2017/04/21

SUICIDAL TENDENCIES『WORLD GONE MAD』(2016)

マイク・ミューア(Vo)率いるアメリカのクロスオーバー/ハードコアバンドの、通算12枚目となるスタジオオリジナルアルバム。実は彼らの新作を聴くのはずいぶん久しぶりのことで、振り返ればそれこそ90年代前半以来かも……と気づかされるわけです。そうそう、ロッキー・ジョージ&マイク・クラークのツインギター編成で、今ではMETALLICAの一員としておなじみのロバート・トゥルージロ(B)なんかが在籍していた頃です。当時はハードコアとスラッシュメタルの接近&融合を“クロスオーバー”なんて括りで呼んでいましたが、一時のSUICIDAL TENDENCIESはそのクロスオーバーさえ飛び越えて“まんまヘヴィメタル”みたいなことをやってましたけどね。

そんな彼らもすでに結成から30年以上を経たベテランバンド。オリジナルメンバーはマイク以外残っておらず、90年代半ばの再結成から在籍のディーン・プレザンツ(G)以外はかなり入れ替わっています。本作の制作に際してもリズムギター、ベース、ドラムを一新。新ドラマーにはなんと、元SLAYERのデイヴ・ロンバードが加わり、発表当時大きな話題となりました。SLAYER黄金期の土台を支えたデイヴがSUICIDAL TENDENCIESに加わると、どんなプレイを聞かせてくれるのか、と……。

さて、完成したこの『WORLD GONE MAD』というアルバム。オープングの「Clap Like Ozzy」というメタルファンならクスッとしてしまうタイトルの疾走ハードコアチューンからスタートします。スラッシュともハードコアとも受け取れるこの楽曲こそ、まさにクロスオーバーと呼ぶにふさわしい1曲。その後もヘヴィなミドルチューン「The New Degeneration」、どこかジャジーなテイストも含む「Living For Life」、バラード風ミドルヘヴィサウンドに泣きメロギターソロとラップ調ボーカルが乗る「Get Your Fight On!」(曲中盤でアップテンポになる展開はメタルそのもの)などバラエティに富んだ楽曲が続きます。

全体的にドラムがかなり前に出ている印象があるものの、かといってSLAYER時代ほど派手さはない。また新加入のベーシスト、ラー・ディアスのプレイもスラップを多用した派手なもので、デイヴとの相性も抜群。そこに派手に暴れまくるディーンのギターソロが加わると、不思議と我々がよく知る「80年代末から90年代前半のSUICIDAL TENDENCIES」とイメージがオーバーラップするのです。かといって、楽曲自体にはあの頃みたいに大袈裟な展開やアレンジは皆無なのですが。不思議です。

初期の作品に通ずるものがありつつも、しっかりメタル期とオーバラップする部分もある。なのにそれらの時期とは完全に一致するわけではなく、新しさ(今までのSUICIDAL TENDENCIESにはなかったような魅力)も感じられる。デイヴ・ロンバードを迎えたことでマイク・ミューアの心に再び火がついたのかもしれませんね。個人的にはハードコアやパンクリスナーよりもメタルファンにこそ触れてほしい1枚です。



▼SUICIDAL TENDENCIES『WORLD GONE MAD』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 04 21 12:00 午前 [2016年の作品, Suicidal Tendencies] | 固定リンク

2017/04/19

THE WiLDHEARTS『NEVER OUTDRUNK, NEVER OUTSUNG: PHUQ LIVE』(2016)

本作はTHE WiLDHEARTSが1995年に発表した通算2作目のオリジナルアルバム『P.H.U.Q.』のリリース20周年を記念して、2015年9月に行われた再現ツアーからイギリス国内での複数公演からの音源をコンパイルした2枚組ライブアルバムです。近年はこういったアニバーサリーツアーで年に1回ツアーを行うのみの活動にとどまっているTHE WiLDHEARTSですが、それでもひと昔前や90年代を考えれば「新曲は出さないけどツアーはやってくれる」だけありがたいのかも……と、最近はこちら側も歳をとったせいで(苦笑)、彼らに対して優しく接することができるようになりました。あははは。

ま、冗談はさておき。このツアーの一環でここ日本にも2015年11月に来日しましたが、私自身チケットを取っておきながら体調不良(耳の病気で大音量を禁じられてました)のため行くことができず。彼らのアルバム中、もっとも好きな作品を完全再現するライブだけに足を運びたかったんですけどね。そういう意味ではこのアルバムのリリースは非常にありがたかったです。

お聴きいただけばわかるように、本作はディスク1(14曲)がアルバム『P.H.U.Q.』を頭の「I Wanna Go Where The People Go」からラスト(日本盤ボーナストラック除く)「Getting It」までを完全収録。ディスク2(6曲)はボーナスディスクという扱いで、ライブ当日にアンコールとして披露された5曲(トラック1はディスク1エンディングから続く「Don't Worry About Me」大合唱なので、実質5曲となります)が収められています。アンコールは『P.H.U.Q.』時期に限定されることなく、再結成後の「Stormy In The North, Karma In The South」といった近年のライブ定番曲、「Weekend」「29 X The Pain」といった懐かしのカップリング曲も含まれており、ファンには嬉しいセットリストとなっております。

また、ディスク1には「Jonesing For Jones」の後に、続くアップチューン「Woah Shit, You Got Through」のイントロ的な小楽曲「Up Your Arse You Fucking Cunt」も追加。ライブの流れを途切らせることなく挿入された遊び心といったところでしょうか、単なる完全再現で終わらせないあたりも彼らなりのこだわりというかジンジャー(Vo, G)のひねくれっぷりが伝わってきます。

さて、改めて『P.H.U.Q.』というアルバムをこういう形で聴くと、初期のメタル+パワーポップ感とその後『ENDLESS, NAMELESS』(1997年)で見せたノイジーでラウド、ハードコアな路線との中間に位置する橋渡し的作品だったんだなと気づかされます。もちろんその前後には不幸なアルバム『FISHING FOR LUCKIES』(1994年)の存在があるわけで、そこを含めての『P.H.U.Q.』というのは非常に理解できるのですが、前半のパワーポップ感と後半で見せるシリアスさとの落差には改めて驚かされます。まぁこのへんはジンジャー自身の当時置かれた状況や精神状態(ドラッグや心の病など含め)が大きく影響していたことは理解できるわけですが、それにしてもこのバランス感は本当に絶妙だったなと。あの時期でなければ作れなかった1枚だったんだなと実感させられました。

曲単位では再結成後も演奏される機会のある楽曲がいくつかあるものの、このタイミングで20年ぶりに披露された曲、あるいは当時ライブでも演奏されることのなかった楽曲などもあり、こういったアルバム再現ライブならではの魅力もあるこの作品。バンドのファンのみならず、これからTHE WiLDHEARTSを聴いてみようと思っている初心者にもぜひ聴いてほしいライブアルバムです。そう、もし聴くならあわせてスタジオ盤の『P.H.U.Q.』もチェックすると、なお一層楽しめると思いますよ。



▼THE WiLDHEARTS『NEVER OUTDRUNK, NEVER OUTSUNG: PHUQ LIVE』
(amazon:海外盤2CD

投稿: 2017 04 19 12:00 午前 [2016年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

2017/04/15

THE STRUTS『EVERYBODY WANTS』(2016)

2010年代後半のUKロック(主にHR/HM寄り)を牽引していくであろうバンド、THE STRUTSの記念すべきデビューアルバム。ここ日本では昨年8月の夏フェス『SUMMER SONIC 16』に国内デビュー前に突如出演したことでその名を知らしめたかと思います。今回紹介する1stアルバム『EVERYBODY WANTS』もすでに昨年春先から輸入盤で出回っていたので、そこで知ったという人もいるかもしれません。または、僕と同じようにたまたま観たMVに登場する“そのルックスと声・歌唱法がフレディ・マーキュリーっぽいフロントマン”ことルーク・スピラーに惹かれた人も少なくないはずです。

実は彼らのデビュー作、本国イギリスでは2014年7月に一度発売されています。しかし、リリース元の変更(Virgin EMI→Interscope)を経て、本国から国外(アメリカ)に向けたプロモーション展開にあわせて2016年3月に新曲を加えた構成で再発売。これが現在出回っている本作のベースになるものです。また、日本盤のみ今年初頭の単独来日公演にあわせて、同年2月に遅れてリリースされたこともあって、さらに新曲や未発表テイクなどを加えた内容。現行の輸入盤が13曲入り、日本盤はそこに5曲加えた全18曲入りなので、これから購入するなら輸入盤よりもちょっとだけお高い日本盤をオススメします。ジャケットは正直輸入盤のほうが好きですけどね。

さて、本作の内容です。先にルークのことを“そのルックスと声・歌唱法がフレディ・マーキュリーっぽいフロントマン”と例えましたが、楽曲自体もQUEENや古き良き時代のブリティッシュロックを現代的に解釈した楽曲がずらりと並びます。どことなく初期のQUEENみたいなロックンロール「Roll Up」やドラマチックなミディアムチューン「Mary Go Round」はまさにその好例。もしかしたら前者を聴いてTHE DARKNESSを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、こちらのバンドのほうがよりポップ色が強いので親しみやすいかもしれません。

また、シングルカットもされた「Could Have Been Me」「Kiss This」「Put Your Money On Me」にはブリットポップ以降のカラーも見られ、単なるハードロックでは片付けられない魅力が満載。黒っぽいロック「Dirty Sexy Money」あたりもデジタルテイストを加えたアレンジを施すことで妙に親しみやすくなっているし、「The Ol' Switcheroo」みたいにブラスやピアノを加えた強いビートのポップチューンにはBAY CITY ROLLERSを重ねたくなるし。ボーカルがやたらと前時代的(ルックス、歌唱法含め)なため、もしかしたらじっくり聴く前に引いてしまっている方もいるかもしれませんが、完全に食わず嫌いですよ。むしろ本作はHR/HMを通過していない、80年代〜90年代のブリティッシュロック/ブリットポップで青春時代を過ごした人にこそ聴いてもらいたい。と同時に、その頃をリアルタイムで知らない若い世代には、純粋にポップで親しみやすい楽曲満載のアルバムとして楽しむことができる。そんな多くの可能性を秘めた1枚だと思います。

再発続きで最初のリリースからすでに3年近く経過してしまってますが、今年8月には『SUMMER SONIC 17』での再来日が早くも決まりましたし、アメリカでも本格的な成功を収めたいはずなので、ぜひ年内に強烈な2ndアルバムを発表してくれないかな……と勝手に思ってます。

そういや自分、まだ生で観たことないんだよね。今年はサマソニで観ておきたいな。



▼THE STRUTS『EVERYBODY WANTS』
(amazon:海外盤CD


▼THE STRUTS『EVERYBODY WANTS』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2017 04 15 12:00 午前 [2016年の作品, Struts, The] | 固定リンク

2017/03/23

ENUFF Z'NUFF『CLOWNS LOUNGE』(2016)

また随分と微妙な作品をぶっこんできたなぁ……というのが正直な感想。まぁそこも含めてENUFF Z'NUFFらしいっちゃあらしいんですが。

日本では2009年、海外では2010年に発表された前作『DISSONANCE』から実に7年ぶりに発表された本作『CLOWNS LOUNGE』は、1988〜89年頃に制作されたデモ音源をベースに、2004年に制作されつつも未発表だった楽曲、そして新たに2016年に録音された楽曲を含む、とても“ニュー”アルバムとは呼べない代物。もちろんZ'NUFFにはこれまでにも未発表音源をまとめたアルバムはいくつか発表されているので、これもその一環と考えれば全然受け入れられるんだけど……要は、現在バンドには往年のフロントマン、ドニー・ヴィ(Vo, G)が在籍していないのに、その彼が歌う楽曲が中心のアルバムを新作として発表するのはどうなの?という疑問が残るわけです。こればかりは、過去のケースとはまったく異なりますからね。

しかも、1988〜89年というと1989年のメジャーデビュー作『ENUFF Z'NUFF』発表前夜。メンバーもドニーのほか、現在もバンドに在籍するチップ・ズナフ(Vo, B)、2004年に亡くなったデレク・フリーゴ(G)、バンド脱退後にヴィンス・ニールのソロプロジェクトに加わるヴィッキー・フォックス(Dr)という懐かしい布陣で、演奏スタイルも中〜後期(1990年代後半以降)とは異なる“もろに”ハードロックスタイル。楽曲の質感もその系統ですが、メロディが持つポップさ、普遍性はのちの彼らにも通ずる……というか、この時点ですでに一貫していたんだなと気づかされます。そう、“あの頃のENUFF Z'NUFF”が好きな人にはうってつけの1枚なのですよ(ただし、あくまでデモ音源がベースなので、それなりの音質。そこにこだわる人はご注意を)。

しかし、そこに現体制……チップがボーカルを務める楽曲も含まれていて、それがしらじらしくアルバムのオープニングを飾るんだから、なんとも言えない気持ち悪さを冒頭から感じてしまうんです。過去の遺産(と、世の中的には言えないレベルかもしれないけど)を食い潰す、あるいは過去の名声に便乗する……ドニー時代を愛する自分からしたら、そう見えてしまうアルバムなんです。

そんな中、アルバム中盤に突如登場する「The Devil Of Shakespeare」。この曲のみ2004年の録音なんですが、ボーカルを担当するのが元WARRANTのジェイニー・レイン。彼も2011年にお亡くなりになってますし、そんなことを考えながら聴くとよりいたたまれない気持ちになってしまうのです(ちなみにリードギターはSTYXのジェイムズ・ヤングがプレイ)。

彼らも5月に開催されるL.A.メタル系フェス『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』で久々に来日。「あれ、L.A.関係あったっけ?」という疑問も残りますが、“ドニーがいないZ'NUFF”を観て現実を受け入れるしかないのでしょうか。いい曲がそれなりに多い本作を聴くたびに、モヤモヤした気持ちになってしまうのです。



▼ENUFF Z'NUFF『CLOWNS LOUNGE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 03 23 12:00 午前 [2016年の作品, Enuff Z' Nuff, Warrant] | 固定リンク

2017/03/21

METAL CHURCH『XI』(2016)

METAL CHURCHにマイク・ハウ(Vo)が復帰したと知ったときは、正直驚きました。デヴィッド・ウェインに続く二代目ボーカルとして3rdアルバム『BLESSING IN DISGUISE』(1989年)からメジャー落ちしての5thアルバム『HANGING IN THE BALANCE』(1993年)までの3作に参加し、1994年の脱退後は音楽業界から引退していたその人が、20年以上ぶりにシーンに復帰するのですから。しかも新作まで完成させてしまった……それが今回紹介する、2016年3月にリリースされた通算11作目のスタジオアルバム『XI』です。

僕自身METAL CHURCHをちゃんと聴き始めたのが『BLESSING IN DISGUISE』ですし、一番好きな作品が(賛否あるでしょうが)4枚目の『THE HUMAN FACTOR』(1991年)なので、この復帰にはもちろん喜んだのですが、同時に「20年もブランクがある人が再び表舞台に出ちゃっても大丈夫なのか?」という不安も多いにあったわけで。正直、デヴィッド・ウェインが再びMETAL CHURCHに復帰して以降の作品にそこまでの魅力を感じていなかった(主にボーカルパフォーマンス面で)ので、その不安はより強かったというのがありました。

しかし、いざ完成した本作『XI』を聴いて……「Reset」「Killing Your Time」の2曲に完全に打ちのめされました。いやいや、往年の輝きそのまんまやん、と。しかも、「Reset」でのハイトーンと凄みの効いたロウトーンのツインボーカルは鳥肌モノ。そうそう、この声この声!と膝を叩いたのは言うまでもありません。

僕が聴いていた80年代末〜90年代初頭に在籍したメンバーは、もはやマイク・ハウ以外誰もいません。バンドの創始者であるカート・ヴァンダーフーフ(G)はあの頃、ソングライティング面ではバンドに関わっていましたが表舞台には立っていませんでしたし。そういう意味では全盛期に関わったメンバーが2名はいるわけですが……それでも別モノ感が多少あるかな、同じバンド名だけど。

とはいえ、楽曲自体はファンがイメージするMETAL CHURCHにもっとも近い形ではないでしょうか。先に触れた冒頭2曲しかり、アコースティックギターを上手に取り入れたドラマチックな展開を持つ「No Tomorrow」「Signal Path」もいかにもだし、特に後者のイントロではかの「Badlands」(『BLESSING IN DISGUISE』収録)を思い浮かべてしまいましたしね。「Sky Falls In」や「Blow Your Mind」のダークさも、「Needle And Suture」の楽器隊が一丸となったザクザク感も、「Soul Eating Machine」のどこか日本のV系にも通ずる雰囲気も、すべてが懐かしく響く……そう、目新しさはどこにもありません。古くからのファンなら安心して楽しめる1枚でしょうし、当時を知らない世代には「古臭いけど、ボーカルの声が個性的だし、曲もパワーメタルっぽいし、いいんじゃない?」と少しは響く要素があるのかな……そう願っております。

唯一残念な点を挙げると、収録時間が長いこと。全12曲(ボーナストラック含む)と普通に考えれば多すぎるようには感じませんが、7分台の楽曲が2曲もあることからわかるように、1曲が比較的長いんです。その結果、約64分という結果に。後半に進むにつれて似たり寄ったりの楽曲がいくつか登場するので、そこはうまく絞ってほしかったな。そうすれば、アルバムとしてもっと締まった内容になったはずなので。そこだけが勿体ない。本作は“良い曲ばかりを詰め込めば良いアルバムになると、必ずしも言い切れない”というわかりやすい例かもしれませんね。



▼METAL CHURCH『XI』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 03 21 12:00 午前 [2016年の作品, Metal Church] | 固定リンク

2017/03/06

ALTER BRIDGE『THE LAST HERO』(2016)

アメリカのハードロックバンドALTER BRIDGEが2016年10月にリリースした、前作『FORTRESS』(2013年)から3年ぶり通算5作目のアルバム。アメリカではデビュー作『ONE DAY REMAINDS』(2004年)以来のトップ10入り(8位)、イギリスでは過去最高の3位を記録するヒット作となりました。

ご存知のとおり、ALTER BRIDGEはマーク・トレモンティ(G)、スコット・フィリップス(Dr)、ブライアン・マーシャル(B)の元CREED組が新たなシンガーのマイルズ・ケネディ(Vo, G)を迎えて結成したバンド。2009年にはCREEDが再結成しており、マーク、スコット、ブライアンは2バンドを兼任。マイルズはGUNS N' ROSESのスラッシュ(G)がソロで動く際、活動をともにしていることでALTER BRIDGEに対しても何となく“二足のわらじ”が強くて、食指が動かなかった。だから、このアルバムで初めてALTER BRIDGEというバンドにちゃんと触れました。

