カテゴリー「2016年の作品」の79件の記事

2020年10月23日 (金)

ARCHITECTS『ALL OUR GODS HAVE ABANDONED US』(2016)

2016年5月27日にリリースされたARCHITECTSの7thアルバム。日本盤未発売。

前作『LOST FOREVER // LOST TOGETHER』(2014年)からEpitaph Recordsへと移籍し、過去最高の全英16位という好記録を残し、アメリカでも初のTOP200入り(最高125位)を果たしたARCHITECTS。そんな大成功を収めた同作から2年2ヶ月というスパンで届けられた今作は、引き続きヘンリック・ウッド&フレドリック・ノルドストロームのコンビがプロでプロデュースを手がけた、前作の延長線上にある1枚に仕上がっています。

ジェントにも通ずる複雑なリフワークやリズムの刻み方は相変わらずですし、適度にフィーチャーされたデジタルテイストも味付けとして良い方向に作用している。さらに、スクリームとメロウなボーカルパートのバランスも絶妙な配分で、オープニングの「Nihilist」からフルスロットルで飛ばしまくっています。かと思えば、「Downfall」のようにエモーショナルさが際立つ楽曲も存在し、カオティックなメタルコアを好むリスナーもメロディアスなテイストを好むリスナーも満足させるだけの完成を誇る内容だと断言できるでしょう。

とにかく、リズムの取り方、刻み方が気持ちよく、ザクザクと細かく切り刻む(ドラムがツーバス踏みまくる)ビートもあれば、壮大なスケール感を持つビッグなビートも含まれている。その組み合わせ方/構築方法のオリジナリティが今作でほぼ確立され、ARCHITECTSというバンドがほかのメタルコアバンドの追随を許さない唯一無二の存在へと成長したことが、この1枚からも伺えます。

ARCHITECTSはアルバムごとに大きなテーマが用意されており、そのテーマをなぞった歌詞が各曲に綴られています。今作の大きなテーマは「世界的な怒りと幻滅」であり、このアルバムこそがARCHITECTSから現代社会に向けたステートメントであると。攻撃的でヘヴィなサウンド&アンサンブル、それと同じくらいの悲しみや失望が伝わるメロディはARCHITECTS史上もっともダークなものと言えるでしょう。しかし、その質感が妙に気持ちよく響くのは、彼らが我々と同じく痛みや悲しみを抱えているから。それがダイレクトに刺さるんだけど、痛みが快楽へと昇華されていく。この感覚、ハマったら抜け出せないものがあり、気づけばARCHITECTSというバンドの虜になっているはずです(かくいう僕も前作で彼らにハマり、現在に至ります)。

本作リリースから3ヶ月後の8月20日、3年以上にわたりガンと戦ってきたトム・サール(G)が逝去。後付けですが、この怒りや痛み、悲しみはトムのものであり、彼を支えるバンドメンバーのものでもあったんだなと……そして、その痛みと苦しみ、悲しみは次作『HOLY HELL』(2018年)でクライマックスを迎えることになります。

 


▼ARCHITECTS『ALL OUR GODS HAVE ABANDONED US』
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2020年9月 3日 (木)

ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.1』(2016)

2016年4月にリリースされたエース・フレーリーのカバーアルバム。スタジオ作品としては通算7作目のソロアルバムとなります。

本作はエースに多大な影響を与えてきたアーティストたち(CREAMTHE ROLLING STONESジミ・ヘンドリクスFREETHIN LIZZYLED ZEPPELIN、THE TROGGS、STEPPENWOLF、THE KINKSと無難なセレクト)の名曲に加え、KISS時代の楽曲も3曲収録。自身が作詞作曲した「Parasite」および「Cold Gin」(ともにジーン・シモンズVo曲)はわかりますが、彼がレコーディングにほぼ関わっていない『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)から「Rock And Roll Hell」(ジーン、ブライアン・アダムス、ジム・ヴァランス作)をセレクトしているのには思わず「?」となってしまいました(苦笑)。

