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2017/03/31

2017年3月のお仕事

2017年3月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※3月23日更新)


[紙] 3月23日発売「別冊カドカワDirecT 05」にて、欅坂46渡辺梨加&渡邉理佐インタビュー、菅井友香インタビュー、けやき坂46高本彩花インタビューを担当しました。(Amazon

[紙] 3月17日発売「月刊AKB48グループ新聞」3月号にて、乃木坂46生駒里奈&与田祐希、日刊スポーツ横山記者とともに「乃木坂46 5th BIRTHDAY LIVE」振り返り座談会に参加しました。

[WEB] 3月16日、「楽天ブックス」での連載「乃木坂46公認コラム『のぼり坂』」にて「齋藤飛鳥『楽天ブックス特別店長 就任記念イベント』レポート&インタビュー」が公開されました。

[WEB] 3月13日、「楽天ブックス」での連載「乃木坂46公認コラム『のぼり坂』」にて「『乃木坂46 5th BIRTHDAY LIVE』レポート」が公開されました。

[WEB] 3月13日、「Red Bull Japan」オフィシャルサイトにてコラム「2017年注目の海外ラウドロックバンド5選」が公開されました。

[紙] 3月8日発売「TV Bros.」2017年3月11日号にて、ドレスコーズ志磨遼平インタビューを担当・執筆しました。

[紙] 3月4日発売「日経エンタテインメント!」2017年4月号にて、KinKi Kids堂本剛インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 3月3日全国公開の映画「We Are X」にて、劇場パンフレット内コンテンツを執筆しました。

[WEB] 3月2日、「ViSULOG」にてFAKE?のライブレポート「FAKE?デビュー15周年記念ライヴ「FAKE?15th Anniversary Live “The Queen's Banquet”」を開催!」が公開されました。

[WEB] 3月2日、「exiteニュース」にてFAKE?のライブレポート「KEN LLOYDのソロプロジェクト“FAKE?” 15周年記念ライブでINORANと久々共演」が公開されました。

[WEB] 3月2日、「SPICE」にてFAKE?のライブレポート「FAKE? 創設メンバーのINORANも駆けつけた15周年ライブ「みんないろんなカッコいいバンドをやってるから、FAKE?もカッコよくいられるんです」」を執筆しました。

[紙] 3月1日発売「別冊カドカワ 総力特集 BOOM BOOM SATELLITES」にて、TOSHI-LOW(BRAHMAN)×細美武士(the HIATUS、MONOEYES)対談、ピエール中野(凛として時雨)インタビュー、Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)インタビュー、ホリエアツシ(ストレイテナー)インタビュー、Kj(Dragon Ash)インタビュー、長添雅嗣インタビュー、関和亮インタビュー、福田洋子インタビュー、長嶋誠志インタビューを担当しました。(Amazon

投稿: 2017 03 31 12:00 午後 [「仕事紹介」] | 固定リンク

2017/03/26

SLAUGHTER『STICK IT TO YA』(1990)

1990年に上京してからしばらくテレビのない生活を送っていたため、ラジオをよく聴いていたんです。土曜深夜のbayfm『POWER ROCK TODAY』はもちろんのこと、平日はニッポン放送『オールナイトニッポン』を2部まで聴く日々……AMだけではなくFMもいろいろ聴いてました。そのなかで、確かNACK5だったと記憶していますが、アメリカ西海岸のメタル専門FM局『KNAC』のプログラムを流す番組があったと思うんです。それを毎週聴きながら勉強したり飯食ったりして。

で、そこで気になる曲をみつけて。DJも当然英語だからアーティスト名、曲名がはっきり把握できない中、なんとなく聞き取ることができた「Up All Night」というタイトル。確かに曲中何度もそう歌ってたもんな。この甲高いボーカルとDEF LEPPARDみたいなサウンドプロダクション、アメリカのバンドっぽいけどそこまでパーティ感が強くない曲調、嫌いじゃないなぁ、むしろ好きだなぁ……と思っていたんです。残念ながら、その曲に関してはここで終わり。アルバムまでたどり着くことはありませんでした。

それからしばらくして、今度は別の番組で「Fly To The Angels」というバラード調の楽曲を知ります。いわゆるパワーバラードとはちょっと違った、不思議な雰囲気を持つナンバーで、タイプは違うけどWINGERあたりにも通ずると思っていたんです。その曲を歌うのがSLAUGHTERというバンドだと知り、当然「Fly To The Angels」をちゃんとリピートしたいがために輸入盤店でアルバムを探し、ついに手に入れるわけです。

すると……あ、あの「Up All Night」だ!と。ここで「Up All Night」=「Fly To The Angels」=SLAUGHTERとすべてがつながるのでした。ここまでの数ヶ月、長かった。

そんなSLAUGHTERの1stアルバム『STICK IT TO YA』。アメリカではこの頃、すでにヒットしていたんですよね。Billboard最高18位まで上昇し、200万枚ものセールスを記録。「Up All Night」も全米27位のヒット曲となっており、「Fly To The Angels」はトップ20入り(全米19位)を果たしていたのでした。しかも、このSLAUGHTERのメンバーであるマーク・スローター(Vo, G)とダナ・ストラム(B)は80年代にVINNIE VINCENT INVASIONの一員として活躍。そう、高校時代に大好きだったアルバム『ALL SYSTEMS GO』にも参加していた人たちだったのです。そりゃ気に入るわけだ。

アルバムはいわゆる80年代的なビッグプロダクションを用いた硬質なサウンドで、マークのハイトーンボーカルを前面に打ち出しながらもコンパクトで親しみやすい構成の楽曲が中心。しかもLED ZEPPELIN(「Eye To Eye」「Fly To The Angels」)やAC/DC(「She Wants More」「Loaded Gun」)を彷彿とさせる楽曲、ポップさを前面に打ち出した「Spend My Life」「You Are The One」「Gave Me Your Heart」、ワイルドなアメリカンHR「Up All Night」「Burnin' Bridges」「That's Not Enough」と非常にバラエティに富んだ内容なんだから、楽しくないわけがない。本当によくできたデビューアルバムだと思います。

HR/HMブーム末期に登場したSLAUGHTERもFIREHOUSE同様、その後時代に翻弄されるわけですが、もう1年早くデビューしていたらここ日本でもさらに高い評価を得ることができたんじゃないかなと。実際初来日もこのアルバムの時点では実現しなかったと記憶してますし、非常に勿体ない限りです。



▼SLAUGHTER『STICK IT TO YA』
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投稿: 2017 03 26 12:00 午前 [1990年の作品, Slaughter] | 固定リンク

2017/03/25

FASTER PUSSYCAT『FASTER PUSSYCAT』(1987)

5月に開催される『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』で久しぶりの来日公演が決まったFASTER PUSSYCAT。いつ以来なんでしょうね……メジャーに在籍していた頃は日本公演を行っていた記憶があるので、おそらく90年代初頭以来になるのかしら。

ちょうど日本でGUNS N' ROSESがデビューしたのと同時期に国内盤がリリースされた、FASTER PUSSYCATの1stアルバム。僕も『APPETITE FOR DESTRUCTION』とほぼ同じタイミングにFASTER PUSSYCATも聴いたんですが、ぶっちゃけ初聴ではFASTER PUSSYCATのほうが気に入ってたんです。だって、わかりやすいじゃないですか。ガンズは最初「なんだかわからないけど、すごい……」という強烈なインパクトを残したけど、楽曲がスッと体に入ってくるには数回聴き返す必要があった。でもFASTER PUSSYCATのほうは一回聴けば「ああ、AEROSMITHになりたいのね。NEW YORK DOLLSになりたいのね」とか全部が理解できてしまう。演奏の下手具合含めて、妙に愛せるんですよね。

たぶん最初に聴いたのは、アルバム2曲目「Bathroom Wall」。MTVか『PURE ROCK』で観たMVだったと思います。あれ、『PURE ROCK』ってもう始まってたんだっけ? まぁいいか。とにかく、POISONほどケバくなく、あそこまでメタリックでもない。スタジオ音源なのに、なんとなく演奏の下手さが伝わってくるユルさとスカスカさ。なのに、一度聴いたら耳から離れない歌メロとギターフレーズ。嫌いになれるわけがないじゃないですか。

アルバム全体もルーズな「Don't Change That Song」から始まり、NEW YORK DOLLSまんまなアップテンポの「Cathouse」、BEASTIE BOYS「Fight For Your Right (To Party)」に対するハードロックサイドからの回答みたいな「Babylon」など、意外とバラエティに富んでいる。しかもどの曲も適度なキャッチーさが備わっているから、アクが強くてもスルスルと聴き進めてしまう。でもそれが仇となって、数回聴いたらもういいや……と思えてしまう難点もあるのが、このアルバムの惜しいところ。結局1、2ヶ月したらこっちよりガンズばかり聴いてたんだよね。

もうね、比べる相手が悪かったなと。ゴメンよ、FASTER PUSSYCAT。きっと今も演奏はそんなに上手にはなってないと思うけど(いや、上手になっていたらそれはそれでガッカリするかもしれない)、リリースから30年経った2017年に聴くと意外と新鮮に楽しめたよ。でも、またすぐに飽きがこないように、適度なペースでリピートしたいと思います。



▼FASTER PUSSYCAT『FASTER PUSSYCAT』
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投稿: 2017 03 25 12:00 午前 [1987年の作品, Faster Pussycat] | 固定リンク

2017/03/24

VINCE NEIL『EXPOSED』(1993)

MOTLEY CRUEのシンガー、ヴィンス・ニールがバンドから解雇されたのが1992年2月のこと。忘れもしません、当時僕はイギリスに留学中で、ホームステイ先で観ていたMTV内のニュースでこの情報を知ったのですから……半年くらい前に初のベスト盤(正確にはコンピレーションアルバム)『DECADE OF DECADENCE』がリリースされ、滞在先でもよくカセットをリピートしていたぐらい大好きなバンドの突然の情報に、そりゃあ動揺しまくりですよ。今みたいにインターネットもない時代、しかも海外滞在中にそんな情報を得たところで続報を調べようもないし。

ところがそこから数ヶ月後、ヴィンスは映画『ENCINO MAN』(邦題:原始のマン)のサウンドトラックに初のソロナンバー「You're Invited (But Your Friend Can't Come)」を提供します。この曲は当時DAMN YANKEESのメンバーだったジャック・ブレイズ&トミー・ショウとともに制作されたもの。まだソロバンドのメンバーも確定していなかったものの、キャッチーなHRナンバーで歌うヴィンスからは“MOTLEY CRUEそのもの”といった印象を受けました。さらにその頃、マイケル・モンローと新バンドJERUSALEM SLIMを組んだはずのスティーヴ・スティーヴンス(G)がヴィンスのバンドに加わったという噂が広まります。その噂は真実となり、JERUSALEM SLIMは空中分解。スティーヴはヴィンスと一緒にアルバム制作に突入するのでした。

MOTLEY CRUE解雇から1年ちょっと経った1993年4月、ついにヴィンスの初ソロアルバム『EXPOSED』発売。MOTLEY CRUEほどのメガヒット作にはならなかったものの、全米13位という好成績を残しました。ここ日本でも同年秋に日本武道館公演を含むジャパンツアーを行い、大成功を収めました。

ソロバンドのメンバーはヴィンス、スティーヴのほかデイヴ・マーシャル(G / FIONA、SLAUGHTERなど)、ロビー・クレイン(B / RATT、BLACK STAR RIDERSなど)、ヴィッキー・フォックス(Dr / ENUFF Z'NUFFなど)という編成。レコーディングにはデイヴは参加しておらず、すべてのギターパートと一部のベースはスティーヴが弾いています。

さてさて、肝心の音ですが……「You're Invited (But Your Friend Can't Come)」で感じた“MOTLEY CRUEらしさ”が全編に感じられるものの、実は楽曲自体はモロにMOTLEYを意識したものって数曲なんですよね。例えばオープニングを飾る「Look In Her Eyes」がMOTLEYらしいかと問われると、意外とそんなでもない。だけど、ヴィンスの声が乗ると不思議とMOTLEYっぽく聞こえる。いかに彼の歌声が唯一無二の武器かが、これだけでも嫌というほど理解できると思います……その観点で語ると、「You're Invited (But Your Friend Can't Come)」だってMOTLEYというよりはNIGHT RANGERですもんね(笑)。

『GIRLS, GIRLS, GIRLS』〜『DR. FEELGOOD』期のMOTLEYを意識した「Sister Of Pain」や「Can't Have Your Cake」みたいな曲もあるにはあるけど、アルバムの中でのクライマックスとなるのは、先の「Look In Her Eyes」や、アルバム中盤の山となる「The Edge」のようにヴィンスの歌とスティーヴのギターがぶつかり合う楽曲。特に後者はフラメンコギターがフィーチャーされており、スティーヴの個性出まくりの1曲。シリアス調の「Living Is A Luxury」あたりもこの組み合わせだからこそ作り出すことができたナンバーだと思います。

