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2016/12/31

2016年総括(1):洋楽アルバム編

2016年もあと半日で終わりということで、毎年恒例となった今年の総括を書いていこうと思います。

その年のお気に入りアルバムを洋楽10枚(+次点10枚)、邦楽10枚(+次点10枚)、2016年気になったアイドルソング10曲(次点なし)、そして今年印象に残ったライブ5本(2015年は3本)をピックアップしました。アルファベット順、五十音順に並べており、順位は付けていませんが特に印象に残った作品には「●」を付けています。

特にこの結果で今の音楽シーンを斬ろうとかそういった思いは一切ありません。ごく私的な、単純に気に入った/よく聴いたレベルでの「今年の10枚」です。

まずは洋楽アルバム編です。


■洋楽10枚(アルファベット順)

・ADRIAN YOUNGE『SOMETHING ABOUT APRIL II』(amazon

・BON IVER『22, A MILLION』(amazon

●DAVID BOWIE『★』(amazon)(レビューはこちら

・DEFTONES『GORE』(amazon)(レビューはこちら

・FROST*『FALLING SATELLITES』(amazon

・JEFF WOOTTON『THE WAY THE LIGHT』(amazon

・MESHUGGAH『THE VIOLENT SLEEP OF REASON』(amazon

・METALLICA『HARDWIRED…TO SELF-DESTRUCT』(amazon)(レビューはこちら

・OPETH『SORCERESS』(amazon

・ROLLING STONES『BLUE & LONESOME』(amazon)(レビューはこちら


<次点>
・ANOHNI『HOPELESSNESS』(レビューはこちら
・THE LEMON TWIGS『DO HOLLYWOOD』
・THE MONKEES『GOOD TIMES!』(レビューはこちら
・NOTHING『TIRED OF TOMORROW』
・PERIPHERY『PERIPHERY III: SELECT DIFFICULTY』
・RADIOHEAD『A MOON SHAPED POOL』(レビューはこちら
・SAOSIN『ALONG THE SHADOW』
・STEVEN TYLER『WE’RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』(レビューはこちら
・SUEDE『NIGHT THOUGHTS』
・THE WEEKND『STARBOY』


以前どこかに書いたような気がしますが、2016年は本当に良作が多くて、ここに10枚(次点を含めると20枚)に絞るのに相当苦労しました。たぶん明日になったらこのうち半分近くが入れ替わりそうな気もするし。あと、上半期の10枚に入れていたDEAFHEAVENのアルバム『NEW BERMUDA』(海外では2015年10月発売、国内では2016年6月発売)は、やはり2015年のアルバムという扱いに。これやりだしたら、漏れる新作がたくさん出てきそうだし。

とにかく今年は、自分が10代の頃から愛聴したアーティストたちが次々に亡くなってしまう、近年稀に見る1年でした。もしかしたら、音楽シーンがいよいよ入れ替わりのタイミングに入っているのかもしれませんね。この傾向はこれから数年は続くのかもしれない……そう考えると切なさもあります。

きっと、この人(↓)の場合も年末にベスト盤出たけど、来年以降に未発表曲をまとめたアルバムが“新作”としてリリースされるんでしょうね。そういう作品も来年以降、ここで取り上げる機会が増えそうな気がしています。

邦楽アルバム編に続く)



▼PRINCE『4EVER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 31 12:03 午後 [2016年の作品, 「1年のまとめ」] | 固定リンク

2016年総括(2):邦楽アルバム編

洋楽アルバム編に続いて、邦楽アルバム編。こちらのエントリーでは2016年もっとも気に入った邦楽アルバム10枚(+次点10枚)を紹介します。順位は付けませんが、特に印象に残った作品には「●」を付けています。


■邦楽10枚(アルファベット→五十音順)

●BOOM BOOM SATELLITES『LAY YOUR HANDS ON ME』(amazon

・BUCK-TICK『アトム 未来派 No.9』(amazon

・HER NAME IN BLOOD『BAKEMONO』(amazon

・KinKi Kids『N album』(amazon

・MIYAVI『Fire Bird』(amazon

・有村竜太郎『デも/demo』(amazon

・宇多田ヒカル『Fantôme』(amazon

・片平里菜『最高の仕打ち』(amazon

・金子ノブアキ『Fauve』(amazon

・スピッツ『醒めない』(amazon


<次点>
・AA=『#5』
・ATATA『Joy』
・BABYMETAL『METAL RESISTANCE』
・CQ『Communication, Cultural, Curiosity Quotient』
・D.A.N.『D.A.N.』
・Klan Aileen『Klan Aileen』
・Little Glee Monster『Colorful Monster』
・RADWIMPS『人間開花』
・浜田麻里『Mission』
・ユニコーン『ゅ 13-14』


邦楽もいいアルバムが多くて、かなり漏れがあると思います。岡村ちゃんも人間椅子も今年だったもんね。さらにMy Hair is Badやcinema staff、SiMあたりも選外に。OBLIVION DUSTもね。

あとは乃木坂46『それぞれの椅子』は新曲が3仕様にバラけたのがいけなかった。アルバムって後世に1枚だけ残すものだと思ってるから、3枚バラバラの内容はよくないですよ。最近よくある、通常盤より数曲多いデラックス盤もダメ。結局どっちがアーティストの意図したものなのかわからないもの。複数買いさせるための施策なんだろうけど、そういう意味では宇多田ヒカルの新作はDVD付き初回盤も用意されることなく、純粋にCD1枚のみ。改めて「アルバムとは?」という原点に立ち返るきっかけになってほしいな。

ちなみに、アルバムリリースはなかったけど、個人的に2016年を代表する楽曲はこの2曲。

アイドルソング&印象的なライブ編に続く)



▼Hi-STANDARD『ANOTHER STARTING LINE』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2016 12 31 12:02 午後 [2016年の作品, 「1年のまとめ」] | 固定リンク

2016年総括(3):アイドルソング&印象的なライブ編

このエントリーで最後。こちらではアイドルソング10曲と、2016年印象に残ったライブ5本を紹介したいと思います。順位は付けませんが、特に印象に残った楽曲には「●」を付けています。

まずはアイドルソング10選から


■アイドルソング10曲(アルファベット→五十音順)

・HoneyWorks meets さゆりんご軍団+真夏さんリスペクト軍団 from 乃木坂46「大嫌いなはずだった。」(iTunes

・lyrical school「RUN and RUN」(amazon

・アイドルネッサンス「君の知らない物語」(amazon

●欅坂46「サイレントマジョリティー」(amazon

・欅坂46「世界には愛しかない」(amazon

・欅坂46「二人セゾン」(amazon

・こぶしファクトリー「桜ナイトフィーバー」(amazon

・五五七二三二〇「四味一体」(iTunes

・乃木坂46「裸足でSummer」(amazon

・モーニング娘。'16「泡沫サタデーナイト!」(amazon


2016年は欅坂46「サイレントマジョリティー」の衝撃を切り離すことができない1年でしょう。先日の1stライブも拝見しましたが、その強度はデビュー時からさらに強まっていますし、この状態のまま紅白歌合戦に出演するのかと思うと、今から楽しみでなりません。

それだけではなく、2ndシングル「世界には愛しかない」でのポエトリーリーディング、そして3rdシングル「二人セゾン」の楽曲の素晴らしさ。結局、10曲中に3曲入れてしまうという結果に。例年、1アーティスト1曲なんですけど、今年に関しては異例ということで。

しかし、それ以外の楽曲を見ると、カバー曲の多さに気づかされます。アイドルネッサンスはもともとそういうグループだけど、こぶしファクトリーはKANの昨年のシングル曲を、さゆりんご軍団+真夏さんリスペクト軍団の曲はもともとHoneyWorksの楽曲なので、これは厳密にはカバーじゃないのかもしれないですけど。これらを選ぶのは邪道ですかね?

あと、五五七二三二〇に関してもバラバラに4曲選びたかったくらい。これはもうアイデア勝負ということで。リリスクに関しても、MVのアイデア勝ちですよね。


■印象的なライブ5選

・THE YELLOW MONKEY@さいたまスーパーアリーナ(7月9日)
・BATTLES@FUJI ROCK FESTIVAL '16(7月24日)
・QUEEN+アダム・ランバート@日本武道館(9月23日)
・Hi-STANDARD@新潟LOTS(12月8日)
・欅坂46@有明コロシアム(12月25日夜公演)

どれも文句なし。正直、5本に絞るの厳しかった。Ken Yokoyamaの日本武道館も素晴らしかったし、サマソニでのRADIOHEADも捨て難いし、年末の乃木坂46アンダーライブ最終公演も乃木坂史上に残る素晴らしさだったし。あとAIR JAMで観たHAWAIIAN6や10-FEETも。そんな中で、QUEEN+アダム・ランバートとHi-STANDARDは思い入れが強すぎるのもあるけど、ちょっと圧巻すぎました。

ちなみに2016年に観たライブ/イベント/舞台の数は130本。2015年は146本だったので、マイナス16本。複数日行ってるフェスも1本とカウントしてるので、間違いなく2、3日に1回は行ってる計算になります。いつ原稿書いてるんだって話ですよね。僕もそう思います(笑)。

以上で2016年の総括は終了。今年もたくさんの素敵な音楽と出会うことができました。2017年も今年以上に素敵な音楽と出会えますように。

そして読者の皆さん。今年後半からかなりのハイペースでレビューを公開していきましたが、来年も引き続き更新できるように頑張ります。おそらく1日1本ペースに戻すと思いますし、なにより繁忙期は更新が滞ると思いますが、気長におつきあいいただけると幸いです。それでは、2017年もよろしくお願いいたします。



▼欅坂46『サイレントマジョリティー』
(amazon:TYPE-A / TYPE-B / TYPE-C / 通常盤

投稿: 2016 12 31 12:01 午後 [2016年の作品, 「1年のまとめ」] | 固定リンク

2016年12月のお仕事

2016年12月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※12月31日更新)


[紙] 12月31日発売「日経エンタテインメント! アイドルSpecial 2017」にて、乃木坂46白石麻衣、新内眞衣、中田花奈、山崎怜奈のインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 12月28日、「楽天ブックス」での連載「乃木坂46公認コラム『のぼり坂』」にて「杉山勝彦の乃木坂46への提供楽曲を振り返る」「『乃木坂46 3期生お見立て会』レポート」「『乃木坂46 Merry Xmas Show 2016』選抜単独公演&アンダー単独公演レポート」が公開されました。

[紙] 12月26日発売「TV Bros.」2016年12月31日号にて、「2016年個人的ベストアルバム5」を執筆しました。

[紙] 12月23日発売「BRODY」2017年2月号にて、『二人セゾン』&『大人は信じてくれない』MV制作ドキュメント「現場密着&制作陣取材で紐解く〝拡張〟と〝延長〟への挑戦」を担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 12月23日、「リアルサウンド」にて欅坂46のインタビュー「欅坂46 小池美波&齋藤冬優花&佐藤詩織が振り返る、フロント抜擢の衝撃と激動の2016年」が公開されました。

[WEB] 12月21日、「Red Bull Japan」オフィシャルサイトにてコラム「間もなく開催!『AIR JAM』の歴史を振り返る」が公開されました。

[WEB] 12月16日、「BARKS」にてHi-STANDARDのライブレポート「Hi-STANDARD、17年ぶりショートツアー完遂「また俺たちと始めてくれるかな」」が公開されました。

[紙] 12月15日発売「G(グラビア)ザテレビジョン vol.49」にて、乃木坂46寺田蘭世のインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[CD] 12月2日発売のTHE QEMISTSのミニアルバム「WARRIOR SOUNDSYSTEM」ブックレットにて、ライナーノーツを執筆しました。(Amazon

[紙] 12月2日発売「日経エンタテインメント!」2017年1月号にて、特集「SMAPサウンド解体新書」内「SMAP 25 YEARS」全曲解説担当・執筆しました。(Amazon

[WEB] 12月1日配信のLINE LIVE「The Idol Formerly Known As LADYBABY「参拝!御朱印girl☆」発売記念 公開インタビュー」にインタビュアーとして出演しました。

[WEB] 12月1日、「リアルサウンド」にて陰陽座・瞬火のインタビュー「陰陽座が明かす、妖怪をコンセプトに掲げる理由「海外のバンドが竜や魔法や騎士なら、こっちは妖怪だ」」が公開されました。

[WEB] 12月1日、「exiteニュース」にてFAKE?のライブレポート「KEN LLOYD率いるFAKE? マンスリーライブ第5弾で土屋アンナと華やかなコラボ」が公開されました。

投稿: 2016 12 31 12:00 午後 [「仕事紹介」] | 固定リンク

DAVID BOWIE『★(BLACKSTAR)』(2016)

2016年1月8日(金)。午前中から乃木坂46の取材を行い、午後遅くまで作業を続けてから帰り道で購入したのが、この日世界同時リリースとなったデヴィッド・ボウイ3年ぶりの新作『★』と、ちょっと前にリリースされたボックスセット『FIVE YEARS 1969-1973』でした。

前年秋に先行公開されたMV「Blackstar」を観て聴いて、「これは間違いなく傑作だ!」と多くの音楽ファンが思ったことでしょう。派手なボウイではない、穏やかなボウイ。90年代以降の作品では『BLACK TIE WHITE NOISE』(1993年)や『HOURS…』(1999年)が好きな自分としては「これはど真ん中な作品になるかも…」と、そういう期待感でいっぱいでした。その思いはアルバムリリース直前に公開された「Lazarus」を聴いても、変わることはありませんでした。

2013年に突如発表された復活作『THE NEXT DAY』も、もちろん大好きでした。しかし、特に日本盤はボーナストラック含め18曲入りということでたくさん詰め込みすぎた感が強く、すべてを理解するまでにはかなりの時間を要した記憶があります。あと、10年ぶりということで、期待が大きすぎたのもあって、ほんのちょっとだけ「ああ、こんな感じか……」とちょっとだけ思ったりもして。

ところが『★』は全7曲、オープニングの「Blackstar」こそ10分前後の大作ですが、トータルで41分程度と非常に聴きやすい内容。人力ドラムンベース的な雰囲気のある前半から、ドリーミーなミドルテンポのパートへと展開する流れなど、クラブミュージックとジャズとサイケデリックロックを掛け合わせたかのようなこの世界観に惹きつけられない人はいないと思います。続く、ジャズファンク的な「'Tis A Pity She Was A Whore」は『BLACK TIE WHITE NOISE』からの流れにある1曲で、ひたすらカッコいい。そこから再びダークな「Lazarus」へと流れる、いわゆるアナログA面の流れは圧巻です。

4曲目(いわゆるアナログB面)は「Sue (Or In A Season Of Crime)」は、2014年に発売されたベスト盤『NOTHING HAS CHANGE』に収録されたジャズアレンジの同名曲を、人力ドラムンベース+ロッキンにリアレンジしたもの。よくぞ『★』の世界観に合ったリアレンジを施したなと、関心させられます。その後も「Girl Loves Me」「Dollar Days」と雰囲気モノの良曲が続き、最後は90年代以降のボウイのカラーが色濃く表れた「I Can't Give Everything Away」で締めくくり。ただただすごいアルバムができたな。70歳目前にまた新しいキャリアが始まるとか、どういうことだよ……と聴き終えた直後にため息をついたことをよく覚えています。

それから3日後の1月11日(月・祝)。午後からSKE48の取材を終え、遅い昼食を取っていると、Twitter上に悪い冗談が次々とアップされる。えっ……それが事実だと気づくまでに、そう時間はかかりませんでした。その日の夜に予定していたライブに足を運ぶ気力が一気に失せ、帰宅してそのままこの『★』や往年の代表作を明け方まで聴き返すことを数日にわたり繰り返しました。

正直、上に書いた『★』の感想は、1月8日に感じたものとは正確には異なるかもしれません。ボウイの死により、すでに思い出補正もかかっているでしょうし。でも、彼の死を知るほんの数日前に発売されたこのアルバムを、リリース日に聴けたことだけは間違いない事実だし、あのときに感じた衝撃も間違いない事実。それを急逝による補正でねじ曲げられる前に感じられた、そこだけは良かったな、幸せだったなと1年近く経った今、より強く思うわけです。

この思い出補正がなかったら、2016年の年間ベストアルバム1位に選んでいただろうか……いや、選んでいたよね。自分のこの気持ちを信じることにします。



▼DAVID BOWIE『★(BLACKSTAR)』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 31 12:00 午前 [2016年の作品, David Bowie, 「R.I.P.」] | 固定リンク

2016/12/30

DEAFHEAVEN『NEW BERMUDA』(2015)

海外では2015年10月、ここ日本ではだいぶ遅れて2016年6月に発表された、DEAFHEAVENの3rdアルバム。過去2作はここ日本でもインディー流通でしたが、今作からはメジャーのソニーからの発売(海外ではEpitaph Records系列のAnti-Recordsに移籍)。と同時に、今年7月開催の『FUJI ROCK FESTIVAL '16』が決まったことで、ここまで国内リリースが延びたのかなと。プロモーション的には正しいんだろうけど、こんな名盤を8ヶ月も放っておくなんて、なんて勿体ないことをするんだろう……。

2013年の前作『SUNBATHER』は個人的にも相当気に入っており、同年のベストアルバム10枚に選出しておりました。だからこそ、本作もリリースと同タイミングで輸入盤を購入したのですが、とにかく1曲が長く、全5曲のすべてが8分以上。内2曲が10分超えという大作のため、聴き込むのにかなり時間を要してしまい、昨年のベストアルバム候補に入れつつも最終的には外すこととなったのでした。

あれから1年以上経ち、しかもフジロックでの来日を前に時間をかけて聴き込んだことで、かなり体に入ってきたと思います。今回は前作『SUNBATHER』で見え隠れしたアンビエント的な要素が後退。むしろ初期から持つブラックメタル&シューゲイザー的要素がより強まった印象があります。と同時に、前作にもあった開放感も備わっていることで、長尺の中で暴力的なのにドラマチックという展開が繰り広げられます。

ブラストビートとトレモロギターリフとデス声、そこに突如訪れるドリーミーなダウンドメイキング。このメリハリは前作以上で、シューゲイザーやドリームポップというよりは、ブラックメタルやポストハードコアから影響を受けたプログレメタルという印象が強いかな。ポジとネガを行き来する音の洪水に飲み込まれた瞬間、抵抗できずそこから抜け出せなくなる。そんな有無を言わさぬ凄味を持つ力作だと思います。