全12曲中11曲でエースがリードボーカルを担当しており、「White Room」と「Bring It On Home」ではドラマーのスコット・クーガン(L.A. GUNS、ex. BRIDES OF DESTRUCTIONなど)がコ・リードボーカルを披露しています。エースのボーカルは今さら述べるまでもなく(笑)、味わい深いヘタウマぶりで、もはや安定感すら漂っています。うん、もうこれはこれでアリだし、これじゃなきゃいかんわな。

で、本作の注目点はもうひとつ、多彩なゲスト陣が挙げられると思うのです。先に述べたボーカル曲のうち、エースが歌っていない「Fire And Water」ではKISS時代の盟友ポール・スタンレーが参加。なにやら最初はジーンに声をかけたんだけどスルーされ(笑)、続いてポールに声をかけたらOKをもらえたんだとか。かわいそうだけど(苦笑)、結果いいコラボレーションが楽しめたので良しとしましょう(その後、ジーンは次作『SPACEMAN』にソングライティング&ベースで1曲参加しているので、めでたしめでたし)。

このほかにもスラッシュGUNS N' ROSES)が「Emerald」でエースとツインリードを披露し、リタ・フォードは「Wild Thing」でツインボーカル&リードギター、ジョン・5(ROB ZOMBIE)は「Spanish Castle Magic」と「Parasite」でリードギター、マイク・マクレディ(PEARL JAM)は「Cold Gin」でギターソロを聴かせてくれます。「Emerald」は意外とエースのボーカルがハマっているのと、スラッシュが良い仕事をしてくれていることで、個人的にもベストテイクかな。KISSナンバーの数々はさすがにボーカル含め小慣れた感強し(笑)。そんな中で、やはり「Rock And Roll Hell」だけはジーンのクセの強さが脳裏に焼き付いているので、ちょっとした違和感が。でも、慣れると悪くないですよ(実はギターソロがなかなかエースらしさ満載で、良テイクではないかと)。

今年9月にはカバー集第2弾『ORIGINS VOL.2』のリリースも控えており、すでに「Space Truckin'」(DEEP PURPLE)が公開中。こちらも楽しみにしております。

 


▼ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.1』
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2020年5月22日 (金)

WEEZER『WEEZER (WHITE ALBUM)』(2016)

2016年4月初頭にリリースされたWEEZERの10thアルバム。

セルフタイトルアルバムはこれまで1stアルバム(1994年)3rdアルバム(2001年)、6thアルバム(2008年)と3作発表しており、それぞれジャケットのメインカラーから『BLUE ALBUM』、『GREEN ALBUM』、『RED ALBUM』の愛称で親しまれてきましたが、赤盤から8年を経てついに白盤(『WHITE ALBUM』)の登場です。ここまでセルフタイトルを多用するメジャーバンドも少ないですよね。

さて、本作の内容ですが……アルバムカラーとは一切関係なく(笑)、いつもどおりのWEEZER節前回のパワーポップアルバムに仕上がっています。前作『EVERYTHING WILL BE ALRIGHT IN THE END』(2014年)は要所要所にフックが用意された、なかなかトリッキーながらも彼ららしい1枚で好印象でしたが、それと比べると本作は若干ストレートすぎるかな? むしろ、ポップ色/甘味料を多めに使用することで、ジャケットの白とは相反して意外とカラフルな仕上がりではないかと思います。

オープニングの「California Kids」や「(Girl We Got A) Good Thing」などのポップ感は、どこかTHE BEACH BOYSあたりにも通ずるものがあり、これはジャケットにビーチで撮影した写真を用いているから……なんて深読みもしたくなりますが(笑)。まあ、たまたまでしょうね。また、シングルカットもされた「Thank God For Girls」などはモダンな味付けも含まれており、適度な“今”感を提示。このへんのカラフルさはさすがの一言です。

