« BUDDERSIDE『BUDDERSIDE』(2016) | トップページ | BLUE MURDER『BLUE MURDER』(1989) »

2017/02/03

WHITESNAKE『WHITESNAKE (or“1987”)』(1987)

まず最初に。今回、かなり長いです。それだけ語ることが多い作品であり、しっかり語らなくてはならない1枚だと思っているので、ぜひ時間があるときに読んでいただきたいと思います。


1987年春にリリースされたWHITESNAKEの通算7枚目のスタジオフルアルバムにして、同年を代表するHR/HMの1枚。レコーディングメンバーはデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)、ジョン・サイクス(G)、ニール・マーレイ(B)、エインズレー・ダンバー(Dr)の4人。「Here I Go Again」のみギターソロでエイドリアン・ヴァンデンバーグが参加しています。ちなみに本作を携えたワールドツアーではデヴィッド以外のメンバーを総入れ替えし、エイドリアン、DIOを脱退したヴィヴィアン・キャンベル(G)、オジー・オズボーンのリズム隊でおなじみのルディ・サーゾ(B)&トミー・アルドリッジ(Dr)の5人編成でライブが行われました。

本作は全米2位という最高位を獲得し、1987年の年間アルバムチャートで16位、翌1988年の年間チャートでも19位にランクインし、現在までにアメリカのみで800万枚以上ものセールスを記録。本作からのシングルも「Here I Go Again」が全米1位、「Is This Love」が全米2位、「Give Me All Your Love」が全米48位、「Still Of The Night」が全米79位、特に「Here I Go Again」は1987年のビルボード年間チャートで7位に輝く大ヒット作となりました。1987年がいかにHR/HMの年だったかが伺える事象かと思います。

とはいえこのアルバム、当時は古くからのWHITESNAKEファンにとってはある種の踏み絵というか、なんとも受け入れがたいアルバムだったと記憶しています。だって前作『SLIDE IT IN』(1984年)までギリギリ保っていたブルースベースのブリティッシュハードロック色が払拭され、完全にアメリカナイズされたサウンドと曲調になっているんですから。本作に続く1989年の8thアルバム『SLIP OF THE TONGUE』なんて、さらにもってのほかだと思いますよ。

さて。実は本作には大まかに3つのバージョンが存在していることはご存知でしょうか。そもそも1987年のリリース時点で2つのバージョンが存在し、2000年代に入って新たにもう1バージョン増えるという、名盤のくせに異色の存在なのです。

まず、よく知られた日本盤およびアメリカ盤の収録内容。


01. Crying In The Rain
02. Bad Boys
03. Still Of The Night
04. Here I Go Again [ここまでがアナログA面]
05. Give Me All Your Love
06. Is This Love
07. Children Of The Night
08. Straight For The Heart
09. Don't Turn Away


この曲順に慣れ親しんだという現在40代以上のメタルファン、多いんじゃないでしょうか。ちなみに『サーペンス・アルバス(白蛇の紋章)』の邦題でおなじみの本作、日本盤は長きにわたり廃盤状態。初盤は当時CBSソニーからリリースされていましたが、本作のUS盤リリース元のGeffen Recordsの配給が現在のユニバーサルミュージックに移ったあたりから、中古市場でしか見かけない状況です。2000年代半ばに限定仕様の紙ジャケ盤が一、二度再発されましたが、通常のプラケース盤は再発なし。非常に残念でなりません。

で、本作のイギリスやヨーロッパでのリリース元は、それ以前の作品同様EMI Records。ヨーロッパでは過去にデヴィッドのソロ名義で『WHITESNAKE』というタイトルのアルバムが出ていることから、『1987』という別名で発売されました。


01. Still Of The Night
02. Bad Boys
03. Give Me All Your Love
04. Looking For Love [ここまでがアナログA面]
05. Crying In The Rain
06. Is This Love
07. Straight For The Heart
08. Don't Turn Away
09. Children Of The Night
10. Here I Go Again [CDのみ収録]
11. You're Gonna Break My Heart Again [CDのみ収録]


日本盤およびUS盤と曲順が全然違いますよね。正直曲の流れはヨーロッパ盤のほうがいいと思いますが、ヘヴィブルースに生まれ変わった「Crying In The Rain」から始まり「Don't Turn Away」で感動的に終わる流れに慣れてしまった耳には最初は違和感があったのも正直なところ。うん、双方捨てがたい。

