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2016/01/12

Cybernauts日本公演(2000年1月8日/再掲)

※このライブレポートは2000年1月13日に「とみぃの宮殿」に掲載されたものを、加筆修正したものです。デヴィッド・ボウイ追悼の意味を込めて、再掲載したいと思います。


新世紀1発目となるライブが、後ろ向きとも言えるトリビュートバンドというのも何だかな。しかも相手はかのDef Leppardのフロントマン2人と、歴史的なバンドThe Spiders From Marsのリズム隊。70〜80年代の英国を代表する面々による、デヴィッド・ボウイ&ミック・ロンソンのトリビュートバンドだ。そして会場となるのは、一昨年10月に憧れのCheap Trickを観たあの忌まわしい横浜ベイホール……いい意味で解釈すれば「あんな小さい会場で憧れの人たちを観られる!」、悪く解釈すれば「またあそこまで行くのか……」という思いがよぎるわけだが。しかも当日、体調が悪いときたもんだ。正直、朝起きたときはどうしようか?と思ったものの、今思えば本当に行ってよかったと思えるだけの内容だった。そしてLeppsを切っ掛けにハードロックに目覚めた自分にとって、忘れられない1日にもなった。

当日は祝日ということもあって、普段より1時間早い開場/開演だった。僕は16時半過ぎに会場に着いたのだが、海の近くということもあって寒いのなんの。しかも前夜から当日朝にかけて初雪が降ったもんだから、余計に寒い。微熱を伴う僕にとってキツ過ぎる状況。そして217番というまずまずの整理番号だったのだが、ふと並んだ後ろを見ると……せいぜい50人程度といったところだろうか。しかも前にも明らかに200人は並んでいない。アルバムが年末リリースだったこともあって、それほど大々的にはプロモーションされなかったのだろうか。まあ翌日には東京公演があるのだから、こっちに来る人は余程のファンか、それとも平日公演が観られない地方の方々といったところだろう(自分含む)。トータルで300人前後。天下のDef Leppardのメンバーがいるにも関わらず……いや、ここ日本では彼らは英米での人気と比べたらそれほどでもないし。過去にも武道館追加公演で2階席が解放されなかったりなんてこともあったくらいだから。

会場に入ると、3列目前後真正面のポジションを確保。どうせ始まれば後ろから押されてより前に行けるだろう、そう思ったのだが……これは間違いだった。押されるほど、後ろに人がいない。せいぜい10列前後しかできていないのだ。フロア後方に行くくらいなら、一段高くなった柵より後ろに行けばいいという人が多かったようだ。結局ライブが始まっても後ろから押されることもなく、最後までそのポジションで快適に楽しめた。しかもステージから1メートルちょっとといった距離で、天下のLeppsのメンバーを観られるのだから……。

BGMのTeenage Fanclubで会場の空気が和む中、スタッフがステージに登場。「Pleaese welcome!~」っていう例のアナウンスを始め、その後に続々とメンバーが登場する。ボーカルのジョー・エリオットは黒のTシャツに牛柄のシャツ、黒のパンツというLeppsでのライブと何ら変わらぬ格好。ギターのフィル・コリンも基本的には普段と何ら変わらぬ格好だ。ウッディーは白い帽子を被っている以外には特に目立たない格好。というか、よく見えない。トレヴァーもシャツにジーンズという、アルバム内の写真と同じ服装で、キーボードのディックは見た目が「スキンヘッドのクラプトン」で思わず二度見。

そしてライブはスタート。選曲・曲順については最後のセットリストを確認してもらうとして……それにしても、この客席の“寒さ”は何なんだろう? いや、盛り上がってはいるんだけど、いかんせん客が少なすぎる。翌日のSHIBUYA-AXは結構な数入ったと聞くから、やっぱり場所的な問題なんだろう。見渡す限りではでデヴィッド・ボウイのファンやグラムロックファンは見受けられない。ということは、やはりここにいるほぼ全員がLeppsファンということになるのだけど……口をパクパク動かしてるわりには、歌声が聞こえてこないのが不思議だ。

ライブアルバムと違った点をいくつか挙げると‥‥①ミック・ロンソンのソロ曲が削られ、ボウイの曲が増えていた(『Aladdin Sane』から2〜3曲)、②完全にこの5人だけで再現しているため、ライブアルバムで聴かれたハーモニカ等は一切なし、③アルバムでは曲間を編集して短くしてるが、実際のライブでは曲間が結構空いたりして、ダラダラした印象を受けた。まあそこがクラブギグっぽくていいんだけど。逆に、思ってたのと違った(驚いた)点は、①Leppsではコーラスの要となっているフィルが、完全にギターに専念していたこと。彼の前にはマイクすらなかった(ただしお約束ともいえる上半身裸は、中盤で早くも登場)、②そのぶん、トレヴァーとディックがナイスなコーラスを聞かせてくれたこと、③そのディックがフィル並、いや、それ以上の仕事をしていたこと。「Moonage Daydream」ラストのギターソロに被さる高音コーラスなど、本当にすごいと思う瞬間が多々あった。またキーボードのパートがない曲ではタンバリンを持ってステージ前方まで飛び出し、フィルに絡んだりもした。

