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2017/03/05

OVERKILL『THE GRINDING WHEEL』(2017)

OVERKILLってすごく勤勉なバンドだと思う。1984年の最初のEP『OVERKILL』をリリースして以降、1〜2年に1枚ペースでアルバムを発表していて、21世紀に入ってからもそのペースはほぼ変わることなく、2〜3年に必ず1枚発表しているんだから。その結果、先月リリースされたニューアルバム『THE GRINDING WHEEL』が通算18枚目のオリジナルアルバムになるわけですから。

80〜90年代はそれほど熱心に聴いていたわけではなく、来日すれば観に行く、たまたま海外の滞在先でライブがあったから観に行ってみた、とかそのレベル。いや、それってかなり好きだったんじゃないの?と今気づいたわけですが……(苦笑)。本格的にハマッたのは、実は10年に満たないくらい。アルバムでいうと……15th『IRONBOUND』(2010年)くらいかな。そこから毎回新譜が出たらすぐに買い、気づけば旧譜もライブ盤、コンピ含めすべて揃えていたという。今はそれくらいには好きです。いや大好きです。

そんな彼らの新作。特に今回は長尺の楽曲が多いなと。オープニングの「Mean, Green, Killing Machine」からして7分半ですし、全10曲(ボーナストラックのカバー2曲を除く)中6分を超える楽曲が半数、それ以外もほぼ5分超えで、さらに頭とケツの「The Grinding Wheel」の2曲は7分超えですから。もちろんこれまでの彼らにはそういった作品はなくはなかったので(2012年の16th『THE ELECTRIC AGE』がまさにそんな感じかな。古くは1989年の4th『THE YEARS OF DECAY』なんてのもありましたし)特に問題はないのですが、今作は単にそういった作品の延長線上にあるものとはちょっと違うんですよね。

複雑な展開を持つ、いかにも80年代的スラッシュ「Mean, Green, Killing Machine」で聴き手を圧倒させたかと思えば、「Goddamn Trouble」「Our Finest Hour」でエンジンがフルスロットルに。特に後者の爆走っぷりは、これこそOVERKILLと叫びたくなるようなもの。確かに長尺曲3連発は人によってはキツいかもしれないけど、個人的にはこれで掴みはOK。「ああ俺、OVERKILLの新作聴いてるよ……」と悦に浸れるわけです。

ところが、5曲目「The Long Road」あたりから様相が変わり始めます。シンガロングできそうなイントロのメロディやギターフレーズ、スラッシュというよりは王道HM感の強い曲調&アレンジ、そこから通常運転的スラッシュアレンジへとなだれ込む構成は圧巻の一言。さらにドゥーミーさを持ち合わせたミドルヘヴィなイントロから転調してテンポアップする「Let's All Go To Hades」や「Come Heavy」にはBLACK SABBATHからの影響が感じられるし、ラストの「The Grinding Wheel」はサバスはサバスでもDIOサバス的な匂いのドラマチックさがあるし。そう、全体的に“ヘヴィメタル”が高いんです。

メタルバンドに対して何を言っているんだ?と思われるかもしれませんが、そこがそれ以前の作品と本作の大きな違い。OVERKILLらしい豪快なヤケクソ感は本作でも健在ですが、本作にはそこにレジェンドたちの功績を讃えるようなエッセンスが散りばめられており、それが絶妙な化学反応を起こしているように感じられるのです。それは、アルバム本編に続くボーナストラック2曲……THIN LIZZY「Emerald」と、日本盤のみ収録のIRON MAIDEN「Sanctuary」の両カバーが並ぶことで、より明確になります。さらにアルバムタイトル……これってJUDAS PRIEST『BRITISH STEEL』の自己解釈ってことでよろしいですよね?

スラッシュメタルバンドにありがちな「リフの数を増やして次々に展開していく長尺曲」ではなく、正統派ヘヴィメタルバンドが過去に生み出してきたスタイルをOVERKILL流に解釈した結果。それがこの力作『THE GRINDING WHEEL』なんじゃないでしょうか。ホント、大好きな1枚です。



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投稿: 2017 03 05 12:00 午前 [2017年の作品, Overkill] | 固定リンク