フランスのALCESTなど、ブラックメタルをルーツに持つシューゲイザー/ポストメタルバンドは増えていますが(今年発売されたALCESTの新作『KODAMA』もなかなかでした。こちらもいずれ紹介したいと思います)、この『NEW BERMUDA』(『絶海』という邦題も素晴らしい)はメタルサイドにも、そしてシューゲイザーなどを好むオルタナギターロック好きにもオススメしたい1枚。『SUNBATHER』はちょっと苦手だと思っていたメタル側の方々にも、十分に響く内容だと思います。



▼DEAFHEAVEN『NEW BERMUDA』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 30 12:00 午後 [2015年の作品, 2016年の作品, Deafheaven] | 固定リンク

DEFTONES『GORE』(2016)

前作『KOI NO YOKAN(恋の予感)』から3年半ぶり、通算8枚目のオリジナルアルバム。チャート的には2003年の4thアルバム『DEFTONES』と同じく、全米2位という高順位を記録しており、イギリスでも過去最高の5位にランクインし、オーストラリアやニュージーランドでは初の1位に輝くなど世界中で好意的に受け入れられた1枚のようです。

2000年の3rdアルバム『WHITE PONY』が大成功したことで、以降の作品ではファンから「第二の『WHITE PONY』」を望む声が増えたようですが、バンドは『DEFTONES』、『SATURDAY NIGHT WRIST』(2006年)と作品ごとにその音楽性を少しずつ進化させていきます。しかし、『DIAMOND EYES』(2010年)と前作『KOI NO YOKAN』ではその進化が若干停滞していたように感じられました。特に『KOI NO YOKAN』に関しては個人的にあまりピンとこなかったこともあって、これまでの作品の中で聴く頻度がもっとも低かったと言わざるをえません。

それもあって正直、今回の『GORE』にもあまり過度な期待はしていなかったんです。ところが、アルバムタイトルの『GORE(=血糊や流血、暴力や殺人、あるいは醜いものを意味する)』というタイトルになぜか惹かれ、心のどこかで少しだけ期待していた自分もいました。

今作のリリースに際し、チノ・モレノ(Vo, G)は本作を「the singer playing Morrissey to the guitarist's Meshuggah」と表現。それも納得の内容だと思いました。いわゆるサンプリング要素を最小限に抑え、ギターを軸にしたサウンドメイキング(しかも要所要所で低音を利かせたプレイ)はMESHUGGAHのそれに通ずるものがありますし、そんな不穏なバンドサウンドにモリッシーのごとくポップでキャッチーな歌メロが乗る。聴きやすさという点においては、ここ数作で一番ではないでしょうか。

いわゆるヘヴィメタルやヘヴィロックというよりも、ゴシックロックやオルタナティヴロック寄り。今までの作品もその側面を持ちつつ、両者の要素をバランス良く配置していた印象が強いですが、今作はそこから一歩踏み出したというか、振り切った印象が強い。ギターソロ(しかもALICE IN CHAINSのジェリー・カントレルによるもの)が入る「Phantom Bride」みたいな曲が突如飛び出すのも、そういう理由からかもしれません。

だから、初期の彼らを愛好するファンからは否定的な意見が多いのも理解できるんです。別にこのアルバムを「メタル/ラウドシーンからの脱却」とか「メタルの新たなスタイル」とか呼ぶつもりはありません。でも、ここからまた何かが始まるのは間違いない事実。決して派手なアルバムではないし、最高傑作なんて言うつもりもありません。しかし、不思議と何度も何度も聴き返したくなる。そんなスルメ的強さを持った作品であることだけは、間違いない事実だと思います。実際、ここまで聴き返してるのは『WHITE PONY』以来かもしれません。



▼DEFTONES『GORE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 30 12:00 午前 [2016年の作品, Deftones] | 固定リンク

2016/12/29

SCORPIONS『LOVE AT FIRST STING』(1984)

ドイツのハードロックバンドSCORPIONSが1984年に発表した、通算9枚目のスタジオアルバム。邦題は『禁断の刺青』で、日本での彼らのイメージである「蠍団」は使われていません(「蠍団」が伝われてたのは1978年の『TOKYO TAPES』まで。こちらの邦題は『蠍団爆発!! スコーピオンズ・ライヴ』)。1984年発売の前作『BLACKOUT』で全米10位のヒットを記録してアメリカでも本格的にブレイクした後、そのダメ押しとしてリリースされた今作は全米6位を獲得し300万枚ものセールスを記録。シングルカットされた「Rock You Like A Huuricane」は全米25位、「Still Loving You」は全米64位とそれぞれドイツのハードロックバンドとしては当時異例の高記録となりました。

『LOVEDRIVE』(1979年)以降、徐々にバタ臭さが薄らいでいき、この『LOVE AT FIRST STING』でヨーロッパのバンドならではのカラーとアメリカナイズされたサウンドが絶妙なバランスで成立。このギリギリな感じが日本人のみならず、アメリカ人にもウケたのかもしれません。事実、本作に続く『SAVAGE AMUSEMENT』(1988年)ではアメリカナイズされた音の主張がより強くなってしまってしまいますし。

『LOVE AT FIRST STING』が前後の作品よりも優れていたのはそういった楽曲センスのみならず、各曲が持つテンポ感も絶妙だったことが挙げられると思います。シングルヒットした「Rock You Like A Huuricane」や「Bad Boys Running Wild」「Big City Nights」のようなミディアムテンポのマイナーチューンが中心ながらも、当時のライブでオープニングを飾った「Coming Home」や「The Same Thrill」のようなアップチューン、そして「Still Loving You」という泣きのバラード。これらが当時としては異例のデジタルレコーディングで制作され、非常にクリアで整理された音で楽しむことができる。ドラムのタムタムの音色も独特で、同時期にDEF LEPPARD『PYROMANIA』が大ヒットしていたことを考えると、あれもその時代の流行りだったんだなと気づかされます。

全9曲、最初から最後まで良曲、良メロディ満載で隙が一切ないハードロックアルバム。もしこれからSCORPIONSを聴いてみようと思うなら、間違いなくこのアルバムから触れてみることをお勧めします。

なお、2015年のリイシュー企画でこのアルバムも2CD+DVDからなるデラックスエディションが発売。アルバム本編に当時のデモ音源(アルバム未収録のボツ曲も含まれていますが、これも悪くない出来)や、マディソン・スクエア・ガーデンでの未発表ライブ音源などを楽しめるので、少々値が張りますが予算に余裕があればこちらに手を出してみるのもいいかもしれません。



▼SCORPIONS『LOVE AT FIRST STING』
(amazon:国内盤2CD+DVD / 海外盤2CD+DVD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 29 12:00 午後 [1984年の作品, Scorpions] | 固定リンク

BLACK SABBATH『THE ULTIMATE COLLECTION』(2016)

来年2017年2月にイギリス公演をもって、50年近くにおよぶその活動に終止符を打つ予定のBLACK SABBATH。トニー・アイオミ(G)のガン発覚などいろいろありましたが、そもそも年齢的にもそろそろこういう音楽をやるには厳しいのかなと。ギーザー・バトラー(B)が67歳、オジー・オズボーン(Vo)はこの12月で68歳、トニーも年が明けて2月に69歳になりますし。もちろんROLLING STONESのようなバケモノもいますが、そもそもやってることが異なりますしね。2013年に発表された18年ぶり(オジー在籍時としては35年ぶり!)のオリジナルアルバム『13』が初の全米1位も獲得したことですし、区切りのタイミングとしては良き時期なのかもしれません。

そんな彼らの活動を総括する、キャリア何度目かの公式ベストアルバム『THE ULTIMATE COLLECTION』が海外で今年10月にリリース。ここ日本でも遅れて年明け1月25日に発売されます。2枚のCDに全31曲が収録されたこのベスト盤、選曲は70年代の彼ら、つまりオジー在籍時のオリジナル編成による楽曲のみで、決してキャリアを総括したものではありません。もちろんそれが間違いだとは思いませんし、今回のラストライブに向けて発表されたという点ではこの内容は正しいと思います。

ちなみに、各楽曲の収録アルバムは下記のとおり。


1st『BLACK SABBATH』(1970):「Black Sabbath」「Evil Women, Don't Play Your Games With Me」「Behind The Wall Of Sleep」「The Wizard」「N.I.B.」「Wicked World」(6曲)

2nd『PARANOID』(1970):「Paranoid」「Iron Man」「Fairies Wear Boots」「Rat Salad」「War Pigs」「Electric Funeral」(6曲)

3rd「MASTER OF REALITY」(1971):「Children Of The Grave」「Sweet Leaf」「Lord Of This World」「Into The Void」「Embryo」(5曲)

4th『VOL.4』(1972):「Changes」「Snowblind」「Tomorrow's Dream」(3曲)

5th『SABBATH BLOODY SABBATH』(1973):「Sabbath Bloody Sabbath」「Spiral Architect」「Killing Yourself To Live」(3曲)

6th『SABOTAGE』(1975):「Hole In The Sky」「Sympton Of The Universe」「Am I Going Insane」(3曲)

7th『TECHNICAL ECSTACY』(1976):「Rock'n'Roll Doctor」「Dirty Women」「It's Alright」(3曲)

8th『NEVER SAY DIE!』(1978):「Never Say Die」「A Hard Road」(2曲)


1stから3rdまでが各5〜6曲という比重は、まぁそうなりますよね。これには納得ですが、個人的には2ndから「Planet Caravan」、3rdから「After Forever」が漏れたのは残念かなと。収録時間ギリギリまで詰め込んでくれたらよかったのに。

海外での評価が高そう4thからはたった3曲というのは意外でした。「Wheels Of Confusion」も「Supernaut」も「St.Vitus' Dance」も入ってなかったし。5thからも「Sabbra Cadabra」は選曲漏れ。6th以降は……まぁこんなもんでしょうか。いや、そんなに思い入れのある作品群ではないので、ここらへんは識者にお任せできたらと。

気になるサウンドですが、アンディ・ピアースによる2009年のリマスター音源が使用されているようです。つまり、現時点での最新リマスター音源ということになるのでしょうか。元々の音源が制作された時期も大いに影響あると思いますが、やはり2ndは線が細いのが気になってしまう(特に「Paranoid」や「iron Man」)。逆に8thからの「Never Say Die」での音のブースト具合はバンドが持つ爆発力が遺憾なく発揮されているんじゃないでしょうか。

そして曲順。「Paranoid」から始まるのがいかにソレっぽくて気に入らないのですが、4曲目「Black Sabbath」以降の流れは気持ち良く楽しめます。特に「Sweet Leaf」〜「War Pigs」〜「Sabbath Bloody Sabbath」の流れは、実際にライブでありそうな流れですし。あと、本来なら「Children Of The Grave」の前奏的ポジションのイントロ「Embryo」が「Electric Funeral」と「Killing Yourself To Live」の間に挟まれてるのはどうにかならなかったのかなと。こだわりがありそうで、実はそこまでないんじゃないかという箇所もいくつか見受けられますが、このへんは欧米人の感覚なので我々には理解しかねます。

まぁ、これから初めてBLACK SABBATHを聴いてみようと思ってる人には、手軽に楽しめるベスト盤じゃないでしょうか。1st〜4thだけを聴くのもいいけど、以降のアルバムにも隠れた名曲がポツポツ入っているので、それに気づくことができるという点では初心者にとってうってつけでしょうし。



▼BLACK SABBATH『THE ULTIMATE COLLECTION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD


あと、オジー時代の魅力に浸ったあとは、ぜひロニー・ジェイムス・ディオ在籍時のサバスにも触れてみてほしいです。こちらも過去に『BLACK SABBATH: THE DIO YEARS』というベストアルバムが発売されているので、そこから入ってみてはどうでしょう。



▼BLACK SABBATH『BLACK SABBATH: THE DIO YEARS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 29 12:00 午前 [2016年の作品, Black Sabbath] | 固定リンク

2016/12/28

MOTORHEAD『BAD MAGIC』(2015)

2015年8月にリリースされた、MOTORHEADの事実上ラストアルバム。もちろん発売当初はこれが最後の作品になるなんて、考えてもみなかったし、その直前に行われた『FUJI ROCK FESTIVAL '15』での久々の来日公演を観て「次は新作発表後にフルでみたい」と思ったくらいでしたから。

レミー(Vo, B)、フィル・キャンベル(G)、ミッキー・ディー(Dr)の3人が揃って23年、このトリオ編成になってからはまるまる20年というタイミングに制作された今作。22枚のオリジナルアルバムということらしいですが、とにかく彼らは勤勉で、2010年の『THE WORLD IS YOURS』から2013年の『AFTERSHOCK』で3年空いたぐらいで、それ以外はほぼ2年に1枚のペースでアルバムを制作しています。しかもMOTORHEADの場合、アルバムごとに作風を変えるとか新しいことに挑戦するといったことはほぼ皆無で、どの曲がどのアルバムに入っていても不思議じゃないくらい安定した“これぞMOTORHEAD”な楽曲群を提供してくれるのです。そういうバンドのアルバムに対して、こういうレビューが果たして必要なのかとも思いますが、まぁやってみようじゃないですか。

M-1. Victory or Die
レミーの歌からスタートする、アップテンポのMOTORHEAD流ロックンロール。このリフ、以前も聴いたことあるけど気にしない。途中で展開が入ってメロの雰囲気が変わり、そのままギターソロへと流れていく構成がカッコいい。さらにソロ明け、ドラムとレミーの歌だけになるとさらにカッコよさが増します。

M-2. Thunder & Lightning
THIN LIZZYの同名曲とは無関係ですが、MOTORHEADのほうもTHIN LIZZYのそれと同じくらいのファストナンバー。「Ace of Spades」タイプといえば伝わるでしょうか。

M-3. Fire Storm Hotel
アップチューン2曲からテンポダウンして、小気味が良いリズム感のミドルチューン。ここまでの流れが本当に心地よい。

M-4. Shoot Out All of Your Lights
ミッキーの鋭いドラミングから、そのままツーバス踏みまくりのミドルテンポ、サビでテンポアップというヘヴィな1曲。ライブでのコール&レスポンスが目に浮かびます。

M-5. The Devil
不穏なイントロから、引き摺るようなヘヴィなテンポ感。そのまま歌に入るとテンポアップして、気持ち良く踊れます。サビでのタメの効いたリズムに、思わず首を振りたくなったりも。ちなみにこの曲、ギターソロをQUEENのブライアン・メイが弾いてます。

M-6. Electricity
何も考えずにヘドバンできる、アッパーなロックンロール。説明など必要なし。

M-7. Evil Eye
イントロのグルーヴィーなドラミングから一変、ストレートに突っ込んでいくファストチューン。サビでのレミーの、ドスの効いた声が最高。

M-8. Teach Them How To Bleed
これもファストチューン。今回のアルバム、思っていた以上に速い曲が多くて当時驚いた記憶が。

M-9. Till The End
泣きメロが印象的な、いわゆるバラードタイプの1曲。レミーはこういう楽曲を歌わせても天下一品。今作収録のオリジナル曲では、この曲が一番長い(4:05)というのも驚き。他は全部2〜3分台だし(そりゃ速い曲ばかりだしね)。

M-10. Tell Me Who To Kill
再びアップテンポのロックンロールへ。ギターよりもベースが前に出てる印象。

M-11. Choking On Your Screams
前の曲よりちょっとだけテンポを落としてるけど、それても速めの1曲。終始がなるようなボーカルが、不穏な空気を作り上げてます。

M-12. When The Sky Comes Looking For You
3連リズムのハードロック風アップチューン。本当にこのアルバム速い曲ばかりで、改めて生き急いでたなと実感させられます。ただ、速い曲の中でもいろんなテンポ感、いろんなリズムを使い分けることでバリエーションを作っているところは流石だと思います。

M-13. Sympathy For The Devil
アルバムラストを飾るのは、ROLLING STONESの名曲カバー。なぜこの曲で締め括る? そもそもなぜこの曲を選んだ? MOTORHEADってカバー曲のセンスが悪いよね。まぁそこがいかにもMOTORHEADらしいよね、とも思うんですが。そして、この曲がMOTORHEADのラストナンバーというのも意味深というか……。ただ、アレンジはさすがにカッコいいです。

以上、無駄に全曲解説をやってみましたが、解説するようなアルバム、楽曲ではないんですけどね。まぁ……面白いかなと。これ、今後もMOTORHEADのアルバムを紹介するときは毎回同じようにやってみようかな。常に同じこと書いてたりしてね(笑)。

あれから1年。早いもんですね。思えばここから始まったんですよね。早くこの負の連鎖を断ち切れないものですかね……。



▼MOTORHEAD『BAD MAGIC』
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投稿: 2016 12 28 12:00 午後 [2015年の作品, Motorhead, 「R.I.P.」] | 固定リンク

THE DEAD DAISIES『MAKE SOME NOISE』(2016)

このバンドを知ったのは、確かtvkでやってる伊藤政則さんの番組『ROCK CITY』で観たMVだったのかな。元THE SCREAM〜MOTLEY CRUEのフロントマンだったジョン・コラビ、そして今やどのバンドにいるのかすら記憶が定かではないダグ・アルドリッチ(G)らが参加するバンドということで、どんな音なのかと思っていたら……聴いた曲がアルバム1曲目の「Long Way To Go」だったからなのか、「このメンツのわりに、随分とストレートなロックかますな。なんかクセのないAEROSMITHみたい」というの第一印象。しかもジョン・コラビのルックスも“リトル”スティーヴン・タイラーみたいになってるし。

で、いろいろ調べてみるとこのバンド、今回のアルバム『MAKE SOME NOISE』が通算3枚目とのこと。しかも、アルバムごとにメンバーがちょくちょく変わっていて、結成時から残っているメンバーはリズムギターのデヴィッド・ローウィーのみ。当初は元INXSのジョン・スティーヴンス(Vo)がフロントマンで、現在もバンドに在籍するマルコ・メンドーサ(B)のほか、ツアーメンバーとしてGUNS N' ROSESのメンバーであるディジー・リード(Key)やフランク・フェラー(Dr)、当時ガンズに在籍していたリチャード・フォータス(G)が参加していたそうで。その後、2013年に1stアルバム『THE DEAD DAISIES』をリリース。2015年にはジョン・コラビ、ブライアン・ティッシー(Dr)が正式加入して、2ndアルバム『REVOLUCION』を発表するも、翌2016年にリチャードとディジーが脱退して、ダグが加わって現在の布陣になったようです。

……説明長すぎですね(笑)。いい加減アルバムの中身に触れましょう。

中身は、先に書いた「Long Way To Go」から想像できる、ど直球のアメリカンハードロック。全12曲(日本盤ボーナストラック除く)中、2曲がカバーで、CCR「Fortunate Son」とTHE WHO「Join Together」というわかりやすい選曲。これだけでも音楽性が想像できるかと思います。

