AEROSMITH『PERMANENT VACATION』(1987)
オリジナル編成で復活したAEROSMITHSが、同布陣で6年ぶりに制作した前作『DONE WITH MIRRORS』(1985年)から2年を経て完成させた、通算9枚目のオリジナルアルバム。『DONE WITH MIRRORS』では70年代のエアロが持ち合わせていた危うさとラフさに焦点を絞って制作されたものの、いかんせん楽曲がイマイチで大きなヒットには結びつかず、「エアロ大復活!」を完全アピールするに至りませんでした。
続く復活2作目となる今作では、前年にBON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』で一気に知名度を上げたブルース・フェアバーンをプロデューサーに起用。エンジニアにボブ・ロック、マイク・フレイザーという、のちに名プロデューサーへと成長するブルース界隈の人脈を迎え、さらにソングライティング面でも先のBON JOVI同様にデズモンド・チャイルド、ジム・ヴァランス、ホリー・ナイトといった職業作家とバンド(主にスティーヴン・タイラー&ジョー・ペリー)との共作を強いることになります。が、これが吉と出て、「Dude (Looks Like A Lady)」(全米14位)、「Angel」(同3位)、「Rag Doll」(同17位)とヒットシングルを連発。アルバム自体も最高11位まで上昇し、当時だけでもダブルプラチナム、現在までに500万枚を超える、まさしく「エアロ大復活!」を宣言するにふさわしい1枚となりました。
さて、ここまで書いてお気づきかと思いますが、「BON JOVI的HRサウンド」「職業作家の起用」などが70年代に「危うさとラフさ」を信条としていたバンドに結びつくのか、と。リアルタイムでこのアルバムからエアロに入ったというリスナーには非常に聴きやすく、しかもハードロックへの入り口には最適な1枚だったと思います。しかし、70年代から彼らを追うオールフォファンには驚愕の内容だったのではないでしょうか。事実、『LIVE BOOTLEG』からエアロに入った僕自身もアルバム全体を覆う派手な装飾に気持ち悪さを感じ、特に「Angel」のような“いかにも80年代HR”的バラードに対して長きに渡り嫌悪感がありましたから(その呪縛から解き放してくれたのが、あの「I Don't Want To Miss A Thing」というのも皮肉な話ですが)。
間もなくリリースから30年を迎えようという今、このアルバムを聴いてみると……さすがに自分も大人になったからか(というか老いたからか)、これを素直に受け入れられるし、純粋にいい曲が多くてカッコいいアルバムだなと思います。が、その後の快進撃を考えると「ベターだけどベストではない」という1枚かなと。終盤2曲(クセのないビートルズカバー「I'm Down」と無意味さすら感じるインスト「The Movie」)の捨て曲っぷりが本当に勿体ないなと。しかしながら、個人的にはアルバム中盤(「Dude (Looks Like A Lady)」から「Girl Keeps Coming Apart」まで)の流れは気に入っております。
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