いやぁ……カッコいいのなんのって……なんで今まで聴かなかったんだろうと本気で後悔してます。これ、自分の好きな要素しかないじゃないですか。本当、百聞は一見に如かずとはまさにこのこと。

CREEDはなんとなく通過しているし、特に嫌いなわけではなかったけどそこまで入れ込む感じでもなかった。スラッシュのソロは……まぁほら、アクセルじゃないしね、ってことでこちらもそこまで真剣になってなかった。だけど、これは……確かにCREED的な部分もあるんだけど、もっとスタジアムロック的な要素が強くて、しかもちゃんとモダンな要素も兼ね備えている。彼らを指して“グランジ以降の音”と揶揄する声もあるみたいだけど、そもそも90年代半ば以降に誕生したバンドはみんな“グランジ以降の音”を少なからず内包しているわけで。単に“グランジ以降の音”に理解がないってだけでそれを理由にALTER BRIDGEを批判するのは問題外だと思うんです。

そういう“グランジ以降の音”にネガティブな感情がまったくない人にとっては、このアルバムは“ゼロ年代以降のHR/HM”以外の何者でもない。誤解を恐れずに言えば、NICKELBACKとDISTURBEDの要素を兼ね備えた、まさに“ゼロ年代以降のHR/HM”に必要な存在だと思うのです。

ヘヴィだけど過剰にメロディアスでドラマチック。そのヘヴィさもモダンヘヴィネスの色合いと旧世代的な様式美の両方が備わっている。アメリカのハードロックバンドらしくミドルテンポの楽曲が中心で、中には壮大なパワーバラードもある。80年代のHR/HMを好きな人にも絶対に引っかかるポイントがあると思うんです。

きっとCREEDが苦手だった人って、そのサウンド以上にスコット・スタップ(Vo)……具体的に言えば、彼の声がエディ・ヴェダー(PEARL JAM)やスコット・ウェイランド(STONE TEMPLE PILOTS)に近い声質、歌唱法ってことでグランジっぽくて苦手意識を持ったんじゃないでしょうか。そう考えると、マイルズ・ケネディのボーカルってモロにHR/HMの声質&歌唱法ですもんね。だってスラッシュのもとでGUNS N' ROSESやVELVET REVOLVERの楽曲を歌ってもカッコいいわけで、それが妙に似合ってたんだから。“グランジ以降のシンガー”だけどそれだけじゃ終わらない、HR/HMシンガーとしての実力がしっかり兼ね備わっている。改めて納得です。

この曲がこうで、この曲はここがカッコいいと細かく書いてみたいところですが、このバンドに関しては僕が解説するよりも、まずはYouTubeなりストリーミングなりで実際に聴いて感じてほしい。僕がまさにそうだったように。



▼ALTER BRIDGE『THE LAST HERO』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 03 06 12:00 午前 [2016年の作品, Alter Bridge] | 固定リンク

2017/03/04

ANTHRAX『FOR ALL KINGS』(2016)

2016年2月にリリースされた、ジョーイ・ベラドナ(Vo)がバンドに復帰した前作『WORSHIP MUSIC』(2011年)以来4年半ぶり、ANTHRAXにとって通算11枚目のオリジナルアルバム。前作の全米12位を上回る7位という好成績を記録し、1993年の6thアルバム『SOUND OF WHITE NOISE』に次ぐ高順位作品となりました。

前作には「これぞANTHRAX!」と力説したくなるような、いわば3rd『AMONG THE LIVING』(1987年)前後のもっとも勢いに乗った時期のANTHRAXを思わせる楽曲が並んでいたことから、(またアルバム自体が8年ぶりという事実もあって)多くのメタルファンから大歓迎された1枚でした。その成功作をフォローアップする作品という意味でも、バンドにとってそれなりのプレッシャーがあったのではないかと思われますが、実際完成したアルバムを聴くと、むしろバンド側はそういったプレッシャーすらも楽しんでいたのではないかと思わせる、実に肩の力の抜けた王道ヘヴィメタルサウンドを楽しむことができます。

オープニングのインスト「Impaled」こそ仰々しさがあり、若干ANTHRAXらしくないなと思わせられますが、そこから間髪入れずに始まる「You Gotta Believe」はいつものANTHRAX節炸裂。途中、ちょっと無理やりっぽい展開が入るあたりも、往年の“らしさ”が感じられます。

そう、どの曲も実に“らしさ”満載なのですが……すべてを聴き終えたときに、意外とすらすら聴けてしまったことに戸惑うのも、また正直なところ。そう、「これ!」という引っ掛かりがあまり感じられなかったのです。それが先に書いた「実に肩の力の抜けた王道ヘヴィメタルサウンド」にもつながるのですが。

このバンドの場合、ともするとお遊びが過ぎて聴き手側がついていけなくなることも少なからあるのですが、今回の場合はそれの逆ケース……遊びが少なすぎて「あれっ、こんなもん?」と感じてしまう。力みすぎないのは決してマイナスではないのですが、今作で聴ける「過剰にメロディアス」な作風にそのスタンスは似合わないのではないか、と思うのです。

「Breathing Lightning」なんて、例えばジョン・ブッシュ時代に演奏していたとしたら、もうちょっとタイトで緊張感のある楽曲に仕上がっていたと思うんです。で、そのアウトロ「Breathing Out」が続くことで、さらに劇的な展開になったなずなのに……。

アルバムは中盤「Suzerain」「Evil Twin」あたりから若干盛り返し始めますが、どうにも煮え切らなさが残る。リズムのキレが悪いのか、それともベラドナのボーカルのせいなのか、はたまた……謎です。

決して悪くないし、1曲1曲を取り上げれば非常によくできた楽曲ばかり。90年代以降のANTHRAXの作品の中でも良曲が豊富な部類に入る作品だと思うんです。なのに、「これ!」という決定打に欠ける。もしかしたら、バンド内がかみ合っているようでかみ合っていないのかもしれない。いや、バンドとリスナー側(自分)がかみ合ってないのかも……このアルバムに心底のめり込めなかった理由は、このあたりにあるのかなと思っています。

リリースから1年経過して、改めて聴き返してみましたが、自分内の評価は変わらず。逆に時間の経過とともに評価が下がることもなく、急激に上がることもないという、非常に珍しい作品です。もしかしたらそれって、非常に稀ですごいことなのかもしれないですね。



▼ANTHRAX『FOR ALL KINGS』
(amazon:国内盤CD / 国内盤2CD / 海外盤CD / 海外盤2CD

投稿: 2017 03 04 12:00 午前 [2016年の作品, Anthrax] | 固定リンク

2017/02/25

GRAHAM BONNET BAND『THE BOOK』(2016)

RAINBOWやMICHAEL SCHENKER GROUP、ALCATRAZZ、IMPELLITTERIといったバンドを渡り歩いてきた孤高のシンガー、グラハム・ボネット。彼が近年結成したGRAHAM BONNET BANDの新作として、2016年秋にリリースされたのが本作『THE BOOK』です。

今作は2枚組仕様で、ディスク1にはコンラド・ペシナート(G)、ベス・エイミー・へヴンストーン(B)、マーク・ゾンダー(Dr)、そしてALCATRAZZ時代の盟友ジミー・ワルドー(Key)という現時点での最強布陣で制作されたオリジナル曲11曲を収録。オープニングトラック「Into The Night」での「そうそう、これこれ! こんなグラハム・ボネットが聴きたかった!」と膝を叩きなるような様式美HR/HMに筆頭される、グラハムがこれまで携わってきたバンドのカラーが至るところに散りばめられた、聴き応えのある1枚に仕上がっています。

グラハムのボーカルからは衰えはそれほど感じられず、これが昨年12月に69歳になったばかりのジジイの歌声かよ!?とただ驚くばかり。そしてコンラド・ペシナートのギタープレイも適度にクラシカルで適度にテクニカル、何よりも耳に残るフレーズをたくさん用意してくれるので、親しみやすいプレイヤーではないかと思います。

いやぁ、それにしてもここまで好き放題やっておいて、単なるセルフパロディで終わってないのはさすがだと思います。どれも聴いたことがあるような錯覚に陥るほどに“グラハムらしさ”に満ち溢れている、だけど正真正銘の新曲なんだから。確かに2016年に新たに生み出すような音楽ではないのかもしれないし、80年代からまったく進化していないと言ったらその通りだとも思う。けれど、こういう音楽をここまでストレートに表現できる稀有な存在だけに、彼には無駄にモダンなことに手を出さず、このまま可能な限り自己流のHR/HMを表現していってほしいです。だって「Into The Night」や「Dead Man Walking」みたいな疾走メタルチューンを絶唱できる、70代に手が届くシンガーなんてそうはいないんだからさ。

そしてディスク2。これがある意味問題作であり、人によってはメインディスクになるのかな(苦笑)。こちらはグラハムが過去に携わってきたバンドやソロ時代のヒット曲をGRAHAM BONNET BANDでセルフカバーしたもの。RAINBOW「Eyes Of The World」から始まり「All Night Long」などの代表曲、そしてソロシングル「Night Games」、MSGからは「Assault Attack」「Dancer」など、ALCATRAZZは「Island In The Sun」「God Blessed Video」など1st〜3rdアルバムから、IMPELLITTERIは「Stand In Line」がピックアップされています。

どの曲も基本的なアレンジはそのまま、ボーカルも変に歌メロを崩すことなく、スタジオテイクでの歌唱を軸に歌っています。肝心の演奏もオリジナルに忠実なパートが多く、特にギターのコンラド・ペシナートはリッチー・ブラックモアからマイケル・シェンカー、イングヴェイ・マルムスティーン、スティーヴ・ヴァイ、クリス・インペリテリと、どいつもこいつもクセが強いギタリストなのにしっかり再現&自身の個性を表出させているんだから、さすがとしか言いようがありません。

グラハムのファンや彼が在籍した上記のバンドのファンはもちろんのこと、RAINBOWからの流れにある様式美HR/HMにこれから触れてみようという人にも入門編としてオススメしたい作品集。ディスク2のみならずディスク1もしっかり楽しめたら、あなたも今日から立派なメタラーです。そして、せっかくなので3月に控えたGRAHAM BONNET BAND&ALCATRAZZの来日公演にも足を運んでみてはどうでしょう。



▼GRAHAM BONNET BAND『THE BOOK』
(amazon:国内盤2CD / 海外盤2CD

投稿: 2017 02 25 12:00 午前 [2016年の作品, Alcatrazz, Graham Bonnet, Impellitteri, Michael Schenker, Rainbow] | 固定リンク

2017/02/20

DEATH ANGEL『THE EVIL DIVIDE』(2016)

2016年5月にリリースされた約3年ぶり、通算8枚目のオリジナルアルバム。メンバーはマーク・オセグエダ(Vo)、ロブ・キャヴェスタニィ(G)という初期からの2人に、2000年代の再結成時から加わったテッド・アギュラー(G)、2009年に加入したデミアン・シッソン(B)&ウィル・キャロル(Dr)の計5人。この布陣ですでに3作目ということもあり、バンドとしてもかなり固まってきたタイミングでの新作かと思われます。

80〜90年代のアルバム3作はもちろん聴いてきたし、再結成後も4th『THE ART OF DYING』(2004年)、5th『KILLING SEASON』(2008年)は聴いていたんだけど、その後の2枚は完全にスルー。しかし、ここ最近の旧スラッシュ勢の盛り上がりを見て、このタイミングで最新作に手を出してみました。

ぶっちゃけこれ、最高じゃないですか? ファンの方々からしたら「何を今さら……」と思われることでしょう。いや、本当に申し訳ないです、なんでリリースタイミングに購入しなかったんだろうと後悔しているところです。

アルバムのオープニングにふさわしいキャッチーさと疾走感を兼ね備えたスラッシュナンバー「The Moth」を筆頭に、前曲のノリを引き継ぐ「Cause For Alarm」、エモみが強い「Lost」、曲中盤のインストパートのアレンジがエモーショナル&スリリングな「Father Of Lies」、再び狂ったように突き進む「Hell To Pay」と完璧な流れ。

後半も怪しげなリズム隊のアンサンブルから始まるミドルテンポの「It Can't Be This」、リフとドラムのユニゾン&ドライブ感が心地よい「Hatred United / United Hate」、首がもげるまでヘドバンしまくりたい「Breakaway」「The Electric Cell」(2曲とも歌に入るまでの構成が本当にカッコいい)、タイトなリズム感とメロウなサビが絶妙な「Let The Pieces Fall」と全10曲、約45分すんなり聴けてしまいます。

ちょっと前に取り上げたTESTAMENTの新作もそうでしたが、このアルバムでも大半の楽曲が4分台。最長でもラストナンバー「Let The Pieces Fall」の5:48なのですが、どの曲もぎっしり身が詰まったようなアレンジが施されていて、改めて「スラッシュは長けりゃいいってもんじゃない」と考えさせられます。変にバラード調になることもなく、無駄な展開は皆無。なのにどの曲もこれでもかというほどにいろんな要素が詰め込まれている。ベテランたちが何周もして、今ここに到達するという面白現象が2016年に起きているのは非常に興味深いと思います。

日本盤のみボーナストラックとしてTHE MISSIONのカバー「Wasteland」が追加されていますが、正直これナシで潔く終わる輸入盤のほうがベスト。直近2作を聴いてない僕ですが、本作は今まで聴いたDEATH ANGELのアルバムの中でベストと断言したいです。これ、生で聴いたら最高だろうなぁ……。



▼DEATH ANGEL『THE EVIL DIVIDE』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+DVD / 海外盤CD

投稿: 2017 02 20 12:00 午前 [2016年の作品, Death Angel] | 固定リンク

2017/02/11

LORDS OF BLACK『II』(2016)

2015年後半にRAINBOW復活が発表され、その参加メンバーがアナウンスされた際、誰もがそのボーカリストに注目したはずです。ロニー・ジェイムス・ディオ、グラハム・ボネット、ジョー・リン・ターナーという歴代の名ボーカリスト、そして90年代のその大役を担ったドゥギー・ホワイト。こういったシンガーたちと肩を並べるにふさわしい存在なのか、きっと古参ファンほどシビアに見ていたことでしょう。

選ばれたのは、チリ出身のロニー・ロメロというシンガー。スペインのヘヴィメタルバンドLORDS OF BLACKのフロントマンとして、当時アルバムを1枚発表していました。これによりロニーの名はもちろんのこと、当のLORDS OF BLACKにも注目が集まることになり、2016年春に2ndアルバム『II』が海外のみならず、ここ日本でもリリースされることとなったのでした。

名前がアナウンスされたとき、YouTubeでLORDS OF BLACKのMVをいくつか観たのですが、どこかディオっぽさもあるけど、それだけじゃない魅了も散見されて、若さゆえの可能性を大いに感じさせるシンガーだなと思っていました。がしかし、バンドの曲自体はそれほど印象に残らなかった(声のみに集中して、曲まで気が回らなかった)のも事実。

そんな中発表された本作『II』は、前作同様にメンバーのトニー・ヘルナンド(G)と現MASTERPLAN、元HELLOWEENのローランド・グラポウの共同プロデュース作品。クレジットを見ると8割近くの楽曲をトニーが作詞・作曲していることから、「現RAINBOWのボーカルが在籍するバンド」というより「トニーの才能が遺憾なく発揮されたバンド」と言ったほうが正解かもしれません。

楽曲やサウンドは哀愁が強くにじみ出た、正統派HR/HMというイメージ。オープニングのインストからなだれ込むパワフルな「Merciless」を筆頭に、時にスピート&パワーで、時に泣きメロでぐいぐい引っ張るテクニカルなギター、パワー一辺倒ではなくしっかり聴かせるなど思っていた以上に器用なボーカルを軸に進行していきます。どの曲にも味つけ程度にシンセやピアノが入っており、それらがさらに楽曲にカラフルさを加えることに成功しています。ぶっちゃけ、彼らは速い曲よりもミディアムでじっくり聴かせる曲のほうがボーカルもギターも映えるんじゃないかと。9分もある大作「Ghost Of You」や、「Cry No More」「Insane」タイプの曲をもうちょっと聴いてみたいと思いました。もうこのへんは好みの問題かもしれませんけどね。

本作にはボーナストラックとして、RAINBOW「Lady Of The Lake」のカバー、そして日本盤のみQUEEN「Innuendo」カバーとアルバム収録曲「Insane」のピアノバージョンが追加収録されているのですが、「Lady Of The Lake」は完全にロニーのRAINBOW入りを意識したものでしょう。厳しめの古参ファンに向けて、ひと足先にご挨拶といったところでしょうか。「Innuendo」も悪くないですが、それよりも「Insane」ピアノバージョンでの無駄な音をそぎ落としてじっくり聴けるロニーのボーカルに注目してほしいです。

昨年秋の『LOUD PARK 2016』で初来日が実現したものの、残念ながら足を運ぶことができず未見のまま。次こそは……と思っているのですが、それよりも今年こそはRAINBOWで……というのは贅沢なお願いでしょうか(苦笑)。



▼LORDS OF BLACK『II』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 02 11 12:00 午前 [2016年の作品, Lords of Black, Rainbow] | 固定リンク

2017/02/09

HUASKA『THE BIBLE OF THE BOSSA-METAL』(2016)

このバンド、去年まで全然知らなくて。夏にこの日本企画のベストアルバムが発売されるタイミングに初めて知ったんです。

日系ブラジル人メンバーを中心に結成された、ブラジル・サンパウロの5人組ロックバンドなんですが、その音楽性が非常に個性的でして。メタルやラウドロックとボッサやサンバなどの南米音楽をミックスした、いわゆるミクスチャーメタルの範疇に入るサウンドを信条としていて、リズム隊&ギターは完全にメタルのそれなんですが、そこにクラシックギターやパーカッション、メタルとはかけ離れた朗々と歌うボーカルが加わると、不思議な世界観が展開されるわけでして。例えばブラジル出身のSEPULTURAが1996年に発表したアルバム『ROOTS』で挑戦したサウンドは「メタル側からブラジリアンルーツミュージックへの接近」でしたが、このHUASKAはどちらかというと「ブラジリアンルーツミュージック側からメタルサイドへの接近」に近いのかな。適度な激しさがあるけど、基本的な軸の部分はメタルというよりもラテン音楽ですしね。

