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2017/05/31

2017年5月のお仕事

2017年5月に公開されたお仕事の、ほんの一例です。随時更新していきます。
(※5月31日更新)


[WEB] 5月31日、「リアルサウンド」にてナノのインタビュー「バイリンガルシンガー・ナノ、デビュー5年で辿り着いた場所「やっと『時代がきた!』って感じ」」が公開されました。

[紙] 5月31日発売「BUBKA」2017年7月号にて、けやき坂46齊藤京子×高本彩花インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

[紙] 5月31日発売「TV Bros.」2017年6月3日号にて、ハリー・スタイルズ『HARRY STYLES』、THE CHARLATANS『DIFFERENT DAYS』アルバムレビューを担当・執筆しました。

[WEB] 5月28日、「リアルサウンド」にてけやき坂46佐々木久美、高瀬愛奈、東村芽依インタビュー「けやき坂46 佐々木久美&高瀬愛奈&東村芽依が考える、“ひらがなけやきの独自性”」が公開されました。

[WEB] 5月26日、「Red Bull Japan」オフィシャルサイトにてコラム「今、青田買いしておきたいアーティスト10組」が公開されました。

[紙] 5月20日から上演開始となった舞台「あさひなぐ」にて、会場で販売中の公式パンフレット内座談会(乃木坂46齋藤飛鳥・井上小百合・新内眞衣・若月佑美・生駒里奈、下司尚実)を担当・執筆しました。

[WEB] 5月19日、「リアルサウンド」にてLINKIN PARKのアーティスト評「Linkin Parkがアップデートした“自身の理論” 新作『One More Light』をバンドの変遷から紐解く」が公開されました。

[紙] 5月17日発売「TV Bros.」2017年5月20日号にて、DRAGONFORCE『REACHING INTO INFINITY』アルバムレビューを担当・執筆しました。

[WEB] 5月11日、「リアルサウンド」にてシドのアーティスト評「シドの楽曲がV系の枠を超えて愛される理由 バンドの持つ魅力を改めて考える」が公開されました。

[WEB] 5月6日、「リアルサウンド」にてLittle Glee Monsterのライブ評「Little Glee Monsterは立ち止まらず進み続けるーー5人体制初ライブに見た希望」が公開されました。

[紙] 5月3日発売「TV Bros.」2017年5月6日号にて、ゲスの極み乙女。『達磨林檎』、INCUBUS『8』アルバムレビューを担当・執筆しました。

[WEB] 5月3日、「リアルサウンド」にてD'ERLANGERのCIPHER(G)インタビュー「D'ERLANGER再結成から10年、今音楽へと向かう原動力を明かす「ただ魂を焦がすしかない」」が公開されました。

[紙] 5月2日発売「日経エンタテインメント!」2017年6月号にて、映画&舞台「あさひなぐ」解説、乃木坂46齋藤飛鳥インタビューを担当・執筆しました。(Amazon

投稿: 2017 05 31 12:00 午後 [「仕事紹介」] | 固定リンク

MR. BIG『GET OVER IT』(1999)

1996年秋以降に活動休止期間に突入し、それぞれソロワークなどを経てバンド活動を再開させようとしたMR. BIG。しかしポール・ギルバート(G, Vo)がバンド脱退を表明し、再始動が暗礁に乗り上げそうになります。そんな彼らにもとに救世主として登場したのが、すでにソロアーティストとしての地位を確率していたギタリスト、リッチー・コッツェンでした。「えっ、あのPOISONの?」というツッコミはナシの方向で。むしろそこは「あのMOTHER HEADS FAMILY REUNIONの?」くらいにしておきましょう。

冗談はさておき、ブルージーかつファンキーなプレイ&楽曲が信条のリッチーを迎えて制作され、1999年秋に無事発表されたのがこの通算5作目のオリジナルアルバム『GET OVER IT』になります。

ソングライターとしてポップマエストロ方向へと進みつつあったポールのカラーが消えたことで、バンドは再び原点である「ソウルフルでブルージーなハードロック」を取り戻すことに成功。1曲目「Electrified」から枯れまくりなハードロックを楽しむことができるし、続く「Static」ではエリック・マーティン(Vo)とリッチーのツインボーカルをフィーチャーした、これまでのMR. BIGにはない武器も登場します。

……あれ、これが“みんなの求めていたMR. BIG”でいいんだっけ? アルバム1曲目はもっと派手で、ギターとベースが激しいインタープレイを聴かせてくれるんじゃなかったの? ギターの音もこんなに枯れまくりでいいんだっけ?

そう、これがリッチー加入後のMR. BIG最大のハードルなのです。ギターが玄人好みのプレイ&質感になったことで、80年代的な派手さは払拭。代わりに“無駄に本格派”という地味さを獲得してしまう。エリックのボーカルやビリー・シーン(B)のソングライティング力(もちろんリッチーのソングライティング力も)を生かすには十分すぎる武器ですが、きっと90年代前半にMR. BIGに夢中になったHR/HMファンには「これじゃない」感が強かったのではないでしょうか。事実、僕がそうでしたから。

確かに要所要所にテクニカルなプレイは登場しますが、それも本当に味付け程度。決してメインの武器となることはありません。アコースティックバラード「Superfantastic」やROLLING STONESばりにアーシーなR&R「A Rose Alone」、リッチーのファンクギターとエリックのソウルフルな歌が融合した「Hole In The Sun」、本作中もっとも演奏が派手な「Dancin' With My Devils」、セッション色の強い「Mr.Never In A Million Years」など確かに聴きどころが多い作品ではあるものの、それでも前作にあたる『HEY MAN』(1996年)にあった派手さはここにはない。それを「物足りない」と取るか「本格派志向になった」と取るかで、本作の評価は大きく二分するのではないでしょうか。

決して悪いアルバムではないけど(むしろ良い作品だけど)、これをMR. BIGでやらなくてもいいんじゃないか。リリースから20年近く経った今でもそう思わずにはいられません。けど、このへんの作品があったからこそ、のちのTHE WINERY DOGSへとつながっていくんだから、そういう意味ではテン年代以降のHR/HM史を語る上で重要な過去作なのかもしれませんね。



▼MR. BIG『GET OVER IT』
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投稿: 2017 05 31 12:00 午前 [1999年の作品, Mr. Big, Richie Kotzen] | 固定リンク

2017/05/30

MR. BIG『BIG BIGGER BIGGEST! THE BEST OF MR. BIG』(1996)


1996年秋に発表された、MR. BIG初のベストアルバム。同年1月に最新オリジナルアルバム『HEY MAN』を発表したものの、ここ日本以外では大したヒットにも恵まれず、バンドはしばらく活動を休止することに。そのお休み前の贈り物として、この新曲入りのベストアルバムが発表されたわけです。

日本盤と海外盤とでは収録内容と曲順が一部異なる本作。ここでは日本盤を軸に話を進めていきます。

なんとなくライブを意識して曲順が組まれた印象があるこのアルバム。「Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)」から「Take Cover」へと続く流れは、その後の再結成ライブを彷彿とさせますし(きっと再始動後、そのへんは意識したんでしょう)、終盤も「Colorado Bulldog」で圧巻のテクニック合戦を見せてから「To Be With You」という“お約束”があり、最後はバンドの原点である「Addicted To That Rush」で終了。その中にはパワーポップ然としたストレートな「Stay Together」、ポール・ギルバート(G)がリードボーカルをとる変拍子のストレンジポップス「Unnatural」、いかにもエリック・マーティン(Vo)が書きそうな歌モノバラード「Not One Night」という新曲、海外盤ではこれが初出となるアコースティックナンバー「Seven Impossible Days」(日本では1994年発売の『RAW LIKE SUSHI III -JAPANDEMONIUM-』で発表済み)も含まれており、単なるグレイテストヒッツ作品で終わってないところに、バンドのこだわりが感じられます。

選曲は、いわゆるライブの定番曲というよりもシングルカットされた楽曲が中心。1作目『MR. BIG』(1989年)の「Wind Me Up」あたりがカットされていたり、そもそも1stからの楽曲が定番「Addicted To That Rush」と「Rock & Roll Over」だけというのも寂しいかぎり。このへんに、1996年当時のバンドのスタンスが見え隠れするような、しないような。そして、どうしても『LEAN INTO IT』(1991年)からの楽曲が多くなってしまうという悲しい流れ(全16曲中4曲)。あ、『BUMP AHEAD』(1993年)からも4曲だった。「Promis Her The Moon」とか誰の選曲なんだろう……とか考え始めるといろいろキナ臭くなりそうなので、選曲についてはこのへんで(苦笑)。

ちなみに日本盤にはボーナストラックとして、ポールが電動ドリルでお世話になっているマキタへプレゼントした「I Love You Japan」のライブテイクを追加。「Nothing But Love」がライブテイクなのが個人的にはマイナスポイントなのですが(海外盤はスタジオテイクを収録)、それを抜きにしても入門編としてはまずまずの1枚ではないでしょうか。

……と、昔は思っていたんです、自分も。でも現在ではMR. BIGのベストアルバムは複数発売されおり、ポール脱退後の楽曲を含むもの、別の未発表曲を含むものなどいろいろあるので、そのへんについても後々触れられたらと思います。



▼MR. BIG『BIG BIGGER BIGGEST! THE BEST OF MR. BIG』
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投稿: 2017 05 30 12:00 午前 [1996年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/05/29

MR. BIG『HEY MAN』(1996)

1996年初頭にリリースされた、MR. BIG通算4作目のオリジナルアルバム。2作目の『LEAN INTO IT』(1991年)でその地位を確かなものにするも、時代がHR/HMからグランジへと移行し、続く『BUMP AHEAD』(1993年)は前作ほどの成功を収めることができず。しかし、ここ日本では前作以上の成功(セールス、動員)を成し遂げたことで、なんとか活動を継続することができたわけです。

『BUMP AHEAD』ではレーベルの意向がかなり反映されたこともあり、非常にソフトな曲が多く、1stアルバム『MR. BIG』(1989年)からかなり遠いところにたどり着いたなぁという印象がなきにしもあらずですが、この4thアルバム『HEY MAN』はどうかというと……きっと、そのオープニングから驚かされることでしょう。なにせ、過去3作ではおなじみだった「アルバム1曲目は楽器隊のテクニックを駆使したファストチューン」というお約束が初めて破られてしまったのですから。

その「Trapped In Toyland」は、不穏なメロディからスタートするヘヴィなミドルナンバー。1995年〜1996年というとすでにグランジブームも落ち着き、HR/HM系でいえばMACHINE HEADのような“PANTERA以降”のヘヴィバンド、KORNやTOOL、DEFTONESみたいに後のラウドロックへと通ずるオリジネイターたちがシーンに台頭し始めた時期。そこに影響されてということはないと思いますが、『HEY MAN』の楽曲はミドルテンポ中心で、ずっしりと構えた印象の強い作風となっています。

アルバムからのリードシングル「Take Cover」もHR/HM特有の“リフで引っ張る”タイプではなく、コードストロークやアルペジオを多様したギターフレーズにリズミカルなタム回しが印象的なドラムという、どこかU2あたりにも通ずる楽曲。そりゃあ『LEAN INTO IT』以降の“楽曲至上主義”路線が強まったと考えれば納得できはしますが、「これをあのMR. BIGがやるんだ……」と当時は若干ショックを受けたのを、今でもよく覚えています(とはいえ、聴き込むうちに好きになりましたけどね)。

そのほかにも、ついにビリー・シーン(B)のベースすら入っていないアコースティックナンバー「Goin' Where The Wind Blows」、明らかにPEARL JAM以降の影響下にあるダーク&スローな「The Chain」、純粋にポップソングとしては優れているものの「これをあの(以下略)」な「Dancin' Right Into The Flame」など異色作は含まれていますが、意外と前作ほどバラード色が強くないイメージを受けます。きっと全体的を覆う“なんとなくダーク”な空気感のせいかもしれませんね。これも時代感が反映されたものなんだと、今なら納得できますが、当時はいろいろ疑問を感じていたものです。

あ、もちろん従来のMR. BIGらしい楽曲も存在しますよ。ファンキーな「Jane Doe」、ソウルフルなハードロック「Where Do I Fit In?」、BON JOVIあたりにも通ずるソウルバラード「If That's What It Takes」、ここで楽器隊のテクニックが炸裂するか!というヘヴィな「Out Of The Underground」、ヘヴィさとサイケさが融合した「Mama D.」、そしてヘヴィなファンクロック「Fool Us Today」。こうやって挙げていくと、実はここ数作で一番「従来のMR. BIGらしい」ような錯覚に陥るのですが、全体を通して聴くとそう感じないのですから不思議です。

ちなみに本作はここ日本で、オリコンのアルバム週間ランキングで1位を獲得。アメリカではついにチャートインしなかったことを考えると、改めて不幸なのか幸せなのか……いや、なんでもないです。同作を携えたジャパンツアーは1996年4月から1ヶ月かけて、過去最大規模の全18公演が行われています。僕も武道館に足を運んだ記憶があります(「Trapped In Toyland」から始まった、あのツアーですね)。そしてバンドは、ツアー終了後の同年秋からしばしの活動休止に突入するのでした。



