BON JOVI『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』(2016)
2013年のアルバム『WHAT ABOUT NOW』以降、リッチー・サンボラ(G, Vo)のツアー離脱〜バンド脱退、契約消化のために突如発表された“ファンアルバム”『BURNING BRIDGES』(2015年)および所属レーベルからの一時離脱など、なにかとネガティブな話題が多かったBON JOVIの起死回生を占う3年ぶりのオリジナルアルバム。チャート成績では2007年の『LOST HIGHWAY』から続くビルボード1位を4作連続で獲得し、まずは数字の上で復活をアピールできたのではないでしょうか。
ひんやりとした音使いとアレンジから若干ダークなイメージを受けるリードトラック「This House Is Not For Sale」から始まるアルバムは、やはり全体的に冷た目なトーンで統一されています。2000年代前半から半ばの作品に存在した「カントリーを通過したアメリカンパワーポップ」風味は減退し、2009年のアルバム『THE CIRCLE』に比較的近い印象を受けました。が、『THE CIRCLE』ほどの熱量はボーカルやバンドサウンドから感じられず、どこか控えめ/抑え気味な気も。「Knockout」のような攻め気味ロックチューンやBON JOVIならではの王道ナンバー「Born Again」にすら、往年の暑苦しさは存在しません。リッチーのギターが入ってないことも影響していると思いますが(それにより、ギターロックアルバムというよりはジョンの歌を軸にしたボーカルアルバムとして仕上げられています)、これを大人になったと感じるか覇気がなくなったと感じるかで評価は大きく二分しそうです。個人的には前作『WHAT ABOUT NOW』は数回聴いてしばらく放置してしまうような扱いだったのですが、今作は何度も聴き返せるし、純粋に楽しめる作品集だと思いました。
ちなみに、海外盤は通常仕様が12曲入り(M12「Come On Up To Our House」まで)、デラックス仕様が17曲入り(M17「Goodnight New York」まで)と曲数が異なります。ボーナストラック5曲の出来も悪くないですが、個人的には久しぶりに12曲できっちり勝負してほしかったかな。前作もそうですが、曲数が多いと1曲1曲がなかなか印象に残りにくいので。なお、日本盤はDVD付きも通常盤も同じ18曲入り(ボーナストラックにM18「Touch Of Grey」追加)。多ければいいってもんじゃないってば。
そういえば海外では間もなく、本アルバム『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』を曲順どおりに演奏したライブアルバム『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE : LIVE FROM THE LONDON PALLADIUM』もリリースされます(日本盤は年明け1月発売予定)。こちらではデラックス盤収録の17曲をすべて披露しているので、もしかしたら17曲入りのほうが正式なトラックリストで、12曲入りのほうは「もっと手軽に楽しみたい人向け」なのかも。それでも17曲は多いけどね。
そういえばBON JOVIもMETALLICAみたいに、ニューアルバムからたくさんのMVを制作してるけど、これって流行りなんですかね?
※『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE (2018 VERSION)』(2018)に続く
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