カテゴリー「2016年の作品」の81件の記事

2020年12月21日 (月)

BRING ME THE HORIZON『LIVE AT THE ROYAL ALBERT HALL』(2016)

2016年12月2日にリリースされたBRING ME THE HORIZONのライブアルバム。日本盤未発売。

本作は当初、PledgeMusicを通じたクラウドファンディング経由で限定発売されたもので、フィジカル/デジタルでのライブアルバムとDVD/Blu-ray/デジタルの映像作品が限定販売。僕も当時、ライブCDとライブ映像(デジタル版)を購入していましたが、オリジナル版発表から4年を経た2020年12月18日に各種ストリーミングサービスおよびデジタル配信サイトでの一般流通がスタート。これにより、手軽にBMTHのライブ音源を楽しむことができるようになりました。

……と言いながら、実は本作には通常のスタイルとは異なるライブ音源が収録されています。というのも、このライブは2016年4月に行われた、英国のがんケアおよび支援慈善団体・Teenage Cancer Trustのチャリティ公演で、オーケストラとのコラボ形態で実施されたもの。すべての楽曲がオーケストラの加わった新たなアレンジで演奏されております。

選曲自体は当時の最新アルバム『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)とその前作『SEMPITERNAL』(2013年)の2作が軸になっており、それ以前の楽曲は『THERE IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.』(2010年)から「It Never Ends」のみ。ここ最近の傾向と一緒ですね。でも、このへんの“ミディアムテンポの、メロディをしっかり聴かせる楽曲”が実にオケとの相性抜群で、楽曲の良さをさらにベストな方向に引き上げることに成功しています。

と同時に、ライブならではの生々しさもしっかり収めれており、同期中心の昨今のBMTHのスタイルと繊細なオケ、そしてオーディエンスのシンガロングが三位一体となりスペシャルな空間を作り上げている。映像で楽しむのがベストですが、これは音源だけでも十分に魅力が伝わる良作ではないでしょうか。

実はここ日本では出世作『THAT'S THE SPIRIT』を携えた来日公演が実現していないんですよね。当初は2016年1月に新木場STUDIO COASTでの単独公演が決定し、券売までしたんですが、ワールドツアーのスケジュール再調整により中止に。のちにバンドが日本を訪れるのは次作『amo』(2019年)発表後の2019年夏、『SUMMER SONIC』出演に際してでした。なので、このバンドの大躍進期を追体験するという点において、このライブ作品の果たす役割は(特に日本のファンには)非常に大きなものがあるのです。本来のアグレッシヴかつエンタメ性に富んだステージとは異なるものではあるものの、『SEMPITERNAL』の頃よりも数段高いステージへと到達したバンドの姿を、ぜひこの作品から感じ取ってみてください。

 


▼BRING ME THE HORIZON『LIVE AT THE ROYAL ALBERT HALL』
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2020年12月20日 (日)

TEMPLE OF THE DOG『TEMPLE OF THE DOG』(1991)

1991年4月16日にリリースされたTEMPLE OF THE DOG唯一のアルバム。日本盤は同年6月21日にポニーキャニオンから発売、その後1993年12月にポリドール(現ユニバーサル)から再発されますが、以降2020年まで一度も再発されていません。

TEMPLE OF THE DOGはクリス・コーネル(Vo)&マット・キャメロン(Dr)のSOUNDGARDEN組とマイク・マクレディ(G)、ストーン・ゴッサード(G)、そしてジェフ・アメン(B)というPEARL JAM組(当時はデビュー前)からなるプロジェクトバンドで、クリスのかつてのルームメイトだったアンドリュー・ウッド(Vo/MOTHER LOVE BONE)がオーバードーズで亡くなったことを受け、彼のトリビュートのために結成。ストーンとジェフはMOTHER LOVE BONEのメンバーでもあったことから参加が決まり、そこにクリスの盟友マット、ジェフ&ストーンが新たに結成するPEARL JAMの一員マイクが加わり、クリスが書き下ろしたトリビュートソングを中心にアルバム制作がスタートします。

