カテゴリー「2015年の作品」の44件の記事

2019年10月30日 (水)

THE SONICS『THIS IS THE SONICS』(2015)

2015年3月にリリースされた、THE SONICS正真正銘のニューアルバム。

THE SONICSは60'sガレージロック/ガレージパンクを語る上では欠かせないレジェンド的存在で、2012年に日本のTHE BAWDIESが招聘して一緒にツアーを行ったことでその存在を知ったという邦楽リスナーも少なくないのでは。60年代に発表した2枚のオリジナルアルバム『HERE ARE THE SONICS!!!』(1965年)と『BOOM』(1996年)は“ガレージパンクの教科書”的作品として、今でも多くのロックファンに愛聴されています。

彼らのオリジナルアルバムは本当に少なく、ほかには再録曲を含む『INTRODUCING THE SONICS』(1967年)と、80年代にジェリー・ロスリー(Vo, Organ)を軸に変則的メンバーで制作された『SINDERELLA』(1980年)があるのみ。2010年には新録4曲にライブテイク4曲から構成されたEP『8』(日本盤はさらにボートラ2曲を追加した全10曲入りのアルバムボリューム)が発表されており、このとき「約40年ぶりの新録スタジオ音源」と声高に騒がれましたが、2010年から40年を逆算すると1970年前後……つまり、『SINDERELLA』は“なかった”ことにされているんですね。

ちなみに、今作『THIS IS THE SONICS』が発表されたときも「48年ぶりのニューアルバム」との触れ込みだったので、以下同文。そう考えると、本作は通算4作目のスタジオアルバムということになるんでしょうか。

本作はジェリーのほか、ラリー・ペリパ(G)、ロブ・リンド(Sax)というオリジナルメンバー3人のほか、フレディ・デニス(B, Vo)、ダスティ・ワトソン(Dr)という編成で制作。リリース後もこの布陣でライブを行っていたようですが、2016年にはジェリーとラリーがツアーからの引退が宣言され、現在オリジナルメンバーはロブのみという状況のようです。

全12曲で32分というトータルランニング、しかもモノラル録音という徹底されたスタイルの作り込み。そして、オリジナル曲とカバーがほぼ半々という構成も、初期2作に習ったもので、こういった文字情報だけだと「THE SONICSのオリジナルメンバーがTHE SONICSを“模倣”して現代によみがえらせた」と穿った受け取り方もできるかもしれません。

し・か・し。聴いていただけばおわかりのとおり、ここで展開されているハイテンションなガレージロックサウンドはTHE SONICS以外の何者でもなく、オープニングトラックの「I Don't Need No Doctor」(ご存知、レイ・チャールズのカバー)が始まった瞬間「あ、THE SONICSだ!」と確信するはずです。

脳天から血が吹き出るんじゃないかってくらいに高いテンションは、初期の作品にも匹敵するものがあるかな。2015年のレコーディングということで、モノラルとはいえかなり整理された録音となっているので、そこに初期の破壊的なアグレッシヴさは感じられず、そこだけが残念かな(こればかりはね)。とはいえ、そんな中で最善を尽くしたプロデューサーのジム・ダイアモンド(THE WHITE STRIPES、THE VON BONDIES、THE DIRTBOMBSなど)の手腕は現代においては素晴らしいものがあるとは思います。実際、尖っているのにめちゃめちゃ聴きやすいですからね。

初期2作は別格として、そこと比較すれば確かに聴き劣りするかもしれない。だけど、ロックアルバムとしては文句なしの完成度なのは間違いない事実。ああだこうだ言う前に、純粋に楽しみたい1枚です。

 


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2019年9月24日 (火)

REFUSED『FREEDOM』(2015)

2015年6月末にリリースされた、REFUSEDの4thアルバム。ここ日本では3ヶ月遅れの2015年9月下旬に発表されています。

前作に当たる3rdアルバム『THE SHAPE OF PUNK TO COME』(1998年)をリリース直後、バンド解散を発表したREFUSED。メンバーはTHE (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACY、INVSN、TEXT、AC4.などといったバンドで音楽活動を続けましたが、2012年に期間限定で再結成。このときはフジロックでも来日しており、相当話題になりました。