かと思えば、「Do You Wanna Get High?」のような泣き虫ロックナンバー、豪快なサウンドの「King Of The World」や「L.A. Girlz」みたいに初期の彼らが好きな層にもアピールする定番スタイルもしっかり用意されている。先のTHE BEACH BOYS的アプローチにしろ、もちろんこれまでも表出していた要素のひとつであるわけで、要するにすべてにおいて“WEEZERらしさ”から一歩もはみ出すことなく、リスナーが求めるものを的確に提供してくれる。まさに教科書的な1枚と言えるでしょう。

だからこそ、前作にはあった刺激という点においてはちょっと物足りなさも感じる。全10曲で34分という古き良き時代のレコード的コンパクトさと相まって、何度か聴いているうちに「もういいかな?」と思えてしまうこともある、そんな平均点的な1枚でもあるのかなと思いました。もちろん、出来は非常に良いですし、たまに聴くと「あ、やっぱり良いね」と感じるのですが、長きにわたり飽きずに楽しめる傑作とはちょっと違うのかな。

そういう作品のあとだったからこそ、続く11thアルバム『PACIFIC DAYTREAM』(2017年)『BLACK ALBUM』(2019年)の変化には思いっきり刺激を受けたわけですが。要は、この振れ幅こそがWEEZERなんでしょうね。

 


▼WEEZER『WEEZER (WHITE ALBUM)』
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2020年3月19日 (木)

WARDRUNA『RUNALJOD - RAGNAROK』(2016)

2016年10月にリリースされたWARDRUNAの3rdアルバム。本作が日本デビューアルバムとなっており、海外から1年半遅れの2018年3月に満を辞して発表さてました。

WARDRUNAはノルウェーのベルゲンを拠点とするバンド/ユニットで、元GORGOROTHのドラマーだったアイナル・セルヴィク(GORGOROTH時代はクヴィトラフンと名乗っていた)を中心に2003年に結成。自身の音楽ルーツに目覚めたアイナルが、土着的民謡や北欧神話などの伝承に触発されたことを機に、ブラックメタルの対極にあるトラッドフォークやゴシック、アンビエントといった“静”のスタイルで独自の音楽を構築しています。

アイナルはボーカルヤドラムのほかにターゲルハルパ(擦弦楽器)、クラヴィクリラ(小型の竪琴)、ブッケホルン(角笛)、ルール(細長い管楽器)といった古楽器を多用。現在は彼の他に女性ボーカルのリンディ=ファイ・ヘラ、ルールやホルン、フルート、アイス・パーカッション奏者のエイリッフ・グンダーゼン、アルネ・サンヴォル(Vo)、HCダルガード(Vo)、ヒェル・ブラーテン(Vo)というメンバーが在籍しています。

本作はデビューアルバム『RUNALJOD - GAP VAR GINNUNGA』(2009年)から始まった、「創生」「生長」「終末」というサイクルを描く三部作の最終章にあたるもの。前作『RUNALJOD - YGGDRASIL』(2013年)まで在籍したガァールことクリスチャン・アイヴィン・エスペダル(Vo/ex. GORGOROTH)脱退を経て、1stアルバムから7年、結成から13年にてついに最初のコンセプトが完結することになります。

先に書いたように、ブラックメタル的な“動”の要素は皆無で、むしろそのサブジャンルとも言えるダークフォークに属する密室感の強い土着的なサウンドと、宗教音楽のような(言い方は失礼ですが)不気味なミニマルサウンドが交差する、非常にクセの強い楽曲が並んでいます。ドラムというよりもパーカッションをメインに使ったリズムセクションが土着感をより強め、パターン化されたフレーズをループすることで生み出される不思議な高揚感が聴き手にトリップを誘う。そういったところにも密教的な危うさが感じられるのではないでしょうか。

また、古ノルド語によるボーカルもまるで何かの神様(善の神か、あるいは悪霊か)を降臨させる呪文のようにも聞こえ、聴き手の情緒を不安に陥れる。だけど、なぜか聴くことをやめられない不思議な魅力が強い……そう、気づけばこの音色/ハーモニー/プリミティブなリズムに魅了されている自分がいるのです。