と同時に、ヴィンスからイメージする“ヤンチャなアメリカンHR”まんまな楽曲も同じくらい存在。先の「Can't Have Your Cake」もそうだし、「Fine, Fine, Fine」「Gettin' Hard」なんかもその路線でしよう。そこにアメリカンHRバンドならではのバラード「Can't Change Me」「Forever」が加わり、おまけにL.A.メタルバンドお約束のカバーとしてSWEETの名曲「Set Me Free」まで取り上げている。“これぞ全部乗せ!”と言わんばかりの、サービス精神旺盛な(それでいて音楽性もしっかり伴った)1枚に仕上がっているんですから、さすがとしか言いようがありません。

ちなみに、日本盤のみボーナストラックとして、ロッド・スチュワート「Blondes (Have More Fun)」とRAMONES「I Wanna Be Sedated」という、ヴィンスのパブリックイメージに合ったカバー2曲が追加されています。購入するならぜひ、この2曲が入っている日本盤をオススメします。

ここまで完璧に“MOTLEY CRUEをイメージさせつつも、そこを超えた”作品をヴィンスがリリースしたことで、これに続く本家MOTLEY CRUEに対するハードルはさらに高くなったと思います。しかし、その本家が1年後に発表したのが、あの『MOTLEY CRUE』だったことで多くのファン(自分を除く)が落胆したのを、今でも昨日のことのように覚えています。そりゃあこの『EXPOSED』みたいな路線を期待したくなるよね。



▼VINCE NEIL『EXPOSED』
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投稿: 2017 03 24 12:00 午前 [1993年の作品, Motley Crue, Vince Neil] | 固定リンク

2017/03/23

ENUFF Z'NUFF『CLOWNS LOUNGE』(2016)

また随分と微妙な作品をぶっこんできたなぁ……というのが正直な感想。まぁそこも含めてENUFF Z'NUFFらしいっちゃあらしいんですが。

日本では2009年、海外では2010年に発表された前作『DISSONANCE』から実に7年ぶりに発表された本作『CLOWNS LOUNGE』は、1988〜89年頃に制作されたデモ音源をベースに、2004年に制作されつつも未発表だった楽曲、そして新たに2016年に録音された楽曲を含む、とても“ニュー”アルバムとは呼べない代物。もちろんZ'NUFFにはこれまでにも未発表音源をまとめたアルバムはいくつか発表されているので、これもその一環と考えれば全然受け入れられるんだけど……要は、現在バンドには往年のフロントマン、ドニー・ヴィ(Vo, G)が在籍していないのに、その彼が歌う楽曲が中心のアルバムを新作として発表するのはどうなの?という疑問が残るわけです。こればかりは、過去のケースとはまったく異なりますからね。

しかも、1988〜89年というと1989年のメジャーデビュー作『ENUFF Z'NUFF』発表前夜。メンバーもドニーのほか、現在もバンドに在籍するチップ・ズナフ(Vo, B)、2004年に亡くなったデレク・フリーゴ(G)、バンド脱退後にヴィンス・ニールのソロプロジェクトに加わるヴィッキー・フォックス(Dr)という懐かしい布陣で、演奏スタイルも中〜後期(1990年代後半以降)とは異なる“もろに”ハードロックスタイル。楽曲の質感もその系統ですが、メロディが持つポップさ、普遍性はのちの彼らにも通ずる……というか、この時点ですでに一貫していたんだなと気づかされます。そう、“あの頃のENUFF Z'NUFF”が好きな人にはうってつけの1枚なのですよ(ただし、あくまでデモ音源がベースなので、それなりの音質。そこにこだわる人はご注意を)。

しかし、そこに現体制……チップがボーカルを務める楽曲も含まれていて、それがしらじらしくアルバムのオープニングを飾るんだから、なんとも言えない気持ち悪さを冒頭から感じてしまうんです。過去の遺産(と、世の中的には言えないレベルかもしれないけど)を食い潰す、あるいは過去の名声に便乗する……ドニー時代を愛する自分からしたら、そう見えてしまうアルバムなんです。

そんな中、アルバム中盤に突如登場する「The Devil Of Shakespeare」。この曲のみ2004年の録音なんですが、ボーカルを担当するのが元WARRANTのジェイニー・レイン。彼も2011年にお亡くなりになってますし、そんなことを考えながら聴くとよりいたたまれない気持ちになってしまうのです(ちなみにリードギターはSTYXのジェイムズ・ヤングがプレイ)。

彼らも5月に開催されるL.A.メタル系フェス『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』で久々に来日。「あれ、L.A.関係あったっけ?」という疑問も残りますが、“ドニーがいないZ'NUFF”を観て現実を受け入れるしかないのでしょうか。いい曲がそれなりに多い本作を聴くたびに、モヤモヤした気持ちになってしまうのです。



▼ENUFF Z'NUFF『CLOWNS LOUNGE』
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投稿: 2017 03 23 12:00 午前 [2016年の作品, Enuff Z' Nuff, Warrant] | 固定リンク

2017/03/22

STEPHEN PEARCY『SMASH』(2017)

5月13、14日に幕張メッセイベントホールで開催が決まった、L.A.メタル界隈のレジェンドたちが一堂に会する屋内フェス『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』。こちらの2日目ヘッドライナーとして出演するのがスティーヴン・パーシー、ウォーレン・デ・マルティーニ、フォアン・クルーシェ、カルロス・カヴァーゾによるRATT。もはやボビー・ブロッツァーのRATTはどこへやら(日本では確実に受け入れられないだろうけどね)。

そんな、あれこれ慌ただしくなり始めたRATT界隈から年始にスティーヴン・パーシーの4thソロアルバム『SMASH』がリリースされました。ソロとしては2008年の『UNDER MY SKIN』以来約9年ぶり、直近のリリースとなると2010年のRATT『INFESTATION』以来約7年ぶり。その間にスティーヴンも59歳になってしまいました……。

さて、アルバムはダークなスローナンバー「I Know I'm Crazy」からスタート。「全然声が出てないじゃん……」な低音ボイスに若干不安になりますが、2曲目「Ten Miles Wide」以降は我々がよく知る“Voice of RATT”を堪能することができます。安心した。

楽曲自体もメロディ、テンポ感含めRATTの延長線上にあるナンバーばかりで、往年の彼を知るHR/HMファンなら間違いなく楽しめる1枚だと思います。また「Shut Down Baby」「What Do Ya Think」「Summers End」みたいなLED ZEPPELIN風ヘヴィブルースも含まれており、同系統の楽曲が多い本作中で程よいアクセントとなっています。

そう、もともとRATTって決して楽曲の幅が広いタイプのバンドではなかったし、スティーヴン自体も幅広く何でも歌えるタイプのシンガーではないので、この金太郎飴的アルバムは聴く人によっては退屈と感じてしまう可能性もゼロではありません。RATTの全盛期を知らない若い子たちがこれを聴いてどう感じるのか、非常に気になるところです。

ちなみにレコーディングに参加しているのは、2005年からスティーヴンのソロバンドでの片腕的存在Erik Ferentions(G)、初期RATTやROUGH CUTTのメンバーだったMatt Thorn(B)、WHITE LIONやザック・ワイルドのPRIDE & GLORYにも在籍した経験を持つGreg D'Angelo(Dr)。ギタープレイからはRATTほどの強い個性は感じませんし、耳に残るフレーズも少ないのですが、楽曲のメロディ自体はクセになるものが多いのも事実。そういう意味では“Voice of RATT”の個性を存分に生かした、“Voice of RATT”のためだけに作られたアルバムと言えるでしょう。スティーヴンの歌を最良の形で楽しむ作品集。個のぶつかり合いを楽しむRATTとは異なる作風ではあるものの、これもまた“もうひとつのRATT”と言えるかもしれませんね。



▼STEPHEN PEARCY『SMASH』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 03 22 12:00 午前 [2017年の作品, Ratt, Stephen Pearcy] | 固定リンク

2017/03/21

METAL CHURCH『XI』(2016)

METAL CHURCHにマイク・ハウ(Vo)が復帰したと知ったときは、正直驚きました。デヴィッド・ウェインに続く二代目ボーカルとして3rdアルバム『BLESSING IN DISGUISE』(1989年)からメジャー落ちしての5thアルバム『HANGING IN THE BALANCE』(1993年)までの3作に参加し、1994年の脱退後は音楽業界から引退していたその人が、20年以上ぶりにシーンに復帰するのですから。しかも新作まで完成させてしまった……それが今回紹介する、2016年3月にリリースされた通算11作目のスタジオアルバム『XI』です。

僕自身METAL CHURCHをちゃんと聴き始めたのが『BLESSING IN DISGUISE』ですし、一番好きな作品が(賛否あるでしょうが)4枚目の『THE HUMAN FACTOR』(1991年)なので、この復帰にはもちろん喜んだのですが、同時に「20年もブランクがある人が再び表舞台に出ちゃっても大丈夫なのか?」という不安も多いにあったわけで。正直、デヴィッド・ウェインが再びMETAL CHURCHに復帰して以降の作品にそこまでの魅力を感じていなかった(主にボーカルパフォーマンス面で)ので、その不安はより強かったというのがありました。

しかし、いざ完成した本作『XI』を聴いて……「Reset」「Killing Your Time」の2曲に完全に打ちのめされました。いやいや、往年の輝きそのまんまやん、と。しかも、「Reset」でのハイトーンと凄みの効いたロウトーンのツインボーカルは鳥肌モノ。そうそう、この声この声!と膝を叩いたのは言うまでもありません。

僕が聴いていた80年代末〜90年代初頭に在籍したメンバーは、もはやマイク・ハウ以外誰もいません。バンドの創始者であるカート・ヴァンダーフーフ(G)はあの頃、ソングライティング面ではバンドに関わっていましたが表舞台には立っていませんでしたし。そういう意味では全盛期に関わったメンバーが2名はいるわけですが……それでも別モノ感が多少あるかな、同じバンド名だけど。

とはいえ、楽曲自体はファンがイメージするMETAL CHURCHにもっとも近い形ではないでしょうか。先に触れた冒頭2曲しかり、アコースティックギターを上手に取り入れたドラマチックな展開を持つ「No Tomorrow」「Signal Path」もいかにもだし、特に後者のイントロではかの「Badlands」(『BLESSING IN DISGUISE』収録)を思い浮かべてしまいましたしね。「Sky Falls In」や「Blow Your Mind」のダークさも、「Needle And Suture」の楽器隊が一丸となったザクザク感も、「Soul Eating Machine」のどこか日本のV系にも通ずる雰囲気も、すべてが懐かしく響く……そう、目新しさはどこにもありません。古くからのファンなら安心して楽しめる1枚でしょうし、当時を知らない世代には「古臭いけど、ボーカルの声が個性的だし、曲もパワーメタルっぽいし、いいんじゃない?」と少しは響く要素があるのかな……そう願っております。

唯一残念な点を挙げると、収録時間が長いこと。全12曲(ボーナストラック含む)と普通に考えれば多すぎるようには感じませんが、7分台の楽曲が2曲もあることからわかるように、1曲が比較的長いんです。その結果、約64分という結果に。後半に進むにつれて似たり寄ったりの楽曲がいくつか登場するので、そこはうまく絞ってほしかったな。そうすれば、アルバムとしてもっと締まった内容になったはずなので。そこだけが勿体ない。本作は“良い曲ばかりを詰め込めば良いアルバムになると、必ずしも言い切れない”というわかりやすい例かもしれませんね。



▼METAL CHURCH『XI』
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投稿: 2017 03 21 12:00 午前 [2016年の作品, Metal Church] | 固定リンク

2017/03/20

RED DRAGON CARTEL『RED DRAGON CARTEL』(2013)

HAREM SCAREM、オジー・オズボーンと続いたので(『TRIBUTE』は3月19日に紹介しようとは決めていましたが、その前にHAREM SCAREMを取り上げるというこの流れは意図的ではありませんでした)、今回はその2つが絶妙な形で合体したRED DRAGON CARTELを紹介したいと思います。

RED DRAGON CARTELはオジー・バンドの二代目ギタリスト、ジェイク・E・リーがBADLANDSの2ndアルバム『VOODOO HIGHWAY』(1991年)以来22年ぶりに本格始動させたバンドRED DRAGON CARTELの1stアルバム。日本では2013年12月、海外では2014年1月にリリースされています。アルバムではHAREM SCAREMのドラマー、ダレン・スミスが大半の楽曲でボーカルを務めていますが、4曲でゲストボーカルも採用。「Feeder」にはロビン・ザンダー(CHEAP TRICK)、「Wasted」にはポール・ディアーノ(元IRON MAIDEN)、「Big Mouth」にはマリア・ブリンク(IN THIS MOMENT)、「Redeem Me」にはサス・ジョーダンと男女/ジャンル問わずさまざまなシンガーがジェイクの楽曲を歌っています。

1曲目「Deceive」の冒頭、オジーの「Bark At The Moon」を彷彿とさせるカミソリギターリフに歓喜したHR/HMリスナーは非常に多いのではないでしょうか。僕も間違いなくそのひとりで、それにつづくダレンのハスキーなボーカル含め非常にカッコよくて「これは期待できる!」とすぐに確信。もちろんその確信に間違いはなく、曲によってはインダストリアル調のアレンジを含むものもありますが、基本的にはジェイクのキャリアを知っている人なら納得できるものばかりでした。しかもBADLANDSで傾倒したブルースロックではなく、オジー・バンド在籍時を思わせる楽曲やプレイも豊富で、「ようやくこっちの畑に戻ってきてくれた!」とアルバムを聴き進めるうちに頰が緩んでいったものです。

