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2017/04/30

2017年4月のお仕事

2017年4月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※4月5日更新)


[WEB] 4月5日、「リアルサウンド」にて乃木坂46のアーティスト分析「乃木坂46、舞台版『あさひなぐ』薙刀初稽古詳細レポート メンバーからのコメントも」が公開されました。

[WEB] 4月5日、「Red Bull Japan」オフィシャルサイトにてコラム「1997年発売の“時代を変えた”ラウドロックアルバム5枚」が公開されました。

[紙] 4月5日発売「TV Bros.」2017年4月8日号にて、Maison book girlインタビューを担当・執筆しました。

[紙] 4月4日発売「日経エンタテインメント!」2017年5月号増刊 「けやき坂46」特装版にて、欅坂46・けやき坂46長濱ねるインタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 4月4日発売「日経エンタテインメント!」2017年5月号にて、欅坂46「不協和音」全曲解説を担当・執筆しました。(Amazon

投稿: 2017 04 30 12:00 午後 [「仕事紹介」] | 固定リンク

2017/04/27

ALICE IN CHAINS『FACELIFT』(1990)

ALICE IN CHAINSが1990年に発表したメジャーデビューアルバム。本格的なブレイクは本作以降に発表されたシングル「Would?」(映画『SINGLES』のサウンドトラックに先行収録)と、続く2ndアルバム『DIRT』(1992年)からになりますが、この『FACELIFT』という作品の果たした功績は計り知れないものがあります。

僕が彼らのことを、そしてこのアルバムのことを知ったのは、当時の友人からの勧め、そしてMETALLICAのメンバー(確かカーク・ハメットだったと記憶してます)がインタビューで最近の愛聴盤としてALICE IN CHAINSの『FACELIST』を挙げていたこと。それと前後して本作からシングルカットされた「Man In The Box」がMTVなどで大反響を呼んでおり、ちょうど少しずつ知名度を高めつつあるタイミングでした。そして、彼らの知名度を一気に引き上げる結果となったのが、1991年に入ってから行われたANTHRAX、SLAYER、MEGADETHらによるパッケージツアー『CLASH OF THE TITANS』に参加したこと。スラッシュメタル勢と並んだときの弱さはあったものの、ここから彼らの快進撃は始まり、その後はVAN HALENとの大々的なツアーに参加したことでさらに人気を高めていくのでした。

その後METALLICAがこの『FACELIFT』から影響を受けたかのようなミドルテンポ中心の作風へとシフトチェンジするなんて、本作が発表された頃は感がもしなかったでしょう。確かにMEGADETHやSLAYERといったバンドがALICE IN CHAINSに目をつけたのはさすがと思いますが、いかんせん当時の彼らのサウンドとの相性は良好とは言い難かった。しかし、VAN HALENの客層とはなぜかマッチした。それはなぜか?

実はALICE IN CHAINS、このアルバムに至る前はLAメタルからの影響バリバリなサウンドのバンドだったのです。のちにリリースされるボックスセット『MUSIC BANK』(1999年)には80年代末のデモ音源が収録されていますが、これがRATT顔負けなハードロックでして(苦笑)。「WE DIE YOUNG」のMVを観ても、その片鱗は存分に感じられますし。人に歴史ありですね。

実際『DIRT』以降のアルバムと比較してみても、この『FACELIFT』は若干その色が残っている……気がしないでもない。『DIRT』以降ほど複雑怪奇なアレンジではなく、比較的わかりやすいハードロックで構成されているあたりも、その片鱗と言えるでしょう。事実、レイン・ステイリー(Vo)在籍時の作品群の中でも、もっともスルスル聴けてしまう、あまりクセのないアルバムですし。

思えば「We Die Young」「Put You Down」のストレートさも、「Man In The Box」や「Sea Of Sorrow」のポップさも、「Love, Hate, Love」のダークさも、「I Know Somethin (Bout You)」のファンクメタル感も、「Real Thing」のブギー感も、他のバンドがやれば普通のハードロックとして通用してしまうものばかり。これをレインのおどろおどろしい歌唱スタイルとジェリー・カントレル(G, Vo)が被せるハーモニーと粘っこいギターが融合することで、ちょっと“普通じゃない”ものが完成する。これがALICE IN CHAINSの原点なんでしょうね。

その「ちょっと“普通じゃない”もの」がいろんな要因(ひとつはレインのドラッグ癖も大きいと思う)が重なりあうことで、「まったく“普通じゃない”もの」へと進化していった。それが『DIRT』であり『JAR OF FLIES』(1994年)であり『ALICE IN CHAINS』(1995年)だったんだろうなと、今になって思うわけです。そして、『FACELIFT』や『DIRT』がその後のロックシーンに与えた影響がいかに大きなものだったかも、改めて実感するわけです。まさか『FACELIFT』を聴いたとき、それから1年ちょっとであそこまでHR/HMシーンが変革を起こすなんて考えもしなかったけどね。



▼ALICE IN CHAINS『FACELIFT』
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投稿: 2017 04 27 12:00 午前 [1990年の作品, Alice in Chains] | 固定リンク

2017/04/26

STONE TEMPLE PILOTS『CORE』(1992)

ALICE IN CHAINSが『FACELIFT』(1990年)でメジャーデビューをし、NIRVANAがメジャー第1弾アルバム(通算2枚目)『NEVER MIND』(1991年)、そしてPEARL JAMが『TEN』(1991年)、SMASHING PUMPKINSが『GISH』(1991年)という1stアルバムをそれぞれ発表し、SOUNDGARDENが『BADMOTORFINGER』(1991年)をドロップしたことで、1992年に入ると一気に盛り上がりが加熱したシアトルのグランジシーン。特にNIRVANA、PEARL JAMの大ヒットがその後のロックシーンを大きく変えていくことになるわけですが、この流れに呼応するかのようにカリフォルニアから1組のバンドがデビューします。それが今回紹介するSTONE TEMPLE PILOTSというバンドです。

……って説明、今更いらないと思いますが。スコット・ウェイランド(Vo)、ディーン・ディレオ(G)、ロバート・ディレオ(B)、エリック・クレッツ(Dr)の4人からなるこのバンドは、1992年9月にAtlantic Recordsからアルバム『CORE』でメジャーデビュー。日本盤リリースは確か翌1993年春頃だったと記憶しています。ちょうど1992年末から1993年初頭にかけて、FENなどのラジオ局でこのアルバムからのシングル曲「Sex Type Thing」を耳にするようになりまして、正直そのときは「PERAL JAMみたいな音、声だな。新曲か?」くらいに思ってたのですが、それがSTONE TEMPLE PILOTSという名前のバンドだと知ったのは、ちょっと時間が経ってからでした。

「Sex Type Thing」のALICE IN CHAINS+PEARL JAMな“グランジかぶれ”サウンドは評価よりも嘲笑の対象になりかねない1曲でしたが、アルバムを聴くとそのかぶれっぷりはさらにひどいもの……いや、東海岸で起こっていたムーブメントに対する西海岸からの回答と受け取れるような内容でした。

オープニング「Dead & Bloated」や「Where The River Goes」のタメを効かせたプレイや、「Wicked Garden」「Sin」あたりに漂うサイケデリック感はSOUNDGARDENにも通ずるものがあるし、「Creep」の枯れたアコースティックテイストはPEARL JAMともNIRVANAとも言えなくない。「Plush」のポップ感は……と、言い出したらキリがないのでこのへんに止めておきますが、とにかくあの時代の“良いとこ取り”なテイストはある意味卑怯でもあり、一周回って天才ですらあるなと。

ただね、どの曲もメロディやアレンジ、楽曲の作りは優れているんですよ。模倣からスタートしたのかどうかは別として、そこだけは素直に評価したい。結果、最初から最後まで素直に楽しもうとすれば最高のハードロックアルバムだと思いますしね。

また、本作の時点ではまだ露呈してなかったスコットの良くも悪くもカリスマチックな面は、作品を重ねていくごとに肥大しくことに。最終的にはそこがマイナスに働きバンド脱退〜オーバードーズでの急逝というバッドエンドへとつながるわけですが。

それと、すでに本作からも存分に感じられると思いますが、楽器隊の演奏能力の高さ、特にディーンのギタリストとしての非凡さはもっと評価されてもいいのではないかと思います。そのルックス含め、ジミー・ペイジ直系的印象が強いですし。

今ではそこまでネガティブに捉えられることはないと思う作品ですが、若い方々は偏見なく、そしてあの時代をリアルタイムで通過したおっさんおばさんたちは一度フラットな気持ちで本作に接してみてはどうでしょう。ほら、意外と良かったでしょ?



▼STONE TEMPLE PILOTS『CORE』
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投稿: 2017 04 26 12:00 午前 [1992年の作品, Stone Temple Pilots] | 固定リンク

2017/04/25

INCUBUS『8』(2017)

いろいろびっくりしました。まず6年ぶりという事実にも驚かされたし、通算8枚目(インディーズ盤含む)という事実にも、そしてその音と携わったアーティストにも。

INCUBUSがユニバーサル(Island Records)に移籍したと伝えられたのが2015年のこと。彼らはその年に4曲入りEP『TRUST FALL (SIDE A)』をリリースしており、その後第2弾EPもしくはアルバムがリリースされるのではと噂されていたけど、結局その年も、そして翌年も大きな動きはなく過ぎていったのでした。

ところが、2017年に入ってすぐにきたるニューアルバムからの新曲「Nimble Bastard」が公開。これがダイナミックなサウンドとワイルドなテイストのロックンロールで、聴いて一発で気に入ったわけです。聞けば、この曲はかのデイヴ・サーディ(SLAYER、MARILYN MANSON、OASISなど)と制作したもので、続くニューアルバムもデイヴのプロデュースになるという。どんなアルバムになるのか、ただただ楽しみに待っていたところ……。

いきなりSKRILLEXがアディショナル・プロデュースおよびミックスで参加することになり、ここに完成したのが今回紹介する『8』になるわけです。

近年はメンバーのマイク・アインジガー(G)もEDM方面でソングライターやギタリストとして活躍していることもあり、SKRILLEXとも当然面識があるだろうし、そもそもSKRILLEXことソニー・ムーアはFROM FIRST TO LASTのフロントマンということで、INCUBUSにも憧れていたことから、このコラボレーションは必然だったのかもしれません。

アルバムの根幹となる楽曲群は、穏やかさを軸に新たな可能性を提示した前作『IF NOT NOW, WHEN?』(2011年)とも異なる、バラエティに飛んだハードロック/ラウドロックが中心。リズムひとつ取っても軽快さよりも、ビートの1音1音のヘヴィさが聴き手にズシリと響きわたるようなものばかり。じゃあ陰鬱としているのかというと、そんなことはまったくなく、するする聴けて、気づけばアルバムを聴き終えているという聴きやすさが伴っています。トータル11曲(日本盤ボーナストラック除く)で40分というランニングタイムも程よく聴けてしまう要因だと思います。

そして、そんな楽曲群をより聴きやすくしながらも、強烈なインパクトを耳に残す一因となっているのが、SKRILLEXによるミックスでしょう。このビート感(主に音色やサウンドアプローチ)は明らかに昨今のダンスミュージックからもののだと思うし、しかもそれをロック畑出身のSKRILLEXが手がけているんだから、そりゃ絶妙なバランス感で成り立つビートが完成するわけですよ。このヘヴィさは『MAKE YOURSELF』(1999年)の頃とも、『A CROW LEFT OF THE MURDER…』(2004年)の頃とも明らかに質感が違うもの。そりゃ曲のアプローチも違うんだから、全然異なるものになるわけですよ。

冒頭2曲(「No Fun」「Nimble Bastard」。後者はシングルバージョンと異なり、SKRILLEXが新たにミックスしたもの。上記のMVはミューミックス音源を用いたものです)のストレートで豪快なロックンロールから、サイケ色を散りばめたフォーキーなヘヴィロック「State Of The Art」、SMASHING PUMPKINSやSTONE TEMPLE PILOTSを彷彿とさせる「Glitterbomb」、これぞ王道INCUBUSナンバーな歌モノ「Undefeated」、ダウナーなモダンR&B「Loneliest」とどんどん表情を変えていく。かと思えば、コミカルなインタールード「When I Became A Man」を挟んで、キラキラ感のあるロック「Familiar Faces」、90年代のインターネットユーザーには懐かしい効果音から豪快なヘヴィロックへと続く「Love In A Time Of Surveillance」、そして唯一SKRILLEXが絡んでないシリアスなインスト「Make No Sound In The Digital Forest」から締めにふさわしいグランジ風ミドルヘヴィな「Throw Out The Map」で終了。いやいや、カッコ良いじゃないですか。

今年でメジャーデビュー20周年。INCUBUSはまだまだいけるよということを示すには最適な1枚というだけでなく、こういうロックがヒットチャートに必要とされなくなりつつある2017年において、今後のシーンを左右する重要な作品かもしれません。



▼INCUBUS『8』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 04 25 12:00 午前 [2017年の作品, Incubus] | 固定リンク

2017/04/24

MUTATION『MUTATION III - DARK BLACK』(2017)