▼MR. BIG『HEY MAN』
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投稿: 2017 05 29 12:00 午前 [1996年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/05/28

MR. BIG『BUMP AHEAD』(1993)

1993年秋にリリースされた、MR. BIG通算3作目のスタジオアルバム。アメリカでは前作ほどのヒットには及ばず、最高82位止まり。シングルカットされた「Wild World」(キャット・スティーヴンスのカバー)が全米27位、アコースティック楽曲「Ain't Seen Love Like That」が全米83位と、それほど大きな結果は残せませんでした。が、すでにこの頃はNIRVANA、PEARL JAM、STONE TEMPLE PILOTSといったグランジバンドが全盛期だったことを考えれば、それでも成功したほうと言えるでしょう。

前作『LEAN INTO IT』(1991年)からのシングル「To Be With You」、およびアルバムが日本のみならずアメリカなどでも大ヒットしてしまったため、バンドはレーベルから「『LEAN INTO IT』に続くヒット作を……」とプレッシャーを与えられます。バンドは1993年春に一度アルバムを完成させるのですが、これを聴いたレーベルからは「さらにヒット曲を」とリリースを延期させてまで収録内容を変更させるのです。

バンド結成時のコンセプトを貫き通したいバンド側(主にビリー・シーン)と、第二の「To Be With You」を欲しがるレーベル。結果として再構成されたアルバムは、バラード成分多めで80年代半ばのNIGHT RANGERを見ているようで若干つらくなります。

アルバムは究極のファストチューン「Colorado Bulldog」からスタート。続くソウルフルなHRナンバー「Price You Gotta Pay」、ここまでの流れは前作の延長線上にある、非常に納得のいくものです。が、3曲目「Promise Her The Moon」で早くもバラード。ファンキーな「What's It Gonna Be」で持ち返すものの、カバー曲「Wild World」で再びバラードに。多いってば。

6曲目「Mr. Gone」は前作における「Green-Tinted Sixties Mind」をもっとロック色強くしたみたいで、これはこれでアリかなと。そこから泣きメロHRの「The Whole World's Gonna Know」で唸らせられるものの、8曲目に本作3つめのバラード「Nothing But Love」が登場。ファンクメタル「Temperamental」で気をとり直そうとするものの、4曲目のバラード「Ain't Seen Love Like That」に閉口。さすがにやりすぎでしょ。最後はバンド名の由来となったFREEの名曲「Mr. Big」のカバーでエンディング。日本盤にはここに「Long Way Down」というハードロックナンバーが追加されますが、これが加わったところで本作のバラード成分が薄まるわけではないので、正直どうでもいいです。

というわけで、バラード4曲はさすがにやりすぎ。そりゃシンガーのエリック・マーティンからすれば気持ち込めやすいし、歌が目立つから良いでしょうけど、ポール・ギルバートやビリー・シーンにしてみればプレイヤーとしての個性を発揮する場を奪われたわけですから、いい気はしないですよね(もちろん、こういう作風になったのはエリックのせいではないですよ。そこは誤解なきよう)。

にしても、カバー曲の「Wild World」を除いたバラード3曲中、本当に良いと感じるのが(個人的には)「Nothing But Love」くらいしかないのもどうかと思うなぁ。「Ain't Seen Love Like That」も「To Be With You」の二番煎じ感が強くてインパクト皆無だし、「Promise Her The Moon」に至っては空気。完全に空気。ないわぁ〜。

で、このアルバムがまた日本でそれなりに売れてしまったというのが、さらに不幸。確かこのアルバムのツアーでは2回来日してるんじゃなかったかな。アルバムリリース直後と、1年後くらいに。どっちも行った記憶があるわ。

もし実現可能なら……バンドが当初想定していた収録内容&曲順の『BUMP AHEAD』を聴いてみたいものです。それによって、評価が変わるのかしら……。



▼MR. BIG『BUMP AHEAD』
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投稿: 2017 05 28 12:00 午前 [1993年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/05/27

MR. BIG『LEAN INTO IT』(1991)

MR. BIGが1991年春にリリースした通算2作目のオリジナルアルバム。前作『MR. BIG』(1989年)発表後、バンドは来日公演を行ったほか、翌1990年には6曲入りミニライブアルバム『RAW LIKE SUSHI』をリリース。1作目こそ海外公演の音源でしたが、これ以降続く『RAW LIKE SUSHI』シリーズは日本公演の模様を収めたものが発表されていくことになります。

さて、本国以上にここ日本で高い人気を誇り、文字通り“Big in Japan”になりつつあった彼らが、次の作品で挑んだのは、エリック・マーティン(Vo)の歌唱力を存分に生かした、より純度の高いソウルフルなアルバムを作ること。そこにポール・ギルバート(G)とビリー・シーン(B)のユニゾン&インタープレイを取り込むことで、歌モノ目線でもプレイヤー目線でも楽しめる、1枚目の延長線上にあるアルバムを作るはずでした。実際、このアルバムの大半の楽曲はそういうものに仕上がっていると思います。

ところが、この時期からポールのソングライターとしての才能が一気に開花。バンマスのビリーが想定していなかった「Green-Tinted Sixties Mind」みたいに、THE BEATLESの影響下にあるポップ色の強い楽曲が上がってきます。と同時に、エリックからもアコースティックバラード「To Be With You」が上がり、この2曲をアルバムに収録するかどうかでバンドは議論になるわけです。結果はご存知のとおり、この2曲は無事収録され、それぞれシングルカットもされることに。このシングル化にはレコード会社の思惑も働いているのではないかと思いますが、最初にシングルカットされた「Green-Tinted Sixties Mind」はイギリスで小ヒットし、ここ日本では好意的に受け入れられたと記憶しています。

で、問題は次のシングルとして発表された「To Be With You」。1991年末にシングル発売されると、翌1992年初頭にかけて全米チャートを上昇していき、気づけばNo.1を獲得。しかも4周連続1位というおまけつき。イギリスでも最高2位という、バンドを代表する1曲になるわけです。

ブルースやソウルをベースにしたハードロックバンドを始めたはずのMR. BIGが、ソングライターとしてのエゴを優先したがために、当初と違った方向でブレイクしてしまう。この成功と引き換えに、バンドはこの先、想像もつかないような苦難の数々に遭遇することになるわけです。

……が、それはまた別の話。純粋にアルバムの内容は素晴らしい以外の言葉が見つからないほど最高です。1曲目「Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)」の疾走感と電動ドリルを使ったギター&ベースユニゾンソロ、“これぞMR. BIG”と断言したくなるソウルフルな「Alive And Kickin'」、前述のサイケデリックポップ「Green-Tinted Sixties Mind」、本作中唯一メンバーのペンではない楽曲(のちに作者のジェフ・パリスもレコーディングした)「CDFF-Lucky This Time」、“これぞMR. BIG”その2「Voodoo Kiss」、エリックならではのポップさとバンドのワイルドな演奏のバランスが絶妙な「Never Say Never」、王道歌モノバラード「Just Take My Heart」、もっとも前作の延長線上にあるHRチューン「My Kinda Woman」、冒頭のビリーによる低音Vo含め最高なヘヴィブルーズ「A Little Too Loose」、オープニングのハーモニーから最高なシャッフルナンバー「Road To Ruin」、そして締めにふさわしい「To Be With You」。日本盤にはここにポップだけど疾走感のある「Love Makes You Strong」も加わりますが、とにかく捨て曲なし。発売から26年経ったものの、今聴いても色褪せない名盤だと思います。

確かに1stアルバムで掲げたコンセプトはブレブレですが、そのこだわりを凌駕するほどの傑作。以降の迷走ぶりを考えると複雑な気持ちにはなるものの、このアルバムでの成功(全米15位、100万枚以上の売り上げ。またシングルとしても「Just Take My Heart」が全米16位にランクイン)がなければバンドの寿命はもっと短かったでしょうし、2000年代後半の再始動もなかったと思うのです。

まだ聴いたことない……というHR/HMファンはほぼいないと思われますが、もしいたら悪いことは言いません。今すぐ購入しましょう。



▼MR. BIG『LEAN INTO IT』
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投稿: 2017 05 27 12:00 午前 [1991年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/05/26

SOUNDGARDEN『SUPERUNKNOWN』(1994)

SOUNDGARDENが1994年春にリリースした通算4枚目のオリジナルアルバム。前作『BADMOTORFINGER』(1991年)が高く評価され、セールス的にもアメリカで200万枚を突破。GUNS N' ROSESやSKID ROWといったHR/HM勢とツアーをしながらも、ちょうどNIRVANA、PEARL JAMを筆頭としたシアトル勢によるグランジ・ムーブメントに突入したタイミングの作品だったこともあり(彼らもまたシアトル出身)、オールドスクールファンと新世代のファンの両方を掴むことに成功したわけです。さらにニール・ヤングあたりともツアーを回ってたし、もはや敵なし状態に突入したタイミングで制作されたのが、この『SUPERUNKNOWN』という傑作だったわけです。

不況とは裏腹にCD全盛期といえる時期の作品とあって、本作は70分超えの大作。アナログ時代だったら間違いなく2枚組アルバムとして評価されたことでしょう。そういう作品とあってか、内容も非常にバラエティに富んだもので、前作以上に音楽性の懐の深さを見せております。

例えばこれまでだったら「BLACK SABBATHやLED ZEPPELINのハードロックサイドにパンクを掛け合わせた」楽曲が中心だったところに、今作では「LED ZEPPELINがやりそうな、サイケデリックなアコースティックナンバー」あたりにも手を出しており、ストレートなロックチューンからサイケデリックバラード、変拍子の効いたハードロック、陰鬱で(ジャンルとしての)ドローンっぽいヘヴィナンバー、アコースティックサウンドを前面に打ち出した民族音楽まで本当に幅広い。作品としての成り立ちは異なりますが、きっとここで彼らは「俺たちの『PHYSICAL GRAFFITI』(LED ZEPPELINが1975年に発表した2枚組アルバム)」を作っておきたかったのかなと。そう思わずにはいられません。

前作の時点でかなりキャッチーさが強まってきてはいましたが、今作では小難しいアレンジを取り入れつつもメロディはさらにキャッチーさが強まっている。1曲目「Let Me Drown」の時点で耳に残る強いメロディが飛び込んでくるし、しかも大半の楽曲が「印象的なフレーズをリピートすることで、聴き手の耳に強くこびりつかせる」ことに成功している。また、ほとんどの楽曲が4分前後(短いもので1分半、長くても7分欠ける程度。しかも1曲だけ)と聴きやすく、曲数が多い(US版は15曲、インターナショナル版は16曲)わりにするする聴けてしまうわけです。すでに前作『SUPERUNKNOWN』の時点でその予兆は見られたわけですが、今作でその手法はさらに極まったと言えるでしょう。

その結果、本作はSOUNDGARDENの作品中唯一の全米No.1を獲得。トータルで500万枚以上ものセールスを記録したのでした。また、本作からのシングル「Black Hole Sun」もスマッシュヒットを記録(全米エアプレイチャート24位)。ミュージックビデオも多数制作されました。

いわゆるグランジ・ムーブメントの中でももっとも正統派HRの色合いが強かったSOUNDGARDEN。NIRVANAはある種パンクだったし、PEARL JAMは最初から王道アメリカンロックだった。SMASHING PUMPKINSはニューウェーブの香りをただよわせ、ALICE IN CHAINSは生粋のハードロック小僧がいろいろ拗らせて小難しい方向に顔をツッコミ出した。ドラッグとかいろんな影響もあってか、どんどん厨二っぽさを拗らせて早死にした奴もいたけど、結局一度も解散せずに生き残ったのはPEARL JAMだけ。だって普通のロックバンドだったんだもん。

そんな中、SOUNDGARDENはアンダーグラウンドなサウンドから徐々に洗練されていき、たどり着いた場所が“現代版LED ZEPPELIN”みたいな変に仙人じみたポジション。80年代後半、多くのHR/HMバンドが欲していたそのポジションを別の形で手にしてしまったわけです。とことん不思議なバンドですよね。

結局彼らは、続く『DOWN ON THE UPSIDE』(1996年)ですべてやりきったとして、1997年4月に解散を発表。潔いんだか、不器用なんだか。



▼SOUNDGARDEN『SUPERUNKNOWN』
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で、2010年に再結成してコンスタントに活動を続けていたわけですが……最初の解散から約20年後の2017年5月17日、デトロイトでのコンサートを終えたクリス・コーネル(Vo, G)がホテルで首を吊って死んでいるところを発見。まさかこんなにあっけない形で終わってしまうなんて思ってもみなかったなぁ。

実はこのテキストも、書いては消して、書いては消してを繰り返し、最終的にいつもどおりフラットな形で書くことを決め、こういう形になりました。

このアルバムがリリースされる2、3ヶ月前にSOUNDGARDENは初来日公演を実施。僕も足を運びましたが、結果としてこれが唯一の日本公演になってしまったわけです。おそらく再結成後も何度か来日に関して話し合いがあったと思われるのですが、それは叶わぬ夢で終わったわけです。

なんか一番まともそうだけど、一番ストイックそうな奴がここまで生き延びて、でも結局自分で自分の人生を終わらせてしまった。つくづくグランジってやつはタチが悪かったなぁ……こうやって、みんなが忘れた頃にまた“あっち側”に連れて行っちゃうんだから。本当にもう勘弁してほしいです。


