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2016/01/12

David Bowie『A REALITY TOUR』日本武道館公演(2004年3月8日/再掲)

※このライブレポートは2004年3月11日に「とみぃの宮殿」に掲載されたものを、加筆修正したものです。最後のジャパンツアーの模様を伝えたいと思い、またデヴィッド・ボウイ追悼の意味を込めて再掲載したいと思います。


8年ぶりに来日したデヴィッド・ボウイのジャパンツアー初日、3月8日の武道館公演に行ってきました。前回('96年6月だっけ?)観たのもここ武道館。あのときは布袋寅泰がオープニングアクトとして出演してたっけ。今回行われる来日公演3本のうち、オープニングアクトが付かないのがこの初日のみ。そういう意味では損したような気がしないでもないけど……ま、ここ数日ボウイが観れるって考えただけでドキドキしてたし、正直ボウイばかり聴いてたから、余計なモノを観なくても(聴かなくても)済んだ、という意味では得したのかも……要はボウイさえ観れればいいわけ。

この日は2階席西側の最前列。ステージにかなり近いポジションだったこともあり、本当にドキドキもんでした。そのステージは比較的シンプルで、ドラムやキーボードの後方に数段高いステージ(踊り場?)があったり、その上からススキの穂みたいなのがぶら下がってたり、そのさらに後方には大きなスクリーンがあったり、ステージ前方には2メートル程度の花道があったり。過去のボウイと比べれば明らかに地味なわけ。今回の『A REALITY TOUR』、すでに行われた全米公演のセットリストとか見ると、過去の封印が何のそのって感じの選曲なわけですよ。とはいえ完全な1990年の『SOUND+VISION TOUR』みたいなヒットメドレーというわけではなく、意外な曲、地味な曲、そして過去2作の新譜からの曲をふんだんに取り入れ、明らかに「21世紀のデヴィッド・ボウイ」を提示した内容。新作『Reality』はなかなかの力作だっただけに、ライブでの披露もかなり楽しみなわけで。観る前からこんなにワクワクしたボウイの来日公演って、もしかしたら初めて観たドーム公演以来じゃないかな? その後も『Outside』でのツアーで観てるけど、今回の比じゃなかったもんな。

ほぼ定刻どおりにライブはスタート。まずオープニングSEが流れ出すのと同時に、会場が暗転。バックのスクリーンに都会の映像が流れ、SEは生バンドによるインストへ。途中から映像がボウイ・バンドのメンバーをコラージュしたアニメーションに切り替わり、これがボウイ・バンドの演奏によるものだと判明するのですが。アニメーションのボウイはハーモニカを吹いています。で、映像がアニメからリアルな姿に変わり、実際のバンドメンバーがひとり、またひとりとステージに登場します。会場はスクリーンの灯りのみで、最後にボウイが現れ、あの印象的なリフが会場に鳴り響く。全米ツアー同様、1曲目は「Rebel Rebel」。イントロ部はオリジナルバージョンに忠実で、歌に入る直前に2003バージョンに変わるというアレンジ。うん、やっぱりロックンロールを歌うボウイは単純にカッコいい。その佇まいがさまになるし。サビに突入して、会場がパッと明るくなり、初めてボウイがきらびやかな衣装を着ていることに気づきます。なんだかなぁ……57才なのに、この王子ぶり。ここまで圧倒的にカッコいい57才、他にいる!? ったく……うちのオフクロと同い年ってのがね……そんな自分の親父と呼んでも差し支えない年齢のオッサンに向かって、目を輝かせてる自分って一体……ま、気にしない気にしない。実際カッコいいんだからさ。

1曲終えて一息つくボウイ。以前からは考えられないほどに話す話す。かなりアットホームな雰囲気の中、新作から「New Killer Star」を。ここでボウイ、ギターも弾くんだけど、あんまり音が出てないような気が。ま、気にしない気にしない。残念ながらお客のリアクションは明らかに薄かった。それだけは事実。畜生、ここに集まってきた中年連中は、ここ数作の新作は完全無視してるようですぜ? だって、その後に演奏された「Fame」と比べればその差は歴然でしたからね。

旧曲のライブアレンジ自体は2000年のツアー以降、ほとんど一緒みたい。比較的カッチリした演奏ながらも、適度にルーズで適度にファンキー。特にドラムのスターリング・キャンベルのプレイがハンパなくすごかった。時にチャーリー・ワッツみたいな「ロールする」ロックンロールプレイを、時にNine Inch Nailsばりに「人間ドラムンベース」していたりするんだから。あとベースのゲイル・アン・ドロシー。ルックスだけで一人勝ちなのに、ベースだけでなく歌も相当うまい。コーラス要員としてシンセ&パーカッション&ギターを担当していた黒人女性(キャサリン・ラッセル)とともにいい仕事をしてました。