「Wasted」でのモダンなアレンジはどことなく最近のオジーにも通ずるものがあるし、「War Machine」なんて完全にBLACK SABBATHリスペクトなアレンジだし。そりゃそうだ、本作のエグゼクティヴ・プロデューサー&ミキサーはオジーの近作を手がけるケヴィン・チャーコなんだから。それにザックはオジーの代表作『BARK AT THE MOON』(1983年)、『THE ULTIMATE SIN』(1986年)のメインソングライターでもあるわけで、“オジーっぽさ”がゼロなわけない。ダレンがライブでもボーカルを務めていることから、この形態がバンドとしては正しいんだろうけど、アルバム制作時はそこまでパーマネントなものとしては考えてなかったから、こういう作品になったのかもしれないですね(そのダレンも一時、バンドを脱退していますし。ますますバンド感が薄いような)。

オジーやサバスが好き、特にジェイク時代が好きという人なら間違いなく気に入る1枚。オジーっぽい曲を女性ボーカルが歌うと……という興味深い試みも楽しめますし。バンドっぽさは本当に希薄だけど、HR/HMファンならジェイク・E・リーというアーティストの実験の場として素直に受け入れられるはずです。



▼RED DRAGON CARTEL『RED DRAGON CARTEL』
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投稿: 2017 03 20 12:00 午前 [2013年の作品, Badlands, Cheap Trick, Harem Scarem, Ozzy Osbourne, Red Dragon Cartel] | 固定リンク

2017/03/19

OZZY OSBOURNE『TRIBUTE』(1987)

このアルバム『TRIBUTE』の主人公、ランディ・ローズというギタリストは今から35年前の今日、突然この世から去ってしまいました。僕がHR/HMを聴き始めるちょっと前の出来事で、僕がオジー・オズボーンというHMアーティストを知ったときにはすでにその隣にはジェイク・E・リーという日系ギタリストが立っていました。

『TRIBUTE』は1987年3月19日、まさにランディが亡くなってから5年経ったその日にリリースされた2枚組(アナログのみ。CDは1枚)ライブアルバムです。実は僕自身オジーの作品に関して、当時はまだリアルタイムで発表されたアルバムしか聴いておらず、この『TRIBUTE』を通じて初めて『BLIZZARD OF OZZ』や『DIARY OF A MADMAN』の楽曲に触れました。いや、もしかしたら一部のBLACK SABBATHナンバーもここで初めて聴いたのかな。ちょっと記憶があやふやですが。あと、オジーのライブではおなじみ、オープニングSEに使われているあのクラシッックナンバーが、カルミナ・ブラーナの「おお、運命の女神よ(合唱)」だと知ったのは、もうちょっと時間が経ってからのことでした。

ボーカルに関してはオジーがあとからダブルで録り直していますが、そのほかの演奏に関しては(特にギターパートは)無修正。ところどころにミスも見られますが、それがライブならではの緊張感を生み出しており、他のオジーのライブ作品とは異なる空気感を作り上げています。

楽曲に関しては、今さらここで書くまでもないでしょう。名曲しか入っていません。そんな中でも特に「Mr. Crowley」は、オリジナルのスタジオバージョンを超える仕上がりだと思います。僕が『TRIBUTE』を先に聴いてしまったからというのもありますが、『BLIZZARD OF OZZ』でのスタジオバージョンはちょっと物足りないような……って贅沢言ってますね。

圧巻なのは、「Revelation (Mother Earth)」〜「Steal Away (The Night)」の組曲的構成と、それに続くトミー・アルドリッジのドラムソロ、そこからランディの長尺ギターソロを含む「Suicide Solution」でしょうか。この山場があるから、そのからサバス3連発(「Iron Man」「Children Of The Grave」「Paranoid」)でライブ本編を大盛り上がりで締めくくれるわけです。

そうそう、本作には唯一のスタジオトラックにしてレア音源の「Dee (Randy Rhoads Studio Out-takes)」が、アルバムの最後に収録されています。『BLIZZARD OF OZZ』に収録されているクラシックギターのインスト「Dee」のアウトテイクなわけですが、ギターを爪弾きながらところどころで飛び出すランディの生声になぜか涙腺が……本来なら世に出すべき音源ではないのかもしれませんが、このテイクがラストに置かれることで温かい気持ちでこのアルバムを聴き終えることができる、絶対になくてはならない音源なのです。

このアルバム、最初はレンタルで借りたんだよね。しかもレコードだったなぁ……いつ聴いたんだっけ。中学卒業したあとの春休み? それとも高校に入学してから? それは記憶が定かじゃないんだけど、間違いなくこの年よく聴いたアルバム(というかカセット)のひとつでした。そして今でもパソコンやスマホの中に必ず入っているアルバムのひとつでもあります。

今日は『TRIBUTE』だけじゃなくて、『BLIZZARD OF OZZ』も『DIARY OF A MADMAN』も聴き返してみようかな。



▼OZZY OSBOURNE『TRIBUTE』
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投稿: 2017 03 19 12:00 午前 [1987年の作品, Ozzy Osbourne] | 固定リンク

2017/03/18

HAREM SCAREM『MOOD SWING』(1993)

カナダの4人組HRバンドHAREM SCAREMが1993年にリリースした2ndアルバムにして、ここ日本でのデビュー作『MOOD SWING』。発売から20年以上経った現在も、このアルバムが放つ魅力はまったく色褪せていません。

1993年というと、世の中的にはHR/HMが完全に“過去のもの”に成り下がり、アメリカやヨーロッパではNIRVANAやPEARL JAM、SMASHING PUMPKINS、ALICE IN CHAINSといったグランジバンド、そのフォロワー的に登場したSTONE TEMPLE PILOTSなどがチャートやツアーで成功を収めていた時期、翌1994年4月にカート・コバーン(NIRVANA)が自殺したのと同じ頃から少しずつシーンは停滞していくことになるのですが、90年前後に活躍したHR/HMバンドの多くはセールス面で相当の苦戦を強いられ続けます。その結果、グランジ寄りのサウンドを取り入れ始めたり、ひどい場合はメジャーレーベルからドロップし(契約解除され)たり……しかし、ここ日本では少しだけ状況が異なりました。そう、日本ではまだHR/HMは死んでいなかったのです。

そんな状況下で発表された『MOOD SWING』というアルバム。とにかく冒頭2曲(「Saviors Never Cry」「No Justice」)のパワフルかつメロディアスなスタイルに、一発でノックアウトされたのをよく覚えています。ギターソロが死に絶えた時代にここまで弾きまくるか!というピート・レスペランスのプレイは圧巻だし、ハスキーさがいい味を出しているハリー・ヘスのボーカルも気持ちいい。楽曲はDOKKENが一番良かった頃を彷彿とさせつつも、アレンジやコーラスワーク、サウンドプロダクションからはDEF LEPPARDの影響が強く感じられる。なんだこれ、本当に1993年のアルバムか!?と最初は疑ったほどです。

ポップで軽やかな「Stranger Than Love」が終わると、本作のハイライトである「Change Comes Around」へ。5分という決して長くはない時間の中にHR/HMの起承転結がぎっしり詰め込まれたこの曲は、ボーカルも演奏もメロディもアレンジも「これが僕たちの求めるHR/HMのカッコよさだ!」と力説したくなるほどで、リリースから何年経とうがアンセムなのに変わりない。いやぁ、今もこの曲聴いてますが、ライブでの盛り上がりが目に浮かびますよ……。

もちろんその後も“かゆいところに手が届く”楽曲群目白押し。ソウル&ブルースフィーリング抜群な「Jealousy」、80年代の残り香が感じられる「Sentimental Blvd.」、ギターインスト「Mandy」からモダンなハードナンバー「Empty Promise」、歌と同じくらいギターも主張し続けるバラード「If There Was A Time」、“声”のみで構成された異色作「Just Like I Planned」、冒頭のギタープレイが鳥肌モノのダイナミックなHRチューン「Had Enough」……本当、捨て曲一切なし。

そういえば本作発売20周年を記念して、2013年には再レコーディングアルバム『MOOD SWING II』もリリースされていますが、最初に聴くならまずはオリジナルのこちらから。日本では続く3rdアルバム『VOICE OF REASON』(1995年)の評価が非常に低いですが、僕としては本作と同じくらいに好きな作品です。なので下手にベスト盤などに手を出すよりは、『MOOD SWING』と『VOICE OF REASON』の2枚を中古でゲットしたほうがいいと思いますよ。



▼HAREM SCAREM『MOOD SWING』
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投稿: 2017 03 18 12:00 午前 [1993年の作品, Harem Scarem] | 固定リンク

2017/03/17

TNT『TELL NO TALES』(1987)

TNTといえば、日本では1989年の4作目『INTUITION』がスタンダードかもしれませんが、僕としてはその前作『TELL NO TALES』のほうがこのバンドらしくていいな、と勝手に思っています。事実、最初に聴いた彼らのアルバムもこの『TELL NO TALES』でしたし。

2ndアルバム『KNIGHTS OF THE NEW THUNDER』(1984年)レコーディング直前に加入したトニー・ハーネル(Vo)が、楽曲制作でも本格的に参加したのが1987年リリースの3rdアルバム『TELL NO TALES』。すでに本国ノルウェーではそれなりに人気のあったTNTですが、このアルバムは初にして唯一の本国1位を獲得しています。シングルカットされた「10,000 Lovers (In One)」もノルウェーチャート2位を記録。また、アルバムはアメリカでも初めてBillboardにチャートイン(100位)するなど、世界規模でも少しずつ成功を収めつつありました。

「Everyone's Star」からスタートする本作は、トニー・ハーネルのハイトーンボーカルとロニー・ル・テクロ(G)の圧倒的にテクニカルなギタープレイに魅了される作品集。同曲、そして続く「10,000 Lovers (In One)」はともにシングルカットされるだけあって、非常にポップで親しみやすいメロディを持つ楽曲たちです。そこからライブの定番アップチューン「As Far As The Eye Can See」へと流れる冒頭3曲の構成は、TNTの全作品の中でも出色の出来だと思います。

テクニカルなギタープレイが耳に残る1分少々のインスト「Sapphire」が次曲の序章的な盛り上がりを作ると、続く「Child's Play」ではトニーの圧倒的な歌とQUEEN的なオーケストレーションが楽しめる。そこから再びクラシックギターによる短尺インスト「Smooth Syncopation」へと流れていき、「Listen!」のハーモニーが静寂を切り裂くかのように「Listen To Your Heart」へと突入。さらにヘヴィなミドルナンバー「Desperate Night」、泣きの名バラード「Northern Lights」とクライマックスに向けて盛り上がっていきます。そして、終焉を告げるドラマチックなインスト「Incipits」から高速メタルチューン「Tell No Tales」で幕を下ろす。ここまで約30分、本当にあっという間です。

次の曲の序章的インストが3曲も入っているので、全11曲とはいえ歌モノナンバーは計8曲。しかもトータルランニング30分というのは1987年当時としても非常に短い作品です。特に時代はアナログからCDへと移行しつつあった時期ですから。でも、長ければいいってもんじゃない。ここまでバラエティに富んでいて完璧な内容を30分に凝縮できているんだから、当時のTNTは只者じゃなかったんだと思います。ここでの成功が、続く『INTUITION』へとつながるわけですからね。

北欧メタルとか呼び方がいろいろあって何が正解かわからないけど、この『TELL NO TALES』に関しては純粋に“ヨーロッパ出身のHR/HMバンドの作品として優れた1枚”、それで十分だと思います。



▼TNT『TELL NO TALES』
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投稿: 2017 03 17 12:00 午前 [1987年の作品, TNT] | 固定リンク

2017/03/16

FIREHOUSE『FIREHOUSE』(1990)

WARRANTと同じく、ギリギリHR/HMブームの恩恵を受けることができたのが、1990年に本国デビューを果たしたアメリカの4人組バンドFIREHOUSE。彼らのデビューアルバム『FIREHOUSE』は同年8月にリリースされましたが、結成自体はその前年1989年のこと。意外とトントン拍子でデビューまでこぎ着けたんですね。つまり、ライブでの生え抜きということではなく、単純に楽曲が認められたということなのかもしれません。

ところが、ここ日本でのCDデビューはそこから半年以上経った1991年4月のこと。そう考えると、デビュー時のFIREHOUSEはそこまで好待遇というわけではなかったのかな。それに、本国と日本での推し曲のタイプがここまで違うか?というのも興味深いバンドだったし。日本ではマイナーメロHR「All She Wrote」がシングルカットされ、本国ではアーシーさも感じられるアメリカンロック調の「Don't Treat Me Bad」をシングル化。アルバムジャケットも海外盤の“美女が放火すると言わんばかりに火のついたマッチ棒を持つ”デザインから、日本オリジナルのもの(メラメラと燃える炎の中にメンバー4人のシルエットを浮かび上がらせたもの)に変更されています。