2013年に2枚のオリジナルアルバムをメールオーダーで発表した、ジンジャー・ワイルドハートのソロプロジェクトMUTATION。その後しばらく音沙汰がなかったものの、2016年末に再始動が伝えられます。しかも、今回はジンジャーとスコット・リー・アンドリューズ(EXIT INTERNATIONAL)の2人体制ユニットとして復活。実はこのEXIT INTERNATIONALについては知識がまったくなかったのですが、なにやら“ノイジー・ディスコ・パンク・バンド”とのこと。検索してみると、こんな感じらしく。

なるほど。

さて。約3年ぶりに届けられる通算3枚目のオリジナルアルバム『MUTATION III - DARK BLACK』ですが、基本路線は過去2作と一緒。ただ、今作は過去にも増してシンプルかつコンパクトな仕上がりとなっています。無軌道で先読み不可能な展開というMUTATION当初の魅力が、この3年の間に消え去ってしまったのは残念ですが、相変わらず薄皮が何枚もかかったスピーカーから爆音で鳴らされるノイズは健在。実はこの変化、ジンジャーよりもスコットの色合いが強いのかなと、先のEXIT INTERNATIONALの楽曲を聴いて感じた次第です。このシンプルさ、まさにそれですものね。

また、コンパクトさは楽曲の長さ(ほぼ2分台から3分台前半)がそのままアルバムのトータルランニングに影響し、全10曲で26分半というツッコミどころ満載の長さとなっております。過去2作が同じ10曲入りでそれぞれ38分程度だったことを考えると、いかに今回無駄を削ぎ落としたかが伺えます(いや、あの複雑怪奇な展開はまったく無駄じゃなかったけど)。あと、本作は1曲目「”.”」が7秒というのも大きい要因ですね。これ、曲じゃなくて単なるインタールード(というより話し声)なんですが。

あと、本作にはデヴィン・タウンゼンド、フィル・キャンベル(MOTORHEAD)、ジェイミー・オリバー(UK SUBS)などがゲスト参加しているようです。4曲目「Devolution」にはデヴィンがフィーチャリングされているようですが……まぁ確かにそれっぽい曲かなと。いや、自信ないです。だってノイズまみれだから(苦笑)。他にもゲストが多数参加しているようなので、きっと日本盤が6月に発売された際には、クレジットなどで明らかになるはずです。ちなみに僕は、年明けにPledgeMusicでダウンロード購入したので、音しか情報がない状況でつい最近まで過ごしてきました。

にしてもこのアルバム。終盤に進むにつれてそのノイズ度がどんどん増していくんですよね。曲の切れ目もわからないぐらいだし、ラストの「Deterioration」なんてもう、スピーカーの音割れまくり。正直自分が何を聴いているのかわからなくなります。

しかし、過去2作同様に本作も何度か聴き返すうちにやみつきに……なるんでしょうかね。個人的には2ndアルバムが一番難易度が高いと思ってたけど、ここまでど直球を投げられると逆にこれはこれでハードル高いような気が。ま、過去のアルバムみたいに数年後には理解できるようになるかもしれませんね。

そういえばMUTATIONはこの秋、来日の噂もあるんだとか。耳栓必須ですな、そりゃ。



▼『MUTATION III - DARK BLACK』
(amazon:国内盤CD)
(PledgeMusic:配信音源

投稿: 2017 04 24 12:00 午前 [2017年の作品, Ginger Wildheart, Mutation] | 固定リンク

2017/04/23

MUTATION『MUTATION II - ERROR 500』(2013)

THE WiLDHEARTSのフロントマン、ジンジャー・ワイルドハートが2012年に結成したノイズメタルプロジェクト・MUTATION。彼らが2013年、メールオーダーで限定リリースした2枚のアルバムのうち、今回は2ndアルバムにあたる『MUTATION II - ERROR 500』を紹介します。

MUTATIONのアルバムは当時、PledgeMusicを通じてメールオーダー限定で発表されましたが、この『MUTATION II - ERROR 500』のみマイク・パットン(FAITH NO MORE)のレーベル・Ipecaから輸入盤として少数ながら一般流通。当時は日本にほぼ未入荷という話ですが、僕は当時店頭でこのアルバムを購入した記憶があります。Amazonではなく、間違いなく店頭、しかもレコファンあたりだったと思います(CDに貼ってあるポップに「あのジンジャーの新プロジェクト」と記されていたので購入したのですから)。

前回のブログにも書いたように、このメタルノイズユニットMUTATIONはTHE WiLDHEARTSのアルバム『ENDLESS, NAMELESS』で試みた実験に再び挑戦したといえる内容。1曲の中に数曲分のアイデアが混ぜられたような非常に複雑な展開を持ち、ツーバスがドコドコ鳴り続けたかと思えば、急に耳障りの良いハーモニーやメロディが聴こえてくる。言い方が合っているかわかりませんが、プログレをよりモダンに、かつ暴力的にしたものがこのMUTATIONの本質ではないかと思います。

同時リリースとなった『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』(同作のみ一般流通なしで、この6月に日本限定でリマスター盤の流通開始)と比較すると、本作のほうがよりぶっきらぼうで投げっぱなし感が強いイメージ。それもそのはず(なのかどうかわかりませんが)、本作にはNAPALM DEATHのシェーン・エンバリー(B)が全面参加しているほか、日本が誇るMERZBOWが5曲目「Mutations」に演奏で、さらにTHE FALLのマーク・E・スミスが「Mutations」「Relentless Confliction」でリードボーカルでゲスト参加しているのです。

実はMUTATIONのアルバム中、初めて聴いたのは本作だったこともあり、バンドのもっともエクストリームな部分にいきなり触れて拒絶してしまった過去があります。しかし、あれから3年以上経った2016年末、リマスター再発された『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』を聴いたときはすんなり受け入れることができた。で、『MUTATION II - ERROR 500』を久しぶりに引っ張り出して続けて聴いてみたら……以前よりもすんなり楽しむことがでいた。けど、聴きやすさでは『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』のほうが一歩勝るかなと。2枚は同時期に制作されながらも、『MUTATION II - ERROR 500』のほうにゲストアーティストを多数迎えたことにより、ノイズミュージックとしての実験要素が強くなった。それが最初に聴いたときの“よくわからない、聴き手としての拒絶感”につながったのかもしれません。

本作は現在もAmazonで購入できるようですが、リマスターされデモ音源が追加された国内盤が6月21日にリリースされるようなので、ジンジャーの解説含めて堪能したい方はそちらの発売を待ってみるのも良いかもしれません。



▼『MUTATION II - ERROR 500』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 04 23 12:00 午前 [2013年の作品, Ginger Wildheart, Mutation, Napalm Death] | 固定リンク

2017/04/22

MUTATION『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』(2013)

THE WiLDHEARTSのフロントマン、ジンジャー・ワイルドハートが2012年に結成したノイズメタルプロジェクト・MUTATION。2013年にメールオーダーで限定リリースした2枚のアルバムが新作発売にあわせ、ついにここ日本でも6月に一般流通することになりました。ということで、今回はCDリリースに先駆けてMUTATIONの3作品について連日紹介していきたいと思います。

この『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』はPledgeMusicを通じてジンジャーのレーベルRound Recordsから流通され、すぐに廃盤。昨年末には同作のリマスター盤が再びPledgeMusicにて配信リリースされています。

聴いた順番でいうと、私は2013年にMUTATIONの2ndアルバムにあたる『MUTATION II - ERROR 500』を最初に聴きました。2枚同時にPledgeMusicから発表されたMUTATIONのアルバムでしたが、『MUTATION II - ERROR 500』のみマイク・パットン(FAITH NO MORE)のレーベル・Ipecaから一般流通され、当時店頭にて手に入れることができたのです。

ということで、『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』自体を聴いたのはリマスター盤からで、つい最近のこと。そこを踏まえた上でお読みいただけたらと思います。

“ノイズメタルユニット”と銘打っているとおり、MUTATIONのサウンドは非常にノイジーで耳障りの悪いものです。ジンジャーが過去に携わった作品でもっとも近いものといえば、おそらく1997年発売のTHE WiLDHEARTSのアルバム『ENDLESS, NAMELESS』でしょう。薄皮も何枚も被せたように奥にこもったサウンドと、その先からビリビリと聴こえてくるノイズ混じりの轟音。でもよく耳を澄ませると、そのもっと奥底にあるメロディは実にポップでキャッチー。それが『ENDLESS, NAMELESS』という実験作でした。

で、このMUTATIONで試されていることは、あの実験をさらに数歩押し進めたものと受け取ることができます。楽曲自体はとっつきにくいイメージの強い、変拍子を多用したリズムとギターリフ。そこにヒステリックにシャウトするジンジャーのボーカルが乗り、たまに耳馴染みのよい女性コーラスが登場する。1曲の中にいろんな要素が詰め込まれており、ぶっちゃけアイデア自体は数曲分がミックスされているんじゃないかと思わされるものばかり。でも全10曲ともに1曲3〜4分程度で、トータル39分に満たないという近年のアルバムの中でも非常にコンパクトなもの。なのに聴き終わったときにドッと溢れ出てくる疲労感。これぞ、1997年にジンジャーが目指したものだったのではないかと思わされるわけです。

あのときは、その実験を自身のバンドTHE WiLDHEARTSでやろうとしたことが失敗だった。でも、今は自由の身で、新たにやりたいことがでいたらその都度新しいプロジェクトを作ればいいだけのこと。そんな軽いフットワークのジンジャーが2012年というタイミングにこのプロジェクトに向かっていったのは、とても健全なことなのかもしれません。

そういえば本作のラストナンバー、「Carrion Blue 喜怒哀楽」という日本語混じりの不思議なタイトルになっています(原題表記がこうなっているのです)。また、この曲のハードコアぶり&サビのキャッチーさがたまらないんですよね。最近のユルいジンジャーに疑問を感じていた古くからのファンには、全力でオススメしたい1枚です。

正直、『MUTATION II - ERROR 500』を初めて聴いたときはそこまで良いとは思えなかったのに、2016年末に初めて『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』を聴いたときはすんなり入り込むことができた。単に聴くタイミングの良し悪しもあるでしょうけど、個人的には『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』のほうが少々とっつきやすい印象があります。とはいえ、それもMUTATIONというノイズメタルユニット限定でのお話ですので、初めてジンジャー・ワイルドハーツというアーティストの作品に触れるという方には本作はオススメしません。あくまであの偏屈なアーティストのことを理解できる方限定の勧め方ですので、誤解なきようお願いします。



▼MUTATION『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』
(amazon:国内盤CD)
(PledgeMusic:配信音源

投稿: 2017 04 22 12:00 午前 [2013年の作品, Ginger Wildheart, Mutation] | 固定リンク

2017/04/21

SUICIDAL TENDENCIES『WORLD GONE MAD』(2016)

マイク・ミューア(Vo)率いるアメリカのクロスオーバー/ハードコアバンドの、通算12枚目となるスタジオオリジナルアルバム。実は彼らの新作を聴くのはずいぶん久しぶりのことで、振り返ればそれこそ90年代前半以来かも……と気づかされるわけです。そうそう、ロッキー・ジョージ&マイク・クラークのツインギター編成で、今ではMETALLICAの一員としておなじみのロバート・トゥルージロ(B)なんかが在籍していた頃です。当時はハードコアとスラッシュメタルの接近&融合を“クロスオーバー”なんて括りで呼んでいましたが、一時のSUICIDAL TENDENCIESはそのクロスオーバーさえ飛び越えて“まんまヘヴィメタル”みたいなことをやってましたけどね。

そんな彼らもすでに結成から30年以上を経たベテランバンド。オリジナルメンバーはマイク以外残っておらず、90年代半ばの再結成から在籍のディーン・プレザンツ(G)以外はかなり入れ替わっています。本作の制作に際してもリズムギター、ベース、ドラムを一新。新ドラマーにはなんと、元SLAYERのデイヴ・ロンバードが加わり、発表当時大きな話題となりました。SLAYER黄金期の土台を支えたデイヴがSUICIDAL TENDENCIESに加わると、どんなプレイを聞かせてくれるのか、と……。

さて、完成したこの『WORLD GONE MAD』というアルバム。オープングの「Clap Like Ozzy」というメタルファンならクスッとしてしまうタイトルの疾走ハードコアチューンからスタートします。スラッシュともハードコアとも受け取れるこの楽曲こそ、まさにクロスオーバーと呼ぶにふさわしい1曲。その後もヘヴィなミドルチューン「The New Degeneration」、どこかジャジーなテイストも含む「Living For Life」、バラード風ミドルヘヴィサウンドに泣きメロギターソロとラップ調ボーカルが乗る「Get Your Fight On!」(曲中盤でアップテンポになる展開はメタルそのもの)などバラエティに富んだ楽曲が続きます。

全体的にドラムがかなり前に出ている印象があるものの、かといってSLAYER時代ほど派手さはない。また新加入のベーシスト、ラー・ディアスのプレイもスラップを多用した派手なもので、デイヴとの相性も抜群。そこに派手に暴れまくるディーンのギターソロが加わると、不思議と我々がよく知る「80年代末から90年代前半のSUICIDAL TENDENCIES」とイメージがオーバーラップするのです。かといって、楽曲自体にはあの頃みたいに大袈裟な展開やアレンジは皆無なのですが。不思議です。