その後、Pixiesのカバーだと多くの人が気づいてないであろうシンプルなロックンロール「Cactus」で徐々に盛り上がりつつ、この日最初のピークが「All The Young Dudes」で訪れます。名曲すぎ。イントロのフレーズを聴いただけで鳥肌。サビでは大合唱……のはずなんだけど、キーが若干高かったせいもあり男性には厳しく、思ったほど大きな合唱にはならず。まあそれでもかなり歌えてた方だと思いますけど。曲が終わると、また一緒に歌ってくれというようなコメントの後、印象深いギターフレーズが。「China Girl」だ。イントロ部でのコーラスでゲイルがトチってやり直しになったのはある意味貴重かも。

ていうかさ、ホントにみんな歌わなすぎ! 知らないの? 何しに来たの!?なんて考えながらこの曲を聴いてると、今度は「Hallo Spaceboy」。とにかくこの曲はライブがカッコいいん。ボウイは後方の高台に昇って歌う。この曲でバンドの音量が一気に大きくなった印象。とにかくラウド(特にドラム、すごすぎ)。そういえば昔、ボウイの50才記念ライブで、この曲をデイヴ・グロールが叩いてたっけ。ふとそれを思い出させるほどにパワフルなドラミングで圧倒されっぱなし。もちろん、ボウイのカッコよさが大前提としてあるわけですけどね。

最初のピークで大きな拍手を受けた後、今度はまったりモードに。メンバーのほとんどが袖に引っ込み、スクリーンにはMVっぽい映像が。キーボードとギターで幻想的な演奏を始め、それがそのまま『Heathen』1曲目の「Sunday」へとつながっていく。曲が進むに連れてひとり、またひとりとメンバーがステージに戻ってきて、クライマックスのバンド演奏へ……CDだと盛り上がったところでフェードアウトという尻切れトンボ状態だったんですが、ライブではさすがにそれはなし。ギターソロ弾きまくり、ドラムもパワフルに叩きまくり。アルバムテイクが嘘みたいな名曲ぶり(いや、名曲は言いすぎか)。続いて新作からの「The Loneliest Guy」、Nirvanaのアンプラグドでおなじみ「The Man Who Sold The World」とまったり三昧。派手な盛り上がりはないけど、とにかくこれもボウイの持ち味のひとつ。

一息ついて、ゲイルのボーカルをフィーチャーした「Under Pressure」。ご存知のとおり、原曲はQUEENとのコラボ作。演奏自体は原曲どおりで、ゲイルはフレディ・マーキュリーのパートを一生懸命にこなしているんですが、ある意味ではフレディを超えていた気が。とにかくうまいシンガーだな、と。ボウイは10数年前にフレディの追悼ライブでアニー・レノックスと一緒にこの曲を歌っていたけど、あのときよりはるかに良かった。タイミング的にもちょうど日本でQueen再評価の時期だけに、この選曲は大成功。ボウイというよりもQueenの曲なんだけどね。そしてその盛り上がりを引き継ぐように、名曲「Life On Mars?」へ。ボウイ、かなり歌えてたほうだと思いますよ。さすがにちょっとウルッときた。すげえ良かった、うん。

この後、『Low』からの三連発(「Sound And Vision」「Be My Wife」「A New Career In A New Town」)に失禁しそうに。特に後者2曲は意外な選曲だっただけに、腰抜かしそうになりました。だって「A New Career In A New Town」って……ボウイ、ハーモニカ吹いてるだけだし。もうね、カッコよすぎ。ニューシングルかつミネラルウォーターのCMソングの「Never Get Old」は、どことなく「Fame」や「Young American」にも通ずる“黒っぽさ”を持った1曲。女性コーラスがいい味出してるね。その後に、確か前回の来日時にもやってたような記憶がある「Quicksand」、再び新作から「Days」というアコースティック楽曲が続き、さらにギターのエフェクトが気持ちいい「Heathen (The Rays)」、新作のからのLooking For Waters」と、後半になっても比較的新しめの曲が続くのが正直以外。全米ツアーよりも新曲増えてるんじゃない? 日本で久々のヒットを記録したから、気をよくしたとか? まあここ最近、旧譜よりも新作をよく聴いてたので、個人的にはありがたかったんですが(古い曲はありがたみが大きい反面、変わり果てたときは受けるショックも大きいから諸刃の剣なんですよね)。