ジョンはその風貌同様、歌声もMOTLEY CRUE時代よりレイドバックしており(老いた?)、80年代のAEROSMITHが鳴らしそうな骨太で豪快なサウンドに意外と合っております。ダグのギターは時に渋く、時に激しくと、WHITESNAKE時代を彷彿とさせるプレイで、ジョンの歌声との相性もバッチリ。楽曲も70〜80年代の、ブルースやカントリーをベースにしたアメリカンハードロックそのもので、かつ1曲1曲の仕上がりは非常に品質の高いもの。このへんはプロデューサーおよびソングライターとして、AEROSMITHやBUCKCHERRY、オジー・オズボーンとの共作で知られるマーティ・フレデリクセンが参加していることも大きく影響していると思われます。

ただ、唯一難点をつけるとしたら、決定打となるような1曲が足りないこと。どの曲も良質で、70〜80点をつけられるけど、ここに1曲だけでも100点ないし90点クラスのキメ曲が入ったら、アルバムとしても、そしてバンドとしても頭ひとつ抜き出るのかなと思います。



▼THE DEAD DAISIES『MAKE SOME NOISE』
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投稿: 2016 12 28 12:00 午前 [2016年の作品, Dead Daisies, The] | 固定リンク

2016/12/27

GEORGE MICHAEL and QUEEN with LISA STANSFIELD『FIVE LIVE』(1993)

1993年春に発表された、ライブ音源で構成されたEP。ジョージ・マイケルのソロ名義の作品ではなく、QUEENやリサ・スタンスフィールドとの共演が繰り広げられた1992年4月20日のイギリス・ウェンブリースタジアムでのフレディ・マーキュリー追悼ライブでのライブ音源がメインのため、こういうアーティスト名義となっております。

5曲中2曲がQUEENナンバーのカバー。1曲目「Somebody To Love」はシングルカットもされて、当時全米30位まで上昇しております。もう1曲は4曲目の収められた「These Are The Days Of Our Lives」。こちらはQUEEN、リサ・スタンスフィールドとの共演トラックです。「Somebody To Love」ほどのインパクトはないものの、これはこれでアリかなと。

そういえば、このステージでの共演を機に「フレディの後任はジョージがいいんじゃ」なんて話をちらほら挙がったこともありましたっけ。歌唱力はもちろんのこと、いわゆるセクシャリティにおいても共通点があるし、そういったところで適任なんて噂されたのかもしれないけど、結局QUEENはご存知のとおり現在アダム・ランバートと一緒にステージに立っているわけですから。結果論とはいえ、結局はこれでよかったのかな、と。

QUEENとの共演トラックばかりに目が行きがちですが、そのほかの3曲にも注目しておきたいです。ジョージ・マイケルはWHAM!時代からカバー曲のセレクト、その仕上がりに対して定評がありましたが、今作ではハウス系アーティストADAMSKIとソウルシンガーのシールによるコラボ曲「Killer」と、THE TEMPTATIONSなどのカバーでも有名な「Papa Was A Rollin' Stone」の10分にわたるメドレー、そして映画『バグダッド・カフェ』の主題歌として知られる「Calling You」をセレクト。それぞれ1991年春にウェンブリーアリーナで行われた、2ndアルバム『LISTEN WITHOUT PREJUDICE VOL.1』(1990年)を携えたツアーからの音源で、同作での作風の延長線上にあるアレンジ(主に前者のメドレーで)を堪能することができます。一方で、「Calling You」は『FAITH』(1987年)での「Kissing A Fool」にも通ずるジャジーなテイスト。ジョージのスウィートな側面が遺憾なく発揮された、名カバーのひとつと言えるのではないでしょうか。

ちなみに今作、最後の最後にQUEENの「Dear Friends」(1974年の3rdアルバム『SHEER HEART ATTACK』収録)が収められたバージョンも存在します。これは同作が、当時ジョージが所属するソニー系からではなく、QUEENの所属レーベルParlophone(北米圏ではHollywood Records)からのリリースというのも大きく影響しており、「あくまでQUEENプロジェクトの一環」として発表されたものであることが伺えます。ジョージ自身、その後のリリースは『LISTEN WITHOUT PREJUDICE VOL.1』から続く3rdソロアルバム『OLDER』まで約6年もの歳月を要することになるので、その中間となる1993年にこういう作品をリリースしておけたのは(しかもそこそこのヒット作になったのは)以降の活動へつなげる意味でもいい効果をもたらしたのではないでしょうか。また、QUEENも2年後の1995年に“オリジナル”アルバム『MADE IN HEAVEN』を発表することになりますしね。



▼GEORGE MICHAEL and QUEEN with LISA STANSFIELD『FIVE LIVE』
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投稿: 2016 12 27 12:00 午後 [1993年の作品, George Michael, Queen, 「R.I.P.」] | 固定リンク

GEORGE MICHAEL『FAITH』(1987)

WHAM!の解散が1986年6月で、ソロシングル「I Want Your Sex」リリースが翌1987年6月。WHAM!在籍中に「Careless Whisper」(1984年)、「A Different Corner」(1986年)の2曲をソロ名義で発表していたり、それらの楽曲がWHAM!のオリジナルアルバム(前者が2nd『MAKE IT BIG』、後者が『MUSIC FROM THE EDGE OF HEAVEN』)にも収録と、WHAM!解散後のソロ活動は当然の流れなわけで。

そりゃ「I Want Your Sex」を最初に聴いたときの衝撃は、相当なものでした。直接的なタイトルもそうですし、いわゆるポップミュージックのフィールドのど真ん中で戦ってきたWHAM!からよりアダルトな路線へと移行したそのサウンドにも、ただただビックリしたものです。

1987年秋、ついにリリースされた1stソロアルバム『FAITH』は、「I Want Your Sex」から想像できたアダルト路線をより突き詰めたものでしたが、予想よりも聴きやすい1枚でまた驚かされたのも、まるで昨日のことのように覚えています。当時高校1年生だった自分に“大人すぎず、子供すぎず”な絶妙なバランス感の上に成り立っていたこのアルバムは、当然のように全米&全英1位。アルバムからシングルカットされた5曲(「Faith」「Father Figure」「One More Try」「Monkey」「Kissing A Fool」)中、「Kissing A Fool」以外の4曲が全米1位を獲得し、アルバム自体もアメリカで当時700万枚、現在までに1000万枚超を売り上げるメガヒット作となりました。これは同年に発表されたマイケル・ジャクソンのアルバム『BAD』からの全米No.1シングル5曲に次ぐ大記録。そう考えると、1987年って本当に面白い年だったなぁ……。ちなみに、このアルバムは1988年のビルボード年間ランキングで1位、シングル「Faith」も1988年の年間チャートで1位という快挙を成し遂げています。WHAM!というスーパーグループはたった数年の活動で終了したものの、それ以上の成功をソロになっていきなり達成してしまったわけです。

事実、本作はそのセールスや記録に負けないだけの内容だと思います。賛美歌のようなオープニングに続いて、ボ・ディドリー調のリズムと意外なほどに音が薄いタイトルトラック「Faith」の意外性。アジアテイストのイントロ&ゴスペル調コーラスと同じくらい、一緒になれない男女(もしくは男同士)の別れをつづった歌詞が意味深な「Father Figure」から、ストレートな「I Want Your Sex」への流れ。ジョージの真骨頂といえるバラード「One More Try」、どこかプリンスにも通ずるダーク&コールドなファンク「Hard Day」、アメリカンドリームを否定する冷ややかな「Hand To Mouth」、ジャム&ルイスがリミックスしたシングルバージョンもなかなかなファンクチューン「Monkey」で緩急をつけて、ラストはジャジーな「Kissing A Fool」で締めくくるという完璧な構成。アルバム全体はもちろんのこと、1曲1曲を取り上げても、リリースから29年経った今聴いてもまったく古さを感じさせないのだから、本当にすごいアルバムだなと思います。

にしても、アルバム全9曲(「I Want Your Sex」がパート1&2のメドレーなので、実質10曲ですが)6曲がシングル曲っていう強みもすごいし、WHAM!からこういったアダルト路線に見事シフトチェンジできた事実もすごい。CDだとボーナストラックとして、ラストに「A Last Request (I Want Your Sex Part III)」が収録されているのですが、この組曲的にアルバムに位置する「I Want Your Sex」という曲が、結局はジョージ・マイケルのソロキャリア開始における支柱だったのかなと。その後の彼のアレコレを考えると、いろいろ感慨深いものがありますね。



▼GEORGE MICHAEL『FAITH』
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投稿: 2016 12 27 12:00 午前 [1987年の作品, George Michael, Wham!, 「R.I.P.」] | 固定リンク

2016/12/26

STRYPER『FALLEN』(2015)

アメリカのクリスチャンメタルバンド、STRYPERが2015年秋に発表した通算11枚目のオリジナルアルバム。彼らは80年代半ばから後半にかけて活躍するものの、90年代に入ってしばらくすると解散。スポット的な復活がありながらも、2003年から本格的に復活。解散前(5枚)と解散後(6枚+α)では、解散後のほうがすでにアルバム制作枚数が多いんですね。ホント、勤勉なバンドだと思います。

しかし、『TO HELL WITH DEVIL』(1986年)、『IN GOD WE TRUST』(1988年)の時期が個人的なピークだったこともあってか(『IN GOD WE TRUST』期には武道館公演にも足を運ぶくらい好きでしたし)、なぜか再始動後のオリジナルアルバムには一切触れずに来ました。たぶん、再レコーディングされた「In God We Trust」(2005年のアルバム『REBORN』収録)が個人的にピンと来なかったのが理由だと思います。

しかし、マイケル・スウィートのソロアルバムレビューに書いたように、昨年SWEET & LYNCHのアルバムをきっかけにSTRYPER熱が再発。しばらくはSWEET & LYNCHを聴き返す日々でしたが、半年以上経ってから発売されたこの最新アルバム『FALLEN』でようやく新生STRYPERを本格的に聴き始めたわけです。

アルバムを聴いてまず感じたのは、「あ、これ僕が知ってる“あの”STRYPERだ!」ってこと。多くの再結成バンドが解散前の作品をなかなか超えられないのと同様に、STRYPERも『SOLDIERS UNDER COMMAND』(1985年)から『IN GOD WE TRUST』あたりの作品を超えるのは難しいんじゃないかと勝手に思い込んでいたんです。

ところが1曲目「Yahweh」(日本語で言うところのエホバの意)の冒頭、聖歌のようなコーラスから始まり、曲が進行するにつれ曲調が次々に変化していくアレンジにいきなり惹きつけられます。その後も「Fallen」「Pride」といった彼ららしいミディアムテンポの楽曲があったり、アコースティックバラード「All Over Again」があったり、クリスチャンバンドがBLACK SABBATHをカバーする意外な「After Forever」、ストレートなファストナンバー「Till I Get What I Need」「The Calling」「King Of Kings」など、どこを切っても「これぞSTRYPER!」という楽曲ばかり。終盤の畳み掛けも気持ちいいし、とにかく最後まで飽きずに楽しめる良質のハードロックアルバムに仕上がっています。

ひとつだけ難をつけるとするならば、「Together As One」「Honestly」「I Believe In You」といった過去のアルバムに必ず1曲は収録されていたピアノバラードがなかったこと。「All Over Again」にようにレイドバックしたバラードも悪くないですが、上記に挙げたピアノバラードのSTRYPERにとっては大きな武器のはず。なかなかこれらの楽曲を超えるのは難しいかと思いますが、ぜひ今後は新たなピアノバラードでリスナーを感涙させてほしいなと思います。

同時代にシーンを盛り上げたバンドたちが同じように再結成するも、なかなかここまでのレベルの作品を生み出せていない現在。STRYPERのようなバンドの存在は非常に貴重です。今年4月の来日公演も大成功だったようですし、今後もこのまま安定した活動継続と良質な作品発表を続けてほしいですね。



▼STRYPER『FALLEN』
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投稿: 2016 12 26 12:00 午後 [2015年の作品, Stryper] | 固定リンク

MICHAEL SWEET『ONE SIDED WAR』(2016)

STRYPERのフロントマン、マイケル・スウィートの7thソロアルバム。昨年は年明けに発表ジョージ・リンチとのSWEET & LYNCH名義によるコラボアルバム『ONLY TO RISE』が素晴らしい出来で、後半にリリースされたSTRYPERのニューアルバム『FALLEN』も大満足の内容と良作続きでした。実際、自分がSTRYPER絡みの作品を購入したのも90年代以来のことで、今もマイケル・スウィートがここまで歌えること、ここまで良曲を連発できることに驚かされ、嬉しく思いました。

で、そこから1年ぶりに発表されたSTRYPER絡みの新作が、このマイケルのソロアルバム。EVANESCENCEなどで活動したウィル・ハント(Dr)、元NIGHT RANGER、現WHITESNAKEのジョエル・ホークストラ(G)などと制作した、ど直球のハードロックアルバムに仕上がりました。潤いあるメロディは変わらず、ファストチューンやミディアムヘヴィナンバーがバランス良く並んでおり、最後まで気持ち良く聴くことができます。

いわゆるSTRYPER的なコーラスは皆無で、ただひたすらマイケルが気持ちいいままに歌い、ギターを弾きまくる。これ以上何がお望み?と言わんばかりの豪速球の連投に、思わずニヤニヤしてしまうんじゃないでしょうか。かと思えば、STRYPER的分厚いコーラスが登場する「Who Am I」もあるし、ブルージーなバンジョーの音色に渋みを感じる「Radio」、「えっ、RATTとSTRYPERの融合!?」と腰を抜かしそうになる「Only You」みたいな楽曲もあるんだから、楽しめないわけがない。

確かにSWEET & LYNCHのようにフックとなるジョージ・リンチのギターもないし(DOKKEN的楽曲をマイケルが歌うというポイントも)、メンバー4人の個性が詰まったSTRYPERのそれとも違うけど、間違いなく“あのSTRYPERのメインソングライターおよびシンガー”が作ったアルバムであることは、一聴すれば理解できる。要するに、悪いところがまったく見つからない、本当に優れたハードロックアルバムだということです。

「80年代から時間が止まってるんじゃない?」と問われれば、確かにその通りかもしれない。でも、あの頃に発表した作品よりもさらにブラッシュアップされた内容であることは紛れもない事実。どう聴けばこれが悪い作品になるのか、逆に質問したいくらいです。この創作意欲がどこまで続くのか、今後も見届けたいと思います。



▼MICHAEL SWEET『ONE SIDED WAR』
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投稿: 2016 12 26 12:00 午前 [2016年の作品, Michael Sweet, Stryper] | 固定リンク

2016/12/25

SYSTEM OF A DOWN『SYSTEM OF A DOWN』(1998)

2017年、ついにニューアルバムをリリースか?と噂されるSYSTEM OF A DOWN。セルフタイトルとなる彼らの1stアルバムは今から約18年前の1998年6月(日本では同年10月)にリリースされました。

1998年というと、KORNが『FOLLOW THE LEADER』、マリリン・マンソンが『MECHANICAL ANIMALS』でそれぞれ全米1位を獲得し、AT THE DRIVE-INが『IN/CASINO/OUT』、THE OFFSPRINGが『AMERICANA』、ロブ・ゾンビが『HELLBILLY DELUXE』をそれぞれ発表し、マックス・カヴァレラ率いるSOULFLYが『SOULFLY』で、ZEBRAHEADが『WASTE OF MIND』でそれぞれデビュー(ZEBRAHEADはメジャーデビュー)を飾ったタイミング。REFUSEDの(この時点での)ラストアルバム『THE SHAPE OF PUNK TO COME』がリリースされたのもこの年でした。

そんな年にSYSTEM OF A DOWNもシーンに颯爽と登場したのですが、最初聴いたときは「??」というのが素直な感想でした。メタルなのかパンクなのかカテゴライズが難しく、どこかコミカルさが漂うサウンド。そこに乗るボーカルもヒステリックだったりデスメタル調だったり、あるいはオペラ調だったりと一筋縄でいかない感じだし。正直、最初は1、2回聴いただけで理解できず、しばらく放置していました。

その後、半年ぐらい経ってから(確か2000年前半頃)ふと思い立って聴いてみると、「あれ、これいいかも……」と感じるようになり、その後数回聴き返しているうちに「前半のコミカルな調子から、後半に進むにつれてシリアスになったり、ちょっと劇的になったりと、これはこれで面白いぞ?」と気づき。気がついたら、この掴みどころのない奇妙なサウンドの虜になっていたのでした。

このアルバム、そして続く2001年発売の2ndアルバム『TOXICITY』が当時のUSラウドシーン、そして日本国内のラウドシーンに与えた影響は計り知れないものがあります。2000年代前半以降に登場した数多くのバンドたちは、SYSTEM OF A DOWNから少なからず影響を受けているはずです。特定の名前はここでは挙げませんが、このアルバムを聴いてなんとなく思い浮かべる日本国内のバンドもちらほらいるのではないでしょうか。

カリフォルニア出身のバンドではあるものの、メンバーが皆アルメニア系アメリカ人ということも、その音楽性のルーツになっているのかもしれませんし、そういった生活環境が歌詞に与えた影響も大きいものがあるはずです。日本人がストレートに解釈するには難しい側面も多いですが、そのへんも含めて理解しようとすることで、このバンドの真の魅力が見えてくることでしょう。



▼SYSTEM OF A DOWN『SYSTEM OF A DOWN』
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投稿: 2016 12 25 12:00 午後 [1998年の作品, System of a Down] | 固定リンク

KING 810『LA PETITE MORT OR A CONVERSATION WITH GOD』(2016)

前作『MEMOIRS OF A MURDERER』から2年ぶりに発表された、アメリカ・ミシガン州フリント出身の4人組メタルコア/ハードコアバンドの新作。「全米一危険なバンド」という触れ込みで一部マニアの間で話題になった彼らですが、前作はRoadrunnerからの配給だったにもかかわらず日本盤リリースはなし。当然来日も実現しなかったので、知る人ぞ知るみたいな存在で終わりかけていました。ちょうど2年前、当サイトでも紹介したので覚えている人もいるかもしれません。

そんなところに、ニューアルバムの発売。今作もRoadrunnerからのリリースですが、引き続き国内盤の発売はなし。いろんな意味で残念すぎる。

さて、今作の内容ですが、前作までのNYハードコア的オールドスクールサウンドとモダンなヘヴィロックサウンドを融合させた路線はそのまま。ただ、少々モダンよりになった印象も受けました。相変わらず引き摺るようなミドルテンポの楽曲が中心で、そこにスポークンワードやメロウパートを挿入する緩急のつけ方も相変わらずですが、今作ではナレーションを切り刻んだサンプリングをフィーチャーした「Vendettas」、アコースティックギターやストリングスを導入したドラマチックな「Black Swan」、どことなくヒップホップ的な匂いもする「Life's Not Enough」、ピアノを前面にフィーチャーしたジャジーな「Me & Maxine」など新境地ナンバーも多数収録されています。

