MICHAEL MONROE『NOT FAKIN' IT』(1989)
1984年12月にラズル(Dr)が交通事故死したことで、翌1985年に解散したHANOI ROCKS。そのフロントマンであるマイケル・モンローは拠点をニューヨークに移し、1987年に初のソロアルバム『NIGHTS ARE SO LONG』をリリースします。同作は全10曲中7曲がカバーおよびマイケル以外のソングライターが書いたもので、“HANOI ROCKSよ再び”という思いで接したリスナーにとってはインパクトの弱い作品でした。演奏もHANOI ROCKS最終作の『TWO STEPS FROM THE MOVE』で聴けたタイトなものとは異なる、非常にユルいものでしたしね。
そこから2年後の1989年9月、マイケルは2ndソロアルバム『NOT FAKIN' IT』をメジャーレーベルのMercury Recordsから発表します。同作ではソングライティングのパートナーとして、ブルース・スプリングスティーンのE. STREET BANDの一員として知られるリトル・スティーヴンスを迎え制作。さらにHANOI ROCKS時代の盟友ナスティ・スーサイド(G)も曲作りのみならずレコーディングにも参加。前作『NIGHTS ARE SO LONG』にも参加していたイアン・ハンター(Piano)やフィル・グランデ(G)といった面々や、ジミー・リップ(G)、アントン・フィグ(Dr)、トミー・プライス(Dr)、ジョン・リーガン(B)、ケニー・アーロンソン(B)などロックファン、ハードロックファンなら一度は耳にしたことがある名プレイヤーたちがタイトな演奏を聴かせてくれます。
楽曲自体も全10曲中カバーを2曲に抑え、1曲のみリトル・スティーヴン書き下ろし、他7曲はマイケルを中心に書き下ろされたオリジナル曲となっています。初めて聴いたとき、オープニングの「Dead, Jail Or Rock 'n' Roll」からマイケルの鬼気迫るシャウト&ボーカルに圧倒されたのを覚えています。HANOI ROCKSの幻影を追っていた人たちにとっては、ここで聴ける隙の一切ないロックンロールは求めるものとは異なるサウンドだったかもしれません。
しかし、マイケルがタフでセクシーな歌声を存分に響き渡らせた本作を嫌いになれる人がどれだけいるんでしょうか。HANOI ROCKSではないけど、否定のしようがない、いや、否定という言葉をねじ伏せてしまうほどの力強さと説得力を持ったロックンロールアルバムを前にしたら、そんなことどうでもよくなってしまうはずです。
LAではなくNYに移り住んだことが功を奏した人選&サウンドは、当時最盛期を過ぎようとしていたLAメタルとは異なる、新鮮な魅力満載でした。男臭さという点においては、LAから登場したGUNS N' ROSESのそれとはまた違っていたところも興味深かったし、ポップでキャッチーな「Man With No Eyes」もあれば、男の哀愁や物悲しさを漂わせる「Smoke Screen」みたいな曲もあり、このへんに少なからずHANOI ROCKSの片鱗を感じて涙した人もいたはず。そう、マイケルはしっかりとHANOI ROCKSを抱えたまま前進し続けていたのですよ。表面だけを見て判断したり偏見さえ捨てれば、芯にある精神は何も変わっていないことに気づくはずなのに……。
そういえば、当時からHANOI ROCKSからの影響を公言していたGUNS N' ROSESの面々が、マイケル再生に一役買ったのも思い出深い話。「Dead, Jail Or Rock 'n' Roll」のMV収録ライブにはアクセル・ローズもゲスト参加したし、その後のライブではスラッシュもゲスト出演しています。また、ガンズのプライベートレーベル、UZI SuicideからHANOI ROCKSのアルバムを再発したりと、マイケル界隈が少しずつ賑やかになっていったのでした。
また、ここ日本でも本作はヒットを記録。同年末に東京ドームで行われたカウントダウンイベントでは、のちに新バンドを結成することになるスティーヴ・スティーヴンス率いるATOMIC PLAYBOYSのキャンセルに伴い、マイケルが急遽出演。翌年春にはツアーで再来日を果たし、その際にはナスティが飛び入り出演してHANOI ROCKSナンバーで共演した記憶があります。これを機に、さらに世界的ブレイクを果たしてくれる、と確信していたのですが……事実は小説よりも奇なり、とはよく言ったものですね(続く)。
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