投稿: 2017 05 26 12:00 午前 [1994年の作品, Soundgarden, 「R.I.P.」] | 固定リンク

2017/05/25

ROBERT PLANT『NOW AND ZEN』(1988)

COVERDALE・PAGE、ジミー・ページのソロときたら、こちらも取り上げておかなくちゃいけないですよね。ってことで、ロバート・プラント御大が1988年初春にリリースした通算4作目のソロアルバム『NOW AND ZEN』を紹介したいと思います。

ソロになってから、いわゆる歌モノなソフトロックに挑んできたプラント。聴きようによってはLED ZEPPELIN最後のオリジナルアルバム『IN THROUGH THE OUT DOOR』(1979年)の延長線上と言えなくもないですが、ペイジが曲作りにもレコーディングにも参加してない以上、やっぱり別モノ感は拭いきれず。そんな中、1984年に発表したTHE HONEYDRIPPERS名義のEP『THE HONEYDRIPPERS: VOLUME ONE』(1984年)が予想を超えるヒットを記録。同作は50'sの名曲カバー集で、レコーディングにはジェフ・ベックやナイル・ロジャースのほか、ペイジも参加。そのペイジ参加曲「Sea Of Love」は全米3位という好成績を残すのでした。

以上、ZEPPELIN全盛期サウンドはもちろんのこと、ZEP的なことから距離を置いていたプラントが、この『NOW AND ZEN』というアルバムではZEP的アプローチを比較的前向きに捉えて、制作に挑んでおります。

一説によると、アルバムのオープニングを飾る「Heaven Know」のデモを聴いてZEPに対するネガティブな考えを改めたという話があります。これをきっかけに、同曲を作曲したフィル・ジョンストンが全面参加することに。以降、彼は『MANIC NIRVANA』(1990年)、『FATE OF NATIONS』(1993年)でプラントの片腕として活躍するわけです。

レコーディングにはダグ・ボイル(G / のちにCARAVANに加入)、フィル・スクラッグ(B)、フィル・ジョンストン(Key)、クリス・ブラックウェル(Dr)という新たな布陣が参加。この『NOW AND ZEN』という新たなプロジェクトのために揃えられた面々で、以降も彼らはプラントのレコーディングやライブに関わっていくことから、プラントがロック色を強めていく上で非常に重要な役割を果たした面々と言えます。

序盤3曲は打ち込み主体なので、特に「Heaven Knows」「Tall Cool One」のようなプラント&ペイジ共演曲が“モロにZEP”になってしまうことをうまく避けているというか。だからこそ4曲目「The Way I Feel」以降のバンドサウンドとの対比が面白い。「Helen Of Troy」みたいにダイナミックなロックを当時のプラントがやっているのも興味深いし、オールディーズ(ドゥー=ワップ)テイストのロックンロール「Billy's Revenge」も思わずニヤリとしてしまう1曲だし。かと思えば「Ship Of Fools」のようなメロウバラードもあるし、ニューウェイブ的な「Why」、いかにも80年代的なシンセポップロック「Walking Towards Paradise」もあり、それまでの歌モノ路線と以降ロック色を強めていく路線との過渡期的1枚と言えるかもしれません。

そんな中、やっぱり特筆すべきは「Tall Cool One」なんでしょうね。曲調自体はシンプルな打ち込みポップロックなんですが、ヒップホップ的手法でLED ZEPPELIN「Black Dog」「Whole Lotta Love」「The Ocean」「Custard Pie」などをサンプリングして曲に乗せるという反則技を取り入れ、なおかつペイジがギターで参加するという「どう考えてもこれ、LED ZEPPELINをやろうとしてるよね?」的思考を誘発させるアレンジ。なのに曲自体はやっぱりZEPっぽくないという、ただ反則でしかない1曲なわけです。要するに、これが当時HR/HMシーンを賑わせていた「ZEPクローン」に対するプラントからの答えだったのかな……と思ったら、KINGDOM COMEのデビューはほぼ同時期だったので、それは考えすぎかな。

なんにせよ、LED ZEPPELINの面影を求めて聴いたら痛い目を見る、だけど不思議と嫌いになれない1枚。まぁ本作がなかったら後のPAGE/PLANTはなかったわけですしね(と、最近毎回同じ締めをしてる気が)。



▼ROBERT PLANT『NOW AND ZEN』
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投稿: 2017 05 25 12:00 午前 [1988年の作品, Jimmy Page, Led Zeppelin, Robert Plant] | 固定リンク

2017/05/24

JIMMY PAGE『OUTRIDER』(1988)

ジミー・ペイジがLED ZEPPELIN解散後、初めて本格的に取り組んだソロ“ロック”アルバムが、1988年に発表された本作。ペイジは1982年に映画『ロサンゼルス』(原題:DEATH WISH II)のサウンドトラックを発表しており、ソロ作品としては同作が1枚目ということになりますが、当然ながらファンが求めるサウンドではなかったし、その後ポール・ロジャース(FREE、BAD COMPANY)らと結成したTHE FIRMもZEPPELINとはかけ離れたブルースロックだったし。で、1985年の『LIVE AID』でZEPPELINが“擬似”再結成したり、1988年のAtlantic Records 40周年記念ライブでボンゾ(ジョン・ボーナム)の息子、ジェイソンを迎えたZEPPELIN“ほぼ”再結成があったりで、ファン的には「いいから早くちゃんとやれ!」とツッコミを入れたくなる日々がずーっと続いていたわけです。

が、当時高校生だった自分にとっては、この『OUTRIDER』がリアルタイムで初めて接する「ペイジがZEP的ロックをやる」アルバムだったわけで。しかもリリース直前にAtlantic Records 40周年記念ライブをテレビ(そう、当時は深夜にこういうのをちゃんと地上波で放送してくれたんですよ!)で観たこともあり(確か、番組の合間に本作のCMもやってましたよね)、期待は高まる一方だったわけです。

ちょうど本作リリース数ヶ月前に、ロバート・プラントがソロアルバム『NOW AND ZEN』を発表したばかり。こちらはそれ以前のソロ作と比べれば若干開き直った作風(当時はそんなこと微塵も思わなかったけど)で、中にはZEPナンバーをサンプリングした楽曲「Tall Cool One」もあったし、同曲と「Heaven Knows」ではかのペイジがギターでゲスト参加しており、それなりに話題になったばかりでした。

で、『OUTRIDER』ですが。確かにペイジらしさ、ZEPっぽさは感じられます。1曲目「Wasting My Time」は『PHYSICAL GRAFFITI』(1975年)のアウトテイクと言われたら信じちゃうような楽曲だし、プラントが自身のソロ作参加のお礼でゲスト参加した「The Only One」も『CODA』(1982年)に入ってそうなタイプだし。「Wanna Make Love」も……まぁZEP寄りかなと。途中で入る転調も“らしい”しね。

そう、アナログでいうA面(M-1〜5。うちM-3、5はインスト)は確かにペイジ、頑張ってZEPを演じてるんですよ。しかし、アナログB面(M-6〜9)は完全に別モノ。もっとレイドバックしたブルースロックといいますか、そもそもボーカルがプラント的なシンガーじゃない。

あ、言い忘れましたが、「Wasting My Time」「Wanna Make Love」を歌うのは、ブルーアイドソウルシンガーのジョン・マイルズ。そこそこプラントに似せようと頑張ってます、というか当のプラントがもはやハイトーン無理なので、こっちのほうがプラントっぽいといいますか(笑)。

で、B面で歌っているのがイギリスの名ブルース/ソウルシンガーのクリス・ファーロウ。かつてROLLING STONE「Out Of Time」のカバーをヒットさせた人ですね。ファーロウのボーカルに合わせて、ペイジもレイドバックしまくり、というか趣味丸出しです。レオン・ラッセルのカバー「Hummingbird」や、「Prison Blues」「Blues Anthem (If I Cannot Have Your Love…)」なんていうまんまなオリジナル曲まであり、もう聴いてるこっちが恥ずかしくなるくらい(嘘ですが)。

そういうこともあり、当時は期待値が高かっただけに「満足45%、よくわかんないけどわかった気になってる55%」ぐらいの比率で何度も聴き込みました。そういうこともあり、嫌いになれない1枚なんですよね。

あ、インスト曲が良いです(そこ?)。すごく“ソロアルバム”っぽくて、良いです。別にペイジはジェフ・ベックやクラプトンみたいにエレキギターをバリバリ弾きまくったインストソロを作らなくてもいいんです。こういう曲が聴けたら……っていうのは擁護しすぎ?

まぁ何はともあれ、このアルバムがなかったらその後のCOVERDALE・PAGEも、PAGE/PLANTもなかったわけで。そういう意味でも1990年代以降のZEPPELINワークスを語る上で非常に重要な1枚なわけです。



▼JIMMY PAGE『OUTRIDER』
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投稿: 2017 05 24 12:00 午前 [1988年の作品, Jimmy Page, Led Zeppelin] | 固定リンク

2017/05/23

COVERDALE・PAGE『COVERDALE・PAGE』(1993)

1993年初春にリリースされた、元LED ZEPPELINのジミー・ペイジ、そして当時WHITESNAKEの活動を停止させていたデヴィッド・カヴァデールが結成したスーパーグループCOVERDALE・PAGEの、最初で最後のアルバム。大概のスーパーグループは大した成功を収めることもなく、短命で終わるわけですが、このバンドの場合もアルバム作ったはいいけどワールドツアーが行われることもなく、同年12月に日本でツアーが行われたのみというありさま。まぁそんなもんですよね。

大ヒット作『WHITESNAKE』(1987年)とそれをフォローアップする『SLIP OF THE TONGUE』(1989年)で、それまでの中音域を軸とした歌い方からハイトーンでガナる歌唱法に変わり、喉を酷使しまくったカヴァデール。バンドメンバーともなんだかんだあり、結局1990年夏のツアー終了をもってWHITESNAKEの活動を一旦休止させます。

同じ頃、1988年に初の本格的ソロアルバム『OUTRIDER』のリリース、同年春に実施されたAtlantic Records 40周年コンサートでのジェイソン・ボーナム(ジョン・ボーナムの息子)を交えた編成でのLED ZEPPELIN復活な、そして1990年にZEPPELINのスタジオアルバムリマスタリング&ボックスセットのリリースなど、解散以降ようやくZEPPELINと本気で向き合い始めたペイジ。当初はロバート・プラントに再結成を持ちかけたようですが、過去を振り返るのが嫌いなプラントから拒否られ、「だったら、他に歌える奴と組むか」……と思ったかどうかは知りませんが、80年代後半に「ZEPクローン」のきっかけを作ったカヴァデールと組むことになるわけです。

「LED ZEPPELINとWHITESNAKEの邂逅」とも「LED ZEPPELINとDEEP PURPLE(だが3、4期)の邂逅」とも受け取れるこのCOVERDALE・PAGE。カヴァデールとペイジ、そして当時AEROSMITHなどで名を上げていたエンジニアのマイク・フレイザーが共同プロデュースを務め、レコーディングにはドラムにデニー・カーマッシ(元MONTROSE、HEART。この後、WHITESNAKEに加入)、ベースにヨルグ・カサス(80年代にグロリア・エステファンのMIAMI SOUND MACHINEにいた人みたいです)、キーボードにレスター・メンデス(サンタナはじめラテン系アーティストと関わりが深い、ソングライター兼キーボーディスト)が軸となって参加しています(一部楽曲で元THE BABYS、BAD ENGLISHのリッキー・フィリップスがベースを弾いていたり、MVで当時THUNDERに在籍していたマーク・スネイク・ラックハーストがベースを弾いていて、これを理由にバンドをクビになったなんて話もあります)。

さて、前置きが長くなりましたが……アルバム、長くないですか?(苦笑) 11曲で60分超え。当時はCD大全盛期突入期で、多くのロックバンドが60分超えの作品を続発していましたが(AEROSMITH『GET A GRIP』、BON JOVI『KEEP THE FAITH』など)、COVERDALE・PAGEの場合は1曲あたりのカロリーが高い! 3分台〜4分台前半の楽曲は2曲のみ、6分超えは4曲(ほぼ6分を含めて5曲)ですからね。これ、単にペイジの趣味なのか、カヴァデールがペイジと組めるからと頑張っちゃったのか。

ただ、それぞれの楽曲は「当時における現代的なハードロック」として考えればよくできていると思います。なにせペイジが本腰を入れてZEPPLEINの封印を解いて作った楽曲に、そこに当時バリバリハイトーン+加齢による枯れも加わり始めたカヴァデールの歌が乗るわけですから、悪いわけがない。

もちろん、それはフラットに見ればの話。これがLED ZEPPELIN、WHITESNAKEどちらか一方にでも偏ってしまったら、一気に駄作の烙印が押されてしまいそうな気がしますが。

基本的にはWHITESNAKEが『SLIDE IT IN』(1984年)や『WHITESNAKE』、『SLIP OF THE TONGUE』で試みた“ブルージーで仰々しいバンドサウンドにハイトーンボーカルが乗る”スタイルがベースにあり、そこにペイジならではのアイデアが加えられていくといった印象。だからZEPPELINファンからすれば不満が多そうですし、WHITESNAKEファンからすれば「直近2作と比べたらギターが……」と思うかもしれない。そう、だからどちらか一方に偏っちゃダメなんです。気を確かに。