で、日本デビューと前後して「Don't Treat Me Bad」はBillboardチャートぐいぐい上昇して、全米19位という記録を残します。これが正しい選択だったということなんでしょうね。ちなみに「All She Wrote」ものちにアメリカでシングルカットされましたが、58位と低調な結果で終わっています。

続く2ndシングルは名バラード「Love Of A Lifetime」。この曲が全米5位という大ヒットとなり、アルバムも最高21位、計200万枚を売り上げる、デビュー作としては上出来な結果を残します。

「Don't Treat Me Bad」のようにアコースティックギターをうまく取り入れた土着的な楽曲は、この時点ではFIREHOUSEの軸ではなかったのですが、のちの“アンプラグド”ブームと結びついてアコースティックアルバムを出すまでにつながっていきます(これが形となるにはもう数年かかるのですが)。が、やはりこのバンドの強みは「All She Wrote」や「Overnight Sensation」で聴ける繊細なメロと、「Rock On The Radio」「Snake & Tumble」「Don't Walk Away」などで味わえるワイルドでダイナミックなハードロックサウンドだと思います。その2面性をしっかり使い分けることができるからこそ、「Don't Treat Me Bad」や「Love Of A Lifetime」のような楽曲が映えるわけです。

また、C.J.スネア(Vo)のクセの強いハイトーンボイス、ところどころで自己主張しまくりなビル・レヴァティー(G)のギタープレイも、個性の強さのわりに曲の邪魔をしていない。それどころか、曲の良さに拍車をかけているんだから、さすがとしか言いようがないわけです。本当、(WARRANTとは別の意味で)よくできたデビューアルバムだと思います。



▼FIREHOUSE『FIREHOUSE』
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投稿: 2017 03 16 12:00 午前 [1990年の作品, Firehouse] | 固定リンク

2017/03/15

WARRANT『DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH』(1989)

80年代のHR/HMブーム末期にLAから登場したのが、今回紹介するWARRANT。結成は1984年と比較的早いほうですが、メジャーデビューは1989年とそこから5年の歳月を要しています。

本国では1989年1月にリリースされた彼らのデビュー作『DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH』。そのアルバムタイトルと、“銭ゲバ”をそのまま具現化したかのようなイラストのジャケットから、WARRANTのことを知らない人は「きっと攻撃的なスラッシュメタルはハードコアでもやってるのかな」なんて想像するかもしれませんが、その中身は……グラムメタルとまでは言わないものの、適度なハードさが兼ね備わったポップなHRといったところでしょうか。

彼らのことを最初に知ったのは、たぶんMTVかTBS『PURE ROCK』で観たMV「Down Boys」だったと記憶しています。僕はてっきりPOISONの亜流みたいなものを想像していたら、音はもっとまともでまずそこに驚かされた。しかし、パフォーマンスがRATTやSCORPIONSがやってるようなフォーメーション(フロントメンバーがアクションを揃えるやつ)をもっと過剰にしたもので、そこに若干退いたんです。正直、アルバムを買ってまで聴こうとは思えなくて。

その後も「Big Talk」のMVをテレビで目にはしてましたが、そこまで心を動かされることもなく。パワーバラード「Heaven」が全米2位を記録する大ヒット曲になっても、「ああ、そう」くらいな感じでスルーしていたのでした。

で、1990年に上京後、2ndアルバム『CHERRY PIE』リリース時に「ちゃんと聴いてみようか」と思い、同作と一緒に1stも購入。こうしてようやくアルバムをフルで聴くことができたのでした。本国でのリリースから1年半以上経ってからのことです。

正直、バンドに対するイメージはそこまで大きくは変わりませんでした。よく作り込まれた楽曲群、適度にテクニカルでそつのない演奏、クセもそこまで強くなくて耳馴染みの良いボーカル……そう、非常に優等生すぎるんですよ、デビューアルバムのくせに。

確かにデビューアルバムってそれまでの活動の集大成的内容になるとは思うんです。でも、これはいろんな意味で過剰すぎないかと。下積みが長かったせいもあるのかもしれないし、ブーム末期にデビューしたことも大きく影響してるのかもしれないけど、ちょっとリスナー側に歩み寄りすぎなんじゃないかな。冷静に聴いて、そういう印象を持ちました。

しかし、本作リリースからすでに28年経過した2017年に聴いてみると……不思議と印象が変わらない。そう、当時からそうであったように、古くもないし新しくもない。こんな普遍性の強いアルバムだとは当時考えてもみなかったな。バンドは現在も活動していますが、ボーカルのジェイニー・レインは2011年に亡くなっています。この歌声を新作で再び耳にすることはできませんが、本作や『CHERRY PIE』などといった作品は世の評価ほど悪くないよということだけは声を大にして伝えておきたいと思います。



▼WARRANT『DIRTY ROTTEN FILTHY STINKING RICH』
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投稿: 2017 03 15 12:00 午前 [1989年の作品, Warrant] | 固定リンク

2017/03/14

ALICE COOPER『TRASH』(1989)

アリス・クーパーにとってキャリア18枚目のスタジオアルバムにあたるのが、1989年に発表された『TRASH』です。多少カルト的なイメージが強かった彼ですが、70年代はチャート的にも大成功を収めたアーティストのひとり。80年代前半は不遇の時代を過ごしますが、世の中がHR/HM万歳な時期に突入するにつれてアリス・クーパー再評価の声が挙がり始めます。また、彼のバンドに在籍したメンバーが結成したWINGERが大成功したことも、再び彼に注目が集まる大きなきっかけになったのではないでしょうか。

そんなタイミングに満を持して発表された『TRASH』。プロデューサーをBON JOVIなどのソングライターとして知られるデズモンド・チャイルドが務め、全10曲中9曲の楽曲制作にデズモンドが携わります。またその中にはジョーン・ジェットやジョン・ボン・ジョヴィ&リッチー・サンボラ(BON JOVI)といったデズモンド門下のアーティストの名も。レコーディングにもジョン&リッチーのBON JOVI組のほか、AEROSMITHからはスティーヴン・タイラー、ジョー・ペリー、トム・ハミルトン、ジョーイ・クレイマーの4人、キップ・ウィンガー(WINGER)、スティーヴ・ルカサー(TOTO)、ケイン・ロバーツ(80年代中盤のアリス・クーパー・バンドのギタリスト)といった錚々たる面々が参加した、豪華な1枚に仕上がっています。

アルバム自体は、“デズモンド・チャイルドが関わったアルバム”というイメージそのままの内容。おどろおどろしいアリス・クーパーのパブリックイメージとは相反する、美メロ満載のポップでキャッチーなハードロックアルバムです。1曲目の「Poison」や3曲目「House Of Fire」を聴いて、「BON JOVIかよ!」と当時ツッコミを入れたくなったHR/HMも少なくないはずです。しかし、これをジョン・ボン・ジョヴィが歌うのとアリス・クーパーが歌うのとでは、まったく違うものに仕上がるのだから本当に不思議。「Poison」の歌い出しなんて、アリス・クーパーがロウトーンで歌うことで、どこかおどろおどろしさが増すし。

とはいえ、どの曲もジョン・ボン・ジョヴィが歌う姿を簡単に想像できるし、脳内で勝手にボーカルをジョンに変換できる。5曲目のバラード「Only My Heart Talkin'」なんて、まんまAEROSMITHですしね(なんならこの曲、スティーヴン・タイラーがコーラスで参加してますし)。アリス・クーパーならではの個性という点においては、楽曲面にはそれほど強いものは感じられないかもしれません。

それでも1989年、このアルバムの成功によってアリス・クーパーはギリギリHR/HMブームに間に合った。時流に乗ることで、続く『HEY STOOPID』(1991年)や『THE LAST TEMPTATION』(1994年)でより好きなことがやれるようになったわけですから、結果良かったのではないかと。また、『TRASH』が売れてくれたから、1990年に念願の初来日公演も実現したわけですしね。

全米7位の大ヒット曲となった「Poison」をはじめ、「House Of Fire」「Bed Of Nails」などといったシングル曲以外にも良曲満載で、本当に捨て曲なし。最初に聴く1枚ではないかもしれませんが、あの時代の空気感に触れたいという人にはわかりやすい作品だと思います。



▼ALICE COOPER『TRASH』
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投稿: 2017 03 14 12:00 午前 [1989年の作品, Alice Cooper] | 固定リンク

2017/03/13

KISS『MONSTER』(2012)

昨日KISSについていろいろ調べていたら、最新作『MONSTER』が2012年秋のリリースで、もう4年以上経ったという事実に驚かされました。とはいえこの4年ちょっとの間にKISSは二度も来日しているんですよね(2013年秋と2015年春)。2013年のときはチケットを持っていながら仕事の都合で行けなかったのですが、2015年の際には逆に仕事として東京ドーム公演に関わることができ、リハーサル含め彼らのプロフェッショナルぶりを間近で体験することができました。

さて、今のところ最新作となるこの『MONSTER』はKISSにとって20作目のオリジナルアルバム。この前の作品にあたる『SONIC BOOM』(2009年)はバンドにとって11年ぶりのオリジナルアルバムだったにもかかわらず、ここ日本ではリリースされることはありませんでした。そうった意味でも、この『MONSTER』に賭けるバンドやレーベルの意気込みは、当時相当なものがあったと記憶しています。

アルバム自体は、前作『SONIC BOOM』の延長線上にある作風で、ポール・スタンレー(Vo, G)とジーン・シモンズ(Vo, B)のリードボーカル曲が程よいバランスで混在し、その合間をトミー・セイヤー(Vo, G)ソロVo曲、エリック・シンガー(Vo, Dr)ソロVo曲、そしてポール&ジーンのツインボーカル曲が埋めるという完璧な構成。70年代のキャッチーでコンパクトな楽曲スタイルを軸にしながらも、70〜80年代のハードさ、90年代のサイケさなども適度にまぶされており、いわば“KISSの集大成”と呼べるような仕上がりです。

ポールが歌うアップテンポの「Hell Or Hallelujah」からスタートするのはちょっと意外でしたが、続くジーンVo曲「Wall Of Sound」はどこかビートルズ「Helter Skelter」を彷彿とさせるヘヴィな1曲。そこからポールVoの「Freak」、ジーンVoの「Back To The Stone Age」と、どことなく70年代のKISSを彷彿とさせる楽曲に続くのも興味深いところ。しかし、セルフパロディにならずに新しさもしっかり持ち合わせているのは、KISSの大ファンだったトミーが楽曲制作に加わっていることも大きいのかなと思います。5曲目「Shout Mercy」もメロ運びやギターリフが非常に初期のKISSっぽいし、6曲目「Long Way Down」は初期っぽさがありながら90年代のKISSが演奏しても不思議じゃない作風。ギターの歪み方が80〜90年代のファクトリーメイドな歪みとは異なる、ナチュラルな歪みだからこそ余計に初期のKISSを思い浮かべるのかもしれません。

ソウルフルなコーラスからスタートする「Eat Your Heart Out」、ダイナミックなアレンジが印象的な「The Devil Is Me」とジーンVo曲が2曲続いたあとは、いよいよトミー&エリックのVo曲が登場。トミーの歌う「Outta This World」は自分の役割をしっかり認識しているためか、エース・フレーリーが歌っても不思議じゃない軽やかなロックンロールを奏でています。またエリックが歌う「All For The Love Of Rock & Roll」もピーター・クリス時代を意識しているのか、ポールが書いた曲をエリックが歌うスタイルを取っています。どちらも2012年的とは言い難いかもしれませんが、KISSらしさという点においては100点満点。そこからAC/DC的な「Take Me Down Below」でポール&ジーンがツインボーカルを聴かせ、ポールが歌う王道KISSチューン「Last Chance」で派手に締めくくります。

全12曲で約44分。どの曲も3分前後で、どんなに長くても4分半止まり。しかもバラードなしで攻めまくるという構成。頭からお尻まで、どこを切り取ってもKISS以外の何者でもない本作は、KISSの最終到達点なのかもしれません。だからこそ、彼らが新作制作よりもライブに専念するのはある意味理にかなっているのかなと。これを超えること自体が難しいことだとは重々承知していますが、せめてもう1枚だけ、新作を聴いてみたいものです。



▼KISS『MONSTER』
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投稿: 2017 03 13 12:00 午前 [2012年の作品, KISS] | 固定リンク

2017/03/12

KISS『CRAZY NIGHTS』(1987)

KISSが1987年秋に発表した通算14枚目のオリジナルアルバム『CRAZY NIGHTS』。『LICK IT UP』(1983年)で初めてメイクを落として人前に姿を現し、同作を携えたツアーも大成功。続く『ANIMALIZE』(1984年)、『ASYLUM』(1985年)も時代の流れを敏感に察知し、70年代のポップロック路線からタフでハード&ヘヴィな路線へとシフトチェンジを遂げます。が、世の中的には「KISSにそんなもの求めてねーよ」と言わんばかりに、じわじわとセールスを落とす結果に。そして1986〜87年に迎えた本格的なHR/HMブームに対してKISSが出した答えが、この『CRAZY NIGHTS』でした。

