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カテゴリー「2016年の作品」の84件の記事

2022年5月26日 (木)

KORN『THE SERENITY OF SUFFERING』(2016)

2016年10月21日にリリースされたKORNの12thアルバム。

ブライアン・“ヘッド”・ウェルチ(G)が復帰した前作『THE PARADIGM SHIFT』(2013年)から3年ぶりの新作。キャッチーな歌メロ重視ニューメタル路線から、よりエッジの効いたスタイルが復調しつつある良質なメタルアルバムに仕上がっています。

プロデューサーを前作でのドン・ギルモア(BULLET FOR MY VALENTINELINKN PARKアヴリル・ラヴィーンなど)からニック・ラスクリネクツ(HALESTORMALICE IN CHAINSMASTODONなど)に交代したことも大きいのでしょうか。「Rotting In Vain」や「The Hating」などヘヴィな音の塊の中に心地よいメロウなテイストがにじんでいるテイストは、前作『THE PARADIGM SHIFT』での経験をベースにしつつも4thアルバム『ISSUES』(1999年)以降の路線を踏襲したもののようにも受け取れます。

また、モダンでプログロック的な側面を追求した5thアルバム『UNTOUCHABLES』(2002年)や、コンパクトでキャッチーなスタイルにこだわった7thアルバム『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』(2005年)からの影響も見え隠れし、変に初期のヘヴィさにこだわった結果中途半端に終わった9thアルバム『KORN III: REMEMBER WHO YOU ARE』(2010年)よりもバンドとして自然体に映るのも印象的。そういった意味では、バンドの基礎を構築した伝説の1stアルバム『KORN』(1994年)と2ndアルバム『LIFE IS PEACHY』(1996年)、最大のヒット作となった3rdアルバム『FOLLOW THE LEADER』(1998年)を変に意識しすぎることなく臨んだ結果、過去10数年の中でも一番トータルバランスの整った内容になったのではないでしょうか。

そんな良作に華を添えるように、「A Different World」にはSLIPKNOTSTONE SOURコリィ・テイラー(Vo)がゲスト参加。ジョナサン・デイヴィス(Vo)との相性も抜群ですが、90年代のニューメタルヒーローとゼロ年代のニューメタルの王者のコラボレーションは、ちょっとタイミングが遅すぎるくらい。ただ、前作がヘッド復帰という大きなトピックがあったので、これくらいはあってもいいのかな。

思えば、KORNもこの時点で20年選手に突入しているわけで、この手のバンドとしては多作の12枚目。かつ、ここまでの枚数を制作しながらも同じようなアルバムは1枚もなく、毎回何かしらの変化を遂げている。ソングライター/プレイヤーとしての質の向上はもちろん、表現したいこともデビュー前後と比べたら多少は変わっているはず。そういった点でも、本作はバンドとしての集大成を示すと同時に、キャリア何度目かの“デビュー”アルバムのようでもあるのかなと。まあ、デビュー作にしては出来過ぎなくらいに完璧な内容ですが(笑)。

3分台の楽曲中心の全11曲(デラックス盤の2曲除く)/トータル40分というコンパクトさは、間違いなくその後の『THE NOTHING』(2019年)『REQUIEM』(2022年)にも大きな影響を及ぼしているし、そういった点でも本作は何度目かのリスタートの幕開けにふさわしい1枚だったのかもしれません。

そんなアルバムが、全米チャートで近年では最高となる4位を獲得したというのも、なんだか納得といいますか。以降、完全にサブスク中心のシーンに転換していくことを考えると、(チャート的にもセールス的にも)ここまでがギリギリ“CD主流時代”だったのかな?という気がしています。

 


▼KORN『THE SERENITY OF SUFFERING』
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2022年3月30日 (水)

RED HOT CHILI PEPPERS『THE GETAWAY』(2016)

2016年6月17日にリリースされたRED HOT CHILI PEPPERSの11thアルバム。

ジョシュ・クリングホッファー(G)を新たに迎えて制作した前作『I'M WITH YOU』(2011年)から約4年10ヶ月ぶりの新作。『BLOOD SUGAR SEX MAGIK』(1991年)以降20年以上にわたりタッグを組んできたリック・ルービンのもとを離れ、新たにデンジャー・マウス(ベックGORILLAZ、THE BLACK KEYSなど)をプロデューサーに、ナイジェル・ゴドリッチ(RADIOHEADR.E.M.U2など)をミキサーに迎えて制作した、真の意味での“第3章の幕開け”を宣言する1枚です。