初期の作品に通ずるものがありつつも、しっかりメタル期とオーバラップする部分もある。なのにそれらの時期とは完全に一致するわけではなく、新しさ(今までのSUICIDAL TENDENCIESにはなかったような魅力)も感じられる。デイヴ・ロンバードを迎えたことでマイク・ミューアの心に再び火がついたのかもしれませんね。個人的にはハードコアやパンクリスナーよりもメタルファンにこそ触れてほしい1枚です。



▼SUICIDAL TENDENCIES『WORLD GONE MAD』
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投稿: 2017 04 21 12:00 午前 [2016年の作品, Suicidal Tendencies] | 固定リンク

2017/04/20

THERAPY?『DISQUIET』(2015)

北アイルランド出身の3人組バンド、THERAPY?が2015年に発表した通算12枚目(インディーズからのミニアルバム2枚を含めたら14枚目)のオリジナルアルバム。オリジナル作品としては2012年の『A BRIEF CRACK OF LIGHT』から3年ぶりで、今作から新たにAmazing Recordsというレーベルに移籍しています。とはいえ、2003年の『HIGH ANXIETY』からは日本盤も発表されていないので、ここ日本で生活するリスナーにとってはそういった小さな話題はどうでもいい話かもしれませんが。

90年代半ばに若干ポップな作風でメジャーヒットを記録した彼らですが、1999年の5thアルバム『SUICIDE PACT – YOU FIRST』以降は初期のハードコア路線に回帰しつつも、独自のスタイルを築き上げてきたTHERAPY?。そんな彼らもすでに20年選手になり、大ヒット作となった2nd『TROUBLEGUM』(1994年)、3rd『INFERNAL LOVE』(1995年)がリリースから20年経ったことで古巣から2作のデラックスエディションも発売されました。当時のシングルカップリング曲や未発表テイクなどを含む2枚組(『TROUBLEGUM』のみ3枚組)は当時のファンには懐かしく、初めて彼らに触れるという若いリスナーには新鮮に映ったかもしれません。

そういった原点回帰的なリリースを経て発表された今作『DISQUIET』。1曲目の「Still Hurts」を聴いて驚いたファンは多かったのではないでしょうか。ここ最近の彼らにしては非常にストレートな、それでいてキャッチーなメロディと適度なヘヴィさを伴ったコンパクトな楽曲……つまり『TROUBLEGUM』『INFERNAL LOVE』で聴けた“おなじみの”路線だったのです。もちろん単なる焼き直しでは終わっておらず、そこには現在のTHERAPY?ならではの乾いたサウンドや重苦しさ・息苦しさもしっかり表現されています。

そのまま、こちらも初期ファンには嬉しい「Tides」へと続いていく構成。その後も『TROUBLEGUM』でのキャッチーさ、『INFERNAL LOVE』での若干宗教がかった暗くて冷たい感触がいたるところに感じられるのですから。とにかく本作はメロディが非常にわかりやすく、耳に残る楽曲が多い。もちろんそれ以前の(特にここ10年くらいの)作品も独自のスタイルが築き上げられており、あれはあれで嫌いではありませんでしたが、自分がTHERAPY?のどこに惹かれていたかを考えると、この原点回帰は大歓迎と言いたくなるわけです。

アンディ・ケアンズ(Vo, G)の声質やキーの低さに若干の寂しさを感じるものの、それ以外は否定のしようがないくらいにカッコいい楽曲ばかり。最初から最後まで、ここまですんなりと聴けてしまったTHERAPY?のアルバムは本当に久しぶりじゃないでしょうか。それを「引っ掛かりがなさすぎる」「ヤワくなった」と否定するリスナーもいるかもしれませんが、そういう方々が「Vulgar Display Of Powder」(タイトルはもちろん、PANTERAの名作アルバムタイトルをもじったもの)のような楽曲を聴いてどう思うのか、ぜひ聞いてみたいものです。

特にここ日本では黄金期と比べたら知名度がないに等しいTHERAPY?。リリースから2年も経ちましたが、いまだに飽きずに楽しめる本作は一聴の価値ありです。



▼THERAPY?『DISQUIET』
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投稿: 2017 04 20 12:00 午前 [2015年の作品, Therapy?] | 固定リンク

2017/04/19

THE WiLDHEARTS『NEVER OUTDRUNK, NEVER OUTSUNG: PHUQ LIVE』(2016)

本作はTHE WiLDHEARTSが1995年に発表した通算2作目のオリジナルアルバム『P.H.U.Q.』のリリース20周年を記念して、2015年9月に行われた再現ツアーからイギリス国内での複数公演からの音源をコンパイルした2枚組ライブアルバムです。近年はこういったアニバーサリーツアーで年に1回ツアーを行うのみの活動にとどまっているTHE WiLDHEARTSですが、それでもひと昔前や90年代を考えれば「新曲は出さないけどツアーはやってくれる」だけありがたいのかも……と、最近はこちら側も歳をとったせいで(苦笑)、彼らに対して優しく接することができるようになりました。あははは。

ま、冗談はさておき。このツアーの一環でここ日本にも2015年11月に来日しましたが、私自身チケットを取っておきながら体調不良(耳の病気で大音量を禁じられてました)のため行くことができず。彼らのアルバム中、もっとも好きな作品を完全再現するライブだけに足を運びたかったんですけどね。そういう意味ではこのアルバムのリリースは非常にありがたかったです。

お聴きいただけばわかるように、本作はディスク1(14曲)がアルバム『P.H.U.Q.』を頭の「I Wanna Go Where The People Go」からラスト(日本盤ボーナストラック除く)「Getting It」までを完全収録。ディスク2(6曲)はボーナスディスクという扱いで、ライブ当日にアンコールとして披露された5曲(トラック1はディスク1エンディングから続く「Don't Worry About Me」大合唱なので、実質5曲となります)が収められています。アンコールは『P.H.U.Q.』時期に限定されることなく、再結成後の「Stormy In The North, Karma In The South」といった近年のライブ定番曲、「Weekend」「29 X The Pain」といった懐かしのカップリング曲も含まれており、ファンには嬉しいセットリストとなっております。

また、ディスク1には「Jonesing For Jones」の後に、続くアップチューン「Woah Shit, You Got Through」のイントロ的な小楽曲「Up Your Arse You Fucking Cunt」も追加。ライブの流れを途切らせることなく挿入された遊び心といったところでしょうか、単なる完全再現で終わらせないあたりも彼らなりのこだわりというかジンジャー(Vo, G)のひねくれっぷりが伝わってきます。

さて、改めて『P.H.U.Q.』というアルバムをこういう形で聴くと、初期のメタル+パワーポップ感とその後『ENDLESS, NAMELESS』(1997年)で見せたノイジーでラウド、ハードコアな路線との中間に位置する橋渡し的作品だったんだなと気づかされます。もちろんその前後には不幸なアルバム『FISHING FOR LUCKIES』(1994年)の存在があるわけで、そこを含めての『P.H.U.Q.』というのは非常に理解できるのですが、前半のパワーポップ感と後半で見せるシリアスさとの落差には改めて驚かされます。まぁこのへんはジンジャー自身の当時置かれた状況や精神状態(ドラッグや心の病など含め)が大きく影響していたことは理解できるわけですが、それにしてもこのバランス感は本当に絶妙だったなと。あの時期でなければ作れなかった1枚だったんだなと実感させられました。

曲単位では再結成後も演奏される機会のある楽曲がいくつかあるものの、このタイミングで20年ぶりに披露された曲、あるいは当時ライブでも演奏されることのなかった楽曲などもあり、こういったアルバム再現ライブならではの魅力もあるこの作品。バンドのファンのみならず、これからTHE WiLDHEARTSを聴いてみようと思っている初心者にもぜひ聴いてほしいライブアルバムです。そう、もし聴くならあわせてスタジオ盤の『P.H.U.Q.』もチェックすると、なお一層楽しめると思いますよ。



▼THE WiLDHEARTS『NEVER OUTDRUNK, NEVER OUTSUNG: PHUQ LIVE』
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投稿: 2017 04 19 12:00 午前 [2016年の作品, Ginger Wildheart, Wildhearts, The] | 固定リンク

2017/04/18

THE ALMIGHTY『CRANK AND DECEIT: LIVE IN JAPAN』(1996)

THE ALMIGHTYが1996年に日本限定で発表したライブアルバム。当初本作は同年3月にリリースされた5thアルバム『JUST ADD LIFE』の日本盤ボーナスディスクとして発表されましたが、同作リリースからしばらくしてレーベルとの契約解除などがありバンドは解散を発表。それと前後して東芝EMI(当時)から発表された2枚のオリジナルアルバム『CRANK』(1994年)と『JUST ADD LIFE』の日本盤は廃盤となり、改めてビクターから、ボーナストラックを新たに追加して再発されるのです。その際、『JUST ADD LIFE』とこのライブアルバム『CRANK AND DECEIT: LIVE IN JAPAN』は切り離され、別売りとなったのでした。この『CRANK AND DECEIT: LIVE IN JAPAN』というタイトルも、この単独リリースの際に改めて付けられたものです。

さて、本作はタイトルからもおわかりのように、ここ日本で収録されたもの。『CRANK』を携えて1995年7月に敢行した二度目の来日公演から、大阪での単独ライブが収録されています。私自身は当時、日比谷野音で行われたDIZZY MIZZ LIZZYとのライブを観ているのですが、“90年代のMOTORHEAD”と例えられた彼らが3rdアルバム『POWERTRIPPIN'』(1993年)でグランジ/ヘヴィロックへと傾倒し、そこからさらにパンク度を増量させ最高の形態となった『CRANK』を携えてのライブということで……もう最高以外の表現がないくらい、本当に素晴らしいライブだったと記憶しています。

このライブアルバムには、その来日時の様子を生々しいサウンドで追体験できる貴重な音源が詰まっています。『CRANK』からの楽曲が中心なのは当然として、その前作『POWERTRIPPIN'』からの楽曲も『CRANK』を経たことでより“タメ”を生かしたダイナミックな演奏で聴くことができるし、1st『BLOOD, FIRE AND LOVE』(1989年)、2nd『SOUL DESTRUCTION』(1991年)からの楽曲もスタジオ音源よりもラフでパンキッシュ、それでいて濃厚なサウンドで表現されています。ぶっちゃけ悪いわけがないんですよ。

しかも、本作には当時発売前だった『JUST ADD LIFE』から、いち早く新曲「360」も披露されています。この曲を初めて生で聴いたときは、次のアルバムも『CRANK』の流れにある1枚だと思ってたんだけどなぁ……いや、『JUST ADD LIFE』は『JUST ADD LIFE』で大好きなのでまったく問題ないですが。

THE ALMIGHTYはこの解散後、2000年に再結成して2枚のアルバムを発表しますが、2002年に再解散。2006年に最初の解散時の布陣で再々結成し、新作を制作することなくライブ活動だけ行い、2009年には3度目の活動停止。フロントマンのリッキー・ウォリックはその後、THIN LIZZY参加を経てBLACK STAR RIDERSのボーカリストとして活躍中です。


Almighty_crankanddeceit
▼THE ALMIGHTY『CRANK AND DECEIT: LIVE IN JAPAN』
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投稿: 2017 04 18 12:00 午前 [1996年の作品, Almighty, The] | 固定リンク

2017/04/17

HANOI ROCKS『ALL THOSE WASTED YEARS』(1984)

HANOI ROCKSがオールキャリア中唯一発表したライブアルバムが、1984年にリリースされた本作『ALL THOSE WASTED YEARS』。日本では『燃えるロンドン・ナイト』の邦題でおなじみの1枚です。

本作は1983年12月、イギリス・ロンドンにある有名クラブThe Marquee Clubにてライブレコーディングされたもの。ちょうど3枚目のオリジナルアルバム『BACK TO MYSTERY CITY』を発表したあとで、本国フィンランドのみならずここ日本やイギリスで知名度を上げていた時期の、バンドとして脂の乗った演奏&パフォーマンスを楽しむことができます。

『BACK TO MYSTERY CITY』からの楽曲はもちろんのこと、それ以前の楽曲……チープな録音技術と未熟な演奏力で表現された初期の名曲たちが、ライブレコーディングというバンドの持ち味をもっとも生かした形で再現されています。曲によっては原曲よりもテンポを若干落とすことで、よりルーズでワイルドな魅力が加わったものも多く、「Don't Never Leave Me」なんて後のアルバム『TWO STEPS FROM THE MOVE』収録の「Don't You Ever Leave Me」に近いテンポ&アレンジで生まれ変わっています。

それにしてもベンチャーズの「Pipline」カバーから始まり、そのまま「Oriental Beat」へとなだれ込むオープニングは何度聴いても鳥肌モノ。そこから狂気さえ感じさせる「Back To Mystery City」へつなぐ構成も、さすがの一言です。マイケル・モンロー(Vo, Sax)のボーカルもアルバム以上に野太くてワイルド、そこにアンディ・マッコイ(G)のヘタウマコーラスがかぶさることで生じる価格反応。聴いていて思わず“これぞロックンロール!”とガッツポーズを取りたくなってしまうほどです。