アルバム全10曲中、クリスの書き下ろし曲が7曲、ジェフ&ストーン書き下ろし1曲(「Pushin' Forward Back」)とジェフ単独書き下ろし2曲(「Times Of Trouble」「Four Walled World」)という構成で、歌詞はすべてクリスによるもの。ブルースやサイケデリックロックをベースにしたそのサウンドは、ある意味ではSOUNDGARDEN的でもありPEARL JAM的でもある。さらには、ジェフ&ストーンがいることでMOTHER LOVE BONE的でもある、と。でも、SOUNDGARDENやPEARL JAM、さらにはMOTHER LOVE BONEそのものといった印象を受けることもなく、結果として3者のよいとこ取りで収まっているのが興味深いのではないでしょうか。そういった意味では、ここで展開されているサウンドってのちに一大ムーブメントを巻き起こすグランジの範疇に含まれるものと言えるのかもしれません。

SOUNDGARDENのようにBLACK SABBATHLED ZEPPELIN的オールドスクール・ハードロック色は薄く、どちらかといえばPEARL JAMがのちにデビューアルバム『TEN』(1991年)で展開するオーソドックスな土着的ロックの色が強い。なのに、「Reach Down」みたいに11分以上におよぶジャムセッション的長尺ドローンナンバーがあったりするから面白いんですよね。SOUNDGARDEN的な尖った要素は薄く、クリスのダイナミックなボーカルをおおらかでオーソドックスなUSハードロックに乗せてみたらこうなりましたという、ある意味ではクリスのプレ・ソロアルバムと言えなくもないのかな。その作品で、デビュー前のエディ・ヴェダーも「Hunger Strike」で歌声を聞かせていたりするのは、今思うと非常に貴重なコラボレーションだなと思わずにはいられません(30年近く経った今の目線だと、マットがPEARL JAM入りしたことで、「PEARL JAM feat.クリス・コーネル」にも見えてしまうしね)。

本作はリリース当初こそあまり話題になりませんでしたが、1991年後半……PEARL JAMが『TEN』を、SOUNDGARDENが『BADMOTORFINGER』(1991年)をそれぞれ発表し、1992年にかけてじわじわとヒットを飛ばすことで本作もチャートを急浮上。「Hunger Strike」や「Say Hello 2 Heaven」のラジオヒットも手伝って、アルバムは全米5位という好記録を残しています。

にしても、この時期のボーカリストとしてのクリス・コーネルの神がかりっぷりは、飛び抜けたものがありますよね。僕はリリース当時、ポニーキャニオン盤を購入していたものの、当初はそこまで真剣に聴き込めていなくて。ところが、『TEN』や『BADMOTORFINGER』リリース後にクリスのボーカルやPJのカッコよさにヤラれてから聴き返したら、「もっと早く気づけよ……」ってくらい本作の魅力にどっぷりハマッてしまったくちなんです。グランジという文化を語る上でも、そしてシアトル界隈の当時の人間関係を知る上でも本作は絶対に欠かせない1枚。リリースから30年近く経った2020年に聴いても、まったく色褪せない傑作です。

なお、本作は2016年秋に発売25周年を記念して、別ミックスやデモ音源を含むデラックス・エディションも発売。こちらはストリーミングなどでも手軽に聴くことができます。デモ音源はスタジオライブ的な生々しさが強く、ただでさえ正式音源の少ないこのプロジェクトの真の顔を見極める上では非常に貴重と言えるでしょう。まあ、ビギナーはまずアルバム本編をじっくり聴きこんで、そのあとにデラックス版の追加音源に触れることをオススメします。

 


▼TEMPLE OF THE DOG『TEMPLE OF THE DOG』
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2020年10月23日 (金)

ARCHITECTS『ALL OUR GODS HAVE ABANDONED US』(2016)

2016年5月27日にリリースされたARCHITECTSの7thアルバム。日本盤未発売。

前作『LOST FOREVER // LOST TOGETHER』(2014年)からEpitaph Recordsへと移籍し、過去最高の全英16位という好記録を残し、アメリカでも初のTOP200入り(最高125位)を果たしたARCHITECTS。そんな大成功を収めた同作から2年2ヶ月というスパンで届けられた今作は、引き続きヘンリック・ウッド&フレドリック・ノルドストロームのコンビがプロでプロデュースを手がけた、前作の延長線上にある1枚に仕上がっています。