当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)のオリメンに二代目ドラマーのエリック・カー(Dr, Vo)、そして前作『ASYLUM』から参加のブルース・キューリック(G)という布陣。プロデューサーにはHEARTの復活作『HEART』(1985年)やオジー・オズボーン『THE ULTIMATE SIN』(1986年)、そしてSURVIVOR『VITAL SIGNS』(1984年)や『WHEN SECONDS COUNT』(1986年)などを手がけてきたロン・ネヴィソンを迎え、“1987年という時代を意識しつつも世間がKISSに求めるもの”を的確に形にした“KISS流産業ハードロック”と呼ぶにピッタリな1枚を完成させました。

シングルカットもされた「Crazy Crazy Nights」からスタートするこのアルバム。ライブでの大合唱を意識しつつも、しっかりラジオやMTVでオンエアされることも意識した、本当によくできた1曲です。残念ながらアメリカでは65位と大ヒットにはつながりませんでしたが、一方でイギリスでは4位という大成功を収めています。で、ここからハード路線の「I'll Fight Hell To Hold You」、キャッチーなスタジアムロック「Bang Bang You」とポールVo曲が3曲続きます。これもKISSにしては珍しいことですよね。

4曲目「No, No, No」でようやくジーンVo曲登場。ブルースのアグレッシヴなギタープレイを全面フィーチャーした、メタリックなファストチューンです。続く「Hell Or High Water」もジーンVo曲で、70年代の雰囲気にも通ずるものがありつつもしっかり現代的な側面も打ち出されたミドルナンバー。ポールが歌う6曲目「My Way」はシンセが前面に出た、これぞ“産業ハードロック”と言いたくなるキャッチーな1曲です。サビのメロディ進行や開け方は、ちょっとやそっとじゃ真似できない強みが感じられます。

7曲目「When Your Walls Come Down」は、ポールのハイトーンとジーン&エリックの掛け合いコーラスを効果的に用いたハードチューン。続く「Reason To Live」は本作唯一のバラードですが、通常のパワーバラードとはちょっと違った雰囲気を持っています。例えるならば……ロン・ネヴィソンだからというわけじゃないですが、HEARTの「What About Love」的な雰囲気と言いましょうか。KISSらしい楽曲とは言い難いですが、このアルバムの中では何の違和感もなく聴けてしまいます。

本作3曲目となるジーンVo曲「Good Girl Gone Bad」は、ロックンロールのマナーに添いつつもKISSらしいメロ運びをする独特な1曲。今作における絶妙なアクセントとなっています。10曲目「Turn On The Night」もシンセを前面に打ち出したポップチューンですが、“ラジオやMTV狙ってます”的ないやらしさも同じくらい強く感じられます。ダイアン・ウォーレンが楽曲制作に関わってることも関係あるんでしょうか。そしてラストはジーンVoのヘヴィな「Thief In The Night」で幕を下ろします。

全11曲中ジーンVo曲が4曲のみというのは前作『ASYLUM』、前々作『ANIMALIZE』と変わらないのですが、冒頭のポールVo曲3連発のインパクトが強いせいか、どうにも本作は「ポールがひとり気合い入れて頑張った作品」というイメージが拭えません。だからこそ、ジーンのマイペースぶりが発揮された4曲がいいアクセントになっているのも事実。リリースから30年経った2017年に聴くと若干古さを覚えるサウンドアレンジもありますが、楽曲の質自体は非常に高いものばかり。意外と最近のKISSにも通ずる要素もあるので、80年代の彼らに触れるならまずはこのアルバムから……というのもアリだと思います。



▼KISS『CRAZY NIGHTS』
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投稿: 2017 03 12 12:00 午前 [1987年の作品, KISS] | 固定リンク

2017/03/11

MOTLEY CRUE『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987)

昨日のAC/DCの記事で触れ忘れましたが、1987年前後にAC/DCの名前を挙げ始めたのは何もRATTやGUNS N' ROSESだけではなく、MOTLEY CRUEもだったんですよね。確か1987年から始まった『GIRLS, GIRLS, GIRLS』ツアーではAC/DCの「Highway To Hell」をカバーしていた記憶も。思えばAEROSMITHが本格的再ブレイクする前に彼らのことを持ち上げたのも、RATTとMOTLEYでしたしね。

ということで、今日はMOTLEY CRUEが1987年初夏にリリースした通算4枚目のアルバム『GIRLS, GIRLS, GIRLS』を紹介したいと思います。アルバムごとにサウンドスタイルやヴィジュアルを一新し、常に流行の最先端を追い続けていた80年代のMOTLEY CRUE。前作『THEATRE OF PAIN』(1985年)ではグラムロックや70年代のAEROSMITH的ルックスに、ヘヴィメタルというよりはグラムHRというようなライト路線へとシフトチェンジし、大成功を収めましたが、今作『GIRLS, GIRLS, GIRLS』では世の中がグラムメタルで賑わう中、そのスタイルを捨ててマッチョ&ワイルドな路線へ。サウンドもより生々しさを伴うロックンロール色の強いHRサウンドへと進化させています。

『GIRLS, GIRLS, GIRLS』のアルバムジャケットでハーレー・ダビッドソンにまたがるヴィンス・ニール(Vo)とニッキー・シックス(B)。表題曲「Girls, Girls, Girls」のMVではヴィンスやニッキーのみならず、トミー・リー(Dr)やミック・マーズ(G)までもがハーレーを乗り回し、ストリップ小屋を散策します。まさに“Sex, Drug, Rock 'N' Roll”の三種の神器がぴったりなスタイルを地でいくとはこのこと。もともと彼らにはその要素が見え隠れしていましたが(前作ではそれ以上に、パーティ感が強かった印象ですが)、ここまで開き直って直球を放たなくても……と思ってしまったのも事実です。

当時のツアーで披露した360度回転ドラムの場面をフィーチャーしたMVも印象的な「Wild Side」からスタートするこのアルバム。そのまま「Girls, Girls, Girls」へと流れていく頭2曲の構成は完璧です。どこかソウルフルな雰囲気もある3曲目「Dancing On Glass」は若干地味な印象がありますが、歌詞はニッキーのドラッグ体験を歌ったもので味わい深い(苦笑)ものがあります。タイトルからして直球な「Bad Boy Boogie」も女性コーラスが入ることで、前曲以上にソウルやゴスペルチックな色合いが。亡くなった祖母のことを歌ったショートバラード「Nona」は前作における「Home Sweet Home」とは異なるタイプ/立ち位置ながらも、本作において一瞬の安らぎを与えてくれます。

アナログB面は「Five Years Dead」「All In The Name Of…」と、シンプルなロックンロールからスタート。「Sumthin' For Nuthin'」も決して派手さはないけど、どこか引っかかりがある不思議な曲。この『GIRLS, GIRLS, GIRLS』というアルバムの収録曲は、シングルリリースされた冒頭2曲が持つ派手さと、この「Sumthin' For Nuthin'」みたいに“派手になりきれず、どこか地味”に二分されるんですよね。前者にばかり目を奪われて他の曲の良さに気づかないまま、「『GIRLS, GIRLS, GIRLS』って評判のわりに、あんまり良くないよね?」と切り捨ててしまうには本当に惜しい1枚。実はスルメ度という意味では、1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1982年)に匹敵するのではないかと思っています。

9曲目には、本作後半のハイライトとなるパワーバラード「You're All I Need」が登場。MOTLEY CRUEではトミー・リーがドラムとピアノを兼務するため、当時のツアーでこの曲は披露されていなかったと記憶しています(「Home Sweet Home」みたいにピアノパートとドラムパートが別個じゃなくて、同時に鳴っているしね)。また、歌詞も非常にダーク(恋人を永遠に自分のものにしたくて殺してしまうという内容)なため、3rdシングルとしてリカットされるも大ヒットにはつながりませんでした(全米83位。でも「Home Sweet Home」も89位だったし、同じようなもんか)。

そしてラストがエルヴィス・プレスリー「Jailhouse Rock」(邦題:監獄ロック)のライブカバー。これ、当時はてっきりライブ音源だと思ってましたが、擬似ライブテイクなんですよね? リリースされた頃はヴィンスの“リアル監獄入り”を記念して演奏されたとかいろんな話がありましたけど、前作における「Smokin' In The Boys Room」ほどじゃなかったかなと。まぁライブでは盛り上がるセレクトなので(だからこその擬似ライブアレンジなのかな)、これはこれでアリかと。

で、本作は2003年のリマスター&リイシューの際にボーナストラックが多数追加されています。「Nona」のでもインストバージョンのアレンジ、カッコいいじゃない。これはこれで仕上げられたバージョンを聴きたかったなぁ。あと個人的には、未発表のバラード「Rodeo」をなぜちゃんとブラッシュアップしてリリースしなかったのかと問いたい……まぁ、これも入れたら“Sex, Drug, Rock 'N' Roll”言うてるのにバラードばかりになっちゃうか。

ちなみに本作。当時としては過去最高の全米2位を記録。全米のみで現在までに400万枚以上のセールスを記録しています。ツアーではNasty Habitsと命名されたセクシーな女性コーラス隊を引き連れていたのも記憶に残っています。また『WHITESNAKE』リリース直後のWHITESNAKEや、『APPETITE FOR DESTRUCTION』でデビューしたばかりのGUNS N' ROSESをオープニングアクトに採用。全米ツアーは大成功を収め、19897年12月には初の日本武道館公演を含むジャパンツアーも大成功させました(自分が初めてMOTLEY CRUEを観たのもこのときでした)。が、帰国後の12月23日、ニッキーはヘロインのやりすぎで心肺停止状態に。のちに無事蘇生するものの、さらに “俺はある時期、ニッキー・シックスだった”という替え玉裁判まで持ち上がり、音楽面以外で再び世間を賑わせることになります(苦笑)。



▼MOTLEY CRUE『GIRLS, GIRLS, GIRLS』
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投稿: 2017 03 11 12:00 午前 [1987年の作品, Motley Crue] | 固定リンク

2017/03/10

AC/DC『BLOW UP YOUR VIDEO』(1988)

記憶に間違いなければ、僕が初めて購入したAC/DCのアルバムはこの『BLOW UP YOUR VIDEO』です。初めて聴いたアルバムはその前作にあたる(オリジナルアルバムではないけど)『WHO MADE WHO』(1986年)だけど、あれはレンタルレコードだったし。

というわけで、今回紹介するのはAC/DCが1988年初頭にリリースした通算10作目(本国オーストラリアでは11作目)のオリジナルアルバム『BLOW UP YOUR VIDEO』。時代背景的には言うに及ばず、1986年末のBON JOVI大ブレイクを機に勃発したHR/HMムーブメントの最中、最初に発表されたAC/DCの新作がこれでした。このちょっとまえにAEROSMITHが『PERMANENT VACATION』(1987年)で大復活を果たし、彼らのフォロワーといえるGUNS N' ROSESやRATTといったバンドがエアロに対するリスペクトを発言。特にガンズからはそれと同じくらい名前が挙がっていたのが、このAC/DCでした。実際、初期の彼らはライブでよく「Whole Lotta Rosie」をカバーしていましたしね。

当のAC/DC自体は1980年に発表した『BACK IN BLACK』が爆発的ヒットを記録し、続く『FOR THOSE ABOUT TO ROCK WE SALUTE YOU』(1981年)は念願の全米No.1を獲得。しかし、フィル・ラッド(Dr)脱退以降、セールスを一気に落としてしまい、いわば落ち目になりかけていたタイミングでした。そこに世界的なHR/HMムーブメント、若手アーティストからのAC/DC待望論と状況が好転しだしたところで、起死回生の一手としてこのアルバムが発表されたわけです。

リアルタイムで聴いたときは、とにかく冒頭の2曲「Heatseeker」「That's The Way I Wanna Rock 'N' Roll」のカッコよさにやられ、それ以降の楽曲は地味という印象でした。まぁ当時16歳になったばかりのガキンチョでしたしね。派手なアレンジこそサイコーみたいな勘違い、誰にでもありますよね。

で、リリースから30年近く経った今、以降のバンドの歴史も踏まえつつ聴き返すと、やっぱり原点回帰的な思いが込められていたんだなということに気づかされます。その原点は大ヒットした『BACK IN BLACK』やその前の『HIGHWAY TO HELL』(1979年)ではなく、それこそオーストラリアでバンドを始めた頃まで遡るのかなと。全体的に無駄がなくてシンプルなのはいつもどおりなんですが、そこに加えて(後任ドラマーのサイモン・ライトのジャストなドラミングにも関わらず)前のめり感が強い。言い方を変えると……若々しくてパンキッシュなんですよ。

先に挙げた冒頭2曲は言うまでもなく、それ以外の曲からも貫禄よりフレッシュさに満ち溢れている。しかも、昔は地味だと思い込んでいた楽曲群が、実はポップで親しみやすいものばかりだということにも気づかされる。「Mean Streak」も「Go Zone」も「Kissin' Dynamite」もめちゃめちゃ良いし、「Nick Of Time」や「Ruff Stuff」みたいにポップで親しみやすい楽曲、AC/DC流泣きメロが気持ちいい「Two's Up」、“これぞパンク”と言わんばかりに攻めまくる「This Means War」みたいな曲もある。あれ、全然地味じゃないじゃんか、と。