「Until I Get You」や先の「Don't Never Leave Me」といったバラードナンバーも独特の味を出してるし、のちにマイケル・モンローのソロライブでもお約束となった「Tragedy」〜「Malibu Beach Nightmare」のメドレー構成はロック史に残したい名演のひとつだと断言したい。そこからポップで味わい深い「Visitor」「11th Street Kids」へと続き、狂気に満ちたブルースナンバー「Taxi Driver」、聴いていて胸がチクチクするほどセンチメンタルな「Lightnin' Bar Blues」と本当に名曲・名演満載。ラスト2曲がカバー曲(アリス・クーパー「Under My Wheels」、THE STOOGES「I Feel Alright」、YARDBIRDSやAEROSMITHでおなじみ「Train Kept A-Rollin'」)で締めくくるのも、もはや鉄板。実際のライブとはセットリストは異なり、アルバム用に構成され直しているものの、ライブの臨場感やバンドの熱量、そしてアルバムとしての起承転結はきっちり保たれています。個人的にはAEROSMITH『LIVE! BOOTLEG』と並ぶ“死ぬまで聴き続けたいライブアルバム”のひとつです。

なお、本作には同タイトルのライブビデオも同時期にリリースされています。こちらはアルバムと比較的構成は似ているものの、収録時間は60分未満というちょっと物足りなさを伴う内容。途中でメンバーのインタビュー(短いコメント)が挿入されたりするという難はあるものの、あの当時のライブを映像でじっくり楽しめるという意味では非常に貴重な作品です。しかも、アルバムのほうではカットされた、マイケルがボーカルを務めラズル(Dr)がボーカルを担当する「Blitzkrieg Bop」(RAMONESのカバー)がラストに収録されているので、ぜひこちらも機会があったら観てほしいです。



▼HANOI ROCKS『ALL THOSE WASTED YEARS』
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投稿: 2017 04 17 12:00 午前 [1984年の作品, Hanoi Rocks] | 固定リンク

2017/04/16

AEROSMITH『LIVE! BOOTLEG』(1978)

1978年にリリースされた、AEROSMITHキャリア初のライブアルバム。CDでは1枚のディスクにまとまってますが、アナログ盤は当時2枚組でリリースされています。

音源の大半は1977〜78年に、当時の最新作『DRAW THE LINE』(1977年)に伴うツアーで録音されたもの。つまり、バンドとしてはドラッグまみれで臨界点に達しつつあるか、達してしまってあとは落ちていくだけ……という絶妙なタイミングのライブなのです。選曲も1st『AEROSMITH』(1973年)から『DRAW THE LINE』までのベストセレクションといった内容。実際のライブのセットリストとは異なるものの、「Back In The Saddle」からヘヴィに始まり、そのままサイケデリックな「Sweet Emotion」へと流れていく構成はさすがの一言。演奏が進むに連れて演者の熱量が一気に上がり、それに伴いテンポも上がっていくという生々しさは、現代の“クリック重視”のライブとは一線を画するものがあります(ってこれ、現在のエアロを否定しているわけじゃないですよ。念のため)。

また本作にはスタジオアルバム未収録のオリジナル曲「Chip Away The Stone」やTHE BEATLESのカバー「Come Together」も収録。スタジオ音源は7インチアナログ盤やコンピ盤でしか聴けない貴重な楽曲を、当時のエアロらしいルーズだけど尖った歌と演奏で楽しむことができます。

さらに、本作の聴きどころのひとつとして、アナログ盤でいうところのD面(ディスク2のB面)、CDだとトラック14以降にとても貴重な音源が含まれています。それは、本作で最古の音源となる1973年のライブから「I Ain't Got You」「Mother Popcorn」の2曲。前者はジミー・リードやYARDBIRDSなどで知られるブルースのスタンダード、後者はジェイムズ・ブラウンのそれぞれカバーです。デビュー間もない頃のエアロはこういったカバー曲をかなりライブで披露しており、その音源はブートレッグなどでも確認することができます。ギリギリのところで正気を保っていた1977〜78年のエアロと、メジャーデビューして明るい未来を思い浮かべていた1973年のエアロ。これを並列で語っていいものか気になりますが、あの時点でこういう形でバンドの原点を思い出させてくれるのはエアロにとっても、そしてファンにとっても非常に意味のあることだったのではないでしょうか。

ちなみに、この2曲の後には1978年のライブから「Draw The Line」へとなだれ込むのですが、実はアルバムジャケットやブックレットには本来この曲はクレジットされていません。つまり、シークレットトラックとして収められているわけですね。これ、アルバムタイトルからもわかるように、当時横行していた海賊盤(Bootleg)に真っ向から対抗したもので、このクレジット漏れも“海賊盤によくあること”としてバンド側がちょっとした遊び心で手がけたんだとか。

このアルバムについては語りたいことが山ほどあるはずなのに、だけど無駄なことはあまり語りたくない気持ちもある。自分のロック人生を最初に変えてくれた、それくらい大切な1枚なんです。もし「AEROSMITHで一番好きなアルバムは?」と質問されたら、間髪入れずにこのアルバムを挙げることでしょう。



▼AEROSMITH『LIVE! BOOTLEG』
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投稿: 2017 04 16 12:00 午前 [1978年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2017/04/15

THE STRUTS『EVERYBODY WANTS』(2016)

2010年代後半のUKロック(主にHR/HM寄り)を牽引していくであろうバンド、THE STRUTSの記念すべきデビューアルバム。ここ日本では昨年8月の夏フェス『SUMMER SONIC 16』に国内デビュー前に突如出演したことでその名を知らしめたかと思います。今回紹介する1stアルバム『EVERYBODY WANTS』もすでに昨年春先から輸入盤で出回っていたので、そこで知ったという人もいるかもしれません。または、僕と同じようにたまたま観たMVに登場する“そのルックスと声・歌唱法がフレディ・マーキュリーっぽいフロントマン”ことルーク・スピラーに惹かれた人も少なくないはずです。

実は彼らのデビュー作、本国イギリスでは2014年7月に一度発売されています。しかし、リリース元の変更(Virgin EMI→Interscope)を経て、本国から国外(アメリカ)に向けたプロモーション展開にあわせて2016年3月に新曲を加えた構成で再発売。これが現在出回っている本作のベースになるものです。また、日本盤のみ今年初頭の単独来日公演にあわせて、同年2月に遅れてリリースされたこともあって、さらに新曲や未発表テイクなどを加えた内容。現行の輸入盤が13曲入り、日本盤はそこに5曲加えた全18曲入りなので、これから購入するなら輸入盤よりもちょっとだけお高い日本盤をオススメします。ジャケットは正直輸入盤のほうが好きですけどね。

さて、本作の内容です。先にルークのことを“そのルックスと声・歌唱法がフレディ・マーキュリーっぽいフロントマン”と例えましたが、楽曲自体もQUEENや古き良き時代のブリティッシュロックを現代的に解釈した楽曲がずらりと並びます。どことなく初期のQUEENみたいなロックンロール「Roll Up」やドラマチックなミディアムチューン「Mary Go Round」はまさにその好例。もしかしたら前者を聴いてTHE DARKNESSを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、こちらのバンドのほうがよりポップ色が強いので親しみやすいかもしれません。

また、シングルカットもされた「Could Have Been Me」「Kiss This」「Put Your Money On Me」にはブリットポップ以降のカラーも見られ、単なるハードロックでは片付けられない魅力が満載。黒っぽいロック「Dirty Sexy Money」あたりもデジタルテイストを加えたアレンジを施すことで妙に親しみやすくなっているし、「The Ol' Switcheroo」みたいにブラスやピアノを加えた強いビートのポップチューンにはBAY CITY ROLLERSを重ねたくなるし。ボーカルがやたらと前時代的(ルックス、歌唱法含め)なため、もしかしたらじっくり聴く前に引いてしまっている方もいるかもしれませんが、完全に食わず嫌いですよ。むしろ本作はHR/HMを通過していない、80年代〜90年代のブリティッシュロック/ブリットポップで青春時代を過ごした人にこそ聴いてもらいたい。と同時に、その頃をリアルタイムで知らない若い世代には、純粋にポップで親しみやすい楽曲満載のアルバムとして楽しむことができる。そんな多くの可能性を秘めた1枚だと思います。

再発続きで最初のリリースからすでに3年近く経過してしまってますが、今年8月には『SUMMER SONIC 17』での再来日が早くも決まりましたし、アメリカでも本格的な成功を収めたいはずなので、ぜひ年内に強烈な2ndアルバムを発表してくれないかな……と勝手に思ってます。

そういや自分、まだ生で観たことないんだよね。今年はサマソニで観ておきたいな。



▼THE STRUTS『EVERYBODY WANTS』
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▼THE STRUTS『EVERYBODY WANTS』
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投稿: 2017 04 15 12:00 午前 [2016年の作品, Struts, The] | 固定リンク

2017/04/14

ARMORED SAINT『WIN HANDS DOWN』(2015)

ARMORED SAINTが2015年に発表した、通算7枚目のオリジナルアルバム。編成はジョン・ブッシュ(Vo)、ジョーイ・ヴェラ(B)、ゴンゾ・サンドヴァル(Dr)、フィル・サンドヴァル(G)、ジェフ・ダンカン(G)というデヴィッド・プリチャード(G / 1990年没)亡きあと不動の5人。ジョン・ブッシュのANTHRAX加入で動きが止まった(ていうか解散)時期もありましたが、1999年に再結成して以降は地道な活動を続けているようです。

本作は2010年発売の6thアルバム『LA RAZA』に続く5年ぶりの新作ですが、これが非常に素晴らしい内容でして。ぶっちゃけ、このバンドは1st『MARCH OF THE SAINT』(1984年)と現編成最初の『SYMBOL OF SALVATION』(1991年)以外まともに聴いてなかったのですが、この『WIN HANDS DOWN』はANTHRAXのジョン・ブッシュ参加作が好きな人、ヨーロッパ(主にイギリス)寄りのパワーメタルが好きな人なら絶対に気にいる1枚だと思います。

切れ味鋭いリフとパワフルなジョンの声が塊になって、適度な疾走感を伴い突進してくるようなオープニング曲「Win Hands Down」をはじめ、どこをどう切り取っても隙のない作風。1曲の中での起承転結もかなり練られており、聴き応えのあるものばかり。7分超えの「Muscle Memory」や「In An Instant」など、とてもドラマチックな楽曲も多く、1980年代初頭にLAで誕生しながらも正統派メタルの血筋を受け継ぐこのバンドの特異性はこういう部分に色濃く現れているなと、改めて実感した次第です。

そういえば、アルバム中もっとも荒くれパワーメタルな「With A Full Head Of Stream」にはゲストボーカルとして、パール・アデイ(ミート・ローフの娘で、ANTHRAXのスコット・イアンの嫁)が参加して華を添え……るとは言い難いほどパワフルな歌声を聴かせてくれます。この掛け合いもまたカッコよいし、なおかつその歌を盛り立てる楽器隊の演奏・アレンジも抜群。そこからドラマチックな大作「In An Instant」へと続く構成も素晴らしいし、ピアノとアコースティックギターを取り入れたバラード「Dive」、力で捩伏せる「Up Yours」で締めくくる流れも最高の一言。日本盤には「Dive」の“Deep Remix”という蛇足が加えられているので、できることならオリジナルの全9曲のみできっちり締めくくりたいです。

昨年秋には『LOUD PARK 2016』で待望の初来日も実現。とても熱狂的に迎え入れられ、大好評だったようですね。つい先日、ライブアルバム『CARPE NOCTUM』も発売されたばかりなので、オールタイムベスト的な同作とあわせてこの『WIN HANDS DOWN』に触れてみてはどうでしょう。



▼ARMORED SAINT『WIN HANDS DOWN』
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投稿: 2017 04 14 12:00 午前 [2015年の作品, Armored Saint] | 固定リンク

2017/04/13

DEEP PURPLE『INFINITE』(2017)

これがラストアルバム?と噂される、DEEP PURPLE通算20枚目のスタジオアルバム。前作『NOW WHAT?!』(2013年)から4年ぶりと、思っていた以上に間が空いてないんですね(その前の『RAPTURE OF THE DEEP』(2005年)から『NOW WHAT?!』の間隔8年も空いてたので)。

正直言えば、2000年代のパープルをそこまで真面目に聴いてきたわけではありません。リアルタイムでしっかり聴き込んでいたのは、リッチー・ブラックモア最終作『THE BATTLE RAGES ON…』(1993年)までで、スティーヴ・モーズ初参加作『PURPENDICULAR』(1996年)はぶっちゃけ熱心に聴いたほうではなく、その後も新作が出るたびに聴いたり聴かなかったり……という付き合い方でした。

今作に関しては、昨年末に先行公開されたアルバムのオープニングトラック「Time For Bedlam」の仰々しいイントロ&アウトロと、そこに挟まる“80年代以降のパープル”というアンバランスさが妙に引っかかり、ずっと気になっていたんです。「リリースされたら、ちゃんと聴こう」って。