フリー(B)&チャド・スミス(Dr)のリズム隊を強調したミックスは前作から引き続きですが、前作では調和を取ることに徹したジョシュのギターが随所で主張し始めているのも今作の特徴。かつ、デンジャー・マウス自身もソングライティングやサウンドメイキングに加わることで、90年代以降の楽曲至上主義を引き継ぎつつもサウンド面での進化が感じられる、カラフルな内容に仕上がっています。

それは冒頭の「The Getaway」や続くリードシングル「Dark Necessities」、MVも印象的だった「Go Robot」などからも存分に感じられるはず。ただ、前作では若々しさが多少復調した感があったものの、今作では再び地味かつ落ち着いた作風へと回帰し、アルバム全体を年相応の穏やかさで覆っている。アンソニー・キーディス(Vo)のボーカルも比較的抑揚を抑えた歌い方で、伝説的なバンドの新作ながらも若いリスナーにはちょっと刺激が足りないかもしれませんね。

とはいえ、楽曲自体の完成度はどれも水準以上で、先にも記したようにサウンドメイキングでの遊びが随所に散りばめられていることから、全13曲/54分という程よいトータルランニングを飽きずに楽しむことができるはず。聴き込めば聴き込むほどに濃度の高さが伝わる、入り口は狭いけど奥行きは無限大なスルメアルバムではないでしょうか。

また、先の楽曲至上主義の延長でしょうか、本作では「Sick Love」でエルトン・ジョン&バーニー・トーピンがソングライティングに参加。エルトンは同曲でピアノも披露しています。この曲も地味なテイストですが、聴けば聴くほどクセになる1曲で、ジョシュの泣きまくりなギターソロも好み。何気にリリース当時よりも今のほうがお気に入りだったりします。

若い頃のアルバムは即効性の強い“スーパーストロング”のような作品でしたが、本作は香りや風味を楽しみつつチビチビ味わう極上の日本酒みたいな内容ではないかなと。何気に前作以上に大好きな1枚です。と同時に、ここからさらにバンドとして進化していくのかな、第3章は期待できるかも……と思っていたら、この実験作で短命に終わるとは(苦笑)。

 


▼RED HOT CHILI PEPPERS『THE GETAWAY』
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2021年5月13日 (木)

HEART『BEAUTIFUL BROKEN』(2016)

2016年7月8日にリリースされたHEARTの16thアルバム。現在まで日本盤未発売。

2021年時点でのHEARTの最新アルバムは、既発曲のリアレンジ&リテイク8曲と新曲2曲で構成された準新作的な内容……と思っていたのですが、採用された既発曲の大半が『Bébé le Strange』(1980年)、『PRIVATE AUDITION』(1982年)、『PASSIONWORKS』(1983年)といった、『HEART』(1985年)で再ブレイクする前の低迷期からということで、ほぼ印象にない楽曲ばかり。なので、基本的には新曲と接するような気持ちで向き合えた1枚です(苦笑)。

リテイク楽曲でもっとも新しい2曲が、オープニングを飾るタイトルトラック「Beautiful Broken」(2012年発売の前作『FANATIC』デラックス盤にのみ収録)と、2003年発売のライブ作品『ALIVE IN SEATTLE』で初公開された「Heaven」。前者は本作中もっともハードエッジな楽曲で、90年代以降のHEARTのハードサイドをそのまま進化させたような仕上がりです。また、ゲストボーカリストとしてMETALLICAのジェイムズ・ヘットフィールドが参加しており、聴けばすぐにおわかりいただけるのではないでしょうか(笑)。とにかくカッコいい1曲です。また、後者はこれが初のスタジオ音源化となる、うねりまくったサイケデリックロック。こういう楽曲をやらせたら右に出る者がいないってくらい、HEARTにぴったりな“ムーディな”1曲ですよね。

再録曲の多くはモダンなテイストが加えられ、完全に“今の曲”として生まれ変わっています。ブルージー&ジャジーなテイストの「Johnny Moon」やストリングスをフィーチャーしたZEP風「City's Burning」は“大人のハードロック”という表現がぴったりな仕上がりで、普通にカッコいい。オープニングの「Beautiful Broken」以外はミドルテンポでじわじわ攻める作風なので、即効性は弱いかもしれませんが、これくらい味わい深い作品のほうが今の彼女たちには合っているんでしょうね。