メタルの要素は皆無ですが、MYRKURなどにも通ずる魅力を持つアーティストだけに、メタルから派生したひとつの進化形と捉えて楽しむのもありかもしれません。

なお、彼らは昨年新たにSony Music / Columbia Recordsとメジャー契約。今年6月には通算5作目のアルバム『KVITRAVN』をリリース予定です。4作目『SKALD』(2018年)がほぼアイナルのソロアルバム形態だったので、三部作とソロスタイルを経たWARDRUNAが新たにどんなサウンドスケープを構築するのか、今から楽しみでなりません。

 


▼WARDRUNA『RUNALJOD - RAGNAROK』
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2020年2月29日 (土)

DIZZY MIZZ LIZZY『FORWARD IN REVERSE』(2016)

2016年4月末にリリースされたDIZZY MIZZ LIZZYの3rdアルバム。日本盤は海外よりも2週間先行で発表されています。

1996年5月の2ndアルバム『ROTATOR』を経て、1998年にはバンド解散を発表したDIZZY MIZZ LIZZY。以降はフロントマンのティム・クリステンセン(Vo, G)がソロで活動を続けておりましたが、2009〜2010年の期間限定で再結成を遂げ、再来日公演も実現しております。そして、2014年には期間を設けない本格的な再結成を発表。パーマネントな活動再開を遂げたことで、この新作制作も実現したわけです。

前作『ROTATOR』からまるまる20年を経て届けられた新作ですが、そんな長期間のインターバルがあったことを感じさせないくらいに、本作には『ROTATOR』からの連続性を感じさせるテイストが含まれています。と同時に、ティムがソロ活動で経験した音楽的成長もしっかり落とし込まれており、単なる“焼き直し”で終わらないバンドとしての進化も感じられる1枚に仕上がっています。

同じメンバー、同じソングライターが再びDIZZY MIZZ LIZZY名義で新作を作るわけですから、そこには1stアルバム『DIZZY MIZZ LIZZY』(1994年)や続く『ROTATOR』のテイストが散りばめられているのは当然の結果。むしろ、ティムがこのシンプルなバンド編成でテクニカルかつハードなロックを奏でれば、それは自然とDIZZY MIZZ LIZZYの音になる。ここに関しては、最初の再結成で過去の楽曲を何度も演奏しているので、自然とそういった身に付いたものが表出した結果と言えるでしょう。「そう、DIZZY MIZZ LIZZYってこうだよね」と。

そんな彼ららしい要素は、冒頭の「Forward In Reverse」や「Terrified In Paradise」といったパンチの効いた楽曲から感じ取ることができるはず。ただ、もちろんこれらは過去の焼き直しではなく、『ROTATOR』から進化・成長したDIZZY MIZZ LIZZYの姿も浮き彫りにしている。そして、「Something So Familiar」のような穏やかな楽曲も過去のDIZZY MIZZ LIZZYにありそうと言えば確かにそれっぽいものの、このへんはティムのソロ活動の延長線上にある楽曲なのかな。そういった経験がしっかりバンドにも持ち込まれたこの曲は、個人的に「ティムにとってDIZZY MIZZ LIZZYとソロ活動は地続き」という事実を再認識するよいきっかけになりました。うん、本当にいい曲。

「Love At Second Sight」や「Made To Believe」のような“らしい”アンサンブルの楽曲が中盤に置かれているのも、興味深いポイントかな。前半で“らしさ”よりも“新しさ”を強調した楽曲を用意し(アルバムを「Phlying Pharaoh」というインスト曲から始めるあたりも、まさにそこだと思う)、中盤に過去を彷彿とさせる楽曲を並べ、アルバムの流れにワンクッション置く単尺曲「Frey」を経てヘヴィな「Mindgasm」から再び新しいDIZZY MIZZ LIZZYを提示する。この「Frey」「Mindgasm」という2つのインスト構成も、ミュージシャンとしての20年分の成長をまとめて落とし込んだような力作で、個人的にはアルバム後半のハイライトだと思っています。