で、発売された本作。どの楽曲も聴けば「あ、パープルだ」という要素が散りばめられたものばかり。それこそ70年代、80年代の彼らが好きな人、その頃の諸作品に触れた人なら必ず引っかかりのある1枚だと思います。オールドスタイルのロックンロールやブギーを軸にしつつも、重みのあるビート、プログレッシヴハードロック的アレンジなど、このバンドの歴史を総括するような楽曲がずらりと並び、そこにスティーヴ・モーズ(G)のツボを押さえたギタープレイと、ハードロックというよりはプログレチックなドン・エイリー(Key)のオルガン/シンセ/ピアノが加わることで、“古臭いのにどこか新鮮”という最初に「Time For Bedlam」を聴いて感じた“引っかかり”を楽しめるはずです。

ただ、イアン・ギランのボーカルに関しては……71歳という高齢のわりに健闘していると思いますが、やはり往年のシャウトは期待できないわけで。一定のトーンで歌われるボーカルのせいで、タイトな演奏とは相反する緩さが生じてしまっています。が、そこを差し引いて考えればなかなか良くできたハードロックアルバムとして楽しむことができるんじゃないでしょうか。いや、冗談抜きで、とてもリラックスして楽しめる1枚です。まさかパープルの作品とこういう向き合い方をする日が来るなんて、思ってもみなかったけど。

長年活動が続くロックバンドの加齢問題は、このDEEP PURPLEに限らずたくさんあります。JUDAS PRIESTやSCORPIONSも一時期引退を示唆していましたし。パープルが本当にこのアルバムとそれに伴うワールドツアーで活動を終了させるのかは現時点では不明ですが、仮にもしこのアルバムで最後だとしても誰も文句は言わないはずです。それに見合った優れた作品を作り上げたわけですから。


▼DEEP PURPLE『INFINITE』
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投稿: 2017 04 13 12:00 午前 [2017年の作品, Deep Purple] | 固定リンク

2017/04/12

STEVEN TYLER with THE LOVING MARY BAND: LIVE IN JAPAN 2017@日本武道館(2017年4月11日)

正直、スティーヴン・タイラーのソロアルバム『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』がリリースされると決まったときはネガティブな感情しかなかったし、聴いてみたら実際良い内容だったけども、リリースから時間が経った今思うのは「やっぱりなぁ……」というどうしようもなくネガティブな気持ち。この感情を払拭するには、やはり4月に決定したソロ来日公演に行くしかないよな……ということで、発表された直後にチケットを確保したのでした。

武道館でAEROSMITH。正確にはエアロではなくスティーヴンのソロなんだけど、武道館で彼のパフォーマンスを観るのは、おそらく1994年の『GET A GRIP TOUR』以来。あのときは武道館で10公演近くやったり、横浜アリーナでもやったりと、本当に大成功ツアーだったよね。ちょうど春先だったんじゃなかったっけ? 僕も武道館に3回くらい足を運び、横浜アリーナにも行った記憶があるなぁ。

あいにくの雨の中、近場で18:40まで取材をしており、正直「ああ、オープニングには間に合わないなぁ……」と思っていたら、開演が20分近く遅れてくれたことで、余裕を持って席に着くことができました。1階席南東A列。限りなく南(真正面)寄りの最前列。最高じゃないですか。ブルースやカントリーに混ざりジョニー・キャッシュ「One」(U2のカバー)が流れた……と思ったら会場暗転。スクリーンにはスティーヴンのインタビュー映像などが映され、気付いたらステージ上にはバンドメンバーの姿が。そして、これまで何万回と聴いてきたあのベースのフレーズが……そう、1曲目はエアロの「Sweet Emotion」。ギター2人、リズム隊(ともに女性)という、バンジョー、そしてギターやハーモニカ、ピアノなどをプレイするマルチプレイヤー(女性)からなるTHE LOVING MARY BANDを携えたタイラー翁(あえてこう呼びたい)は、どこからどう見ても僕らがよく知ってる、あの“AEROSMITHのスティーヴン・タイラー”そのものでした。

さて、ここからはざっくばらんに感想を書いていきます。

僕が観たものは思ってた以上に、完全にAEROSMITHでした。正確には「AEROSMITHっぽい」、もっと正確に言うなら「タイラー翁が有能な若手ミュージシャンたちと、AEROSMITHの名曲たち(比較的ソフト路線)を愛でながら、時々ビートルズやらジャニスやらツェッペリンをカバーして、その合間にカントリー調のオリジナル曲を申し訳程度に演奏する宴」(やたら長い)という内容。そりゃあ悪い訳がない。当初思っていた以上に良かったし楽しかったです。

“AEROSMITHの名曲たち(比較的ソフト路線)”ということで、カバーされたのは80年代後半〜90年代の「売れ線ヒットシングル連発」期の楽曲ばかり。それが良い悪いではなく、ソロアルバムでやろうとしていることにもっとも近かった。だからこのセレクトは間違いないわけです。そこに「Sweet Emotion」と「Walk This Way」が入ることで、ライブにメリハリをつける。なんなら「Train Kept A Rollin'」もあるし、どうせカバーやるならツェッペリンもやっちゃおう!ってことで、「Walk This Way」からメドレー的に「Whole Lotta Love」までやっちゃう(しかもそれでライブを締めくくる)。タイラー翁が心のそこから楽しもうと思って、このツアーを計画したことがなんとなく理解できました。

バンドメンバーも素晴らしかった。6人中半分、しかもリズム隊が女性っていうのも良かったし、コーラス(主にベーシストとマルチプレイヤーの女性2人)もコーラスの域を超えたうまさ。で、タイラー翁がちゃんと彼女たちの見せ場を作ってあげたのも良かったと思う。

タイラー翁の調子はまずまず。以前と比べれば声は比較的出てたほうだと思います。高音が出切らずに要所要所ごまかすパートもあったけど、決めるべき箇所でちゃんと決めてたからしっかり歌えているように見えた(聞こえた)し、特に大きな問題なし。なにより現在69歳なのにここまでフロントマン然としたじいちゃん、数える程しかいないよね。圧巻です。

セトリは多分大阪とあまり変わらないのでは。序盤、日本のみでリリースされたソロ曲「Love Lives」(キムタク版ヤマトの主題歌)に客が無反応だったのには苦笑い。あと、エアロでもやってたことがある「Home Tonight」〜「Dream On」のメドレーはズルいし、ツェッペリン「Whole Lotta Love」の完コピは微笑ましかった。完コピといえば、バンドメンバーのエアロナンバーのコピー具合も目から鱗。散々聴き飽きた楽曲も、この編成で聴くのは悪くなかったよ。というか、愛が感じられましたし。と同時に、自分が思ってる以上に自分は今AEROSMITHのことを求めているんだと実感できた一夜でした。別にこのライブを観て「やっぱりスティーヴンの隣にはジョー・ペリーがいなくちゃ!」とか文句を言いたいわけじゃなくて、これはこれとして理屈抜きで楽しめました。

1時間45分くらいと、AEROSMITHの通常公演と比べたら若干短いけど、この程よさが今回はちょうど良かったと思います。これでソロアルバムを枚数重ねていったらソロ曲が増えて、ライブ自体が長くなりそうですしね。


[SETLIST]
01. Sweet Emotion [AEROSMITH]
02. Cryin' [AEROSMITH]
03. I'm Down / Oh! Darling [THE BEATLES]
04. Come Together [THE BEATLES]
05. Love Lives
06. Jaded
07. Love Is Your Name
08. I Make My Own Sunshine
09. Mercedes Benz [JANIS JOPLIN] / Piece Of My Heart [ERMA FRANKLIN]
10. Livin' On The Edge [AEROSMITH]
11. We're All Somebody From Somewhere
12. What It Takes [AEROSMITH]
13. My Own Worst Enemy
14. Home Tonight / Dream On [AEROSMITH]
15. Train Kept A Rollin' [TINY BRADSHAW / AEROSMITH]
--ENCORE--
16. Janie's Got A Gun [AEROSMITH]
17. Only Heaven
18. Walk This Way [AEROSMITH] / Whole Lotta Love [LED ZEPPELIN]



▼STEVEN TYLER『WE'RE ALL SOMEBODY FROM SOMEWHERE』
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投稿: 2017 04 12 12:19 午前 [2017年のライブ, Aerosmith, Steven Tyler] | 固定リンク

MICHAEL MONROE『ANOTHER NIGHT IN THE SUN: LIVE IN HELSINKI』(2010)

2001年から始まった“再生”HANOI ROCKSが2009年に活動終了し、再びソロアーティストとして音楽活動を続けると思われていたフロントマンのマイケル・モンロー。しかし彼はあくまでバンドにこだわり、“MICHAEL MONROE”というバンドを組むことを決意するのです。あれですね、初期のアリス・クーパーがALICE COOPERという名前のバンドとして活動していたのと一緒で。MARILYN MANSONもある意味一緒だし。

2010年1月、マイケルのもとに集まったのは“再生”HANOI ROCKSには未参加だった旧友のサミ・ヤッファ(B)、THE WiLDHEARTSのシンガーとしてもお馴染みのジンジャー(G)、DANZIGへの在籍経験を持つトッド・ユース(G)、そしてDEMOLITION 23.のメンバーだったジミー・クラーク(Dr)という布陣。しかしリハーサル段階でジミーが脱退し、代わりにカール・ロックフィスト(Dr)が加入。続いて、そのカールを推薦したトッドもバンドを離れ、ある者には再結成したNEW YORK DOLLSのギタリストとして、またある者には菅野よう子とのコラボレーターとして知られるスティーヴ・コンテ(G)が加わり、第1期MICHAEL MONROEの布陣が完成します。

この第1期メンバーで制作したのが、今回紹介するライブアルバム『ANOTHER NIGHT IN THE SUN: LIVE IN HELSINKI』。本作は2010年6月7日にフィンランド・ヘルシンキのクラブでライブレコーディングされたもので、内容はHANOI ROCKSからソロ、DEMOLITION 23.とマイケルのキャリアを総括するオリジナルナンバーのほか、ジョニー・サンダースやTHE DAMNED、THE STOOGES、DEAD BOYSなどマイケルのルーツとして重要なバンドのカバー曲、そして新バンドMICHAEL MONROEとして制作中の新曲2曲を含む、“過去・現在・未来”をつなぐ豪華なセットリストとなっています。

個人的にはHANOI ROCKSと同じくらいTHE WiLDHEARTSのファンでもあるので、あのジンジャーがHANOI ROCKSの名曲たちをプレイするというだけで生唾モノ。楽曲は新曲含め、どれも“いかにもマイケル”といったものばかりなので、悪いわけがない。演奏も名うてのプレイヤーが揃っているので、タイトでカッコいい。“再生”HANOI ROCKS終了から間髪入れずに動いたことも功を奏し、マイケルの状態もベストに近いものと言えます。

まぁ本作は、翌2011年春にリリースされる1stスタジオアルバムへの前哨戦として録音されたもので、ここ日本では2010年8月の『SUMMER SONIC 10』に出演したことから、興奮冷めやらぬうちに出しておこうということで同年9月に先行リリースされたのでした(海外では10月発売)。そこから半年足らずで真の1stアルバム『SENSORY OVERDRIVE』が届けられるわけで、ファンの熱量を保つという意味でもこのライブアルバムは重要であり、“再生”HANOI ROCKSを終えて改めてマイケル・モンローというシンガーのキャリアを振り返るという意味でも非常に意味のある作品なのです。

それと「You're Next」と「Motorheaded For A Fall」と題された、『SENSORY OVERDRIVE』の片鱗を感じさせる新曲2曲の存在も重要です。「You're Next」はDEMOLITION 23.をよりタイトにさせたスタイルのロックンロールで、「Motorheaded For A Fall」はその名のとおりどこかMOTORHEADを彷彿とさせる疾走ナンバー。マイケルがMICHAEL MONROEで何をやろうとしてるのか、この2曲からも存分に伝わるはずです。ちなみに前者は『SENSORY OVERDRIVE』海外盤のボーナストラックとして、後者は「Debauchery As A Fine Art」と改名され、さらにかのレミー(MOTORHEAD)をフィーチャーした形で『SENSORY OVERDRIVE』に正式収録されています。



▼MICHAEL MONROE『ANOTHER NIGHT IN THE SUN: LIVE IN HELSINKI』
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投稿: 2017 04 12 12:00 午前 [2010年の作品, Demolition 23., Ginger Wildheart, Hanoi Rocks, Michael Monroe] | 固定リンク

2017/04/11

DEMOLITION 23.『DEMOLITION 23.』(1994)

HANOI ROCKS以来のパーマネントなバンドとなるはずだったJERUSALEM SLIMが短期間で、しかもアルバム完成を待たずして空中分解してしまったマイケル・モンロー。傷心のまま再びソロに戻るのかと思いきや、懲りずに新たなバンドを結成します。

マイケル以外のメンバーは、JERUSALEM SLIMから引き続きサミ・ヤッファ(B)、元STAR STARのジェイ・ヘニング(G)、そしてジミー・クラーク(Dr)という布陣。もともとはニューヨークのクラブで演奏していたカバーバンドがベースになっており、それがそのままDEMOLITION 23.という名前のパーマネントなバンドへと進化していきます。そして1994年6月、日本先行リリースという形で“最初で最後の”アルバム『DEMOLITION 23.』が発表されました。