そして、2015年に本格的再始動。2012年の再結成時に参加したジョン(G)が不参加で、デニス(Vo)、クリストファー(G)、マグナス(B)、デヴィッド(Dr)の4人でスタジオ入りし、ニック・ローネイ(YEAH YEAH YEAHS、ニック・ケイヴ、PUBLIC IMAGE LTD、KILLING JOKE、GANG OF FOURなど)をプロデューサーに迎え完成させたのが本作です(「Elektra」「366」のみ、楽曲共同制作者であるシェルバック(エド・シーラン、テイラー・スウィフト、PiNKなど)がプロデュース)。

REFUSED休止中もそれぞれがミュージシャン/表現者として常に活動を続けていたとはいえ、REFUSED名義のアルバムは実に17年ぶり。その間にポストハードコアやミクスチャーシーンはどんどん進化していきましたし、ぶっちゃけ当時は革新的だった『THE SHAPE OF PUNK TO COME』も今の耳で聴けば“新しすぎる”なんてこともなくなっています。

しかし、この『FREEDOM』というアルバムで展開されている世界観、サウンド、ボーカル……そのすべてが『THE SHAPE OF PUNK TO COME』から地続きであると同時に、古臭さを一切感じさせない「2015年の音」に仕上がっているのですから、不思議ったらありゃしない。

『THE SHAPE OF PUNK TO COME』もかなりソリッドで殺傷力の強い1枚でしたが、本作の殺傷力もハンパないものがあります。しかし、そのやり方(殺り方?)がちょっと違う。前作が切れ味抜群の刃物だとしたら、今作は数百キロはあるであろうハンマー。そこが経験や知識の蓄積によるものなのか、あるいは単純に表現者として成熟したということなのか。なんにせよ、再結成後のアルバムでがっかりさせられずに済んだだけでなく、あの当時並みの興奮を再び味わえるとは思っていなかったので、これにはびっくりです。

とはいえ、本作で鳴らされている音はポストハードコアそのものかといえば、実はちょっと違う……いわば『THE SHAPE OF PUNK TO COME』で見せた“パンクの未来”のさらに先を進むものなのかもしれません。例えば「Françafrique」は前作の流れを汲むものの、しっかりモダンな色合いが加えられている(リリース時期的に、BRING ME THE HORIZON「Happy Song」とイメージが重なった人も多いのでは。しかし、あちらがニューメタル以降だとしたら、こちらはもっとポストハードコアなんですよね)。「Destroy The Man」や「Servants Of Death」にはソウルミュージックなどブラックミュージックの香りも感じられるし(これは確実にTHE (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACYからの流れでしょう)、ラストのエピックナンバー「Useless Europeans」まで本当に一瞬たりとも気が抜けない。いや、本当に力作(というか激作)ですよ、これ。

リリース元のEpitaph Recordsの日本流通先が当時のソニーからワーナーに移ったため、現在は日本盤が廃盤のようですが、10月には待望のニューアルバム『WAR MUSIC』の発売が控えているので、ぜひ解散前の3作とあわせて再発を願いたいところです(とはいえ、『WAR MUSIC』はユニバーサル系のSpinefarm Recordsからのリリースなので難しそうですが)。

 


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2019年9月 7日 (土)

EUROPE『WAR OF KINGS』(2015)

2015年3月にリリースされた、EUROPE通算10作目のスタジオアルバム。

前作『BAG OF BONES』(2012年)ではプロデューサーにケヴィン・シャーリー(IRON MAIDENAEROSMITHTHE BLACK CROWESDREAM THEATERなど)を迎え、再結成後としては初めてイギリスでトップ50入りを果たすなど好成績を残しました。

続く今作では、プロデューサーをデイヴ・コッブ(RIVAL SONSなど)に交代。再始動後は基本的に毎作プロデューサーを変えているEUROPEですが、このデイヴ・コッブとの出会いは相当手応えがあったらしく、続く最新作『WALK THE EARTH』(2017年)でもデイヴを再起用さいています。

基本的には『BAG OF BONES』で試みた……いや、再結成第1弾アルバム『START FROM THE DARK』(2004年)で実践した、DEEP PURPLEUFOTHIN LIZZYなどを彷彿とさせるルーツロック/クラシックロック路線を推し進めたものなのですが、正直楽曲面では単調でイマイチという感想しか残らなかった『BAG OF BONES』から脱却し、バンドアンサンブル含めかなり高品質な楽曲がずらりと並ぶ1枚に仕上げられています。

