PANTERA『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』20TH ANNIVERSARY EDITION(1996 / 2016)
1996年5月に発表された、PANTERA通算8枚目(メジャー移籍後4枚目)となるオリジナルアルバム。前作『FAR BEYOND DRIVEN』が初の全米1位を獲得したものの、バンドを取り巻く環境が悪化し(フィルの暴行による裁判およびドラッグ癖)、決してベストとは言い難いなかで制作されたのがこの『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』(邦題『鎌首』。意訳でもなんでもなく、たたジャケット写真を観て思いついただけでしょ、これ)でした。しかし、そのアグレッシヴな主張が際立つタイトル同様、内容は非常に攻撃的で、オープニング曲「The Great Southern Trendkill」冒頭のフィルによるシャウトでいきなりノックアウトされること間違いなしな1枚。
前作が出世作『VULGAR DISPLAY OF POWER』(1992年)をよりハードコアにした作風だったのに対し、今作ではハードコアさはそのままに、全体としてより整理された印象が強い。なもんで、前作で途中からダレ気味だったミドルテンポの楽曲も、今作ではギタープレイによる惹きつけ方や聴き手を飽きさせない工夫したアレンジが施されています。と同時に、かなり実験的なサウンド&楽曲も含まれており、アルバム中盤の(なかば組曲と言える)「Suicide Note, Pt.1」「Suicide Note, Pt.2」の緩急のつけ方はさすがと言わざるをえません。特に「Suicide Note, Pt.1」は、LED ZEPPELIN「Going To California」のカントリーやサザンロックに寄せたような不思議な魅力があり、そこからひたすらアグレッシヴな「Suicide Note, Pt.2」に切れ目なく突入する構成には鳥肌が。そのほかにもサイケデリックな色合いの「Flood」では、過去の「This Love」を深化させつつ新たなチャレンジにトライしており、世の「PANTERAフォロワー」とは格が違うことを見せつけます。
リリース当時は衝撃作『VULGAR DISPLAY OF POWER』、そしてNo.1アルバム『FAR BEYOND DRIVEN』の後だけに、ちょっと分が悪いというか、そこまで高く評価されていなかったような記憶がありますが、今聴くと先の2枚に負けないだけのパワーと深みがある1枚だと思います。今なら素直に『VULGAR DISPLAY OF POWER』の次に好きなアルバムと断言できます。
「20TH ANNIVERSARY EDITION」解説
で、今回このタイミングで取り上げたのには理由が。ご存知のとおり、本作は今年でリリース20周年を迎えたことから、10月にリマスタリング&ボーナスディスク付きのアニバーサリーエディションが発売されました。アルバム本編のリマスター盤となるDISC 1に関しては、なんとなく全体的に聴きやすくなった印象が。それはソフトになったということではなく、全体のバランスや音のメリハリが以前よりもわかりやすくなったというか(気のせいかもしれないけど)。
そして、もっとも気になるのが『THE GREAT SOUTHERN OUTTAKES』と題されたDISC 2のほうですよね。こちらは基本的にアルバム本編と同じ曲順でテイク違い(ミックス違いやインストバージョン、1998年の『DYNAMO OPEN AIR』でのライブ音源)が収められています。ライブ音源は音質的にはまぁこんなもんかな、と。ちょっと全体的にモコっとした印象があります。で、インストバージョンについては割愛して(笑)、ミックス違い……こちらは2種類あって、ひとつは「2016 Mix」と題されたもので、これは「The Great Southern Trendkill」1曲のみ。残りは「Early Mix」と、その名のとおり初期段階でのミックス。どのミックスも曲冒頭にフィルの話し声やドラムのカウントなどが残されており、ミックス自体も完全に整理されたDISC 1の音源よりも生々しさが残されています。
最新ミックスとなる「The Great Southern Trendkill」は……正直、そこまで音が良くないような。リミックスの類というよりは、他の「Early Mix」と同じ扱いと思ってもらったほうがいいかもしれません。エンディングの締まりのなさもカッコ悪いし。これを聴くと、いかにアルバム本編のバージョンが優れているかに気づかされます。
ということで、DISC 2は1枚のアルバムとして楽しむというよりは、『THE GREAT SOUTHERN OUTTAKES』本編を堪能した後に別の解釈をするための副読本的内容と言ったほうがいいかもしれませんね。あくまでおまけと解釈して接するのが無難です。
思えば『COWBOYS FROM HELL』(1990年)以降、メジャーから発売されたアルバムは今のところ4作品が20周年アニバーサリーエディションとしてリイシューされています。このまま進めるなら、次の2020年に『REINVENTING THE STEEL』(2000年)のアニバーサリーエディションが発売されることになるのかな。そもそも何か発表できそうな貴重音源が残っているのでしょうか。もしできることなら、フルライブをまるまる1本収めた未発表ライブ音源/映像があると……いいなぁ。

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