JERUSALEM SLIMではかっちり作り込まれたLAメタル的サウンドが特徴でしたが、DEMOLITION 23.ではマイケルのルーツであるパンクロックに再びフォーカスを当てています。サウンドも生々しくてルーズなものばかり、楽曲も非常にシンプルでわかりやすさ重視といった印象。『NOT FAKIN' IT』にも参加していたリトル・スティーヴンスもプロデュース&曲作りに加わっていることから、『NOT FAKIN' IT』をよりラフにした作風、といえばわかりやすいかもしれませんね。

また、カバー曲も「Ain't Nothin' To Do」(DEAD BOYS)、「I Wanna Be Loved」(ジョニー・サンダース)、「Endangered Species」(UK SUBS)と、バンドとしてのコンセプトが非常にわかりやすいものばかり。さらにJERUSALEM SLIM時代に制作された「The Scum Lives On」も、DEMOLITION 23.の手にかかるとSEX PISTOLS的なカラーへと一変しています。

1本筋の通った男気溢れるアルバムだけど、“これ!”といったキメの1曲がないのもまた事実。それもあってか、全体的にB級感が漂っており、初めてこのアルバムを聴いたときは「もう表舞台に舞い戻るのは無理かも……」とちょっとだけガッカリしたものです。決して悪くはないんだけど、ベストでもない。この作風自体が、当時のマイケルの心情を表しているようで、なんとも言えない気持ちになります。

ちなみにDEMOLITION 23.にはその後、ジェイ・ヘニングに代わり元HANOI ROCKSのナスティ・スーサイドが加わるのですが、程なくして脱退。これによりバンドも短命で終わることになり、さらに傷心のマイケルは10年近く住んだニューヨークを離れ、故郷のフィンランドへ戻ることを決意するのでした。



▼DEMOLITION 23.『DEMOLITION 23.』
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投稿: 2017 04 11 12:00 午前 [1994年の作品, Demolition 23., Hanoi Rocks, Michael Monroe] | 固定リンク

2017/04/10

JERUSALEM SLIM『JERUSALEM SLIM』(1992)

2ndソロアルバム『NOT FAKIN' IT』がそれなりの成功を収め、またHANOI ROCKSフォロワーたちのおかげでその名をより広めることができたマイケル・モンロー。しかし、アルバムは成功したものの、バンド時代に得た充足感を当時のソロバンドメンバーから得ることができず、『NOT FAKIN' IT』に伴うバンドは解体。きっとソロツアーでナスティ・スーサイドと共演したことで、改めて自分の隣にはアクの強いギタリストが必要なんだと気付かされたんでしょうね。

さて、そんなマイケルが新たなパートナーとして白羽の矢を立てたのが、当時ビリー・アイドルのもとを離れてATOMIC PLAYBOYSとして活動していたギタリスト、スティーヴ・スティーヴンスでした。いやいや、アク強すぎだろ!?とツッコミを入れたくなったのは、ここだけの話です。

その頃からすでに「JERUSALEM SLIM」というプロジェクト名は挙がっており、これがそのまま新バンド名へと移行していきます。バンドのメンバーはマイケル、スティーヴのほか、HANOI ROCKS時代の盟友サミ・ヤッファ(B)、元SHARK ISLANDのグレッグ・エリス(Dr)。マイケル&サミはよいとして、それ以外の2人は完全にLA流れだよなぁ、合うのかなぁ……でも怖いもの見たさで、音も聴きたいしライブも観たいし。

確か1992年春発売の音楽誌『BURRN!』の表紙&巻頭インタビューをマイケル&スティーヴが飾り、いかに2人のケミストリーが素晴らしいものか、やっぱり俺には個性の強いギタリストが必要だったんだ的なことをマイケルが嬉しそうに話していた記憶があります。この時点で『ATTITUDE ADJUSTMENT』と題されたアルバムは完成間近、おそらく初夏にはリリースされるんだろうなと思っていました。

が、その後はご存知のとおり。スティーヴはマイケルのもとを離れ、HANOI ROCKS解散のきっかけを作ったヴィンス・ニール(当時は元MOTLEY CRUE)のソロバンドへと加わるのです。悪夢再び。マイケルは相当なショックを受け、最終的にJERUSALEM SLIMはアルバムの完成を待たずして正式に解散することとなるのです。

ところが、1992年10月に決定したマイケルの来日ツアー。おそらくこれ、当初はJERUSALEM SLIMのアルバムツアーとして計画されていたものだったと思うんです。しかしバンドはすでにない、アルバムもできてない。来日はするけどプロモーションするアイテムも何もない。じゃあ……ってことで、同時期に日本限定で発表されたのが、今回紹介するJERUSALEM SLIM唯一の音源であるアルバム『JERUSALEM SLIM』なのです。

プロデューサーに当時SKID ROWなどで知られていたマイケル・ワグナーを迎え制作された本作。こうやって聴くとほぼ完成してるじゃん!と不思議に感じるのですが、全11曲中正式なスタジオ音源は9曲、残り2曲は本編収録曲のデモトラックということで、おそらくはもう1〜2曲制作していたのかな、それらが完成する前にスティーヴがトンズラしちゃったのかな、なんて思うわけですよ。まぁ9曲でも十分に通用する内容だと思いますけどね。

マイケルにとっての前作『NOT FAKIN' IT』が“NYバージョン”だとすると、本作『JERUSALEM SLIM』は楽曲、演奏、アレンジ、質感すべてが“LAバージョン”と呼ぶにふさわしい内容。そしてバンドの作品、マイケルのアルバムというよりも“スティーヴ・スティーヴンスのアルバム”という印象も強い。もちろん大半の楽曲をスティーヴが手がけていたことも大きいけど、ここまでアクの強いギタープレイが全面的に押し出されているせいで、マイケルの印象が非常に薄いのです。ボーカルvsギターの対決に、完全に飲まれてしまっている。分が悪すぎるよさすがに。

「Criminal Instinct」みたいにダークな曲、「Gotta Get A Hold」「World Is Watching」みたいな泣きの曲はマイケルにも合ってる。けど、一番マイケルらしい楽曲が、実は「Teenage Nervous Breakdown」(LITTLE FEATのカバー)というのも納得というか悲しいというか……。

あと、アルバム前半はスティーヴ色濃厚、6曲目「Lethal Underground」以降はマイケル色強めという構成も興味深いかな。偶然そうなったのかもしれないけど、個人的には後半4曲が特にお気に入りです。中でも、KING CRIMSON「Epitaph」を彷彿とさせるラストナンバー「World Is Watching」は、スティーヴ相手じゃなければ間違いなく生まれていなかった1曲。ライブでは披露されることはないだろうけど、これを聴くことができただけでも、このマイケル的には不本意なリリースも意味があったんじゃないかな。

ちなみに本作、数年後には海外でもリリース済み。その際には日本盤未収録の「Scum Lives On」(のちに結成するパンクバンド、DEMOLITION 23.で再録音される「The Scum Lives On」の原曲。JERUSALEM SLIM版はどこかTHE WHOっぽさも感じられたり)が追加収録されています。やっぱり9曲で完成ではなかったのですね。

今では完全になかったことにされているJERUSALEM SLIM。マイケルとスティーヴの和解なんて考えられないし、今のマイケルを見ていたらJERUSALEM SLIMでやってたことを今再びやるなんて想像もつかないけど……本当に、一度だけでも観てみたかったです。



▼JERUSALEM SLIM『JERUSALEM SLIM』
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投稿: 2017 04 10 12:00 午前 [1992年の作品, Jerusalem Slim, Michael Monroe, Steve Stevens] | 固定リンク

2017/04/09

MICHAEL MONROE『NOT FAKIN' IT』(1989)

1984年12月にラズル(Dr)が交通事故死したことで、翌1985年に解散したHANOI ROCKS。そのフロントマンであるマイケル・モンローは拠点をニューヨークに移し、1987年に初のソロアルバム『NIGHTS ARE SO LONG』をリリースします。同作は全10曲中7曲がカバーおよびマイケル以外のソングライターが書いたもので、“HANOI ROCKSよ再び”という思いで接したリスナーにとってはインパクトの弱い作品でした。演奏もHANOI ROCKS最終作の『TWO STEPS FROM THE MOVE』で聴けたタイトなものとは異なる、非常にユルいものでしたしね。

そこから2年後の1989年9月、マイケルは2ndソロアルバム『NOT FAKIN' IT』をメジャーレーベルのMercury Recordsから発表します。同作ではソングライティングのパートナーとして、ブルース・スプリングスティーンのE STREET BANDの一員として知られるリトル・スティーヴンスを迎え制作。さらにHANOI ROCKS時代の盟友ナスティ・スーサイド(G)も曲作りのみならずレコーディングにも参加。前作『NIGHTS ARE SO LONG』にも参加していたイアン・ハンター(Piano)やフィル・グランデ(G)といった面々や、ジミー・リップ(G)、アントン・フィグ(Dr)、トミー・プライス(Dr)、ジョン・リーガン(B)、ケニー・アーロンソン(B)などロックファン、ハードロックファンなら一度は耳にしたことがある名プレイヤーたちがタイトな演奏を聴かせてくれます。

楽曲自体も全10曲中カバーを2曲に抑え、1曲のみリトル・スティーヴン書き下ろし、他7曲はマイケルを中心に書き下ろされたオリジナル曲となっています。初めて聴いたとき、オープニングの「Dead, Jail Or Rock 'n' Roll」からマイケルの鬼気迫るシャウト&ボーカルに圧倒されたのを覚えています。HANOI ROCKSの幻影を追っていた人たちにとっては、ここで聴ける隙の一切ないロックンロールは求めるものとは異なるサウンドだったかもしれません。

しかし、マイケルがタフでセクシーな歌声を存分に響き渡らせた本作を嫌いになれる人がどれだけいるんでしょうか。HANOI ROCKSではないけど、否定のしようがない、いや、否定という言葉をねじ伏せてしまうほどの力強さと説得力を持ったロックンロールアルバムを前にしたら、そんなことどうでもよくなってしまうはずです。

LAではなくNYに移り住んだことが功を奏した人選&サウンドは、当時最盛期を過ぎようとしていたLAメタルとは異なる、新鮮な魅力満載でした。男臭さという点においては、LAから登場したGUNS N' ROSESのそれとはまた違っていたところも興味深かったし、ポップでキャッチーな「Man With No Eyes」もあれば、男の哀愁や物悲しさを漂わせる「Smoke Screen」みたいな曲もあり、このへんに少なからずHANOI ROCKSの片鱗を感じて涙した人もいたはず。そう、マイケルはしっかりとHANOI ROCKSを抱えたまま前進し続けていたのですよ。表面だけを見て判断したり偏見さえ捨てれば、芯にある精神は何も変わっていないことに気づくはずなのに……。

そういえば、当時からHANOI ROCKSからの影響を公言していたGUNS N' ROSESの面々が、マイケル再生に一役買ったのも思い出深い話。「Dead, Jail Or Rock 'n' Roll」のMV収録ライブにはアクセル・ローズもゲスト参加したし、その後のライブではスラッシュもゲスト出演しています。また、ガンズのプライベートレーベル、UZI SuicideからHANOI ROCKSのアルバムを再発したりと、マイケル界隈が少しずつ賑やかになっていったのでした。

また、ここ日本でも本作はヒットを記録。同年末に東京ドームで行われたカウントダウンイベントでは、のちに新バンドを結成することになるスティーヴ・スティーヴンス率いるATOMIC PLAYBOYSのキャンセルに伴い、マイケルが急遽出演。翌年春にはツアーで再来日を果たし、その際にはナスティが飛び入り出演してHANOI ROCKSナンバーで共演した記憶があります。これを機に、さらに世界的ブレイクを果たしてくれる、と確信していたのですが……事実は小説よりも奇なり、とはよく言ったものですね(続く)。



▼MICHAEL MONROE『NOT FAKIN' IT』
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投稿: 2017 04 09 12:00 午前 [1989年の作品, Michael Monroe] | 固定リンク

2017/04/08

HANOI ROCKS『TWO STEPS FROM THE MOVE』(1984)

HANOI ROCKSが1984年にリリースした、通算4作目のオリジナルアルバムにしてメジャーデビュー作(1983年発売のコンピレーションアルバム『SELF DESTRUCTION BLUES』を含めれば、通算5枚目のスタジオアルバム)。前作『BACK TO MYSTERY CITY』(1983年)まではフィンランドのレーベルからのリリースですが、今作からはCBS(現在のソニー)とワールドワイド契約を結んだことで、いよいよ本国やイギリス、日本以外(主にアメリカですね、この場合)に殴り込み……というタイミングに制作された力作でした。

プロデューサーにはアリス・クーパーやKISS、PINK FLOYDなどで知られるボブ・エズリンを迎え、ニューヨークにてレコーディング。かといってサウンド自体はアメリカナイズされたわけではなく、これまでの彼らの魅力(不思議なメロディ感覚やパンキッシュで前のめりなサウンド)はそのままに、サウンドをより洗練させた印象が強いかな。軽くて軽薄さすら感じられたそれまでの質感と比べたら、今作で聴ける音は太くて重心がより低くなったような気がします。