サウンドやバンドアレンジ自体はペイジらしさも確かにあるし(特にアコースティックギターを多用したプレイやハーモニカを導入するところ)、ソロ作『OUTRIDER』がレイドバックしたブルースロックだったから正直ここまでモダンなことやるか!という驚きも多かった。けど、ペイジ自身はこれに近いことをプラントとやりたかったんだよね。中音域がセクシーなカヴァデールがさんざん「もうおなかいっぱい」と言ってたハイトーンを連発するのは、そのへんも大きく関係しているんじゃないかと思われます。

とはいえ、ちゃんと中音域を多用した楽曲も収められていて。バラードタイプの「Take Me For A Little While」や「Take A Look At Yourself」がまさにそれで、前者はZEPPELINタイプ、後者はWHITESNAKEタイプと受け取ることもできるかと(また比較しちゃった)。ペイジが得意とする中近東テキスト+フォーキーさが色濃く表れた(主に前半)「Easy Does It」もそっち寄りかと。もっと言えば「Shake My Tree」や「Pride And Joy」にもそういう要素がちゃんと含まれているよね。さすがに枯れすぎで最初聴いたときは度肝を抜かれたけど。

前半の「LEDクローン」的楽曲も決して悪くないんだけど、個人的には終盤の3曲……当時のカヴァデールがいかにもやりそうなヘヴィブルース(しかも本作最長の約8分)「Don't Leave Me This Way」、ライブのオープニングにふさわしくてひたすらカッコいい「Absolution Blues」、ZEPPELINやWHITESNAKEというよりCOVERDALE・PAGEとしての可能性を感じさせたラストトラック「Whisper A Prayer For The Dying」が良いんですよね。派手さ的には前半4曲(「Shake My Tree」「Waiting On You」「Take Me For A Little While」「Pride And Joy」)なんだろうけどね。

時代的にはグランジ全盛期、HR/HMはすでにオールドウェイブ的存在に追いやられていた中発表された本作は、全米5位、全英4位を記録。セールス的には全米50万枚止まりだったようです。WHITESNAKEの新作と考えればまずまずの成功と言えるし、LED ZEPPELIN関連作と捉えれば低調と言わざるをえない。この微妙な結果がプロジェクトの寿命をより縮めた、とも言えますが……ただ、この“実験”があったからこそ、ペイジは翌年以降にプラントと組んでアルバム作ったりライブをしたりできたわけで、カヴァデールもWHITESNAKE再編へと動きだすことができたわけです。そういう意味においては、スーパーグループではあったけどそれぞれにとって過渡期だった……と言ったら失礼でしょうか。



▼COVERDALE・PAGE『COVERDALE・PAGE』
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投稿: 2017 05 23 12:00 午前 [1993年の作品, Coverdale・Page, Jimmy Page, Led Zeppelin, Whitesnake] | 固定リンク

2017/05/22

VAN HALEN『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』(1991)

1991年初夏に発表された、VAN HALEN通算9枚目のオリジナルアルバム。『5150』(1986年)からバンドに加わったサミー・ヘイガー(Vo)にとっては、『OU812』(1988年)に続く3枚目の参加アルバムとなります。この時期から米Billboardチャートの集計方法が変わったことで、SKID ROWの2ndアルバム『SLAVE TO THE GLIND』がアルバムチャート初登場1位を獲得しましたが、翌週に発売されたこの『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』も続いて初登場1位を記録。「Top Of The World」(全米27位)、「Right Now」(全米55位)と過去2作と比べたら大きなヒット曲は誕生しなかったものの、現在までに300万枚を売り上げる好成績を残しています。

『5150』で“VAN HAGER”と揶揄されるほど、サミー色に染まったVAN HALENでしたが、続く『OU812』はデヴィッド・リー・ロス時代のテイストも復活。一部で「リリースする順番が逆だったらそこまで批判されなかったのに」という声まで上がりましたが、今作ではリスナー側もすでにサミーのカラーに慣れたこともあり、“VAN HAGER 2作品+初期テイスト+α”という独自の路線を貫いています。

ピックアップに電動ドリルを近づけることによって生じるあのサウンドから始まる「Poundcake」を最初に聴いたときは、時期的に(その数ヶ月前に発売された)MR.BIGの『LEAN INTO IT』を思い浮かべたものですが、このダイナミックでひたすらカッコいいアリーナロックを聴けばそんなことどうでもよくなくなるという。そして続くストレートなアップチューン「Judgement Day」のカッコよさたるや。このオープニング2曲の掴みだけで、本作が名作なのは間違いない!と聴き始めた当初確信したのを今でも覚えています。

ダークな「Spanked」な「Pleasure Dome」は過去になかったタイプだし、「Runaround」もいかにも初期VAN HALENにありそうな親しみやすいロックチューン。イントロのギター&ベースのユニゾンからしてクールな「Man On A Mission」、これぞ“VAN HAGER”な「The Dream Is Over」、本作中唯一キーボード(ピアノ)を用いたシリアス調のミドルチューン「Right Now」、メロウな王道ナンバー「Top Of The World」と、とにかく捨て曲なし。従来のVAN HALENらしさを引き継ぎつつも、これまでになかったタイプの楽曲も登場していて、新鮮な気持ちで接することができる。音の質感もこの“適度にヘヴィかつメロディはポップ”という楽曲に合っているから、トータルで50分を超えているのにスルスルと聴き進めることができるんです。

個人的にはVAN HALENの全作品中で一番好きなアルバムが本作。もちろんデイヴ時代の諸作品も捨てがたいし、『5150』もお気に入りなんですが、自分が理想とするロックアルバムはこれかなと思うのです。

バンドは本作を携えたワールドツアーの模様を収めた初のライブアルバム『LIVE: RIGHT HERE, RIGHT NOW』を1993年にリリース(同名の映像作品も発表)。この音源を聴いて、改めて『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』での来日公演が実現しなかったことを何度悔やんだことか……。



▼VAN HALEN『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』
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投稿: 2017 05 22 12:00 午前 [1991年の作品, Van Halen] | 固定リンク

2017/05/21

LINKIN PARK『ONE MORE LIGHT』(2017)

LINKIN PARKの3年ぶり新作『ONE MORE LIGHT』リリースに先駆けて、本サイトでは1stアルバム『HYBRID THEORY』から前作『THE HUNTING PARTY』までの全6作品を紹介してきましたが、ようやく真打登場です。

リードトラック「Heavy feat. Kiiara」を筆頭に、新曲が公開されるたびに今まで以上に賛否を呼び集めたLINKIN PARK。もはやバンドという形態すら放棄してるし、聴く人が聴けば「流行・売れ線に走りやがって」と思うことでしょう。そういう方はこんな駄文など読むのをすぐ止めて、自分が正しいと思う音楽を今後も聴き続けることをオススメします。ぶっちゃけ、時間の無駄ですから。

「Heavy feat. Kiiara」自体「いい曲じゃん。何が悪いの?」と思っていた自分のような人間にとって……いや、そもそもLINKIN PARK=『HYBRID THEORY』みたいな強いこだわりや固定観念がない人間には、今回も前と違うことやってるのね、程度のリアクションしかなく、アルバムはどうなってるんだろうな〜と呑気に考えていたのですが。やっぱり叩かれますよね、特に今回は。だって、すでにロックですらないんですから。

過去のレビュー6本のまとめ的記事として、本作のリリース日にリアルサウンドさんのほうに下記のコラムを寄稿しました。この『ONE MORE LIGHT』に関しても、基本的にはそちらにすべて書かれているのであわせて読んでいただけるとありがたいです。

Linkin Parkがアップデートした“自身の理論” 新作『One More Light』をバンドの変遷から紐解く(リアルサウンド)

さて。じゃあここでは何を書こうかといいますと……当然のように、毎回試聴会に参加するときはメモを残すのですが、今回もそのメモを晒してみようかと思います。過去にはMETALLICAやMASTODONなどで試みてますね。はい、今回もまったく一緒です。

基本的にはリアルサウンドさんのコラムの中に完璧なレビューを書いたので、そちらで十分なんですけど、こちらは副読本的ポジションでいいのかなと。はい。

M-1. Nobody Can Save Me
ゆったりとしたミドルテンポのロック。おおらかさ、優しさの中にエレクトロの香りも。オープニングからここまで多幸感を強く匂わせるLINKIN PARKのアルバムは初めてでは。若干EDMの匂いも。

M-2. Good Goodbye (feat. Pusha T & Stormzy)
先行公開曲その3。ヒップホップ色の強いダウナーなビート。バンドサウンドを完全放棄した、楽曲至上主義。

M-3. Talking To Myself
出だしがキラキラしたエレクトロサウンドだが、そのまま力強いバンドサウンドへ。歌に入るとダウナーなヒップホップのテイストも飛び出し、サビで再びロックバンドの主張強まる。まさに“ハイブリッド”な1曲。

M-4. Battle Symphony
先行公開曲その2。賛美歌をエレクトロで表現したかのような癒しのメロディ。気持ち良く楽しめるナンバー。

M-5. Invisible
先行公開曲その4。若干抑揚を抑えたメロディが前曲との対比を強める(リードボーカルはマイク)。ポップソングとしての究極型。ピアノのアウトロ含め最高。

M-6. Heavy (feat. Kiiara)
先行公開曲その1。公開と同時に今までにない賛否を呼んだ、現代的ダウナーR&BをLINKIN PARK流に解釈した1曲。にしても、これのどこが悪い? ロックじゃない? 冗談じゃない、LINKIN PARKはこの曲でしっかり“ロック”してるじゃないか。女性シンガー・キアーラとの歌声の絡みも絶妙。

M-7. Sorry For Now
現代的なヒップホップ+R&B×ロックをLINKIN PARK流に解釈した楽曲、その2。これもマイクのボーカルか。チェスターのエモーショナルなボーカルとはひと味違ったこのカラーも、今や完全にバンドの個性。落ちサビでチェスターも加わり、より2人の個性を際立たせている。

M-8. Halfway Right
アルバム全体に一本筋が通るように流れるビート感の統一性は圧巻。この曲も本当によくできたポップソングといった印象。そこにシンガロングパートが加わると、ゴスペルのごとく一気にスケールが大きくなる。チェスターらしいメロディ運びは、やっぱりLINKIN PARKそのもの。

M-9. One More Light
終始癒しの音色が響き渡るバラード。チェスターの声とブラッド・デルソンのギターを前面に打ち出した、まさにこのアルバムの肝。

M-10. Sharp Edges
アコースティックギターをフィーチャーした軽やかなナンバー。前曲で夜明けを迎え、ここで完全に朝になり活動し始める、そんな生命力を感じさせるラストにふさわし1曲。

※総評
これこそ『HYBRID THEORY』というタイトルがぴったりのアルバムでは。前作『THE HUNTING PARTY』が「バンドのルーツにあるアンダーグラウンドなラウドミュージックを、大人になった6人が今の解釈で表現したもの」だとしたら、今作は「現在シーンのど真ん中にあるサウンドを、6人が今の感性で表現したもの」。また前作が薄暗い地下室をイメージさせる1枚なら、今作は深夜から夜明けを迎える数時間を捉えたような構成。対極にある作品だからこそ、方向性も表現方法もまったく異なるのは納得。散々ロックが売れない、ロックは終わったと叩かれるのなら、ロックバンドが「“ロック以外の音楽”を使ってロックを表現」してもいいんじゃないか。このアルバムはそのとっかかりになるような気がする。



▼LINKIN PARK『ONE MORE LIGHT』
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投稿: 2017 05 21 12:00 午前 [2017年の作品, Linkin Park] | 固定リンク

2017/05/20

AT THE DRIVE-IN『IN.TER.A.LIA』(2017)

通算3枚目にしてメジャーデビュー作となった『RELATIONSHIP OF COMMAND』(2000年)リリースから半年後の2001年春、突如の無期限活動停止を発表し、事実上の解散状態となったAT THE DRIVE-IN。その彼らが10年後の2011年に再始動を発表し、翌2012年に『FUJI ROCK FESTIVAL '12』で12年ぶりの再来日を果たしたのですが、その際のライブを観た僕は正直、最初こそ興奮したものの、曲が進むにつれて気持ちが醒めていって……ああ、2000年のサマソニで初体験したあの無軌道さとそこから受けた興奮を求めちゃ残酷だよな……と現実に引き戻されたのでした。

が、昨年のサマソニで再来日した際には、あのフジロックでの醒めた感覚は一切なく、最初から最後まで興奮状態のままステージを楽しむことができました。もちろん、2000年のライブと比べるのは反則だという気持ちをどこかに抱えたまま。だけど、純粋に楽しいライブだったのを今でもよく覚えています。