ジェントにも通ずる複雑なリフワークやリズムの刻み方は相変わらずですし、適度にフィーチャーされたデジタルテイストも味付けとして良い方向に作用している。さらに、スクリームとメロウなボーカルパートのバランスも絶妙な配分で、オープニングの「Nihilist」からフルスロットルで飛ばしまくっています。かと思えば、「Downfall」のようにエモーショナルさが際立つ楽曲も存在し、カオティックなメタルコアを好むリスナーもメロディアスなテイストを好むリスナーも満足させるだけの完成を誇る内容だと断言できるでしょう。

とにかく、リズムの取り方、刻み方が気持ちよく、ザクザクと細かく切り刻む(ドラムがツーバス踏みまくる)ビートもあれば、壮大なスケール感を持つビッグなビートも含まれている。その組み合わせ方/構築方法のオリジナリティが今作でほぼ確立され、ARCHITECTSというバンドがほかのメタルコアバンドの追随を許さない唯一無二の存在へと成長したことが、この1枚からも伺えます。

ARCHITECTSはアルバムごとに大きなテーマが用意されており、そのテーマをなぞった歌詞が各曲に綴られています。今作の大きなテーマは「世界的な怒りと幻滅」であり、このアルバムこそがARCHITECTSから現代社会に向けたステートメントであると。攻撃的でヘヴィなサウンド&アンサンブル、それと同じくらいの悲しみや失望が伝わるメロディはARCHITECTS史上もっともダークなものと言えるでしょう。しかし、その質感が妙に気持ちよく響くのは、彼らが我々と同じく痛みや悲しみを抱えているから。それがダイレクトに刺さるんだけど、痛みが快楽へと昇華されていく。この感覚、ハマったら抜け出せないものがあり、気づけばARCHITECTSというバンドの虜になっているはずです(かくいう僕も前作で彼らにハマり、現在に至ります)。

本作リリースから3ヶ月後の8月20日、3年以上にわたりガンと戦ってきたトム・サール(G)が逝去。後付けですが、この怒りや痛み、悲しみはトムのものであり、彼を支えるバンドメンバーのものでもあったんだなと……そして、その痛みと苦しみ、悲しみは次作『HOLY HELL』(2018年)でクライマックスを迎えることになります。

 


▼ARCHITECTS『ALL OUR GODS HAVE ABANDONED US』
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2020年9月 3日 (木)

ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.1』(2016)

2016年4月にリリースされたエース・フレーリーのカバーアルバム。スタジオ作品としては通算7作目のソロアルバムとなります。

本作はエースに多大な影響を与えてきたアーティストたち(CREAMTHE ROLLING STONESジミ・ヘンドリクスFREETHIN LIZZYLED ZEPPELIN、THE TROGGS、STEPPENWOLF、THE KINKSと無難なセレクト)の名曲に加え、KISS時代の楽曲も3曲収録。自身が作詞作曲した「Parasite」および「Cold Gin」(ともにジーン・シモンズVo曲)はわかりますが、彼がレコーディングにほぼ関わっていない『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)から「Rock And Roll Hell」(ジーン、ブライアン・アダムス、ジム・ヴァランス作)をセレクトしているのには思わず「?」となってしまいました(苦笑)。

全12曲中11曲でエースがリードボーカルを担当しており、「White Room」と「Bring It On Home」ではドラマーのスコット・クーガン(L.A. GUNS、ex. BRIDES OF DESTRUCTIONなど)がコ・リードボーカルを披露しています。エースのボーカルは今さら述べるまでもなく(笑)、味わい深いヘタウマぶりで、もはや安定感すら漂っています。うん、もうこれはこれでアリだし、これじゃなきゃいかんわな。

