo-Fi系アーティストBleuが中心となり結成した80'sロックのオマージュプロジェクト(?)LOUDLION。そのプロジェクトが今のところ唯一残しているのが、この『DIE TOUGH』というアルバムです。

リリースは2014年6月となっていますが、一部では2010年に発売されていたという情報もあります。少なくとも僕がCDを入手したのは2014年だったので、広く流通し始めたのが2014年ということだったのかもしれません。

さて、80'sロックのオマージュなんて最初に書きましたが、このアルバムで展開されているのはクラシックロック……つまり、80年代のハードロック/アリーナロックそのもの。というよりも、もっとピンポイントで……DEF LEPPARDもモチーフにオリジナル曲を作っちゃいました、しかもマット・ラングのプロデュース/サウンドメイキングをお手本にして……という代物なのです。

聴けばすぐにわかる、ドラムのマシーンっぽさ。今のLEPSというよりも『HYSTERIA』(1987年)のサウンドをシミュレートしたんでしょう。ギターサウンドや深くかけられたリバーブ、ゴージャズなコーラス、そして何よりもBleuによるジョー・エリオット真っ青なボーカル……似てる(笑)。

可能な限りシミュレートしてはいるものの、やはりそこは予算の違いなのか、本作は全体的にチープさが否めません。そこがハードロック畑の人の手によるものか、あるいはLo-Fi系/パワーポップ系の人の手によるものかの違いなんですかね。

にしても、楽曲が本当にいろいろ研究されていて興味深い。ベースになっているのは『HYSTERIA』が60%、『PYROMANIA』(1983年)が35%、『HIGH'N'DRY』(1981年)が5%といったところでしょうか。ギターのプレイに関しては確実にフィル・コリンなんですよね。だから『HYSTERIA』や『PYROMANIA』がベースなわけですが。

これ、何も知らずに「DEF LEPPARDが80年代に残した未発表デモ音源」って渡されたら、信じちゃうんじゃないでしょうか。ってくらい声も音も曲もツボを押さえているし、マット・ラングによる完成品の一歩手前的な質感もそれっぽいし。

あと、個人的に興味深いのが「The Hills Have Eyes」「Dawn Of The Dead」といった曲タイトル。前者は『サランドラ』、後者は『ゾンビ』とホラー映画のタイトルから用いられているんですね。ちなみに「The Hills Have Eyes」は、その『サランドラ』のリメイク映画『ヒルズ・ハブ・アイズ』の第2弾『ヒルズ・ハブ・アイズ2』のサウンドトラックに提供した1曲。なんだ、まんまじゃないか(笑)。

Amazonのレビューを見たら「DEF LEPPARDもどきにもなっていない」という声がありましたが、これをパロディやオマージュ作品として楽しめるくらいの広い心は常に持ち合わせていたいなと思う、今日この頃です。いやあ、普通に楽しい1枚ですよ。

 


▼LOUDLION『DIE TOUGH』
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2018年12月 8日 (土)

SLIPKNOT『.5: THE GRAY CHAPTER』(2014)

2014年10月にリリースされた、SLIPKNOTの5thアルバム。前作『ALL HOPE IS GONE』(2008年)から実に6年ぶりの新作にあたりますが、その間にベストアルバム『ANTENNAS TO HELL』(2012年)を挟んでいたとはいえ本当に「長く待たされた!」と強く感じさせられた1枚でした。

その6年間というのはバンドにとって非常に大きな変化を及ぼした期間でした。まず、2010年にベーシストのポール・グレイ突然の逝去。その後、2011年からはサポートベーシストを迎えてツアーを行うのですが、今度は本作制作直前にドラマーのジョーイ・ジョーディソンが脱退。9人いたメンバーが7人に減るものの、それでもSLIPKNOTは歩みを止めずレコーディングに突入します。

プロデューサーとしてグレッグ・フィデルマン(METALLICABLACK SABBATHSLAYERなど)を迎えた本作では、前作にあった“ブルータルさ”、“耽美さ”、“ポップさ”の3要素のうち、若干“ポップさ”が減退。そのぶん“耽美さ”が上回り、ポップとは別のベクトルにある「激しくも聴きやすい」内容に仕上がっています。