その後、ライブ活動のみならず本格的に新作制作に動き出した彼ら。ついに2017年5月、待望の4thアルバム『IN.TER.A.LIA』がここにリリースされました。

確かにここで聴けるサウンド、楽曲はTHE MARS VOLTAのそれとも、そしてSPARTAのそれとも違う、どこからどう聴いてもAT THE DRIVE-INのサウンド、楽曲とわかるものです。とはいえ、『RELATIONSHIP OF COMMAND』ほどのテンションや狂気性は感じられないのも事実。そこを今の彼らに求めるのも酷とは頭でわかっているのですが、それでも「『RELATIONSHIP OF COMMAND』に続く新作」という事実があるだけに比較してしまいたくなってしまうわけです。

先にライブから彼らに接したからか、余計に無軌道さや狂気性を求めてしまうのかもしれません。しかし、あれからすでに17年もの月日が流れている。普通に活動を続けていたら、その間に4、5枚はアルバムを発表していたかもしれない。そう考えれば、『RELATIONSHIP OF COMMAND』から『IN.TER.A.LIA』という作品に到達した意味も理由も理解できるかもしれません。

事前に公開済みだった「Governed By Contagions」を最初に聴いたときは、正直「まぁこんなもんかな?」くらいにしか感じなかったのに、アルバムの流れで聴くとすごくグッとくる。そして、どこからどう聴いてもAT THE DRIVE-INそのものだと気づかされる。ツアーで過去の楽曲と向き合ったことで、バンドが改めて「AT THE DRIVE-INとはなんだったのか?」という命題と真剣に対峙した。と同時に、メンバーそれぞれがTHE MARS VOLTAやSPARTAで得た経験も血肉になっている。その結果、「どこか懐かしいのに、新しさも感じさせる」という過去と現代のハイブリッド感が生まれたのかもしれません。

比較したくないと言いながらアレですが……『RELATIONSHIP OF COMMAND』よりもするする聴き進められる。内容もコンパクト(40分強)で、各曲が思った以上にシンプルというところは、2017年という時代にぴったりとフィットしてるんじゃないでしょうか。うん、大好きです。購入してから何度も何度も聴き返してます。



▼AT THE DRIVE-IN『IN.TER.A.LIA』
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投稿: 2017 05 20 12:00 午前 [2017年の作品, At The Drive-In] | 固定リンク

2017/05/19

INXS『KICK』(1987)

オーストラリア出身のロックバンドINXSが1987年秋に発表した、通算6枚目のオリジナルアルバムにして最大のヒット作。本作からは唯一の全米No.1ヒットとなった「Need You Tonight」のほか、「Devil Inside」(全米2位)、「New Sensation」(全米3位)、「Never Tear Us Apart」(全米7位)といった楽曲がシングルカットされ、アルバム自体も全米3位まで上昇し、600万枚以上のセールスを記録しました。

アメリカでのINXSの評価というと、80年代序盤に「The One Thing」(全米30位)、「Original Sin」(全米58位)という小ヒットがありましたが、本格的なブレイクとなると『KICK』の前作にあたる『LISTEN LIKE THIEVES』(1985年)からシングルカットされた「What You Need」(全米5位)からということになるのでしょうか。どちらかというとニューウェーブ以降の黒人的ダンサブルな楽曲を軸だったINXSが、ワイルドなハードロック色を取り入れた「What You Need」でブレイクしたというのも興味深い話で、『LISTEN LIKE THIEVES』からの他のシングルも「This Time」「Listen Like Thieves」と同系統だったことから、この路線変更はそれなりに成功を収めたと判断できるかと思います。

しかし、『LISTEN LIKE THIEVES』に続く本作『KICKS』は決して前作の延長線上にある作風とは言い難い、どちらかというとINXSの根幹にある「ブラックミュージックをベースにしたダンサブルなロック」をより洗練したものでした。リードシングルとなった「Need You Tonight」のミニマルなビート+印象的なギターリフ+セクシーなボーカルという作風は、ある種80年代のINXSの究極型と言えるかもしれません。またこの曲は続く「Mediate」とのメドレー形式になっており、MVもモノクロベースでセクシーな前半(「Need You Tonight」)とボブ・ディランのパロディ風後半(「Mediate」)とメドレー形態で楽しいものでした(現在YouTubeではそれぞれ別個でアップされてるんですね)。そもそもハードロック調の「What You Need」もベースにはダンスミュージックが見え隠れしますし、そういう意味では「Need You Tonight」が初の全米1位を獲得したのも頷けますよね。

アルバムはINXS版「We Will Rock You」と呼べる「Guns In The Sky」から始まり、そのまま極上のダンスロック「New Sensation」(これこそ「What You Need」をより洗練させた究極型かなと)、「Devil Inside」、「Need You Tonight」へと続きます。さらにディープなソウルバラード「The Loved One」や「Never Tear us Apart」、軽妙な1曲「Mystify」、適度に現代的な「Wildlife」、ひたすらワイルドでダイナミックなロックンロール「Kick」、ファンキーなギターフレーズとラップ調ボーカルが気持ち良い「Calling All Nations」、ラストにふさわしいアップテンポの「Tiny Daggers」と、全12曲でトータル39分という非常にコンパクトで聴きやすい内容。ロックバンドのアルバムとしては完璧すぎる構成、内容ではないでしょうか。

もしROLLING STONESが80年代に誕生していたら、きっとこんなオリジナルアルバムを作ったんじゃないか、なんてことを当時思ったりもしましたが、それくらい当時のINXSは「僕ら世代のストーンズ」と言いたくなる存在(少なくとも自分にとっては)。一時期こんなバンドを作りたいと思ったし、20代前半の自分にとってお手本となっていたのはこのアルバムでした。



▼INXS『KICK』
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投稿: 2017 05 19 12:00 午前 [1987年の作品, Inxs] | 固定リンク

2017/05/18

DURAN DURAN『NOTORIOUS』(1986)

1986年末にリリースされた、DURAN DURANにとって通算4枚目のスタジオアルバム。前々作『RIO』(1982年)、前作『SEVEN AND THE RAGGED TIGER』(1983年)が本国イギリスでそれぞれ2位、1位に輝き、アメリカでもともに200万枚を超えるヒット作に。特に『SEVEN AND THE RAGGED TIGER』からはCHICのナイル・ロジャースがリミックスを手がけた「The Reflex」が英米で1位に輝き、DURAN DURANは一躍トップバンドの仲間入りを果たします。

1984年には新曲「The Wild Boys」(全米&全英2位)を含むライブアルバム『ARENA』も発売。こちらも全米で200万枚以上の売り上げを記録するのですが、この頃からバンドは2組に分かれて新バンドプロジェクトを始動。それがジョン・テイラー(B)&アンディ・テイラー(G)組によるTHE POWER STATIONと、サイモン・ル・ボン(Vo)、ニック・ローズ(Key)、ロジャー・テイラー(Dr)からなるARCADIAでした。2組はともに1985年にアルバムを発表し、それぞれ大成功を収めます。

1986年に入ると再び5人で集い、ニューアルバムの準備に入るのですが、この制作途中でアンディが脱退を表明。当時進行させていたハードロック色の強いソロプロジェクトに移行してしまいます。さらに、ロジャーもバンドを脱退。DURAN DURANはサイモン、ジョン、ニックの3人となってしまいます。

そんな変則的な編成で制作されたのが、この『NOTORIOUS』というアルバム。プロデューサーには先の「The Reflex」や「The Wild Boys」を手がけたナイル・ロジャースを、ドラマーにAVERAGE WHITE BANDのスティーヴ・フェローン、ギターにMISSING PERSONSのウォーレン・ククロロをサポートで迎えて、文字どおり“シック”で“大人”、“黒っぽい”アルバムを完成させるのです。

初期3作では“黒人音楽に憧れる白人”よろしく、ファンクミュージックとパンク、ニューウェーブをミックスした独自のポップサウンドを確立させたDURAN DURANが“ホンモノ”たちと交わりあうことで、より“ホンモノ”に近づこうとした。それが、この『NOTORIOUS』という地味な作品集なのです。言ってみれば、アーティストの自己満足で作り上げてしまったエゴの塊みたいなもので、初期のファンからすれば「……これじゃない」と落胆する姿が目に浮かぶわけです。が、地味ながらも先行シングル「Notorious」がカッコよかったもんだから、同曲は全米2位まで上昇。アルバムも全米12位、全英16位と前作ほどのヒットにはならなかったものの、そこそこの成功を収めるわけです。

本当に派手な曲が皆無な作品ですが、ファルセットで歌うあたりにプリンスを意識したことが伺える「Skin Trade」、アメリカとヨーロッパの融合的イビツさが逆にカッコいい「American Science」、本作中でもっともロック寄りな「Hold Me」やシングルカットされた際のダンスリミックスも嫌いじゃない「Meet El Presidente」など良曲多し。別プロジェクトでの成果もちゃんと反映されており、THE POWER STATIONのファンキーさとARCADIAの冷たさはしっかり感じ取ることができます。まぁ編成的にARCADIAの色合いがどうしても強くなってしまうわけで、「A Matter Of Feeling」や「Winter Marches On」みたいな“それ、ARCADIAでやれや”的楽曲も含まれており、そのへんにどうしても“ホンモノ”になりきれないDURAN DURANの性(さが)が感じられホッとしてしまったりもします。

結局、このアルバム以降徐々にセールスを落としていったDURAN DURANは、90年代前半に「Ordinary World」で再ブレイク、2000年代にはオリジナルメンバー5人で再集結したりと紆余曲折を経て、現在もサイモン、ニック、ジョン、ロジャーの4人で活動を継続中。2015年の最新作『PAPER GODS』ではこの『NOTORIOUS』で試したことの発展型が展開されているので、やっぱり“ホンモノ”に近づきたかったのね、と妙に納得してしまいました。そういう意味でも、現在の彼らを語る上でこの『NOTORIOUS』は『RIO』などの初期作品同様に重要な1枚なのかもしれませんね。



▼DURAN DURAN『NOTORIOUS』
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投稿: 2017 05 18 12:00 午前 [1986年の作品, Duran Duran] | 固定リンク

2017/05/17

DRAGONFORCE『REACHING INTO INFINITY』(2017)

ベストアルバムを挟んで3年ぶりに発表される、通算7枚目のオリジナルアルバム。2014年に加入したジー・アンザローネ(Dr)を含む編成で初のスタジオアルバムであると同時に、今のところヴァジーム・プルジャーノフ(Key)が参加した最後のアルバムということになります(ヴァジームは本作に伴うプロモーション活動およびワールドツアーには不参加)。

全体的に、ここ数作と比べて非常にメロディが質が高まっているように感じました。とはいえ、このバンド特有の“ノリ”に関して言えば、序盤こそ「あれっ、若干落ち着いた?」と感じるものの、アルバムが進むほどその“濃さ”が徐々にあらわになっていきます。そして後半はいつもどおりのドラフォ節炸裂で、サーカスばりのテクニカルプレイも満載。変わったようで変わってない、変わってないようで変わった。聴き方次第でいろんな表情が感じられる1枚かもしれません。

特に終盤にかけて収録される長尺楽曲「The Edge Of The World」(11分超え)の構成は、さすがの一言。こkまで長いとぶっちゃけ途中で飽きてしまいがちですが、起承転結しっかりしていて、最後まで安心して楽しむことができます。

日本盤のみボーナストラックとして、ZIGGYが80年代後半に爆発的にヒットさせた名曲「GLORIA」のカバーが収録されていますが、往年のJ-POP/J-ROCKとメロスピとの相性は抜群。イントロやAメロのアレンジ、そしてAメロの歌詞が英語になっていて最初は気づかないかもしれませんが、Bメロからサビにかけての流れでようやく気付かされるという。こういった楽曲を自然と演奏してしまうあたり、改めて日本人向きのバンドだと納得させられました。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼DRAGONFORCE『REACHING INTO INFINITY』
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投稿: 2017 05 17 12:00 午後 [2017年の作品, DragonForce, ZIGGY] | 固定リンク

DEPECHE MODE『MUSIC FOR THE MASSES』(1987)

1987年秋にリリースされた、DEPECHE MODE通算6枚目のスタジオアルバム。本作に先駆け、同年春に「Strangelove」(全米76位、全英16位)がシングルリリースされ、続いて夏にオープニングトラック「Never Let Me Down Again」(全米63位、全英22位)をシングル発売。そしてリリースされたアルバムは全米35位、全英10位というアメリカでは過去最高の成績を残し、売上も全米では100万枚を突破しております。本作での成功が、続く7thアルバム『VIOLATOR』(1990年)の大ヒットにつながるわけです。

DEPECHE MODE自体は前作『BLACK CELEBRATION』(1986年)で初めて触れて、その明るくなりきれないエレポップサウンドに惹きつけられたわけですが、初めて自腹で買ったアルバム(CD)がこの『MUSIC FOR THE MASSES』だったのです。それは先に挙げた2枚のシングル「Strangelove」「Never Let Me Down Again」がお気に入りだったこともあったのと、なんとなくアートワークに惹きつけられてというのが大きくて。一見シンプルなんだけど、実はめちゃくちゃ深い意味が込められているんじゃないかって。

あと、初盤のCDにはボーナストラックとしてリミックスが何曲か追加収録されていたんですよ。今思えば、別にDJをやるわけでもないし、絶対に1、2回聴いたら飽きるはずなのに、曲数が少しでも多いってことでアナログよりCDのほうが絶対にお得だ!と子供ながらに思ってしまったんでしょうね。