そこから「Fly Above The Rader」「I Would If I Could But I Can't」とガッツのある楽曲が続き、ラストをムーディかつドラマチックな長尺曲「Say It To Me Anyway」で締めくくる。完璧なまでに“古き良き時代の、アルバムらしいアルバム”と断言できる仕上がりです。

ここまでの力作を携えて本格復活したDIZZY MIZZY LIZZY。まもなく4年ぶりの新作『ALTER ECHO』をドロップしますが、こちらも『FORWARD IN REVERSE』以上に気合いの入った“ミュージシャンズ・ミュージシャン”らしい傑作(ひと足先に聴かせてもらいました)。90年代の彼らこそベストと過去にしがみつくことを否定しませんが、だからといって今を否定するのはナンセンス。こんなに時代に合った(と同時に、時代の流れを無視した)最高な作品を無視することは、罪以外の何ものでもありません。どうか、もっといろんなところに行き届きますように。

 


▼DIZZY MIZZ LIZZY『FORWARD IN REVERSE』
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2020年1月10日 (金)

新感染 ファイナル・エクスプレス(2016)

あらすじ
ソウル発プラン行きの高速鉄道KTXで突如起こった謎の感染爆発。列車内で凶暴化する感染者たち―乗り合わせたのは、妻のもとへ向かう父と幼い娘、出産間近の妻と夫、そして高校生の恋人同士…彼らは終着駅にたどり着くことができるのか―?目的地まであと2時間、絶体絶命のサバイバルが今はじまる!

韓国発のゾンビ映画。ゾンビといってもロメロ直系のスタンダードスタイルではなく、『28日後...』『バイドハザード』に習ったスピーディな動きをするヤツ。しかも、劇中ではソンビというワードは一切登場せず、化学薬品の汚染→感染という経路で感染者のアクションを“暴動”と捉えているところは『28日後...』に近いかもしれません。

ただ、本作の面白かったポイントは非感染者が高速鉄道という、行動範囲が限られた密室空間で物語の大半が進行するという点でしょう。密室系パニックアクション映画はこれまでにもたくさんありましたが、そこにゾンビものを混ぜ込んだことで、パニック度が過剰に盛り上がり、かつ銃社会ではない韓国を舞台にしているところもリアリティが感じられる。終始ダレることなく楽しめました。

実はこの作品最大の敵はゾンビ/感染者ではなく、同じ人間だという風刺(かな?)じみたところはどことなくロメロっぽいかも? そんなこともないか。コン・ユ演じる主人公の「自分さえよければ」というマインドや、最初から最後まで自分勝手さが際立った高速バス会社の常務、老姉の博愛心を嫌悪する老妹、ほかの車両から逃げてきた主人公たちを「感染しているかもしれない」という不確定な理由で排除しようとする他の生存者たち……そんな中で、子供ならではのピュアさをみせる主人公の娘と、妊娠中の女性の発言/行動は最初から最後まで安心していられたし、物語の救いになったところも大きかったと思います(結末的にも納得ですしね。悲しいエンディングだったけど)。

ゾンビ映画として接すると点数はかなり低めだけど、パンデミック系パニック映画として楽しめば十分に完成度は高いのではないでしょうか。事実、韓国内でもかなりのヒット作となり、続編の制作も決定しているようですし、アメリカでのリメイクも決まっているんだとか。欧米映画にありがちなネタを逆輸入するとどうリメイクされるのか、そちらも気になるところです。

(*84点)

 


▼新感染 ファイナル・エクスプレス
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2019年9月19日 (木)

OPETH『SORCERESS』(2016)

2016年9月末にリリースされたOPETHの12thアルバム。前作『PALE COMMUNION』(2014年)から2年ぶりの新作にあたり、本国スウェーデンでは最高7位、全米24位/全英11位という好成績を残しています。