メロウかつゆったりと始まるオープニングの「XIX」はインストかと思いきや歌モノである事実に驚かされたり、「Killpop」はメロはポップなのにこれまでとはちょっと違うゴシック感が漂っていたりと、なかなか侮れない楽曲が多数含まれています。

もちろん、序盤の「Sarcastrophe」「AOV」や先行トラック「The Negative One」みたいなブルータルナンバーも含まれていますし、「Skeptic」や「Nomadic」からはインダストリアルの香りも感じられ、ヘヴィなバラード「Goodbye」や「The One That Kills The Least」には泣きメロも備わっている。なかなか侮れない内容なんですよ、これが。

アルバムも5枚目となると1stアルバム『SLIPKNOT』(1999年)とは同じことを繰り返すことはできないし、ミュージシャンを20年近くもやっていれば成長も求められる。だけど、ファンは初期のイメージを求め続け、大胆な変化を拒む。特にこの手のエクストリームミュージック界では、ちょっとした変化が人気の命取りになるから、そのバランス取りが非常に難しくなります。そんな中でSLIPKNOTはデビュー時からのメンバー2人を欠くという変化のタイミングを迎えた。つまり、ここで新しいことにチャレンジしなかったらあとがないんじゃないかと思うんです。

40代になったメンバーが、初期の頃と同じように怒りを維持しつつ、ミュージシャンとしては新しいことにトライする。それがこのアルバムで完全にできているとは言い難いですが、その片鱗はいろんなところから感じられるはずです。確かに初期の無軌道さはここにはないし、良い意味ですべてが整理され、コントロールされている。そこを物足りないとも正直思うけど、だけど大音量で聴けば素直に楽しいと思える自分もいる。複雑な感情になるものの、そこまで悪い内情じゃないから余計に評価に困る。自分にとってこのアルバムはそんな1枚なんです。

もしかしたら、2019年初夏にリリース予定の6thアルバムを聴いたら、この5thアルバムに対する正当な評価が下せるかもしれない。発売から4年以上経ったけど、自分にとってはそういう中途半端なポジションの1枚です。

あ、そのどっちつかずな評価は曲集の多さにも多少影響されているかもしれません。本編は14曲で64分とかなり長尺なのに、デラックス盤はさらに2曲追加で70分超えですから。全曲自分の中に完璧に取り込むのに相当時間がかかったのは言うまでもありません。だって、どれもが最高!とは言い難いですし、かといってそこまで劣るってわけでもないし。せめて12曲で60分以内に収めてくれたら、もうちょっとスッと入っていけて、きっぱり評価できたのかもしれませんね。



▼SLIPKNOT『.5: THE GRAY CHAPTER』
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2018年11月27日 (火)

BON JOVI『NEW JERSEY: DELUXE EDITION』(2014)

BON JOVIの4thアルバム『NEW JERSEY』(1988年)に、同作制作時に録音したアウトテイクなどを加えたCD2枚組(もしくはCD2枚組+DVD)作品。バンドのデビュー30周年を記念して、海外で2014年6月、日本で7月にリリースされました。

当初、メガヒットを記録した『SLIPPERY WHEN WET』(1986年)に続くニューアルバムのために、ジョン・ボン・ジョヴィ(Vo)とリッチー・サンボラ(G)はアルバム2枚分以上もの新曲を用意しました。文字どおり、彼らはあの天文学的セールスを打ち立てた3rdアルバム続く4thアルバムを2枚組アルバムにしようと計画していたのです。

しかし、レーベル側からは「2枚組だと単価が高くなり、売り上げに影響する」と難色を示されます。また、用意された楽曲の大半が『SLIPPERY WHEN WET』で示したキャッチーさとは少々距離のある、ヘヴィさを打ち出した作風だったこともあり、レーベルは「1枚でのリリース」「キャッチーな楽曲を追加で書き下ろす」ことを指示。そうして完成したのが、我々の知る『NEW JERSEY』というアルバムでした。