で、本作の注目点はもうひとつ、多彩なゲスト陣が挙げられると思うのです。先に述べたボーカル曲のうち、エースが歌っていない「Fire And Water」ではKISS時代の盟友ポール・スタンレーが参加。なにやら最初はジーンに声をかけたんだけどスルーされ(笑)、続いてポールに声をかけたらOKをもらえたんだとか。かわいそうだけど(苦笑)、結果いいコラボレーションが楽しめたので良しとしましょう(その後、ジーンは次作『SPACEMAN』にソングライティング&ベースで1曲参加しているので、めでたしめでたし)。

このほかにもスラッシュGUNS N' ROSES)が「Emerald」でエースとツインリードを披露し、リタ・フォードは「Wild Thing」でツインボーカル&リードギター、ジョン・5(ROB ZOMBIE)は「Spanish Castle Magic」と「Parasite」でリードギター、マイク・マクレディ(PEARL JAM)は「Cold Gin」でギターソロを聴かせてくれます。「Emerald」は意外とエースのボーカルがハマっているのと、スラッシュが良い仕事をしてくれていることで、個人的にもベストテイクかな。KISSナンバーの数々はさすがにボーカル含め小慣れた感強し(笑)。そんな中で、やはり「Rock And Roll Hell」だけはジーンのクセの強さが脳裏に焼き付いているので、ちょっとした違和感が。でも、慣れると悪くないですよ(実はギターソロがなかなかエースらしさ満載で、良テイクではないかと)。

今年9月にはカバー集第2弾『ORIGINS VOL.2』のリリースも控えており、すでに「Space Truckin'」(DEEP PURPLE)が公開中。こちらも楽しみにしております。

 


▼ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.1』
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2020年5月22日 (金)

WEEZER『WEEZER (WHITE ALBUM)』(2016)

2016年4月初頭にリリースされたWEEZERの10thアルバム。

セルフタイトルアルバムはこれまで1stアルバム(1994年)3rdアルバム(2001年)、6thアルバム(2008年)と3作発表しており、それぞれジャケットのメインカラーから『BLUE ALBUM』、『GREEN ALBUM』、『RED ALBUM』の愛称で親しまれてきましたが、赤盤から8年を経てついに白盤(『WHITE ALBUM』)の登場です。ここまでセルフタイトルを多用するメジャーバンドも少ないですよね。

さて、本作の内容ですが……アルバムカラーとは一切関係なく(笑)、いつもどおりのWEEZER節前回のパワーポップアルバムに仕上がっています。前作『EVERYTHING WILL BE ALRIGHT IN THE END』(2014年)は要所要所にフックが用意された、なかなかトリッキーながらも彼ららしい1枚で好印象でしたが、それと比べると本作は若干ストレートすぎるかな? むしろ、ポップ色/甘味料を多めに使用することで、ジャケットの白とは相反して意外とカラフルな仕上がりではないかと思います。

オープニングの「California Kids」や「(Girl We Got A) Good Thing」などのポップ感は、どこかTHE BEACH BOYSあたりにも通ずるものがあり、これはジャケットにビーチで撮影した写真を用いているから……なんて深読みもしたくなりますが(笑)。まあ、たまたまでしょうね。また、シングルカットもされた「Thank God For Girls」などはモダンな味付けも含まれており、適度な“今”感を提示。このへんのカラフルさはさすがの一言です。

かと思えば、「Do You Wanna Get High?」のような泣き虫ロックナンバー、豪快なサウンドの「King Of The World」や「L.A. Girlz」みたいに初期の彼らが好きな層にもアピールする定番スタイルもしっかり用意されている。先のTHE BEACH BOYS的アプローチにしろ、もちろんこれまでも表出していた要素のひとつであるわけで、要するにすべてにおいて“WEEZERらしさ”から一歩もはみ出すことなく、リスナーが求めるものを的確に提供してくれる。まさに教科書的な1枚と言えるでしょう。

だからこそ、前作にはあった刺激という点においてはちょっと物足りなさも感じる。全10曲で34分という古き良き時代のレコード的コンパクトさと相まって、何度か聴いているうちに「もういいかな?」と思えてしまうこともある、そんな平均点的な1枚でもあるのかなと思いました。もちろん、出来は非常に良いですし、たまに聴くと「あ、やっぱり良いね」と感じるのですが、長きにわたり飽きずに楽しめる傑作とはちょっと違うのかな。