結局AC/DCはこの2年後、1990年にさらにポップで親しみやすいアルバム『THE RAZORS EDGE』で再び天下を獲ることに成功するのですが、そこと比べたら『BLOW UP YOUR VIDEO』は確かに地味。セールス的にも復調はしたけど、過去の大ヒット作と比べたらそこまでのヒットとも呼べない。過渡期の1枚と呼ばれがちですが、あのタイミング、あの時代背景があったからこそAC/DCが踏ん張って生み出すことができた奇跡のアルバムだったのではないかと、発売から29年経った今思うわけです。いや、本当にいいアルバムですよ。



▼AC/DC『BLOW UP YOUR VIDEO』
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投稿: 2017 03 10 12:00 午前 [1988年の作品, AC/DC] | 固定リンク

2017/03/09

BLACK STAR RIDERS『HEAVY FIRE』(2017)

元THE ALMIGHTYのリッキー・ウォリック(Vo, G)、元THIN LIZZYのスコット・ゴーハム(G)を中心に結成された、“THIN LIZZYの正統的後継バンド”BLACK STAR RIDERS。彼らが2015年の2ndアルバム『THE KILLER INSTINCT』に続いて発表したのが、本作『HEAVY FIRE』です。2月初頭に発表された今作は、すでにイギリスで初登場6位という好成績を残しています。

もともとは“フィル・ライノットのいないTHIN LIZZY”がライブ活動の延長で、オリジナル曲を発表する上でTHIN LIZZYの名前を使わないため、そして「THIN LIZZYの物語を次のステップに進めるため」に新た結成されたのがBLACK STAR RIDERSというバンド。現在はリッキー、スコットのほか、BROTHER CANEなどで活躍したデイモン・ジョンソン(G)、ヴィンス・ニールのソロプロジェクトやRATTに在籍したロビン・クレイン(B)、Y&TやMEGADETHなど数々のバンドで活動し、最近はRATTにも参加しているジミー・デグラッソ(Dr)という5人で活動しています。

確かに本作にはTHIN LIZZYの“香り”がそこらじゅうから感じられます。それはリッキーの「どことなくフィル・ライノットに似た」男臭い歌声だったり、独特な節回しを含むメロディだったり、随所にフィーチャーされるツインリードギターだったり……それらがミックスされることでTHIN LIZZYっぽい“香り”になるのですが、あくまで“っぽい”止まり。そこにアイリッシュトラッド的な要素ではなく、アメリカンロック的な大らかなノリやブルース、フォークなどのテイストが加わることで独自の世界観が作り上げられています。

今作は前作同様、アメリカ・ナッシュビルでレコーディングを敢行。プロデューサーには前作から引き続きニック・ラスカリニクス(ALICE IN CHAINS 、DEFTONES、FOO FIGHTERSなど)を迎えて制作されており、そのへんも本作の方向性に大きな影響を与えているのかもしれません(それ以前にバンド内のアメリカ人比率が高いことも大きいと思いますが)。THIN LIZZYが本来持ち合わせていた音楽的“アイリッシュ訛り”が払拭され、よりワールドワイドで戦える音に昇華されています(もちろんこれは、THIN LIZZY元来のサウンドがワールドワイドで戦えないという意味ではありません。「クセが弱まったぶん、より幅広い人たちに聴いてもらえる体制が整った」ということです)。

王道THIN LIZZY調の「Testify Or Say Goodbye」みたいな曲を残しつつも、全体ではTHIN LIZZYテイストは調味料程度で、リッキーやスコットなどのメンバーが本来持つ個性がより強く出始めています。それを良しとするか、それともなしとするかで本作の評価は大きく分かれるかもしれません。個人的には全体のバランス感が絶妙で、過去2作以上にお気に入りな1枚です。



▼BLACK STAR RIDERS『HEAVY FIRE』
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投稿: 2017 03 09 12:00 午前 [2017年の作品, Almighty, The, Black Star Riders, Thin Lizzy] | 固定リンク

2017/03/08

JACK RUSSELL'S GREAT WHITE『HE SAW IT COMIN'』(2017)

2つの同じ名前のバンドが同時期に存在する……日本だったらまずありえないことですが、海外に目を向けるとこういった案件がいくつか存在します。最近だとドラマーのボビー・ブロッツァー以外は知らないメンバーからなるRATTと、スティーヴン・パーシー(Vo)、ウォーレン・デ・マルティーニ(G)、フォアン・クルーシェ(B)という“バンドの顔”が在籍するRATT。今も裁判で揉めてますよね。ちょっと前だと、バンドを首になったフロントマンのジェフ・テイトひとりが名乗るQUEENSRYCHEと、ジェフを首にして新たなフロントマンを迎えて活動を続けるQUEENSRYCHE。こっちはもっと厄介で、同じ年に同じ名前の2つのバンドがアルバムを発表してしまいました。結果、初期のヘヴィメタル路線へと回帰した後者がチャート的にも成功。ジェフ側はOPERATION: MINDCRIMEと名を変え、今も活動を続けています。

なぜこんな面倒な話題を書いたかというと、今日紹介するGREAT WHITEもそんな状況に陥っているからです。彼らはジャック・ラッセル(Vo)、マーク・ケンドール(G)、マイケル・ローディ(G, Key)、オーディ・デスブロウ(Dr)、トニー・モンタナ(B)という編成で80年代後半にいくつかのヒットを飛ばし、メンバーチェンジを繰り返しつつも活動を継続。2003年2月にはライブハウスの火災事故でメンバーを含む100名が亡くなり活動休止。2006年頃に活動再開しますが、2009年に怪我を理由にジャックが脱退。回復後もバンドに戻らず、JACK RUSSELL'S GREAT WHITE名義でバンド活動を再びスタートさせるのです。

この『HE SAW IT COMIN'』はそのJACK RUSSELL'S GREAT WHITEが2017年1月に発表した1stアルバム。ちなみにこちらのバンドには元GREAT WHITEのトニー・モンタナ(B)が加わり、現在はベースではなくリズムギターやキーボードを担当しています。

ジャックのボーカルは80〜90年代のよりもトーンは低めながらも、一聴して“あのGREAT WHITEの声”とわかるもの。すでに50代半ばですもの、そりゃ枯れまくっているわけですが、逆にそれがGREAT WHITEが80年代後半から徐々に深めていったブルーステイストのHRサウンドにはぴったりとマッチしています。楽曲自体も派手さは皆無で、従来のGREAT WHITEっぽい楽曲も数曲(オープニングの「Sign Of The Times」、リズミカルなブギー「My Addiction」、アコースティックバラード「Anything For You」、リフでぐいぐい引っ張るストレートなハードロック「Blame It On The Night」)あるにはありますが、その他の曲はもっとAOR調というか……曲によってはFREEやBAD COMPANY、あるいはFORINGNERなどをイメージさせられるし、ファンキーなソウルナンバー「Don't Let Me Go」、グラマラスなブリティッシュロック「He Saw It Comin'」みたいな曲もあって、アルバムとしてはとてもバラエティに富んだ仕上がりとなっています。そういう意味では、THUNDERの最新アルバム『RIP IT UP』にも近い雰囲気があるかもしれません。

特にリードギターのロビー・ロックナーが適度にテクニカルなフレーズを散りばめており、それが地味になりがちなアルバムに適度なフックを作っています。いわゆるブルースギタリストとは異なる、正統派ハードロックギタリストを要するJACK RUSSELL'S GREAT WHITEが今後、どういう方向に向かっていくのか。本家GREAT WHITEよりも拡散方向に進みつつあることがわかっただけでも、このアルバムは大きな収穫と言えるのではないでしょうか。大絶賛するまでの作品ではないかもしれませんが、リラックスしながら聴くには最適な1枚かと思います。

ちなみに、本家GREAT WHITEはこの1月から新作制作のためスタジオ入り。マイケル・ワグナーをプロデューサーに迎え、2012年の『ELATION』に続くアルバムを今年中に発表するようです。



▼JACK RUSSELL'S GREAT WHITE『HE SAW IT COMIN'』
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投稿: 2017 03 08 12:00 午前 [2017年の作品, Great White] | 固定リンク

2017/03/07

TOKYO MOTOR FIST『TOKYO MOTOR FIST』(2017)

80年代末にシーンに登場しながらも中ヒット止まりだった2つのアメリカンHRバンド、DANGER DANGERとTRIXTER。両者は解散やメンバーチェンジなどを経て、2017年現在も存続しており、前者は2014年9月にデビュー25周年記念の来日公演を行い、後者は2015年にアルバム『HUMAN ERA』を発表しています。

そんな2バンドから、DANGER DANGERのフロントマンであるテッド・ポーリー(Vo)と、TRIXTERのメインソングライター兼プロデューサーでもあるスティーヴ・ブラウン(G)が、90年代にRAINBOWに在籍したグレッグ・スミス(B)とチャック・バーギー(Dr)と新バンドTOKYO MOTOR FISTを結成。2017年2月に待望の1stアルバム『TOKYO MOTOR FIST』をリリースしました。

80年代末から90年代初頭にデビューしたUSバンドの中では印象的な美メロ楽曲が多かったTRIXTER。個人的にも彼らの1枚目(1990年の『TRIXTER』)と2枚目(1992年の『HEAR!』)は今でも気に入っている作品です。このTOKYO MOTOR FISTでは楽曲のソングライティングのみならず、プロデュースからミックス、エンジニアリングまですべての制作作業をスティーヴが担当。楽曲の軸のみなら“TRIXTERの新作”と呼んでも差し支えない内容かと思います。しかし、そこに“いかにもアメリカン”な適度に枯れて適度に湿り気のある声を持つテッドのボーカルが加わることで、TRIXTERはもちろんDANGER DANGERとも違う別のバンドとして成立するわけです。

派手ではないもののどっしりとボトムを支えるリズム隊のプレイ、能天気なアメリカ人というよりはどこか影のあるメロとアレンジ、そして重厚なコーラスワークと、ここで聴けるのはDEF LEPPARDやFIREHOUSEにも通ずる正統派ハードロックサウンドそのもの。「Pickin' Up The Pieces」「Love Me Insane」「Shameless」の頭3曲なんてまさにそれなんだけど、かといってボーカルがハイトーンすぎずに程よい温度感を保っている。バラードナンバー「Don't Let Me Go」も歌い上げすぎていないから、気持ち良く聴けてしまうんです。

かと思うと、「Put Me To Shame」みたいにマイナーキーの泣きメロHRもあれば、引きずるようなヘヴィさを持つ「Done To Me」もあるし、AOR調のミディアムナンバー「Get You Off My Mind」もある。そして最後はアップテンポの美メロナンバー「Fallin' Apart」で幕を降ろすわけです。どの曲も3〜4分程度でコンパクト、ひたすらメロディの気持ちよさにヤられて、気がついたら11曲41分があっという間に終わっている。で、また最初から聴き返しているという、そんなスルメ的魅力の1枚です。

聴く人によっては「ボーカルはもっと声を張り上げてないと」と難をつけるかもしれませんが、僕としてはこれくらいの温度感がちょうどよく感じられる。むしろ、これくらいだから何度も何度もリピートしたくなってしまうんです。決して2017年的な作品ではないけど、逆にこの時代にこういったサウンドと真正面から向き合ったテッド&スティーヴの2人に賞賛を送りたいくらい。それぞれのメインバンドとうまく並行して、2枚目3枚目と良質な作品を発表し続けてほしいものです。



▼TOKYO MOTOR FIST『TOKYO MOTOR FIST』
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投稿: 2017 03 07 12:00 午前 [2017年の作品, Danger Danger, Tokyo Motor Fist, Trixter] | 固定リンク

2017/03/06

ALTER BRIDGE『THE LAST HERO』(2016)

アメリカのハードロックバンドALTER BRIDGEが2016年10月にリリースした、前作『FORTRESS』(2013年)から3年ぶり通算5作目のアルバム。アメリカではデビュー作『ONE DAY REMAINDS』(2004年)以来のトップ10入り(8位)、イギリスでは過去最高の3位を記録するヒット作となりました。

ご存知のとおり、ALTER BRIDGEはマーク・トレモンティ(G)、スコット・フィリップス(Dr)、ブライアン・マーシャル(B)の元CREED組が新たなシンガーのマイルズ・ケネディ(Vo, G)を迎えて結成したバンド。2009年にはCREEDが再結成しており、マーク、スコット、ブライアンは2バンドを兼任。マイルズはGUNS N' ROSESのスラッシュ(G)がソロで動く際、活動をともにしていることでALTER BRIDGEに対しても何となく“二足のわらじ”が強くて、食指が動かなかった。だから、このアルバムで初めてALTER BRIDGEというバンドにちゃんと触れました。

いやぁ……カッコいいのなんのって……なんで今まで聴かなかったんだろうと本気で後悔してます。これ、自分の好きな要素しかないじゃないですか。本当、百聞は一見に如かずとはまさにこのこと。