本国ではこれまでに4枚のオリジナルアルバムと1枚のEPを発表しているようで、このベストアルバムはそれらから抜粋された楽曲が中心。とにかく聴いていて気持ちいい楽曲ばかりで、メタル特有の高揚感とラテンならではのハッピー感が絶妙なバランスでミックスされている。しかも、思った以上に暑苦しくなく、メタルとは無縁なオシャレ感もどことなく感じられて、思わず笑ってしまう。かといって、ギャグで終わっておらず音楽としてしっかり成立しているんだから……本当に面白い存在です。

バンドによってはこういうサウンド、空気感の楽曲をアルバムの中に1曲だけ入れるケースがあると思うんです。でも彼らの場合、アルバム全編がこれ。シャウトやスクリームもなければ、グロウルも皆無。テクニカルなギターソロはないけど、もの悲しげなアコースティックギターの音色は満載。最高じゃないですか(笑)。もうね、1曲目「Chega de Saudade」の(ボッサとしての)王道感でギャフンと言わされてしまうわけですよ。あとはもう、なすがまま。爽やかなボサノバにモダンメタル特有のザクザクしたギターリフが挿入される「Samba de Preto」なんかもいいですよね。

いわゆるオールドスクールな王道メタルしか認めないという人にはオススメしませんが、オルタナティヴロック〜ミクスチャーロック、2000年代以降のメタル/ラウドロックに抵抗がない世代ならスルスル聴けて楽しめるんじゃないでしょうか。ぜひ一度、生で観てみたいものです。



▼HUASKA『THE BIBLE OF THE BOSSA-METAL』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2017 02 09 12:00 午前 [2016年の作品, Huaska] | 固定リンク

2017/02/02

BUDDERSIDE『BUDDERSIDE』(2016)

ロサンゼルス出身の4人組バッドボーイズロックバンド、BUDDERSIDEが2016年9月に発表したセルフタイトルの1stアルバム。彼らはMOTORHEADのマネジメントである「MOTORHEAD MUSIC」が手掛けており、本作のプロデュースを担当したのもレミー・キルミスターの息子であるポール・インダー・キルミスターが担当。MOTORHEADのフィル・キャンベルも1曲(M-2「Ska Bra」)、ギターソロにてゲスト参加した“MOTORHEADファミリー太鼓判”の1枚となっています。

がしかし。サウンドそのものは「LA出身」「バッドボーイズロックバンド」というキーワードから想像できる、MOTORHEADからはかけ離れた、いかにもアメリカンなノリノリのハードロック。先に挙げた「Ska Bra」はブラス隊をフィーチャーしたスカコア調ナンバーだし、続く「Pain」はBUCKCHERRYあたりにも通ずるキャッチーで豪快なハードロックだし。いや、めちゃめちゃ良いんですよ、適度にダークで適度にポップで、適度にヘヴィで適度に軽快で、とにかく聴きやすい。実はこのバンランス感を保つのってすごく難しいと思っているので(大概のバンドはどこかに偏るし)、MOTORHEADファミリーのバックアップでデビューというのもなるほどと頷ける話です。

個人的にはSTONE TEMPLE PILOTSのような、ダークでサイケデリックなミディアムナンバー「X-Girlfriend」がツボ。そういったあたりの影響が感じられるのも、80年代のLAバンド的ではなくて、90年代以降の流れにあるバンドなんだろうなってことが伺えるし。また、アーシーなテイスト(M-5「Clear Blue Sky」あたり)がありつつも、随所にデジタル要素も盛り込まれていて、そのへんも前時代のバッドボーイズロックバンドとは異なるところかなと。

フロントマンのパトリック・ストーン(Vo, G)の歌声・声質も、スコット・ウェイランド(STONE TEMPLE PILOTS、VELVET REVOLVERなど)やジョシュ・トッド(BUCKCHERRY)に近いものが感じられ、耳に残る個性を持っていると思います。あとは「これ!」というキメの1曲ができたら完璧かなと。「Ska Bra」も「X-Girlfriend」も「Clear Blue Sky」もいい線いってると思うし、アグレッシヴな「Open Relationship」もストリングスを取り入れたバラード「Can't Wrap My Head Around You」も平均以上だと思うので、きっかけさえあればすぐにでもブレイクできると思います。それくらいのメジャー感があるし、2枚目が期待できるバンドではないでしょうか。

ちなみに本作、日本盤は今のところ未発売。サマソニあたりで初来日が決まれば、それなりに盛り上がるんじゃないかと信じております。



▼BUDDERSIDE『BUDDERSIDE』
(amazon:海外盤CD

投稿: 2017 02 02 12:00 午前 [2016年の作品, Budderside, Motörhead] | 固定リンク

2017/02/01

BEARTOOTH『AGGRESSIVE』(2016)

2013年に解散したメタルコア/エレクトロニコアバンド、ATACK ATACK!のボーカル/スクリーム(元々はキーボード)担当だったケイリブ・ショーモ(Vo)が新たに結成したメタルコアバンドBEARTOOTH。彼らが2016年半ばに発表したのが、この2ndアルバム『AGGRESSIVE』です。個人的には昨年後半、非常に愛聴した1枚でもあります。

BEARTOOTHはここ日本では2015年末、本国アメリカでは2014年に発表済みの1stアルバム『DISGUSTING』で本格的デビュー。同タイミングに初来日公演も実現しています。そんなノリにノッたタイミングでの2作目リリース、しかも2016年9月にはCrossfaith主催イベント『ACROSS THE FUTURE』出演で早くも再来日が実現。僕もこのタイミングに初めてライブを観ましたが、今の勢いがそのままパフォーマンスに表れた好ステージを繰り広げていました。

前作『DISGUSTING』も全米48位と好成績を残しましたが、今作『AGGRESSIVE』はそれを超える25位を記録。SLPKNOTなどとツアーを回ることで、着実に知名度を上げたようです。肝心の内容ですが、ヘヴィメタル寄りというよりもパンク、ポストハードコア寄りのスタイルで、比較的日本のラウドロックに近いノリを感じます。1stアルバムも非常にキャッチーなメロディを持つ楽曲が多かったですが、今作はそこがより洗練されていて、コアな楽曲も多いのに非常に聴きやすいものになっています。

例えば『LOUD PARK』ではなく『PUNKSPRING』のほうが似合うバンド、と言えばわかりやすいでしょうか。『KNOTFEST』でも大丈夫だし、なんなら(実現の可否は別として)『AIR JAM』でもイケる。旧来のメタルファンにはすんなり受け入れられるとは思いませんが、メタルコアを受けいれられる層、メタルではなく“ラウドなロック”が好きな人ならウェルカムなバンドであり、楽しめるアルバムだと思います。

ちなみに日本盤にはボーナストラックとして、2015年末の来日時にRed Bull Studio Tokyoでスタジオレコーディングした「Body Bag」と「In Between」、そして「Aggressive」の8bitリミックスバージョンを追加収録。「Body Bag」にはCrossfaithのKenta Koie(Vo)がゲスト参加した、文字通り“アグレッシヴな”バージョンを楽しむことができます。



▼BEARTOOTH『AGGRESSIVE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 02 01 12:00 午前 [2016年の作品, Beartooth] | 固定リンク

2017/01/30

TESTAMENT『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』(2016)

BIG4(METALLICA、SLAYER、ANTHRAX、MEGADETH)以降に登場したスラッシュメタルバンドの中では(メンバーチェンジこそあれど)解散することなく息の長い活動を続けるTESTAMENT(事実上の解散状態もあるにはあったんだけど)。そんな彼らが2012年の10thアルバム『DARK ROOTS OF EARTH』から約4年ぶりに発表したのが本作『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』です。

前作はジーン・ホグラン(Dr)を新メンバーに迎え、スラッシーな楽曲もありつつ全体的にはヘヴィでダークなミドルナンンバーが軸といった内容でした。それはそれで悪くなかったし、個人的には近作で一番好きでしたが、全体のバランスがイマイチだったのも否めません。

今作は全盛期メンバーのグレッグ・クリスチャン脱退後に再加入したスティーヴ・ディジョルジオ(B)、先のジーン・ホグラン、そしてチャック・ビリー(Vo)、エリック・ピーターソン(G)、アレックス・スコルニック(G)という編成で制作。スティーヴ・ディジョルジオとジーン・ホグランのコンビというと、DEATHが1993年に発表した傑作『INDIVIDUAL THOUGHT PATTERNS』の参加メンバー。この2人にアレックス・スコルニックが加われば、そりゃテクニカルスラッシュメタルを期待してしまうのが筋ってものです。

しかし、本作はそういった技巧派方面に偏ることなく、ひたすらヘヴィで攻撃的な内容となっています。オープニングのタイトルチューン「Brotherhood Of The Snake」のハードコアさといったら……ねぇ? 本作の良い点は、前作で失敗した曲順や楽曲のバランスが見事に改善されているところ。アップチューンとミドルナンバーのバランスが絶妙で、1曲目から「クソ速い→速い→速い→重い→重い→クソ速い→速い→重い→速い→クソ速い」と全10曲がするっと聴けてしまうのです。それと、前作では7分を超える長尺曲に若干の緩慢さを感じたのですが、本作に関してそれは皆無。どんなに長くても5分半前後で、アレンジも練られている。技巧派3人の実力がこういうところで地味に発揮されてるわけです。

全体で45分程度という長さもちょうどいいですし(日本盤には「Appocalyptic City」再録バージョンと「Brotherhood Of The Snake」別ミックスをボーナストラックとして収録)、2016年に発表された旧スラッシュ勢の新作では(完全に独自の方向を突き進むMETALLICAを除けば)一番勢いを感じさせる1枚じゃないでしょうか。

こうやって80年代から活躍するスラッシュ勢が良作を次々に発表してくれるのは、非常に嬉しいかぎり。今年はKREATORに続いてOVERKILLの新作も控えてますしね。そして、今作を携えたTESTAMENT来日公演の早期実現にも期待したいと思います。→と思ったら1ヶ月後に決まってたのですね!(笑) スケジュール的に厳しいけど、絶対に行ったほうがよさそうですね。



▼TESTAMENT『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 01 30 12:00 午前 [2016年の作品, Testament] | 固定リンク

2016/12/31

2016年総括(1):洋楽アルバム編

2016年もあと半日で終わりということで、毎年恒例となった今年の総括を書いていこうと思います。

その年のお気に入りアルバムを洋楽10枚(+次点10枚)、邦楽10枚(+次点10枚)、2016年気になったアイドルソング10曲(次点なし)、そして今年印象に残ったライブ5本(2015年は3本)をピックアップしました。アルファベット順、五十音順に並べており、順位は付けていませんが特に印象に残った作品には「●」を付けています。

特にこの結果で今の音楽シーンを斬ろうとかそういった思いは一切ありません。ごく私的な、単純に気に入った/よく聴いたレベルでの「今年の10枚」です。

まずは洋楽アルバム編です。


■洋楽10枚(アルファベット順)

・ADRIAN YOUNGE『SOMETHING ABOUT APRIL II』(amazon

・BON IVER『22, A MILLION』(amazon

●DAVID BOWIE『★』(amazon)(レビューはこちら

・DEFTONES『GORE』(amazon)(レビューはこちら

・FROST*『FALLING SATELLITES』(amazon

・JEFF WOOTTON『THE WAY THE LIGHT』(amazon

・MESHUGGAH『THE VIOLENT SLEEP OF REASON』(amazon

・METALLICA『HARDWIRED…TO SELF-DESTRUCT』(amazon)(レビューはこちら

・OPETH『SORCERESS』(amazon

・ROLLING STONES『BLUE & LONESOME』(amazon)(レビューはこちら


<次点>
・ANOHNI『HOPELESSNESS』(レビューはこちら
・THE LEMON TWIGS『DO HOLLYWOOD』
・THE MONKEES『GOOD TIMES!』(レビューはこちら
・NOTHING『TIRED OF TOMORROW』
・PERIPHERY『PERIPHERY III: SELECT DIFFICULTY』
・RADIOHEAD『A MOON SHAPED POOL』(レビューはこちら
・SAOSIN『ALONG THE SHADOW』
・STEVEN TYLER『WE’RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』(レビューはこちら
・SUEDE『NIGHT THOUGHTS』
・THE WEEKND『STARBOY』


以前どこかに書いたような気がしますが、2016年は本当に良作が多くて、ここに10枚(次点を含めると20枚)に絞るのに相当苦労しました。たぶん明日になったらこのうち半分近くが入れ替わりそうな気もするし。あと、上半期の10枚に入れていたDEAFHEAVENのアルバム『NEW BERMUDA』(海外では2015年10月発売、国内では2016年6月発売)は、やはり2015年のアルバムという扱いに。これやりだしたら、漏れる新作がたくさん出てきそうだし。

とにかく今年は、自分が10代の頃から愛聴したアーティストたちが次々に亡くなってしまう、近年稀に見る1年でした。もしかしたら、音楽シーンがいよいよ入れ替わりのタイミングに入っているのかもしれませんね。この傾向はこれから数年は続くのかもしれない……そう考えると切なさもあります。

きっと、この人(↓)の場合も年末にベスト盤出たけど、来年以降に未発表曲をまとめたアルバムが“新作”としてリリースされるんでしょうね。そういう作品も来年以降、ここで取り上げる機会が増えそうな気がしています。

邦楽アルバム編に続く)



▼PRINCE『4EVER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 31 12:03 午後 [2016年の作品, 「1年のまとめ」] | 固定リンク

2016年総括(2):邦楽アルバム編

洋楽アルバム編に続いて、邦楽アルバム編。こちらのエントリーでは2016年もっとも気に入った邦楽アルバム10枚(+次点10枚)を紹介します。順位は付けませんが、特に印象に残った作品には「●」を付けています。


■邦楽10枚(アルファベット→五十音順)

●BOOM BOOM SATELLITES『LAY YOUR HANDS ON ME』(amazon

・BUCK-TICK『アトム 未来派 No.9』(amazon

・HER NAME IN BLOOD『BAKEMONO』(amazon

・KinKi Kids『N album』(amazon

・MIYAVI『Fire Bird』(amazon

・有村竜太郎『デも/demo』(amazon

・宇多田ヒカル『Fantôme』(amazon

・片平里菜『最高の仕打ち』(amazon

・金子ノブアキ『Fauve』(amazon

・スピッツ『醒めない』(amazon


<次点>
・AA=『#5』
・ATATA『Joy』
・BABYMETAL『METAL RESISTANCE』
・CQ『Communication, Cultural, Curiosity Quotient』
・D.A.N.『D.A.N.』
・Klan Aileen『Klan Aileen』
・Little Glee Monster『Colorful Monster』
・RADWIMPS『人間開花』
・浜田麻里『Mission』
・ユニコーン『ゅ 13-14』


邦楽もいいアルバムが多くて、かなり漏れがあると思います。岡村ちゃんも人間椅子も今年だったもんね。さらにMy Hair is Badやcinema staff、SiMあたりも選外に。OBLIVION DUSTもね。

あとは乃木坂46『それぞれの椅子』は新曲が3仕様にバラけたのがいけなかった。アルバムって後世に1枚だけ残すものだと思ってるから、3枚バラバラの内容はよくないですよ。最近よくある、通常盤より数曲多いデラックス盤もダメ。結局どっちがアーティストの意図したものなのかわからないもの。複数買いさせるための施策なんだろうけど、そういう意味では宇多田ヒカルの新作はDVD付き初回盤も用意されることなく、純粋にCD1枚のみ。改めて「アルバムとは?」という原点に立ち返るきっかけになってほしいな。

ちなみに、アルバムリリースはなかったけど、個人的に2016年を代表する楽曲はこの2曲。

アイドルソング&印象的なライブ編に続く)



▼Hi-STANDARD『ANOTHER STARTING LINE』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2016 12 31 12:02 午後 [2016年の作品, 「1年のまとめ」] | 固定リンク

2016年総括(3):アイドルソング&印象的なライブ編

このエントリーで最後。こちらではアイドルソング10曲と、2016年印象に残ったライブ5本を紹介したいと思います。順位は付けませんが、特に印象に残った楽曲には「●」を付けています。

まずはアイドルソング10選から


■アイドルソング10曲(アルファベット→五十音順)

・HoneyWorks meets さゆりんご軍団+真夏さんリスペクト軍団 from 乃木坂46「大嫌いなはずだった。」(iTunes

・lyrical school「RUN and RUN」(amazon

・アイドルネッサンス「君の知らない物語」(amazon

●欅坂46「サイレントマジョリティー」(amazon

・欅坂46「世界には愛しかない」(amazon

・欅坂46「二人セゾン」(amazon

・こぶしファクトリー「桜ナイトフィーバー」(amazon

・五五七二三二〇「四味一体」(iTunes

・乃木坂46「裸足でSummer」(amazon

・モーニング娘。'16「泡沫サタデーナイト!」(amazon


2016年は欅坂46「サイレントマジョリティー」の衝撃を切り離すことができない1年でしょう。先日の1stライブも拝見しましたが、その強度はデビュー時からさらに強まっていますし、この状態のまま紅白歌合戦に出演するのかと思うと、今から楽しみでなりません。

それだけではなく、2ndシングル「世界には愛しかない」でのポエトリーリーディング、そして3rdシングル「二人セゾン」の楽曲の素晴らしさ。結局、10曲中に3曲入れてしまうという結果に。例年、1アーティスト1曲なんですけど、今年に関しては異例ということで。

しかし、それ以外の楽曲を見ると、カバー曲の多さに気づかされます。アイドルネッサンスはもともとそういうグループだけど、こぶしファクトリーはKANの昨年のシングル曲を、さゆりんご軍団+真夏さんリスペクト軍団の曲はもともとHoneyWorksの楽曲なので、これは厳密にはカバーじゃないのかもしれないですけど。これらを選ぶのは邪道ですかね?