また、新曲2曲のうち「Two」はナンシー・ウィルソン(Vo, G)がリードボーカルを担当。この曲はかのNe-Yoが提供した楽曲で、昨今のアコースティックスタイルの延長線上にあるポップな仕上がり。もうひとつの「I Jump」もアコースティック主体ですが、こちらはストリングスも取り入れられており、もうちょっとサイケロック色が強いアレンジかな。こういう曲こそアン・ウィルソン(Vo)のハイトーンにぴったりですよね。

80年代のような派手さは皆無ながらも、二度目の復活作となった『JUPITERS DARLING』(2004年)から良い流れを作っているように感じられる今のHEART。80's HR/HMも90年代のグランジも飲み込んだ今のHEART、実はかなり機能性の高いロックバンドだと思うんです。若いリスナーにはこの機会にぜひ、本作や『FANATIC』、前々作『RED VELVET CAR』(2010年)あたりをしてもらいたいところです。

 


▼HEART『BEAUTIFUL BROKEN』
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2020年12月21日 (月)

BRING ME THE HORIZON『LIVE AT THE ROYAL ALBERT HALL』(2016)

2016年12月2日にリリースされたBRING ME THE HORIZONのライブアルバム。日本盤未発売。

本作は当初、PledgeMusicを通じたクラウドファンディング経由で限定発売されたもので、フィジカル/デジタルでのライブアルバムとDVD/Blu-ray/デジタルの映像作品が限定販売。僕も当時、ライブCDとライブ映像(デジタル版)を購入していましたが、オリジナル版発表から4年を経た2020年12月18日に各種ストリーミングサービスおよびデジタル配信サイトでの一般流通がスタート。これにより、手軽にBMTHのライブ音源を楽しむことができるようになりました。

……と言いながら、実は本作には通常のスタイルとは異なるライブ音源が収録されています。というのも、このライブは2016年4月に行われた、英国のがんケアおよび支援慈善団体・Teenage Cancer Trustのチャリティ公演で、オーケストラとのコラボ形態で実施されたもの。すべての楽曲がオーケストラの加わった新たなアレンジで演奏されております。

選曲自体は当時の最新アルバム『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)とその前作『SEMPITERNAL』(2013年)の2作が軸になっており、それ以前の楽曲は『THERE IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT. THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.』(2010年)から「It Never Ends」のみ。ここ最近の傾向と一緒ですね。でも、このへんの“ミディアムテンポの、メロディをしっかり聴かせる楽曲”が実にオケとの相性抜群で、楽曲の良さをさらにベストな方向に引き上げることに成功しています。

と同時に、ライブならではの生々しさもしっかり収めれており、同期中心の昨今のBMTHのスタイルと繊細なオケ、そしてオーディエンスのシンガロングが三位一体となりスペシャルな空間を作り上げている。映像で楽しむのがベストですが、これは音源だけでも十分に魅力が伝わる良作ではないでしょうか。

実はここ日本では出世作『THAT'S THE SPIRIT』を携えた来日公演が実現していないんですよね。当初は2016年1月に新木場STUDIO COASTでの単独公演が決定し、券売までしたんですが、ワールドツアーのスケジュール再調整により中止に。のちにバンドが日本を訪れるのは次作『amo』(2019年)発表後の2019年夏、『SUMMER SONIC』出演に際してでした。なので、このバンドの大躍進期を追体験するという点において、このライブ作品の果たす役割は(特に日本のファンには)非常に大きなものがあるのです。本来のアグレッシヴかつエンタメ性に富んだステージとは異なるものではあるものの、『SEMPITERNAL』の頃よりも数段高いステージへと到達したバンドの姿を、ぜひこの作品から感じ取ってみてください。

 


▼BRING ME THE HORIZON『LIVE AT THE ROYAL ALBERT HALL』
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2020年12月20日 (日)

TEMPLE OF THE DOG『TEMPLE OF THE DOG』(1991)

1991年4月16日にリリースされたTEMPLE OF THE DOG唯一のアルバム。日本盤は同年6月21日にポニーキャニオンから発売、その後1993年12月にポリドール(現ユニバーサル)から再発されますが、以降2020年まで一度も再発されていません。

