MR. BIG『GET OVER IT』(1999)
1996年秋以降に活動休止期間に突入し、それぞれソロワークなどを経てバンド活動を再開させようとしたMR. BIG。しかしポール・ギルバート(G, Vo)がバンド脱退を表明し、再始動が暗礁に乗り上げそうになります。そんな彼らにもとに救世主として登場したのが、すでにソロアーティストとしての地位を確率していたギタリスト、リッチー・コッツェンでした。「えっ、あのPOISONの?」というツッコミはナシの方向で。むしろそこは「あのMOTHER HEADS FAMILY REUNIONの?」くらいにしておきましょう。
冗談はさておき、ブルージーかつファンキーなプレイ&楽曲が信条のリッチーを迎えて制作され、1999年秋に無事発表されたのがこの通算5作目のオリジナルアルバム『GET OVER IT』になります。
ソングライターとしてポップマエストロ方向へと進みつつあったポールのカラーが消えたことで、バンドは再び原点である「ソウルフルでブルージーなハードロック」を取り戻すことに成功。1曲目「Electrified」から枯れまくりなハードロックを楽しむことができるし、続く「Static」ではエリック・マーティン(Vo)とリッチーのツインボーカルをフィーチャーした、これまでのMR. BIGにはない武器も登場します。
……あれ、これが“みんなの求めていたMR. BIG”でいいんだっけ? アルバム1曲目はもっと派手で、ギターとベースが激しいインタープレイを聴かせてくれるんじゃなかったの? ギターの音もこんなに枯れまくりでいいんだっけ?
そう、これがリッチー加入後のMR. BIG最大のハードルなのです。ギターが玄人好みのプレイ&質感になったことで、80年代的な派手さは払拭。代わりに“無駄に本格派”という地味さを獲得してしまう。エリックのボーカルやビリー・シーン(B)のソングライティング力(もちろんリッチーのソングライティング力も)を生かすには十分すぎる武器ですが、きっと90年代前半にMR. BIGに夢中になったHR/HMファンには「これじゃない」感が強かったのではないでしょうか。事実、僕がそうでしたから。
確かに要所要所にテクニカルなプレイは登場しますが、それも本当に味付け程度。決してメインの武器となることはありません。アコースティックバラード「Superfantastic」やROLLING STONESばりにアーシーなR&R「A Rose Alone」、リッチーのファンクギターとエリックのソウルフルな歌が融合した「Hole In The Sun」、本作中もっとも演奏が派手な「Dancin' With My Devils」、セッション色の強い「Mr.Never In A Million Years」など確かに聴きどころが多い作品ではあるものの、それでも前作にあたる『HEY MAN』(1996年)にあった派手さはここにはない。それを「物足りない」と取るか「本格派志向になった」と取るかで、本作の評価は大きく二分するのではないでしょうか。
決して悪いアルバムではないけど(むしろ良い作品だけど)、これをMR. BIGでやらなくてもいいんじゃないか。リリースから20年近く経った今でもそう思わずにはいられません。けど、このへんの作品があったからこそ、のちのTHE WINERY DOGSへとつながっていくんだから、そういう意味ではテン年代以降のHR/HM史を語る上で重要な過去作なのかもしれませんね。
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