POISON『LOOK WHAT THE CAT DRAGGED IN』(1986)
POISONがアルバム『LOOK WHAT THE CAT DRAGGED IN』(邦題:ポイズン・ダメージ)でレコードデビューを果たしたのは1986年夏のこと。リリース当時はそれほど大きな話題にはなりませんでしたが、年が明け1987年春にアルバムからの2ndシングルとしてリカットされた「Talk Dirty To Me」があれよあれよとチャートを上昇していき、最高9位まで到達。折しもBON JOVIが「You Give A Bad Name」「Livin' On A Prayer」で2曲連続全米1位を獲得したタイミングということで、HR/HMバンドがじわじわと注目を集め始めたタイミングでのヒットでした。
LAメタル(ヘアメタル、グラムメタル)にカテゴライズされるロサンゼルス出身バンドの中でもやたらとケバケバしく、正直美意識のかけらも感じられないそのヴィジュアル。演奏もテクニカル路線に走る他のバンドとは一線を画し、決して上手ではない。しかし、曲だけは異常にポップで親しみやすいものばかりというこのアンバランスさ。歌詞だって別に知的なことは一切歌っていないし、なんならセックスをイメージさせる曲がほとんど。それでもウケたというのは、やはり彼らには他のバンドにない魅力が備わっていたということなんでしょう。そうでなければ「Talk Dirty To Me」のみの“一発屋”で終わっていたはずですしね。
バンドはこの後、「I Want Action」(全米50位)、「I Won't Forget You」(全米13位)とヒットシングルを連発。アルバム自体も最高3位まで到達し、アメリカのみで300万枚を超える大ヒット作となりました。また、このヒットに便乗してか、1987年秋には映画『レス・ザン・ゼロ』のサウンドトラックにKISS「Rock And Roll All Nite」のカバーを提供。こちらもなんのひねりもない“まんま”のアレンジで衝撃を与えました。
リリースから30年を過ぎた2017年にこの1stアルバムを聴き返してみると、やはりどの曲もやたらとポップでキャッチーなんですよね。1曲目「Cry Tough」からそのポップさは異常とも言えるほどで、この1曲だけ取り出しても同時期に活動した他のLAメタルバンドとは個性の持ち主だってことが理解できる。MOTLEY CRUEともRATTともQUIET RIOTとも違う道をしっかり歩んでいたからこそ、“他にないもの”として受け入れられ成功することができたんだと思います。
と同時に、この処女作が大成功を収めたことで得た自信が、続く2作目、3作目での大躍進にもつながるわけです。バンドってつくづく面白いですね。
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