あと、五五七二三二〇に関してもバラバラに4曲選びたかったくらい。これはもうアイデア勝負ということで。リリスクに関しても、MVのアイデア勝ちですよね。


■印象的なライブ5選

・THE YELLOW MONKEY@さいたまスーパーアリーナ(7月9日)
・BATTLES@FUJI ROCK FESTIVAL '16(7月24日)
・QUEEN+アダム・ランバート@日本武道館(9月23日)
・Hi-STANDARD@新潟LOTS(12月8日)
・欅坂46@有明コロシアム(12月25日夜公演)

どれも文句なし。正直、5本に絞るの厳しかった。Ken Yokoyamaの日本武道館も素晴らしかったし、サマソニでのRADIOHEADも捨て難いし、年末の乃木坂46アンダーライブ最終公演も乃木坂史上に残る素晴らしさだったし。あとAIR JAMで観たHAWAIIAN6や10-FEETも。そんな中で、QUEEN+アダム・ランバートとHi-STANDARDは思い入れが強すぎるのもあるけど、ちょっと圧巻すぎました。

ちなみに2016年に観たライブ/イベント/舞台の数は130本。2015年は146本だったので、マイナス16本。複数日行ってるフェスも1本とカウントしてるので、間違いなく2、3日に1回は行ってる計算になります。いつ原稿書いてるんだって話ですよね。僕もそう思います(笑)。

以上で2016年の総括は終了。今年もたくさんの素敵な音楽と出会うことができました。2017年も今年以上に素敵な音楽と出会えますように。

そして読者の皆さん。今年後半からかなりのハイペースでレビューを公開していきましたが、来年も引き続き更新できるように頑張ります。おそらく1日1本ペースに戻すと思いますし、なにより繁忙期は更新が滞ると思いますが、気長におつきあいいただけると幸いです。それでは、2017年もよろしくお願いいたします。



▼欅坂46『サイレントマジョリティー』
(amazon:TYPE-A / TYPE-B / TYPE-C / 通常盤

投稿: 2016 12 31 12:01 午後 [2016年の作品, 「1年のまとめ」] | 固定リンク

DAVID BOWIE『★(BLACKSTAR)』(2016)

2016年1月8日(金)。午前中から乃木坂46の取材を行い、午後遅くまで作業を続けてから帰り道で購入したのが、この日世界同時リリースとなったデヴィッド・ボウイ3年ぶりの新作『★』と、ちょっと前にリリースされたボックスセット『FIVE YEARS 1969-1973』でした。

前年秋に先行公開されたMV「Blackstar」を観て聴いて、「これは間違いなく傑作だ!」と多くの音楽ファンが思ったことでしょう。派手なボウイではない、穏やかなボウイ。90年代以降の作品では『BLACK TIE WHITE NOISE』(1993年)や『HOURS…』(1999年)が好きな自分としては「これはど真ん中な作品になるかも…」と、そういう期待感でいっぱいでした。その思いはアルバムリリース直前に公開された「Lazarus」を聴いても、変わることはありませんでした。

2013年に突如発表された復活作『THE NEXT DAY』も、もちろん大好きでした。しかし、特に日本盤はボーナストラック含め18曲入りということでたくさん詰め込みすぎた感が強く、すべてを理解するまでにはかなりの時間を要した記憶があります。あと、10年ぶりということで、期待が大きすぎたのもあって、ほんのちょっとだけ「ああ、こんな感じか……」とちょっとだけ思ったりもして。

ところが『★』は全7曲、オープニングの「Blackstar」こそ10分前後の大作ですが、トータルで41分程度と非常に聴きやすい内容。人力ドラムンベース的な雰囲気のある前半から、ドリーミーなミドルテンポのパートへと展開する流れなど、クラブミュージックとジャズとサイケデリックロックを掛け合わせたかのようなこの世界観に惹きつけられない人はいないと思います。続く、ジャズファンク的な「'Tis A Pity She Was A Whore」は『BLACK TIE WHITE NOISE』からの流れにある1曲で、ひたすらカッコいい。そこから再びダークな「Lazarus」へと流れる、いわゆるアナログA面の流れは圧巻です。

4曲目(いわゆるアナログB面)は「Sue (Or In A Season Of Crime)」は、2014年に発売されたベスト盤『NOTHING HAS CHANGE』に収録されたジャズアレンジの同名曲を、人力ドラムンベース+ロッキンにリアレンジしたもの。よくぞ『★』の世界観に合ったリアレンジを施したなと、関心させられます。その後も「Girl Loves Me」「Dollar Days」と雰囲気モノの良曲が続き、最後は90年代以降のボウイのカラーが色濃く表れた「I Can't Give Everything Away」で締めくくり。ただただすごいアルバムができたな。70歳目前にまた新しいキャリアが始まるとか、どういうことだよ……と聴き終えた直後にため息をついたことをよく覚えています。

それから3日後の1月11日(月・祝)。午後からSKE48の取材を終え、遅い昼食を取っていると、Twitter上に悪い冗談が次々とアップされる。えっ……それが事実だと気づくまでに、そう時間はかかりませんでした。その日の夜に予定していたライブに足を運ぶ気力が一気に失せ、帰宅してそのままこの『★』や往年の代表作を明け方まで聴き返すことを数日にわたり繰り返しました。

正直、上に書いた『★』の感想は、1月8日に感じたものとは正確には異なるかもしれません。ボウイの死により、すでに思い出補正もかかっているでしょうし。でも、彼の死を知るほんの数日前に発売されたこのアルバムを、リリース日に聴けたことだけは間違いない事実だし、あのときに感じた衝撃も間違いない事実。それを急逝による補正でねじ曲げられる前に感じられた、そこだけは良かったな、幸せだったなと1年近く経った今、より強く思うわけです。

この思い出補正がなかったら、2016年の年間ベストアルバム1位に選んでいただろうか……いや、選んでいたよね。自分のこの気持ちを信じることにします。



▼DAVID BOWIE『★(BLACKSTAR)』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 31 12:00 午前 [2016年の作品, David Bowie, 「R.I.P.」] | 固定リンク

2016/12/30

DEAFHEAVEN『NEW BERMUDA』(2015)

海外では2015年10月、ここ日本ではだいぶ遅れて2016年6月に発表された、DEAFHEAVENの3rdアルバム。過去2作はここ日本でもインディー流通でしたが、今作からはメジャーのソニーからの発売(海外ではEpitaph Records系列のAnti-Recordsに移籍)。と同時に、今年7月開催の『FUJI ROCK FESTIVAL '16』が決まったことで、ここまで国内リリースが延びたのかなと。プロモーション的には正しいんだろうけど、こんな名盤を8ヶ月も放っておくなんて、なんて勿体ないことをするんだろう……。

2013年の前作『SUNBATHER』は個人的にも相当気に入っており、同年のベストアルバム10枚に選出しておりました。だからこそ、本作もリリースと同タイミングで輸入盤を購入したのですが、とにかく1曲が長く、全5曲のすべてが8分以上。内2曲が10分超えという大作のため、聴き込むのにかなり時間を要してしまい、昨年のベストアルバム候補に入れつつも最終的には外すこととなったのでした。

あれから1年以上経ち、しかもフジロックでの来日を前に時間をかけて聴き込んだことで、かなり体に入ってきたと思います。今回は前作『SUNBATHER』で見え隠れしたアンビエント的な要素が後退。むしろ初期から持つブラックメタル&シューゲイザー的要素がより強まった印象があります。と同時に、前作にもあった開放感も備わっていることで、長尺の中で暴力的なのにドラマチックという展開が繰り広げられます。

ブラストビートとトレモロギターリフとデス声、そこに突如訪れるドリーミーなダウンドメイキング。このメリハリは前作以上で、シューゲイザーやドリームポップというよりは、ブラックメタルやポストハードコアから影響を受けたプログレメタルという印象が強いかな。ポジとネガを行き来する音の洪水に飲み込まれた瞬間、抵抗できずそこから抜け出せなくなる。そんな有無を言わさぬ凄味を持つ力作だと思います。

フランスのALCESTなど、ブラックメタルをルーツに持つシューゲイザー/ポストメタルバンドは増えていますが(今年発売されたALCESTの新作『KODAMA』もなかなかでした。こちらもいずれ紹介したいと思います)、この『NEW BERMUDA』(『絶海』という邦題も素晴らしい)はメタルサイドにも、そしてシューゲイザーなどを好むオルタナギターロック好きにもオススメしたい1枚。『SUNBATHER』はちょっと苦手だと思っていたメタル側の方々にも、十分に響く内容だと思います。



▼DEAFHEAVEN『NEW BERMUDA』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 30 12:00 午後 [2015年の作品, 2016年の作品, Deafheaven] | 固定リンク

DEFTONES『GORE』(2016)

前作『KOI NO YOKAN(恋の予感)』から3年半ぶり、通算8枚目のオリジナルアルバム。チャート的には2003年の4thアルバム『DEFTONES』と同じく、全米2位という高順位を記録しており、イギリスでも過去最高の5位にランクインし、オーストラリアやニュージーランドでは初の1位に輝くなど世界中で好意的に受け入れられた1枚のようです。

2000年の3rdアルバム『WHITE PONY』が大成功したことで、以降の作品ではファンから「第二の『WHITE PONY』」を望む声が増えたようですが、バンドは『DEFTONES』、『SATURDAY NIGHT WRIST』(2006年)と作品ごとにその音楽性を少しずつ進化させていきます。しかし、『DIAMOND EYES』(2010年)と前作『KOI NO YOKAN』ではその進化が若干停滞していたように感じられました。特に『KOI NO YOKAN』に関しては個人的にあまりピンとこなかったこともあって、これまでの作品の中で聴く頻度がもっとも低かったと言わざるをえません。

それもあって正直、今回の『GORE』にもあまり過度な期待はしていなかったんです。ところが、アルバムタイトルの『GORE(=血糊や流血、暴力や殺人、あるいは醜いものを意味する)』というタイトルになぜか惹かれ、心のどこかで少しだけ期待していた自分もいました。

今作のリリースに際し、チノ・モレノ(Vo, G)は本作を「the singer playing Morrissey to the guitarist's Meshuggah」と表現。それも納得の内容だと思いました。いわゆるサンプリング要素を最小限に抑え、ギターを軸にしたサウンドメイキング(しかも要所要所で低音を利かせたプレイ)はMESHUGGAHのそれに通ずるものがありますし、そんな不穏なバンドサウンドにモリッシーのごとくポップでキャッチーな歌メロが乗る。聴きやすさという点においては、ここ数作で一番ではないでしょうか。

いわゆるヘヴィメタルやヘヴィロックというよりも、ゴシックロックやオルタナティヴロック寄り。今までの作品もその側面を持ちつつ、両者の要素をバランス良く配置していた印象が強いですが、今作はそこから一歩踏み出したというか、振り切った印象が強い。ギターソロ(しかもALICE IN CHAINSのジェリー・カントレルによるもの)が入る「Phantom Bride」みたいな曲が突如飛び出すのも、そういう理由からかもしれません。

だから、初期の彼らを愛好するファンからは否定的な意見が多いのも理解できるんです。別にこのアルバムを「メタル/ラウドシーンからの脱却」とか「メタルの新たなスタイル」とか呼ぶつもりはありません。でも、ここからまた何かが始まるのは間違いない事実。決して派手なアルバムではないし、最高傑作なんて言うつもりもありません。しかし、不思議と何度も何度も聴き返したくなる。そんなスルメ的強さを持った作品であることだけは、間違いない事実だと思います。実際、ここまで聴き返してるのは『WHITE PONY』以来かもしれません。



▼DEFTONES『GORE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 30 12:00 午前 [2016年の作品, Deftones] | 固定リンク

2016/12/29

BLACK SABBATH『THE ULTIMATE COLLECTION』(2016)

来年2017年2月にイギリス公演をもって、50年近くにおよぶその活動に終止符を打つ予定のBLACK SABBATH。トニー・アイオミ(G)のガン発覚などいろいろありましたが、そもそも年齢的にもそろそろこういう音楽をやるには厳しいのかなと。ギーザー・バトラー(B)が67歳、オジー・オズボーン(Vo)はこの12月で68歳、トニーも年が明けて2月に69歳になりますし。もちろんROLLING STONESのようなバケモノもいますが、そもそもやってることが異なりますしね。2013年に発表された18年ぶり(オジー在籍時としては35年ぶり!)のオリジナルアルバム『13』が初の全米1位も獲得したことですし、区切りのタイミングとしては良き時期なのかもしれません。

そんな彼らの活動を総括する、キャリア何度目かの公式ベストアルバム『THE ULTIMATE COLLECTION』が海外で今年10月にリリース。ここ日本でも遅れて年明け1月25日に発売されます。2枚のCDに全31曲が収録されたこのベスト盤、選曲は70年代の彼ら、つまりオジー在籍時のオリジナル編成による楽曲のみで、決してキャリアを総括したものではありません。もちろんそれが間違いだとは思いませんし、今回のラストライブに向けて発表されたという点ではこの内容は正しいと思います。

ちなみに、各楽曲の収録アルバムは下記のとおり。


1st『BLACK SABBATH』(1970):「Black Sabbath」「Evil Women, Don't Play Your Games With Me」「Behind The Wall Of Sleep」「The Wizard」「N.I.B.」「Wicked World」(6曲)

2nd『PARANOID』(1970):「Paranoid」「Iron Man」「Fairies Wear Boots」「Rat Salad」「War Pigs」「Electric Funeral」(6曲)

3rd「MASTER OF REALITY」(1971):「Children Of The Grave」「Sweet Leaf」「Lord Of This World」「Into The Void」「Embryo」(5曲)

4th『VOL.4』(1972):「Changes」「Snowblind」「Tomorrow's Dream」(3曲)

5th『SABBATH BLOODY SABBATH』(1973):「Sabbath Bloody Sabbath」「Spiral Architect」「Killing Yourself To Live」(3曲)

6th『SABOTAGE』(1975):「Hole In The Sky」「Sympton Of The Universe」「Am I Going Insane」(3曲)

7th『TECHNICAL ECSTACY』(1976):「Rock'n'Roll Doctor」「Dirty Women」「It's Alright」(3曲)

8th『NEVER SAY DIE!』(1978):「Never Say Die」「A Hard Road」(2曲)


1stから3rdまでが各5〜6曲という比重は、まぁそうなりますよね。これには納得ですが、個人的には2ndから「Planet Caravan」、3rdから「After Forever」が漏れたのは残念かなと。収録時間ギリギリまで詰め込んでくれたらよかったのに。

海外での評価が高そう4thからはたった3曲というのは意外でした。「Wheels Of Confusion」も「Supernaut」も「St.Vitus' Dance」も入ってなかったし。5thからも「Sabbra Cadabra」は選曲漏れ。6th以降は……まぁこんなもんでしょうか。いや、そんなに思い入れのある作品群ではないので、ここらへんは識者にお任せできたらと。

気になるサウンドですが、アンディ・ピアースによる2009年のリマスター音源が使用されているようです。つまり、現時点での最新リマスター音源ということになるのでしょうか。元々の音源が制作された時期も大いに影響あると思いますが、やはり2ndは線が細いのが気になってしまう(特に「Paranoid」や「iron Man」)。逆に8thからの「Never Say Die」での音のブースト具合はバンドが持つ爆発力が遺憾なく発揮されているんじゃないでしょうか。

そして曲順。「Paranoid」から始まるのがいかにソレっぽくて気に入らないのですが、4曲目「Black Sabbath」以降の流れは気持ち良く楽しめます。特に「Sweet Leaf」〜「War Pigs」〜「Sabbath Bloody Sabbath」の流れは、実際にライブでありそうな流れですし。あと、本来なら「Children Of The Grave」の前奏的ポジションのイントロ「Embryo」が「Electric Funeral」と「Killing Yourself To Live」の間に挟まれてるのはどうにかならなかったのかなと。こだわりがありそうで、実はそこまでないんじゃないかという箇所もいくつか見受けられますが、このへんは欧米人の感覚なので我々には理解しかねます。

まぁ、これから初めてBLACK SABBATHを聴いてみようと思ってる人には、手軽に楽しめるベスト盤じゃないでしょうか。1st〜4thだけを聴くのもいいけど、以降のアルバムにも隠れた名曲がポツポツ入っているので、それに気づくことができるという点では初心者にとってうってつけでしょうし。



▼BLACK SABBATH『THE ULTIMATE COLLECTION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD


あと、オジー時代の魅力に浸ったあとは、ぜひロニー・ジェイムス・ディオ在籍時のサバスにも触れてみてほしいです。こちらも過去に『BLACK SABBATH: THE DIO YEARS』というベストアルバムが発売されているので、そこから入ってみてはどうでしょう。



▼BLACK SABBATH『BLACK SABBATH: THE DIO YEARS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 29 12:00 午前 [2016年の作品, Black Sabbath] | 固定リンク

2016/12/28

THE DEAD DAISIES『MAKE SOME NOISE』(2016)

このバンドを知ったのは、確かtvkでやってる伊藤政則さんの番組『ROCK CITY』で観たMVだったのかな。元THE SCREAM〜MOTLEY CRUEのフロントマンだったジョン・コラビ、そして今やどのバンドにいるのかすら記憶が定かではないダグ・アルドリッチ(G)らが参加するバンドということで、どんな音なのかと思っていたら……聴いた曲がアルバム1曲目の「Long Way To Go」だったからなのか、「このメンツのわりに、随分とストレートなロックかますな。なんかクセのないAEROSMITHみたい」というの第一印象。しかもジョン・コラビのルックスも“リトル”スティーヴン・タイラーみたいになってるし。

で、いろいろ調べてみるとこのバンド、今回のアルバム『MAKE SOME NOISE』が通算3枚目とのこと。しかも、アルバムごとにメンバーがちょくちょく変わっていて、結成時から残っているメンバーはリズムギターのデヴィッド・ローウィーのみ。当初は元INXSのジョン・スティーヴンス(Vo)がフロントマンで、現在もバンドに在籍するマルコ・メンドーサ(B)のほか、ツアーメンバーとしてGUNS N' ROSESのメンバーであるディジー・リード(Key)やフランク・フェラー(Dr)、当時ガンズに在籍していたリチャード・フォータス(G)が参加していたそうで。その後、2013年に1stアルバム『THE DEAD DAISIES』をリリース。2015年にはジョン・コラビ、ブライアン・ティッシー(Dr)が正式加入して、2ndアルバム『REVOLUCION』を発表するも、翌2016年にリチャードとディジーが脱退して、ダグが加わって現在の布陣になったようです。

……説明長すぎですね(笑)。いい加減アルバムの中身に触れましょう。

中身は、先に書いた「Long Way To Go」から想像できる、ど直球のアメリカンハードロック。全12曲(日本盤ボーナストラック除く)中、2曲がカバーで、CCR「Fortunate Son」とTHE WHO「Join Together」というわかりやすい選曲。これだけでも音楽性が想像できるかと思います。