前作でペル・ヴィベリ(Key)からヨアキム・スヴァルベリに交代し、ミカエル・オーカーフェルト(Vo, G)、フレドリック・オーケソン(G)、マーティン・メンデス(B)、マーティン・アクセンロット(Dr)との現編成で2作目となる今作では、10thアルバム『HERITAGE』(2011年)で迎えた“脱デスメタル”路線をさらに推し進め、60〜70年代的なプログレッシヴ・ロックのスタイルをより強めることに成功しています。

『PALE COMMUNION』でのスタイルが気に入った人なら十分に受け入れられる作風だと思いますが、8thアルバム『GHOST REVERIES』(2005年)までのゴリゴリしたサウンドが好みだったリスナーにはちょっと退屈に聴こえるかもしれません。とはいえ、過去2作と比較するとメタル度はかなり高く、『HERITAGE』でOPETHから離れてしまったリスナーにも存分にアピールするものがあるはずです。

には若干メタリックなカラーが残されていますが、全体的にはアシッドフォーキーにも通ずる穏やかな作風がより強まっているんじゃないかなと。かと思えば、そこからの揺れ戻しのようにプログレメタル的なヘヴィさも随所に用意されており、その緩急の巧みさは過去2作以上。メタリックなカラーが強く反映されたタイトルトラック「Sorceress」や、ギター&キーボードによるソロバトルがフィーチャーされた「Chrysalis」なんて、DREAM THEATERあたりが好きな人にもピンとくるものがあるのではないでしょうか。

ミカエルのボーカルも完全に脱デス声しており、ノーマルなクリーントーンで淡々と歌い上げられている。ソロプレイを含むフレドリック・オーケソンによるギターフレーズもメタルのそれというよりは、どことなくフュージョン的な方向に寄っており、それが80年代以降の末期PINK FLOYD的な空気を作り上げています。そりゃあ嫌いになれるわけ、ないわな。

オープニングとエンディングにそれぞれ1〜2分程度の単尺インストを用意しているものの、それ以外の楽曲のほとんどが5分以上。7分前後以上の長尺ナンバーは3曲含まれていますが、意外とそこまで長いとは感じさせない工夫がしっかり施されているので、全11曲56分がスルスル聴き進められるはずです。

なお、本作のCD2枚組限定盤には本編未収録の新曲2曲と、オーケストラをフィーチャーしたライブテイク3曲を追加収録。アルバム本編とは一線を引いたように別ディスクに収録されていますが、こちらも方向性的には『SORCERESS』の延長線上にあるので、続けて楽しめるのではないでしょうか。

もはや5thアルバム『BLACKWATER PARK』(2001年)でのスタイルは再び望めませんが、今作の完成度の高さはそういった好みとは別のところにあると思っているので、そこはちゃんと評価していただきたいところです。

 


▼OPETH『SORCERESS』
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2019年9月 6日 (金)

RIVAL SONS『HOLLOW BONES』(2016)

2016年6月に発表されたRIVAL SONSの5thアルバム。Earache Recordsからのラスト作にあたります。

前々作『HEAD DOWN』(2012年)、前作『GREAT WESTERN VALKYRIE』(2014年)と10数曲入りで50分前後の作品を連発してきた彼らですが、今作では原点に戻ってか全9曲で37分という、このご時世にしてはやたらとコンパクトな内容に仕上げてきました。

プロデュースを手がけたのは、これまで同様デイヴ・コッブ(EUROPE、ZAC BROWN BANDなど)。これまでの曲によってはオルガンやウーリッツァーなどがフィーチャーされてきましたが、今作ではキーボードの類が全面的に導入されており、楽曲レンジのうえでかなり効果的な役割を果たしています。また、曲によってはチェロやバイオリンなどの弦楽器も採用され、レイドバックしたクラシックロック/ルーツロック色がこれまで以上に強まったようにも感じられます。

ブルースやソウルを下地にしたハードロックは、やり方次第で現代的にもなり得るのですが、ここではそういった思考は完全に捨て去り、自身のルーツに正直になり、先人たちから受け継ぐ意思を、時代を超えそのまま再現しています(そう、「表現」ではなく「再現」なんですよね)。