ちなみに「Never Let Me Down Again」はオリジナルバージョンよりも、イントロに大げさなオーケストレーションが追加&エクスパンドされたリミックスバージョンのほうが気に入っています。のちにリマスタリング再発されたバージョン(CD1枚もの)はこれらのボーナストラックが省かれていたので、あとあとiTunesで探した記憶があります。

さて、本編について。オープニングの「Never Let Me Down Again」から仰々しく、かつ淡々として冷たさのあるデイヴ・ガーン(Vo)のボーカルに惹きつけられます。この派手はリズムも当時の流行りだったような。もちろん全編こういうリズムではなく、賛美歌のようなイントロから軽快な曲調へと変化する「Sacred」や、ダンサブルなエキゾチックポップチューン(と呼びたい)「Behind The Wheel」、吐息をサンプリングしてリズムを組み立てていく「I Want You Now」みたいな曲も含まれているんだけど、オープニングの雰囲気とエンディング「Pimpf」のダークさが相まって、結局全体的に非常に“冷たい”印象の残るアルバムと呼ぶことができます。

そんなアルバムに対して『MUSIC FOR THE MASSES』(「大衆音楽」の意)というタイトルを付けてしまうバンドの遊び心には、思わずニヤッとしてしまいます。とはいえ、メロディラインは非常に優れた楽曲ばかりなので、あながち間違ってはいないわけですけどね。

個人的にはここから続く3作品(『MUSIC FOR THE MASSES』、『VIOLATOR』、そして1993年の『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』)は今でも聴き返すことの多い名盤だと思っています。



▼DEPECHE MODE『MUSIC FOR THE MASSES』
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投稿: 2017 05 17 12:00 午前 [1987年の作品, Depeche Mode] | 固定リンク

2017/05/16

THE DAMNED『DAMNED DAMNED DAMNED』(1977)

昨年結成40周年を迎えたイギリス・オリジナルパンクバンドのひとつ、THE DAMNED。2015年に制作されたドキュメンタリー映画『地獄に墜ちた野郎ども』も国内公開され、年明けには映像作品化。今年3月には待望の来日公演も行われる、特にこの半年くらいは久しぶりに彼らの話題を耳にする機会が多かったと思います。

彼らのデビューアルバム『DAMNED DAMNED DAMNED』(邦題:地獄に墜ちた野郎ども)が本国でリリースされたのは、1977年2月のこと。前年10月に発売されたデビューシングル「New Rose」はイギリスのパンクシーンにおいて最初にリリースされたシングルと言われており、本作もアルバムにおいては英パンクシーン初のアルバムとのこと。SEX PISTOLSTHE CLASHももうちょっと後なんですね。

実は僕がこの『DAMNED DAMNED DAMNED』を最初に聴いたのは、1990年代に入ってからのこと。確か1992年だったかな、「ロンドンパンク アルバム発売15周年記念」と銘打ってこのアルバムが国内初CD化されたのを受けて、手を出したと記憶しています。それ以前は地元の貸レコード店にもなかったかし(別のアルバムはあった記憶が)、それよりも当時はSEX PISTOLSに夢中だったから。

トータル12曲で30分をちょっと超える程度の収録時間。1曲目「Neat Neat Neat」イントロのベースラインと、それに続くシャウトで完全にノックアウトされ、現在に至るわけです。今でもよく聴くTHE DAMNEDのアルバムって、この1枚目と3枚目『MACHINE GUN ETIQUETTE』(1979年)ぐらいだもんなぁ。

本作は全曲疾走感の強いパンクチューンというわけではなく、2曲目に若干ダウナーなミドルテンポの「Fan Club」がすぐ来るし、どちらかというと速い曲とミドルテンポの曲が交互に並ぶといった印象。けど、そのテンポ感が意外と悪くなく、するすると聴けてしまう。アナログ各面のトップにシングル曲にして代表曲(A面が「Neat Neat Neat」、B面が「New Rose」)が並ぶのも良いし、特にB面(7曲目以降)はA面以上にテンポよく進行するし。どちらかというと、A面のほうがソングライターのブライアン・ジェイムズ(G)のこだわりが強いような気がします(でも5曲目「Stab Yor Back」はラット・スキャビーズ(Dr)の曲だけど)。で、ラストをTHE STOOGES「I Feel Alright」(原題は「1970」)のカバーで締めくくる。このバージョンはHANOI ROCKSのライブアルバムで先に知ったので、妙に安心感があるんですよね。

リリースから40年。始めて聴いてから25年も経つけど、常にどんなときでも気持ちよく聴けて、毎回爽快感を得られる。そんな究極の1枚がこの『DAMNED DAMNED DAMNED』なんじゃないかと思います。そういう意味ではピストルズもTHE CLASHも1枚目は同い立ち位置なんだけどね。



▼THE DAMNED『DAMNED DAMNED DAMNED』
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投稿: 2017 05 16 12:00 午前 [1977年の作品, Damned, The] | 固定リンク

2017/05/15

PRETTY BOY FLOYD『LEATHER BOYZ WITH ELECTRIC TOYZ』(1989)

MOTLEY CRUE、特に初期3作の彼らに影響を受けたことがあからさまなのが、今回紹介するPRETTY BOY FLOYという4人組ハードロックバンドのデビューアルバム『LEATHER BOYZ WITH ELECTRIC TOYZ』です。アメリカでは1989年末、ここ日本では1990年1月にリリースされた本作、僕も日本盤がリリースされた直後に入手したことをよく覚えています。

まず、そのルックス。GUNS N' ROSESの登場を機にHR/HMシーンがグラム路線からより肉感的な路線へと完全移行したタイミングに、この完全に勘違いしたケバケバしさ。ヴィンス・ニールを彷彿とさせる甲高い歌声と、決して上手とは言い難い楽器隊のテク、深めのリバーブがかかったサウンドプロダクションに初期MOTLEYやPOISONのような薄っぺらい(最高の褒め言葉)楽曲の数々。完全に時代に逆行しているその肝の座り具合に呆気にとられたし、これを80年代が終わろうとするタイミングに発表したメジャーレーベルの心意気(あるいは気の迷い)にも拍手を送りたい。いやいや、本気で。

仰々しいオープニングSEから静寂を打ち破るドラム、そこからスタートするアルバムタイトルトラック「Leather Boyz With Electric Toyz」は完全に初期MOTLEYそのもの。「Oh〜Ooooh〜」とシンガロングしたくなるコーラスといい、ヘタウマなボーカルといい、80年代の悪しき部分を完璧にサンプリングしております。続くリード曲「Rock And Roll (Is Gonna Set The Night On Fire)」の“未完成ならではの、勢いのみで作られた”感も悪くない。

その後もそういった楽曲がずらりと並ぶのですが、特筆すべきは5曲目の「Toast Of The Town」。この曲はMOTLEY CRUEが1981年、デビューアルバム『TOO FAST FOR LOVE』のインディーズ盤を発表する前にリリースしたシングル『STICK TO YOUR GUNS』のB面曲で、当時は廃盤状態で入手困難だった1曲。そのレア曲をセレクトするあたりに、彼らのマニアックぶりというか「俺たち、初期のMOTLEY CRUEになりたいんや!」という健気な気持ちが感じ取れて好感が持てます。だって、上手にカバーしようとせず、完全に“ヘタウマだった時代のMOTLEY CRUE”を完璧に、下手なままコピーしてるんですから。

また「Wild Angels」や「I Wanna Be With You」といったバラードタイプの楽曲も含まれていますが、いわゆるパワーバラードというよりは“アコースティック色強めのミディアムポップチューン”という印象が強いかな。全10曲で36分程度という長さも初期L.A.メタルを踏襲しているし、実際適度な長さで飽きる前に終わるからちょうど良いんですよね。

なんだか褒めてるのか貶してるのか微妙かもしれませんが、個人的にはお気に入りの1枚。万人にはオススメしませんが、あの時代のL.A.メタルが好きで、
B級バンドに対しても寛容なリスナーにこそ聴いてほしい“隠れた名盤”です。



▼PRETTY BOY FLOYD『LEATHER BOYZ WITH ELECTRIC TOYZ』
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投稿: 2017 05 15 12:00 午前 [1989年の作品, Pretty Boy Floyd] | 固定リンク

2017/05/14

MOTLEY CRUE『THEATRE OF PAIN』(1985)

MOTLEY CRUEが1985年6月に発表した、通算3作目のオリジナルアルバム。前作でのメタリックなサウンド&ファッションから一変、本作ではメタル色を引き継ぎながらもブギーやピアノバラードも取り入れたライト路線へとシフトチェンジ。ファッションもレザー一辺倒からスパンコールが散りばめられたグラマラスなものへと変化して、往年のAEROSMITHを彷彿とさせるスタイルで見る者を驚かせました。個人的にもこのアルバムから彼らに入っていったこともあり、思い入れが強い1枚でもあります。

前年12月にヴィンス・ニール(Vo)が飲酒運転で事故を起こし、同乗していたHANOI ROCKSのラズル(Dr)を死なせてしまうという悲しい出来事がありました。これによりヴィンスが1985年初頭、アルコールのリハビリセンターに1ヶ月間入所。1986年にも有罪となって入獄するなどのトラブルがありましたが、そういった負の要素はこのアルバムには感じられず、非常にパーティ感の強いアメリカンハードロックを楽しむことができます。

特に本作からは「Smokin' In The Boys Room」(全米16位)、「Home Sweet Home」(全米89位)という2枚のヒットシングルが生まれており、前者はBROWNSVILLE STATIONのカバー曲でヴィンスのハーモニカをフィーチャーした軽やかなブギー、後者はトミー・リー(Dr)が弾くピアノが印象的なパワーバラードという、過去の彼らからは考えられない新境地を見せています。この大胆なシフトチェンジが功を奏し、アルバムは全米6位まで上昇し、400万枚ものセールスを記録しました。

ただ、個人的な思い入れはあるものの、作品としては80年代の彼らの作品の中でも中途半端な仕上がりと言わざるをえません。ヴィンスの逮捕やニッキー・シックス(B)やトミー・リーのドラッグ&アルコール癖が制作に及ぼした悪影響もあり、前作『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)制作時のアウトテイク(「Louder Than Hell」など)を流用するなど、決して純粋な新作とは言い難いのです。

確かに「Smokin' In The Boys Room」や「Home Sweet Home」は出色の出来ですが、それ以外に「これ!」という曲があるかというと……オープニングの「City Boy Blues」も他のアルバムのオープニングトラックと比較すれば弱いのは否めないし、「Save Our Souls」なんて前作に入っていても不思議じゃない平凡な楽曲だし、そこに能天気なアメリカンロック「Raise Your Hands To Rock」
が続くのも違和感があるし。「Tonight (We Need A Love)」も悪くないけど、アレンジが今ひとつだし、「Use It Or Lose It」も同じく。実はこのへんのモヤモヤ感は続く『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)にも言えることなんですけどね。ああ、ドラッグって怖いなぁ……。

とはいえ、同時代に発表された他のL.A.メタル勢と比べてもその出来ははるかに良かったりするので、プラマイゼロというところなんですが。思い入れはあるけど、今では聴く頻度は低いという不思議な1枚なのでした。

で、久しぶりに引っ張り出して聴いてみましたが……大まかな印象は上に述べた通りで変わりありませんが、それでも1曲1曲の出来はさすがだなと思わされてしまう悲しきファン心理。やっぱり好きという気持ちには敵いません(苦笑)。



▼MOTLEY CRUE『THEATRE OF PAIN』
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投稿: 2017 05 14 12:00 午前 [1985年の作品, Motley Crue] | 固定リンク

2017/05/13

FOREIGNER『INSIDE INFORMATION』(1987)

FOREIGNERというと、80年代前半に発表された2枚のアルバム……『4』(1981年)と『AGENT PROVOCATEUR』(1984年)と、各アルバムからシングルカットされた「Waiting For A Girl Like You」(全米2位)と「I Want To Know What Love Is」(全米1位)というバラード2曲の印象が強いですが、個人的に好きなアルバムは?と問われると、ルー・グラム(Vo)在籍時第1期ラストアルバムの『INSIDE INFORMATION』なんですよね。

このアルバムが発売される10ヶ月前、1987年2月にルー・グラムは初のソロアルバム『READY OR NOT』を発表。シンプルでストレートなロックを中心としたこのアルバムからは、「Midnight Blue」(全米5位)というヒットシングルも生まれ、もっとこういうサウンドをFOREIGNERでもやればいいのに……と思っていたところにFOREIGNER再始動、ニューアルバムからの先行シングル「Say You Will」がリリース。哀愁のメロディを伴うハードロック調の楽曲は個人的にも好物だったので、当然アルバムにも期待しました。

完成したアルバムは、良くも悪くもルー・グラムとミック・ジョーンズ(G)のカラーが二分して表現された内容で、今思えばバンドの終焉を迎えようとしていることがここに明確に表れていたんだなと。とはいえ、各曲の仕上がりはさすがとしか言いようがなく、“産業ロック万歳!”と叫びたくなるハードポップ「Heart Turns To Stone」からスタートし、バラード風のミドルテンポ「Can't Wait」、「Say You Will」同様に全米トップ10入りしたバラード「I Don't Want To Live Without You」、ルーのソロアルバムにも通ずるストレートなロック「Counting Every Minute」と、2人のカラーが個別に色濃く表れた楽曲が並びます。