ヘヴィさは前作譲りですが、そのヘヴィさが妙に浮くことなく楽曲とマッチしている。また、楽曲自体もバラエティに富み、しっかり練り込まれたアレンジとプレイ/フレーズと相まって「これはこれ」として楽しめるものに昇華されている。もはや「80年代のEUROPE」がどうのこうのとかどうでもよくなるくらい、気合いの入りまくったハードロック/ブルースロックを堪能できる1枚なのです。

しかし、メロディに関しては相変わらずと言いますか、抑揚が足りないジョーイ・テンペスト(Vo)には少々落胆させられます。惜しい、本当に惜しい。

このアルバムまでの時点で、再結成以降5枚のアルバムが制作されているわけですが、メロディアスさや楽曲の強度でいいますと7thアルバム『SECRET SOCIETY』(2006年)がベストで、次点が8thアルバム『LAST LOOK AT EDEN』(2009年)かな?と今でも思っています(ただ、アルバムトータルの完成度で考えると『LAST LOOK AT EDEN』がベストなんですけどね)。

しかし、楽曲の練られ方や演奏力、表現力に関して言えば、実は本作がトップクラスではないか……そう思う自分がいます。だって「Praise You」あたりを聴いてしまったら……ねえ?(ちなみに、この曲のボーカルは悪くないと思います)

ジョーイの声に関しては無いものねだりをしてしまいがちですが、音楽性については(個人的には)この路線は気に入っているので、ここを経て続く『WALK THE EARTH』までよくたどり着けたな、と今さらながらに関心しています。そういった意味では、本作とその前作『BAG OF BONES』は過渡期的作品かもしれませんね。

 


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2019年5月17日 (金)

MICHAEL MONROE『BLACKOUT STATES』(2015)

2015年10月に発表された、マイケル・モンローの同名バンド名義による3rdアルバム。マイケル個人としては通算8枚目のソロアルバムに当たります(JESUSALEM SLIMDEMOLITION 23.を含むと10枚目)。

前作『HORNS AND HALOS』(2013年)から加わったドレゲン(G / BACKYARD BABIESTHE HELLACOPTERS)が早くも脱退(こちらは健康上の理由とBACKYARD BABIES再始動が理由)。ジンジャー・ワイルドハート、ドレゲンとスター性の強いギタリスト、かつソングライターとしても強烈な個性を持つ人間がアルバムごとに変わる状況含め、いかにもマイケル・モンローらしいなと思ってしまいましたが、ドレゲンに代わり加入したのはリッチ・ジョーンズ(ex. THE BLACK HALOS、ex. AMEN、ジンジャー・ワイルドハードなど)。

……あれ、今回地味じゃね?(苦笑)

そう思った人、仲間だね(笑)。リッチは2013年のジャパンツアーに参加できなかったドレゲンの代役として帯同したキャリアの持ち主で、加入も自然な流れだったんでしょう。要は“人間性”が求められたのかな。

前作の時点でソングライティング能力を遺憾なく発揮していたもうひとりのギタリスト、スティーヴ・コンテは本作でも大半の楽曲に名を連ねており、改めてこのバンドのメインソングライターとして手腕を振るっていますが、さて、リッチ・ジョーンズはどうかといいますと……。

全13曲中8曲にクレジットされており、そのすべてがスティーヴとの共作、あるいはその2人とサミ・ヤッファ(B)やマイケルとの共作という形となっています。スティーヴのように単独名義での楽曲はないものの、少なからずバンドの曲作りに貢献できているようです。ひと安心。

さて、肝心の内容ですが、どこからどう切り取ってもマイケル・モンローそのもの。ソロになってから、特にこのバンド編成になってからの彼のパブリックイメージそのままのサウンド/楽曲を楽しむことができます。つまり、「ポップで親しみやすいメロディが備わった豪快なロックンロールとパンクロック、ときどきレイドバックしたカントリーロック風ポップチューンも」楽しめるというわけです。あと、ディー・ディー・ラモーン(RAMONES)が生前書き残した未発表曲「Under THe Northern Lights」が、マイケルの手によって正式レコーディングされているのも本作の特徴かな。