テンポの上げ下げで抑揚をつけることなく、テンポ感はほぼ一定の中で音数や激しさで強弱をつけて聴き手を惹きつける手法は、メタルやラウドロックというよりも映画のサウンドトラック的な印象も。特にアルバム前半を締めくくる7曲目「La Petite Mort」とラストナンバー「A Conversation With God」はそのタイトルからもわかるように対になっており(2つを“or”でくっつけると、そのまま本作のアルバムタイトルに)、それぞれ前半後半のクライマックスをうまく作り上げています。

前作同様に、いわゆるファストナンバーが皆無なことから疾走系を好むファンからは敬遠されそうですが、前作以上に深みを増した今作からは「全米一危険なバンド」というレッテルで片付けられない魅力もたっぷり感じられます。どことなくSLIPKNOT『IOWA』にも通ずる匂いもするので、そのへんが好きな人にも受け容れられるんじゃないでしょうか。食わず嫌いせずに、ぜひ一度お試ししてみることをオススメします。



▼KING 810『LA PETITE MORT OR A CONVERSATION WITH GOD』
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投稿: 2016 12 25 12:00 午前 [2016年の作品, King 810] | 固定リンク

2016/12/24

PANTERA『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』20TH ANNIVERSARY EDITION(1996 / 2016)

1996年5月に発表された、PANTERA通算8枚目(メジャー移籍後4枚目)となるオリジナルアルバム。前作『FAR BEYOND DRIVEN』が初の全米1位を獲得したものの、バンドを取り巻く環境が悪化し(フィルの暴行による裁判およびドラッグ癖)、決してベストとは言い難いなかで制作されたのがこの『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』(邦題『鎌首』。意訳でもなんでもなく、たたジャケット写真を観て思いついただけでしょ、これ)でした。しかし、そのアグレッシヴな主張が際立つタイトル同様、内容は非常に攻撃的で、オープニング曲「The Great Southern Trendkill」冒頭のフィルによるシャウトでいきなりノックアウトされること間違いなしな1枚。

前作が出世作『VULGAR DISPLAY OF POWER』(1992年)をよりハードコアにした作風だったのに対し、今作ではハードコアさはそのままに、全体としてより整理された印象が強い。なもんで、前作で途中からダレ気味だったミドルテンポの楽曲も、今作ではギタープレイによる惹きつけ方や聴き手を飽きさせない工夫したアレンジが施されています。と同時に、かなり実験的なサウンド&楽曲も含まれており、アルバム中盤の(なかば組曲と言える)「Suicide Note, Pt.1」「Suicide Note, Pt.2」の緩急のつけ方はさすがと言わざるをえません。特に「Suicide Note, Pt.1」は、LED ZEPPELIN「Going To California」のカントリーやサザンロックに寄せたような不思議な魅力があり、そこからひたすらアグレッシヴな「Suicide Note, Pt.2」に切れ目なく突入する構成には鳥肌が。そのほかにもサイケデリックな色合いの「Flood」では、過去の「This Love」を深化させつつ新たなチャレンジにトライしており、世の「PANTERAフォロワー」とは格が違うことを見せつけます。

リリース当時は衝撃作『VULGAR DISPLAY OF POWER』、そしてNo.1アルバム『FAR BEYOND DRIVEN』の後だけに、ちょっと分が悪いというか、そこまで高く評価されていなかったような記憶がありますが、今聴くと先の2枚に負けないだけのパワーと深みがある1枚だと思います。今なら素直に『VULGAR DISPLAY OF POWER』の次に好きなアルバムと断言できます。


「20TH ANNIVERSARY EDITION」解説

で、今回このタイミングで取り上げたのには理由が。ご存知のとおり、本作は今年でリリース20周年を迎えたことから、10月にリマスタリング&ボーナスディスク付きのアニバーサリーエディションが発売されました。アルバム本編のリマスター盤となるDISC 1に関しては、なんとなく全体的に聴きやすくなった印象が。それはソフトになったということではなく、全体のバランスや音のメリハリが以前よりもわかりやすくなったというか(気のせいかもしれないけど)。

そして、もっとも気になるのが『THE GREAT SOUTHERN OUTTAKES』と題されたDISC 2のほうですよね。こちらは基本的にアルバム本編と同じ曲順でテイク違い(ミックス違いやインストバージョン、1998年の『DYNAMO OPEN AIR』でのライブ音源)が収められています。ライブ音源は音質的にはまぁこんなもんかな、と。ちょっと全体的にモコっとした印象があります。で、インストバージョンについては割愛して(笑)、ミックス違い……こちらは2種類あって、ひとつは「2016 Mix」と題されたもので、これは「The Great Southern Trendkill」1曲のみ。残りは「Early Mix」と、その名のとおり初期段階でのミックス。どのミックスも曲冒頭にフィルの話し声やドラムのカウントなどが残されており、ミックス自体も完全に整理されたDISC 1の音源よりも生々しさが残されています。

最新ミックスとなる「The Great Southern Trendkill」は……正直、そこまで音が良くないような。リミックスの類というよりは、他の「Early Mix」と同じ扱いと思ってもらったほうがいいかもしれません。エンディングの締まりのなさもカッコ悪いし。これを聴くと、いかにアルバム本編のバージョンが優れているかに気づかされます。

ということで、DISC 2は1枚のアルバムとして楽しむというよりは、『THE GREAT SOUTHERN OUTTAKES』本編を堪能した後に別の解釈をするための副読本的内容と言ったほうがいいかもしれませんね。あくまでおまけと解釈して接するのが無難です。

思えば『COWBOYS FROM HELL』(1990年)以降、メジャーから発売されたアルバムは今のところ4作品が20周年アニバーサリーエディションとしてリイシューされています。このまま進めるなら、次の2020年に『REINVENTING THE STEEL』(2000年)のアニバーサリーエディションが発売されることになるのかな。そもそも何か発表できそうな貴重音源が残っているのでしょうか。もしできることなら、フルライブをまるまる1本収めた未発表ライブ音源/映像があると……いいなぁ。



▼PANTERA『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』20TH ANNIVERSARY EDITION
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投稿: 2016 12 24 12:00 午後 [1996年の作品, 2016年の作品, Pantera] | 固定リンク

SCOUR『SCOUR』(2016)

2016年は冒頭からトラブルを引き起こして、メタル界のみならず社会問題にまで発展しそうなほどやり玉に挙げられたフィル・アンセルモ。詳しくはこのへんを読んでもらえれば、何が起こったか思い出せるかと思います。

この騒動後、DOWNからの脱退を申し入れたというフィル。現在もバンドには残っているようですが、今年後半はしばらく休止状態だったSUPERJOINT RITUALをSUPERJOINTと改名させて、ニューアルバム『CAUGHT UP IN THE GEAR OF APPLICATION』を制作したり、今回紹介するブラックメタルバンドSCOURを結成してEPを発表したりと、何かと忙しそうにしておりました。

さて、そのSCOURですが、いわゆる初期デスメタル、ブラックメタルをはじめとするエクストリームサウンドを軸にしたバンド。メンバーは下記のとおり。


Philip H. Anselmo (Vo / ex-PANTERA, DOWN)
Drek Engemann (G / CATTLE DECAPITATION)
Chase Fraser (G / ANIMOSITY)
John Jarvis (B / PIG DESTROYER, AGORAPHOBIC NOSEBLEED)
Jesse Schobel (Dr / STRONG INTENTION)


正直、CATTLE DECAPITATIONとPIG DESTROYERぐらいしか聴いたことがありませんが、それぞれデス/グラインドコア界隈のバンドばかり。このEP自体も、ギターのトレモロリフがいかにも“ソレ”な「Dispatched」を筆頭に、上記のバンドが持つルーツが垣間見れる1枚となっています。フィルのデスボイス/グロウルもいつも以上にすごみを増していますが、ちょっとお上品に聞こえてしまうのは僕の偏見でしょうか?(「Clot」で入る合いの手的デスボイスの汚さのほうが本格的すぎたもので。こっちはフィルじゃないですよね、おそらく。デレクとジョンはバッキングボーカルもしているようですし)

決してフィルが昔のブラックメタルで信仰されていた世界を崇拝しているとか、そういうことではないと思いますが(ナチス問題の後だけに、それだと余計ややこしいことになりかねないし)、エクストリームメタルを追求するという点においてはこの世界に一度足を踏み入れるのも必要だったのかなと。バンドというよりはプロジェクト形態みたいなので長続きはしないと思いますが、これはこれで生で観てみたい気がします。



▼SCOUR『SCOUR』
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投稿: 2016 12 24 12:00 午前 [2016年の作品, Pantera, Scour] | 固定リンク

2016/12/23

KORN『THE PATH OF TOTALITY』(2011)

2011年に発表された、KORN通算10枚目のオリジナルアルバム。前作『KORN III: REMEMBER WHO YOU ARE』(2010年)でRoadrunnerに移籍&初期2作を手掛けたロス・ロビンソンと再びタッグを組んでおり、そのタイトルどおりそれ以前の数作にあった実験的要素を排除して、自分たちが何者かを思い出したかのように初期の作風を若干取り戻した内容に多くのファンが歓喜したのを今でも覚えています。実際、僕も『KORN III: REMEMBER WHO YOU ARE』は仕事柄リリース前に聴くことができたのですが、その内容に膝を叩いて喜んだのを昨日のことのように覚えています。

しかし、その『KORN III: REMEMBER WHO YOU ARE』から1年弱という短いインターバルで発表された次作『THE PATH OF TOTALITY』での変貌ぶりときたら……そもそもはダブステップ系アーティストとの実験的EP(ミニアルバム)というプロジェクトだったものが、一気にフルアルバムまでスケールアップ。それがこの短期間でのリリースにつながったようです。それだけ、ダブステップ系アーティストとのコラボレーションが実り多きものだったということなんでしょう。

がしかし。僕はこの変貌ぶり、実は大いに気に入っております。ここまで振り切れてこそKORNという変な興奮もありましたし、何よりもあの当時における「ヘヴィで暴力的な音」は間違いなくダブステップでしたから、そこに目をつけたジョナサン・デイヴィスに対して「さすが!」と思ったのも事実です。

今のようにEDM=パリピみたいな浸透の仕方をしてなかった時期の作品ですし、KORNの軸にあるメロディや変態性とダブステップとの相性は抜群。なによりも、既存の曲をダブステップリミックスしたわけではなく、一緒に曲作りをしているところにこのアルバムの真意があると思うのです。いわゆるギターサウンドこそがすべてという人種にはまったく受け付けない1枚だと思いますが、大音量で聴いたときにさらに発揮される暴力性はKORNの作品上1、2を争うものだと思います。

もちろん、これ1枚きりで終了したプロジェクトだからこそ意味があるわけで、ここを経たからこそ2016年に「KORNってこういうバンドだよね!」と納得できる12thアルバム『THE SERENITY OF SUFFERING』を生み出すことができたのではないでしょうか。個人的には1stアルバムに次ぐ好きな作品です。



▼KORN『THE PATH OF TOTALITY』
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投稿: 2016 12 23 12:00 午後 [2011年の作品, Korn] | 固定リンク

THE QEMISTS『WARRIOR SOUNDSYSTEM』(2016)

5年半ぶりにリリースされた3rdアルバム『WARRIOR SOUND』から1年経たずに発表された最新ミニアルバム『WARRIOR SOUNDSYSTEM』。そのタイトルやジャケットのアートワークからわかるように、今作は『WARRIOR SOUND』と対になる1枚で、新曲「Stepping Stones」「Find My Way」のほか、『WARRIOR SOUND』収録の「Jungle」のライブテイク、KORNの代表曲「Blind」のカバー、そしてZardnicやSeamlessRによるリミックステイクの計6曲が収録されています。

「Stepping Stones」「Find My Way」はサウンド、歌詞ともに『WARRIOR SOUND』に入っていてもおかしくない作風で、今年の夏に制作されたもの。『WARRIOR SOUND』を携えたツアーで得た手応えをそのまま形にした、勢いのあるものに仕上がっています。

またTHE QEMISTSにしては珍しいカバー曲「Blind」は、KORNと一緒にツアーを回った経験から、いかに自分たちが彼らから影響を受けたかを再確認できたのもあったんでしょうね。KORNが一時期ダブステップに接近したように、THE QEMISTSがヘヴィロック側にこういう形で接近するのも面白いと思います。

リミックスに関しては、あくまでフロアライクなダンスミュージックという観点で制作されているようです。今年の『LOUD PARK』にも出演して知名度を上げたZardnicとの組み合わせも「なるほど!」と思わせるもの。THE QEMISTSにはこういうど真ん中のダンスサウンドも合ってるなと改めて気づくこともできました。

次の作品までのつなぎという意味もあるでしょうが、今作の場合は『WARRIOR SOUND』で再び波に乗った彼らがその勢いを絶やさないために、かつ思いついた新たなアイデアを試すためにも必要な場だったのかなと。2ndアルバムから3rdアルバムのときみたいにリリース間隔が大きく空かなければ、こういうミニアルバム発売も個人的には全然アリです。なんなら、この新作発売に関連してまた来日してほしいぐらいですから。

なお、このミニアルバムは日本限定リリースとなっており、アルバム封入の解説およびそこに掲載されているレオン・ハリス(Dr)のインタビューを僕が担当しております。詳しいことはそこに全部書いてあるので、まずはCDを購入することをオススメします!



▼THE QEMISTS『WARRIOR SOUNDSYSTEM』
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投稿: 2016 12 23 12:00 午前 [2016年の作品, Qemists, The] | 固定リンク

2016/12/22

SLAYER『SEASONS IN THE ABYSS』(1990)

「SLAYERのアルバムでどれが一番好きか?」と尋ねられたとき、おそらく多くの人が3作目の『REIGN IN BLOOD』(1986年)を挙げるかもしれません。もちろん僕も大好きですし、スピードにこだわったこのアルバムと(こちらは人によってまちまちだけど)重さにこだわった次作『SOUTH OF HEAVEN』(1988年)は合わせて語りたいくらい気に入ってますから。

では、もしこれからSLAYERを初めて聴こうというビギナーに1枚だけオススメするならどれを選ぶか? そのときは残念ながら上記の2枚ではなく、1990年に発表された5thアルバム『SEASONS IN THE ABYSS』を選ぶことでしょう。

『SEASONS IN THE ABYSS』は先に挙げた2作の良い点をうまくミックスした、いわゆるスラッシュメタルが苦手という人にも勧めやすい内容となっています。王道スラッシュチューン「War Ensemble」で始まったかと思えば、続く「Blood Red」は小気味良いリズム感とメロを持つミドルチューン。3曲目に再びファストチューン「Spirit In Black」で盛り上がると、ヘヴィな「Expendable Youth」、不気味さを漂わせるミディアムナンバー「Dead Skin Mask」と、ただ速さで押すわけではないのにスルスルと聴けてしまう。後半は再びスピードナンバー「Hallowed Point」で仕切り直し、以降もスピードと重さが交互に押し寄せて、最後はアルバムのタイトルトラックでもあるムーディー&ヘヴィな「Seasons in The Abyss」で幕を下ろす。全10曲で42分強というトータルランニングも絶妙です。

このアルバムはトム・アラヤ(Vo, B)、ケリー・キング(G)、ジェフ・ハンネマン(G)、デイヴ・ロンバード(Dr)という、いわゆる黄金期メンバーで制作された最後のスタジオアルバム(その後、2000年代に同じ布陣が復活し、2006年に『CHRIST ILLUSION』、2009年に『WORLD PAINTED BLOOD』を制作)で、先に述べたように最盛期を迎えたバンドの姿を記録しようと1991年にはライブアルバム『DECADE OF AGGRESSION』も発表されています。しかし、ここで区切りをつけるかのように、翌1992年のデイヴが脱退。新たにポール・ボスタフを迎えた編成で制作した6thアルバム『DIVINE INTERVENTION』を1994年に発表しますが、ここには『SEASONS IN THE ABYSS』で感じられた親しみやすさ/入りやすさはなくなっていました。以降、バンドとしてはよりヘヴィでハードコアな方向に進んでいくことになります。



▼SLAYER『SEASONS IN THE ABYSS』
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投稿: 2016 12 22 12:00 午後 [1990年の作品, Slayer] | 固定リンク

THE QEMISTS『WARRIOR SOUND』(2016)

2010年夏発売の2ndアルバム『SPIRIT IN THE SYSTEM』から5年半ぶりに発表された、THE QEMISTSの3rdアルバム。この5年半の間に、バンドにはオリバー・シモンズ(Vo)、ブルーノ・バランタ(MC)の選任フロントマン2名が正式加入し、リアム・ブラック(G)、ダン・アーノルド(B)、リオン・ハリス(Dr)のオリジナルメンバーを含む5人組バンドに。1stアルバム『JOIN THE Q』と2ndアルバム『SPIRIT IN THE SYSTEM』にはさまざまなゲストボーカリストを迎えたカラフルさがあったけど、今作では1本筋が通ったような太い芯を以前よりも強く感じることができます。

サウンド的には過去の作品にもあったデジタルダンスサウンドに、ギターを軸にしたヘヴィロックサウンドの色合いをまぶしたもの。ひと昔前ならデジロックと揶揄されそうな恐れもあるけど、特にここ日本ではラウドロックと称して(バンド、デジタルすべてを飲み込んだ)ヘヴィなサウンドが好意的に受け入れられていることから、本作も好意的に受け入れられているようです。

その大きな要因となっているのがCrossfaithのフロントマン、Kenta Koieがゲスト参加した「Anger」が収録されていること。THE QEMISTSとCrossfaithはUKツアーをともにしただけでなく、今春行われたTHE QEMISTSの来日公演にもKoieがゲスト参加して同曲を披露。そういったつながりも、日本のファンには親しみを与えるよいきっかけになっているんじゃないでしょうか。

サウンドでの攻撃性のみならず、歌詞にも社会や政治への反抗心が表現されているので、最新型の“Rebel Music”をぜひ音、言葉を通じて体感してほしいです。

余談ですが、メンバーインタビューを交えたこのアルバムの解説文がリアルサウンドに掲載されているので、詳しくはこちらも御覧ください。



▼THE QEMISTS『WARRIOR SOUND』(2016)
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投稿: 2016 12 22 12:00 午前 [2016年の作品, Qemists, The] | 固定リンク