後半もそのバランス感は崩れることなく、ミック主導のハードポップ「Inside Information」、イントロと本編の対比が気持ち良いハードチューン「The Best Of My Heart」、シンセを前面に打ち出した泣き曲「Face To Face」、これぞ産業ロックバラードといわんばかりの「Out Of The Blue」、ラストを飾るにふさわしいアメリカンロック「A Night To Remember」と緩急自在の選曲で楽しませてくれます。

アレックス・サドキン(DURAN DURANやTHOMPSON TWINSなどを手がけるポップ系プロデューサー)と制作した前作『AGENT PROVOCATEUR』の大ヒットとそれまでのバラード路線を推し進めようとしたミック、ソロ活動を経てよりシンプルかつストレートにロックがしたいルー。そのギリギリの均等関係は本作を最後に崩れ、のちにルーはバンドを脱退。アルバムも70年代から続いた全米トップ10入りを逃し(全米15位)、セールス的にも100万枚と過去の作品と比べれば低調に終わります。

しかし、アルバム自体の出来が悪いとは言いがたく、HR/HM全盛期の中で大健闘した1枚だったと思います。BON JOVIが大ヒットを果たしたタイミングだけに、「Say You Will」のような楽曲がちゃんと受け入れられたのも個人的には興味深かったし、バラード以外でもちゃんと勝負できるんだという底力を最後に見せつけられた良作と断言したいです。



▼FOREIGNER『INSIDE INFORMATION』
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投稿: 2017 05 13 12:00 午前 [1987年の作品, Foreigner] | 固定リンク

2017/05/12

HEART『HEART』(1985)

アン(Vo)&ナンシー(G, Vo)のウィルソン姉妹が中心のロックバンド、HEARTが1985年に発表した大ヒット作品。プロデューサーには70年代にTHIN LIZZY、UFOなどを手がけ、80年代に入るとSURVIVORやMICHAEL SCHENKER GROUPの諸作で知られるロン・ネヴィソンを迎えた、バンドの立て直しを図って制作された1枚です。アルバムタイトルにバンド名を冠するところからも、その覚悟が感じ取れますしね。

70年代後半にブレイクするものの、80年代に入ってからは大きなヒットに恵まれず、メンバーも脱退。そんな中訪れたHR/HMブームに便乗……というわけではなかったでしょうが、結果として当時のMTV主流の売り方やHR/HMブームにうまく乗ることができ、結果として初の全米No.1を獲得。現在までに500万枚以上を売り上げており、また本作からは「What About Love」(全米10位)、「Never」(全米4位)、「These Dreams」(全米1位)、「Nothin' At All」(全米10位)、「If Looks Could Kill」(全米54位)と5枚のシングルヒットも生まれています。

ロン・ネヴィソン特有のリヴァーブの効いた質感とアリーナロックを彷彿とさせるドラムサウンド、ハードだけど耳障りの良いギター、適度に採用されたシンセ、そしてあくまでボーカルが軸というミックス。ハードロックを基盤にしながらもポップスとしても通用する作風は、ときに「産業ロック」と揶揄されたりもしますが、リリースから30年以上経った現在聴いても色褪せることのない名作であることは否定しようがありません。

ドライブ感の強いHRナンバー「If Looks Could Kill」から始まり、ヒットシングル3連発(「What About Love」「Never」「These Dreams」)へと続く流れも良いし、そこからまたヘヴィな「The Wolf」へと戻り、後半(アナログB面)もポップさとハードさをミックスしたバランスの良い楽曲が並ぶ。アン・ウィルソンのボーカルも絶好調だし、その合間に登場するナンシー・ウィルソンの癒し度が高い歌声も箸休め的にちょうど良い(その箸休めのはずだった「These Dreams」が初の全米No.1シングルになってしまうわけですが)。楽曲自体もバンドメンバーが軸になって書いたもののみならず、ジム・ヴァランスやホーリー・ナイト、マーティン・ペイジ、バーニー・トーピンなど外部ライターによる楽曲も多数収録。そういった外部ライターによる楽曲がシングルヒットしてしまうというのも、まぁ皮肉っちゃあ皮肉ですけどね。

これだけ素晴らしい作品なのに、いまだにリマスター化されていないのが残念。質感や録音レベルが当時のままということもあって、CDやデジタルで聴いたときに若干の迫力不足は否めません。続く『BAD ANIMALS』(1987年)以降の作品含め、ぜひリマスター盤の発売をお願いしたいところです。



▼HEART『HEART』
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投稿: 2017 05 12 12:00 午前 [1985年の作品, Heart] | 固定リンク

2017/05/11

FLEETWOOD MAC『TANGO IN THE NIGHT』(1987)

FLEETWOOD MACというと、僕らの世代にとっては「昔『噂』というアルバムがアメリカでバカ売れしたポップグループ」という程度の印象しかなく、いわば「ロックやポップスの教科書に載るような、過去の偉人」的な扱いでした。しかし、ちょうど中学生の頃にスティーヴィー・ニックスが『ROCK A LITTLE』(1985年)を発表し、そこから「Talk To Me」「I Can't Wait」といったシングルヒットが生まれたことから当時よく耳にしていました。当然アルバムもレンタルで聴いた記憶があります。

そのスティーヴィーがFLEETWOOD MACの一員だということ、そして当のFLEETWOOD MACが1987年にアルバムをリリースするということをなんとなく把握しており、そんな中リリースされたのが彼らにとって通算14枚目のアルバム『TANGO IN THE NIGHT』でした。

先行シングル「Big Love」の、バンドサウンドというよりもどこかデジタル色の強い作風はもはや当時の流行なので今さら批判するつもりはありません。この軽快な楽曲が全米チャートTOP10入りし、MVをよく目にするようになったことで興味を持ち、結果アルバムを聴くきっかけをくれたのですから。

そもそもスティーヴィーがボーカルのはずなのに(という当時の認識)、この「Big Love」では男性(リンジー・バッキンガム)が歌い、スティーヴィーは吐息の掛け合いのみ。どういうこと?と思いながらアルバムを聴くと、さらにクリスティン・マクヴィーという3人目のシンガーまで存在することを知る。アルバムはリンジーの歌う「Big Love」から始まり、スティーヴィーがメインボーカルの「Seven Wonders」、クリスティンが歌う「Everywhere」と曲ごとにシンガーが入れ替わる体制だったのです。しかも曲調もシリアスなものからユルいポップスまで、リードシンガーによってソングライターが変わるわけですから、曲調もさまざま。なんとなくオムニバスアルバムを聴いてるようで、ひとつのバンドの作品を楽しむという感覚は皆無だった気がします。

ただ、当時高校生だった自分には(そしてMTVで育った世代にとっては)この作風は意外と良かったのかもしれません。事実、このアルバムを当時何度もリピートしたわけですから。先の冒頭3曲はシングルカットされ、それぞれヒットを記録。さらにクリスティンが歌う「Little Lies」もトップ10ヒット、リンジーが歌う「Family Man」も小ヒットとなり、結果として「ヒットシングルのコンピレーションアルバム」と呼ぶにふさわしい内容になってしまったのですから。

もちろんそれ以外にも80年代的なドラムビートを軸にした、どこか宗教的なカラーの「Caroline」、ヘヴィさを前面に打ち出した「Tango In The Night」、歪みの効いたギターが気持ち良いアップチューン「Isn't It Midnight」、スティーヴィーの嗄れた歌声とアコースティックギターの音色の相性抜群な「When I See You Again」、本編ラストを飾る軽やかなポップチューン「You And I, Part II」など良曲が豊富。ポップさを軸にしつつも、哀愁味あふれるリンジーのギターをフィーチャーした楽曲も多く、そのへんも聴きどころのひとつかなと。

先日、リリース30周年を記念したデラックス盤が発売され、久しぶりに本作を聴き返してみたら、思いのほか今の自分でも楽しめる内容だったので、ここで取り上げてみようかと思った次第です。個人的にはデラックス盤のアルバム未収録曲や各曲のデモトラックも存分に楽しめました。ちなみに日本盤は5月24日発売ですので、対訳や解説も楽しみたい人はもう少しの辛抱。



▼FLEETWOOD MAC『TANGO IN THE NIGHT』
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投稿: 2017 05 11 12:00 午前 [1987年の作品, Fleetwood Mac] | 固定リンク

2017/05/10

ゲスの極み乙女。『達磨林檎』(2017)

本来なら昨年11月に先行配信、12月にパッケージが発売されていたはずの本作が、約半年の延期を経てついにリリース。昨年の時点でMVが公開されていた2曲以外は、ようやく正式な形で聴くことができるようになったわけですが、そのきらびやかさと多幸感に満ち溢れたサウンドに驚かされるリスナーも多いのではないでしょうか。

どこかひねくれたイメージのある彼らですが、その資質は残しつつも、それ以上にパーっとまばゆい光が広がるようなポップさは過去随一。前作『両成敗』が全体を覆うロック度の高さでグイグイ引っ張る作風だとしたら、今作は時に訪れる穏やかさと、ところどころに散りばめられた毒の量のバランス比が絶妙です。

特に後者が少し控えめなことで穿った見方をされてしまいそうですが、それは本作を純粋に「音楽」として受け取ってほしい、楽しんでほしいという思いの表れではないかと推測。こんな状況だからこそ、歌詞やサウンドの偏った解釈はいくらでもできる。でも、そんなネガティブさもを凌駕する“突き抜け感”は今こそ正当に評価されるべきだと力説したい1枚です。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼ゲスの極み乙女。『達磨林檎』
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投稿: 2017 05 10 12:00 午後 [2017年の作品, ゲスの極み乙女。] | 固定リンク

PRIDE & GLORY『PRIDE & GLORY』(1994)

ザック・ワイルドがこの夏、オジー・オズボーンと再びタッグを組んでツアーをするそうですね。ザックがオジーバンドで本格的にギターを弾くのは2007年のアルバム『BLACK RAIN』に伴うツアー以来。ここ数年も「OZZY & FRIENDS」名義で共演する機会はあったものの、正式なギタリストとして活動をともにするのは10年ぶり。気づけば1987年にオジーと出会って、今年で30周年なんですよね。

近年はBLACK LABEL SOCIETYやソロでの活動が中心のザック。1988年にオジーの5thアルバム『NO REST FOR THE WICKED』でプロデビューしたわけですが、自身が中心となって制作されたアルバムは1994年に発表されたPRIDE & GLORY名義によるアルバム『PRIDE & GLORY』が最初でした。

このPRIDE & GLORYというバンドは、オジーの最初の引退宣言(90年代初頭)を受けてザックがジェイムズ・ロメンゾ(B)、ブライアン・ティッシー(Dr)が結成したトリオバンド。ザックはギターのほか、ボーカルも兼務しています。ザックの歌がそれなりにうまいとか、意外とオジーに似てるとかいう噂はその前から耳にしていましたが、確かにこのアルバムで聴けるザックのボーカルは「オジーの声をもっとドライにしてソウルフルさを足した」ような歌声です。ギターもあれだけうまいのに、歌も個性的かつ味があるなんて、なんて才能に恵まれた男なんでしょう。

サウンドは、ザックの才能が本格的に発揮されたオジーの6thアルバム『NO MORE TEARS』でも聴けた、“BLACK SABBATH直系のヘヴィロック+THE ALLMAN BROTHERS BANDやLYNYRD SKYNYRDなどサザンロックやブルースからの影響が強いルーズなアメリカントラディショナル”をさらに強化させたもの。オープニングの「Losin' Your Mind」なんて、イントロでいきなりバンジョーが登場しますからね。ただ、そのあとに押し寄せてくるリフの塊、のたうちまわるギターソロはザックのイメージそのまんま。続く「Horse Called War」なんて“オジー meets ジャニス”的な疾走チューンですし、その後も歌とギターを前面に打ち出したヘヴィロックやカントリーナンバー、ストリングスを取り入れたサイケデリックロックなどが続出します。

すごくカッコ良い楽曲満載なのですが、ひとつ難点が。このアルバム、非常に長い! ボーナストラックを除いても全13曲で70分。現行のリイシューバージョンなんてボーナスディスク付きの2枚組で、本編が13曲、ボーナス盤6曲で計100分ですからね……アナログだったら2枚組、下手したら3枚組になっちゃいますよ(苦笑)。

ただ、そのボーナスディスクに収録されているのが、BLACK SABBATH「The Wizzard」、LED ZEPPELIN「In My Time of Dyin'」、THE BEATLES「Come Together」とカバー三昧。カバーというよりもコピーに近い前者2曲も良いですが、ギターの替わりにピアノを弾きながら歌うブルージーな「Come Together」もなかなかの仕上がり。全部聴いたらかなりお腹いっぱいになると思われますが、ぜひこのカバーだけでも聴いてみてほしいです(嘘です、本編も最高なので、まずはそちらから聴いてみてください)。

