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2017/03/12

KISS『CRAZY NIGHTS』(1987)

KISSが1987年秋に発表した通算14枚目のオリジナルアルバム『CRAZY NIGHTS』。『LICK IT UP』(1983年)で初めてメイクを落として人前に姿を現し、同作を携えたツアーも大成功。続く『ANIMALIZE』(1984年)、『ASYLUM』(1985年)も時代の流れを敏感に察知し、70年代のポップロック路線からタフでハード&ヘヴィな路線へとシフトチェンジを遂げます。が、世の中的には「KISSにそんなもの求めてねーよ」と言わんばかりに、じわじわとセールスを落とす結果に。そして1986〜87年に迎えた本格的なHR/HMブームに対してKISSが出した答えが、この『CRAZY NIGHTS』でした。

当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)のオリメンに二代目ドラマーのエリック・カー(Dr, Vo)、そして前作『ASYLUM』から参加のブルース・キューリック(G)という布陣。プロデューサーにはHEARTの復活作『HEART』(1985年)やオジー・オズボーン『THE ULTIMATE SIN』(1986年)、そしてSURVIVOR『VITAL SIGNS』(1984年)や『WHEN SECONDS COUNT』(1986年)などを手がけてきたロン・ネヴィソンを迎え、“1987年という時代を意識しつつも世間がKISSに求めるもの”を的確に形にした“KISS流産業ハードロック”と呼ぶにピッタリな1枚を完成させました。

シングルカットもされた「Crazy Crazy Nights」からスタートするこのアルバム。ライブでの大合唱を意識しつつも、しっかりラジオやMTVでオンエアされることも意識した、本当によくできた1曲です。残念ながらアメリカでは65位と大ヒットにはつながりませんでしたが、一方でイギリスでは4位という大成功を収めています。で、ここからハード路線の「I'll Fight Hell To Hold You」、キャッチーなスタジアムロック「Bang Bang You」とポールVo曲が3曲続きます。これもKISSにしては珍しいことですよね。

4曲目「No, No, No」でようやくジーンVo曲登場。ブルースのアグレッシヴなギタープレイを全面フィーチャーした、メタリックなファストチューンです。続く「Hell Or High Water」もジーンVo曲で、70年代の雰囲気にも通ずるものがありつつもしっかり現代的な側面も打ち出されたミドルナンバー。ポールが歌う6曲目「My Way」はシンセが前面に出た、これぞ“産業ハードロック”と言いたくなるキャッチーな1曲です。サビのメロディ進行や開け方は、ちょっとやそっとじゃ真似できない強みが感じられます。

7曲目「When Your Walls Come Down」は、ポールのハイトーンとジーン&エリックの掛け合いコーラスを効果的に用いたハードチューン。続く「Reason To Live」は本作唯一のバラードですが、通常のパワーバラードとはちょっと違った雰囲気を持っています。例えるならば……ロン・ネヴィソンだからというわけじゃないですが、HEARTの「What About Love」的な雰囲気と言いましょうか。KISSらしい楽曲とは言い難いですが、このアルバムの中では何の違和感もなく聴けてしまいます。

本作3曲目となるジーンVo曲「Good Girl Gone Bad」は、ロックンロールのマナーに添いつつもKISSらしいメロ運びをする独特な1曲。今作における絶妙なアクセントとなっています。10曲目「Turn On The Night」もシンセを前面に打ち出したポップチューンですが、“ラジオやMTV狙ってます”的ないやらしさも同じくらい強く感じられます。ダイアン・ウォーレンが楽曲制作に関わってることも関係あるんでしょうか。そしてラストはジーンVoのヘヴィな「Thief In The Night」で幕を下ろします。

全11曲中ジーンVo曲が4曲のみというのは前作『ASYLUM』、前々作『ANIMALIZE』と変わらないのですが、冒頭のポールVo曲3連発のインパクトが強いせいか、どうにも本作は「ポールがひとり気合い入れて頑張った作品」というイメージが拭えません。だからこそ、ジーンのマイペースぶりが発揮された4曲がいいアクセントになっているのも事実。リリースから30年経った2017年に聴くと若干古さを覚えるサウンドアレンジもありますが、楽曲の質自体は非常に高いものばかり。意外と最近のKISSにも通ずる要素もあるので、80年代の彼らに触れるならまずはこのアルバムから……というのもアリだと思います。



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投稿: 2017 03 12 12:00 午前 [1987年の作品, KISS] | 固定リンク