2016/12/21

BRING ME THE HORIZON『THAT'S THE SPIRIT』(2015)

2015年秋にリリースされた、BRING ME THE HORIZONにとって通算5枚のオリジナルアルバム。全英2位、全米2位という、それまでのキャリアでともに最高位を記録しただけでなく、バンドの新境地を伝える斬新な1枚でもあります。

初期のデスコア路線こそがBMTHだ!という人にとっては、キーボーディストを正式メンバーに迎えて制作された前作『SEMPITERNAL』(2013年)以降の流れには不満かもしれません。事実、僕も最初に『SEMPITERNAL』からのリード曲「Sleepwalking」を聴いたときは正直ショックでしたし、慣れるまでにしばらく時間がかかりました。とはいえ、『SEMPITERNAL』というアルバム自体はそれ以前の作風も含まれており、聴き込めば聴き込むほぼハマっていく不思議な魅力が備わっていたのも事実です。

その流れで発表されたこの『THAT'S THE SPIRIT』では、いわゆるスピードナンバーを完全排除し、ミドルテンポ中心の中でサウンドメイキングで緩急をつけるという挑戦的な内容。ギターのローサウンドとメランコリックなシンセサウンドの融合、そこにオリヴァー・サイクス(Vo)の歌メロを大切にしたボーカルが乗る作風は、それまでのBMTHを考えれば新鮮以外のなにものでもなく、曲によっては「LINKIN PARKかよ!」とツッコミたくなるくらい屈託ない楽曲が並びます。

彼らがこのタイミングでいわゆる売れ線を狙ったとは思えませんし、単に音楽の趣味が拡散した故のこの作風なんだと思いますが、いかがでしょうか。彼らがそれまで軸足を置いていた村からはケチョンケチョンに酷評されたようですが、僕自身はバンドとしての新たな可能性を感じたし、むしろ「この次」こそが真の勝負作なんじゃないかと感じています。過去からの脱却を経て、彼らがどこに進むのか。それがヘヴィロックの未来につながるんじゃないか、そう信じています。

昨年、僕は自身のサイトや各誌で求められた年間ベストアルバムにて、このアルバムを1位に選びました。あれから1年経ちましたが、その考えは今も変わっていません。事実、今年1年も本当に聴きまくったアルバムですし。だからこそ、今年頭に予定されていた久しぶりの単独来日公演が延期(事実上の中止)になってしまったのは残念でなりません。このアルバムのタイミングで彼らを日本で観ることができないなんて……ライブを見せることで、このアルバムに対する評価も少しは変わったかもしれないのに。



▼BRING ME THE HORIZON『THAT'S THE SPIRIT』
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投稿: 2016 12 21 12:00 午後 [2015年の作品, Bring Me The Horizon] | 固定リンク

MEGADETH『DYSTOPIA』(2016)

2015年秋の『LOUD PARK』に出演する際、過去のスタジオアルバムに関して全レビューを行ったMEGADETHですが、結局その後このニューアルバムについて触れてなかったので、年をまたぐ前に紹介しておこうと思います。

2015年秋に公開された新曲「Fatal Illusion」について、僕は「現時点ではアルバム3曲目に収録される「Fatal Illusion」の音源のみ公開中。これ1曲では判断が難しいが、やはりメロディの雰囲気が前作に多少近いかなと。しかし演奏やアレンジ的には合格ライン。そういえば今回も本編ラストをカバー(Fearの「Foreign Policy」)で締めくくるらしい。さらに2曲のボーナストラック付きバージョンもあり(今回は本編終盤に振り分けられるようだが)。前作からの課題であるムステインが以前ほど歌えなくなってきてる問題 or メロディセンスが落ちてきてる問題をどうフォローするのか、そしてカッコよく聴かせるかがポイントになってくるのかなと。ハードルは高くしつつ、心配しながらリリースを待つことにしよう……。」と不安であることを記していましたが、そこから数ヶ月後に発売されたアルバムは「良くも悪くも、僕らが知ってるMEGADETHのまま」で一応は安心しました。

スラッシーなオープニングトラック「The Threat Is Real」から、マーティ・フリードマン加入後の作品に多く見られる泣きメロ疾走メタルチューン「Dystopia」への流れは完璧。キコ・ルーレイロのギターソロも抜群にカッコいいし、リズムを支えるクリス・アドラー(LAMB OF GOD)のドラミングもMEGADETHに合わせたプレイで好印象。この2曲からの流れで聴くと、「Fatal Illusion」の印象も不思議と悪くない。その後も“いかにも”なミドルヘヴィナンバーや、キコのエキゾチックなアコギプレイをフィーチャーした「Bullet To The Brain」「Poisonous Shadows」「Conquer Or Die!」なども飛び出し、終始飽きさせない構成で進行していきます。そしてラストはFEARのカバー「Foreign Policy」で激しく締めくくり。全11曲(日本盤はその後にボーナストラック1曲、iTunesでは日本盤ボートラとも異なる新曲2曲が本編中に追加収録)、思っていた以上にスルッと聴くことができました。そういう意味では、2000年代のMEGADETH(『UNITED ABOMINATIONS』以降の流れ)を踏襲した作風で、前作『SUPER COLLIDER』で感じた疑問を完全に払拭してくれたと思います。

で、「悪い意味」では……やっぱり歌メロですね。80年代から90年代半ば、いわゆるMEGADETHの全盛期と言われた時代の楽曲にあった「デイヴ・ムステインのヒステリックな高音ボイス」がなくなり、中低音域メインの歌メロとなっています。以前も書いたかもしれませんが、このへんは若い頃に散々楽しんだドラッグのツケが回ってきたのかな、と思っているのですが……とはいえ、ムステインもこの9月で55歳。年齢的なものもあるのかな。歌える声域が狭まったため、どうしても高音が出なかったりメロのバリエーションが少なかったりという点での不満は拭いきれません。そこだけは嘘でも「良かった」なんて言えない。だから、本当にもったいないアルバムだなと思うんです。

チャート的には1992年の最大のヒット作『COUNTDOWN TO EXTINCTION』(全米2位)に次ぐ、初登場3位という好記録を残しており、そこだけはホッとしております。ゲストドラマーだったクリス・アドラーも離れ、ダーク・ヴェルビューレン(SOILWORK)が正式加入したとのことで、過去最強の多国籍編成になった今のMEGADETHを(アルバムリリース後の来日がいまだ実現していないだけに)早く生で観たいものです。



▼MEGADETH『DYSTOPIA』
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投稿: 2016 12 21 12:00 午前 [2016年の作品, Megadeth] | 固定リンク

2016/12/20

STEVEN TYLER『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』(2016)

聴く前からこんなにも不安でネガティブな気持ちになったソロアルバムって、自分の経験上そんなになかったんじゃないかな。だって、これが世に出るということは、バンドとしてしばらく機能しないということを示すわけだから。

そんな気持ちで接した、AEROSMITHのフロントマン、スティーヴン・タイラー初のソロアルバム『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』。カントリーレーベルからのリリースということで、最初は「年寄りが趣味でやるんでしょ。はいはい」くらいの気持ちでいたんです。そもそも、アルバムの1年前に発表されたリードトラック「Love Is Your Name」がポップだけどレイドバックしまくりだったから、余計にね。いや、悪い曲じゃないんですよ。ぶっちゃけ、エアロの最新作『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』の楽曲よりも優れてると思ったし。いやいや、比べるのは違うか。

ここ数年、以前ほど高音が出にくくなって、声質もカサカサになってきたスティーヴンの声には、こういうサウンドが意外と合うんだな。そう前向きなことも考えました。でも、自分が聴きたいのはジョー・ペリーと並ぶスティーヴンの姿。ジョーがソロをやるのとは意味が違うんですよ。

ところが。不安を抱えたままアルバムと接すると……いいんです、これが。楽曲がどれも優れているというのは言うに及ばず、スティーヴンのボーカルワークも非常に素晴らしい。無理にシャウトせず淡々と歌っているんだけど、それでも存在感が溢れてしまう感じといいましょうか。サウンド的にもカントリーを軸にしてはいるものの、もっとアメリカンポップス寄り。そもそもスティーヴンの性分を考えれば、こうなるのも納得なわけで、古き良き時代のアメリカンポップスやカントリー、ブルース、そして適度にロックで適度にサイケ。思えばエアロの楽曲の大半はスティーヴンがジョーと一緒に書いてきたもの。こういう作風になるのは当然であり、演奏している人間が異なるんだからエアロにならないのも当たり前。なんでそんな簡単なことに気づかなかったんだろうと、聴き終えた後に反省しました。そんなフラットな気持ちで接すれば、「Janie's Got A Gun」のアーシーなセルフカバーも素直に受け入れられるわけです。

もしかしたらこの人は、もっと新曲をレコーディングしたかったのかな。でも、それが今のエアロでは叶わないというなんらかの障害が存在する。だったら自分の好きなように1枚作ろうと。そう納得することにしました。事実、このアルバムを出した後にはエアロはショートツアーも行っているわけで、以前ほど大々的な活動はないものの、今後もよきタイミングでライブをしてくれるはず、と。

そんなことを考えていたところに、来年のツアーを最後にAEROSMITHの活動終了という話が飛び込んできたり。さらに来春にはスティーヴンのソロ来日公演も決定。もう何が正しくて、何が間違っているのか判断がつきませんが……ひとまず武道館でのソロライブには行きます。夏にはエアロでフェスに出たりツアーをしたりするようなので、そちらでの来日にも期待したい。そして……せめてバンドでもう1枚アルバムを作ってください。それだけが僕の望みです。その夢が実現するまで、このソロアルバムやここ数年発表されたライブ作品を目に耳にし続けていこうと思います。



▼STEVEN TYLER『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』
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投稿: 2016 12 20 12:00 午後 [2016年の作品, Aerosmith, Steven Tyler] | 固定リンク

AEROSMITH『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』(2012)

スタジオアルバムとしては2004年の『HONKIN' ON BOBO』以来8年半ぶり、オリジナル楽曲によるアルバムとしては2001年の『JUST PUSH PLAY』以来実に11年半ぶりの新作。『HONKIN' ON BOBO』以降はとにかくバンド内の不仲やらスティーヴン・タイラーやジョー・ペリーのソロ活動で、ライブはときどきやるものの制作に関しては思うように進まない。AEROSMITHにとっての2000年代後半はそういった苦難の時期だったように思います。

事実、この15枚目のスタジオアルバム『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』もリリースが二転三転。2012年春に今作からのリードトラック「Legendary Child」が公開されたときは、誰もが「やっと……!」と思ったのに、結局アルバムは半年先までお預け。「Lover Alot」「What Could Have Been Love」とシングルを切り刻んで、同年11月にようやくファンの手元に届けられたのでした。

オリジナルアルバムとしては11年半も待たされたこのアルバム。15曲68分という大作なのに、日本盤はここにボーナストラック2曲(ともにカバー)を加えた17曲76分という、時代が時代なら2枚組アルバム並みのボリューム。さらに、今作にはデラックスエディションも用意されており、アルバム本編未収録の新曲3曲入りディスク2と、ライブ映像やメンバーインタビューが収録されたDVDが付いた3枚組仕様という、過剰なサービスぶりが発揮されています。

さすがに新録曲が一気に20曲も届けられるとは思ってもみなかったので、最初は嬉しかったものの、何度か聴き返すと……印象に残る曲が少ないというのが正直なところ。『JUST PUSH PLAY』の流れにあるオープニングトラック「Luv Xxx」もどこか覇気が感じられず、いまいちパンチに欠ける。無駄をそぎ落としまくったストーンズライクなロックンロール「Oh Yeah」、グルーヴィーでストレンジな雰囲気の「Beautiful」、カントリーテイストのバラード「Tell Me」と、どれも悪くないんだけど決定打に欠けるというか……それは先行シングルの「Legendary Child」や「Lover Alot」にも言えることで、10年前後も待たされたゆえの期待値の高さがあったとはいえ、80年代後半〜90年代半ばの黄金期を知っているだけに、なんとも言えないむず痒さを覚えたわけです。

いや、悪くなんですよ。実際、最初に聴いたときは「これこそエアロ! ちょっと70年代テイストも戻ってきていて、いいじゃないか!」と両手を上げて喜んだのも事実だし。けど、過去の作品のように何10回も繰り返し聴くかと言われると「たまにでいいです」と返したくなるし、「これだったら『JUST PUSH PLAY』聴くし」と思ってしまう。「Out Go The Lights」や「Street Jesus」、「We All Fall Down」、「Another Last Goodbye」などは個人的にもグッときたんだけど、いわゆるキラーチューンが……前作でいえば「Jaded」や「Just Push Play」みたいな曲がひとつでもあれば、また全体の印象も変わったんでしょうね。あるいは、12曲程度に絞って勝負すれば、まだここまで散漫な印象は受けなかったのかも。

本作リリースからしばらくして、トム・ハミルトンが「もうアルバムは作らない」なんて発言をして物議を醸し出し、最近では「来年のツアーをもって解散」という噂も後を絶たないAEROSMITH。実際、スティーヴン・タイラーもとうとうソロアルバムを作ってしまい、こちらのツアーも行っているわけで。本当にどうなってしまうのか……できることなら、最後の最後に完全無欠のロックアルバムを作って、それで有終の美を飾ってほしいな。「やっぱりカッコよかったよね、エアロって」って言いたいもの。



▼AEROSMITH『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』
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【AEROSMITH ディスクレビュー一覧】
『AEROSMITH』(1973)
『GET YOUR WINGS』(1974)
『DONE WITH MIRRORS』(1985)
『PERMANENT VACATION』(1987)
『PUMP』(1989)
『GET A GRIP』(1993)
『BIG ONES』(1994)
『NINE LIVES』(1997)
『JADED EP』(2001)
『JUST PUSH PLAY』(2001)
『HONKIN' ON BOBO』(2004)
『ROCKIN' THE JOINT』(2005)
『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』(2012)

【AEROSMITH ライブレポート一覧】
2002年2月2日@東京ドーム
2002年2月3日@東京ドーム


投稿: 2016 12 20 02:30 午前 [2012年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

AEROSMITH『BIG ONES』(1994)

Geffen Recordsから約10年で4枚のオリジナルアルバム(『DONE WITH MIRRORS』『PERMANENT VACATION』『PUMP』『GET A GRIP』)を発表し、作品ごとにセールスを上げていったAEROSMITHの、同レーベルへの(結果として)置き土産となったベストアルバム。収録曲は4枚のアルバムから……と言いたいところですが、ヒット曲に恵まれなかった『DONE WITH MIRRORS』からは未選出で、『PERMANENT VACATION』以降のヒットシングルを軸に構成されています。

改めて復活後のエアロはヒット曲作りと真剣に向き合ったんだなというのがわかる内容で、ライブでおなじみのナンバーが目白押し。70年代の代表曲で固められた『GREATEST HITS』(1980年)と比較するのは野暮ですが、あの頃にあったアクの強さは皆無といっていいでしょう。一方で、いかがわしさや危うさと引き換えに手に入れた強靭なサウンドと巧みなアレンジのすごさも、このアルバムからたっぷり感じられるのではないでしょうか。

本作には2曲の新曲(「Walk On Water」「Blind Man」)と1曲のアルバム未収録曲(「Deuces Are Wild」)も収録。新曲は『PERMANENT VACATION』『PUMP』『GET A GRIP』でおなじみのブルース・フェアバーンの手によるものではなく、新たにマイケル・ベインホーン(レッチリやSOUNDGARDENなど)を起用しているのも興味深いところ。デッド感の強いサウンドとグルーヴィーなアンサンブルのミックスが絶妙な「Walk On Water」に、「エアロのこの先」を少なからず感じたのも、今となっては懐かしい思い出です。

そういえばこのアルバム、曲順も素晴らしいと思います。特に「Eat The Rich」のゲップの後に「Angel」が続くあたりは真骨頂ではないかと。



▼AEROSMITH『BIG ONES』
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投稿: 2016 12 20 02:00 午前 [1994年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

AEROSMITH『GET A GRIP』(1993)

前作『PUMP』が全米アルバムチャート5位(TOP5入りは1976年の『ROCKS』以来13年ぶり)、現在までに700万枚も売り上げるという大成功を収めたAEROSMITH。『PUMP』を携えたワールドツアーを終えた後もソニー時代のボックスセット『PANDORA'S BOX』(1991年)発表や、MTV10周年イベントでマイケル・ケイメンと「Dream On」をオーケストラ共演、GUNS N' ROSESのライブにゲスト出演(スティーヴン・タイラーとジョー・ペリーのみ)など話題に事欠きませんでしたが、その裏側では『PUMP』を超えるアルバムを作り上げようと試行錯誤していました。その結果、前作から約4年という歳月を経て通算11枚目のオリジナルアルバム『GET A GRIP』は完成したのです。

今作は一度12曲程度でまとめあげられたものの、メンバーやスタッフが客観的にアルバムを聴いて「何か足りたい」として新たに楽曲を制作。そういう経緯を経て、全12曲(イントロ&アウトロおよびボーナストラックを除く)で60分強という大作が完成したわけです。スティーヴンのラップボーカルをフィーチャーしたイントロから「Eat The Rich」へと流れるオープニング、そのままほぼ曲間なく「Get A Grip」「Fever」「Livin' On The Edge」へと続く構成は、前作『PUMP』にも匹敵するもので、緊張感だけで言えば今作のほうが優っていると個人的には思っています。

バンドとしての熱量は全キャリア中でも『ROCKS』に匹敵するものだし、そこに絶妙なバランスで“枯れ”具合が混在する。1曲1曲の完成度も非常に高く、「カッコいいロック」よりも「単純にいい曲」を目指したかのようなヒットシングル「Livin' On The Edge」(全米18位)、「Cryin'」(同12位)、「Amazing」(同24位)、「Crazy」(17位)も目白押し。久しぶりにジョー・ペリーがリードボーカルを取った「Walk On Down」も箸休めで終わっておらず、頭から終盤まで一切の隙なし。だからこそアウトロとして収録されたお遊び的インスト「Boogie Man」までたどり着くと、肩の力を抜いてホッとできるわけです。

人間の集中力が持続するのは30〜40分程度、なんてよく言われますし、昔の名盤は(アナログ盤の収録状況なども要因ではあるものの)大半が30〜40分前後の作品ばかり。60分前後のアルバムとなると数曲は印象に残らないことも多いのですが、こうやって最後まで集中して楽しめる、引き込まれる長編ハードロックアルバムはDEF LEPPARD『HYSTERIA』と本作ぐらいじゃないか……と思うのですが、いかがでしょう?