TEMPLE OF THE DOGはクリス・コーネル(Vo)&マット・キャメロン(Dr)のSOUNDGARDEN組とマイク・マクレディ(G)、ストーン・ゴッサード(G)、そしてジェフ・アメン(B)というPEARL JAM組(当時はデビュー前)からなるプロジェクトバンドで、クリスのかつてのルームメイトだったアンドリュー・ウッド(Vo/MOTHER LOVE BONE)がオーバードーズで亡くなったことを受け、彼のトリビュートのために結成。ストーンとジェフはMOTHER LOVE BONEのメンバーでもあったことから参加が決まり、そこにクリスの盟友マット、ジェフ&ストーンが新たに結成するPEARL JAMの一員マイクが加わり、クリスが書き下ろしたトリビュートソングを中心にアルバム制作がスタートします。

アルバム全10曲中、クリスの書き下ろし曲が7曲、ジェフ&ストーン書き下ろし1曲(「Pushin' Forward Back」)とジェフ単独書き下ろし2曲(「Times Of Trouble」「Four Walled World」)という構成で、歌詞はすべてクリスによるもの。ブルースやサイケデリックロックをベースにしたそのサウンドは、ある意味ではSOUNDGARDEN的でもありPEARL JAM的でもある。さらには、ジェフ&ストーンがいることでMOTHER LOVE BONE的でもある、と。でも、SOUNDGARDENやPEARL JAM、さらにはMOTHER LOVE BONEそのものといった印象を受けることもなく、結果として3者のよいとこ取りで収まっているのが興味深いのではないでしょうか。そういった意味では、ここで展開されているサウンドってのちに一大ムーブメントを巻き起こすグランジの範疇に含まれるものと言えるのかもしれません。

SOUNDGARDENのようにBLACK SABBATHLED ZEPPELIN的オールドスクール・ハードロック色は薄く、どちらかといえばPEARL JAMがのちにデビューアルバム『TEN』(1991年)で展開するオーソドックスな土着的ロックの色が強い。なのに、「Reach Down」みたいに11分以上におよぶジャムセッション的長尺ドローンナンバーがあったりするから面白いんですよね。SOUNDGARDEN的な尖った要素は薄く、クリスのダイナミックなボーカルをおおらかでオーソドックスなUSハードロックに乗せてみたらこうなりましたという、ある意味ではクリスのプレ・ソロアルバムと言えなくもないのかな。その作品で、デビュー前のエディ・ヴェダーも「Hunger Strike」で歌声を聞かせていたりするのは、今思うと非常に貴重なコラボレーションだなと思わずにはいられません(30年近く経った今の目線だと、マットがPEARL JAM入りしたことで、「PEARL JAM feat.クリス・コーネル」にも見えてしまうしね)。

本作はリリース当初こそあまり話題になりませんでしたが、1991年後半……PEARL JAMが『TEN』を、SOUNDGARDENが『BADMOTORFINGER』(1991年)をそれぞれ発表し、1992年にかけてじわじわとヒットを飛ばすことで本作もチャートを急浮上。「Hunger Strike」や「Say Hello 2 Heaven」のラジオヒットも手伝って、アルバムは全米5位という好記録を残しています。

にしても、この時期のボーカリストとしてのクリス・コーネルの神がかりっぷりは、飛び抜けたものがありますよね。僕はリリース当時、ポニーキャニオン盤を購入していたものの、当初はそこまで真剣に聴き込めていなくて。ところが、『TEN』や『BADMOTORFINGER』リリース後にクリスのボーカルやPJのカッコよさにヤラれてから聴き返したら、「もっと早く気づけよ……」ってくらい本作の魅力にどっぷりハマッてしまったくちなんです。グランジという文化を語る上でも、そしてシアトル界隈の当時の人間関係を知る上でも本作は絶対に欠かせない1枚。リリースから30年近く経った2020年に聴いても、まったく色褪せない傑作です。

なお、本作は2016年秋に発売25周年を記念して、別ミックスやデモ音源を含むデラックス・エディションも発売。こちらはストリーミングなどでも手軽に聴くことができます。デモ音源はスタジオライブ的な生々しさが強く、ただでさえ正式音源の少ないこのプロジェクトの真の顔を見極める上では非常に貴重と言えるでしょう。まあ、ビギナーはまずアルバム本編をじっくり聴きこんで、そのあとにデラックス版の追加音源に触れることをオススメします。

