ROLLING STONES『BLUE & LONESOME』(2016)
ストーンズの新作が2005年の『A BIGGER BANG』以来、実に11年ぶりという事実に震えています。しかも、その内容がすべてブルースのカバーで、たった3日間(ブックレットによると2015年12月11日、14日、15日)でレコーディングを済ませたとのこと。ダリル・ジョーンズ(B)、チャック・リーヴェル(Key, Piano)、マット・クリフォード(Key, Piano)という90年代以降のストーンズには欠かせないサポートメンバーに加え、ジム・ケルトナー(Per)や、さらにエリック・クラプトン(G)もゲスト参加するなど話題に事欠かない内容です。
ストーンズがこの11年、何もしてなかったのかというとまったくそんなことはなく、常にツアーを繰り返していたこと、ライブ映画『シャイン・ア・ライト』やドキュメンタリー映画『クロスファイア・ハリケーン』の公開、そして2012年に新曲2曲を含むベストアルバム『GRRR!』をリリースして以降はかなり長期にわたるワールドツアーを実施。ことリリースに関しては、先のライブ映画のサウンドトラックとしてライブアルバム『SHINE A LIGHT』を2008年にリリースしたのを筆頭に、70年代の名盤『STICKY FINGERS』『EXILE ON MAIN ST.』『SOME GIRLS』のデラックスエディションの発表、過去の秘蔵ライブ映像のDVD/Blu-ray化など、毎年何かしらの新しいアイテムが市場に並んでいました。そいう意味での飢餓感はほぼ皆無でしたが、こと新録作品となると先に書いた『A BIGGER BANG』以降は、2012年の新曲「Doom And Gloom」「One Last Shot」のみ。しかもこれらがカッコイイもんだから、「もっとまとまった形で聴きたい!」と熱望したロックファンは少なくなかったはずです。
そんな彼らが新作に向けて動き出した、なんて話がこの1年の間に何度か話題になりました。特に今年の夏以降はそれがより具体的な形で話題となり、「クラプトンがレコーディングに参加した」「どうやらブルースの名曲を録ったらしい」「ブルースアルバムになるらしい」とネタが小出しになっていきます。
そんな経緯を経て、ついに発表されたニューアルバム『BLUE & LONESOME』。「新曲ゼロかよ!」とか「ジャケ、ダッサ!」とかいろいろ突っ込みたい気持ちを抑えつつアルバムに向かうと……「すみませんでした!」と土下座したい気持ちいっぱいになります。だって、「これこれ! これが聴きたかったんだよ!」っていう濃厚なストーンズ節炸裂な1枚なんですもの。
60年代のストーンズはブルースのカバーをアルバムやシングルに収録してきましたが、70年代のストーンズはブルースをベースにしつつもより拡散した音楽性を見せ始めます。そして80年代は前半こそ70年代の延長線上でしたが、半ばは空白期間、89年にアルバム『STEEL WHEELS』でようやく本腰をあげます。この『STEEL WHEELS』は従来のストーンズが好きというファンからは敬遠されがちな1枚かもしれませんが(テクノロジーを用いた、“Well-made”なストーンズ)、このアルバムの制作時にはシングルのカップリング向けにいくつかオリジナルのブルースナンバーが制作されています。つまり、再始動にあたり最新のことをやりつつもルーツも取り戻す、そんなタイミングだったのかもしれません。
以降のストーンズは『VOODOO LOUNGE』(1994年)、『BRIDGES TO BABYLON』(1997年)、『A BIGGER BANG』(2005年)と適度に流行を取り入れつつも、本質的にはより生々しい本来の姿へと戻りつつありました。そして、ついにいろんな皮を剥いで生まれたままの姿を現した。しかもただ生まれたままの姿ではない、年季の入った形で。それが今回の『BLUE & LONESOME』かな、と思いました。
ストーンズやクラプトンを通じてブルースにハマった人なら、ここでカバーされている楽曲の大半は知っているものでしょう。ラストナンバー「I Can't Quit You Baby」はLED ZEPPELINのカバーで初めて知ったなんて人も多いはずです。ブルースのカバーということで楽曲の解説は野暮かなと思うので、今回は割愛。それ以上に触れるべきなのは、やはりキース・リチャーズやロン・ウッドのより渋みの増した隙だらけのギタープレイ、チャーリー・ワッツのタメの効いたドラミング、そしてミック・ジャガーの本気な歌いっぷりとブルースハープでしょう。久しぶりに『A BIGGER BANG』を引っ張り出して聴いてからこの『BLUE & LONESOME』に触れたのですが、これが同じバンドか!?と驚かされます。本作を前にすると、『A BIGGER BANG』ですらカッチリとキメすぎに聴こえるし……いかに彼らがこの『BLUE & LONESOME』を楽しみながら制作したかが、その音からもしっかり伝わってきます。
また、ビル・ワイマン(B)在籍時しか認めないみたいなオールドファンから散々叩かれてきたダリル・ジョーンズのベース、この隙だらけのバンドアンサンブルとスウィングしまくりなチャーリーのドラムに、今回ばかりはガッチリハマってる。そういう奇跡(?)もこのアルバムでは存分に味わえます。もちろんクラプトンのギターソロ(M-6「Everybody Knows About My Good Thing」とM-12「I Can't Quit You Baby」)もさすがに一言で、前者ではスライドギターによるソロも楽しめます。
個人的には特にタイトルトラックのM-3「Blue And Lonesome」、そしてラストのM-12が「I Can't Quit You Baby」がグッときたかな。もちろん全曲捨て曲なしですけどね。ああ、これは飽きが来ないし、何回でも聴き返せる。改めてROLLING STONESというバンドの凄みを思い知らされた1枚でした。
ちなみに、彼らは本作を作り終えた直後にオリジナル作品の制作に移行した、なんて話もありますが……もし本当なら、そう遠くない将来にポンと発表されるんでしょうね。楽しみ楽しみ。

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