CREEDはなんとなく通過しているし、特に嫌いなわけではなかったけどそこまで入れ込む感じでもなかった。スラッシュのソロは……まぁほら、アクセルじゃないしね、ってことでこちらもそこまで真剣になってなかった。だけど、これは……確かにCREED的な部分もあるんだけど、もっとスタジアムロック的な要素が強くて、しかもちゃんとモダンな要素も兼ね備えている。彼らを指して“グランジ以降の音”と揶揄する声もあるみたいだけど、そもそも90年代半ば以降に誕生したバンドはみんな“グランジ以降の音”を少なからず内包しているわけで。単に“グランジ以降の音”に理解がないってだけでそれを理由にALTER BRIDGEを批判するのは問題外だと思うんです。

そういう“グランジ以降の音”にネガティブな感情がまったくない人にとっては、このアルバムは“ゼロ年代以降のHR/HM”以外の何者でもない。誤解を恐れずに言えば、NICKELBACKとDISTURBEDの要素を兼ね備えた、まさに“ゼロ年代以降のHR/HM”に必要な存在だと思うのです。

ヘヴィだけど過剰にメロディアスでドラマチック。そのヘヴィさもモダンヘヴィネスの色合いと旧世代的な様式美の両方が備わっている。アメリカのハードロックバンドらしくミドルテンポの楽曲が中心で、中には壮大なパワーバラードもある。80年代のHR/HMを好きな人にも絶対に引っかかるポイントがあると思うんです。

きっとCREEDが苦手だった人って、そのサウンド以上にスコット・スタップ(Vo)……具体的に言えば、彼の声がエディ・ヴェダー(PEARL JAM)やスコット・ウェイランド(STONE TEMPLE PILOTS)に近い声質、歌唱法ってことでグランジっぽくて苦手意識を持ったんじゃないでしょうか。そう考えると、マイルズ・ケネディのボーカルってモロにHR/HMの声質&歌唱法ですもんね。だってスラッシュのもとでGUNS N' ROSESやVELVET REVOLVERの楽曲を歌ってもカッコいいわけで、それが妙に似合ってたんだから。“グランジ以降のシンガー”だけどそれだけじゃ終わらない、HR/HMシンガーとしての実力がしっかり兼ね備わっている。改めて納得です。

この曲がこうで、この曲はここがカッコいいと細かく書いてみたいところですが、このバンドに関しては僕が解説するよりも、まずはYouTubeなりストリーミングなりで実際に聴いて感じてほしい。僕がまさにそうだったように。



▼ALTER BRIDGE『THE LAST HERO』
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投稿: 2017 03 06 12:00 午前 [2016年の作品, Alter Bridge] | 固定リンク

2017/03/05

OVERKILL『THE GRINDING WHEEL』(2017)

OVERKILLってすごく勤勉なバンドだと思う。1984年の最初のEP『OVERKILL』をリリースして以降、1〜2年に1枚ペースでアルバムを発表していて、21世紀に入ってからもそのペースはほぼ変わることなく、2〜3年に必ず1枚発表しているんだから。その結果、先月リリースされたニューアルバム『THE GRINDING WHEEL』が通算18枚目のオリジナルアルバムになるわけですから。

80〜90年代はそれほど熱心に聴いていたわけではなく、来日すれば観に行く、たまたま海外の滞在先でライブがあったから観に行ってみた、とかそのレベル。いや、それってかなり好きだったんじゃないの?と今気づいたわけですが……(苦笑)。本格的にハマッたのは、実は10年に満たないくらい。アルバムでいうと……15th『IRONBOUND』(2010年)くらいかな。そこから毎回新譜が出たらすぐに買い、気づけば旧譜もライブ盤、コンピ含めすべて揃えていたという。今はそれくらいには好きです。いや大好きです。

そんな彼らの新作。特に今回は長尺の楽曲が多いなと。オープニングの「Mean, Green, Killing Machine」からして7分半ですし、全10曲(ボーナストラックのカバー2曲を除く)中6分を超える楽曲が半数、それ以外もほぼ5分超えで、さらに頭とケツの「The Grinding Wheel」の2曲は7分超えですから。もちろんこれまでの彼らにはそういった作品はなくはなかったので(2012年の16th『THE ELECTRIC AGE』がまさにそんな感じかな。古くは1989年の4th『THE YEARS OF DECAY』なんてのもありましたし)特に問題はないのですが、今作は単にそういった作品の延長線上にあるものとはちょっと違うんですよね。

複雑な展開を持つ、いかにも80年代的スラッシュ「Mean, Green, Killing Machine」で聴き手を圧倒させたかと思えば、「Goddamn Trouble」「Our Finest Hour」でエンジンがフルスロットルに。特に後者の爆走っぷりは、これこそOVERKILLと叫びたくなるようなもの。確かに長尺曲3連発は人によってはキツいかもしれないけど、個人的にはこれで掴みはOK。「ああ俺、OVERKILLの新作聴いてるよ……」と悦に浸れるわけです。

ところが、5曲目「The Long Road」あたりから様相が変わり始めます。シンガロングできそうなイントロのメロディやギターフレーズ、スラッシュというよりは王道HM感の強い曲調&アレンジ、そこから通常運転的スラッシュアレンジへとなだれ込む構成は圧巻の一言。さらにドゥーミーさを持ち合わせたミドルヘヴィなイントロから転調してテンポアップする「Let's All Go To Hades」や「Come Heavy」にはBLACK SABBATHからの影響が感じられるし、ラストの「The Grinding Wheel」はサバスはサバスでもDIOサバス的な匂いのドラマチックさがあるし。そう、全体的に“ヘヴィメタル”が高いんです。

メタルバンドに対して何を言っているんだ?と思われるかもしれませんが、そこがそれ以前の作品と本作の大きな違い。OVERKILLらしい豪快なヤケクソ感は本作でも健在ですが、本作にはそこにレジェンドたちの功績を讃えるようなエッセンスが散りばめられており、それが絶妙な化学反応を起こしているように感じられるのです。それは、アルバム本編に続くボーナストラック2曲……THIN LIZZY「Emerald」と、日本盤のみ収録のIRON MAIDEN「Sanctuary」の両カバーが並ぶことで、より明確になります。さらにアルバムタイトル……これってJUDAS PRIEST『BRITISH STEEL』の自己解釈ってことでよろしいですよね?

スラッシュメタルバンドにありがちな「リフの数を増やして次々に展開していく長尺曲」ではなく、正統派ヘヴィメタルバンドが過去に生み出してきたスタイルをOVERKILL流に解釈した結果。それがこの力作『THE GRINDING WHEEL』なんじゃないでしょうか。ホント、大好きな1枚です。



▼OVERKILL『THE GRINDING WHEEL』
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投稿: 2017 03 05 12:00 午前 [2017年の作品, Overkill] | 固定リンク

2017/03/04

ANTHRAX『FOR ALL KINGS』(2016)

2016年2月にリリースされた、ジョーイ・ベラドナ(Vo)がバンドに復帰した前作『WORSHIP MUSIC』(2011年)以来4年半ぶり、ANTHRAXにとって通算11枚目のオリジナルアルバム。前作の全米12位を上回る7位という好成績を記録し、1993年の6thアルバム『SOUND OF WHITE NOISE』に次ぐ高順位作品となりました。

前作には「これぞANTHRAX!」と力説したくなるような、いわば3rd『AMONG THE LIVING』(1987年)前後のもっとも勢いに乗った時期のANTHRAXを思わせる楽曲が並んでいたことから、(またアルバム自体が8年ぶりという事実もあって)多くのメタルファンから大歓迎された1枚でした。その成功作をフォローアップする作品という意味でも、バンドにとってそれなりのプレッシャーがあったのではないかと思われますが、実際完成したアルバムを聴くと、むしろバンド側はそういったプレッシャーすらも楽しんでいたのではないかと思わせる、実に肩の力の抜けた王道ヘヴィメタルサウンドを楽しむことができます。

オープニングのインスト「Impaled」こそ仰々しさがあり、若干ANTHRAXらしくないなと思わせられますが、そこから間髪入れずに始まる「You Gotta Believe」はいつものANTHRAX節炸裂。途中、ちょっと無理やりっぽい展開が入るあたりも、往年の“らしさ”が感じられます。

そう、どの曲も実に“らしさ”満載なのですが……すべてを聴き終えたときに、意外とすらすら聴けてしまったことに戸惑うのも、また正直なところ。そう、「これ!」という引っ掛かりがあまり感じられなかったのです。それが先に書いた「実に肩の力の抜けた王道ヘヴィメタルサウンド」にもつながるのですが。

このバンドの場合、ともするとお遊びが過ぎて聴き手側がついていけなくなることも少なからあるのですが、今回の場合はそれの逆ケース……遊びが少なすぎて「あれっ、こんなもん?」と感じてしまう。力みすぎないのは決してマイナスではないのですが、今作で聴ける「過剰にメロディアス」な作風にそのスタンスは似合わないのではないか、と思うのです。

「Breathing Lightning」なんて、例えばジョン・ブッシュ時代に演奏していたとしたら、もうちょっとタイトで緊張感のある楽曲に仕上がっていたと思うんです。で、そのアウトロ「Breathing Out」が続くことで、さらに劇的な展開になったなずなのに……。

アルバムは中盤「Suzerain」「Evil Twin」あたりから若干盛り返し始めますが、どうにも煮え切らなさが残る。リズムのキレが悪いのか、それともベラドナのボーカルのせいなのか、はたまた……謎です。

決して悪くないし、1曲1曲を取り上げれば非常によくできた楽曲ばかり。90年代以降のANTHRAXの作品の中でも良曲が豊富な部類に入る作品だと思うんです。なのに、「これ!」という決定打に欠ける。もしかしたら、バンド内がかみ合っているようでかみ合っていないのかもしれない。いや、バンドとリスナー側(自分)がかみ合ってないのかも……このアルバムに心底のめり込めなかった理由は、このあたりにあるのかなと思っています。

リリースから1年経過して、改めて聴き返してみましたが、自分内の評価は変わらず。逆に時間の経過とともに評価が下がることもなく、急激に上がることもないという、非常に珍しい作品です。もしかしたらそれって、非常に稀ですごいことなのかもしれないですね。



▼ANTHRAX『FOR ALL KINGS』
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投稿: 2017 03 04 12:00 午前 [2016年の作品, Anthrax] | 固定リンク

2017/03/03

CINDERELLA『NIGHT SONGS』(1986)

1986年8月にリリースされた、アメリカの4人組HRバンドCINDERELLAのデビューアルバム『NIGHT SONGS』。彼らはジョン・ボン・ジョヴィ(BON JOVI)の後押しがあってメジャー契約にこぎ着けたという話もあり、同じMercury Recordsからのデビュー、BON JOVIも同タイミングに3rdアルバム『SLIPPERY WHEN WET』をリリースしたことから、のちに彼らのサポートアクトとして全米ツアーに帯同したことで人気を高めていきます。

もちろんCINDERELLAが大成功したのは、BON JOVIの力だけではありません。適度にメタリックだけどメロディは非常にキャッチーという、しっかり作り込まれた楽曲の数々がラジオ受けしたことと、毎回趣向を凝らしたミュージックビデオがMTVでヘヴィローテーションされたことも大きな要因と言えるはずです。

今作で制作されたMVは3本。1作目の「Shake Me」、2作目の「Nobody's Fool」、3作目の「Somebody Save Me」は連作となっており、バンド名にちなんだシンデレラ・ストーリーが展開されていきます。MTV全盛の80年代半ば、HR/HMがMV制作にここまでこだわったという点においては、CINDERELLAの功績は非常に大きなものがあったと言えます(と同時に、BON JOVIも「You Give Love A Bad Name」や「Livin' On A Prayer」でひとつの型を作り上げるわけです)。ちなみに、「Somebody Save Me」のMVラストにはジョン・ボン・ジョヴィとリッチー・サンボラもゲスト出演していますので、こちらにも注目です。

さて、改めて楽曲についても。2ndアルバム『LONG COLD WINTER』(1988年)を機にバンドはブルース志向を強めていきますが、このデビュー作にはまだそのカラーは微量。「Hell On Wheels」にはスライドギターが登場しますが、それも大々的といった印象はなく、全体的には当時活動の拠点だったLAのバンドにも通ずるメタリックなサウンド&アレンジが軸となっています。オープニングの「Night Songs」なんて、まるでAC/DCのアルバム『BACK IN BLACK』における「Hell's Bells」みたいですし。また、シングルヒットを記録した「Nobody's Fool」(全米13位)はその曲調とフロントマンのトム・キーファー(Vo, G)のルックスや歌い方から、AEROSMITH「Dream On」と比較する声もあったほど。

そういえばこの当時、CINDRELLAはPOISONとともに『LIGHTNING STRIKES』(1986年)を全米リリースしたLOUDNESSのUSツアーでオープニングを務めていたとのこと。のちに二井原実さんと山下昌良さんにインタビューした際、「どっちも全米チャートのトップ3に入ってたよね。なのに僕らは100位内から1週間ぐらいで消えてたから」(山下)、「ベスト10に入ってるバンドを従えてツアーを回るんやけど、あれは変な話やったな」(二井原)、「あの頃、CINDERELLAのベース(エリック・ブリッティンガム)はまだ全然お金を持ってなくて、毎晩俺がビールを奢ってたな。で、『お前売れてんねんから、次会ったら奢れよ?』って言ったけど、まだ奢ってもらってないわ(笑)。まあ曲が覚えやすかったもんね、CINDERELLAもPOISONも」(山下)なんて話題が挙がったのをよく覚えています。