そういう作品のあとだったからこそ、続く11thアルバム『PACIFIC DAYTREAM』(2017年)『BLACK ALBUM』(2019年)の変化には思いっきり刺激を受けたわけですが。要は、この振れ幅こそがWEEZERなんでしょうね。

 


▼WEEZER『WEEZER (WHITE ALBUM)』
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2020年3月19日 (木)

WARDRUNA『RUNALJOD - RAGNAROK』(2016)

2016年10月にリリースされたWARDRUNAの3rdアルバム。本作が日本デビューアルバムとなっており、海外から1年半遅れの2018年3月に満を辞して発表さてました。

WARDRUNAはノルウェーのベルゲンを拠点とするバンド/ユニットで、元GORGOROTHのドラマーだったアイナル・セルヴィク(GORGOROTH時代はクヴィトラフンと名乗っていた)を中心に2003年に結成。自身の音楽ルーツに目覚めたアイナルが、土着的民謡や北欧神話などの伝承に触発されたことを機に、ブラックメタルの対極にあるトラッドフォークやゴシック、アンビエントといった“静”のスタイルで独自の音楽を構築しています。

アイナルはボーカルヤドラムのほかにターゲルハルパ(擦弦楽器)、クラヴィクリラ(小型の竪琴)、ブッケホルン(角笛)、ルール(細長い管楽器)といった古楽器を多用。現在は彼の他に女性ボーカルのリンディ=ファイ・ヘラ、ルールやホルン、フルート、アイス・パーカッション奏者のエイリッフ・グンダーゼン、アルネ・サンヴォル(Vo)、HCダルガード(Vo)、ヒェル・ブラーテン(Vo)というメンバーが在籍しています。

本作はデビューアルバム『RUNALJOD - GAP VAR GINNUNGA』(2009年)から始まった、「創生」「生長」「終末」というサイクルを描く三部作の最終章にあたるもの。前作『RUNALJOD - YGGDRASIL』(2013年)まで在籍したガァールことクリスチャン・アイヴィン・エスペダル(Vo/ex. GORGOROTH)脱退を経て、1stアルバムから7年、結成から13年にてついに最初のコンセプトが完結することになります。

先に書いたように、ブラックメタル的な“動”の要素は皆無で、むしろそのサブジャンルとも言えるダークフォークに属する密室感の強い土着的なサウンドと、宗教音楽のような(言い方は失礼ですが)不気味なミニマルサウンドが交差する、非常にクセの強い楽曲が並んでいます。ドラムというよりもパーカッションをメインに使ったリズムセクションが土着感をより強め、パターン化されたフレーズをループすることで生み出される不思議な高揚感が聴き手にトリップを誘う。そういったところにも密教的な危うさが感じられるのではないでしょうか。

また、古ノルド語によるボーカルもまるで何かの神様(善の神か、あるいは悪霊か)を降臨させる呪文のようにも聞こえ、聴き手の情緒を不安に陥れる。だけど、なぜか聴くことをやめられない不思議な魅力が強い……そう、気づけばこの音色/ハーモニー/プリミティブなリズムに魅了されている自分がいるのです。

メタルの要素は皆無ですが、MYRKURなどにも通ずる魅力を持つアーティストだけに、メタルから派生したひとつの進化形と捉えて楽しむのもありかもしれません。

なお、彼らは昨年新たにSony Music / Columbia Recordsとメジャー契約。今年6月には通算5作目のアルバム『KVITRAVN』をリリース予定です。4作目『SKALD』(2018年)がほぼアイナルのソロアルバム形態だったので、三部作とソロスタイルを経たWARDRUNAが新たにどんなサウンドスケープを構築するのか、今から楽しみでなりません。

 


▼WARDRUNA『RUNALJOD - RAGNAROK』
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2020年2月29日 (土)

DIZZY MIZZ LIZZY『FORWARD IN REVERSE』(2016)