ジョンはその風貌同様、歌声もMOTLEY CRUE時代よりレイドバックしており(老いた?)、80年代のAEROSMITHが鳴らしそうな骨太で豪快なサウンドに意外と合っております。ダグのギターは時に渋く、時に激しくと、WHITESNAKE時代を彷彿とさせるプレイで、ジョンの歌声との相性もバッチリ。楽曲も70〜80年代の、ブルースやカントリーをベースにしたアメリカンハードロックそのもので、かつ1曲1曲の仕上がりは非常に品質の高いもの。このへんはプロデューサーおよびソングライターとして、AEROSMITHやBUCKCHERRY、オジー・オズボーンとの共作で知られるマーティ・フレデリクセンが参加していることも大きく影響していると思われます。

ただ、唯一難点をつけるとしたら、決定打となるような1曲が足りないこと。どの曲も良質で、70〜80点をつけられるけど、ここに1曲だけでも100点ないし90点クラスのキメ曲が入ったら、アルバムとしても、そしてバンドとしても頭ひとつ抜き出るのかなと思います。



▼THE DEAD DAISIES『MAKE SOME NOISE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 28 12:00 午前 [2016年の作品, Dead Daisies, The] | 固定リンク

2016/12/26

MICHAEL SWEET『ONE SIDED WAR』(2016)

STRYPERのフロントマン、マイケル・スウィートの7thソロアルバム。昨年は年明けに発表ジョージ・リンチとのSWEET & LYNCH名義によるコラボアルバム『ONLY TO RISE』が素晴らしい出来で、後半にリリースされたSTRYPERのニューアルバム『FALLEN』も大満足の内容と良作続きでした。実際、自分がSTRYPER絡みの作品を購入したのも90年代以来のことで、今もマイケル・スウィートがここまで歌えること、ここまで良曲を連発できることに驚かされ、嬉しく思いました。

で、そこから1年ぶりに発表されたSTRYPER絡みの新作が、このマイケルのソロアルバム。EVANESCENCEなどで活動したウィル・ハント(Dr)、元NIGHT RANGER、現WHITESNAKEのジョエル・ホークストラ(G)などと制作した、ど直球のハードロックアルバムに仕上がりました。潤いあるメロディは変わらず、ファストチューンやミディアムヘヴィナンバーがバランス良く並んでおり、最後まで気持ち良く聴くことができます。

いわゆるSTRYPER的なコーラスは皆無で、ただひたすらマイケルが気持ちいいままに歌い、ギターを弾きまくる。これ以上何がお望み?と言わんばかりの豪速球の連投に、思わずニヤニヤしてしまうんじゃないでしょうか。かと思えば、STRYPER的分厚いコーラスが登場する「Who Am I」もあるし、ブルージーなバンジョーの音色に渋みを感じる「Radio」、「えっ、RATTとSTRYPERの融合!?」と腰を抜かしそうになる「Only You」みたいな楽曲もあるんだから、楽しめないわけがない。

確かにSWEET & LYNCHのようにフックとなるジョージ・リンチのギターもないし(DOKKEN的楽曲をマイケルが歌うというポイントも)、メンバー4人の個性が詰まったSTRYPERのそれとも違うけど、間違いなく“あのSTRYPERのメインソングライターおよびシンガー”が作ったアルバムであることは、一聴すれば理解できる。要するに、悪いところがまったく見つからない、本当に優れたハードロックアルバムだということです。

「80年代から時間が止まってるんじゃない?」と問われれば、確かにその通りかもしれない。でも、あの頃に発表した作品よりもさらにブラッシュアップされた内容であることは紛れもない事実。どう聴けばこれが悪い作品になるのか、逆に質問したいくらいです。この創作意欲がどこまで続くのか、今後も見届けたいと思います。



▼MICHAEL SWEET『ONE SIDED WAR』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 26 12:00 午前 [2016年の作品, Michael Sweet, Stryper] | 固定リンク

2016/12/25

KING 810『LA PETITE MORT OR A CONVERSATION WITH GOD』(2016)

前作『MEMOIRS OF A MURDERER』から2年ぶりに発表された、アメリカ・ミシガン州フリント出身の4人組メタルコア/ハードコアバンドの新作。「全米一危険なバンド」という触れ込みで一部マニアの間で話題になった彼らですが、前作はRoadrunnerからの配給だったにもかかわらず日本盤リリースはなし。当然来日も実現しなかったので、知る人ぞ知るみたいな存在で終わりかけていました。ちょうど2年前、当サイトでも紹介したので覚えている人もいるかもしれません。

そんなところに、ニューアルバムの発売。今作もRoadrunnerからのリリースですが、引き続き国内盤の発売はなし。いろんな意味で残念すぎる。

さて、今作の内容ですが、前作までのNYハードコア的オールドスクールサウンドとモダンなヘヴィロックサウンドを融合させた路線はそのまま。ただ、少々モダンよりになった印象も受けました。相変わらず引き摺るようなミドルテンポの楽曲が中心で、そこにスポークンワードやメロウパートを挿入する緩急のつけ方も相変わらずですが、今作ではナレーションを切り刻んだサンプリングをフィーチャーした「Vendettas」、アコースティックギターやストリングスを導入したドラマチックな「Black Swan」、どことなくヒップホップ的な匂いもする「Life's Not Enough」、ピアノを前面にフィーチャーしたジャジーな「Me & Maxine」など新境地ナンバーも多数収録されています。

テンポの上げ下げで抑揚をつけることなく、テンポ感はほぼ一定の中で音数や激しさで強弱をつけて聴き手を惹きつける手法は、メタルやラウドロックというよりも映画のサウンドトラック的な印象も。特にアルバム前半を締めくくる7曲目「La Petite Mort」とラストナンバー「A Conversation With God」はそのタイトルからもわかるように対になっており(2つを“or”でくっつけると、そのまま本作のアルバムタイトルに)、それぞれ前半後半のクライマックスをうまく作り上げています。

前作同様に、いわゆるファストナンバーが皆無なことから疾走系を好むファンからは敬遠されそうですが、前作以上に深みを増した今作からは「全米一危険なバンド」というレッテルで片付けられない魅力もたっぷり感じられます。どことなくSLIPKNOT『IOWA』にも通ずる匂いもするので、そのへんが好きな人にも受け容れられるんじゃないでしょうか。食わず嫌いせずに、ぜひ一度お試ししてみることをオススメします。



▼KING 810『LA PETITE MORT OR A CONVERSATION WITH GOD』
(amazon:海外盤CD

投稿: 2016 12 25 12:00 午前 [2016年の作品, King 810] | 固定リンク

2016/12/24

PANTERA『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』20TH ANNIVERSARY EDITION(1996 / 2016)

1996年5月に発表された、PANTERA通算8枚目(メジャー移籍後4枚目)となるオリジナルアルバム。前作『FAR BEYOND DRIVEN』が初の全米1位を獲得したものの、バンドを取り巻く環境が悪化し(フィルの暴行による裁判およびドラッグ癖)、決してベストとは言い難いなかで制作されたのがこの『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』(邦題『鎌首』。意訳でもなんでもなく、たたジャケット写真を観て思いついただけでしょ、これ)でした。しかし、そのアグレッシヴな主張が際立つタイトル同様、内容は非常に攻撃的で、オープニング曲「The Great Southern Trendkill」冒頭のフィルによるシャウトでいきなりノックアウトされること間違いなしな1枚。

前作が出世作『VULGAR DISPLAY OF POWER』(1992年)をよりハードコアにした作風だったのに対し、今作ではハードコアさはそのままに、全体としてより整理された印象が強い。なもんで、前作で途中からダレ気味だったミドルテンポの楽曲も、今作ではギタープレイによる惹きつけ方や聴き手を飽きさせない工夫したアレンジが施されています。と同時に、かなり実験的なサウンド&楽曲も含まれており、アルバム中盤の(なかば組曲と言える)「Suicide Note, Pt.1」「Suicide Note, Pt.2」の緩急のつけ方はさすがと言わざるをえません。特に「Suicide Note, Pt.1」は、LED ZEPPELIN「Going To California」のカントリーやサザンロックに寄せたような不思議な魅力があり、そこからひたすらアグレッシヴな「Suicide Note, Pt.2」に切れ目なく突入する構成には鳥肌が。そのほかにもサイケデリックな色合いの「Flood」では、過去の「This Love」を深化させつつ新たなチャレンジにトライしており、世の「PANTERAフォロワー」とは格が違うことを見せつけます。

リリース当時は衝撃作『VULGAR DISPLAY OF POWER』、そしてNo.1アルバム『FAR BEYOND DRIVEN』の後だけに、ちょっと分が悪いというか、そこまで高く評価されていなかったような記憶がありますが、今聴くと先の2枚に負けないだけのパワーと深みがある1枚だと思います。今なら素直に『VULGAR DISPLAY OF POWER』の次に好きなアルバムと断言できます。


「20TH ANNIVERSARY EDITION」解説

で、今回このタイミングで取り上げたのには理由が。ご存知のとおり、本作は今年でリリース20周年を迎えたことから、10月にリマスタリング&ボーナスディスク付きのアニバーサリーエディションが発売されました。アルバム本編のリマスター盤となるDISC 1に関しては、なんとなく全体的に聴きやすくなった印象が。それはソフトになったということではなく、全体のバランスや音のメリハリが以前よりもわかりやすくなったというか(気のせいかもしれないけど)。

そして、もっとも気になるのが『THE GREAT SOUTHERN OUTTAKES』と題されたDISC 2のほうですよね。こちらは基本的にアルバム本編と同じ曲順でテイク違い(ミックス違いやインストバージョン、1998年の『DYNAMO OPEN AIR』でのライブ音源)が収められています。ライブ音源は音質的にはまぁこんなもんかな、と。ちょっと全体的にモコっとした印象があります。で、インストバージョンについては割愛して(笑)、ミックス違い……こちらは2種類あって、ひとつは「2016 Mix」と題されたもので、これは「The Great Southern Trendkill」1曲のみ。残りは「Early Mix」と、その名のとおり初期段階でのミックス。どのミックスも曲冒頭にフィルの話し声やドラムのカウントなどが残されており、ミックス自体も完全に整理されたDISC 1の音源よりも生々しさが残されています。

最新ミックスとなる「The Great Southern Trendkill」は……正直、そこまで音が良くないような。リミックスの類というよりは、他の「Early Mix」と同じ扱いと思ってもらったほうがいいかもしれません。エンディングの締まりのなさもカッコ悪いし。これを聴くと、いかにアルバム本編のバージョンが優れているかに気づかされます。

ということで、DISC 2は1枚のアルバムとして楽しむというよりは、『THE GREAT SOUTHERN OUTTAKES』本編を堪能した後に別の解釈をするための副読本的内容と言ったほうがいいかもしれませんね。あくまでおまけと解釈して接するのが無難です。

思えば『COWBOYS FROM HELL』(1990年)以降、メジャーから発売されたアルバムは今のところ4作品が20周年アニバーサリーエディションとしてリイシューされています。このまま進めるなら、次の2020年に『REINVENTING THE STEEL』(2000年)のアニバーサリーエディションが発売されることになるのかな。そもそも何か発表できそうな貴重音源が残っているのでしょうか。もしできることなら、フルライブをまるまる1本収めた未発表ライブ音源/映像があると……いいなぁ。



▼PANTERA『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』20TH ANNIVERSARY EDITION
(amazon:国内盤2CD / 海外盤2CD

投稿: 2016 12 24 12:00 午後 [1996年の作品, 2016年の作品, Pantera] | 固定リンク

SCOUR『SCOUR』(2016)

2016年は冒頭からトラブルを引き起こして、メタル界のみならず社会問題にまで発展しそうなほどやり玉に挙げられたフィル・アンセルモ。詳しくはこのへんを読んでもらえれば、何が起こったか思い出せるかと思います。

この騒動後、DOWNからの脱退を申し入れたというフィル。現在もバンドには残っているようですが、今年後半はしばらく休止状態だったSUPERJOINT RITUALをSUPERJOINTと改名させて、ニューアルバム『CAUGHT UP IN THE GEAR OF APPLICATION』を制作したり、今回紹介するブラックメタルバンドSCOURを結成してEPを発表したりと、何かと忙しそうにしておりました。

さて、そのSCOURですが、いわゆる初期デスメタル、ブラックメタルをはじめとするエクストリームサウンドを軸にしたバンド。メンバーは下記のとおり。


Philip H. Anselmo (Vo / ex-PANTERA, DOWN)
Drek Engemann (G / CATTLE DECAPITATION)
Chase Fraser (G / ANIMOSITY)
John Jarvis (B / PIG DESTROYER, AGORAPHOBIC NOSEBLEED)
Jesse Schobel (Dr / STRONG INTENTION)


正直、CATTLE DECAPITATIONとPIG DESTROYERぐらいしか聴いたことがありませんが、それぞれデス/グラインドコア界隈のバンドばかり。このEP自体も、ギターのトレモロリフがいかにも“ソレ”な「Dispatched」を筆頭に、上記のバンドが持つルーツが垣間見れる1枚となっています。フィルのデスボイス/グロウルもいつも以上にすごみを増していますが、ちょっとお上品に聞こえてしまうのは僕の偏見でしょうか?(「Clot」で入る合いの手的デスボイスの汚さのほうが本格的すぎたもので。こっちはフィルじゃないですよね、おそらく。デレクとジョンはバッキングボーカルもしているようですし)

決してフィルが昔のブラックメタルで信仰されていた世界を崇拝しているとか、そういうことではないと思いますが(ナチス問題の後だけに、それだと余計ややこしいことになりかねないし)、エクストリームメタルを追求するという点においてはこの世界に一度足を踏み入れるのも必要だったのかなと。バンドというよりはプロジェクト形態みたいなので長続きはしないと思いますが、これはこれで生で観てみたい気がします。



▼SCOUR『SCOUR』
(amazon:海外盤CD

投稿: 2016 12 24 12:00 午前 [2016年の作品, Pantera, Scour] | 固定リンク

2016/12/23

THE QEMISTS『WARRIOR SOUNDSYSTEM』(2016)

5年半ぶりにリリースされた3rdアルバム『WARRIOR SOUND』から1年経たずに発表された最新ミニアルバム『WARRIOR SOUNDSYSTEM』。そのタイトルやジャケットのアートワークからわかるように、今作は『WARRIOR SOUND』と対になる1枚で、新曲「Stepping Stones」「Find My Way」のほか、『WARRIOR SOUND』収録の「Jungle」のライブテイク、KORNの代表曲「Blind」のカバー、そしてZardnicやSeamlessRによるリミックステイクの計6曲が収録されています。

「Stepping Stones」「Find My Way」はサウンド、歌詞ともに『WARRIOR SOUND』に入っていてもおかしくない作風で、今年の夏に制作されたもの。『WARRIOR SOUND』を携えたツアーで得た手応えをそのまま形にした、勢いのあるものに仕上がっています。

またTHE QEMISTSにしては珍しいカバー曲「Blind」は、KORNと一緒にツアーを回った経験から、いかに自分たちが彼らから影響を受けたかを再確認できたのもあったんでしょうね。KORNが一時期ダブステップに接近したように、THE QEMISTSがヘヴィロック側にこういう形で接近するのも面白いと思います。

リミックスに関しては、あくまでフロアライクなダンスミュージックという観点で制作されているようです。今年の『LOUD PARK』にも出演して知名度を上げたZardnicとの組み合わせも「なるほど!」と思わせるもの。THE QEMISTSにはこういうど真ん中のダンスサウンドも合ってるなと改めて気づくこともできました。

次の作品までのつなぎという意味もあるでしょうが、今作の場合は『WARRIOR SOUND』で再び波に乗った彼らがその勢いを絶やさないために、かつ思いついた新たなアイデアを試すためにも必要な場だったのかなと。2ndアルバムから3rdアルバムのときみたいにリリース間隔が大きく空かなければ、こういうミニアルバム発売も個人的には全然アリです。なんなら、この新作発売に関連してまた来日してほしいぐらいですから。

なお、このミニアルバムは日本限定リリースとなっており、アルバム封入の解説およびそこに掲載されているレオン・ハリス(Dr)のインタビューを僕が担当しております。詳しいことはそこに全部書いてあるので、まずはCDを購入することをオススメします!