アルバム以上に素晴らしかった曲。まず前半のハイライトともいえる先の「Moonage Daydream」のギターソロ。ミック・ロンソンというよりも、完全にフィル・コリンしていた。フィルのギタープレイはピッキングやストローク時の腕に特徴があって、一度観たら忘れられないのだけど、それを目の前で間近に観られたのはある意味貴重だった。あまり速弾きギタリストには興味がないが、この人とブラッド・ギリス(Night Ranger)、ニール・ショーン(Journey)、そしてスティーヴ・ヴァイだけは別格。続いて、アルバム未収録で今回初めてプレイされた「Lady Grinning Soul」。イントロでのディックのピアノプレイが素晴らしく、さらにLeppsではほとんど聴くことのできないジョーのファルセットが堪能できた。さらににエンディング前の「The Width of a Circle」。この10分以上もあるライブバージョンがもうすごすぎ。中盤にウッディーのドラムソロが挿入されているんだけど、とても50歳を越えた人間のドラムソロとは思えなかいほど圧巻だった。

ライブ本編はVelvet Undergroundのカバー「White Light White Heat」で一旦終了。アンコールはすぐに始まった。ディック、ウッディー、トレヴァーが現れ、続いてフィルが登場し、最後にシャツを脱いだジョーがアコギを抱えて登場。ここで神妙な顔つきでMC。

「今日、1月8日はデヴィッド・ボウイの54回目の誕生日だ。そして、もうひとつは‥‥」

そう言いかけた瞬間、ハっと我に返った自分。そしてジョーはギターで隠していたTシャツの胸のプリントを見せた。そこには「STEVE CLARK / 1960-1991」の文字とともに、亡きスティーヴの笑顔が。そう、この日のためにジョーはこんな粋なものを作っていた。泣くに泣けないよ……隣にいた、ほぼ僕と同年代と思わしき女性は、そのTシャツの絵柄を見た瞬間に号泣。ジョーは続けた。

「もう彼がいなくなって10年も経ったんだよ。いつまでも彼のことを忘れないでほしい。僕らの大切な友達、スティーヴのことを……次の曲をスティーヴに捧げます」

そう言って彼は『Ziggy Stardust』の最終曲「Rock'n'Roll Suicide」をアコギ1本で歌いだした。スティーヴはLeppsのほとんどの曲で作曲者としてクレジットされている、結成当時からのギタリスト。僕が浪人中だった1991年1月8日に亡くなった。このニュースを当時の友人から知らされたんだった。丁度その日は土曜で、センター試験初日。当日深夜には伊藤政則のラジオを、結局最後まで聴いてしまった。4時間ぶっ続けでスティーヴに関する情報を、ロンドンと電話でやりとりしていた。彼が大好きだったLed Zeppelinの「Stairway To Heaven」で番組は締めくくられ、僕はそのまま眠れずにLeppsのアルバムを聴きまくってから試験会場に向かった……そんな10年前の記憶がよみがえってきた……そうそう、あの日も確か雪が降ったんだよなぁ……。

珍しく、あのフィルまでもが神妙な顔つきでギターを弾きまくる。他のメンバーも特に面識があったわけではないだろうが、スティーヴに敬意を表して真剣にプレイに取り組む。そして曲が終了すると盛大な拍手。妙にしんみりしてしまった中、そのまま「Suffragette City」に突入したのだが、ここでもいい仕事をしていたのは、ディックだった。笑顔で他のメンバーとアイコンタクトを取る。するとつられて他のメンバーも笑顔に。こうして最後には満面の笑みで最初のアンコールは幕を下ろした。そして2回目のアンコールはお約束ともいえる「All The Young Dudes」であっさりと終了。ライブ全体のトータル時間は1時間40分程度で、アルバムよりもちょっと長いくらいか。ALLボウイだったにも関わらず、Leppsファンを最後まで飽きさせなかった点はさすがだなと思う。

個人的にはボウイを聴きにいったのに、最後にはLeppsを観たような錯覚に陥ってしまったが、僕自身忘れてしまっていた初心(そう、僕はLeppsを切っ掛けに洋楽にのめり込み、バンドやりたいギター弾きたいって思ったんだ)を思い出させてくれた。21世紀の最初に初心を再確認できたという意味でも、このライブは(少なくとも自分にとって)意味のあるものだった。

最後に。会場内で「やっぱりデフレパ(やめろよ、この呼び方)の曲、やらないのかな?」「やらなきゃ意味ないでしょ?」といった方々。君たちがここにいることの方が意味ないと思うのだけど……横浜に向かう帰りのバスの車中では「Leppsの曲、やらないで正解だったね?」と会話していたカップルがいたけど、本当そのとおり。

セットリスト
01. Watch That Man
02. Hang on to Yourself
03. Changes
04. The Superman
05. Five Years
06. Cracked Actor
07. Moonage Daydream
08. Lady Grinning Soul
09. The Jean Genie
10. Life on Mars
11. The Man Who Sold The World
12. Starman
13. The Width of a Circle (feat. Drum Solo)
14. Ziggy Stardust
15. Panic in Detroit
16. White Light White Heat
<アンコール>
17. Rock'n'Roll Suicide
18. Suffragette City
<ダブルアンコール>
19. All The Young Dudes



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投稿: 2016 01 12 07:00 午後 [2000年のライブ, David Bowie, Def Leppard, 「R.I.P.」] | 固定リンク