2016年現在、彼らの全アルバムを振り返ると、初の全米No.1を獲得したこの『GET A GRIP』こそが第2のピークだったのは間違いない事実。彼らが80年代後半から目指したサウンドもここで一度完成を見るわけです。だからこそ、ここから長い試行錯誤が再び続くことになるのでした。そういう意味では、『GET A GRIP』は非常に罪深いアルバムでもあるのです。



▼AEROSMITH『GET A GRIP』
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投稿: 2016 12 20 01:30 午前 [1993年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

AEROSMITH『PUMP』(1989)

前作『PERMANENT VACATION』で文字通り完全復活を果たしたAEROSMITHが1989年秋、前作から2年ぶりに発表したのがこの通算10枚目のオリジナルアルバム。プロデュースにブルース・フェアバーン、エンジニア&ミックスにマイク・フレイザー、ソングライティングにデズモンド・チャイルド、ジム・ヴァランスという前作からの布陣を迎えた今作は、前作での成功をそのまま引き継ぐかと思いきや、よりアグレッシヴで肉感的、それでいてしっかり聴かせる要素も含むという、「90年代のエアロ」のプロトタイプ的1枚となっています。

アップテンポで攻めまくるオープニングの「Young Lust」から前作にはなかった色合いですし、楽曲そのものに70年代の彼らにあった危うさが復活。そのまま間髪入れずに「F.I.N.E.」へと続くのですが、この曲もヒットシングル「Dude (Looks Like A Lady)」の流れにあるものの、躍動感は前作と比べものにならないほど。そして今作からのリードシングル(全米5位)「Live In An Elevator」でヘヴィさとキャッチーさを兼ね備えた新たなエアロをアピールします。特にこの曲では中盤のジョー・ペリーによるギターソロが圧巻。この頭3曲で完全にノックアウトさせられるはずです。

その後もサイケデリックでポップなミディアムナンバー「Janie's Got A Gun」(全米4位)、ブラスの音色が気持ちよいソウルフルなロック「The Other Side」(同22位)、「Angel」とは異なりアーシーさに満ち溢れたカントリーバラード「What It Takes」(同9位)といったヒットシングル、小気味良いテンポ間の「My Girl」、ブルージーな色合いをモダンなサウンドで表現した「Don't Get Mad, Get Even」、トム・ハミルトンのブリブリしたベースがカッコいい「Voodoo Medicine Man」など良曲満載。アルバムトータルとしても(日本盤ボーナストラック「Ain't Enough」を除くと)全10曲で約47分と非常に聴きやすく、何度も聴き返したくなる1枚ではないでしょうか。事実、この曲を「復活後、最高の1枚」に挙げるリスナーも少なくないようで、僕自身も日によって『GET A GRIP』か『PUMP』のどちらかを「復活後、最高の1枚」にピックアップしています。

先に「90年代のエアロ」のプロトタイプ的1枚と書きましたが、その後の作風(サイケデリックさの急増、アルバム1枚の曲数が一気に増える、1曲が長くなる、etc.)を考えると、本当の意味でのAEROSMITHのターニングポイントはこのアルバムだったのかもしれません。



▼AEROSMITH『PUMP』
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投稿: 2016 12 20 01:00 午前 [1989年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

AEROSMITH『PERMANENT VACATION』(1987)

オリジナル編成で復活したAEROSMITHSが、同布陣で6年ぶりに制作した前作『DONE WITH MIRRORS』(1985年)から2年を経て完成させた、通算9枚目のオリジナルアルバム。『DONE WITH MIRRORS』では70年代のエアロが持ち合わせていた危うさとラフさに焦点を絞って制作されたものの、いかんせん楽曲がイマイチで大きなヒットには結びつかず、「エアロ大復活!」を完全アピールするに至りませんでした。

続く復活2作目となる今作では、前年にBON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』で一気に知名度を上げたブルース・フェアバーンをプロデューサーに起用。エンジニアにボブ・ロック、マイク・フレイザーという、のちに名プロデューサーへと成長するブルース界隈の人脈を迎え、さらにソングライティング面でも先のBON JOVI同様にデズモンド・チャイルド、ジム・ヴァランス、ホリー・ナイトといった職業作家とバンド(主にスティーヴン・タイラー&ジョー・ペリー)との共作を強いることになります。が、これが吉と出て、「Dude (Looks Like A Lady)」(全米14位)、「Angel」(同3位)、「Rag Doll」(同17位)とヒットシングルを連発。アルバム自体も最高11位まで上昇し、当時だけでもダブルプラチナム、現在までに500万枚を超える、まさしく「エアロ大復活!」を宣言するにふさわしい1枚となりました。

さて、ここまで書いてお気づきかと思いますが、「BON JOVI的HRサウンド」「職業作家の起用」などが70年代に「危うさとラフさ」を信条としていたバンドに結びつくのか、と。リアルタイムでこのアルバムからエアロに入ったというリスナーには非常に聴きやすく、しかもハードロックへの入り口には最適な1枚だったと思います。しかし、70年代から彼らを追うオールフォファンには驚愕の内容だったのではないでしょうか。事実、『LIVE BOOTLEG』からエアロに入った僕自身もアルバム全体を覆う派手な装飾に気持ち悪さを感じ、特に「Angel」のような“いかにも80年代HR”的バラードに対して長きに渡り嫌悪感がありましたから(その呪縛から解き放してくれたのが、あの「I Don't Want To Miss A Thing」というのも皮肉な話ですが)。

間もなくリリースから30年を迎えようという今、このアルバムを聴いてみると……さすがに自分も大人になったからか(というか老いたからか)、これを素直に受け入れられるし、純粋にいい曲が多くてカッコいいアルバムだなと思います。が、その後の快進撃を考えると「ベターだけどベストではない」という1枚かなと。終盤2曲(クセのないビートルズカバー「I'm Down」と無意味さすら感じるインスト「The Movie」)の捨て曲っぷりが本当に勿体ないなと。しかしながら、個人的にはアルバム中盤(「Dude (Looks Like A Lady)」から「Girl Keeps Coming Apart」まで)の流れは気に入っております。



▼AEROSMITH『PERMANENT VACATION』
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投稿: 2016 12 20 12:30 午前 [1987年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

AEROSMITH『DONE WITH MIRRORS』(1985)

70年代末にジョー・ペリー、そして80年代に入るとブラッド・ウィットフォードが脱退し低迷期に突入したAEROSMITH。しかし1984年にジョーとブラッドがバンドに復帰し、黄金の布陣でツアーを行い成功を収めます。その勢いのままスタジオ入りし、完成させたのがこの8thアルバム『DONE WITH MIRRORS』。プロデューサーにVAN HALENなどで知られるテッド・テンプルマンを迎え、往年のアグレッシヴなサウンドを目指して制作されました。

アナログ盤は全8曲、CDでは1曲追加の全9曲入りで、トータル35分程度という70年代のエアロにも通ずる作風。中身もキャッチーなメロディが軸にあるものの、サウンド自体は無骨で隙だらけのシンプルなロックンロール。この8年後に発表される『GET A GRIP』とは正反対の内容です。

アルバムのオープニングを飾るのは、ジョー・ペリーが自身のTHE JOE PERRY PROJECTで発表した楽曲の歌詞と歌メロを改変した「Let The Music Do The Talking」。この曲だけを聴けば「俺たちのエアロが帰ってきた!」とガッツポーズを取りたくなるはずです。特に終盤のスティーヴン・タイラーのシャウトには、どんなロックファンだって胸が熱くなることでしょう。

しかし、アルバム内でキラーチューンと言えるのはこの1曲のみ。2曲目「My Fist Your Face」も悪くないものの、その後はシンプルが災いして退屈さすら感じる「Shame On You」を筆頭に「今ひとつ、いや、今ふたつ」な楽曲が続きます。どの曲にもどこか“抜けきれない”もどかしさが付きまとっており、モヤモヤしたまま(CDでの)ラストナンバー「Darkness」を迎えます。ちなみにアナログ盤には「Darkness」は未収録で、勢いあるブギーナンバー「The Hop」で終了。個人的には(モヤモヤは残るものの)「Darkness」で締めくくる構成のほうが好きです。

このアルバムから現在もライブで披露される機会があるのは、先の「Let The Music Do The Talking」程度。メンバーもこのアルバムに関しては否定的な意見をとることが多いようです。時期的にもオリメンには戻ったものの、まだドラッグから抜けきれてないメンバーもいたりで、どことなく気持ちがひとつに固まってない頃だったのでしょうか。以降の一枚岩のような作風を考えると、第二のデビュー作『PERMANENT VACATION』へ到達するための過渡期的作品なのかもしれません。

ただ、個人的には「嫌い」と切り捨てられないのもこのアルバム。このモヤモヤした感じこそ、実は70年代から彼らが引きずってきたものであり、その片鱗が残っている今作を嫌いになれるはずもなく。今でも忘れた頃に引っ張り出しては、そのモヤモヤに浸ることもある……そんな1枚です。



▼AEROSMITH『DONE WITH MIRRORS』
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投稿: 2016 12 20 12:00 午前 [1985年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2016/12/19

DEEP PURPLE『SLAVES AND MASTERS』(1990)

旧サイト時代から数えて18年、ふと気づいたらDEEP PURPLEのアルバムを1枚も取り上げていないことが発覚。だったらこの勢いで書いてみようと、まず最初にオススメするならと選んだのがこれ。いろいろ間違っているような気がしないでもないけど、余計なことは考えない。

リッチー・ブラックモアがRAINBOWを解散させて、黄金期と呼ばれる第2期(リッチー、イアン・ギラン、ジョン・ロード、イアン・ペイス、ロジャー・グローバー)の布陣でDEEP PURPLEを再結成させたのが1984年。以後、この布陣で2枚のスタジオアルバム(『PERFECT STRANGERS』『THE HOUSE OF BLUE LIGHT』)とライブアルバム『NOBODY'S PERFECT』を発表するのですが、『IN ROCK』や『MACHINE HEAD』を再び求めたリスナーの希望を打ち砕くかのように、後期RAINBOW路線の楽曲を軸にした(それでいてパープルらしいスリリングさもある)作品が提示され、一部ファンを落胆させたのでした。

そして1989年にイアン・ギラン脱退。新たにボーカリストに迎えられたのが、後期RAINBOWのフロントマンであるジョー・リン・ターナーだったという。なんじゃそりゃ。リッチー、ジョー、ロジャーってすでにバンドの3/5がRAINBOWじゃん。そりゃパープルファンは怒りますよね。

そうして1990年にリリースされたのが、この『SLAVES AND MASTERS』というアルバム。楽曲自体は『PERFECT STRANGERS』や『THE HOUSE OF BLUE LIGHT』の流れにある作風なのですが、そこにジョーのボーカル&彼が作るメロディが乗ると……あら不思議。よりRAINBOWなわけです。「80年代のパープルっぽい」ととるか、「RAINBOWのラストアルバム『BENT OUT OF SHAPE』の続き」ととるかで、このアルバムの評価は変わってくるんじゃないでしょうか。

パープルは好きだけど『BURN』を制作した第3期編成が一番好み、かつパープルよりRAINBOWが好きという僕からしたら、歌メロがしっくりこなかった『PERFECT STRANGERS』や『THE HOUSE OF BLUE LIGHT』よりもこの『SLAVES AND MASTERS』のほうが好み。「The Cut Runs Deep」も「Fire In The Basement」も「Wicked Ways」も最高の楽曲なわけです。リッチーのギターも自分が目立つことよりも楽曲に合わせたプレイをしているし、続くギラン復帰作『THE BATTLE RAGES ON…』での演奏を思えば、彼が最後に“ロック”した最後のパープル作品ということになるのかな。それも結果論でしかないんだけどね。

ちなみに、僕が初めて観たパープルの来日公演は、このアルバムを提げて行われた1991年の武道館公演でした。『SLAVES AND MASTERS』の楽曲はもちろん、1曲目がいきなり「Burn」から始まるというギラン時代だったら絶対にありえない選曲に驚き、さらに「Black Night」にRAINBOW「Long Live Rock'n'Roll」をくっつけたり、やりたい放題。第2期至上主義者はこのライブを観てどう思ったんだろう……。

おまけに。『THE BATTLE RAGES ON…』ツアーでの来日目前にリッチーが脱退し、急遽ジョー・サトリアーニがサポートで入ると知って慌ててチケット取って行ったのが、最後に観たパープル単独公演です。その後、サマソニで来日した際にもちらっと観てますけど、そろそろ今の編成も観てみたいな、観ておかなきゃなと思っているところです。



▼DEEP PURPLE『SLAVES AND MASTERS』
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投稿: 2016 12 19 12:00 午後 [1990年の作品, Deep Purple] | 固定リンク

雑誌掲載分のショートレビュー再公開

ここ数年、テレビ誌『TV BROS.』にて音楽レビューをよく書かせていただいているのですが、たまに「あれ見逃しました!」って声をよくいただきまして。せっかくなので、過去に執筆した洋楽レビューに関して、一部加筆修正をしたものをまとめて掲載してみました。

なお、各アルバムの掲載日はそのアルバムの国内盤発売に設定してありますが、実際紙面で公開されたのは発売日前後ですのでご了承ください。


LOU REED & METALLICA『LULU』

METALLICA『METALLICA: THROUGH THE NEVER』

MUSE『DRONES』

THE STRYPES『LITTLE VICTORIES』

JANET JACKSON『UNBREAKABLE』

COLDPLAY『A HEAD FULL OF DREAMS』

JAMES BAY『CHAOS AND THE CALM』

ANOHNI『HOPELESSNESS』

RADIOHEAD『A MOON SHAPED POOL』

JEFF BECK『LOUD HAILER』

BON IVER『22, A MILLION』

TWO DOOR CINEMA CLUB『GAMESHOW』

LADY GAGA『JOANNE』

投稿: 2016 12 19 01:00 午前 [「仕事紹介」] | 固定リンク

THE MONKEES『GOOD TIMES!』(2016)

60年代にアメリカを中心に一世を風靡し、その後何度か再結成をしているTHE MONKEES。バンドの顔としてアイドル的人気を誇ったデイヴィ・ジョーンズが2012年に亡くなり、音楽的支柱だったマイク・ネスミスも脱退。現在はミッキー・ドレンツとピーター・トークの2人だけが正式メンバーですが、THE MONKEESをリスペクトするフォロワーたちの協力を得て、20年ぶりに完成させたオリジナルアルバムが今作です。そういった話題性もあったか、本作はビルボード200にて14位という好成績を残しています。

プロデュースにFOUNTAINS OF WAYNEのアダム・シュレシンジャーが参加。もちろん楽曲制作にも携わっており、この他にもアンディ・パートリッジ(XTC)、リヴァース・クオモ(WEEZER)、ベン・ギバート(DEATH CAB FOR CUTIE)、ノエル・ギャラガー、ポール・ウェラーといった錚々たる面々が楽曲提供。さらに60年代にレコーディングされたデイヴィ・ジョーンズのボーカルを活かした楽曲も含まれているだけでなく、レコーディングにはマイク・ネスミスも参加しています。ボーカルの比重の違いこそあれど、これはまさしく僕が洋楽原体験として聴き親しんだTHE MONKEESそのものなのです。

楽曲はどれも悪いわけがない。ハリー・ニルソンやニール・ダイヤモンドの楽曲も含まれているのですが、フォロワーたちがTHE MONKEESに新曲を書くと意気込んだこともあってか、いい意味でどれが新曲でどれがカバーかわからないくらいに充実しています。もっとも、各アーティストのファンが聴けば、どの曲もそれぞれのクセが散りばめられているので「これは誰の曲」とおわかりになると思いますが。

2016年にTHE MONKEESの新作が聴くことができたという事実もさることながら、その完成度の高さにただただ驚かされた1枚。2016年は個人的に非常に豊作でしたが、そんな1年を語る上で欠かせないアルバムと言えます。


こちらはリヴァース提供楽曲。らしさがありますね。


こちらはアンディ・パートリッジ先生の楽曲。本気度が違います。



▼THE MONKEES『GOOD TIMES!』
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投稿: 2016 12 19 12:00 午前 [2016年の作品, Monkees, The] | 固定リンク

2016/12/18

BIFFY CLYRO『ELLIPSIS』(2016)

2枚組ながらも初の全英1位を獲得した前作『OPPOSITES』(2013年)から3年半ぶり、通算7枚目のオリジナルアルバム。前作発表後、2014年に「FUJI ROCK FESTIVAL '14」で久しぶりの来日が実現し、WHITE STAGEヘッドライナーのMANIC STREET PREACHERSを食わんばかりの圧倒的なステージを繰り広げたのは記憶に新しいと思います。事実、僕もあのステージで完全にやられた者のひとり。アルバムは『PUZZLE』(2007年)以降毎作聴いてましたが、やっぱりライブを観ないとわからないものですね。

今回のアルバムもUK1位を獲得。いかにも彼ららしい壮大なミディアムナンバー「Wolves Of Winter」からスタートし、アップテンポな「Animal Style」のような楽曲はありつつも、アルバムの核をなすのはスケール感の大きなミドルチューン。明らかに数万人規模のアリーナやスタジアムで鳴らされることを意識して作られたであろう楽曲は、デカい音で聴けば聴くほどその魅力が増すものばかりです。もちろん穏やかなテイストの「Re-arrange」「Small Wishes」やアコースティックナンバー「Medicine」なども混在し、アルバムは緩急をつけながら進行していきます。全体的に見ても「Wolves Of Winter」で始まり切れ味鋭い「In The Name Of The Wee Man」で締めくくる構成に、このバンドの魅力が表れている気がしてなりません。

どことなく「UK版FOO FIGHTERS」(UKといいつつ、実はスコットランド出身)というイメージがあるBIFFY CLYROですが、このアルバムにはスコティッシュとしてのアイデンティティもしっかり感じられます。と同時に、よりワールドワイドな戦いを挑む上で必要な試みも随所に用意されており、そういう意味では「第二のデビューアルバム」的作品と言えるかもしれません。アメリカでの成功はまだつかんでいませんが、きっかけさえあれば確実に受け入れられると信じて止みません。



▼BIFFY CLYRO『ELLIPSIS』
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投稿: 2016 12 18 06:00 午前 [2016年の作品, Biffy Clyro] | 固定リンク

IRON MAIDEN『SOMEWHERE IN TIME』(1986)

昨日触れたJUDAS PRIESTの『TURBO』がリリースされたのが、今から30年間の1986年。面白いことにこの年、ほぼ同じタイミングでもう1組のメタル界の王者、IRON MAIDENもシンセサイズドギターを取り入れた作品を発表しています。それが今回紹介する、通算6枚目のオリジナルアルバム『SOMEWHERE IN TIME』です。

