AEROSMITH『PUMP』(1989)
前作『PERMANENT VACATION』で文字通り完全復活を果たしたAEROSMITHが1989年秋、前作から2年ぶりに発表したのがこの通算10枚目のオリジナルアルバム。プロデュースにブルース・フェアバーン、エンジニア&ミックスにマイク・フレイザー、ソングライティングにデズモンド・チャイルド、ジム・ヴァランスという前作からの布陣を迎えた今作は、前作での成功をそのまま引き継ぐかと思いきや、よりアグレッシヴで肉感的、それでいてしっかり聴かせる要素も含むという、「90年代のエアロ」のプロトタイプ的1枚となっています。
アップテンポで攻めまくるオープニングの「Young Lust」から前作にはなかった色合いですし、楽曲そのものに70年代の彼らにあった危うさが復活。そのまま間髪入れずに「F.I.N.E.」へと続くのですが、この曲もヒットシングル「Dude (Looks Like A Lady)」の流れにあるものの、躍動感は前作と比べものにならないほど。そして今作からのリードシングル(全米5位)「Live In An Elevator」でヘヴィさとキャッチーさを兼ね備えた新たなエアロをアピールします。特にこの曲では中盤のジョー・ペリーによるギターソロが圧巻。この頭3曲で完全にノックアウトさせられるはずです。
その後もサイケデリックでポップなミディアムナンバー「Janie's Got A Gun」(全米4位)、ブラスの音色が気持ちよいソウルフルなロック「The Other Side」(同22位)、「Angel」とは異なりアーシーさに満ち溢れたカントリーバラード「What It Takes」(同9位)といったヒットシングル、小気味良いテンポ間の「My Girl」、ブルージーな色合いをモダンなサウンドで表現した「Don't Get Mad, Get Even」、トム・ハミルトンのブリブリしたベースがカッコいい「Voodoo Medicine Man」など良曲満載。アルバムトータルとしても(日本盤ボーナストラック「Ain't Enough」を除くと)全10曲で約47分と非常に聴きやすく、何度も聴き返したくなる1枚ではないでしょうか。事実、この曲を「復活後、最高の1枚」に挙げるリスナーも少なくないようで、僕自身も日によって『GET A GRIP』か『PUMP』のどちらかを「復活後、最高の1枚」にピックアップしています。
先に「90年代のエアロ」のプロトタイプ的1枚と書きましたが、その後の作風(サイケデリックさの急増、アルバム1枚の曲数が一気に増える、1曲が長くなる、etc.)を考えると、本当の意味でのAEROSMITHのターニングポイントはこのアルバムだったのかもしれません。
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