山下さんがおっしゃるとおり、『NIGHT SONGS』は全米3位まで上昇。セールスも最終的に300万枚を超える大出世作となりました。「CINDERELLAといえば?」と質問されたときに、いまだに『NIGHT SONGS』派と『LONG COLD WINTER』派に分かれることがありますが、僕はどちらも好き。ぶっちゃけその日の気分で変わるし、なんなら3rアルバム『HEARTBREAK STATION』を選ぶ日すらあるくらい(苦笑)。その程度には大好きです、このバンド。



▼CINDERELLA『NIGHT SONGS』
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投稿: 2017 03 03 12:00 午前 [1986年の作品, Cinderella] | 固定リンク

2017/03/02

WHITESNAKE『SLIDE IT IN』(1984)

WHITESNAKE通算6枚目のスタジオアルバム『SLIDE IT IN』。以前1987年発売の大ヒット作『WHITESNAKE』には曲順や収録内容が異なる仕様が複数存在すると紹介しましたが(こちら)、実はこの『SLIDE IT IN』にも複数の仕様があるのです。それもこれも、この時期にアメリカでGeffen Recordsと契約したがために、US向けにテコ入れをされてしまったのが原因なんですけどね。

さて、今回も多少長くなってしまうと思いますが、各仕様について説明していきます。

まず、この時期の編成について。デヴィッド・カヴァーデイル(Vo)は前作『SAINTS & SINNERS』(1982年)のレコーディングに参加したバーニー・マースデン(G)、ニール・マーレイ(B)、イアン・ペイス(Dr)を切り、新たにメル・ギャレー(G)、コリン・ホッジキンソン(B)、コージー・パウエル(Dr)を迎えます。ここに初期から参加するミッキー・ムーディ(G)、ジョン・ロード(Key)を加えた6人で『SLIDE IT IN』を制作。楽曲はメル・ギャレーが中心となり制作されたことから、前作までのルーズな作風から起承転結のしっかりしたドラマチックな作風へとシフトチェンジ。ドラムもイアン・ペイスからコージー・パウエルに変わったことで、よりタイトで締まったサウンドに進化しています。


①UK&JPバージョン

1984年初頭にリリースされた最初のバージョンがこちら。当時イギリスやヨーロッパではEMIから、ここ日本では新たにCBSソニーからリリースされています。これは今作からアメリカではGeffenからリリースされることに伴う移籍だったのかなと(当時Geffenでリリースされた作品は、ここ日本ではソニーから発表されました)。

収録内容はこちら。


01. Gambler
02. Slide It In
03. Standing In The Shadow
04. Give Me More Time
05. Love Ain't No Stranger
06. Slow An' Easy
07. Spit It Out
08. All Or Nothing
09. Hungry For Love
10. Guilty Of Love


今も昔もこの曲順が当たり前で、こちらに慣れ親しんだ日本のHR/HMリスナーは多いはずです。


②USバージョン

しかし、ヨーロッパや日本向けに制作した本作。アメリカのスタッフにはいまいちウケがよろしくなくて、あれこれ修正しろといちゃもんをつけられます。そして同じ頃、結成時からのメンバーであるミッキー・ムーディ、そしてコリン・ホッジキンソンが相次いで脱退。そこに新たに加わったのが、当時THIN LIZZYが解散したばかりのジョン・サイクス(G)でした。さらにベースにはニール・マーレイが出戻り。これにより、ジョンのギタープレイとニールによるベース差し替え、さらにUS向けにリミックス&再構築したのが、1984年4月に現地でリリースされたUSバージョンです。

USバージョンの曲順は以下のとおり。


01. Slide It In
02. Slow An' Easy
03. Love Ain't No Stranger
04. All Or Nothing
05. Gambler
06. Guilty Of Love
07. Hungry For Love
08. Give Me More Time
09. Spit It Out
10. Standing In The Shadow


これ、どうよ? 正直UKバージョンに慣れた耳でこの曲順のアルバムを聴くと、非常に違和感を感じるわけです。しかもジョン・サイクスによるピロピロしたギターソロは加わるわ、音も若干硬めにミックスし直されてるわ、キーボード類が後ろに引っ込んでリズムが前に出てるわで本当に違和感しかない。アメリカ人の耳はこんなにバカなのか……と当時本気で思ったものです。

まぁ「Slide It In」から始めるのはよしとしましょう。しかし、それに続くのが「Slow An' Easy」「Love Ain't No Stranger」とか、「Gambler」が5曲目とか、「Guilty Of Love」じゃなくて「Standing In The Shadow」で終わる構成とか、本当にありえない。USリミックス自体は否定しませんが、この曲順だけは『WHITESNAKE』のそれと比較しても、30年以上経った今でも馴染めません。


③『SLIDE IT IN (AMERICAN REMIX VERSION)』

ここ日本ではUSバージョンそのままがリリースされることはありませんでしたが、代わりに『SLIDE IT IN (AMERICAN REMIX VERSION)』と題したアナログ盤が(のちにCDも)リリースされます。

収録内容はこちら。


01. Slide It In
02. (Comment)
03. Love Ain't No Stranger
04. (Comment)
05. Guilty Of Love
06. Slow An' Easy
07. (Comment)
08. Gambler
09. (Comment)
10. Need Your Love So Bad


M-2、4、7、9はそのタイトルどおり、デヴィッドからのメッセージ。10トラック収録されているものの、実質6曲から構成されたミニアルバムです(そのぶん、収録時間も30分に満たない)。この6曲中5曲(M-1、3、5、6、8)はすべて②のUSバージョン。目玉となるのがM-10で、FLEETWOOD MACのカバーで知られるブルースナンバーです。この曲がとにかく最高に渋くてカッコいいったらありゃしない。すでにUS盤を持っていたにもかかわらず、この1曲のためだけに本作を購入したのを今でも覚えています。へっ、メッセージはどうだったかって? そんなのよく覚えてませんってば(いつも飛ばしてたし)。


④25TH ANNIVERSARY EDITION

『SLIDE IT IN』の発売25周年を記念して、2009年6月にEMIからヨーロッパ向けにリリースされたのが本作。CDとDVDの2枚組仕様で、こちらの内容も非常に厄介なもの。各ディスクの収録内容は下記のとおり。


<CD>
01. Gambler (US Mix)
02. Slide It In (US Mix)
03. Slow An' Easy (US Mix)
04. Love Ain't No Stranger (US Mix)
05. Give Me More Time (US Mix)
06. Standing In The Shadow (US Mix)
07. Hungry For Love (US Mix)
08. All Or Nothing (US Mix)
09. Spit It Out (US Mix)
10. Guilty Of Love (US Mix)
11. Need Your Love So Bad
12. Gambler (UK Mix)
13. Slide It In (UK Mix)
14. Standing In The Shadow (UK Mix)
15. Give Me More Time (UK Mix)
16. Slow An' Easy (UK Mix)
17. Spit It Out (UK Mix)
18. All Or Nothing (UK Mix)
19. Guilty Of Love (UK Mix)
20. Love Ain't No Stranger (Live from『STARKERS IN TOKYO』)
<DVD>
01. Guilty Of Love (Music Video)
02. Slow An' Easy (Music Video)
03. Love Ain't No Stranger (Music Video)
04. Guilty Of Love (Live at Donington 1983)
05. Love Ain't No Stranger (Live from『STARKERS IN TOKYO』)
06. Give Me More Time (BBC TV's Top Of The Pops 19/1/84)
07. Love Ain't No Stranger (Live from『LIVE… IN THE STILL OF THE NIGHT』)


もうここまでくると、訳がわかりません。単なる寄せ集めですよね。UKバージョンとUSバージョンを比較しようにも、UKバージョンが不完全。これは無理やりCD1枚に収めようとしたことが敗因。それなら、アナログでしか手に入らない「Guilty Of Love」と「Gambler」のシングルバージョン(アルバムを手がけたマーティン・バーチではなく、エディ・クレイマーがプロデュースしたバージョン)も入れてほしかったなぁ(前者はDVD収録のMVにてその音を耳にすることができます)。本作に関してはMVや現在入手困難な『STARKERS IN TOKYO』の映像、さらには『TOP OF THE POPS』での映像が観られるという意味で、非常に資料価値の高い作品と言えます。まぁ音源に関しては……一応リマスタリングされてるようですが、そのへんの聴き比べはマニアの皆さんにお任せします。


なお、ジョン・サイクス&ニール・マーレイ加入後のラインナップですが、結局メル・ギャレーもバンドを脱退し、しばらくはデヴィッド・カヴァーデイル、ジョン・サイクス、ニール・マーレイ、コージー・パウエル、ジョン・ロードのシングルギター体制で活動。さらにDEEP PURPLE再結成にあわせてジョン・ロードまで脱退し、以降はサポートキーボーディストを迎えてライブを続けることになります。で、その後はご存知のとおり、コージーもバンドを脱退。デヴィッドはジョン・サイクスとともにバンドの立て直し、およびアメリカで天下を獲るためのアルバム作りに取りかかるのでした(以降の流れは『WHITESNAKE』レビューをご確認を)。



▼WHITESNAKE『SLIDE IT IN』
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投稿: 2017 03 02 12:00 午前 [1984年の作品, Cozy Powell, Whitesnake] | 固定リンク

2017/03/01

ANTHRAX『SOUND OF WHITE NOISE』(1993)

ANTHRAXが1993年5月にリリースした、通算6枚目のオリジナルアルバム。前年に2代目ボーカル(にしてバンドの知名度向上に貢献した)ジョーイ・ベラドナが脱退し、後任として迎えられたジョン・ブッシュ(元ARMORED SAINT)が初参加したのが本作『SOUND OF WHITE NOISE』です。ちなみにジョン以外はスコット・イアン(G)、ダン・スピッツ(G)、フランク・ベロ(B)、チャーリー・ベナンテ(Dr)という2ndアルバム『SPREADING THE DISEASE』(1985年)から続く黄金期メンバー。のちにダン・スピッツが脱退するため、このラインナップも本作1枚きりとなります。

ハードコアやスラッシュメタル、ヒップホップなどいわゆる“ストリートミュージック”を体現してきたANTHRAXですが、ジョン・ブッシュという新たなシンガーが加わったことでさらに新たな要素……当時の主流だったグランジやグルーヴメタルなど、いわゆる本道とは一線を画するオルタナティヴなサウンドに手を出します。スラッシュメタルを極限まで突き詰め煮詰めたような内容の前作『PERSISTENCE OF TIME』(1990年)で、それまでの路線をやりきったという思いも多少はあったのかもしれませんし、同時代を駆け抜けたMETALLICAがブラックアルバムで天文学的大成功を手にしたことを羨ましがったのもあるかもしれません。だからこそ、メンバーチェンジをきっかけ(もしくは言い訳)に大胆なシフトチェンジが図れたんでしょうね。プロデューサーにJANE'S ADDICTIONやALICE IN CHAINSを手がけたデイヴ・ジャーデンを迎えたのも納得です。

本作にはいわゆる疾走系スラッシュは皆無。速い曲はあるにはあるけど、単に突っ走るというよりはグルーヴを重視した“音の塊”のような楽曲(「Potters Field」や「C11 H17 N2 O2 S Na」「Burst」)が中心。シングルカットされた「Only」や「Room For One More」「Hy Pro Glo」はまさにその代表格といえる楽曲で、ANTHRAX第2章を代表するナンバーとしてライブで披露され続けます。

かと思えば、当時ブレイクしていたTVドラマ『ツイン・ピークス』からの影響受けまくりなスローナンバー「Black Lodge」みたいな曲も存在。従来のファンからしたらこの変化は裏切り以外のなにものでもないんでしょうけど、かのMETALLICAも欲しがったと言われるジョン・ブッシュを手に入れたんだから、そりゃいろいろ試したくなりますよね。ましてや時代はNIRVANA、PEARL JAM、ALICE IN CHAINS、SOUNDGARDEN、SMASHING PUMPKINSといったバンドがチャートを席巻し、これまでANTHRAXが居座っていたシーンには新たにPANTERA、速さを切り捨てたMETALLICAがトップに君臨しているんですから……「変わらなくちゃ」っていう強迫観念に駆られても不思議じゃない。

では、本作はそんなに“時流に乗った駄作”なのかというと、実はそんなこともなく。むしろ、僕自身は彼らのキャリアの中でも3本指に入るほど好きな1枚です。『PERSISTENCE OF TIME』からここにたどり着いたというのも、個人的にはとても腑に落ちるんです。楽曲の出来もいいし、アレンジも歌もアルバムの流れもベスト。本作が当時、全米7位にランクインし、過去最高のセールスを記録したというのも納得できます。だって、世の中的に旧世代バンドに成り下がっていたANTHRAXが流行りに乗ったとはいえ、世間にちゃんと受け入れられたという証拠ですから(従来のファンからは敬遠されたかもしれませんが)。



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投稿: 2017 03 01 12:00 午前 [1993年の作品, Anthrax] | 固定リンク