SLAYER『SEASONS IN THE ABYSS』(1990)
「SLAYERのアルバムでどれが一番好きか?」と尋ねられたとき、おそらく多くの人が3作目の『REIGN IN BLOOD』(1986年)を挙げるかもしれません。もちろん僕も大好きですし、スピードにこだわったこのアルバムと(こちらは人によってまちまちだけど)重さにこだわった次作『SOUTH OF HEAVEN』(1988年)は合わせて語りたいくらい気に入ってますから。
では、もしこれからSLAYERを初めて聴こうというビギナーに1枚だけオススメするならどれを選ぶか? そのときは残念ながら上記の2枚ではなく、1990年に発表された5thアルバム『SEASONS IN THE ABYSS』を選ぶことでしょう。
『SEASONS IN THE ABYSS』は先に挙げた2作の良い点をうまくミックスした、いわゆるスラッシュメタルが苦手という人にも勧めやすい内容となっています。王道スラッシュチューン「War Ensemble」で始まったかと思えば、続く「Blood Red」は小気味良いリズム感とメロを持つミドルチューン。3曲目に再びファストチューン「Spirit In Black」で盛り上がると、ヘヴィな「Expendable Youth」、不気味さを漂わせるミディアムナンバー「Dead Skin Mask」と、ただ速さで押すわけではないのにスルスルと聴けてしまう。後半は再びスピードナンバー「Hallowed Point」で仕切り直し、以降もスピードと重さが交互に押し寄せて、最後はアルバムのタイトルトラックでもあるムーディー&ヘヴィな「Seasons in The Abyss」で幕を下ろす。全10曲で42分強というトータルランニングも絶妙です。
このアルバムはトム・アラヤ(Vo, B)、ケリー・キング(G)、ジェフ・ハンネマン(G)、デイヴ・ロンバード(Dr)という、いわゆる黄金期メンバーで制作された最後のスタジオアルバム(その後、2000年代に同じ布陣が復活し、2006年に『CHRIST ILLUSION』、2009年に『WORLD PAINTED BLOOD』を制作)で、先に述べたように最盛期を迎えたバンドの姿を記録しようと1991年にはライブアルバム『DECADE OF AGGRESSION』も発表されています。しかし、ここで区切りをつけるかのように、翌1992年のデイヴが脱退。新たにポール・ボスタフを迎えた編成で制作した6thアルバム『DIVINE INTERVENTION』を1994年に発表しますが、ここには『SEASONS IN THE ABYSS』で感じられた親しみやすさ/入りやすさはなくなっていました。以降、バンドとしてはよりヘヴィでハードコアな方向に進んでいくことになります。
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