メタル界屈指の名曲「Aces High」を含む前作『POWERSLAVE』が名盤として高く評価されたこと、またアメリカでのメタルの盛り上がりにうまく乗ろうとしたこともあってか、味付けとしてシンセや先のシンセサイズドギターが随所に取り入れられ、楽曲もより洗練された印象があります。それこそ、曲によっては若干落ち着いた雰囲気も感じられ(3曲目「Sea Of Madness」あたりが顕著)、『POWERSLAVE』と比較すると全体的に地味なイメージすらあります。また、JUDAS PRIEST『TURBO』での(装飾的)変化に嫌悪感を示した旧来のメタルファンが、ここでも「シンセサイズドギター」というキーワードに敏感に反応。もしかしたらこれがネックになって、当時ちゃんと聴かなかった人もいるかもしれません。

しかし。先行シングルの「Wasted Years」や1曲目「Caught Somewhere In Time」、ライブでのシンガロングでおなじみの「Heaven Can Wait」、疾走感あふれる“Very British”な「The Loneliness Of The Long Distance Runner」、これぞメイデン!と断言できるデイヴ・マーレイ作「Deja-Vu」など、1曲1曲を取り上げるとレベルの高いものばかり。地味だけど妙にクセになる(しかもアルバムからの2ndシングル)「Stranger In A Strange Land」みたいな曲もあるし、ラストを飾る8分半の大作「Alexander The Great」(もちろんスティーヴ・ハリス作)もメイデンじゃなきゃ作り得ない説得力があるし。全体的に地味さは拭えないけど、良曲揃いの素晴らしいアルバムなのは間違いない事実です。

メイデンは続く1988年の7thアルバム『SEVENTH SON OF A SEVENTH SON』でもシンセサイズドギターを使用するのですが、こちらではアメリカを完全に無視した(?)、英国人でなければ作ることができない傑作に到達することになります。それについてはまた別の機会に。



▼IRON MAIDEN『SOMEWHERE IN TIME』
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投稿: 2016 12 18 12:00 午前 [1986年の作品, Iron Maiden] | 固定リンク

2016/12/17

JUDAS PRIEST『TURBO』(1986)

JUDAS PRIESTが1986年に発表した、当時は問題作なんてレッテルを貼られたことでも知られる10thアルバム『TURBO』。その前作にあたる『DEFENDERS OF THE FAITH』からプリーストに足を踏み入れた人間にとって、「シンセサイズドギターを導入」「デジタル録音」「よりポップに」といったこの『TURBO』路線は受け入れがたいものだったことを、昨日のことのように覚えています。当時はまだ中学生。硬派こそが正義だと信じていたウブな時代です。

時は流れ、2012年2月。2009年の『LOUD PARK』での来日時にロブ・ハルフォードにインタビューする機会があったことから、続く2012年のジャパンツアーにも足を運ぶことができました。Zepp Tokyoと武道館の2公演を観たのですが、ここで演奏されたのが『TURBO』のオープニングトラック「Turbo Lover」。あれ、こんなにカッコよかったっけ? それが素直な感想で、「これ、もしかしたら……」と思い久しぶりにCDに手を伸ばしてみたら……。

全体的にポップな(というか、キャッチーなメロディを持つ)楽曲が多いのと、ギターオリエンテッドではなくてシンセの比率が高くなったことで勘違いしてたけど、偏見抜きに聴くと本当に優れた楽曲が並ぶアルバムだと思います。冒頭の「Turbo Lover」「Locked In」「Private Property」の流れは気持ち良いし、ポップな「Parental Guidance」も過去の「Living After Midnight」あたりと同系統のポップさだと思うし。かと思うと疾走感の強い「Rock You All Around The World」があり、叙情的なミドルチューン「Out In The Cold」もある。アメリカナイズされたワイルドな「Wild Nights, Hot & Crazy Days」、シーケンスさえ気にならなければひたすらカッコいい「Hot For Love」、そして“これぞジューダス!”な泣きメロを持つ「Reckless」で幕を降ろす。最高じゃないですか。ネガティヴな感情で接していたため、アルバムの本質を見過ごしてたのかな。若さって強いね。

先に述べたように、過去のジューダスには「Living After Midnight」や「Take On The World」のようなポップな楽曲もあり、それらはイギリスでシングルカットされた事実もあるわけです。もっと言えば、後には『PAINKILLER』のようにスラッシュメタルにすり寄ったアルバムも発表している。要するに、やることが極端すぎるんですよ。それがガチなメタルファンには時に好意的に受け入れられ、時には攻撃の材料となるだけの話。身にまとう装飾は作品ごとに変わるけど、軸にある本質は実は変わってないんだなと。

そうそう。2017年2月には『TURBO』の30周年記念エディションが発売されるとのこと。アルバム本編の最新リマスター版に当時のライブ音源(CD2枚組)を同梱したパッケージになるそうです。この頃のライブといえば、1987年にリリースされたライブアルバム『PRIEST…LIVE!』でも聴けますが、あれよりも長いフルサイズになるそうなので、こちらも楽しみに待ちたいと思います。



▼JUDAS PRIEST『TURBO』
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投稿: 2016 12 17 04:00 午前 [1986年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

BE THE WOLF『ROUGE』(2016)

今年2月にアルバム『IMAGO』で日本デビューを果たした、イタリアはトリノ出身のトリオバンドによる2ndアルバム。日本では前作がかなり高く評価され、僕も遅まきながら春過ぎに前作を入手し、よく聴いておりました。その編成や湿り気のある日本人好みのメロディから、デンマークのDIZZY MIZZ LIZZYと比較する声もあるようですが、完全に別モノです。当たり前ですが。

前作はデビュー作ということで勢いに満ちた楽曲もありましたが、今作はそういう楽曲も少なからず存在するものの、それ以上に自身の魅力や個性ととことん向き合った“哀メロ度MAX”のミディアムナンバーが中心。2曲目「Down To The River」冒頭で早くもアコギのアルベジオが聞こえてきたときは、さすがに「大丈夫? ちょっと考えすぎてない?」と心配になりましたが、アルバムが進むにつれてその心配は無駄に終わりました。だって、全編この調子なんだもん。適度にパワフル、だけどメインの武器はメロディ。この戦法で本気の勝負に挑んでる感はかなり強く伝わりました。情熱的な赤(というより紅)を使ったジャケットからも、その熱は感じられます。

通して聴いたときの印象として、作風は異なるけどRED HOT CHILI PEPPERS『CALIFORNICATION』に近いものを感じたのは僕だけでしょうか。もっとも今作のほうがよりハードロック寄りだし、日本人の琴線に触れるものが多いと思いますが。

そういえば前作ではボーナストラックとしてKILLSWITCH ENGAGE「The End Of Heartache」をアコースティックカバーしておりましたが、今作ではブルーノ・マーズ「Locked Out Of Heaven」をバンド編成でカバーしています。これのなかなかの仕上がりです。ただ、日本盤の2枚組仕様に付いてくるライブディスクは蛇足かな。スタジオ作品のような完成度は感じられず(主にボーカルの頼りなさが……)、年明けに控えた再来日公演への不安を煽る代物になりそうな予感……無理して初回盤を手に入れなくてもいいと思います。



▼BE THE WOLF『ROUGE』
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投稿: 2016 12 17 12:00 午前 [2016年の作品, Be The Wolf] | 固定リンク

2016/12/16

DEF LEPPARD『DEF LEPPARD』(2015)

ブライアン・アダムス『WAKING UP THE NEIGHBOURS』について語っていたら、続いてDEF LEPPARDのことも書いてみたくなったので、昨年発売された最新アルバム『DEF LEPPARD』についてもレビューしてみたいと思います。

スタジオアルバムとしては2008年の『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』以来7年ぶりとなる今作は、デビューから所属したメジャーレーベルのMercury Recordsを離れて最初の新作。よくDEF LEPPARDはオリンピックイヤーに(4年に1枚)アルバムを出すなんて揶揄されてきましたが、今回は過去最長の7年というブランク。とはいえ、バンドはその間に毎年のようにツアーを行っていましたし、2011年には新曲を含むライブアルバム『MIRROR BALL』、2013年には代表作『HYSTERIA』の完全再現ライブの模様を収めたライブアルバム『VIVA! HYSTERIA』も発表しているので、そこまで空いたという感覚がないのも事実。2008年、2011年にはそれぞれ来日公演も敢行されましたし、人によっては7年というブランクに驚くかもしれません。

この7年の間に、音楽産業も大きな変化を遂げました。それにより、80〜90年代にパッケージをバカスカ売り上げていたDEF LEPPARDのようなバンドにとってかなり厳しい時代に突入しました。そんな時代に、彼らがニューアルバムをパッケージでリリースする意味はあるのだろうか。おそらく僕ら以上に当のメンバーはよりそんなことを考えたのではないでしょうか。

しかし、彼らはそんな不安を払拭するような傑作を作り上げた。しかもアルバムタイトルに堂々とバンド名を冠した、自信作を。外部ソングライターを一切入れず、気心知れた面々だけで制作された本作は、『PYROMANIA』や『HYSTERIA』ほどの緻密さはなく、適度なラフさを伴っています。楽曲のタイプ的には先の2作をより深化させたものに、バンドのルーツを感じさせるブリティッシュロック/ポップの流れにあるものばかり。1曲1曲が比較的聴きやすい長さで、全14曲中2分台が2曲、3分台が6曲、4分台が3曲、5分台が3曲で計52分。過去の作品には6分を超える大作が1曲は入っていましたが、今回は極力無駄なアレンジを排除しているのも印象的です。

40年近くバンドを続け、セールスという点では満足行くほどのヒット作を連発した。メンバーに不幸が出来事が続いたし(本作制作中に発覚したいヴィヴィアン・キャンベルのガンもそのひとつ)、この先あと何年今の活動を続けられるのか……そう考えたときに、リラックスして好きなものを作るという答えたに到達した。それが今作だったのではないでしょうか。

個人的には昨年のベスト10枚に選出はしませんでしたが、そこに限りなく近い位置にある1枚なのは間違いありません。だって、リリースから1年以上経ってもいまだに聴いているんですから。シンプルだからこそ飽きが来ない、いつ聴いても単純に楽しいと思える、そんなアルバムです。



▼DEF LEPPARD『DEF LEPPARD』
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【DEF LEPPARD ディスクレビュー一覧】
『HIGH'N'DRY』(1981)
『PYROMANIA』(1983)
『HYSTERIA』(1987)
『EUPHORIA』(1999)
『X』(2002)
『YEAH!』(2006)
『DEF LEPPARD』(2015)

投稿: 2016 12 16 03:00 午前 [2015年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

BRYAN ADAMS『WAKING UP THE NEIGHBOURS』(1991)

1987年春に発表した5thアルバム『INTO THE FIRE』がその前のメガヒット作『RECKLESS』には遠く及ばない小ヒット作で終わってしまい、一部ファンの間では「終わった」なんて囁かれていたブライアン・アダムス。しかし、ここ日本では1988年1月に武道館5DAYSを含む大々的なジャパンツアーを成功させ、1989年末にも東京ドームでのカウントダウンイベントで再来日して好調ぶりをアピールしたのでした。

そんなブライアンの運命を変える1曲が、1991年夏にリリース。それが映画『ロビン・フッド』の主題歌に起用された王道バラード「(Everything I Do) I Do It For You」でした。この曲は全米7週連続1位、全英では16週1位というギネス記録を樹立しました。そんなメガヒット曲に続いて発表されたのが、4年ぶりのオリジナルアルバム『WAKING UP THE NEIGHBOURS』です。

「(Everything I Do) I Do It For You」を含む本作のプロデュースを手がけたのは、古くはDEF LEPPARD『PYROMANIA』『HYSTERIA』のプロデューサーとして知られるジョン・マット・ラング。あの印象的なビッグサウンド&コーラスが全面的に導入され、楽曲自体もどこかDEF LEPPARDをイメージするミディアムテンポが中心。泣きのバラード「Do I Have To Say The Words?」なんて「Love Bites」のアレンジをそのまま流用したんじゃないかってくらい激似ですし。確かに前作での渋さや暗さは皆無で非常に明るさに満ちていますが、初期の溌剌とした疾走感が減退したことで昔からのファンからは異論を唱える声もあったほどです。

しかし、数字の上では全米6位、全英1位という好成績を残しています。売り上げも『RECKLESS』に匹敵する記録で、シングルも先の「(Everything I Do) I Do It For You」以降「Can't Stop This Thing We Started」(全米2位)、「There Will Never Be Another Tonight」(同31位)、「Though I'd Died And Gone To Heaven」(同13位)、「Do I Have To Say The Words?」(同11位)とヒット曲を連発。ここ日本では1992年2〜3月に大掛かりなアリーナツアーを開催したほか、翌1994年2月には一夜限りの武道館公演のために再来日も果たしました。

40オーバーの方々にとっては「ブライアン・アダムスといえば『RECKLESS』」かもしれませんが、それよりちょっと下の世代から「ブライアン・アダムスといえば『WAKING UP THE NEIGHBOURS』」という声が聞こえてきたとしても不思議ではないほど、『RECKLESS』以降の彼を代表する1枚と言えるでしょう。ただ、1曲1曲の完成度が異常に高いものの、全15曲74分という収録内容はちょっとやりすぎかなと。あと3曲削って60分以内にまとめてくれたら、もっと親しみやすいアルバムになったんじゃないかな。さらに、ロックアルバムという点にこだわったとしたら、全10曲でもいいくらい。という意味では、ブライアン・アダムスが本気でポップスと向き合った最初の1枚だったのかもしれませんね。



▼BRYAN ADAMS『WAKING UP THE NEIGHBOURS』
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【BRYAN ADAMS ディスクレビュー一覧】
『Into The Fire』(1987)
『WAKING UP THE NEIGHBOURS』(1991)

投稿: 2016 12 16 02:00 午前 [1991年の作品, Bryan Adams] | 固定リンク

ANDY BLACK『THE SHADOW SIDE』(2016)

BLACK VEIL BRIDESのフロントマン、アンディ・ビアサックによる“アンディ・ブラック”名義での初ソロアルバム。ゴスや80年代のLAメタルにも通ずるファッションと、エモ/スクリーモと往年のHR/HMを融合させたバンドでのサウンドとは異なり、このソロ作では落ち着いたトーンの“大人のロック”を聞かせてくれます。といっても、そこは単なるAORで完結しておらず、しっかり毒っ気も散りばめられています。

バンドのアクが強いぶん、このソロ作はさらっと聴けてしまい、物足りなさを感じるリスナーも多いかもしれません。バンドと切り離して楽しめる人なら、迷わずオススメしたい1枚。ゴスやダークな要素を取り入れたメタル/ラウド系バンドのメンバーが作るソロ作としては、非常に理想的な作品だと個人的には感じています。そして何より、どの曲もキャッチーというのは非常に強い。このポップセンスをバンドで100%生かしてしまうと、それはそれで問題になってくるでしょうし、アーティストとしての才能の吐け口として今後も定期的にソロ作を作ってくれると嬉しいです。とはいえ、BLACK VEIL BRIDESも確実に継続してもらわないと困りますが。

そういえばこの夏、サマソニで来日した際にステージをちらっと観ましたが、ちょうどGENERATION Xの「Dancing With Myself」をカバーしてるところに出くわしまして。思えばバンドでもビリー・アイドルの「Rebel Yell」をカバーしてましたし、目指すところはそこなのかな……と思ったのでした。うん、“HR/HM界のビリー・アイドル”。悪くないよね。すでにそういうポジション、いそうだけど。

ちなみに今作、日本盤は2016年12月時点で未発売。BLACK VEIL BRIDES自体も2014年の最新作『BLACK VEIL BRIDES』は国内盤のリリースがなかったし……寂しいもんですね。



▼ANDY BLACK『THE SHADOW SIDE』
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投稿: 2016 12 16 12:00 午前 [2016年の作品, Andy Black, Black Veil Brides] | 固定リンク

2016/12/15

IGGY POP『POST POP DEPRESSION』(2016)

スタジオアルバムとしてはIGGY & THE STOOGES名義での『READY TO DIE』(2013年)から3年ぶり、ソロ名義では意外にも『PRELIMINAIRES』(2009年)以来7年ぶりの新作。『PRELIMINAIRES』がジャズやラウンジミュージック寄り(しかも曲によってはフランス語で歌唱)だったので、どんなロックサウンドが聴けるかと思ったら、想像以上に落ち着いたガレージサウンドでびっくりさせられました。

プロデュースにQUEENS OF THE STONE AGEのジョシュ・オムを迎え、そのジョシュとQOTSAやTHE DEAD WEATHERで活動をともにするディーン・フェルティータ、そしてARCTIC MONKEYSのマット・ヘルダース(Dr)とでバンドを組む形でレコーディング。そのヒリヒリしたガレージサウンドはジョシュならではといった感じで、ポストロックを通過した楽曲群も70年代後半のイギーに通ずるものがあります。

聴く前は『READY TO DIE』のような激しく前のめりなパンクロックを期待してたので、ちょっとだけ肩透かし。ただ、イギーのこれまでの活動歴や前作『PRELIMINAIRES』を踏まえると、こういう作風になるのも納得かな。今作が最後のアルバムなんて噂もありますが、気づけばイギーも69歳。盟友デヴィッド・ボウイも亡くなったことを考えれば、イギーが今もこうやって新作をリリースしてくれること自体が奇跡みたいなもの。曲数こそ9曲と少なく感じるけど、1曲1曲の音楽的密度は異常なまでに高いものばかり。『THE IDIOT』から約40年を経てここにたどり着いたという事実も非常に興味深いです。これがアーティストとしての“スワンソング”になるとはまだ思いたくないけど、仮にそうなったとしても納得してしまえる力作ではないでしょうか。

できれば、この編成でのライブも観たかったなぁ。なんてことをつい先日発売されたライブ映像+音源からなる作品『POST POP DEPRESSION : LIVE AT THE ROYAL ALBERT HALL』を手にして考えてしまいました。こちらについては、改めて触れたいと思います。



▼IGGY POP『POST POP DEPRESSION』
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投稿: 2016 12 15 12:00 午前 [2016年の作品, Iggy Pop] | 固定リンク

2016/12/14

CHEAP TRICK『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLO』(2016)