2016年4月末にリリースされたDIZZY MIZZ LIZZYの3rdアルバム。日本盤は海外よりも2週間先行で発表されています。

1996年5月の2ndアルバム『ROTATOR』を経て、1998年にはバンド解散を発表したDIZZY MIZZ LIZZY。以降はフロントマンのティム・クリステンセン(Vo, G)がソロで活動を続けておりましたが、2009〜2010年の期間限定で再結成を遂げ、再来日公演も実現しております。そして、2014年には期間を設けない本格的な再結成を発表。パーマネントな活動再開を遂げたことで、この新作制作も実現したわけです。

前作『ROTATOR』からまるまる20年を経て届けられた新作ですが、そんな長期間のインターバルがあったことを感じさせないくらいに、本作には『ROTATOR』からの連続性を感じさせるテイストが含まれています。と同時に、ティムがソロ活動で経験した音楽的成長もしっかり落とし込まれており、単なる“焼き直し”で終わらないバンドとしての進化も感じられる1枚に仕上がっています。

同じメンバー、同じソングライターが再びDIZZY MIZZ LIZZY名義で新作を作るわけですから、そこには1stアルバム『DIZZY MIZZ LIZZY』(1994年)や続く『ROTATOR』のテイストが散りばめられているのは当然の結果。むしろ、ティムがこのシンプルなバンド編成でテクニカルかつハードなロックを奏でれば、それは自然とDIZZY MIZZ LIZZYの音になる。ここに関しては、最初の再結成で過去の楽曲を何度も演奏しているので、自然とそういった身に付いたものが表出した結果と言えるでしょう。「そう、DIZZY MIZZ LIZZYってこうだよね」と。

そんな彼ららしい要素は、冒頭の「Forward In Reverse」や「Terrified In Paradise」といったパンチの効いた楽曲から感じ取ることができるはず。ただ、もちろんこれらは過去の焼き直しではなく、『ROTATOR』から進化・成長したDIZZY MIZZ LIZZYの姿も浮き彫りにしている。そして、「Something So Familiar」のような穏やかな楽曲も過去のDIZZY MIZZ LIZZYにありそうと言えば確かにそれっぽいものの、このへんはティムのソロ活動の延長線上にある楽曲なのかな。そういった経験がしっかりバンドにも持ち込まれたこの曲は、個人的に「ティムにとってDIZZY MIZZ LIZZYとソロ活動は地続き」という事実を再認識するよいきっかけになりました。うん、本当にいい曲。

「Love At Second Sight」や「Made To Believe」のような“らしい”アンサンブルの楽曲が中盤に置かれているのも、興味深いポイントかな。前半で“らしさ”よりも“新しさ”を強調した楽曲を用意し(アルバムを「Phlying Pharaoh」というインスト曲から始めるあたりも、まさにそこだと思う)、中盤に過去を彷彿とさせる楽曲を並べ、アルバムの流れにワンクッション置く単尺曲「Frey」を経てヘヴィな「Mindgasm」から再び新しいDIZZY MIZZ LIZZYを提示する。この「Frey」「Mindgasm」という2つのインスト構成も、ミュージシャンとしての20年分の成長をまとめて落とし込んだような力作で、個人的にはアルバム後半のハイライトだと思っています。

そこから「Fly Above The Rader」「I Would If I Could But I Can't」とガッツのある楽曲が続き、ラストをムーディかつドラマチックな長尺曲「Say It To Me Anyway」で締めくくる。完璧なまでに“古き良き時代の、アルバムらしいアルバム”と断言できる仕上がりです。

ここまでの力作を携えて本格復活したDIZZY MIZZY LIZZY。まもなく4年ぶりの新作『ALTER ECHO』をドロップしますが、こちらも『FORWARD IN REVERSE』以上に気合いの入った“ミュージシャンズ・ミュージシャン”らしい傑作(ひと足先に聴かせてもらいました)。90年代の彼らこそベストと過去にしがみつくことを否定しませんが、だからといって今を否定するのはナンセンス。こんなに時代に合った(と同時に、時代の流れを無視した)最高な作品を無視することは、罪以外の何ものでもありません。どうか、もっといろんなところに行き届きますように。

 


▼DIZZY MIZZ LIZZY『FORWARD IN REVERSE』
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2020年1月10日 (金)

新感染 ファイナル・エクスプレス(2016)

あらすじ
ソウル発プラン行きの高速鉄道KTXで突如起こった謎の感染爆発。列車内で凶暴化する感染者たち―乗り合わせたのは、妻のもとへ向かう父と幼い娘、出産間近の妻と夫、そして高校生の恋人同士…彼らは終着駅にたどり着くことができるのか―?目的地まであと2時間、絶体絶命のサバイバルが今はじまる!