ただ、悪い言い方をしてしまうと、何の驚きもない予定調和とも受け取れる。これはもう、聴き手に委ねるしかありませんが……僕はわりと好きです。いや、かなり好きかな。飛び抜けてすごい!と思える楽曲が1曲くらい欲しかった気がするけど、前作と前々作『SENSORY OVERDRIVE』(2011年)が良すぎたというのも大きいのかしら。ちょっと贅沢ですよね。

そんな中、個人的には「R.L.F.」という高速パンクチューンが大のお気に入り。これ、マイケルが昔から口にしてきた信条「Rock Like Fuck」のことですからね。そりゃ嫌いになれるわけがない。いまだにこの姿勢でロックと向き合ってくれていることに感謝します。

さて、本作リリース後は30年のソロキャリアを総括するベストアルバム『THE BEST』(2017年)をリリースしていますが、オリジナルアルバムは4年待っても届かない状況。そんな中、この夏には『SUMMER SONIC』で3年ぶりの来日が実現……ってことは、そろそろってことですよね? 期待してもいいですよね? 過剰に期待して待ってます。

 


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2019年4月28日 (日)

HOLLYWOOD VAMPIRES『HOLLYWOOD VAMPIRES』(2015)

アリス・クーパー(Vo)、俳優のジョニー・デップ(G)、AEROSMITHジョー・ペリー(G)を中心に結成されたスーパーバンド、HOLLYWOOD VAMPIRESが2015年9月に発表したデビューアルバム。リリース当時、全米43位/全英30位という成績を残しています。

アルバム本編14曲(日本盤やデラックス盤はさらにボーナストラック追加)中、オリジナル曲は3曲のみ、うち1曲は1分半程度のナレーションベースの楽曲なので、純粋なオリジナル曲は2曲と言えるでしょう。しかし、このバンドの魅力はそういったところにあるのではなく、ロッククラシックと呼ばれる過去の名曲群とそれらに参加する豪華なゲスト陣にあると言えるでしょう。

ピックアップされているカバー曲もTHE WHO「My Generation」、LED ZEPPELIN「Whole Lotta Love」、THE DOORS「Break On Through (To The Other Side)」、ジョン・レノン「Cold Turkey」、ジミヘン「Manic Depression」、SMALL FACES「Itchycoo Park」、PINK FLOYD「Another Brick In The Wall (Part 2)」、そしてアリス自身の「School's Out」などロックファンなら誰もが一度は耳にしたことがあるはずの定番曲ばかり。

そういった楽曲をアリスのボーカル、ジョニー&ジョーのギターを軸にブライアン・ジョンソン(Vo/AC/DC)、ペリー・ファレル(Vo/JANE'S ADDICTION)、ポール・マッカートニー(Vo, B, Piano)、オリアンティ(G)、ジョー・ウォルッシュ(G/EAGLES)、スラッシュ(G)、キップ・ウィンガー(B/WINGER)、ザック・スターキー(Dr)、デイヴ・グロール(Dr/FOO FIGHTERS)などそうそうたる面々で華麗に盛り上げているわけです。

軸にあるのは60〜70年代のクラシックロックに対する敬意と愛情なもんですから、アレンジに関しても基本的にはオリジナルに忠実。現代的に味付けするにしても破綻することがない範囲でのリアレンジとなっています。そういう意味も込めてのバンド名(ハリウッドに今も巣食うヴァンパイアたち)なのでしょうね。

ジョー・ペリーが思ったほど暴れまくってないとか、ジョニー・デップのギターテクが意外としっかりしているとか、久しくオリジナル新作を発表していなかったアリス・クーパーのボーカルをたっぷり楽しめるとか、そういった視点もあるものの、基本的には「キャリアのある大御所たちが嬉々としてロッククラシックをカバーして楽しむ様子を、目を細めて微笑ましく眺める」というのが本作を楽しむ上での趣旨なのではないかと。それくらい甘々でいいんじゃないかな。

そんなHOLLYWOOD VAMPIRESも間もなく4年ぶりの新作『RISE』をリリース予定。次作はオリジナル曲が中心で、カバーは3曲程度とのことで、最初のテーマから逆転してしまっていますが、果たしてどうなることやら。

 


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2019年4月13日 (土)

HALESTORM『INTO THE WILD LIFE』(2015)

2015年4月にリリースされた、HALESTORM通算3作目のスタジオアルバム。前作『THE STRANGE CASE OF...』(2012年)が全米15位という好成績を残しましたが、今作はそれを上回る全米8位を記録。ロックファンがいかにこのバンドの新作を待ち望んでいたかが伺える結果だと思います。