 


▼TEMPLE OF THE DOG『TEMPLE OF THE DOG』
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2020年10月23日 (金)

ARCHITECTS『ALL OUR GODS HAVE ABANDONED US』(2016)

2016年5月27日にリリースされたARCHITECTSの7thアルバム。日本盤未発売。

前作『LOST FOREVER // LOST TOGETHER』(2014年)からEpitaph Recordsへと移籍し、過去最高の全英16位という好記録を残し、アメリカでも初のTOP200入り(最高125位)を果たしたARCHITECTS。そんな大成功を収めた同作から2年2ヶ月というスパンで届けられた今作は、引き続きヘンリック・ウッド&フレドリック・ノルドストロームのコンビがプロでプロデュースを手がけた、前作の延長線上にある1枚に仕上がっています。

ジェントにも通ずる複雑なリフワークやリズムの刻み方は相変わらずですし、適度にフィーチャーされたデジタルテイストも味付けとして良い方向に作用している。さらに、スクリームとメロウなボーカルパートのバランスも絶妙な配分で、オープニングの「Nihilist」からフルスロットルで飛ばしまくっています。かと思えば、「Downfall」のようにエモーショナルさが際立つ楽曲も存在し、カオティックなメタルコアを好むリスナーもメロディアスなテイストを好むリスナーも満足させるだけの完成を誇る内容だと断言できるでしょう。

とにかく、リズムの取り方、刻み方が気持ちよく、ザクザクと細かく切り刻む(ドラムがツーバス踏みまくる)ビートもあれば、壮大なスケール感を持つビッグなビートも含まれている。その組み合わせ方/構築方法のオリジナリティが今作でほぼ確立され、ARCHITECTSというバンドがほかのメタルコアバンドの追随を許さない唯一無二の存在へと成長したことが、この1枚からも伺えます。

ARCHITECTSはアルバムごとに大きなテーマが用意されており、そのテーマをなぞった歌詞が各曲に綴られています。今作の大きなテーマは「世界的な怒りと幻滅」であり、このアルバムこそがARCHITECTSから現代社会に向けたステートメントであると。攻撃的でヘヴィなサウンド&アンサンブル、それと同じくらいの悲しみや失望が伝わるメロディはARCHITECTS史上もっともダークなものと言えるでしょう。しかし、その質感が妙に気持ちよく響くのは、彼らが我々と同じく痛みや悲しみを抱えているから。それがダイレクトに刺さるんだけど、痛みが快楽へと昇華されていく。この感覚、ハマったら抜け出せないものがあり、気づけばARCHITECTSというバンドの虜になっているはずです(かくいう僕も前作で彼らにハマり、現在に至ります)。

本作リリースから3ヶ月後の8月20日、3年以上にわたりガンと戦ってきたトム・サール(G)が逝去。後付けですが、この怒りや痛み、悲しみはトムのものであり、彼を支えるバンドメンバーのものでもあったんだなと……そして、その痛みと苦しみ、悲しみは次作『HOLY HELL』(2018年)でクライマックスを迎えることになります。

 


▼ARCHITECTS『ALL OUR GODS HAVE ABANDONED US』
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2020年9月 3日 (木)

ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.1』(2016)

2016年4月にリリースされたエース・フレーリーのカバーアルバム。スタジオ作品としては通算7作目のソロアルバムとなります。

本作はエースに多大な影響を与えてきたアーティストたち(CREAMTHE ROLLING STONESジミ・ヘンドリクスFREETHIN LIZZYLED ZEPPELIN、THE TROGGS、STEPPENWOLF、THE KINKSと無難なセレクト)の名曲に加え、KISS時代の楽曲も3曲収録。自身が作詞作曲した「Parasite」および「Cold Gin」(ともにジーン・シモンズVo曲)はわかりますが、彼がレコーディングにほぼ関わっていない『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)から「Rock And Roll Hell」(ジーン、ブライアン・アダムス、ジム・ヴァランス作)をセレクトしているのには思わず「?」となってしまいました(苦笑)。