エンディングが近づき、最後の盛り上げパートに。まずは「Ashes To Ashes」。大好きな1曲で、一時期バンドでコピーしてたことがあるほど。原曲とキーが変わってるので、慣れないと違和感が残るんだけどね。原曲にあった浮遊感/ニューウェイヴっぽさが薄れて、ポップ色の強いロックナンバーに様変わりしてるのが気になるけど、この際良しとしよう。そして『Earthling』から唯一披露された「I'm Afraid Of Americans」。本当は「Little Wonder」を聴きたかったんだけど、この曲がとにかくファンキーかつつヘヴィで、それこそNine Inch Nailsっぽくもあり、先の「Fame」あたりにも通ずる色もあり。この曲だよ、とにかくドラムがすごかったのは。ラストでのドラミングは神業で、ハイハットとリムショットを使用した、正しく人間ドラムンベースといったプレイ。そりゃ終わった後、この日一番の拍手を受けるわけだ。本編最後は名曲中の名曲「Heroes」。1コーラス目はギターのバッキングのみで歌われ、歌い終えるとおなじみのフレーズとともにバンドが加わるといったアレンジ。ちょっともどかしくもあったんだけど、じらされただけにあのギターフレーズが聴こえてきた瞬間、鳥肌が……やっぱりカッコいいわ、うん。曲も、ボウイも、バンドも、とにかくすべてが最高にカッコよすぎ。

アンコールでは、ドラムの印象的なフレーズとともにあの曲が……『Ziggy Stardust』1曲目、「Five Years」……最初のフレーズをボウイが歌い出した瞬間、思わず涙がこぼれそうに。いやあ、参った。まさか本当に泣きそうになるとは。まさかこの曲をここでこうやって聴ける日がくるとは……すでにアメリカ等で披露されていると知っていながらも、いざ実際に耳にするとね……こらえきれなくなるんですわ。もうね、終始歌いっぱなし。さらにこの流れで「Suffragette City」ですよ!? 10数年前、初めてボウイを生で観て、どうしてもこの曲を自分のバンドでやりたくなって。その後数年間、この曲を何百回と歌ってきたもんだから、そりゃそらで歌えますわ。後半のサビ繰り返しはさすがのボウイも厳しそうで、高いキーが全然出てなかったですが、そんなの気にしない気にしない。キメの「Ah, Wham bam thank you mom!」も一緒に叫びましたよ、ええ。

そんな、完全に心酔し切った状態の中、アルバム『Ziggy Stardust』曲3連発のラストを飾る「Ziggy Stardust」。あのリフを聴いた瞬間、全身に鳥肌立ちまくり。当然この曲もそらで歌えるわけですが‥‥泣いた、マジで。実際に涙は流れなかったかもしれないけど、心で号泣。ありがとうって言いながらボウイに抱きつきたい心境。2時間10数分がアッという間で、まさか26曲もやったなんて思ってもみなかった。

間違いなく、90年以降の来日公演で一番の内容でした。「今のボウイ」もちゃんと垣間みれたし、いろんな意味で吹っ切れたかのような初期代表曲のオンパレードといい、とにかく完璧すぎる内容でした。選曲的にも申し分ないと思うし(そりゃ言い出したらキリがない)、ボウイの状態もかなり良かったと思うし、何よりも今のバンドが素晴らしい。個性的なメンバーが集まった今のバンドで、2枚のアルバムのツアーを長期間過ごしてきたこともあり、かなり息が合った演奏を聴くことができました。どうせならまた観たいよ、次のツアーでも。

正直なところ、観る前は結構不安になってたのね。先日観たKraftwerkが「過去」と「今」をつなげた、ある意味集大成的な素晴らしいステージだっただけに、ボウイは一体どうなるんだろうと。開き直って過去の曲を多くやってくれるのは嬉しいんだけど、でもなぁ……って。けど、実際には違った。いや、もちろん過去の曲をたくさんやってくれたんだから違ってはないんだけど、根本の部分では違ってた。今回はツアータイトルどおり、『Reality』という自信作を引っ提げたツアーなんだなと。観客の新曲に対するリアクションは薄かったし、あのリアクションがすべて正しいとは思わないけど、僕は今のボウイを支持したいな、うん。そして……できることなら、夏にもう一回、野外で観たいよね。

セットリスト
01. Rebel Rebel
02. New Killer Star
03. Fame
04. Cactus
05. All The Young Dudes
06. China Girl
07. Hallo Spaceboy
08. Sunday
09. The Loneliest Guy
10. The Man Who Sold The World
11. Under Pressure
12. Life on Mars?
13. Sound and Vision
14. Be My Wife
15. A New Career In A New Town
16. Never Get Old
17. Quicksand
18. Days
19. Heathen (The Rays)
20. Looking For Water
21. Ashes To Ashes
22. I'm Afraid Of Americans
23. Heroes
<アンコール>
24. Five Years
25. Suffragette City
26. Ziggy Stardust



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投稿: 2016 01 12 07:15 午後 [2004年のライブ, David Bowie, 「R.I.P.」] | 固定リンク