「Crying In The Rain」と「Here I Go Again」はヨーロッパでは既発曲(2曲とも1982年のアルバム『SAINTS & SINNERS』収録)だけどUSで未発表だったのでリメイクされたという経緯があり、特に「Here I Go Again」はイギリスでシングルカット済みということもあってアナログ盤には未収録。代わりにヘヴィバラード「Looking For Love」が収められています。さらにCDのみに収録の「You're Gonna Break My Heart Again」、これがめちゃくちゃカッコいい。正直「Looking For Love」と「You're Gonna Break My Heart Again」のためだけにヨーロッパ盤を手に入れるのもアリだと思います(ちなみにこの2曲、日本では企画盤『1987 VERSION』に収録。ダン・ハフがギターソロを弾くアレンジが微妙な「Here I Go Again」なども入っているので、中古盤で見かけたら手にしてみるのもいいかと)。

そして最後が、2007年に発売された「20th Anniversary Edition」。こちらはヨーロッパ盤CDを基準に、曲順が再考されています。


01. Still Of The Night
02. Give Me All Your Love
03. Bad Boys
04. Is This Love
05. Here I Go Again
06. Straight For The Heart
07. Looking For Love
08. Children Of The Night
09. You're Gonna Break My Heart Again
10. Crying In The Rain
11. Don't Turn Away
12. Give Me All Your Love (Live)
13. Is This Love (Live)
14. Here I Go Again (Live)
15. Still Of The Night (Live)


M-12〜15は2006年発売のライブアルバム『LIVE: IN THE SHADOW OF THE BLUES』のテイク。本作のDVD付き仕様のみに収められていて、CD単品仕様にはこのライブテイクは未収録のようです。

日本盤、ヨーロッパ盤それぞれの曲順に耳が慣れた後にこのバージョンを聴くと、微妙な気持ちになります。なぜこの曲順に直したんでしょうね、理解に苦しみます。どこかライブの流れに近いものを感じるので、そういう意味合いもあるのかしら……。


あ、肝心の中身についても触れておかないと。

THIN LIZZY末期にギタリストとして知名度を上げ、1984年の『SLIDE IT IN』リリース後にWHITESNAKEに加入したジョン・サイクス。彼は『SLIDE IT IN』をUSリリースする際にギターソロを追加録音していますが、ソングライティングから本格的なレコーディングまで含めると、この『WHITESNAKE』が初の全面参加作品なわけです。しかもほとんどの曲をデヴィッドとジョンが書いていること、いや、おそらくメインはジョンが書いているんでしょう(脱退後にそう力説してましたし、自身のライブでもこのアルバムの曲をセルフカバーしてましたしね)。それが『SLIDE IT IN』以前との大きな違いであり、この変化の原因(古くからのファンには元凶なのかな)であるわけです。

実際、HR/HMとしては非常に魅力的な楽曲ばかりですし、ギターリフ、ギターソロどれを取っても素晴らしい。それに応えるデヴィッドのボーカルも非常に艶やかでアグレッシヴ。「Still Of The Night」や「Crying In The Rain」でのロバート・プラントばりのシャウト、「Is This Love」や「Don't Turn Away」で魅せる渋みと哀愁、どれも素敵としか言いようがないわけです。隙がないアルバムとはまさにこのこと。この春でリリースから30年経ちますが、今聴いてもまったく色褪せない、本当に最高のHR/HMアルバムだと思います。

残念なのは、ジョンがこのアルバムの完成後にバンドを脱退したため、WHITESNAKEではこれらの楽曲をライブで弾いていないこと。ヴィヴィアンやエイドリアンのギターも悪くないですが、やはり絶頂期を迎えたジョン・サイクスという才能をWHITESNAKEとして観たかったものです。

ジョンの脱退後に発表されたこのアルバムが記録的大ヒット作となったことで、彼はデヴィッドへの復讐に執念を燃やすがごとく、のちに『WHITESNAKE』アルバムの義兄弟的バンド・BLUE MURDERを結成することになるのですが、それについてはまた明日。



▼WHITESNAKE『WHITESNAKE (or“1987”)』
(amazon:国内盤CD / US盤CD / EU盤CD / EU盤CD(曲順新装版) / EU盤CD / EU盤CD(曲順新装版) / EU盤CD(曲順新装版)+DVD

投稿: 2017 02 03 12:00 午前 [1987年の作品, Whitesnake] | 固定リンク