つまり、このデラックス・エディションは当初バンドが想定していた2枚組の、『SONS OF BEACHES』と題された幻の4thアルバムに近い形なのです。

とはいえ、収録曲順などは本来考えていたものとは大幅に異なるはずです。まず、ディスク1が現行の『NEW JERSEY』12曲に、トリビュートアルバムに提供したTHIN LIZZYのカバー「The Boys Are Back In Town」、シングルのカップリングで発表済みのデモ音源「Love Is War」、ヒットシングル「Born To Be My Baby」のアコースティックバージョンを加えた全15曲。すべて既発曲で構成された、まあわかりやすい1枚です。新たにリマスタリングも施されているので、以前のバージョンよりもクリアで迫力のある音を楽しめるのではないでしょうか。

こうやって並べて聴くと、「Love Is War」は「You Give Love A Bad Name」や「Livin' On A Prayer」路線を狙って書いた1曲なんでしょうけど、そのレベルには達していない、だからアルバムから外されたんだってことがよくわかるかと思います。ある意味残酷ですね。

で、問題はディスク2。13曲のデモ音源が収録されており、そのうち「Homebound Train」「Wild Is The Wind」「Stick To Your Guns」は『NEW JERSEY』本編にも収録。「Diamond Ring」はのちに6thアルバム『THESE DAYS』(1995年)で正式にレコーディングされることになります。また、「House Of Fire」はアリス・クーパーの大ヒットアルバム『TRASH』(1989年)に収録、「Does Anybody Really Fall In Love Anymore?」はのちにシェールやケイン・ロバーツに提供することになります。つまり、ボツにはなったものの、意外と耳にしたことのある曲が多く含まれているってことです。

ここで初めて耳にするレア曲やボックスセット『100,000,000 BON JOVI FANS CAN'T BE WRONG』(2004年)に含まれていた曲、90年代に海賊盤で流出したデモ音源集ですでに聴いていた楽曲も含まれており、コアなファンにはそこまで新鮮な驚きはないかもしれません。第一、『NEW JERSEY』という非常に完成されたアルバムの楽曲群と比較すれば、デモ音源とはいえディスク2で聴けるレア曲たちは……やっぱり“劣る”んですよね。そりゃあアルバムから漏れるわ、っていうのも納得してしまうというか。これを全部正式にレコーディングして、2枚組でリリースしていたら、もっと印象の薄い作品集になっていたんだろうなあ。で、リリースから30年経った今もこうして楽しめていたのかなぁ……そういう意味では、バンドもレーベルも正しい判断を下したのではないでしょうか。

あ、個人的に気になったのは、のちにリッチーが自身のソロアルバム『STRANGER IN THIS TOWN』(1991年)に収録した「Rosie」のデモが収録されていないこと。海賊盤では何度も耳にしていたこの曲のデモを、クリアな音質で楽しめると思ったのに。そう考えると、ここに収められたのが『SONS OF BEACHES』デモのすべてではないってことなんですよね。勿体ぶりやがって。

というわけで、現在5年ぶりの来日ツアーを実施中のBON JOVI。今宵はこの名盤+“名盤前夜”の2枚組を聴きながら、改めてこのバンドの魅力に浸ってみてはいかがでしょう。



▼BON JOVI『NEW JERSEY: DELUXE EDITION』
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2018年11月16日 (金)

RISE OF THE NORTHSTAR『WELCAME』(2014)

フランス出身の5人組ハードコア/ニューメタルバンド、RISE OF THE NORTHSTARが海外で2014年11月、日本で2015年8月にリリースした1stアルバム。海外ではNuclear Blast Records、日本ではワーナーミュージックから発売されました。

そのジャケットから日本先行ではないかと思われがちですが、実はかなり前から何度も日本を訪れているくらいの親日家の彼ら。とにかく日本の文化、マンガやアニメが大好きで、バンド名は『北斗の拳』をモチーフにしつつも、ヴィジュアルは日本の(古き良き時代の)ヤンキーを思わせる学ラン姿という“全部のせ”状態。それでいて、東日本大震災の際には復興支援のチャリティソング「Phoenix」をリリースしたりと、とにかく愛すべきバカヤロウたちなのです。