前作は「ヘヴィさ」「スピード感」「キャッチーさ」の3要素のバランスが絶妙で、「こりゃ売れるわ!」って1回聴けばすぐに理解できる即効性の強い内容でした。が、今作はバンドとしての地力とリジー・ヘイル(Vo, G)のボーカリストとしての個性/魅力を最大限に引き出すために、3要素のうちの「ヘヴィさ」を強調した作風へとシフトしています。

オープニングを飾る重々しい「Scream」からして、前作での軽快な序盤のノリとは異なるもの。だって、前作は「Love Bites (So Do I)」「Mz. Hyde」「I Miss The Misery」という鉄壁の3曲でしたからね。それに対して、本作では「Scream」から組曲のようにミドルヘヴィ「I Am The Fire」へと続き、その後も「Sick Individual」「Amen」とミドルナンバーが続く。ここまで変化がない一本調子な構成、ぶっちゃけ挑戦しすぎでしょ? 最初に聴いたときは正直、「これ、好きになれるかなあ。リピートする気になれるかなぁ」と不安を感じたことを今でも覚えています。

その後は「Dear Daughter」のような渋めのピアノバラード、レイドバックしたミディアムナンバー「New Modern Love」とやっぱり“アガる”ことはないのですが、後半折り返しに入ったところでヘヴィながらもアッパーさ加わった「Mayhem」で少し色が変わる。再びバラード調の「Bad Girl's World」でトーンダウンするも、11曲目「Apocalyptic」のダイナミックな演奏、ラストを飾るシンプルなロックンロール「I Like It Heavy」(ソウルフルなエンディングも最高なこと!)などで少し変化をつけてくれるので、なんとか最後まで乗り切ることができました。

こう書くと非常にネガティブな印象を与えるかもしれませんが、どの曲も非常にカッコいいし、リジーのシンガーとしての魅力が100%伝わるアレンジに仕上がっていると思います。ただ、それがミディアム〜スローテンポで13曲も続くと、さすがに厳しいかなと。もちろん、これがアメリカの“ノリ”だってことは重々承知しています。が、日本ではこれはさすがに厳しいような気がします。いくらHALESTORMが好きな自分でも、このアルバムを何度もリピートする気にはなれないほどですから……。

しかもこのアルバム、デラックス盤には「Jump The Gun」「Unapologetic」という2曲を加えた56分/15曲構成。ですが、ハネ気味のリズムが気持ち良い前者とソウルフルなメロと節回しが印象的な後者という、本編にはないタイプの楽曲がボーナストラックってどういうことよ?(苦笑) そこまでして本編のトーンを統一させたかったんでしょうかね。戦略とはいえ、これは解せないなあ。この2曲を加えて、10〜12曲程度に絞ったほうがもうちょっとまとまりがよかった気がします。あるいは、1曲くらいアップテンポの楽曲を入れるとか……まあその反省が、次作『VICIOUS』(2018年)に活かされたんでしょうね。

うん、ツウ好みの1枚だと思います。ビギナーは2ndか4thから入って、最後に聴くといいんじゃないかな。それからでも十分に魅力は伝わると思うので(むしろそのほうが伝わりやすいはず)。

 

▼HALESTORM『INTO THE WILD LIFE』
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2019年4月12日 (金)

GHOST『MELIORA』(2015)

2015年8月に海外でリリースされた、GHOSTの3rdアルバム(日本盤未発売)。本作はスウェーデン本国ではもちろん1位、さらに全米8位、全英23位という好成績を残しており、スウェーデンのバンドとしてはEUROPEの大出世作『THE FINAL COUNTDOWN』(1986年)以来、約30年ぶりの快挙を達成しています。

大ヒットを記録する次作『PREQUELLE』(2018年)の片鱗はすでにこの時点で表出しており、歌メロのポップさ、キャッチーさは次作にも匹敵するものがあります。ただ、『PREQUELLE』での(良い意味での)アメリカナイズとは異なり、本作にはヨーロッパのバンド特有の陰りや湿り気が至る所に散りばめられており、コーラスの重ね方などに70年代のサイケデリックロックやプログレッシヴロックにも通ずる緻密さが感じられます。