韓国発のゾンビ映画。ゾンビといってもロメロ直系のスタンダードスタイルではなく、『28日後...』『バイドハザード』に習ったスピーディな動きをするヤツ。しかも、劇中ではソンビというワードは一切登場せず、化学薬品の汚染→感染という経路で感染者のアクションを“暴動”と捉えているところは『28日後...』に近いかもしれません。

ただ、本作の面白かったポイントは非感染者が高速鉄道という、行動範囲が限られた密室空間で物語の大半が進行するという点でしょう。密室系パニックアクション映画はこれまでにもたくさんありましたが、そこにゾンビものを混ぜ込んだことで、パニック度が過剰に盛り上がり、かつ銃社会ではない韓国を舞台にしているところもリアリティが感じられる。終始ダレることなく楽しめました。

実はこの作品最大の敵はゾンビ/感染者ではなく、同じ人間だという風刺(かな?)じみたところはどことなくロメロっぽいかも? そんなこともないか。コン・ユ演じる主人公の「自分さえよければ」というマインドや、最初から最後まで自分勝手さが際立った高速バス会社の常務、老姉の博愛心を嫌悪する老妹、ほかの車両から逃げてきた主人公たちを「感染しているかもしれない」という不確定な理由で排除しようとする他の生存者たち……そんな中で、子供ならではのピュアさをみせる主人公の娘と、妊娠中の女性の発言/行動は最初から最後まで安心していられたし、物語の救いになったところも大きかったと思います(結末的にも納得ですしね。悲しいエンディングだったけど)。

ゾンビ映画として接すると点数はかなり低めだけど、パンデミック系パニック映画として楽しめば十分に完成度は高いのではないでしょうか。事実、韓国内でもかなりのヒット作となり、続編の制作も決定しているようですし、アメリカでのリメイクも決まっているんだとか。欧米映画にありがちなネタを逆輸入するとどうリメイクされるのか、そちらも気になるところです。

(*84点)

 


▼新感染 ファイナル・エクスプレス
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2019年9月19日 (木)

OPETH『SORCERESS』(2016)

2016年9月末にリリースされたOPETHの12thアルバム。前作『PALE COMMUNION』(2014年)から2年ぶりの新作にあたり、本国スウェーデンでは最高7位、全米24位/全英11位という好成績を残しています。

前作でペル・ヴィベリ(Key)からヨアキム・スヴァルベリに交代し、ミカエル・オーカーフェルト(Vo, G)、フレドリック・オーケソン(G)、マーティン・メンデス(B)、マーティン・アクセンロット(Dr)との現編成で2作目となる今作では、10thアルバム『HERITAGE』(2011年)で迎えた“脱デスメタル”路線をさらに推し進め、60〜70年代的なプログレッシヴ・ロックのスタイルをより強めることに成功しています。

『PALE COMMUNION』でのスタイルが気に入った人なら十分に受け入れられる作風だと思いますが、8thアルバム『GHOST REVERIES』(2005年)までのゴリゴリしたサウンドが好みだったリスナーにはちょっと退屈に聴こえるかもしれません。とはいえ、過去2作と比較するとメタル度はかなり高く、『HERITAGE』でOPETHから離れてしまったリスナーにも存分にアピールするものがあるはずです。

には若干メタリックなカラーが残されていますが、全体的にはアシッドフォーキーにも通ずる穏やかな作風がより強まっているんじゃないかなと。かと思えば、そこからの揺れ戻しのようにプログレメタル的なヘヴィさも随所に用意されており、その緩急の巧みさは過去2作以上。メタリックなカラーが強く反映されたタイトルトラック「Sorceress」や、ギター&キーボードによるソロバトルがフィーチャーされた「Chrysalis」なんて、DREAM THEATERあたりが好きな人にもピンとくるものがあるのではないでしょうか。