全12曲中11曲でエースがリードボーカルを担当しており、「White Room」と「Bring It On Home」ではドラマーのスコット・クーガン(L.A. GUNS、ex. BRIDES OF DESTRUCTIONなど)がコ・リードボーカルを披露しています。エースのボーカルは今さら述べるまでもなく(笑)、味わい深いヘタウマぶりで、もはや安定感すら漂っています。うん、もうこれはこれでアリだし、これじゃなきゃいかんわな。

で、本作の注目点はもうひとつ、多彩なゲスト陣が挙げられると思うのです。先に述べたボーカル曲のうち、エースが歌っていない「Fire And Water」ではKISS時代の盟友ポール・スタンレーが参加。なにやら最初はジーンに声をかけたんだけどスルーされ(笑)、続いてポールに声をかけたらOKをもらえたんだとか。かわいそうだけど(苦笑)、結果いいコラボレーションが楽しめたので良しとしましょう(その後、ジーンは次作『SPACEMAN』にソングライティング&ベースで1曲参加しているので、めでたしめでたし)。

このほかにもスラッシュGUNS N' ROSES)が「Emerald」でエースとツインリードを披露し、リタ・フォードは「Wild Thing」でツインボーカル&リードギター、ジョン・5(ROB ZOMBIE)は「Spanish Castle Magic」と「Parasite」でリードギター、マイク・マクレディ(PEARL JAM)は「Cold Gin」でギターソロを聴かせてくれます。「Emerald」は意外とエースのボーカルがハマっているのと、スラッシュが良い仕事をしてくれていることで、個人的にもベストテイクかな。KISSナンバーの数々はさすがにボーカル含め小慣れた感強し(笑)。そんな中で、やはり「Rock And Roll Hell」だけはジーンのクセの強さが脳裏に焼き付いているので、ちょっとした違和感が。でも、慣れると悪くないですよ(実はギターソロがなかなかエースらしさ満載で、良テイクではないかと)。

今年9月にはカバー集第2弾『ORIGINS VOL.2』のリリースも控えており、すでに「Space Truckin'」(DEEP PURPLE)が公開中。こちらも楽しみにしております。

 


▼ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.1』
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2020年5月22日 (金)

WEEZER『WEEZER (WHITE ALBUM)』(2016)

2016年4月初頭にリリースされたWEEZERの10thアルバム。

セルフタイトルアルバムはこれまで1stアルバム(1994年)3rdアルバム(2001年)、6thアルバム(2008年)と3作発表しており、それぞれジャケットのメインカラーから『BLUE ALBUM』、『GREEN ALBUM』、『RED ALBUM』の愛称で親しまれてきましたが、赤盤から8年を経てついに白盤(『WHITE ALBUM』)の登場です。ここまでセルフタイトルを多用するメジャーバンドも少ないですよね。

さて、本作の内容ですが……アルバムカラーとは一切関係なく(笑)、いつもどおりのWEEZER節前回のパワーポップアルバムに仕上がっています。前作『EVERYTHING WILL BE ALRIGHT IN THE END』(2014年)は要所要所にフックが用意された、なかなかトリッキーながらも彼ららしい1枚で好印象でしたが、それと比べると本作は若干ストレートすぎるかな? むしろ、ポップ色/甘味料を多めに使用することで、ジャケットの白とは相反して意外とカラフルな仕上がりではないかと思います。

オープニングの「California Kids」や「(Girl We Got A) Good Thing」などのポップ感は、どこかTHE BEACH BOYSあたりにも通ずるものがあり、これはジャケットにビーチで撮影した写真を用いているから……なんて深読みもしたくなりますが(笑)。まあ、たまたまでしょうね。また、シングルカットもされた「Thank God For Girls」などはモダンな味付けも含まれており、適度な“今”感を提示。このへんのカラフルさはさすがの一言です。

かと思えば、「Do You Wanna Get High?」のような泣き虫ロックナンバー、豪快なサウンドの「King Of The World」や「L.A. Girlz」みたいに初期の彼らが好きな層にもアピールする定番スタイルもしっかり用意されている。先のTHE BEACH BOYS的アプローチにしろ、もちろんこれまでも表出していた要素のひとつであるわけで、要するにすべてにおいて“WEEZERらしさ”から一歩もはみ出すことなく、リスナーが求めるものを的確に提供してくれる。まさに教科書的な1枚と言えるでしょう。