オープニングの「Spirit」から数珠つなぎで流れるような構成は、どこかコンセプトアルバムのようでもあるしホラー映画やサスペンス映画のサウンドトラックのようでもある。そんなドラマチックな序盤から叙情的な「He Is」で空気が冷え切ったところでヘヴィな「Mummy Dust」を急にお見舞いされると、まるで不意打ちを食らったかのようなショックを受けるはず。しかも曲中にさりげなく挿入される、不穏さを表現するピアノフレーズ。単にヘヴィなだけでは終わらせないこのダークさ、クセになるくらいたまらんです。

全体を通して聴くと1stアルバム『OPUS EPONYMOUS』(2010年)のヘヴィさ、アグレッシヴさと2ndアルバム『INFESTISSUMAM』(2013年)の叙情性の良いとこ取りといったところで、バランス感は過去3作中で随一。アングラ臭もだいぶ薄まり、キャッチーさが強まったことでかなりメジャー感が増したのではないでしょうか。

とはいえ、そのヴィジュアル含めまだまだカルト的な域は脱していないのかな。まあそこが良かったんだけど。

いわゆるヘヴィメタルというよりは、ダークなハードロックという表現がぴったりな1枚。最新作『PREQUELLE』でGHOSTにハマったというリスナーが次に手に取るにはうってつけの作品だと思います。ここから1stに進むか、それとも順を追って2ndにたどり着くかは、このアルバムを聴いて判断してもらえばいいかな。それくらい、GHOSTというバンド(アーティスト)における“真ん中”にある1枚だと思うので。個人的にはこのアルバム、『PREQUELLE』と双璧の完成度だと思っています。

なお、本作は2016年に発売されたEP『POPESTAR』と合体させた2枚組デラックス盤も出回っており、配信だとこのデラックス盤がメインになっています。ライブには欠かせない名曲「Square Hammer」が含まれているので、これから聴こうという人はこのデラックス盤がオススメです。

 


▼GHOST『MELIORA』
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2018年6月 7日 (木)

LIKE A STORM『AWAKEN THE FIRE』(2015)

ニュージーランドはオークランド出身の4人組メタルバンド、LIKE A STORMが2015年2月に発表した2ndアルバム(日本盤未発売)。リリースから1、2ヶ月後に店頭で試聴して気に入って購入して、しばらくは移動中によく聴いてた記憶があります。

なんでこのタイミングに取り上げようかと思ったかといいますと、今月3rdアルバムがリリースされるらしいので、久しぶりに引っ張り出したわけです。よく聴いたなぁって。

このバンドはクリス(Vo, G)、マット(G)、ケント(B)のブルックス3兄弟が中心となり結成。2009年のデビューアルバム『THE END OF THE BEGINNING』(2009年)でかのケニー・アロノフ(Dr)を迎えて制作し、リリース後にはSHINEDOWN、SKILLET、PUDDLE OF MUDD、DROWNING POOL、ALTER BRIDGEらとツアーを回ったとのこと。この布陣からも、なんとなく音楽性が想像できるのではないでしょうか。

そのとおり。ポスト・グランジ以降のヘヴィロックやニューメタルを軸にしつつも、そのルーツには土着的なカラーも見え隠れし、そこがメロディなどに表出しており、適度に心地よく感じられます。

オープニングナンバー「Chaos」や続く「Love The Way You Hate Me」にはオーストラリアの民族楽器であるディジュリドゥがフィーチャーされているのも個性的ですし、「Never Surrender」なんてリフやイントロこそモダンなヘヴィメタルそのものですが、メロディは豪快なアメリカンハードロックといった印象。そんなヘヴィな楽曲の間に「Break Free」や「Southern Skies」のようなカラッとしたバラード、「Ordinary」みたいにちょっとダークなアコースティックナンバーはいると、よりこのアルバムのメロディアスさが浮き立つのですから面白い。

で、このアルバムの面白みはカバーのセンスにもあるのかなと。9曲目に収録されている「Gangster's Paradise」はアメリカのラッパー、クーリオが1995年に発表した楽曲のカバー。同年公開されたアメリカ映画『デンジャラス・マインド/卒業の日まで』のサウンドトラックに収録され、メガヒットを記録しました。カバーバージョンは原曲に忠実なアレンジながらも、ヘヴィメタルバンドが演奏するとこうなるんだという仕上がり。ラップパートはメロウに歌われており、それにより普通にアルバムの中の1曲として馴染んでいます。当時は「そうか、もう原曲リリースから20年も経ったのか……」という事実に驚かされたものです。