そもそもこのアルバムも収録曲に目を向けると、「Welcame (Furyo State Of Mind)」「Samurai Spirit」「Tyson」「Bosozoku」……「不良」「侍」「タイソン=おそらくマイク・タイソンではなく『ろくでなしBLUES』の前田太尊」「暴走族」と、偏った日本のカルチャー満載。しかも「Bosozoku」のオープニングには、日本を代表する暴走族実録映画『ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR』からのサンプリングが含まれていたりと、とてもテン年代の作品とは思えないもの(これ、権利的に大丈夫なのかなぁ? ほかにも「Ahthentic」や「Blast 'Em All」の隠しトラックにも日本語のセリフが。これもヤンキーアニメかヤンキー映画から拝借したものではないでしょうか)。

過去の楽曲には「Demonstrating My Saiya Style」なんていう『ドラゴンボール』をイメージさせるものもあり、MVでは来日時に訪れた渋谷や秋葉原、甲子園球場まで登場します(しかも、どのMVも日本語訳が用意されている)。これ、日本人がやったらただダサイだけだし、そもそも権利的にいろいろアレだろ!と突っ込みたくなるのですが、不思議と彼らがやると微笑ましいで済ましたくなるのですから、不思議なものです。

サウンド自体はBIOHAZARD以降のニュースクール・ハードコアの影響下にあるもので、そこにスラッシュメタルやメタルコア、ラップメタル/ラップコアなどの要素を加えた、特別新しいとは言えないスタイルですが、そのリズム&ボーカルのグルーヴ感とキレの良いギターリフはただただ気持ちよく楽しめます。「Samurai Spirit」の「♪Sa Sa Sa Sa Sa, Samurai Spirit!」ってフレーズなんて、まさにその真骨頂ですよね。

また本作は1曲のみカバー曲を収録。それがNY出身のラッパー、ファロア・モンチの「Simon Says」というのもなかなかのもの。ほかのオリジナル曲と並べて聴いてもなんら違和感なく楽しめます。

こういったバンドは瞬発力重視のネタものとして消費されがちですが、つい最近4年ぶり(日本では3年ぶり)の2ndアルバム『THE LEGACY OF SHI』をリリースしたばかり。より濃密なROTNSを堪能できます。



▼RISE OF THE NORTHSTAR『WELCAME』
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2018年11月 2日 (金)

WITHIN TEMPTATION『HYDRA』(2014)

オランダ出身のシンフォニックメタルバンド、WITHIN TEMPTATIONが2014年2月に発表した6thアルバム。前2作(2007年の『THE HEART OF EVERYTHING』、2011年の『THE UNFORGIVING』)をRoadrunner Recordsからリリースした彼らでしたが、このアルバムでNuclear Blast Recordsへ移籍。ここ日本でもワーナーからビクターへとリリース元を変更しております。

そういった環境の変化が音楽性にも変化を及ぼした……のかどうかは不明ですが、本作では新たな試みがいくつか用意されています。

まず、従来のゴシックなシンフォニックメタル路線からもう少し真ん中寄りの、ストレートなヘヴィロック(ただし美しいメロディを備えている)へと接近したこと。もちろん以前の作品にもそういった要素はところどころから感じられましたが、本作では少しだけそのテイストに変化が生じ、これによりバンドの雰囲気も若干変わったように感じられます。

そして、過去にもアルバムに1曲くらいは存在した他シンガーとの共演曲が4曲に急増していること。しかも、その人選もいかにも彼ららしいターヤ(元NIGHTWISH)から、ゼロ年代モダンヘヴィネスの代表格であるKILLSWITCH ENGAGEの元シンガー、ハワード・ジョーンズ、アメリカのラッパーであるイグジビット、さらにはUSオルタナティヴロックバンドSOUL ASYLUMのフロントマン、デイヴ・パーナーまで、かなりバラエティに富んだ布陣が揃っています。