オープニングを飾るCCRのカバー「Up Around The Bend」にしろ、以前のHANOI ROCKSだったらもっと軽くてサラッと流していたこういうタイプのロックンロールも、タフでパワフルさが加わっている。そこからパンキッシュなアップチューン「High School」へと続き、HANOI ROCKSらしさに満ち溢れた妖艶な「I Can't Get It」「Underwater World」へと続く。1stアルバム『BANGKOK SHOCKS, SAIGON SHAKES, HANOI ROCKS』収録のポップチューン「Don't Never Leave Me」をリメイクした「Don't You Ever Leave Me」は、構成を若干変えてテンポを落としたことで、より親しみやすいバラードへと生まれ変わっている。

アナログ盤でいうB面にあたる6曲目「Million Miles Away」は泣きのバラード長なんだけど、後半でラテン風アレンジに展開していく流れにこのバンドならではの毒を感じるし、単に明るくなりきれない「Boulevard Of Broken Dreams」も魅力的。パブロック風なユルさが前作までの彼ららしい「Boiler (Me Boiler 'n' Me)」、NEW YORK DOLLSにも通ずるグラマラスなアップチューン「Futurama」、そしてワイルドさ全開の「Cutting Corners」で締めくくり……全10曲、約41分があっという間に流れていく1枚です。聴きやすさは過去イチだけど強いクセ、毒、フックなどもしっかり散りばめられている。そういう意味では80年代前半のHANOI ROCKSの集大成であり、ここから何かが始まることを予感させる1枚でもあるように思えます。

が、しかし。ご存知のとおり本作リリースから数ヶ月後にヴィンス・ニール(MOTLEY CRUE)が起こした自動車事故により、同乗していたラズル(Dr)が死亡。HANOI ROCKSは世界的成功を目前に空中分解してしまいます。とはいえ、あの当時はそこから約20年後にマイケル・モンロー(Vo, Sax)とアンディ・マッコイ(G)を中心とした“再生HANOI ROCKS”が活動することになるとは思いもしなかったなぁ……リアルタイムで80年代のHANOI ROCKSを体験できなかった身としては、非常にありがたかったですが。



▼HANOI ROCKS『TWO STEPS FROM THE MOVE』
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投稿: 2017 04 08 12:00 午前 [1984年の作品, Hanoi Rocks] | 固定リンク

2017/04/07

AEROSMITH『DRAW THE LINE』(1977)

前作『ROCKS』(1976年)は、その前の『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)が持つ全米11位を超える、全米3位という過去最高位を記録。この数字は1993年の『GET THE GRIP』が1位を獲得するまで破られることはありませんでした。それくらい強烈なインパクトを残し、“AEROSMITHここにあり”と高らかに宣言したのが『ROCKS』だったわけです。

がしかし。前回のレビュー終盤にも書きましたが、この頃になるとバンドは手にした大金をすべてドラッグに変換し、快楽に溺れていきます。いや、快楽に溺れるというよりも現実逃避すると言ったほうが正しいのかもしれません。バンドとしても、そしてひとりの人間としても『ROCKS』という作品で臨界点を迎え、そこを超えた先には何があるのか……この5枚目のオリジナルアルバム『DRAW THE LINE』からはその“片鱗”を垣間見ることができます。

バンドと盟友ジャック・ダグラスでプロデュースされた本作は、ニューヨーク近辺にある廃修道院で録音されたもの。いわゆるナチュラルエコーを多用したサウンドは、前作『ROCKS』で聞けた密度の高いヘヴィロックとも異なるものに仕上げられています。また楽曲自体も2nd『GET YOUR WINGS』(1974年)と3rd『TOYS IN THE ATTIC』の中間に位置する、シンプルなアレンジでロック&ブルースをストレートに表現したものが大半を占めます。

アルバムのオープニングを飾るタイトルトラック「Draw The Line」はオープンチューニングによるスライドギターが登場しますが、メインリフは6弦ベースで弾かれた(と思われる)太いサウンドで表現。ドラッグ漬けで人間としては最悪の状況だったにも関わらず、いや、そんな状況だったからこそ表現できたギリギリ感なのかもしれません。この危うさもまた“ロックそのもの”なんですよね。

ただ、その後は決してベストとは言い難い楽曲もちらほら登場します。初めてジョー・ペリーがリードボーカルを務めた「Bright Light Fright」や、バンドとしての新たな可能性を感じさせるドラマチックな「Kings And Queens」といった聴きどころもあるにはありますが、全体的にはあまりパッとしない内容というのが正直な感想。確かに「Critical Mass」も「Get It Up」も「Sight For Sore Eyes」も悪くないけど、前作までにあったキャッチーさは薄まっている。悪くいえば地味なんですよね。しかもラストはロバート・ジョンソンやエルヴィス・プレスリーで知られるブルーススタンダードのカバー「Milk Cow Blues」で締めくくり。この選曲も地味だし、ノッてるバンドならではのナイスなカバーとは言い難い。本当にどこまでも中途半端な1枚なんですよね。

だけど、聴き始めると不思議と最後まで通して聴いてしまう。そんな不思議な魅力があるのも、本作の面白いところ。きっとその魅力って……悲しいけど、“バンドが、いや人間が臨界点を超えたときにどうなるのか”を端的に表しているからなんでしょうね。そのすべてが、『DRAW THE LINE』というタイトル(「一線を引く」「境界を定める」「けじめをつける」以外にも、「コカインで線を引いてそれを吸う」という意味がある)に集約されているんだから、驚きを超えて怖さすら感じます。



▼AEROSMITH『DRAW THE LINE』
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投稿: 2017 04 07 12:00 午前 [1977年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2017/04/06

AEROSMITH『ROCKS』(1976)

『TOYS IN THE ATTIC』(1975年)が全米11位まで上昇するヒット作となり、一流バンドの仲間入りを果たしたAEROSMITH。彼らは精力的なツアーへ経て、前作から1年で続く4thアルバム『ROCKS』を1976年5月にリリースします。

プロデュースは前作、前々作から引き続きジャック・ダグラスが担当。サイケながらも音の太い2nd『GET YOUR WINGS』(1974年)、楽曲の幅が一気に広がったキャッチーな3rd『TOYS IN THE ATTIC』を経てバンドが向かった先は、なんと“純度の高いヘヴィロック”。1音1音のヘヴィさは『GET YOUR WINGS』とは質感が異なり、今作のほうがより音の密度が高い印象を受けます。それはより大きな音で今作を聴いたときに、よりご理解いただけるのではないかと。ぜひ一度、ヘッドフォンではなくスピーカーを通して、爆音で聴き比べてみてください。本当に違うので。

オープニングを飾る「Back In The Saddle」の不穏なイントロ、その空気を切り裂くかのように響き渡るスティーヴン・タイラーのシャウト、あえて6弦ベースを使ってヘヴィさを表現したジョー・ペリーのプレイ、どれもが過去3作とは異なる気迫を感じさせます。続く「Last Child」はイントロでこそバラードかと思わせておいて、すぐに引きずるようなファンク&ヘヴィなロックへと一変。そこから間髪入れずに攻撃的なファストチューン「Rats In The Cellar」へと続きます。この曲も同じアップテンポなのに、前作における「Toys In The Attic」とはまったく異なる輝きを見せます。「Toys〜」がキラキラ輝く宝石だとしたら、「Rats〜」は鈍い光を放つ鉱石……というのは言い過ぎでしょうか。

もちろんその後も「Combination」「Sick As A Dog」といったラフでルーズなロックンロール、ヘヴィメタルと呼んでも差し支えのない「Nobody's Fault」、ハネ気味のリズムが心地よい元祖ファンクメタル「Get The Lead Out」、軽快かつストレートなロックチューン「Lick And A Promise」、エモーショナルなピアノバラード「Home Tonight」と名曲目白押し。前作とはカラーは異なるものの、今作も捨て曲なしのロックアルバムと断言できます。

地を這うようなリズム隊と、鋭いソロプレイを聴かせるジョー・ペリー&ブラッド・ウィットフォードのギタリストチーム、そこに激しいシャウトを乗せていくスティーヴン・タイラー。まさにここがAEROSMITHの臨界点と言わんばかりに、目が離せないほどの眩い光と危うさが同居しているのが、この『ROCKS』という傑作の魅力ではないでしょうか。“ロックってアブナイものなんだよ”というのを体現した、70年代を代表する1枚です。事実、この時期からメンバーはドラッグまみれだったようですしね……。



▼AEROSMITH『ROCKS』
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投稿: 2017 04 06 12:00 午前 [1976年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2017/04/05

AEROSMITH『TOYS IN THE ATTIC』(1975)

Geffen Records移籍以降の全スタジオ作品は紹介しておきながら、70年代のアルバムは2nd『GET YOUR WINGS』(1974年)止まりだったことに改めて気づいた今日この頃。スティーヴン・タイラーのソロ来日公演も近づいておりますし、ここらでひとつAEROSMITHの全アルバムレビューを完成させたほうがいいのではないかという気がしております。

ということで、手始めに1975年の出世作『TOYS IN THE ATTIC』から取り上げていきましょう。本作はAEROSMITH通算3作目のオリジナルアルバムで、「Sweet Emotion」(全米36位)、「Walk This Way」(全米10位)というヒットシングルを生み出しています。また、本作のヒットに導かれるように、1stアルバムからのシングル「Dream On」も再発されて全米6位というヒット曲になりました。

ミディアムテンポのヘヴィでサイケなロックンロールが中心だった前作『GET YOUR WINGS』から一変、本作では非常に軽やかかつハードなロックンロールを聞かせてくれます。オープニングのアップチューン「Toys In The Attic」の時点で、その違いは一聴瞭然。続く「Uncle Salty」は前作の流れにあるサイケデリックな香りのするロックナンバーですが、前作までとは違って“もったり”感が消え、より軽やかさが増している。それは3曲目「Adam's Apple」にも言えることで、この2曲は前作に入っていても不思議じゃないのにどこか違う次元に思えてしまう。プロデューサーも前作から引き続きジャック・ダグラスが務めているのに、どこか違って聞こえるのだから不思議なものです。

そして、本作がこれまでとは大きく違っていることを決定付けるのが「Walk This Way」「Sweet Emotion」、さらに「You See Me Crying」といった楽曲群です。「Walk This Way」でのファンキーなプレイ&サウンドは、のちのエアロにとって重要な要素になり、80年代にはヒップホップとの邂逅へと導く礎となります。「Sweet Emotion」でのサイケデリックな味付けは前作とはまた違ったものがあり、サイケさの中にも重心の低いゴリゴリしたサウンドが存在しており、バンドの体質がここまで変化したかと驚かされます。さらに「You See Me Crying」のような美しいピアノバラードが加わったことは、このバンドの楽曲の幅を一気に広げていくひとつのきっかけになるわけです。とはいえ、この曲を作った頃にはその20数年後に他人が書いたバラードで全米1位を獲得するとは、夢にも思ってないでしょうけどね。

この他にも軽快なブギー「Big Ten Inch Records」、イントロのアルペジオが印象的なポップロック「No More No More」、次作への片鱗を感じさせるヘヴィな「Round And Round」と楽曲のバラエティさが一気に加速していることが伺えます。完全に確変したことが伺えるし、そりゃヒットするわなと思わずにはいられない傑作。ここからエアロにとって最初の快進撃がスタートするわけです。



▼AEROSMITH『TOYS IN THE ATTIC』
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投稿: 2017 04 05 12:00 午前 [1975年の作品, Aerosmith] | 固定リンク

2017/04/04

VAN HALEN『A DIFFERENT KIND OF TRUTH』(2012)

(前回のデヴィッド・リー・ロス『EAT 'EM AND SMILE』からの続き)で、その後デイヴとVAN HALENは一度、レコーディングで再集結を果たします。それが1996年に発表したベストアルバム『BEST OF –VOLUME 1』収録の新曲「Me Wise Magic」と「Can't Get This Stuff No More」でのこと。本来なら本格的な再結成になるはずが、結局ソリが合わずに再分裂。結局デイヴが本格的にバンドに復帰するのは、それからさらに10年後の2007年のことでした。ただし、その頃にはオリジナルベーシスト、マイケル・アンソニーの姿はなく、代わりにエディ・ヴァン・ヘイレンの息子ウルフギャング・ヴァン・ヘイレンがベーシストの座に。オリジナル編成のようで新編成のVAN HALENはツアーを中心に活動を続けていきます。

そこからさらに5年を経て、ついに完成したのが今回紹介するアルバム『A DIFFERENT KIND OF TRUTH』。オリジナル作品としては、ゲイリー・シェローン(EXTREME)が参加した1998年の11thアルバム『VAN HALEN III』以来14年ぶり、デイヴ参加アルバムとなると1984年の『1984』以来28年ぶりとなります。時空が歪むね。