突出した個性といえば先の民族楽器を導入した点が挙げられますが、トータルではまだまだこれからのバンドといった印象。3rdアルバムから先行カットされた新曲「The Devil Inside」は本作『AWAKEN THE FIRE』により磨きをかけたような1曲なので、ここで化けるのかどうか期待しながら次作を待ちたいと思います。



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2018年3月20日 (火)

SKINDRED『VOLUME』(2015)

SKINDREDが2015年10月(UK/日本は11月)にリリースした通算6作目のオリジナルアルバム。日本ではデビュー作(通算2作目)の『ROOTS ROCK RIOT』(2008年)以降、毎回リリース元が異なっていましたが、この『VOLUME』が好評だったこともあってか、間もなく日本先行リリースされる新作『BIG TINGS』は引き続きビクターから日本盤が発表されるとのこと。こうやって安定してくれたら、日本にも呼びやすいんじゃないでしょうか。特に『VOLUME』を携えた来日公演は2度も実現しただけに、ぜひ今後も定期的に日本でライブをしてもらいたいものです。

さて。そんなSKINDREDのことを昨年秋の『LOUD PARK 17』でちゃんと知った、ちゃんと聴いたというメタルファンも少なくないのではないでしょうか。特に年季の入ったメタラーにとっては、ラガメタルと呼ばれるミクスチャーロックサウンドは敬遠されがちですからね。

このSKINDREDって2000年代半ば以降に日本で盛り上がり始めたラウドロックシーンとの親和性が非常に高く、それによってCrossfaithやSiMのようなバンドのと交流も深まっていった。そういった事実が、頭の固いリスナーからは敬遠される要因にもなったかもしれません。

しかし、この『VOLUME』ってアルバム、ゼロ年代以降のモダンヘヴィネスを通過したヘヴィメタル、もっといえば90年代後半のSEPUTLURAKORN以降のグルーヴィーなヘヴィロックバンドを愛好する人なら絶対に気にいる要素満載なんです。

実際にこのアルバムを聴くと、そこまでレゲエレゲエした楽曲はほんの数曲で、むしろヘヴィでノリの良い楽曲の上にレゲエをイメージさせる心地よい歌メロが乗っているものが大半。基本的にはその程度のノリなんですよ。ギターも適度にザクザクしていてヘヴィだし、ベースのゴリゴリ感やドラムの1音の重み、低音を強調したサウンドメイクは完全にゼロ年代以降のモダンなヘヴィメタルそのもの。そりゃあオールドスタイルの王道メタルだけが好きって人には厳しいかもしれませんが、現代的なサウンドに寛容なリスナーなら少なからず引っかかる要素は存在しているはずなんです。

本作はDJやエレクトロ系のサウンドメイクを担当するダン・スタージスが加入し、正式に5人編成となって初めて制作した1枚。が、ダンはこのアルバムを携えたツアー中にバンドを脱退。先の『LOUD PARK 17』はもとから在籍する4人で実施されました。

そういったサウンドエフェクトはインタールード含め、味付けとしては非常に面白いものがありますが、昨年のライブを観た人ならおわかりのとおり、特にそういった要素を排除してもバンドとしての魅力に何ら変化はない。そういったバンドの基礎体力が、間もなくリリースされる新作には反映されていることでしょう。

とにかく。ラガメタルだとかミクスチャーだとか、そういった小難しい枠は無視して、爆音で楽しみたいヘヴィロック/メタルアルバムの1枚。新作発表を前に、ぜひ復習してみてはいかがでしょう。



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2018年3月12日 (月)

JUDAS PRIEST『DEFENDERS OF THE FAITH』(1984 / 2015)

前作『SCREAMING FOR VENGEANCE』(1982年)から1年半ぶり、JUDAS PRIESTにとって通算9枚目のスタジオアルバム。プロデューサーには前作同様トム・アロムを、エンジニアにはのちにANTHRAXSUICIDAL TENDENCIESなどで名を馳せるマーク・ドッドソンを迎え制作されました。チャートアクション的にも全米18位、全英19位と前作に匹敵する成績を残し、「Freewheel Burning」「Some Heads Are Gonna Roll」がそれぞれ全英42位、全英97位とシングルヒットを記録しています。