だからこそ、前作にはあった刺激という点においてはちょっと物足りなさも感じる。全10曲で34分という古き良き時代のレコード的コンパクトさと相まって、何度か聴いているうちに「もういいかな?」と思えてしまうこともある、そんな平均点的な1枚でもあるのかなと思いました。もちろん、出来は非常に良いですし、たまに聴くと「あ、やっぱり良いね」と感じるのですが、長きにわたり飽きずに楽しめる傑作とはちょっと違うのかな。

そういう作品のあとだったからこそ、続く11thアルバム『PACIFIC DAYTREAM』(2017年)『BLACK ALBUM』(2019年)の変化には思いっきり刺激を受けたわけですが。要は、この振れ幅こそがWEEZERなんでしょうね。

 


▼WEEZER『WEEZER (WHITE ALBUM)』
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2020年3月19日 (木)

WARDRUNA『RUNALJOD - RAGNAROK』(2016)

2016年10月にリリースされたWARDRUNAの3rdアルバム。本作が日本デビューアルバムとなっており、海外から1年半遅れの2018年3月に満を辞して発表さてました。

WARDRUNAはノルウェーのベルゲンを拠点とするバンド/ユニットで、元GORGOROTHのドラマーだったアイナル・セルヴィク(GORGOROTH時代はクヴィトラフンと名乗っていた)を中心に2003年に結成。自身の音楽ルーツに目覚めたアイナルが、土着的民謡や北欧神話などの伝承に触発されたことを機に、ブラックメタルの対極にあるトラッドフォークやゴシック、アンビエントといった“静”のスタイルで独自の音楽を構築しています。

アイナルはボーカルやドラムのほかにターゲルハルパ(擦弦楽器)、クラヴィクリラ(小型の竪琴)、ブッケホルン(角笛)、ルール(細長い管楽器)といった古楽器を多用。現在は彼の他に女性ボーカルのリンディ=ファイ・ヘラ、ルールやホルン、フルート、アイス・パーカッション奏者のエイリッフ・グンダーゼン、アルネ・サンヴォル(Vo)、HCダルガード(Vo)、ヒェル・ブラーテン(Vo)というメンバーが在籍しています。

本作はデビューアルバム『RUNALJOD - GAP VAR GINNUNGA』(2009年)から始まった、「創生」「生長」「終末」というサイクルを描く三部作の最終章にあたるもの。前作『RUNALJOD - YGGDRASIL』(2013年)まで在籍したガァールことクリスチャン・アイヴィン・エスペダル(Vo/ex. GORGOROTH)脱退を経て、1stアルバムから7年、結成から13年にてついに最初のコンセプトが完結することになります。

先に書いたように、ブラックメタル的な“動”の要素は皆無で、むしろそのサブジャンルとも言えるダークフォークに属する密室感の強い土着的なサウンドと、宗教音楽のような(言い方は失礼ですが)不気味なミニマルサウンドが交差する、非常にクセの強い楽曲が並んでいます。ドラムというよりもパーカッションをメインに使ったリズムセクションが土着感をより強め、パターン化されたフレーズをループすることで生み出される不思議な高揚感が聴き手にトリップを誘う。そういったところにも密教的な危うさが感じられるのではないでしょうか。

また、古ノルド語によるボーカルもまるで何かの神様(善の神か、あるいは悪霊か)を降臨させる呪文のようにも聞こえ、聴き手の情緒を不安に陥れる。だけど、なぜか聴くことをやめられない不思議な魅力が強い……そう、気づけばこの音色/ハーモニー/プリミティブなリズムに魅了されている自分がいるのです。

メタルの要素は皆無ですが、MYRKURなどにも通ずる魅力を持つアーティストだけに、メタルから派生したひとつの進化形と捉えて楽しむのもありかもしれません。

なお、彼らは昨年新たにSony Music / Columbia Recordsとメジャー契約。今年6月には通算5作目のアルバム『KVITRAVN』をリリース予定です。4作目『SKALD』(2018年)がほぼアイナルのソロアルバム形態だったので、三部作とソロスタイルを経たWARDRUNAが新たにどんなサウンドスケープを構築するのか、今から楽しみでなりません。

 


▼WARDRUNA『RUNALJOD - RAGNAROK』
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2020年2月29日 (土)