▼THE QEMISTS『WARRIOR SOUNDSYSTEM』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2016 12 23 12:00 午前 [2016年の作品, Qemists, The] | 固定リンク

2016/12/22

THE QEMISTS『WARRIOR SOUND』(2016)

2010年夏発売の2ndアルバム『SPIRIT IN THE SYSTEM』から5年半ぶりに発表された、THE QEMISTSの3rdアルバム。この5年半の間に、バンドにはオリバー・シモンズ(Vo)、ブルーノ・バランタ(MC)の選任フロントマン2名が正式加入し、リアム・ブラック(G)、ダン・アーノルド(B)、リオン・ハリス(Dr)のオリジナルメンバーを含む5人組バンドに。1stアルバム『JOIN THE Q』と2ndアルバム『SPIRIT IN THE SYSTEM』にはさまざまなゲストボーカリストを迎えたカラフルさがあったけど、今作では1本筋が通ったような太い芯を以前よりも強く感じることができます。

サウンド的には過去の作品にもあったデジタルダンスサウンドに、ギターを軸にしたヘヴィロックサウンドの色合いをまぶしたもの。ひと昔前ならデジロックと揶揄されそうな恐れもあるけど、特にここ日本ではラウドロックと称して(バンド、デジタルすべてを飲み込んだ)ヘヴィなサウンドが好意的に受け入れられていることから、本作も好意的に受け入れられているようです。

その大きな要因となっているのがCrossfaithのフロントマン、Kenta Koieがゲスト参加した「Anger」が収録されていること。THE QEMISTSとCrossfaithはUKツアーをともにしただけでなく、今春行われたTHE QEMISTSの来日公演にもKoieがゲスト参加して同曲を披露。そういったつながりも、日本のファンには親しみを与えるよいきっかけになっているんじゃないでしょうか。

サウンドでの攻撃性のみならず、歌詞にも社会や政治への反抗心が表現されているので、最新型の“Rebel Music”をぜひ音、言葉を通じて体感してほしいです。

余談ですが、メンバーインタビューを交えたこのアルバムの解説文がリアルサウンドに掲載されているので、詳しくはこちらも御覧ください。



▼THE QEMISTS『WARRIOR SOUND』(2016)
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 22 12:00 午前 [2016年の作品, Qemists, The] | 固定リンク

2016/12/21

MEGADETH『DYSTOPIA』(2016)

2015年秋の『LOUD PARK』に出演する際、過去のスタジオアルバムに関して全レビューを行ったMEGADETHですが、結局その後このニューアルバムについて触れてなかったので、年をまたぐ前に紹介しておこうと思います。

こちらのレビューでは、当時公開されたばかりの新曲「Fatal Illusion」について「これ1曲では判断が難しいが、やはりメロディの雰囲気が前作に多少近いかなと。しかし演奏やアレンジ的には合格ライン」「前作からの課題であるムステインが以前ほど歌えなくなってきてる問題 or メロディセンスが落ちてきてる問題をどうフォローするのか、そしてカッコよく聴かせるかがポイントになってくるのかな」と不安であることを記していましたが、そこから数ヶ月後に発売されたアルバムは「良くも悪くも、僕らが知ってるMEGADETHのまま」で一応は安心しました。

スラッシーなオープニングトラック「The Threat Is Real」から、マーティ・フリードマン加入後の作品に多く見られる泣きメロ疾走メタルチューン「Dystopia」への流れは完璧。キコ・ルーレイロのギターソロも抜群にカッコいいし、リズムを支えるクリス・アドラー(LAMB OF GOD)のドラミングもMEGADETHに合わせたプレイで好印象。この2曲からの流れで聴くと、「Fatal Illusion」の印象も不思議と悪くない。その後も“いかにも”なミドルヘヴィナンバーや、キコのエキゾチックなアコギプレイをフィーチャーした「Bullet To The Brain」「Poisonous Shadows」「Conquer Or Die!」なども飛び出し、終始飽きさせない構成で進行していきます。そしてラストはFEARのカバー「Foreign Policy」で激しく締めくくり。全11曲(日本盤はその後にボーナストラック1曲、iTunesでは日本盤ボートラとも異なる新曲2曲が本編中に追加収録)、思っていた以上にスルッと聴くことができました。そういう意味では、2000年代のMEGADETH(『UNITED ABOMINATIONS』以降の流れ)を踏襲した作風で、前作『SUPER COLLIDER』で感じた疑問を完全に払拭してくれたと思います。

で、「悪い意味」では……やっぱり歌メロですね。80年代から90年代半ば、いわゆるMEGADETHの全盛期と言われた時代の楽曲にあった「デイヴ・ムステインのヒステリックな高音ボイス」がなくなり、中低音域メインの歌メロとなっています。以前も書いたかもしれませんが、このへんは若い頃に散々楽しんだドラッグのツケが回ってきたのかな、と思っているのですが……とはいえ、ムステインもこの9月で55歳。年齢的なものもあるのかな。歌える声域が狭まったため、どうしても高音が出なかったりメロのバリエーションが少なかったりという点での不満は拭いきれません。そこだけは嘘でも「良かった」なんて言えない。だから、本当にもったいないアルバムだなと思うんです。

チャート的には1992年の最大のヒット作『COUNTDOWN TO EXTINCTION』(全米2位)に次ぐ、初登場3位という好記録を残しており、そこだけはホッとしております。ゲストドラマーだったクリス・アドラーも離れ、ダーク・ヴェルビューレン(SOILWORK)が正式加入したとのことで、過去最強の多国籍編成になった今のMEGADETHを(アルバムリリース後の来日がいまだ実現していないだけに)早く生で観たいものです。



▼MEGADETH『DYSTOPIA』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD


【MEGADETH ディスクレビュー一覧】
『KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!』(1985)
『PEACE SELLS... BUT WHO'S BUYING?』(1986)
『SO FAR, SO GOOD... SO WHAT!』(1988)
『RUST IN PEACE』(1990)
『COUNTDOWN TO EXTINCTION』(1992)
『YOUTHANASIA』(1994)
『HIDDEN TREATURES』(1995)
『THE CRAVING』(1996 / MD.45名義)
『CRYPTIC WRITINGS』(1997)
『RISK』(1999)
『CAPITOL PUNISHMENT: THE MEGADETH YEARS』(2000)
『THE WORLD NEED A HERO』(2001)
『THE SYSTEM HAS FAILED』(2004)
・『UNITED ABOMINATIONS』(2007)【その1 / その2
『ENDGAME』(2009)
『THIRTEEN』(2011)
『SUPER COLLIDER』(2013)
『DYSTOPIA』(2016)

【MEGADETH ライブレポート一覧】
2006年10月14日@幕張メッセ(『LOUD PARK 06』)

投稿: 2016 12 21 12:00 午前 [2016年の作品, Megadeth] | 固定リンク

2016/12/20

STEVEN TYLER『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』(2016)

聴く前からこんなにも不安でネガティブな気持ちになったソロアルバムって、自分の経験上そんなになかったんじゃないかな。だって、これが世に出るということは、バンドとしてしばらく機能しないということを示すわけだから。

そんな気持ちで接した、AEROSMITHのフロントマン、スティーヴン・タイラー初のソロアルバム『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』。カントリーレーベルからのリリースということで、最初は「年寄りが趣味でやるんでしょ。はいはい」くらいの気持ちでいたんです。そもそも、アルバムの1年前に発表されたリードトラック「Love Is Your Name」がポップだけどレイドバックしまくりだったから、余計にね。いや、悪い曲じゃないんですよ。ぶっちゃけ、エアロの最新作『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』の楽曲よりも優れてると思ったし。いやいや、比べるのは違うか。

ここ数年、以前ほど高音が出にくくなって、声質もカサカサになってきたスティーヴンの声には、こういうサウンドが意外と合うんだな。そう前向きなことも考えました。でも、自分が聴きたいのはジョー・ペリーと並ぶスティーヴンの姿。ジョーがソロをやるのとは意味が違うんですよ。

ところが。不安を抱えたままアルバムと接すると……いいんです、これが。楽曲がどれも優れているというのは言うに及ばず、スティーヴンのボーカルワークも非常に素晴らしい。無理にシャウトせず淡々と歌っているんだけど、それでも存在感が溢れてしまう感じといいましょうか。サウンド的にもカントリーを軸にしてはいるものの、もっとアメリカンポップス寄り。そもそもスティーヴンの性分を考えれば、こうなるのも納得なわけで、古き良き時代のアメリカンポップスやカントリー、ブルース、そして適度にロックで適度にサイケ。思えばエアロの楽曲の大半はスティーヴンがジョーと一緒に書いてきたもの。こういう作風になるのは当然であり、演奏している人間が異なるんだからエアロにならないのも当たり前。なんでそんな簡単なことに気づかなかったんだろうと、聴き終えた後に反省しました。そんなフラットな気持ちで接すれば、「Janie's Got A Gun」のアーシーなセルフカバーも素直に受け入れられるわけです。

もしかしたらこの人は、もっと新曲をレコーディングしたかったのかな。でも、それが今のエアロでは叶わないというなんらかの障害が存在する。だったら自分の好きなように1枚作ろうと。そう納得することにしました。事実、このアルバムを出した後にはエアロはショートツアーも行っているわけで、以前ほど大々的な活動はないものの、今後もよきタイミングでライブをしてくれるはず、と。

そんなことを考えていたところに、来年のツアーを最後にAEROSMITHの活動終了という話が飛び込んできたり。さらに来春にはスティーヴンのソロ来日公演も決定。もう何が正しくて、何が間違っているのか判断がつきませんが……ひとまず武道館でのソロライブには行きます。夏にはエアロでフェスに出たりツアーをしたりするようなので、そちらでの来日にも期待したい。そして……せめてバンドでもう1枚アルバムを作ってください。それだけが僕の望みです。その夢が実現するまで、このソロアルバムやここ数年発表されたライブ作品を目に耳にし続けていこうと思います。



▼STEVEN TYLER『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 20 12:00 午後 [2016年の作品, Aerosmith, Steven Tyler] | 固定リンク

2016/12/19

THE MONKEES『GOOD TIMES!』(2016)

60年代にアメリカを中心に一世を風靡し、その後何度か再結成をしているTHE MONKEES。バンドの顔としてアイドル的人気を誇ったデイヴィ・ジョーンズが2012年に亡くなり、音楽的支柱だったマイク・ネスミスも脱退。現在はミッキー・ドレンツとピーター・トークの2人だけが正式メンバーですが、THE MONKEESをリスペクトするフォロワーたちの協力を得て、20年ぶりに完成させたオリジナルアルバムが今作です。そういった話題性もあったか、本作はビルボード200にて14位という好成績を残しています。

プロデュースにFOUNTAINS OF WAYNEのアダム・シュレシンジャーが参加。もちろん楽曲制作にも携わっており、この他にもアンディ・パートリッジ(XTC)、リヴァース・クオモ(WEEZER)、ベン・ギバート(DEATH CAB FOR CUTIE)、ノエル・ギャラガー、ポール・ウェラーといった錚々たる面々が楽曲提供。さらに60年代にレコーディングされたデイヴィ・ジョーンズのボーカルを活かした楽曲も含まれているだけでなく、レコーディングにはマイク・ネスミスも参加しています。ボーカルの比重の違いこそあれど、これはまさしく僕が洋楽原体験として聴き親しんだTHE MONKEESそのものなのです。

楽曲はどれも悪いわけがない。ハリー・ニルソンやニール・ダイヤモンドの楽曲も含まれているのですが、フォロワーたちがTHE MONKEESに新曲を書くと意気込んだこともあってか、いい意味でどれが新曲でどれがカバーかわからないくらいに充実しています。もっとも、各アーティストのファンが聴けば、どの曲もそれぞれのクセが散りばめられているので「これは誰の曲」とおわかりになると思いますが。

2016年にTHE MONKEESの新作が聴くことができたという事実もさることながら、その完成度の高さにただただ驚かされた1枚。2016年は個人的に非常に豊作でしたが、そんな1年を語る上で欠かせないアルバムと言えます。


こちらはリヴァース提供楽曲。らしさがありますね。


こちらはアンディ・パートリッジ先生の楽曲。本気度が違います。



▼THE MONKEES『GOOD TIMES!』
(amazon:国内盤CCCD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 19 12:00 午前 [2016年の作品, Monkees, The] | 固定リンク

2016/12/18

BIFFY CLYRO『ELLIPSIS』(2016)

2枚組ながらも初の全英1位を獲得した前作『OPPOSITES』(2013年)から3年半ぶり、通算7枚目のオリジナルアルバム。前作発表後、2014年に「FUJI ROCK FESTIVAL '14」で久しぶりの来日が実現し、WHITE STAGEヘッドライナーのMANIC STREET PREACHERSを食わんばかりの圧倒的なステージを繰り広げたのは記憶に新しいと思います。事実、僕もあのステージで完全にやられた者のひとり。アルバムは『PUZZLE』(2007年)以降毎作聴いてましたが、やっぱりライブを観ないとわからないものですね。

今回のアルバムもUK1位を獲得。いかにも彼ららしい壮大なミディアムナンバー「Wolves Of Winter」からスタートし、アップテンポな「Animal Style」のような楽曲はありつつも、アルバムの核をなすのはスケール感の大きなミドルチューン。明らかに数万人規模のアリーナやスタジアムで鳴らされることを意識して作られたであろう楽曲は、デカい音で聴けば聴くほどその魅力が増すものばかりです。もちろん穏やかなテイストの「Re-arrange」「Small Wishes」やアコースティックナンバー「Medicine」なども混在し、アルバムは緩急をつけながら進行していきます。全体的に見ても「Wolves Of Winter」で始まり切れ味鋭い「In The Name Of The Wee Man」で締めくくる構成に、このバンドの魅力が表れている気がしてなりません。

どことなく「UK版FOO FIGHTERS」(UKといいつつ、実はスコットランド出身)というイメージがあるBIFFY CLYROですが、このアルバムにはスコティッシュとしてのアイデンティティもしっかり感じられます。と同時に、よりワールドワイドな戦いを挑む上で必要な試みも随所に用意されており、そういう意味では「第二のデビューアルバム」的作品と言えるかもしれません。アメリカでの成功はまだつかんでいませんが、きっかけさえあれば確実に受け入れられると信じて止みません。



▼BIFFY CLYRO『ELLIPSIS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 18 06:00 午前 [2016年の作品, Biffy Clyro] | 固定リンク

2016/12/17

BE THE WOLF『ROUGE』(2016)

今年2月にアルバム『IMAGO』で日本デビューを果たした、イタリアはトリノ出身のトリオバンドによる2ndアルバム。日本では前作がかなり高く評価され、僕も遅まきながら春過ぎに前作を入手し、よく聴いておりました。その編成や湿り気のある日本人好みのメロディから、デンマークのDIZZY MIZZ LIZZYと比較する声もあるようですが、完全に別モノです。当たり前ですが。

前作はデビュー作ということで勢いに満ちた楽曲もありましたが、今作はそういう楽曲も少なからず存在するものの、それ以上に自身の魅力や個性ととことん向き合った“哀メロ度MAX”のミディアムナンバーが中心。2曲目「Down To The River」冒頭で早くもアコギのアルベジオが聞こえてきたときは、さすがに「大丈夫? ちょっと考えすぎてない?」と心配になりましたが、アルバムが進むにつれてその心配は無駄に終わりました。だって、全編この調子なんだもん。適度にパワフル、だけどメインの武器はメロディ。この戦法で本気の勝負に挑んでる感はかなり強く伝わりました。情熱的な赤(というより紅)を使ったジャケットからも、その熱は感じられます。

通して聴いたときの印象として、作風は異なるけどRED HOT CHILI PEPPERS『CALIFORNICATION』に近いものを感じたのは僕だけでしょうか。もっとも今作のほうがよりハードロック寄りだし、日本人の琴線に触れるものが多いと思いますが。

そういえば前作ではボーナストラックとしてKILLSWITCH ENGAGE「The End Of Heartache」をアコースティックカバーしておりましたが、今作ではブルーノ・マーズ「Locked Out Of Heaven」をバンド編成でカバーしています。これのなかなかの仕上がりです。ただ、日本盤の2枚組仕様に付いてくるライブディスクは蛇足かな。スタジオ作品のような完成度は感じられず(主にボーカルの頼りなさが……)、年明けに控えた再来日公演への不安を煽る代物になりそうな予感……無理して初回盤を手に入れなくてもいいと思います。



▼BE THE WOLF『ROUGE』
(amazon:国内盤2CD / 国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 17 12:00 午前 [2016年の作品, Be The Wolf] | 固定リンク

2016/12/16

ANDY BLACK『THE SHADOW SIDE』(2016)

BLACK VEIL BRIDESのフロントマン、アンディ・ビアサックによる“アンディ・ブラック”名義での初ソロアルバム。ゴスや80年代のLAメタルにも通ずるファッションと、エモ/スクリーモと往年のHR/HMを融合させたバンドでのサウンドとは異なり、このソロ作では落ち着いたトーンの“大人のロック”を聞かせてくれます。といっても、そこは単なるAORで完結しておらず、しっかり毒っ気も散りばめられています。

バンドのアクが強いぶん、このソロ作はさらっと聴けてしまい、物足りなさを感じるリスナーも多いかもしれません。バンドと切り離して楽しめる人なら、迷わずオススメしたい1枚。ゴスやダークな要素を取り入れたメタル/ラウド系バンドのメンバーが作るソロ作としては、非常に理想的な作品だと個人的には感じています。そして何より、どの曲もキャッチーというのは非常に強い。このポップセンスをバンドで100%生かしてしまうと、それはそれで問題になってくるでしょうし、アーティストとしての才能の吐け口として今後も定期的にソロ作を作ってくれると嬉しいです。とはいえ、BLACK VEIL BRIDESも確実に継続してもらわないと困りますが。

そういえばこの夏、サマソニで来日した際にステージをちらっと観ましたが、ちょうどGENERATION Xの「Dancing With Myself」をカバーしてるところに出くわしまして。思えばバンドでもビリー・アイドルの「Rebel Yell」をカバーしてましたし、目指すところはそこなのかな……と思ったのでした。うん、“HR/HM界のビリー・アイドル”。悪くないよね。すでにそういうポジション、いそうだけど。

ちなみに今作、日本盤は2016年12月時点で未発売。BLACK VEIL BRIDES自体も2014年の最新作『BLACK VEIL BRIDES』は国内盤のリリースがなかったし……寂しいもんですね。



▼ANDY BLACK『THE SHADOW SIDE』
(amazon:海外盤CD

投稿: 2016 12 16 12:00 午前 [2016年の作品, Andy Black, Black Veil Brides] | 固定リンク

2016/12/15

IGGY POP『POST POP DEPRESSION』(2016)

スタジオアルバムとしてはIGGY & THE STOOGES名義での『READY TO DIE』(2013年)から3年ぶり、ソロ名義では意外にも『PRELIMINAIRES』(2009年)以来7年ぶりの新作。『PRELIMINAIRES』がジャズやラウンジミュージック寄り(しかも曲によってはフランス語で歌唱)だったので、どんなロックサウンドが聴けるかと思ったら、想像以上に落ち着いたガレージサウンドでびっくりさせられました。

プロデュースにQUEENS OF THE STONE AGEのジョシュ・オムを迎え、そのジョシュとQOTSAやTHE DEAD WEATHERで活動をともにするディーン・フェルティータ、そしてARCTIC MONKEYSのマット・ヘルダース(Dr)とでバンドを組む形でレコーディング。そのヒリヒリしたガレージサウンドはジョシュならではといった感じで、ポストロックを通過した楽曲群も70年代後半のイギーに通ずるものがあります。

聴く前は『READY TO DIE』のような激しく前のめりなパンクロックを期待してたので、ちょっとだけ肩透かし。ただ、イギーのこれまでの活動歴や前作『PRELIMINAIRES』を踏まえると、こういう作風になるのも納得かな。今作が最後のアルバムなんて噂もありますが、気づけばイギーも69歳。盟友デヴィッド・ボウイも亡くなったことを考えれば、イギーが今もこうやって新作をリリースしてくれること自体が奇跡みたいなもの。曲数こそ9曲と少なく感じるけど、1曲1曲の音楽的密度は異常なまでに高いものばかり。『THE IDIOT』から約40年を経てここにたどり着いたという事実も非常に興味深いです。これがアーティストとしての“スワンソング”になるとはまだ思いたくないけど、仮にそうなったとしても納得してしまえる力作ではないでしょうか。

できれば、この編成でのライブも観たかったなぁ。なんてことをつい先日発売されたライブ映像+音源からなる作品『POST POP DEPRESSION : LIVE AT THE ROYAL ALBERT HALL』を手にして考えてしまいました。こちらについては、改めて触れたいと思います。



▼IGGY POP『POST POP DEPRESSION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 15 12:00 午前 [2016年の作品, Iggy Pop] | 固定リンク

2016/12/14

CHEAP TRICK『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLO』(2016)