ミカエルのボーカルも完全に脱デス声しており、ノーマルなクリーントーンで淡々と歌い上げられている。ソロプレイを含むフレドリック・オーケソンによるギターフレーズもメタルのそれというよりは、どことなくフュージョン的な方向に寄っており、それが80年代以降の末期PINK FLOYD的な空気を作り上げています。そりゃあ嫌いになれるわけ、ないわな。

オープニングとエンディングにそれぞれ1〜2分程度の単尺インストを用意しているものの、それ以外の楽曲のほとんどが5分以上。7分前後以上の長尺ナンバーは3曲含まれていますが、意外とそこまで長いとは感じさせない工夫がしっかり施されているので、全11曲56分がスルスル聴き進められるはずです。

なお、本作のCD2枚組限定盤には本編未収録の新曲2曲と、オーケストラをフィーチャーしたライブテイク3曲を追加収録。アルバム本編とは一線を引いたように別ディスクに収録されていますが、こちらも方向性的には『SORCERESS』の延長線上にあるので、続けて楽しめるのではないでしょうか。

もはや5thアルバム『BLACKWATER PARK』(2001年)でのスタイルは再び望めませんが、今作の完成度の高さはそういった好みとは別のところにあると思っているので、そこはちゃんと評価していただきたいところです。

 


▼OPETH『SORCERESS』
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2019年9月 6日 (金)

RIVAL SONS『HOLLOW BONES』(2016)

2016年6月に発表されたRIVAL SONSの5thアルバム。Earache Recordsからのラスト作にあたります。

前々作『HEAD DOWN』(2012年)、前作『GREAT WESTERN VALKYRIE』(2014年)と10数曲入りで50分前後の作品を連発してきた彼らですが、今作では原点に戻ってか全9曲で37分という、このご時世にしてはやたらとコンパクトな内容に仕上げてきました。

プロデュースを手がけたのは、これまで同様デイヴ・コッブ(EUROPE、ZAC BROWN BANDなど)。これまでの曲によってはオルガンやウーリッツァーなどがフィーチャーされてきましたが、今作ではキーボードの類が全面的に導入されており、楽曲レンジのうえでかなり効果的な役割を果たしています。また、曲によってはチェロやバイオリンなどの弦楽器も採用され、レイドバックしたクラシックロック/ルーツロック色がこれまで以上に強まったようにも感じられます。

ブルースやソウルを下地にしたハードロックは、やり方次第で現代的にもなり得るのですが、ここではそういった思考は完全に捨て去り、自身のルーツに正直になり、先人たちから受け継ぐ意思を、時代を超えそのまま再現しています(そう、「表現」ではなく「再現」なんですよね)。

前作あたりからこのバンドならではのオリジナリティも確立され始めていましたが、その傾向は本作でも強まり始めています。それが完成の域に達するのは、続く最新作『FERAL ROOTS』(2019年)まで待たねばならないのですが。

にしても、ジェイ・ブキャナン(Vo)のボーカルワークはかなりテクニカルといいますか、表現力が豊かといいますか。アルバムを聴いていると、ときどきポール・ロジャース(FREEBAD COMPANY)あたりと重なる瞬間があるんですよね。そりゃカッコいいわけだ。

かつ、本作ではスコット・ホリデイ(G)のプレイに目を見張るものがあります。ちょっとしたフレージングや、そのフレーズの積み重ねから生まれる絶妙なアンサンブル、ほかのバンドやギタリストには真似できない独特なものがあります。ぶっちゃけ、ジェイとスコットの個性こそがこのバンドの魅力でもあるわけで、その2人が確変したタイミングこそRIVAL SONSが本格的にブレイクするときなのかもしれません。

残念ながら本作以降、彼らの新作は日本盤が発売されていません。そりゃあ日本で全然話題にならないわけだ(苦笑)。せめて夏フェス、フジロックのFIELD OF HEAVENあたりでプレイしてくれたら一気に広まると思うんだけどな。

 


▼RIVAL SONS『HOLLOW BONES』
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