TNT『TELL NO TALES』(1987)
TNTといえば、日本では1989年の4作目『INTUITION』がスタンダードかもしれませんが、僕としてはその前作『TELL NO TALES』のほうがこのバンドらしくていいな、と勝手に思っています。事実、最初に聴いた彼らのアルバムもこの『TELL NO TALES』でしたし。
2ndアルバム『KNIGHTS OF THE NEW THUNDER』(1984年)レコーディング直前に加入したトニー・ハーネル(Vo)が、楽曲制作でも本格的に参加したのが1987年リリースの3rdアルバム『TELL NO TALES』。すでに本国ノルウェーではそれなりに人気のあったTNTですが、このアルバムは初にして唯一の本国1位を獲得しています。シングルカットされた「10,000 Lovers (In One)」もノルウェーチャート2位を記録。また、アルバムはアメリカでも初めてBillboardにチャートイン(100位)するなど、世界規模でも少しずつ成功を収めつつありました。
「Everyone's Star」からスタートする本作は、トニー・ハーネルのハイトーンボーカルとロニー・ル・テクロ(G)の圧倒的にテクニカルなギタープレイに魅了される作品集。同曲、そして続く「10,000 Lovers (In One)」はともにシングルカットされるだけあって、非常にポップで親しみやすいメロディを持つ楽曲たちです。そこからライブの定番アップチューン「As Far As The Eye Can See」へと流れる冒頭3曲の構成は、TNTの全作品の中でも出色の出来だと思います。
テクニカルなギタープレイが耳に残る1分少々のインスト「Sapphire」が次曲の序章的な盛り上がりを作ると、続く「Child's Play」ではトニーの圧倒的な歌とQUEEN的なオーケストレーションが楽しめる。そこから再びクラシックギターによる短尺インスト「Smooth Syncopation」へと流れていき、「Listen!」のハーモニーが静寂を切り裂くかのように「Listen To Your Heart」へと突入。さらにヘヴィなミドルナンバー「Desperate Night」、泣きの名バラード「Northern Lights」とクライマックスに向けて盛り上がっていきます。そして、終焉を告げるドラマチックなインスト「Incipits」から高速メタルチューン「Tell No Tales」で幕を下ろす。ここまで約30分、本当にあっという間です。
次の曲の序章的インストが3曲も入っているので、全11曲とはいえ歌モノナンバーは計8曲。しかもトータルランニング30分というのは1987年当時としても非常に短い作品です。特に時代はアナログからCDへと移行しつつあった時期ですから。でも、長ければいいってもんじゃない。ここまでバラエティに富んでいて完璧な内容を30分に凝縮できているんだから、当時のTNTは只者じゃなかったんだと思います。ここでの成功が、続く『INTUITION』へとつながるわけですからね。
北欧メタルとか呼び方がいろいろあって何が正解かわからないけど、この『TELL NO TALES』に関しては純粋に“ヨーロッパ出身のHR/HMバンドの作品として優れた1枚”、それで十分だと思います。
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