オリジナル作品としては2009年の『THE LATEST』以来、実に7年ぶりのニューアルバム。しかもオリジナルドラマーのバン・E・カルロスがツアーやレコーディングから離れ、リック・ニールセンの息子ダックス・ニールセンが参加した編成による初のアルバムでもあります。さらに言えば、ここ数作(かれこれ10年くらい)ずっと自主レーベルからのリリースだったのが、今作はBig Machine Recordsというユニバーサル傘下のインディペンデントレーベルからのリリース。それもあってか、1988年のヒット作『LAP OF LUXURY』(最高16位)以来28年ぶりのトップ40ヒット(ビルボード最高31位)という成績を残しています。

肝心の内容ですが、王道のCHEAP TRICKサウンド満載といったところでしょうか。オープニングの「Heart On The Line」から勢い良くスタートし、先行で無料配信されたポップなロックナンバー「No Direction Home」、穏やかな印象の「When I Wake Up Tomorrow」、豪快なサウンドが気持ち良い「Do You Believe Me?」「Blood Red Lips」と、冒頭5曲だけでも「ああ、自分は今CHEAP TRICKのアルバムを聴いてるんだ」と強く実感できるはずです。それはもちろんアルバム後半でも引き続き感じられ、終始「安心安全のCHEAP TRICKサウンド」を心置きなく楽しめることでしょう。

こういうバンドの場合、下手に新しいことに挑戦するよりも、いかに従来のスタイルの中で「聴いたことあるようで、でも初めて聴く」新曲を量産していくことに意味があるような気がします。それってどれも一緒なんじゃない?と思われるでしょうが、CHEAP TRICKの場合はその「従来のスタイル」の幅が他のバンドと比べても広いので、毎回聴き手を飽きさせないアルバムを作ることができるわけです。今回のアルバムも前作『THE LATEST』とも、その前の『ROCKFORD』(2006年)とも、さらにその前の『SPECIAL ONE』(2003年)とも、90年代に発表された『WOKE UP WITH A MONSTER』(1994年)とも『CHEAP TRICK』(1997年)とも異なる作風&魅力ですし、間違いなく今後も上記の作品同様、長きにわたり愛聴しつつけることでしょう。

11月に行われた、今作を携えた来日公演も最高に楽しかったです。生で聴く「Long Time No See Ya」や「Blood Red Lips」は想像以上にカッコよかったですよ。



▼CHEAP TRICK『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLO』
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【CHEAP TRICK ディスクレビュー一覧】
『SPECIAL ONE』(2003)
『ROCKFORD』(2006)

【CHEAP TRICK ライブレポート一覧】
1999年10月11日@横浜ベイホール


投稿: 2016 12 14 12:00 午前 [2016年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2016/12/13

BON JOVI『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』(2016)

2013年のアルバム『WHAT ABOUT NOW』以降、リッチー・サンボラ(G)のツアー離脱〜バンド脱退、契約消化のために突如発表された“ファンアルバム”『BURNING BRIDGES』(2015年)および所属レーベルからの一時離脱など、なにかとネガティブな話題が多かったBON JOVIの起死回生を占う3年ぶりのオリジナルアルバム。チャート成績では2007年の『LOST HIGHWAY』から続くビルボード1位を4作連続で獲得し、まずは数字の上で復活をアピールできたのではないでしょうか。

ひんやりとした音使いとアレンジから若干ダークなイメージを受けるリードトラック「This House Is Not For Sale」から始まるアルバムは、やはり全体的に冷た目なトーンで統一されています。2000年代前半から半ばの作品に存在した「カントリーを通過したアメリカンパワーポップ」風味は減退し、2009年のアルバム『THE CIRCLE』に比較的近い印象を受けました。が、『THE CIRCLE』ほどの熱量はボーカルやバンドサウンドから感じられず、どこか控えめ/抑え気味な気も。「Knockout」のような攻め気味ロックチューンやBON JOVIならではの王道ナンバー「Born Again」にすら、往年の暑苦しさは存在しません。リッチーのギターが入ってないことも影響していると思いますが(それにより、ギターロックアルバムというよりはジョンの歌を軸にしたボーカルアルバムとして仕上げられています)、これを大人になったと感じるか覇気がなくなったと感じるかで評価は大きく二分しそうです。個人的には前作『WHAT ABOUT NOW』は数回聴いてしばらく放置してしまうような扱いだったのですが、今作は何度も聴き返せるし、純粋に楽しめる作品集だと思いました。

ちなみに、海外盤は通常仕様が12曲入り(M12「Come On Up To Our House」まで)、デラックス仕様が17曲入り(M17「Goodnight New York」まで)と曲数が異なります。ボーナストラック5曲の出来も悪くないですが、個人的には久しぶりに12曲できっちり勝負してほしかったかな。前作もそうですが、曲数が多いと1曲1曲がなかなか印象に残りにくいので。なお、日本盤はDVD付きも通常盤も同じ18曲入り(ボーナストラックにM18「Touch Of Grey」追加)。多ければいいってもんじゃないってば。

そういえば海外では間もなく、本アルバム『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』を曲順どおりに演奏したライブアルバム『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE : LIVE FROM THE LONDON PALLADIUM』もリリースされます(日本盤は年明け1月発売予定)。こちらではデラックス盤収録の17曲をすべて披露しているので、もしかしたら17曲入りのほうが正式なトラックリストで、12曲入りのほうは「もっと手軽に楽しみたい人向け」なのかも。それでも17曲は多いけどね。

そういえばBON JOVIもMETALLICAみたいに、ニューアルバムからたくさんのMVを制作してるけど、これって流行りなんですかね?



▼BON JOVI『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』
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【BON JOVI ディスクレビュー一覧】
『BON JOVI』(1984)
『7800° FAHRENHEIT』(1985)
『SLIPPERY WHEN WET』(1986)
『NEW JERSEY』(1988)
『KEEP THE FAITH』(1992)
『CROSS ROAD』(1994)
『THESE DAYS』(1995)
『LIVE FROM LONDON』(1995)
『CRUSH』(2000)
『TOKYO ROAD』(2001)
『ONE WILD NIGHT - LIVE 1985-2000』(2001)
『BOUNCE』(2002)
『HAVE A NICE DAY』(2005)

【BON JOVI ライブレポート一覧】
2000年7月13日@東京ドーム


投稿: 2016 12 13 12:00 午前 [2016年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2016/12/12

GREEN DAY『REVOLUTION RADIO』(2016)

先日、GREEN DAYのニューアルバム『REVOLUTION RADIO』リリースに際して、日本デビューから名作『AMERICAN IDIOT』の期間までA&Rを担当したスタッフさんにインタビューしたのですが、このインタビューをする際に事前にニューアルバムを試聴したり、個人的に過去のアルバムをすべて振り返ったりと、久しぶりにGREEN DAYの音楽と真正面から向き合う機会を得ました。いや、「久しぶり」と書いてみたものの、ここまで真剣に彼らの音楽と向き合ったのは、もしかしたら初めてかもしれない。それくらい真剣に聴くこと、なかなかなかったなって今気づかされました。自分にとって彼らの音楽ってもっと日常と密接した聴き方をしてきたから、家でじっくり歌詞読みながら向き合うとかそんなことはまずなかったから。

彼らの3部作『¡UNO!』『¡DOS!』『¡TRE!』が連続リリースされたのが2012年後半のこと(1作目が9月、続いて11、12月と連続発売)。その後、ビリー・ジョー・アームストロングとノラ・ジョーンズとのデュエットアルバム『FOREVERLY』(2013年)を筆頭に、3部作のメイキング映像集『¡CUATRO!』(2013年)や3部作制作時のデモ音源集『DEMOLICIOUS』(2014年)大ヒット作『AMERICAN IDIOT』のレコーディング時の舞台裏を収めたドキュメンタリー作品『HEART LIKE A HAND GRENADE』(2016年)が次々と発表されてきたので、実は『REVOLUTION RADIO』が4年ぶりという感覚があまりなくて。正直、そこまで空いてたんだ!という驚きのほうが大きかったかも。とはいえ、あの3部作は個人的にそこまでしっくりくる作品集ではなかったし、そもそも来日も1作目『¡UNO!』が発売される1ヶ月前にサマソニのヘッドライナーで来たっきり。むしろそっちでの飢餓感のほうが大きかったかも。

そんなわけで、個人的に満足のいく“ニュー”アルバムとなると2009年の『21ST CENTURY BREAKDOWN』以来。それはきっと多くのリスナーにとっても一緒だったんじゃないでしょうか。しかも『21ST CENTURY BREAKDOWN』以降はポップサイドに振れてパンク度が低くなったと感じていたファンも少なからずいたと思いますし、そういう人にとっては「満足いく内容のアルバムは2004年の『AMERICAN IDIOT』以来」なんて言うかもしれないし。そう期待させてしまうだけのリードトラック2曲(「Revolution Radio」と「Bang Bang」)が先行公開されてたから、余計にね。

この2曲を聴いてしまえば、『AMERICAN IDIOT』、いや『DOOKIE』などのパンキッシュな初期作品のようなアルバムを期待してしまうのは仕方ないこと。誰もが「GREEN DAY、パンクに帰還!」なんて歓喜したはずです。

ところが、実際はどうだったでしょう。確かにそういった楽曲も少なくないですが、アルバムは『AMERICAN IDIOT』や『21ST CENTURY BREAKDOWN』を通過した壮大なミディアムチューン「Somewhere Now」からスタートするわけですから、中には「裏切られた!」と思ってしまった人も少なからずいたはずです。

では、そうやって切り捨てるようなアルバムかというと、まったくそんなことはありません。直線的なパンクロック作品ではないかもしれませんが、これは間違いなく「僕たちが知ってるパンクロックバンドGREEN DAY」以外の何ものでもありません。ただ、『DOOKIE』から確実に20年以上が経過しており、私たちが年を取ったようにバンドも同じだけ年を重ねているわけです。そこには人間としての成長もあればミュージシャンとしての成長、そしてパンクロッカーとしての成長も間違いなく存在する。そうした多くの経験を経たわけですから、仮に1994年に『DOOKIE』で鳴らしていたものを2016年の今の技術と思考で表現すれば、こうなるのではないでしょうか。

もちろん、この『REVOLUTION RADIO』で表現しようとしたことは「『DOOKIE』の焼き直し」ではありません。40代になったGREEN DAYの面々がパンクというスタイルを用いて、現在の考えや思いを音楽に乗せた。それが時に「Revolution Radio」や「Bang Bang」であり、時にポップな「Still Breathing」や「Youngblood」であり、時にプログレッシヴで組曲のような「Somewhere Now」や「Forever Now」であっただけの話なのです。3分前後の疾走ナンバーもあれば、複雑な展開を持つ7分近い大作もある。バンドの3人だけでは再現が難しそうなアレンジの曲もあれば、アコギ1本の弾き語りで表現できる曲もある。戦う姿勢を直球で示すだけではなく、さまざまな表現方法を用いてより幅広い人たちに届けようとした。それが大人になったGREEN DAYからの“答え”だったのではないかと、僕はこのアルバムを解釈しています。

そんなわけで、嫌いになれるわけがないこのアルバム。彼らの作品としては久しぶりにヘヴィローテーションする1枚となりました。パンキッシュなショートチューンも悪くないですが、個人的には(以前だったら毛嫌いしてたような)どポップな「Still Breathing」や、THE BEATLES「While My Guitar Gently Weeps」にも通ずる物悲しいメロディの「Troubled Times」、そしていかにも彼ららしい“パンクオペラ”「Forever Now」が好みだったりします。10年前の自分だったら「GREEN DAYのこういう長い曲、苦手なんだよな……」なんて思ってただろうな(苦笑)。



▼GREEN DAY『REVOLUTION RADIO』
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投稿: 2016 12 12 12:38 午前 [2016年の作品, Green Day] | 固定リンク

2016/12/07

DECAYS『Baby who wanders』(2016)

DIR EN GREYのDie、元MOON CHILDの樫山圭を中心に昨年夏結成され、現在は中村 中らが参加するユニットの1stアルバム。

Dieのバックボーンから想像されるV系特有の“ドロドロ”要素は皆無で、ニューウェイブを通過したキャッチーなロックが満載。Dieの歌唱力も開始当初より向上し、中村の歌声との相性も絶妙で、非常に“幅の広い”ロックナンバーを堪能することができます。

各メンバーの個性をイメージして触れると痛い目にあう、ストレートさが魅力の力作だと断言したいです。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼DECAYS『Baby who wanders』
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投稿: 2016 12 07 12:00 午後 [2016年の作品, DECAYS, DIR EN GREY] | 固定リンク

2016/12/03

ROLLING STONES『BLUE & LONESOME』(2016)

ストーンズの新作が2005年の『A BIGGER BANG』以来、実に11年ぶりという事実に震えています。しかも、その内容がすべてブルースのカバーで、たった3日間(ブックレットによると2015年12月11日、14日、15日)でレコーディングを済ませたとのこと。ダリル・ジョーンズ(B)、チャック・リーヴェル(Key, Piano)、マット・クリフォード(Key, Piano)という90年代以降のストーンズには欠かせないサポートメンバーに加え、ジム・ケルトナー(Per)や、さらにエリック・クラプトン(G)もゲスト参加するなど話題に事欠かない内容です。

ストーンズがこの11年、何もしてなかったのかというとまったくそんなことはなく、常にツアーを繰り返していたこと、ライブ映画『シャイン・ア・ライト』やドキュメンタリー映画『クロスファイア・ハリケーン』の公開、そして2012年に新曲2曲を含むベストアルバム『GRRR!』をリリースして以降はかなり長期にわたるワールドツアーを実施。ことリリースに関しては、先のライブ映画のサウンドトラックとしてライブアルバム『SHINE A LIGHT』を2008年にリリースしたのを筆頭に、70年代の名盤『STICKY FINGERS』『EXILE ON MAIN ST.』『SOME GIRLS』のデラックスエディションの発表、過去の秘蔵ライブ映像のDVD/Blu-ray化など、毎年何かしらの新しいアイテムが市場に並んでいました。そいう意味での飢餓感はほぼ皆無でしたが、こと新録作品となると先に書いた『A BIGGER BANG』以降は、2012年の新曲「Doom And Gloom」「One Last Shot」のみ。しかもこれらがカッコイイもんだから、「もっとまとまった形で聴きたい!」と熱望したロックファンは少なくなかったはずです。

そんな彼らが新作に向けて動き出した、なんて話がこの1年の間に何度か話題になりました。特に今年の夏以降はそれがより具体的な形で話題となり、「クラプトンがレコーディングに参加した」「どうやらブルースの名曲を録ったらしい」「ブルースアルバムになるらしい」とネタが小出しになっていきます。

そんな経緯を経て、ついに発表されたニューアルバム『BLUE & LONESOME』。「新曲ゼロかよ!」とか「ジャケ、ダッサ!」とかいろいろ突っ込みたい気持ちを抑えつつアルバムに向かうと……「すみませんでした!」と土下座したい気持ちいっぱいになります。だって、「これこれ! これが聴きたかったんだよ!」っていう濃厚なストーンズ節炸裂な1枚なんですもの。

60年代のストーンズはブルースのカバーをアルバムやシングルに収録してきましたが、70年代のストーンズはブルースをベースにしつつもより拡散した音楽性を見せ始めます。そして80年代は前半こそ70年代の延長線上でしたが、半ばは空白期間、89年にアルバム『STEEL WHEELS』でようやく本腰をあげます。この『STEEL WHEELS』は従来のストーンズが好きというファンからは敬遠されがちな1枚かもしれませんが(テクノロジーを用いた、“Well-made”なストーンズ)、このアルバムの制作時にはシングルのカップリング向けにいくつかオリジナルのブルースナンバーが制作されています。つまり、再始動にあたり最新のことをやりつつもルーツも取り戻す、そんなタイミングだったのかもしれません。

以降のストーンズは『VOODOO LOUNGE』(1994年)、『BRIDGES TO BABYLON』(1997年)、『A BIGGER BANG』(2005年)と適度に流行を取り入れつつも、本質的にはより生々しい本来の姿へと戻りつつありました。そして、ついにいろんな皮を剥いで生まれたままの姿を現した。しかもただ生まれたままの姿ではない、年季の入った形で。それが今回の『BLUE & LONESOME』かな、と思いました。

ストーンズやクラプトンを通じてブルースにハマった人なら、ここでカバーされている楽曲の大半は知っているものでしょう。ラストナンバー「I Can't Quit You Baby」はLED ZEPPELINのカバーで初めて知ったなんて人も多いはずです。ブルースのカバーということで楽曲の解説は野暮かなと思うので、今回は割愛。それ以上に触れるべきなのは、やはりキース・リチャーズやロン・ウッドのより渋みの増した隙だらけのギタープレイ、チャーリー・ワッツのタメの効いたドラミング、そしてミック・ジャガーの本気な歌いっぷりとブルースハープでしょう。久しぶりに『A BIGGER BANG』を引っ張り出して聴いてからこの『BLUE & LONESOME』に触れたのですが、これが同じバンドか!?と驚かされます。本作を前にすると、『A BIGGER BANG』ですらカッチリとキメすぎに聴こえるし……いかに彼らがこの『BLUE & LONESOME』を楽しみながら制作したかが、その音からもしっかり伝わってきます。

また、ビル・ワイマン(B)在籍時しか認めないみたいなオールドファンから散々叩かれてきたダリル・ジョーンズのベース、この隙だらけのバンドアンサンブルとスウィングしまくりなチャーリーのドラムに、今回ばかりはガッチリハマってる。そういう奇跡(?)もこのアルバムでは存分に味わえます。もちろんクラプトンのギターソロ(M-6「Everybody Knows About My Good Thing」とM-12「I Can't Quit You Baby」)もさすがに一言で、前者ではスライドギターによるソロも楽しめます。

個人的には特にタイトルトラックのM-3「Blue And Lonesome」、そしてラストのM-12が「I Can't Quit You Baby」がグッときたかな。もちろん全曲捨て曲なしですけどね。ああ、これは飽きが来ないし、何回でも聴き返せる。改めてROLLING STONESというバンドの凄みを思い知らされた1枚でした。

ちなみに、彼らは本作を作り終えた直後にオリジナル作品の制作に移行した、なんて話もありますが……もし本当なら、そう遠くない将来にポンと発表されるんでしょうね。楽しみ楽しみ。



▼ROLLING STONES『BLUE & LONESOME』
(amazon:国内盤CD / 国内盤デラックスエディション / 海外盤CD


【ROLLING STONES ディスクレビュー一覧】
『FLASHPOINT』(1991)
『A BIGGER BANG』(2005)

【ROLLING STONES ライブレポート一覧】
2006年3月22日@東京ドーム

投稿: 2016 12 03 12:36 午後 [2016年の作品, Rolling Stones] | 固定リンク