前作あたりからこのバンドならではのオリジナリティも確立され始めていましたが、その傾向は本作でも強まり始めています。それが完成の域に達するのは、続く最新作『FERAL ROOTS』(2019年)まで待たねばならないのですが。

にしても、ジェイ・ブキャナン(Vo)のボーカルワークはかなりテクニカルといいますか、表現力が豊かといいますか。アルバムを聴いていると、ときどきポール・ロジャース(FREEBAD COMPANY)あたりと重なる瞬間があるんですよね。そりゃカッコいいわけだ。

かつ、本作ではスコット・ホリデイ(G)のプレイに目を見張るものがあります。ちょっとしたフレージングや、そのフレーズの積み重ねから生まれる絶妙なアンサンブル、ほかのバンドやギタリストには真似できない独特なものがあります。ぶっちゃけ、ジェイとスコットの個性こそがこのバンドの魅力でもあるわけで、その2人が確変したタイミングこそRIVAL SONSが本格的にブレイクするときなのかもしれません。

残念ながら本作以降、彼らの新作は日本盤が発売されていません。そりゃあ日本で全然話題にならないわけだ(苦笑)。せめて夏フェス、フジロックのFIELD OF HEAVENあたりでプレイしてくれたら一気に広まると思うんだけどな。

 


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2019年8月29日 (木)

EXPLOSIONS IN THE SKY『THE WILDERNESS』(2016)

2016年4月にリリースされた、EXPLOSIONS IN THE SKYの6thアルバム(一部では7thアルバムという表記も)。

『PRINCE AVALANCHE』(2013年)、『LONG SURVIVOR』(同年)、『MANGLEHORN』(2014年)といった映画のサウンドトラックは次々に制作していたものの、オリジナルアルバムとしては前作『TAKE CARE, TAKE CARE, TAKE CARE』(2011年)から実に5年ぶりとなります。

個人的にはEXPLOSIONS IN THE SKYって静と動を巧みに使い分けつつも、分厚い轟音ギターを重ねた激情的なアンサンブルで聴き手を高揚させるインストゥルメンタル・ポストロックという印象が強かったのですが、このアルバムでその考えを改めさせられました。

ここで展開されているのは、ポストロックっちゃあポストロックなのですが、それ以前の「動」の要素を極力抑え気味に、エレクトロニカやアンビエントなどの要素を強めた、シンフォニックなサウンドスケープが展開されています。つまり、癒しであったり繊細さであったり、そういった感情の機敏さが丁寧に表現されている。そんなイメージを受けたのです。

もちろん、随所随所にこれまでの彼らを彷彿とさせるエネルギッシュなプレイが散りばめられており、それらが程よいアクセントになっていますが、決してそれがメインになっているわけではない。むしろ、先に挙げた「分厚い轟音ギターを重ねた激情的なアンサンブル」をできるだけ避け、別の形でドラマチックさを演出しているように感じられます。

映画のサントラを3作立て続けに制作してきたこともあってか、そのドリーミーでピースフルな世界観はどこかシネマティックで、なんとなく裏に隠されたストーリーすら浮かび上がってくる。適度なノスタルジーも感じさせつつも、使用している楽器や音像はエレクトロ色を強めた近代的なものというアンバランスさも絶妙で、ただ気持ちよく聴き過ごしてしまうには勿体ない、非常に手の込んだ1枚と言えるのではないでしょうか。

バンドにとっては間違いなく新境地へと到達した1枚であり、リスナーにとってはいろいろと“試される”実験作でもある。かといって、ここで彼らが完全に変わってしまったというわけではなく、あくまで2016年というタイミングにもっともふさわしい表現方法がこれだった、ということだけなんじゃないでしょうか。事実、その後に実現したフジロックでの来日公演では過去の楽曲を交えることで、より緩急が際立った極上のパフォーマンスを楽しむことができましたから。

 


