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2017/01/31

ANNIHILATOR『SET THE WORLD ON FIRE』(1993)

カナダ出身のスラッシュメタルバンド、ANNIHILATORが1993年に発表した3rdアルバム『SET THE WORLD ON FIRE』はここ日本で彼らが本格的に受け入れられるきかっけを作った(同年の初来日公演に結びつけた)、重要な1枚です。

彼らの名前はデビュー作『ALICE IN HELL』(1989年)の時点で耳にしていました。といっても、当時は日本盤も出ていない状況で、名前も「アナイアレイター」ではなく「アニヒレイター」と紹介されてたわけですが(某TBS『PURE ROCK』での話)。その後、僕は1990年の2ndアルバム『NEVER, NEVERLAND』で初めて彼らの音に本格的に触れるのですが、リフはカッコいいけど……とそこまでハマらなかった記憶があります。今聴くと、とても良いんですけどね。ただ、ブレイクに導くような完成度かと言われると「まぁB級止まりだよな」というのも否めないわけでして。

その後、メンバーチェンジやレーベルとのゴタゴタがあって、次作発表までに3年かかってしまうわけですが、その間にメタルシーンで起きたことといえば……METALLICAのブラックアルバム(1991年)が天文学的大ヒットを記録したこと、そしてPANTERA『VULGAR DISPLAY OF POWER』(1992年)が発表されたこと、この2つが以降の流れをガラッと変えてしまいます。また、メインストリームにいたHR/HMがグランジに取って代わられる事態に。きっとジェフ・ウォーターズ(G, Vo)は焦ったと思うんですよ。時代が変わる前に、早くアルバムを出さなきゃって。

その焦りは、良くも悪くも本作に反映されています。いわゆる旧来のスラッシュ路線を残しつつも、グルーヴ感を強調したミドルテンポの楽曲もあり、さらにはMETALLCIAが「スラッシュバンドだってバラードやったっていいんだよ」と形にしてしまったがためのスローバラード導入……これだけ見たら一貫性がない作品になっているんじゃないかと思いますが、いやいや。これが意外と良いんですよ。

仰々しいオープニングからザクザクしたリフ&リズムのユニゾンが気持ちいい「Set The World On Fire」は80年代の色合いを残しつつモダンな方向に歩み寄っている。続く「No Zone」は王道パワーメタル、「Snake In The Grass」はオープニングこそバラード調ですが実は跳ねたリズムを持つグルーヴメタルだし、「Phoenix Rising」な泣きのバラード、「Knight Jumps Queen」は冒頭のベースラインが気持ちいいミドルテンポのスラッシュナンバー、「Sounds Good To Me」はアップテンポだけどバラードの色合いを持つメロウな楽曲、そしてどこかアメリカンなブギー調スラッシュ「Don't Bother Me」からテクニカルスラッシュ「Brain Dance」で締めくくり。その後日本盤にはボーナストラックとしてJUDAS PRIESTのカバー「Hell Bent For Leather」が追加されてますが、この終わり方も悪くないです。

ジェフ・ウォーターズはMEGADETHにスカウトされたという逸話を持つほどのテクニシャン。このアルバムでもその非凡なプレイは随所にフィーチャーされてますが、それ以上にソングライターとしてもかなりの才能の持ち主であることは一聴しておわかりいただけるかと思います。しかし、遅すぎた。いかんせん時代が悪かった。本作がもう1年早くリリースされていたら、北米でもそれなりの結果を残すことができたんじゃないかと……でも、1年早かったらこういった内容になっていなかったのも事実であって、そこのもどかしさは拭えません。本当はもっと表舞台で光るべき人なんですけどね……最近の状況を見ていると、少しだけ悲しい気持ちになってきます(主に髪型的な意味ですが)。



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投稿: 2017 01 31 12:00 午前 [1993年の作品, Annihilator] | 固定リンク