DIZZY MIZZ LIZZY『FORWARD IN REVERSE』(2016)

2016年4月末にリリースされたDIZZY MIZZ LIZZYの3rdアルバム。日本盤は海外よりも2週間先行で発表されています。

1996年5月の2ndアルバム『ROTATOR』を経て、1998年にはバンド解散を発表したDIZZY MIZZ LIZZY。以降はフロントマンのティム・クリステンセン(Vo, G)がソロで活動を続けておりましたが、2009〜2010年の期間限定で再結成を遂げ、再来日公演も実現しております。そして、2014年には期間を設けない本格的な再結成を発表。パーマネントな活動再開を遂げたことで、この新作制作も実現したわけです。

前作『ROTATOR』からまるまる20年を経て届けられた新作ですが、そんな長期間のインターバルがあったことを感じさせないくらいに、本作には『ROTATOR』からの連続性を感じさせるテイストが含まれています。と同時に、ティムがソロ活動で経験した音楽的成長もしっかり落とし込まれており、単なる“焼き直し”で終わらないバンドとしての進化も感じられる1枚に仕上がっています。

同じメンバー、同じソングライターが再びDIZZY MIZZ LIZZY名義で新作を作るわけですから、そこには1stアルバム『DIZZY MIZZ LIZZY』(1994年)や続く『ROTATOR』のテイストが散りばめられているのは当然の結果。むしろ、ティムがこのシンプルなバンド編成でテクニカルかつハードなロックを奏でれば、それは自然とDIZZY MIZZ LIZZYの音になる。ここに関しては、最初の再結成で過去の楽曲を何度も演奏しているので、自然とそういった身に付いたものが表出した結果と言えるでしょう。「そう、DIZZY MIZZ LIZZYってこうだよね」と。

そんな彼ららしい要素は、冒頭の「Forward In Reverse」や「Terrified In Paradise」といったパンチの効いた楽曲から感じ取ることができるはず。ただ、もちろんこれらは過去の焼き直しではなく、『ROTATOR』から進化・成長したDIZZY MIZZ LIZZYの姿も浮き彫りにしている。そして、「Something So Familiar」のような穏やかな楽曲も過去のDIZZY MIZZ LIZZYにありそうと言えば確かにそれっぽいものの、このへんはティムのソロ活動の延長線上にある楽曲なのかな。そういった経験がしっかりバンドにも持ち込まれたこの曲は、個人的に「ティムにとってDIZZY MIZZ LIZZYとソロ活動は地続き」という事実を再認識するよいきっかけになりました。うん、本当にいい曲。

「Love At Second Sight」や「Made To Believe」のような“らしい”アンサンブルの楽曲が中盤に置かれているのも、興味深いポイントかな。前半で“らしさ”よりも“新しさ”を強調した楽曲を用意し(アルバムを「Phlying Pharaoh」というインスト曲から始めるあたりも、まさにそこだと思う)、中盤に過去を彷彿とさせる楽曲を並べ、アルバムの流れにワンクッション置く単尺曲「Frey」を経てヘヴィな「Mindgasm」から再び新しいDIZZY MIZZ LIZZYを提示する。この「Frey」「Mindgasm」という2つのインスト構成も、ミュージシャンとしての20年分の成長をまとめて落とし込んだような力作で、個人的にはアルバム後半のハイライトだと思っています。

そこから「Fly Above The Rader」「I Would If I Could But I Can't」とガッツのある楽曲が続き、ラストをムーディかつドラマチックな長尺曲「Say It To Me Anyway」で締めくくる。完璧なまでに“古き良き時代の、アルバムらしいアルバム”と断言できる仕上がりです。

ここまでの力作を携えて本格復活したDIZZY MIZZY LIZZY。まもなく4年ぶりの新作『ALTER ECHO』をドロップしますが、こちらも『FORWARD IN REVERSE』以上に気合いの入った“ミュージシャンズ・ミュージシャン”らしい傑作(ひと足先に聴かせてもらいました)。90年代の彼らこそベストと過去にしがみつくことを否定しませんが、だからといって今を否定するのはナンセンス。こんなに時代に合った(と同時に、時代の流れを無視した)最高な作品を無視することは、罪以外の何ものでもありません。どうか、もっといろんなところに行き届きますように。

 


▼DIZZY MIZZ LIZZY『FORWARD IN REVERSE』
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