オリジナル作品としては2009年の『THE LATEST』以来、実に7年ぶりのニューアルバム。しかもオリジナルドラマーのバン・E・カルロスがツアーやレコーディングから離れ、リック・ニールセンの息子ダックス・ニールセンが参加した編成による初のアルバムでもあります。さらに言えば、ここ数作(かれこれ10年くらい)ずっと自主レーベルからのリリースだったのが、今作はBig Machine Recordsというユニバーサル傘下のインディペンデントレーベルからのリリース。それもあってか、1988年のヒット作『LAP OF LUXURY』(最高16位)以来28年ぶりのトップ40ヒット(ビルボード最高31位)という成績を残しています。

肝心の内容ですが、王道のCHEAP TRICKサウンド満載といったところでしょうか。オープニングの「Heart On The Line」から勢い良くスタートし、先行で無料配信されたポップなロックナンバー「No Direction Home」、穏やかな印象の「When I Wake Up Tomorrow」、豪快なサウンドが気持ち良い「Do You Believe Me?」「Blood Red Lips」と、冒頭5曲だけでも「ああ、自分は今CHEAP TRICKのアルバムを聴いてるんだ」と強く実感できるはずです。それはもちろんアルバム後半でも引き続き感じられ、終始「安心安全のCHEAP TRICKサウンド」を心置きなく楽しめることでしょう。

こういうバンドの場合、下手に新しいことに挑戦するよりも、いかに従来のスタイルの中で「聴いたことあるようで、でも初めて聴く」新曲を量産していくことに意味があるような気がします。それってどれも一緒なんじゃない?と思われるでしょうが、CHEAP TRICKの場合はその「従来のスタイル」の幅が他のバンドと比べても広いので、毎回聴き手を飽きさせないアルバムを作ることができるわけです。今回のアルバムも前作『THE LATEST』とも、その前の『ROCKFORD』(2006年)とも、さらにその前の『SPECIAL ONE』(2003年)とも、90年代に発表された『WOKE UP WITH A MONSTER』(1994年)とも『CHEAP TRICK』(1997年)とも異なる作風&魅力ですし、間違いなく今後も上記の作品同様、長きにわたり愛聴しつつけることでしょう。

11月に行われた、今作を携えた来日公演も最高に楽しかったです。生で聴く「Long Time No See Ya」や「Blood Red Lips」は想像以上にカッコよかったですよ。



▼CHEAP TRICK『BANG, ZOOM, CRAZY...HELLO』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD


【CHEAP TRICK ディスクレビュー一覧】
『SPECIAL ONE』(2003)
『ROCKFORD』(2006)

【CHEAP TRICK ライブレポート一覧】
1999年10月11日@横浜ベイホール


投稿: 2016 12 14 12:00 午前 [2016年の作品, Cheap Trick] | 固定リンク

2016/12/13

BON JOVI『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』(2016)

2013年のアルバム『WHAT ABOUT NOW』以降、リッチー・サンボラ(G)のツアー離脱〜バンド脱退、契約消化のために突如発表された“ファンアルバム”『BURNING BRIDGES』(2015年)および所属レーベルからの一時離脱など、なにかとネガティブな話題が多かったBON JOVIの起死回生を占う3年ぶりのオリジナルアルバム。チャート成績では2007年の『LOST HIGHWAY』から続くビルボード1位を4作連続で獲得し、まずは数字の上で復活をアピールできたのではないでしょうか。

ひんやりとした音使いとアレンジから若干ダークなイメージを受けるリードトラック「This House Is Not For Sale」から始まるアルバムは、やはり全体的に冷た目なトーンで統一されています。2000年代前半から半ばの作品に存在した「カントリーを通過したアメリカンパワーポップ」風味は減退し、2009年のアルバム『THE CIRCLE』に比較的近い印象を受けました。が、『THE CIRCLE』ほどの熱量はボーカルやバンドサウンドから感じられず、どこか控えめ/抑え気味な気も。「Knockout」のような攻め気味ロックチューンやBON JOVIならではの王道ナンバー「Born Again」にすら、往年の暑苦しさは存在しません。リッチーのギターが入ってないことも影響していると思いますが(それにより、ギターロックアルバムというよりはジョンの歌を軸にしたボーカルアルバムとして仕上げられています)、これを大人になったと感じるか覇気がなくなったと感じるかで評価は大きく二分しそうです。個人的には前作『WHAT ABOUT NOW』は数回聴いてしばらく放置してしまうような扱いだったのですが、今作は何度も聴き返せるし、純粋に楽しめる作品集だと思いました。

ちなみに、海外盤は通常仕様が12曲入り(M12「Come On Up To Our House」まで)、デラックス仕様が17曲入り(M17「Goodnight New York」まで)と曲数が異なります。ボーナストラック5曲の出来も悪くないですが、個人的には久しぶりに12曲できっちり勝負してほしかったかな。前作もそうですが、曲数が多いと1曲1曲がなかなか印象に残りにくいので。なお、日本盤はDVD付きも通常盤も同じ18曲入り(ボーナストラックにM18「Touch Of Grey」追加)。多ければいいってもんじゃないってば。

そういえば海外では間もなく、本アルバム『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』を曲順どおりに演奏したライブアルバム『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE : LIVE FROM THE LONDON PALLADIUM』もリリースされます(日本盤は年明け1月発売予定)。こちらではデラックス盤収録の17曲をすべて披露しているので、もしかしたら17曲入りのほうが正式なトラックリストで、12曲入りのほうは「もっと手軽に楽しみたい人向け」なのかも。それでも17曲は多いけどね。

そういえばBON JOVIもMETALLICAみたいに、ニューアルバムからたくさんのMVを制作してるけど、これって流行りなんですかね?



▼BON JOVI『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』
(amazon:国内盤CD+DVD / 国内盤CD / 海外デラックス盤CD / 海外盤CD


【BON JOVI ディスクレビュー一覧】
『BON JOVI』(1984)
『7800° FAHRENHEIT』(1985)
『SLIPPERY WHEN WET』(1986)
『NEW JERSEY』(1988)
『KEEP THE FAITH』(1992)
『CROSS ROAD』(1994)
『THESE DAYS』(1995)
『LIVE FROM LONDON』(1995)
『CRUSH』(2000)
『TOKYO ROAD』(2001)
『ONE WILD NIGHT - LIVE 1985-2000』(2001)
『BOUNCE』(2002)
『HAVE A NICE DAY』(2005)

【BON JOVI ライブレポート一覧】
2000年7月13日@東京ドーム


投稿: 2016 12 13 12:00 午前 [2016年の作品, Bon Jovi] | 固定リンク

2016/12/12

GREEN DAY『REVOLUTION RADIO』(2016)

先日、GREEN DAYのニューアルバム『REVOLUTION RADIO』リリースに際して、日本デビューから名作『AMERICAN IDIOT』の期間までA&Rを担当したスタッフさんにインタビューしたのですが、このインタビューをする際に事前にニューアルバムを試聴したり、個人的に過去のアルバムをすべて振り返ったりと、久しぶりにGREEN DAYの音楽と真正面から向き合う機会を得ました。いや、「久しぶり」と書いてみたものの、ここまで真剣に彼らの音楽と向き合ったのは、もしかしたら初めてかもしれない。それくらい真剣に聴くこと、なかなかなかったなって今気づかされました。自分にとって彼らの音楽ってもっと日常と密接した聴き方をしてきたから、家でじっくり歌詞読みながら向き合うとかそんなことはまずなかったから。

彼らの3部作『¡UNO!』『¡DOS!』『¡TRE!』が連続リリースされたのが2012年後半のこと(1作目が9月、続いて11、12月と連続発売)。その後、ビリー・ジョー・アームストロングとノラ・ジョーンズとのデュエットアルバム『FOREVERLY』(2013年)を筆頭に、3部作のメイキング映像集『¡CUATRO!』(2013年)や3部作制作時のデモ音源集『DEMOLICIOUS』(2014年)大ヒット作『AMERICAN IDIOT』のレコーディング時の舞台裏を収めたドキュメンタリー作品『HEART LIKE A HAND GRENADE』(2016年)が次々と発表されてきたので、実は『REVOLUTION RADIO』が4年ぶりという感覚があまりなくて。正直、そこまで空いてたんだ!という驚きのほうが大きかったかも。とはいえ、あの3部作は個人的にそこまでしっくりくる作品集ではなかったし、そもそも来日も1作目『¡UNO!』が発売される1ヶ月前にサマソニのヘッドライナーで来たっきり。むしろそっちでの飢餓感のほうが大きかったかも。

そんなわけで、個人的に満足のいく“ニュー”アルバムとなると2009年の『21ST CENTURY BREAKDOWN』以来。それはきっと多くのリスナーにとっても一緒だったんじゃないでしょうか。しかも『21ST CENTURY BREAKDOWN』以降はポップサイドに振れてパンク度が低くなったと感じていたファンも少なからずいたと思いますし、そういう人にとっては「満足いく内容のアルバムは2004年の『AMERICAN IDIOT』以来」なんて言うかもしれないし。そう期待させてしまうだけのリードトラック2曲(「Revolution Radio」と「Bang Bang」)が先行公開されてたから、余計にね。

この2曲を聴いてしまえば、『AMERICAN IDIOT』、いや『DOOKIE』などのパンキッシュな初期作品のようなアルバムを期待してしまうのは仕方ないこと。誰もが「GREEN DAY、パンクに帰還!」なんて歓喜したはずです。

ところが、実際はどうだったでしょう。確かにそういった楽曲も少なくないですが、アルバムは『AMERICAN IDIOT』や『21ST CENTURY BREAKDOWN』を通過した壮大なミディアムチューン「Somewhere Now」からスタートするわけですから、中には「裏切られた!」と思ってしまった人も少なからずいたはずです。

では、そうやって切り捨てるようなアルバムかというと、まったくそんなことはありません。直線的なパンクロック作品ではないかもしれませんが、これは間違いなく「僕たちが知ってるパンクロックバンドGREEN DAY」以外の何ものでもありません。ただ、『DOOKIE』から確実に20年以上が経過しており、私たちが年を取ったようにバンドも同じだけ年を重ねているわけです。そこには人間としての成長もあればミュージシャンとしての成長、そしてパンクロッカーとしての成長も間違いなく存在する。そうした多くの経験を経たわけですから、仮に1994年に『DOOKIE』で鳴らしていたものを2016年の今の技術と思考で表現すれば、こうなるのではないでしょうか。

もちろん、この『REVOLUTION RADIO』で表現しようとしたことは「『DOOKIE』の焼き直し」ではありません。40代になったGREEN DAYの面々がパンクというスタイルを用いて、現在の考えや思いを音楽に乗せた。それが時に「Revolution Radio」や「Bang Bang」であり、時にポップな「Still Breathing」や「Youngblood」であり、時にプログレッシヴで組曲のような「Somewhere Now」や「Forever Now」であっただけの話なのです。3分前後の疾走ナンバーもあれば、複雑な展開を持つ7分近い大作もある。バンドの3人だけでは再現が難しそうなアレンジの曲もあれば、アコギ1本の弾き語りで表現できる曲もある。戦う姿勢を直球で示すだけではなく、さまざまな表現方法を用いてより幅広い人たちに届けようとした。それが大人になったGREEN DAYからの“答え”だったのではないかと、僕はこのアルバムを解釈しています。

そんなわけで、嫌いになれるわけがないこのアルバム。彼らの作品としては久しぶりにヘヴィローテーションする1枚となりました。パンキッシュなショートチューンも悪くないですが、個人的には(以前だったら毛嫌いしてたような)どポップな「Still Breathing」や、THE BEATLES「While My Guitar Gently Weeps」にも通ずる物悲しいメロディの「Troubled Times」、そしていかにも彼ららしい“パンクオペラ”「Forever Now」が好みだったりします。10年前の自分だったら「GREEN DAYのこういう長い曲、苦手なんだよな……」なんて思ってただろうな(苦笑)。



▼GREEN DAY『REVOLUTION RADIO』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 12 12:38 午前 [2016年の作品, Green Day] | 固定リンク

2016/12/03

ROLLING STONES『BLUE & LONESOME』(2016)

ストーンズの新作が2005年の『A BIGGER BANG』以来、実に11年ぶりという事実に震えています。しかも、その内容がすべてブルースのカバーで、たった3日間(ブックレットによると2015年12月11日、14日、15日)でレコーディングを済ませたとのこと。ダリル・ジョーンズ(B)、チャック・リーヴェル(Key, Piano)、マット・クリフォード(Key, Piano)という90年代以降のストーンズには欠かせないサポートメンバーに加え、ジム・ケルトナー(Per)や、さらにエリック・クラプトン(G)もゲスト参加するなど話題に事欠かない内容です。

ストーンズがこの11年、何もしてなかったのかというとまったくそんなことはなく、常にツアーを繰り返していたこと、ライブ映画『シャイン・ア・ライト』やドキュメンタリー映画『クロスファイア・ハリケーン』の公開、そして2012年に新曲2曲を含むベストアルバム『GRRR!』をリリースして以降はかなり長期にわたるワールドツアーを実施。ことリリースに関しては、先のライブ映画のサウンドトラックとしてライブアルバム『SHINE A LIGHT』を2008年にリリースしたのを筆頭に、70年代の名盤『STICKY FINGERS』『EXILE ON MAIN ST.』『SOME GIRLS』のデラックスエディションの発表、過去の秘蔵ライブ映像のDVD/Blu-ray化など、毎年何かしらの新しいアイテムが市場に並んでいました。そいう意味での飢餓感はほぼ皆無でしたが、こと新録作品となると先に書いた『A BIGGER BANG』以降は、2012年の新曲「Doom And Gloom」「One Last Shot」のみ。しかもこれらがカッコイイもんだから、「もっとまとまった形で聴きたい!」と熱望したロックファンは少なくなかったはずです。

そんな彼らが新作に向けて動き出した、なんて話がこの1年の間に何度か話題になりました。特に今年の夏以降はそれがより具体的な形で話題となり、「クラプトンがレコーディングに参加した」「どうやらブルースの名曲を録ったらしい」「ブルースアルバムになるらしい」とネタが小出しになっていきます。

そんな経緯を経て、ついに発表されたニューアルバム『BLUE & LONESOME』。「新曲ゼロかよ!」とか「ジャケ、ダッサ!」とかいろいろ突っ込みたい気持ちを抑えつつアルバムに向かうと……「すみませんでした!」と土下座したい気持ちいっぱいになります。だって、「これこれ! これが聴きたかったんだよ!」っていう濃厚なストーンズ節炸裂な1枚なんですもの。

60年代のストーンズはブルースのカバーをアルバムやシングルに収録してきましたが、70年代のストーンズはブルースをベースにしつつもより拡散した音楽性を見せ始めます。そして80年代は前半こそ70年代の延長線上でしたが、半ばは空白期間、89年にアルバム『STEEL WHEELS』でようやく本腰をあげます。この『STEEL WHEELS』は従来のストーンズが好きというファンからは敬遠されがちな1枚かもしれませんが(テクノロジーを用いた、“Well-made”なストーンズ)、このアルバムの制作時にはシングルのカップリング向けにいくつかオリジナルのブルースナンバーが制作されています。つまり、再始動にあたり最新のことをやりつつもルーツも取り戻す、そんなタイミングだったのかもしれません。

以降のストーンズは『VOODOO LOUNGE』(1994年)、『BRIDGES TO BABYLON』(1997年)、『A BIGGER BANG』(2005年)と適度に流行を取り入れつつも、本質的にはより生々しい本来の姿へと戻りつつありました。そして、ついにいろんな皮を剥いで生まれたままの姿を現した。しかもただ生まれたままの姿ではない、年季の入った形で。それが今回の『BLUE & LONESOME』かな、と思いました。

ストーンズやクラプトンを通じてブルースにハマった人なら、ここでカバーされている楽曲の大半は知っているものでしょう。ラストナンバー「I Can't Quit You Baby」はLED ZEPPELINのカバーで初めて知ったなんて人も多いはずです。ブルースのカバーということで楽曲の解説は野暮かなと思うので、今回は割愛。それ以上に触れるべきなのは、やはりキース・リチャーズやロン・ウッドのより渋みの増した隙だらけのギタープレイ、チャーリー・ワッツのタメの効いたドラミング、そしてミック・ジャガーの本気な歌いっぷりとブルースハープでしょう。久しぶりに『A BIGGER BANG』を引っ張り出して聴いてからこの『BLUE & LONESOME』に触れたのですが、これが同じバンドか!?と驚かされます。本作を前にすると、『A BIGGER BANG』ですらカッチリとキメすぎに聴こえるし……いかに彼らがこの『BLUE & LONESOME』を楽しみながら制作したかが、その音からもしっかり伝わってきます。

また、ビル・ワイマン(B)在籍時しか認めないみたいなオールドファンから散々叩かれてきたダリル・ジョーンズのベース、この隙だらけのバンドアンサンブルとスウィングしまくりなチャーリーのドラムに、今回ばかりはガッチリハマってる。そういう奇跡(?)もこのアルバムでは存分に味わえます。もちろんクラプトンのギターソロ(M-6「Everybody Knows About My Good Thing」とM-12「I Can't Quit You Baby」)もさすがに一言で、前者ではスライドギターによるソロも楽しめます。

個人的には特にタイトルトラックのM-3「Blue And Lonesome」、そしてラストのM-12が「I Can't Quit You Baby」がグッときたかな。もちろん全曲捨て曲なしですけどね。ああ、これは飽きが来ないし、何回でも聴き返せる。改めてROLLING STONESというバンドの凄みを思い知らされた1枚でした。

ちなみに、彼らは本作を作り終えた直後にオリジナル作品の制作に移行した、なんて話もありますが……もし本当なら、そう遠くない将来にポンと発表されるんでしょうね。楽しみ楽しみ。



▼ROLLING STONES『BLUE & LONESOME』
(amazon:国内盤CD / 国内盤デラックスエディション / 海外盤CD


【ROLLING STONES ディスクレビュー一覧】
『FLASHPOINT』(1991)
『A BIGGER BANG』(2005)

【ROLLING STONES ライブレポート一覧】
2006年3月22日@東京ドーム

投稿: 2016 12 03 12:36 午後 [2016年の作品, Rolling Stones] | 固定リンク

2016/11/21

METALLICA『HARDWIRED...TO SELF-DESTRUCT』(2016)

前作『DEATH MAGNETIC』から実に8年ぶりのオリジナルアルバム。今作リリースまでの8年間については、こちらの記事でまとめているので参考まで。

今作はリリースの3ヶ月前に最初の曲(「Hardwired」)が公開され、その1ヶ月後に2曲目(「Moth Into Flame」)、さらにその1ヶ月後に3曲目(「Atlas, Rise!」)が順次公開されるという徹底したプロモーション展開を用意。しかも3曲ともしっかりMVまで制作しており、こんなご時世にお金かけてるな、なんて思っていたら……発売前日に、アルバム全収録曲のMVを2時間おきに公開していくという驚愕のプロモーションを展開。アホかと。これもう、CD買わなくても全部聴けちゃうじゃん。しかもサブスクリプションサービスでも聴けるし。どうなってるの!?

