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2015/09/08

METALLICA『ST. ANGER』(2003)

Facebook上でこのアルバムの話題が上がり、ふと12年前に書いたテキストのことを思い出しました。以下は当時書いたものに若干手を加えた文章になります。基本的には当時聴いた感想をそのままに、表現などをよりわかりやすく少し修正しています。

いや、いいアルバムなんですよ。今日久しぶりに通して聴いてみたけど、やっぱりよかった。結局この後もアルバムは1枚しか出てないけど、『ブラックアルバム』以降で一番好きなアルバムです。って24年も経ってるのかよ! いい加減、これらを更新するようなスゴイの、作ってくださいよ!


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『ブラックアルバム』から12年。ずっとこういう作品を待ってました。

Metallica待望のニューアルバム『St. Anger』はオリジナルアルバムとしては1997年の『Reload』以来だから、約6年ぶりの新作。通算8枚目、デビュー20周年を迎える2003年に“原点回帰”とも“さらなる未来を見据えた”とも取れるような非常に素晴らしい、なおかつ非常にいびつな作品を我々に届けてくれました。

1999年に発売されたオーケストラとの共演ライブ盤『S&M』以降の流れは今さら書くまでもないでしょう。もし『St. Anger』の日本盤を買ったのなら、このアルバム発表までの経緯がライナーノーツに載ってますし、2004年(日本では2005年)には映画『メタリカ:真実の瞬間』でがっつり描かれてますからね。

アルバムリリース1週間前にリードトラックとして公開された「St. Anger」を聴いて以来、このアルバムに対する期待はドンドン高まっていました。実際、音源を聴く前からインタビュー等で「今度のアルバムは初期に戻ったかのような速い曲ばかり」という発言を目にしていたから妙な期待感があったんだけど、実際に聴いた「St. Anger」は自分の想像を遙かに超える強烈な1曲だったんですから。そこから1週間後、発売されたアルバムを手に取り、CDプレイヤーのトレイに乗せ、1曲目「Frantic」から順々に聴いていくわけです……するとド頭からものすごいテンションと異常な音圧にビックリし、続く「St. Anger」に「ああ、CDで聴くとラジオでは聴き取れなかった細かなところまで耳に入ってくるなぁ」と感嘆し、3曲目「Some Kind Of Monster」の“速くて、重くて、複雑で、長い”展開に驚愕し、4曲目「Dirty Window」のブルータルさに爆笑する。でも、これが5曲、6曲と進むうちにそういう楽しむ余裕さえなくなっていくんです。どれも本当に“速くて、重くて、複雑で、長い”んだ、これが。もう最後の「All Within My Hands」にたどり着いた頃には無言でスピーカーを見つめてたし、75分11曲すべてが終了したと同時に深い溜息をついたくらいでした。

アルバム『St. Anger』は決して初期スラッシュ路線への回帰ではなく、どちらかというと『Load』や『Reload』の延長線上にある作品だと思います。しかしラーズが言うように「昔住んでいた場所を懐かしみながら通り過ぎ、新しい目的地を目指す」ような作風でもあるんですよね。そういう意味では過去の集大成とも呼べるんだけど、単なる焼き直しで終わらずさらに過激に前進している。1983年のアルバム『Kill 'Em All』でデビューしてから20年後にたどり着いたのがここかと思うと、ただただ驚くというかなんと言うか……。

確かにここでやってることは決して革新的なことではないかもしれないし、2000年前後に登場したSlipknotやSystem Of A Downといった新世代バンドからの影響が強い音だといえるでしょう。ではMetallicaはそういった新世代バンドのフォロワーに成り下がってしまったのかというと、そうとも言い切れない。確かに前作、前々作あたりでは自身が『ブラックアルバム』(1991年発売の5thアルバム『Metallica』)を産み落としたことでガラリと変えてしまったシーン自体のフォロワーという、すごく複雑な状況に陥っていたと言えなくもないですが、むしろ今作は「SlipknotやSystem Of A Downといったバンドからヒントを得て、今のMetallicaなりに消化したサウンド」と呼んだほうがしっくりくるように感じます。ほとんど一発録りに近く、ほぼ手を加えていないような生々しいサウンド。ドラムの皮がギターサウンドでビリビリ共鳴してる音まで拾うほどに生々しいし、ボーカルもほぼノンエフェクトのように聞こえる。『St. Anger』においてはこの“生々しさ”がブルータルさをさらに増長させているし、ノイズやハウリングまでをも味方に付け、個々の楽器が共鳴し合って混沌とした「変な周波数の音」まで生みだしてる。そういう点は上記2バンドやその類のバンドとは一線を画するところだと思います。

最初にこのアルバムの楽曲に触れたとき、僕はそれについて「無感情な冷たさと複雑な曲展開が『...And Justice For All』を彷彿とさせる」と表現しました。しかしアルバム全体を通して聴いたときに感じたのは、確かにその感覚に近いんだけど、もっと無軌道さ、無修正っぽさを強くイメージさせるというか。比べるのも変な話ですが、これを聴くと『...And Justice For All』でさえちゃんと計算された様式美性が強く感じられる(ように思う)。だけど『St. Anger』の場合は次に何がくるかわからない、そんな展開の仕方をするんです。Metallicaは今作の楽曲をスタジオでジャムセッションしながら作っていったそうですが、一度ジャムった音源を後でプロ・トゥールズを使って編集して、その編集した構成でもう一度ジャムることを繰り返していたみたいで……通常ならそこで整理されてスッキリするはずなのに、ある意味真逆の“いびつ”なものに仕上がっているという。それをメンバー全員(レコーディングにはプロデューサーのボブ・ロックがベーシストとして参加)で顔を突き合わせて作業してる感じがまた……今作はメロディや歌詞までもが共同作業。だからクレジットに「Hetfield-Ulrich-Hammett-Rock」とメンバー全員の名前が入ってるわけです。

と、いろいろ書いてみたものの、これ以上変な先入観を植え付けたくないので、とにかく1回通して聴いてほしい。聴き終わったら、続いて歌詞や対訳を手にしながらもう1回聴いて、さらに付属DVDでのスタジオライブを通して観る(『St. Anger』全収録曲を新ベーシスト、ロバート・トゥルージロを含む体制で演奏したもの。アルバムと同じ曲順で収録している。日本では現行のユニバーサル盤には付属されておらず、ソニー盤のみに付いているので、中古で探すことをオススメします)。そうすると、このアルバムの凄味がストレートに伝わってくると思います。1回目よりも2回目、2回目よりも3回目。回数を重ねるごとにその凄味はどんどん増していき、DVDでのスタジオライブが究極の決定打となることでしょう。

そしてこのアルバムを聴いたら『Load』や『Reload』でやったこともなんだか許せてきた。あれがあったから、ここにたどり着いたんだ、と。確かにジェイソン脱退は残念だったけど、ロバートを含む今の編成だって悪くない。いかにもライブ栄えするパフォーマーだと思うしね、ロバートって(DVDを観る限りでは)。そして、その相乗効果でジェームズやカーク、そしてラーズまで生き生きとプレイしてる。ホント、早くライブが観たいよね。しかも古い曲じゃなくて、このアルバムからの曲を演奏するライブを。ああ、愉快愉快。最高の気分だ!



▼METALLICA『ST. ANGER』
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投稿: 2015 09 08 01:10 午前 [2003年の作品, Metallica] | 固定リンク