僕自身は前作からこのバンドに入ったので、『THE UNFORGIVING』の路線はとても気に入っていたのですが、だからといって本作で展開される世界観がダメということはまったくなく、むしろこのバンドが本来持っているであろう色がより濃くなったことにより、焦点がよりぴったり合ったのではないかと感じました(過去作を大して聴いてないくせして言う意見ではないですが)。そんな中でも、より美しさを追求したターヤとのコラボ曲「Paradise (What About Us?)」はそれこそターヤ在籍時のNIGHTWISHを彷彿とさせ、ラップを導入した「And We Run」も特別風変わりなことをやっているようには感じられない。むしろアクセントとして良い方向に作用しているように思いました。

ファストチューンこそないものの、それに匹敵する攻撃的な「Silver Moonlight」や「Dangerous」は存在する。けれど、本作の醍醐味はやはり紅一点のシャロン・デン・アデル(Vo)の色香が濃厚なバラード、「Edge Of The World」や「Dog Days」、「Whole World Is Watching」にこそあるのではないか。そう感じています。

間もなく約5年ぶりの新作『RESIST』がリリース予定ですが、こちらでもさらなる変化を遂げているようですので、この『HYDRA』がその変化の第一歩だった……そう捉えることもできるでしょう。後から振り返ると、本作がバンドにとっての大きなターニングポイントだった……そう評価されるまでには、もうちょっと時間がかかるのかもしれませんね。



▼WITHIN TEMPTATION『HYDRA』
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2018年8月26日 (日)

DONNIE VIE『GOODBYE: ENOUGH Z'NUFF』(2014)

2013年にENUFF Z'NUFFを脱退したドニー・ヴィ(Vo, G)が、同年に行ったツアー「Magical History Tour」からセレクトされた音源で構成された、2014年2月発売のライブアルバム。フィジカルではCD+DVDで発売され、DVDにはライブの模様に加え、ENUFF Z'NUFF時代のMVがたっぷり収録されています(MV自体の画質はかなりひどいですが)。

さて、このアルバムタイトル……ズナフの2ndアルバム『STRANGTH』(1991年)の収録曲から取ったものです(本ライブアルバムの最後にも収録されています)が、サブタイトルとして付けられた「ENOUGH Z'NUFF」によってその意味合いがかなり変わってくるのではないでしょうか。そこにこのアルバムジャケット。これを知ったときは「ああ、もう復帰はあり得ないんだろうな……」と気持ちを切り替えたことをよく覚えています。悲しかったけどね。

ここで演奏されている楽曲は、ファンならお気づきかと思いますがすべてENUFF Z'NUFF時代の楽曲。これらがドニーのアコギやピアノ弾き語りで表現されています。やっぱりこの“声”なんですよね。何ものにも変えがたい、唯一無二の歌声。この声でグラムメタルやパワーポップ的な楽曲を歌うからこそ、ほかの同系統バンドとは異なる艶やかさが生まれ、オリジナルな存在になれたわけですから。

そして、改めて良曲の多いバンドであると同時に、こうやってギター1本で歌っても魅力が落ちないことに驚かされる楽曲をたくさんもっとバンドだったんだな……と過去形で言いたくなるくらい、いろんなしがらみから解き放たれたドニーの歌を楽しめる、好企画盤だと思います。たとえこれが小金稼ぎのために無理やり作ったものだとしても、すでに脱退したメンバーを含む、30年近く前の音源を発表する今のあのバンドより、こちらを支持したいな。

曲によってはシンガーソングライターのバズ・フランシスがハーモニーで華を添えています。「You Got A Hold On Me」や「New Thing」あたりが、まさにそれ。ラスト2曲(「Someday」「Goodbye」)のバラードもそうですね。

にしても、「There Goes My Heart」や「Fly High Michelle」「Time To Let You Go」はいつ聴いても色褪せない名曲中の名曲だなと。「There Goes My Heart」が発表された時期には、ズナフも再びオーバーグラウンドへ浮上できるんじゃないか……と思ったんですけどね。残念です。



▼DONNIE VIE『GOODBYE: ENOUGH Z'NUFF』
(amazon:海外盤CD+DVD / MP3

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