と思ったけど、ビルボードの集計方法が変わって、確かサブスクリプションでの再生のみならずYouTubeの再生回数もカウントされるようになったんですよね。すげえな、徹底してる。

さて……今回普通にレビューしようかと思いつつも、そういう事情もあって自分がやる必要もないのでは?なんて思ったのです。が、今作に関しては仕事柄、人より早く試聴することができたので、どうせならその際のファーストインプレッション(試聴時のメモ)を晒してしまおうかと思いまして(M-1のみ、WEBで初公開された際の感想を流用)。試聴した時点では「Hardwired」と「Moth Into Flame」の2曲のみが公開されていただけで、残りの10曲がこのとき初めて聴いたわけです。事前情報が何もない状態での試聴なので、自分が何を感じたのか、この作品をどう位置付けたのか、記録として残しておくのも面白いかなと思ったわけです。

しっかりしたレビューは、「ヘドバン Vol.12」を読んでいただければと。ここからは、番外編的にお楽しみください。


<DISC 1>

M-1. Hardwired

どことなく初期(特に1st『KILL 'EM ALL』)のヤケクソさを感じさせつつも、バスドラのアクセントの付けかたには『ST.ANGER』期の匂いも漂わせている。少なくとも『DEATH MAGNETIC』とは異なる作風で、その後に制作された「Lord of Summer」がもっとも近いような気がしないでもない。また歪みのかかったミックスが物議を呼んだ『DEATH MAGNETIC』とも異なり、非常に整理された音なのも興味深い。


M-2. Atlas, Rise!

大袈裟なイントロから入るも、リフは非常にシンプル。「Hardwired」にも通ずる1st『KILL 'EM ALL』路線や、3rd『MASTER OF PUPPETS』の流れ。サビメロに絡むギターフレーズが“歌い”まくってる。メタルというよりは、70年代のハードロック的イメージ。ラーズのオカズ、手グセ、カークのギターソロのメロディなどどこを取っても正統派という印象。転調やテンポチェンジなどの展開はないが、しっかり構成・構築された大作。


M-3. Now That We're Dead

ミドルテンポ。独特なタム回し。「Search & Destroy」的でもあるし、ブラックアルバムや『LOAD』に入っていても違和感なし。リフの刻み方に遊び心を感じる。ここまでの3曲を聴いて、全体的にシンプルな印象を受けたが、それでいて実は要所要所の作り込みがしっかりしていることにも気づく。


M-4. Moth Into Flame

今作中ではもっとも2000年代の流れを汲む楽曲。懐かしさと新しさが同居した、不思議な魅力がある。サビメロの節回しが独特で、一聴してMETALLICAと気づかされる。Bメロ後のギターソロの絡みが心地よい。この随所に挿入されるギターソロ(しかもツインリード)が本作の肝かも。


M-5. Dream No More

ダウンチューニングを用いたダークなミドルナンバー。高音&低音のダブルボーカルと、引きずるようなヘヴィなリズムは「The Thing That Should Not Be」っぽい。中盤のブレイク(無音)でのブレスが生々しく、ドキリとさせられる。全体の感触は『LOAD』『RELOAD』的か。が、キャッチーさはその2作以上。それらにあった間延び感も皆無。アレンジ練られてる。


M-6. Halo On Fire

イントロでのツインリードがカッコイイ。バラード調かと思わせておいて、不穏な空気を醸し出すミドルナンバーという。メロウでキャッチー、サビでヘヴィさ増す。全体の構成は「Fade To Black」を思い出すが、メロは『LOAD』『RELOAD』的。


<DISC 2>

M-1. Confusion

軍隊の行進を思わせるイントロのリズムは「The Struggle Within」っぽい。が、全体の雰囲気は『…AND JUSTICE FOR ALL』や前作の「Cyanide」風。リフの組み合わせ、グルーヴ感、メロディの泣きが絶妙に絡み合う。ダルさは感じない。


M-2. ManUNkind

イントロのベース&ギターソロが印象的。静と動の対比が気持ち良い。軸になるのはシャッフルビートだが、要所要所のキメが心地よい。『LOAD』『RELOAD』でチャレンジしたことをさらに煮詰めた印象。1曲1曲が長いのに、飽きさせない工夫がところどころから感じられる。


M-3. Here Comes Revenge

仰々しい長めのイントロから、重く引きずるミドルテンポ→テンポ倍に。ブラックアルバムに入っていても不思議じゃない。どこか悲しげなメロディも、ブラックアルバム的。なのに、アクセントの付け方は焼き直しではなく現代的。タムの音色が独特で、ギターソロの派手さも80年代後半〜ブラックアルバム時代に通ずるものある。ラストのツーバス連打、ラーズ頑張ってる。


M-4. Am I Savage?

ダークでスローなオープニング。泣きのギターソロ。バラードと見せかけて、派手なアレンジで幕開け。実は超ヘヴィなミドルチューン。リズムが若干ハネ気味。BLACK SABBATHっぽい? というか、ブラックアルバム〜『LOAD』『RELOAD』にありそうな曲調。意外とクセになるサイケなメロと、ハネたリフ&リズム。ブレイクも良いアクセントに。


M-5. Murder One

アルペジオと一体感あるバンドの演奏が交互に、静と動の繰り返し。風変わりなギターリフは、どこかモダンメタル風でもあり。ここまでミドルテンポの曲が続くとダレそうなものだが、1曲1曲の構成や緊張感は『LOAD』『RELOAD』の頃とは比にならない。また、『ST.ANGER』『DEATH MAGNETIC』みたいにエディットした曲構成という印象も薄く、恐らく大半はセッションを経て作られたものなのでは。その際、かなりアレンジにこだわったのではないかと推測。


M-6. Spit Out The Bone

最後の最後にようやく、オープニング以来の攻撃的なファストチューン。バンドが一体になって、音の塊として攻める印象。にしてもメロディやギターソロがキャッチーで、泣きまくってる。終盤にミドルテンポになるパートあり、ここが長めに続きエンディングへ向けて熱量を高めていくような。クライマックスのギターソロで一気に解放される。締めくくりとしては最高だが、このアルバムにおけるファストチューンの重要度はそこまで高くないように感じた。メインになるのはミドルテンポの楽曲。ここをしっかり聴かせたいアルバムなんだなと。


<総評>
・初期3作を念頭に置きながら、90年代(ブラックアルバム、『LOAD』『RELOAD』)を見つめ直す。
・ギターソロが泣きまくり。カークの頑張りが伝わるアルバム。
・シンプルに見えて、実はかっちり作り込まれている。
・なおかつ、長尺の曲では聴き手を飽きさせないフック、アクセントが多数用意されている。
・アレンジ力の勝利。
・DISC 1の構成、完璧。一方でDISC 2はラストまでファストチューンがないので賛否分かれそう。
・結局「Lord Of Summer」からすべてが始まってたんだなと実感。
・NO BALLAD, JUST METAL!!!
・今回も問題作(笑)。



▼METALLICA『HARDWIRED...TO SELF-DESTRUCT』
(amazon:国内盤2CD / 国内盤3CD / 海外盤2CD / 海外盤3CD


【METALLICA ディスクレビュー一覧】
『KILL'EM ALL』(1983)
『RIDE THE LIGHTNING』(1984)
『MASTER OF PUPPETS』(1986)
『THE $5.98 E.P.- GARAGE DAYS RE-REVISITED』(1987)
『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988)
『METALLICA』(1991)
『LOAD』(1996)
『RELOAD』(1997)
『GARAGE INC.』(1998)
『S&M』(1999)
『ST.ANGER』(2003)
『ST.ANGER (EP)』(2003)
『DEATH MAGNETIC』(2008)
『LULU』(2011 / LOU REED & METALLICA名義)
『BEYOND MAGNETIC』(2012)
『METALLICA: THROUGH THE NEVER』(2013)

【METALLICA ライブレポート一覧】
2003年11月7日@国立代々木競技場第一体育館

投稿: 2016 11 21 06:28 午前 [2016年の作品, Metallica] | 固定リンク

2016/10/21

LADY GAGA『JOANNE』(2016)

派手で人工的。これが自分のレディ・ガガに対するイメージだった。決してネガティブな意味ではなく、ポップミュージックを第一線で届け続けるエンターティナーに対する賞賛であり、初めてライブを観たときもジーン・シモンズ言うところの「Larger Than Life」を地でいく表現者なんだと納得した。少なくとも2013年作『ARTPOP』までは。

トニー・ベネットとのコラボ作『CHEEK TO CHEEK』を挟んで発表された今作は、「ガガ、人間回帰。」のタタキ文よろしく非常に生々しさに満ちた作品集だ。人工甘味料を排除し果汁100%で勝負する、そんな心意気をモダンながらも音数が減ったサウンドと自叙伝的な歌詞から強く感じる。

今年30歳になった彼女にとって節目の1枚でタッグを組んだのがマーク・ロンソンというのも、この音を聴いて納得。方法論や向かう先は異なるかもしれないが、聴き終えた後の感触がどこか宇多田ヒカル『Fantôme』に似たものがあるのは偶然だろうか。好みの作品だけに、この「ありのまま感」が今のアメリカでどう評価されるのかを見守りたい。


※このレビューは同作リリース時に『TV BROS.』に掲載されものを一部修正して掲載しております。



▼LADY GAGA『JOANNE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 10 21 12:00 午前 [2016年の作品, Lady Gaga] | 固定リンク

2016/10/14

TWO DOOR CINEMA CLUB『GAMESHOW』(2016)

「Kitsuné」から現レーベルへの移籍後、EPの発表はあったもののフルアルバムは『BEACON』から4年ぶり。前作は英米でも好成績を記録し、ここ日本でもサマソニや単独来日などで話題になったので当時聴きまくったが、そんなに時間が経っていたとは。そういえば今年のサマソニでたまたま彼らのステージを観た際に、思わず「懐かしい…‥」とつぶやいてしまったのも記憶に新しい。

そんな彼らの新作、過去2作のイメージを引き継ぎつつ、よりファンキーでグラマラスになった印象を受けた。どこかニューロマンティック的というか、80年代中盤のMTV世代にマイケル・ジャクソンやマドンナ、プリンス、ポール・マッカートニーが一世を風靡した、あの煌びやかな時代を踏襲しつつ、単なる焼き直しではなく現代的な感性で再構築した、どこか懐かしくて新しい音。ただキャッチーなだけではなく、そこかしこに毒を孕んだ中毒性の高いダンスポップ/ロックは、映画『シング・ストリート』を最近観た自分にはストレートに響くものばかり。アラフォー世代にこそ手に取ってほしい1枚かも。


※このレビューは同作リリース時に『TV BROS.』に掲載されものを一部修正して掲載しております。



▼TWO DOOR CINEMA CLUB『GAMESHOW』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 10 14 12:00 午前 [2016年の作品, Two Door Cinema Club] | 固定リンク

2016/09/30

BON IVER『22, A MILLION』(2016)

今年2月の初来日公演(チケットを持っていたものの急な取材で泣く泣く断念…)も記憶に新しいアメリカの新世代シンガーソングライターによる、今年もっとも熱望されていた新作。ライブで先行披露された楽曲をネットを通じてすでに耳にしたリスナーも多いと思うが、こうやって盤という形でスタジオ音源に耳を傾けると、また違った印象が湧き上がってくるから不思議だ。

楽曲が持つメロディの強さは前2作より高まっているのだが、その歌やメロディがまとうサウンドスケープの自由度はさらに増している。シンプルだけどどこか入り組んでいて、でも複雑さや難しさはあまり感じられず、結局最後に残るのはメロディや歌の強さという楽曲が持つ個性は、まさに本作における「読めないんだけど雰囲気は伝わってくる」曲名そのものではないだろうか。

サウンドのテイストはよりモダンに進化しているのに、昔から知っている懐かしのポップ/フォークミュージックのような。あるいは賛美歌を最新のアレンジで聴いているような。そんな普遍的な強さを持った、稀有なのに当たり前として存在してほしい傑作と呼びたい。


※このレビューは同作リリース時に『TV BROS.』に掲載されものを一部修正して掲載しております。



▼BON IVER『22, A MILLION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 09 30 12:00 午前 [2016年の作品, Bon Iver] | 固定リンク

2016/07/15

JEFF BECK『LOUD HAILER』(2016)

御歳72歳の名ギタリスト、まだまだ攻めまくり。オリジナル作としては6年ぶりという事実にも驚きだが、女性シンガー&ギタリストと組んでラウドで重々しいアルバムを制作するというその姿勢も、人生の大先輩として見習いたいものだ。

力強くもどこか気怠いボーカルとキレッキレのギターとの相性は抜群で、適度な枯れ&泣きも混在。レジェンドが次々にこの世を去る今だからこそ、この力作を全力で受け止めたい。


※このレビューは同作リリース時に『TV BROS.』に掲載されものを一部修正して掲載しております。



▼JEFF BECK『LOUD HAILER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 07 15 12:00 午前 [2016年の作品, Jeff Beck] | 固定リンク

2016/07/04

2016年上半期総括

ひとまず7月4日現在の10枚を。本当は洋邦5枚ずつにしたかったんだけど、洋楽が絞りきれず6枚に。Radioheadを外してでもこういうセレクトしたかったんでしょうね、今の心境的に。

Adrian Younge「Something About April II」

Anohni「Hopelessness」

David Bowie「Blackstar」

Deafheaven「New Bermuda」(日本盤2016年発売)

Ihsahn「Arktis.」

Savages「Adore Life」

ATATA「Joy」

BOOM BOOM SATELLITES「LAY YOUR HANDS ON ME」

D.A.N.「D.A.N.」

金子ノブアキ「Fauve」

投稿: 2016 07 04 01:46 午前 [2016年の作品, 「1年のまとめ」] | 固定リンク

2016/06/15

RADIOHEAD『A MOON SHAPED POOL』(2016)

初聴でここまですんなりと体に入り込んできたRADIOHEADのアルバムは、ずいぶん久しぶりじゃないだろうか。それは過去2作(2007年の『IN RAINBOWS』、2011年の『THE KING OF LIMBS』)とは異なり、配信直前にリードトラック2曲「Burn The Witch」「Daydreaming」を(しかもじっくり作り込まれたMVと一緒に!)公開したことも大きい。いや、それ以上に今作が『KID A』以降に彼らが積み重ねてきた音楽的変遷の集大成のような内容というのが一番の理由かもしれない。

とはいえ、ここにあるのは単なる過去の焼き直しではない。そりゃあ過去にライブで披露してきた楽曲の新録も含まれているし、『KID A』などで見せた驚きの新機軸こそないものの、1曲1曲の作り込み方や説得力は近作の中でもベストなのでは。

本人たちに自覚はないのかもしれないが、このアルバムからはメンバー5人が改めて「RADIOHEADとは?」というテーマと向き合いながら、今持ち合わせているアイデアと技術と経験をすべて注ぎ込むんだという気概を感じた。それが最初に述べた入り込みやすさにつながったのだろう。対極な作風かもしれないが、『KID A』以来の大傑作だと断言したい。


※このレビューは同作リリース時に『TV BROS.』に掲載されものを一部修正して掲載しております。



▼RADIOHEAD『A MOON SHAPED POOL』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 06 15 12:00 午前 [2016年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2016/05/06

ANOHNI『HOPELESSNESS』(2016)

「絶望」を意味するアルバムタイトル、ダウナーでどこか宗教色が感じられるエレクトロニックサウンド、そこに乗る「かつてアントニー・ヘガティと呼ばれた“女性”」による深みのあるボーカル。正直、これだけを目にすればかなりコアな層を意識したマニアックな作品と感じてしまうかもしれない。しかし、実際耳にしたアノーニの1stアルバムは非常にポップで、“入って”いきやすい1枚だ。

生音重視のオーガニックサウンドの印象が強いANTONY AND THE JOHNSONSから一変、ハドソン・モホークやOPNといったモダンなエレクトロ系アーティストとのコラボで完成した本作は、母性すら感じさせるアノーニの歌声と相まって「現代のゴスペル」という印象が強い。“彼”から“彼女”になった、と文字にすれば簡単に聞こえるかもしれないが、アノーニという1人の人間が自身の性(さが)を向き合い、葛藤したからこそ誕生した生々しい「記録」なのだ。だからこそ「絶望」というタイトルにより重みを感じるし、そのタイトルトラックから一筋の「希望」が感じられるのも興味深い。


※このレビューは同作リリース時に『TV BROS.』に掲載されものを一部修正して掲載しております。



▼ANOHNI『HOPELESSNESS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 05 06 12:00 午前 [2016年の作品, Anohni] | 固定リンク

2016/02/05

JAMES BAY『CHAOS AND THE CALM』(2016)

昨年末からCDショップにて輸入盤が展開され、さまざまなメディアで名前を目にする機会の多かったUK期待の大型新人アーティストがついに日本デビューを果たした。ぶっちゃけ、ここまでの展開やメディアでの持ち上げ方に対して、ちゃんと聴く前から食傷気味だったが、今回じっくり聴いてみたら……なるほど、と唸ってしまう仕上がりだったので、あながち世間の持ち上げ方は間違いではなかったことに気付かされた。食わず嫌いで申し訳なかった。

フォーキーでソウルフル、適度にロック色もあって若いのに枯れ気味。アデル以降の大型新人シンガーに共通する要素だが、昨年のサム・スミスしかり、すべては「声」なのだと実感させられる。ずっと聴いていても飽きがこないし、かといって聴き流せるほど地味な内容でもない、絶妙なバランス感で成り立つ。グラミー主要3部門ノミネートも納得の楽曲群が並ぶ恐るべし良作。日本では売りにくい作風かもしれないが、野外フェス出演で一気に大化けしそうな予感。大自然でまったり聴きたい。


※このレビューは同作リリース時に『TV BROS.』に掲載されものを一部修正して掲載しております。



▼JAMES BAY『CHAOS AND THE CALM』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 02 05 12:00 午前 [2016年の作品, James Bay] | 固定リンク