▼EXPLOSIONS IN THE SKY『THE WILDERNESS』
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2019年5月 4日 (土)

ドント・ブリーズ(2016)

あらすじ
ティーンネイジャーのロッキーは生活能力が全くない両親のもとから幼い妹を連れて逃げるための逃走資金を必要としていた。そんな時、恋人のマニーから、地下室に大金を隠しているとの噂される盲目の老人宅へ友人のアレックスと3人で強盗に入る計画を持ちかけられる。真夜中にそこへ忍び込み、孤独な盲目の老人から大金を手に入れるのはいとも簡単なはずだったが…。
そこにいたのは目は見えないが、どんな“音”も聞き逃さない超人的な聴覚を持つ老人…。そして想像を絶する<異常者>だった。寝室、キッチン、屋根裏、クローゼット、バスルーム…どこに逃げようが、ヤツは“音”を聞きつけものすごいスピードでやってくる。家中の明かりを消され、逆にハンディキャップを与えられ、逃げ道を失った彼らだったが、なんとか老人に見つからず地下室までたどりつく。
そこで目にしたものはあまりにも衝撃的な光景。ロッキーの悲鳴が鳴り響く…。彼らはここから無傷で出られるのか…。

制作:サム・ライミ、監督:フェデ・アルバレスというリメイク版『死霊のはらわた』(2013年)コンビによるスリラー系ホラー映画。死人が生き返ったり死霊が襲いかかったり、死体がバラバラになったりなどのスプラッター表現ゼロ。しかも、登場人物はすべて悪人で誰ひとり共感できないという、なんともな作品。

盲目で聴覚・嗅覚が健常者よりも敏感な退役軍人の爺 vs ロクでもない不良3人(うち1人女性)と、ホラー映画としてはちょっと登場人物が“弱い”ものの、それでも約90分最後まで集中して観られたので、作品としてはかなり面白いほうじゃないかと。

まあとにかく、見どころはいかに老人に気づかれずに、犯人(1人は瞬殺されたので男女2人)がゲットした大金を持って家から脱出するか。最初こそ明かりがついていたのに、途中で消されてしまい健常者の犯人側にも老人と同じハンディキャップが与えられる。暗視カメラを使った映像は生々しいものがあり、ここはかなりドキドキしながら楽しみました。

にしても、老人の隠された性癖(性癖なんですかね?)が明かされてからの展開が、ちょっとだけ興ざめといいますか……全然入り込めなかった。そもそもその◯◯、ちゃんと機能するのかね?という疑問もありましたし(苦笑)。あと、老人はある意味では被害者なのですが(強盗に入られる以前に、事故で娘を失っている)、そこを差し引いても◯◯を監禁していたりするのでプラマイゼロ、いやマイナスじゃん!と思うわけですどね。

と、中盤にテンションが落ちたものの、終盤にかけて老人&犬からの脱出劇はとてもスリリングで、ラストに追われる不安を残したまま、まだまだ恐怖は終わらない……というエンディングは素晴らしかったと思います。

ただ、最初に書いたように、登場する主要人物4人が誰ひとり善人ではないこと、観る側として感情移入できないこともあって、ホラーとしては良作ながらも映画としてはあまり“残らない”1本かなと。単純に「面白かった!」で済ませられたらよかったんだけど。

たぶんホラー映画って基本、主人公が不条理な状況下で異常者(ゾンビなり死霊なり)に追われ、「いきなり訪れる恐怖」と立ち向かう姿に自分を重ねてドキドキしながら楽しむことが多いと思うんです。だから、主人公は一般的に気が弱かったり人より劣るところがあるのに、最後は知恵を振り絞ったり火事場の馬鹿力を発揮したりして相手に打ち勝つ、その姿に共感したり(共感?)自分を重ねたりするんでしょうけど……まあこの作品のような主人公というのも、現代アメリカ的なのかな。そういった意味では、日本人の我々にはちょっと共感しにくいものがあるのかも。

(*70点)

 


▼ドント・ブリーズ
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