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2017/03/01

ANTHRAX『SOUND OF WHITE NOISE』(1993)

ANTHRAXが1993年5月にリリースした、通算6枚目のオリジナルアルバム。前年に2代目ボーカル(にしてバンドの知名度向上に貢献した)ジョーイ・ベラドナが脱退し、後任として迎えられたジョン・ブッシュ(元ARMORED SAINT)が初参加したのが本作『SOUND OF WHITE NOISE』です。ちなみにジョン以外はスコット・イアン(G)、ダン・スピッツ(G)、フランク・ベロ(B)、チャーリー・ベナンテ(Dr)という2ndアルバム『SPREADING THE DISEASE』(1985年)から続く黄金期メンバー。のちにダン・スピッツが脱退するため、このラインナップも本作1枚きりとなります。

ハードコアやスラッシュメタル、ヒップホップなどいわゆる“ストリートミュージック”を体現してきたANTHRAXですが、ジョン・ブッシュという新たなシンガーが加わったことでさらに新たな要素……当時の主流だったグランジやグルーヴメタルなど、いわゆる本道とは一線を画するオルタナティヴなサウンドに手を出します。スラッシュメタルを極限まで突き詰め煮詰めたような内容の前作『PERSISTENCE OF TIME』(1990年)で、それまでの路線をやりきったという思いも多少はあったのかもしれませんし、同時代を駆け抜けたMETALLICAがブラックアルバムで天文学的大成功を手にしたことを羨ましがったのもあるかもしれません。だからこそ、メンバーチェンジをきっかけ(もしくは言い訳)に大胆なシフトチェンジが図れたんでしょうね。プロデューサーにJANE'S ADDICTIONやALICE IN CHAINSを手がけたデイヴ・ジャーデンを迎えたのも納得です。

本作にはいわゆる疾走系スラッシュは皆無。速い曲はあるにはあるけど、単に突っ走るというよりはグルーヴを重視した“音の塊”のような楽曲(「Potters Field」や「C11 H17 N2 O2 S Na」「Burst」)が中心。シングルカットされた「Only」や「Room For One More」「Hy Pro Glo」はまさにその代表格といえる楽曲で、ANTHRAX第2章を代表するナンバーとしてライブで披露され続けます。

かと思えば、当時ブレイクしていたTVドラマ『ツイン・ピークス』からの影響受けまくりなスローナンバー「Black Lodge」みたいな曲も存在。従来のファンからしたらこの変化は裏切り以外のなにものでもないんでしょうけど、かのMETALLICAも欲しがったと言われるジョン・ブッシュを手に入れたんだから、そりゃいろいろ試したくなりますよね。ましてや時代はNIRVANA、PEARL JAM、ALICE IN CHAINS、SOUNDGARDEN、SMASHING PUMPKINSといったバンドがチャートを席巻し、これまでANTHRAXが居座っていたシーンには新たにPANTERA、速さを切り捨てたMETALLICAがトップに君臨しているんですから……「変わらなくちゃ」っていう強迫観念に駆られても不思議じゃない。

では、本作はそんなに“時流に乗った駄作”なのかというと、実はそんなこともなく。むしろ、僕自身は彼らのキャリアの中でも3本指に入るほど好きな1枚です。『PERSISTENCE OF TIME』からここにたどり着いたというのも、個人的にはとても腑に落ちるんです。楽曲の出来もいいし、アレンジも歌もアルバムの流れもベスト。本作が当時、全米7位にランクインし、過去最高のセールスを記録したというのも納得できます。だって、世の中的に旧世代バンドに成り下がっていたANTHRAXが流行りに乗ったとはいえ、世間にちゃんと受け入れられたという証拠ですから(従来のファンからは敬遠されたかもしれませんが)。



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投稿: 2017 03 01 12:00 午前 [1993年の作品, Anthrax] | 固定リンク