『VAN HALEN III』がVAN HALENとしては並の出来だったこと、その前のオリジナルアルバムはサミー・ヘイガー時代だったことを考えると、デイヴ時代を再現したかのような今作をリリース当時聴いたときは非常に新鮮な内容だなと思った記憶があります。オープニングの「Tattoo」はシンセこそ取り入れているものの、そのメロディやコーラスワーク、楽曲のスタイルは初期VAN HALENそのもの。続く「She's The Woman」も80年代前半までのVAN HALENを踏襲した作風だと言えますし、ちゃんと初期を彷彿とさせるファストチューン「China Town」や「Bullethead」「As Is」もある。マイケル・アンソニーがいないのに、それっぽいコーラスが聞こえるのは非常に不思議というか違和感が残りますが……。

正直、サミー・ヘイガーの加入によりその音楽性に幅が加わったVAN HALENが再びデイヴと組むことで、その音楽性の幅が再び狭まるのではないかと不安視していたのですが……確かに初期VAN HALENサウンドに回帰したそのスタイルは一本芯の通ったものですが、そこまで“幅が狭い”とは感じなかったのも事実。カラフルさよりも原色、あるいはモノトーンの強みとでも言いましょうか、そういう強い個性が感じられる1枚に仕上がっていると思います。実際、各曲のメロディも非常にしっかりしていて、かなりキャッチーですし、それを歌うデイヴの歌も思っていた以上に器用だし。ぶっちゃけ文句のつけようがないのが事実です。

ただ、『5150』(1986年)から『BALANCE』(1995年)までの“VAN HAGER”期に慣れ親しんでしまった耳には、どこか物足りなさを感じてしまうのも正直なところ。これ、15年遅かったよな……と思ってしまうのです。待たされたわりに“当たり前の内容”だったから、余計にね。だからといって悪い内容ではなく、むしろ良作だと思っているので、だからより複雑な感情を抱いてしまう。そんな1枚なのです。

どうせなら、これに続くオリジナルアルバムをもう1枚作ってくれたら、きっと本作に対する印象も多少は変わるんじゃないかなと。現時点ではそういうポジションの、とてもかわいそうなアルバムがこの『A DIFFERENT KIND OF TRUTH』なのでした。



▼VAN HALEN『A DIFFERENT KIND OF TRUTH』
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投稿: 2017 04 04 12:00 午前 [2012年の作品, Van Halen] | 固定リンク

2017/04/03

DAVID LEE ROTH『EAT 'EM AND SMILE』(1986)

VAN HALENを脱退したデヴィッド・リー・ロスが1986年に発表した、ソロとして初のフルアルバム。バンド在籍中に発表された『CRAZY FROM THE HEAT』(1985年)は4曲入りのEPだったこと、そのすべてがカバー曲だったことから当時は“遊び”と解釈することができましたが、バンドを脱退した後の『EAT 'EM AND SMILE』ではいよいよ本領発揮……といわんばかりのフルスロットルぶりが楽しめます。

アルバムおよび当時のツアーに参加したメンツはスティーヴ・ヴァイ(G)、ビリー・シーン(B)、グレッグ・ビソネット(Dr)という錚々たる面々……というのは、当時は一部のメタルファンの間でのみ。今でこそヴァイもビリーもロックファンなら誰もが知っている名プレイヤーですが、実は2人ともデイヴとの共演により知名度をグンと上げたというのが事実なのです。

アルバムはエイドリアン・ブリュー並みに“しゃべる”ギタープレイを披露する「Yankee Rose」からスタート。ヴァイの縦横無尽に暴れまくるギタープレイと、そのギターをボトムで支えているようで実はフレーズが暴れまくっているベース、その上でひたすら“ダイヤモンド・デイヴ”を演じまくるデイヴ。もちろん的確なビートで土台を支えるグレッグのプレイも欠かせません。同曲は全米16位まで上昇するヒットシングルとなっています。

そして2曲目はビリーが過去に在籍したバンド、TALASの楽曲「Shyboy」のカバー(というかリメイク)。高速ビートの上で披露される、ギターとベースによる超絶ユニゾンプレイに誰もが感嘆のため息をついたはずです。このユニゾンプレイが、のちにビリーが結成するMR.BIGにつながっていくわけですから(しかもMR.BIGでも再びカバーされてるし)、その後のHR/HMシーンにとって非常な重要な1曲と言えるかもしれません。

そして、本作には先のソロEP同様に数々のオールディーズカバーが収録されています。「I'm Easy」「That's Life」といったラウンジミュージックの名曲、60年代のガレージロックナンバー「Tabacco Road」の3曲がそれで、「Shyboy」を含めたら計4曲がカバーというわけです。そこを物足りないと感じるか、原曲を知らないしオリジナルとして聴いてもなんら違和感ないしと感じるかは聴き手次第かなと。ちなみにリリース時中学生だった僕は当然カバーの原曲を知らなかったので、完全に後者でした。

テクニカルで派手なプレイを含みつつも、楽曲時代はポップでブルージーでソウルフル。これって結局、デイヴがVAN HALEN時代にやっていたことと一緒なんですよね。全10曲で30分強というランニングタイムも、初期VAN HALENと一緒。ただ、このバンドにはエディ・ヴァン・ヘイレンが2人いる(ヴァイとビリー)のが大きな違いだったと。この編成が復活することは今や不可能に近いけど(一度だけデイヴ抜きでライブをやったこと、ありましたっけ)、一度は生で観たかったなぁ。この編成での来日は結局実現しなかったしね。

策士デイヴはこのアルバムでVAN HALENというバンドのスタイルをソロでも再現させ、続く2ndアルバム『SKYSCRAPER』(1988年)では「俺にだって『Jump』は作れる」と言わんばかりにポップな「Just Like Paradise」を大ヒットさせる。この2作で彼のVAN HALENに対する復讐は(形としては)完結するわけです。

そういえば、上に貼り付けた「Yankee Rose」含め、当時のデイヴはMVも凝った作品が多かったなぁ。どれもコミカルで、人を食ったかのような内容ばかり。あ……それで『EAT 'EM AND SMILE』なのか!(違います)



▼DAVID LEE ROTH『EAT 'EM AND SMILE』
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投稿: 2017 04 03 12:00 午前 [1986年の作品, David Lee Roth] | 固定リンク

2017/04/02

PRETTY MAIDS『SIN-DECADE』(1992)

活動歴35年を超え、今や母国デンマークの人気HMバンドにまで上り詰めたPRETTY MAIDSが、1992年3月にリリースしたのが本作『SIN-DECADE』。僕は前作『JUMP THE GUN』からこのバンドの音に触れたのですが、DEEP PURPLEのロジャー・グローヴァーがプロデュースした同作は、疾走感あるファストチューン含め当時のパープル諸作品に通ずる“野暮ったさ”が感じられ、なんとなく素直に好きと言えない1枚だったことをよく覚えています。「Attention」とか男臭いバラード「Savage Heart」とか、良い曲も多かったんだけどね。

その後、ツインギター&キーボードを含む6人編成だったバンドからメンバーが次々に脱退。気づけばロニー・アトキンス(Vo)、ケン・ハマー(G)の2人だけになってしまい、そこにケン・ジャクソン(B)、マイケル・ファスト(Dr)が加入し、新たに4人編成でバンドを立て直して本作を完成させたわけです。

プロデューサーはMETALLICAの初期作品を手がけたフレミング・ラスムッセン。分厚いドラムビートから始まる「Running Out」を筆頭に、本作はパワフルなファストチューンとヘヴィなビートが気持ち良く響くミドルチューンをバランス良く配置した聴き応えのある1枚に仕上がっています。タイトルトラック「Sin-Decade」のドラマチックさも素晴らしいし、「Nightmare In The Neighbourhood」や「Come On Tough, Come On Nasty」のキャッチーさ、「Know It Ain't Easy」でのアコースティックギターを取り入れたアメリカンロック的な爽やかさなど、実は楽曲のバラエティ豊かさも絶妙で硬軟のバランスが非常に良いんですよね。そこにしっかり「Raise Your Flag」「In The Flesh」みたいな疾走パワーメタルチューンが加わることで、“メタルバンドのメタルアルバム”としてしっかり成立している。

そんなアルバムのラストを飾るのが、ジョン・サイクスが過去にヒットさせた楽曲「Please Don't Leave Me」のカバー。この仕上がりがまた最高でして……ここまでアルバムの締めくくりにふさわしい曲が他にあるのか?と問いただしたくなるくらい、完璧な選曲だと思います。また、原曲を知らない世代にもこの曲の素晴らしさをアピールすることに成功し、結果として当時BLUE MURDERとして活動していたジョン・サイクスも自身のライブでこの曲を取り上げ始めることになるわけです。

ただし、このカバーの成功がひとり歩きしてしまったのも事実。こんなにも硬派なアルバムを完成させ、かつ成功させたにも関わらず、「Please Don't Leave Me」のカバー1曲だけで片付けられることも多かったと記憶しています。事実、バンドはこのカバーのヒットにより、次作のミニアルバム『OFFSIDE』(1992年)、5thフルアルバム『STRIPPED』では「Please Don't Leave Me」のアコースティックカバーを制作することになってしまうのです(当時はアンプラグドブームでしたしね)。このへんはバンドの意思というよりも、二匹目のドジョウを狙ったレコード会社からの指示だったんでしょうね。

と、良くも悪くもバンドのその後を左右させてしまった、歴史にも記憶にも残る1枚。それがこの『SIN-DECADE』でした。内容は間違いなく最高なので、ぜひ一度聴いてみてほしいです。



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投稿: 2017 04 02 12:00 午前 [1992年の作品, Pretty Maids] | 固定リンク

2017/04/01

NIGHT RANGER『DON'T LET UP』(2017)

NIGHT RANGER通算11枚目(“MOON RANGER”呼ばわりの1995年発売『FEEDING OFF THE MOJO』を含めたら12枚目)のスタジオアルバム『DON'T LET UP』。2011年の『SOMEWHERE IN CALIFORNIA』、2014年の『HIGH ROAD』と同じラインナップ……ジャック・ブレイズ(Vo, B)、ケリー・ケイギー(Vo, Dr)、ブラッド・ギルス(G)、ジョエル・ホークストラ(G)、エリック・レヴィー(Key)の5人で制作し、やっとバンドとしても固まってきたかなという2014年夏、『HIGH ROAD』リリースからしばらくしてジョエルが脱退し、WHITESNAKEに加入というニュースが流れます。バンドは一時期ライブにサポートメンバーとして参加したケリ・ケリー(VINCE NEIL、RATT、WARRANT、L.A.GUNSなど)を加えてライブを続け、ケリはそのまま正式加入。前作から3年の歳月をかけ完成させたのが、本作『DON'T LET UP』となるわけです。

とはいえ、昨年にはケリを含む編成でのライブアルバム&映像作品『35 YEARS AND A NIGHT IN CHICAGO』もリリースされていたので、そちらに触れていた人にはこの編成の移行はすんなり行くものだったのかもしれません。僕もたまたま、今年に入ってからその映像作品を観る機会があり、最初こそ違和感があったものの、見終える頃には不思議とケリの存在に馴染んでしまっていたのをよく覚えています。

さて、気になる新作ですが……『SOMEWHERE IN CALIFORNIA』以降の流れを組む、“これぞNIGHT RANGER”な仕上がり。ハードドライヴィングなロックチューン「Somehow Someway」からスタートするところは、若干の落ち着きを見せた前作『HIGH ROAD』よりも期待度を高めてくれるはず。「Truth」のような『HIGH ROAD』の流れにあるポップチューンもありますが、パワフルなビートとツインリードギターのミックスが気持ち良い「Running Out Of Time」、ギターがのたうちまわるハードロック「Day And Night」、ギターのフレーズやボーカルの泣きメロがNIGHT RANGERとしては新鮮なタイトルトラック「Don't Let Up」、疾走感あふれる「Say What You Want」など、基本的にはハードロック路線の作風です。

しかし、先の「Don't Let Up」のようにメロディはどれも親しみやすくキャッチーなものばかり。その極め付けが、ビートルズを彷彿とさせるハーモニーが心地よい「We Can Work It Out」でしょう。バラートとまではいかないものの、穏やかなテンポ感とアコースティックギターを用いたアレンジがバンドの軸にある“グッド・メロディ”を浮き彫りにし、これもNIGHT RANGERの持ち味のひとつだと再認識させてくれます。こういう曲が再びヒットチャートを賑わせる時代が訪れるといいな……と純粋に思わせてくれる1曲です。

さらに、アルバムラストを飾るのはアコースティック調のバラード「Nothing Left Of Yesterday」。こういったパワーバラードもこのバンドの大きな武器のひとつなのは紛れもない事実で、しばらく新曲としては封印されていたこの要素をアルバムの最後に持ってくるあたりに、今のNIGHT RANGERの好調ぶり、自信の強さが表れているように感じます。

例えば「Don't Tell Me You Love Me」や「(You Can Still) Rock In America」「Sister Christian」「Sentimental Street」などのような“決定的な1曲”はこのアルバムには存在しないかもしれない。しかし、それに匹敵する高レベルの楽曲がずらりと並ぶ、平均点以上のアルバムなのには違いありません。過去にとらわれることなく、本作が正当に評価されることを望みます。



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投稿: 2017 04 01 12:00 午前 [2017年の作品, Night Ranger] | 固定リンク