PEARL JAM『TEN』(1991)
1991年9月に海外で、ここ日本では翌月10月に発表された、アメリカ・シアトル出身の5人組バンドPEARL JAMの記念すべきデビューアルバム。ストーン・ゴッサード(G)とジェフ・アメン(B)が同じシアトル出身のバンドGREEN RIVERのメンバーだったこと、またPEARL JAMデビュー前年の1990年にアンドリュー・ウッド(Vo)とのバンドMOTHER LOVE BONEで先にデビューしていたこともあって、一部のリスナーからはある程度その名を知られていたようです。MOTHER LOVE BONEに関しては、リリースから数ヶ月後にアンドリューがオーバードーズで他界。その後2人はPERAL JAMの活動を本格化させるわけです。
デビュー時のメンバーはストーンとジェフのほか、マイク・マクレディ(G)、デイヴ・クルーセン(Dr)、そして最後に加わったエディ・ヴェダー(Vo)。ちなみにデイヴはアルバム完成後に脱退し、本作『TEN』に関する活動はすべて後任のデイヴ・アブラジーズ(Dr)が担当しています。
1991年後半というと、メインストリームのロックシーンではMETALLICAがブラックアルバム(『METALLICA』)で天文学的大ヒットを記録し、GUNS N' ROSESが『USE YOUR ILLUSION I』『同 II』の同時リリースでビルボード1、2位を独占とHR/HM界隈がまだまだ幅を利かせていた時期。それとほぼ同タイミングに発売されたのがNIRVANA『NEVERMIND』、SOUNDGARDEN『BADMOTORFINGER』、そしてこのPEARL JAM『TEN』でした。ここに前回取り上げたALICE IN CHAINS、そして上記3作より数ヶ月前に1stアルバムを発表していたSMASHING PUMPKINSなどが加わることで、のちのグランジムーブメントが形成されていくことになります。
グランジと呼ばれるムーブメントに属したバンドの多くは、当時のHR/HMやメインストリームのロックバンドに対する“アンチ商業主義”を信条とするオルタナティヴロックがメイン。ギターリフなどにLED ZEPPELINやBLACK SABBATH、AC/DC、初期KISSなど前時代的ロックからの影響が見え隠れするものの、軸にはるのはメタルよりもパンクロックのテイスト。そこに陰鬱なテイストが加わることで、当時の世相(湾岸戦争以降の不況)を表していた、と個人的には受け取っています。また、ちょうどグランジ勃発期の1世代上に属するSONIC YOUTH、PIXIES、DINASAUR JR.、JANE'S ADDICTIONなどにも共通するカラーがあったように思います。
……と、かなり前段が長くなりましたが、ここからが本編。『TEN』に関するお話です。本作は同時期に発売された『NEVERMIND』や『BADMOTORFINGER』と比べると、いわゆる“オルタナロックっぽさ”が希薄で、ダークな色合いこそあれど全体を覆うテイストは王道のアメリカンロックに近いのではないかという印象があります。それは先に挙げた前時代王道バンド、特にBLACK SABBATHなどからの影響があまり感じられない点、当時のアメリカの世相や社会、生活を切り取った歌詞がありつつも、ラブソングも並列されている点、アルバムのサウンドプロダクションが当時の王道ロック(HR/HM的)に比較的近い点が理由なのかなと考えるわけです。
だから、最初に『NEVERMIND』や『BADMOTORFINGER』と“同じ耳”で接したとき、非常に違和感を感じたし、正直この2枚よりも聴く頻度が低かった。パンクロックとハードロックが持つそれぞれのカタルシスを兼ね備えた前者2枚と比べれば、『TEN』はもっと情緒豊かといった印象ですし。
それが、リリースから数ヶ月後に公開された「Even Flow」のMVで一変した。あのライブ感の強い作風(MVに使われた音源はアルバムとは別テイク)により、バンドの本質が見え始めたわけです。そして「Jeremy」や「Oceans」といった楽曲が次々とシングルカットされ、アルバムを聴き返す機会も増えていき、気づけばハマっていた。もちろんその頃にはアメリカでも爆発的ヒット作となり、ビルボード1位こそ獲れなかったものの(最高2位)、現在までに1000万枚を超えるメガセールスを記録しています。
で、最近このアルバムを何度も聴き返していて感じたことがあって。先にNIRVANAやSOUNDGARDENには「ギターリフなどにLED ZEPPELINやBLACK SABBATH、AC/DC、初期KISSなど前時代的ロックからの影響が見え隠れする」がPEARL JAMにはそれが希薄と書きましたが、それはあくまでリフやアレンジでのお話。実はバンドの軸にある音楽スタイルはLED ZEPPELINなどの前時代王道バンドにもっとも近いのではないか、と気づいたのです。確かにBLACK SABBATH色は皆無ですが、それこそブルース・スプリングスティーンやのちに共演するニール・ヤング、そしてR.E.M.にU2……こういったバンドに並ぶべき資質が、すでにデビュー作の時点から存在していたわけです。ていうか、デビュー作の時点で完成度高すぎだっつうの。
しかし、本作以降のアルバムを聴くと、実は『TEN』で示したスタイルが必ずしもPEARL JAMの本質とは言い切れないのではないか、という現実もあるわけで。事実、2ndアルバム『VS.』(1993年)以降、『TEN』のようなスタイルのアルバムは1枚もありません。それこそAICE IN CHAINSの『FACELIFT』(1990年)みたいに、“それ以前の活動”と“今やりたいこと”と“その当時の世の中の雰囲気”が奇跡的なバランスで合致した、いわば1991年という時代に“作らされた”デビューアルバムだったんじゃないかと。発売から25年以上を経た、今だからこそ余計にそう感じるわけです。
ちなみに本作は、2009年にブレンダン・オブライエンがリミックスを手がけたリイシュー盤も発売。より生々しく生まれ変わった再発盤は、どちらかというとその後のPEARL JAMに通ずるものがあるので、機会があったらぜひ聴き比べてみてください。
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