前作『SCREAMING FOR VENGEANCE』が名盤『BRITISH STEEL』(1980年)での路線を進化させ、質感的にカラッとしたアメリカンなサウンドだったのに対し、今作『DEFENDERS OF THE FAITH』はもっとウェット感が強く、ファットな音作りが施されています。そこが、このアルバムから漂う“よりブリティッシュ”な香りの大きな要因になっているのではないでしょうか。

楽曲自体も前作の延長線上にある、正統派HR/HMが満載。前作では「The Hellion」〜「Electric Eye」というドラマチックなオープニングが印象的でしたが、今作では疾走感が強烈な「Freewheel Burning」からスタート。どこかアメリカンな香りが感じられるこの曲も、『SCREAMING FOR VENGEANCE』での成功がなければ生まれなかった1曲かもしれません。特に中盤のギターソロで聴ける、ツインリードをフィーチャーした構成は“これぞJUDAS PRIEST!”と呼べるものかもしれませんね。

その後もスピード感に満ち溢れるマイナーコードの「Jawbreaker」、彼ららしいミドルテンポの「Rock Hard Ride Free」と聴き手の高揚感を煽り、当初はアルバムのオープニングを飾る予定だったと言われるドラマチックな「The Sentinel」へと続いていきます。

アナログB面冒頭にあたる5曲目「Love Bites」はデジタルっぽさが加わった気持ち良いテンポ感の1曲。このへんは続く『TURBO』(1986年)への布石を感じさせますね。そしてサイドアッパーな「Eat Me Alive」、ボブ・ハリガン・Jr.のペンによる「Some Heads Are Gonna Roll」、JUDAS PRIEST流メタルバラード「Night Comes Down」、アルバムのクライマックスとなるヘヴィな組曲「Heavy Duty」「Defenders Of The Faith」で締めくくります。

『SCREAMING FOR VENGEANCE』の延長線上にある続編かと思いきや、前作とも違う作品を作り上げたJUDAS PRIEST。NWOBHMからUSメタルの勃発期を経て従来のHR/HMバンドが真価を問われる中、彼らは自分たちが守るべき信念をここでしっかり形として残したかったのかもしれませんね。それがこのアルバムタイトルにもしっかり刻まれているわけですから。『SCREAMING FOR VENGEANCE』と『DEFENDERS OF THE FAITH』、どっちのほうが好きか?という難問にはいまだに答えにくいものがありますし、日によってこっちのほうが好きみたいなのはありますが、個人的には『SCREAMING FOR VENGEANCE』は気構えることなく楽しめる1枚、『DEFENDERS OF THE FAITH』は聴くためにしっかり向き合う姿勢を整えようとする1枚かもしれません。それくらい、本作は以降のJUDAS PRIESTにとって本流的な作品と言えるのではないでしょうか。



▼JUDAS PRIEST『DEFENDERS OF THE FAITH』
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なお、本作はオリジナル版リリースから30年以上経過した2015年春、同作リリース時期のライブ音源(CD2枚組)を同梱した30周年記念盤も発売されています。

「Love Bites」から重々しくスタートするこのツアー音源は、『DEFENDERS OF THE FAITH』という力作の楽曲を軸に、「Grinder」「Metal Gods」「Sinner」といった代表曲に加え、「Desert Plains」なんてこの時期じゃないと聴けない今となってはレアな楽曲も含まれています。

実はここ日本では、『DEFENDERS OF THE FAITH』を携えた来日公演(1984年9月)で初の日本武道館公演が実現しています。アルバムジャケットに登場する機械獣メタリアン(Metallian)を配置したステージセットは、映像で観ると圧巻の一言。

当時のライブ音源がフルでCD化されたのはもちろん嬉しいですが、できたらライブDVDを付けてもらえたら……なんて思ったのは、僕だけではなかったはず。まだしっかり髪が残っているロブ・ハルフォードの姿も、今となっては懐かしさ以上に微笑ましさすらあるので(笑)、ぜひこの時代のライブ映像も完全版として残してほしいものです。



▼JUDAS PRIEST『DEFENDERS OF THE FAITH: 30TH ANNIVERSARY EDITION』
(amazon:国内盤3CD / 海外盤3CD / MP3

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