結局PRIDE & GLORYはこのアルバム1枚でその活動に幕を下ろしてしまいますが、本作に含まれているいくつかのアコースティックナンバー(先の「Come Together」含む)がひとつのヒントとなって、1996年にソロ名義のアルバム『BOOK OF SHADOWS』を発表することになるのでした。



▼PRIDE & GLORY『PRIDE & GLORY』
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投稿: 2017 05 10 12:00 午前 [1994年の作品, Black Label Society, Pride & Glory, Zakk Wylde] | 固定リンク

2017/05/09

OZZY OSBOURNE『THE ULTIMATE SIN』(1986)

1986年初頭にリリースされた、オジー・オズボーン通算4作目のソロアルバム。参加メンバーはオジー、ジェイク・E・リー(G)、フィル・スーザン(B)、ランディ・カスティロ(Dr)。プロデュースは当時SURVIVOR『VITAL SIGNS』(1984年)、HEART『HEART』(1985年)を手がけてヒットさせたロン・ネヴィソンが担当しており、過去3作の仰々しいブリティッシュヘヴィメタルサウンドがここで一気にアメリカナイズ&産業ロック化されてしまいます。

もちろん、これは当時オジー(やマネージャーであり妻のシャロン)がこれらの作品を気に入ったことで起用したわけですが、当時はファンから酷評された記憶があります。

が、しかし。僕自身初めて聴いたオジーのアルバムが本作。そんな酷評なんて知らなかったもんだから、純粋にMTVから流れてくる「Shot In The Dark」や「The Ultimate Sin」に心奪われ、アルバムに手を出したわけです。

確かに曲によってはやりすぎってくらいにシンセを重ねているし、どこか軽薄さの感じられるメロディも存在する。でも、アルバムを通して聴くと「そこまで気にするほどか?」と思ってしまうのも事実。過去との比較で音楽を聴いているわけではないので、これはこれで純粋に楽しめる作品集なんじゃないでしょうか。

ジェイクのギタープレイも前作『BARK AT THE MOON』以上に個性が確立されていますし、ギターをかじったことがある人なら思わずコピーしたくなるリフやフレーズも多いはずです。特に「Secret Loser」はその代表的な1曲だと思いますよ。このギターソロ、本当に難しいんだよね……。

ザック・ワイドル加入以降のオジーしか生で観たことない自分は、本作からライブで耳にしたことあるのは「Shot In The Dark」。その後もほとんど取り上げられることはないんですよね。それもあってか、本作は2000年代に入ってからのリマスター版カタログから、オリジナルアルバムとしては唯一外されているという。これは噂ですが、フィル・スーザンと揉めて彼に印税が行かないようにするためなんだとか(そういえば、1997年のベストアルバム『THE OZZMAN COMETH』も、ある時期から「Shot In The Dark」が「Miracle Man」に差し替えられましたしね)。

オジーのアルバムで唯一ダブルボーカル(同じ歌声を2つ重ねる手法)じゃないとか、そのほかにもいろいろ気になるトピックはありますが、リリースから30年以上経った今聴いても、良いものは良い。それでいいじゃないですか。個人的にはオジーの作品群でかなり好きな部類です。


Ultimatesin
▼OZZY OSBOURNE『THE ULTIMATE SIN』
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投稿: 2017 05 09 12:00 午前 [1986年の作品, Ozzy Osbourne] | 固定リンク

2017/05/08

QUIET RIOT『QR III』(1986)

アメリカのハードロックバンドQUIET RIOTが1986年夏に発表した、メジャー通算3作目のオリジナルアルバム。彼らは70年代にここ日本のみで2枚のアルバムを発表しているので(当時はかのランディ・ローズが在籍していたことでも知られています)、それらを含めるならば通算5作目ということになりますが、まぁここは便宜上3rdアルバムとして扱うことにします。

1983年に発表されたメジャー1作目『METAL HEALTH』が全米No.1を獲得し、600万枚を超えるセールスを記録。また同作からのシングル「Cum On Feel The Noize」(SLADEのカバー)も全米5位まで上昇するなど、まさにその後本格化するL.A.メタルブームの先駆けとなったQUIET RIOT。続く1984年の2ndアルバム『CONDITION CRITICAL』も全米15位、100万枚を超えるセールスとなり、『METAL HEALTH』で得た成功の恩恵を受けることができました。ただ、『CONDITION CRITICAL』でも同じSLADEの「Mama Weer All Crazee Now」(全米51位)をカバーするなど、 “カバー曲で当てた一発屋”的イメージを拭い去れずにいました。

そんなQUIET RIOTが続く3rdアルバムでは、カバー曲に一切頼らないアルバム制作を実施。ハードさとポップさを適度に兼ね備えたバンドの個性を、この『QR III』という作品でより極めようとします。

本作ではルディ・サーゾ(B)が脱退し、新たにチャック・ライトが加入。曲作りも前作でのケヴィン・ダブロウ(Vo)独占体制から、ベースインスト「Bass Case」以外の楽曲すべてにケヴィン、チャック、カルロス・カヴァーゾ(G)、フランキー・バネリ(Dr)が名前を連ねる形にシフトチェンジしています。

オープニングの「Main Attraction」は本作を代表するような1曲で、シンセリフを前面に打ち出した爽やか且つ疾走感の強いナンバー。かと思えば「The Wild And The Young」のようにヘヴィながらもシンガロングできるアンセムもあるし、ヘヴィさにファンキーさを掛け合わせた「Down And Dirty」、哀愁のメロディがグッとくるバラード「Twilight Hotel」「Still Of The Night」、軽やかなHRサウンドに泣きメロを乗せた「Slave To Love」など良曲満載。80年代のカリフォルニアの絵が自然と思い浮かびそうなビッグサウンドとキラキラしたシンセ、カルロス・カヴァーゾの適度に弾きまくるギターソロ、そして大勢での大合唱必須のコーラス。あの時代、僕たちが求めていたアリーナロックそのものがここにあったのです。

しかし、作品ごとにセールスを落としていったQUIET RIOT。本作は全米31位と低調に終わり、ヒットシングルを生み出すこともできませんでした。純粋に作品が評価される以前に、バンドの評価(特にケヴィンのビッグマウスぶり)が悪影響を及ぼし、のちにケヴィンはバンドから追い出されてしまうのでした。

(その後については、続く4thアルバム『QR』のレビューをご覧ください)



▼QUIET RIOT『QR III』
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投稿: 2017 05 08 12:00 午前 [1986年の作品, Quiet Riot] | 固定リンク

2017/05/07

STONE TEMPLE PILOTS with CHESTER BENNINGTON『HIGH RISE』(2013)

LINKIN PARKのチェスター・ベニントンはバンド活動以外にも、さまざまな音楽ユニット/バンドに参加しています。例えば2009年にアルバム『OUT OF ASHES』を発表したバンドDEAD BY SUNRISE、そして2013年に加入したSTONE TEMPLE PILOTSあたりは有名かと思います(前者は最近のファンには身近ではないかもしれませんが)。

スコット・ウェイランドが脱退し、ボーカリスト不在となったストテンはチェスターをボーカルに迎え、新たに“STONE TEMPLE PILOTS with CHESTER BENNINGTON”名義で活動を続けていくことを発表。2013年春にはこの編成で初のオリジナル曲「Out Of Time」を配信し、秋には同曲を含む5曲入り『HIGH RISE』をCDリリースするのでした。

スコットが再加入して2010年に発表したアルバム『STONE TEMPLE PILOTS』は“いかにも”な作風で、古くからのファンを喜ばせてくれました。そこから3年後に制作されたこの『HIGH RISE』も、基本的には従来のストテンサウンドなんですが、そこにチェスターのボーカルが乗ることで若干の違和感が生じる結果に。スコットほどのアクの強さもないし、線も細いチェスターの歌声はこういうオーソドックスなロックには向いてないのではないか。一聴したときはそう思ったものでした。

しかし、何度か聴き返すうちに不思議と馴染んでくるんです。これはこれで悪くないかも、と。もともと楽曲自体は過去のストテンのアルバムに入っていても不思議じゃないナンバーばかりだし、チェスターが入ったからといって特に新しいことをやろうとしていない。「いや、むしろ俺たちはこれがやりたいんだ!」という従来のストテンメンバー3人からの強い意志が感じられる、“この先”へつなげるための重要な作品集なんですね。

バンド名の「with〜」表記からもわかるように、この編成は永遠ではない。実際、2015年秋にはチェスターはストテンからの離脱を発表。その1ヶ月後にはスコットも急逝しており、バンドは今も新ボーカリストを探している最中です。オーバードーズという形でこの世を去り、ロックシーンにその名を刻み込んだスコット。LINKIN PARKという世界的に大成功したバンドから少し離れて、大先輩たちの共演でアク抜きしてバンドへと戻っていったチェスター。そして地道に続けることを選んだストテン。どの生き方が正しいとか間違ってるとか言いがたいけど、今は再びSTONE TEMPLE PILOTSとしての新作を気長に待ちたいところです。



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2017/05/06

LINKIN PARK『THE HUNTING PARTY』(2014)

前作『LIVING THINGS』(2012年)はその前の『A THOUSAND SUNS』(2000年)から1年9ヶ月という最短期間で届けられたにも関わらず、過去4作を総括しつつも非常にコンパクトな作品を提示したLINKIN PARK。いわゆる“ニューメタル”時代(初期2作)を第1期とするならば、作品のたびに大きな変化を繰り返した3nd『MINUTES TO MIDNIGHT』(2007年)から前作までの3作は第2期ということになるのでしょう。

では、続く第3期では何を聴かせてくれるのか。そんなワクワクと不安を抱えるファンのもとに、またもや2年という短いサイクルで届けられたのが通算6枚目のオリジナルアルバム『THE HUNTING PARTY』でした。

プロデューサーを手がけたのは、過去3作に携わったリック・ルービンではなく、メンバーのブラッド・デルソンとマイク・シノダ。いわゆるセルフプロデュースというやつですね。バンドがやろうとすることを客観視する人間がいなくなったことで、どんな独善的な作品が完成するのだろうと思ったら、なんとラウドロックに回帰したバンドサウンドが中心。見方によっては原点回帰と解釈することもできますが、ここで繰り広げられているのは初期のニューメタル、ラップメタルとは一線を画するもの。現代的なラウドロックではあるものの、メタルというよりはパンクに近いテイストが強まっています。

正直、『LIVING THINGS』発表後にスティーヴ・アオキとのコラボ曲「A Light That Never Comes」やリミックスアルバム『RECHARGED』(ともに2013年発売)でEDMやダンスミュージックへの急接近を図ったことから、続く6thアルバムはよりその色合いが強くなるのでは?と予想していたのですが、ここまで生々しくて“やりっぱなし”なロックアルバムを作るとは想像もできませんでした。

“やりっぱなし”の意ですが……過去の楽曲がどれも非常にコントロールされた、かなり作り込まれたものだったのに対して、今作で聴ける楽曲はどれも「スタジオでセッションしたものを、そのまま出した」ような印象が強いから。良く解釈すればバンドとしての躍動感をそのまま収めたと受け取れるし、悪く解釈すれば上記の“やりっぱなし”感を受け取ってしまう。これは聴き手が彼らに何を求めているかで二分すると思います。

つまり、僕は直近の2作をとても気に入っていたため、このタイミングでの変化に対して最初は好意的に受け取ることができなかった。リリースから3年近くたった今聴き返してもその印象は変わることなく、まもなく発表される7thアルバム『ONE MORE LIGHT』でのさらなる変化を考えると今作での中途半端な原点回帰は過渡期そのものだったんだなと思うわけです。バンドを次の10年につなげるために必要なアク抜きだったと。

そう解釈すると、本作に多数のゲストアーティストが参加していることも頷けるというか。ペイジ・ハミルトン(HELMET)、ラキム、ダロン・マラキアン(SYSTEM OF A DOWN)、トム・モレロ(RAGE AGAINST THE MACHINE)というLINKIN PARKよりも前に一時代を築いた人たちとのコラボで、次の一歩を導き出そうとしたのかもしれませんね。

聴く人が聴けば決して悪くない作品集だけど、過去にこだわるLINKIN PARKファンには中途半端なアルバムだった。今はそういうネガティブな感情を拭いきれませんが、『ONE MORE LIGHT』を経てさらに数作発表した後にこそ、この『THE HUNTING PARTY』は評価されるのではないか……むしろそうなってほしいと、ちょっとだけ希望を残して終わりたいと思います。



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投稿: 2017 05 06 12:00 午前 [2014年の作品, Linkin Park] | 固定リンク

2017/05/05

LINKIN PARK『LIVING THINGS』(2012)

バンドの歴史上もっとも大きな変化を遂げた4thアルバム『A THOUSAND SUNS』(2000年)は全米1位という結果を残したLINKIN PARK。過去最大の賛否を引き起こした同作から2年経たずして発表されたのが、続く5枚目のオリジナルアルバム『LIVING THINGS』です。1年9ヶ月というリリースサイクルはバンド史上最短で、バンドが変化を遂げたことで得た刺激がそのまま続く今作にも反映されています。

コンセプチュアルな作風で全15曲で47分という聴き応えのあった前作から一変、今作はノンコンセプトで全12曲37分というコンパクトさ。また1曲1曲も非常にコンパクトで、そのどれもが2〜3分台。このあたりは、2ndアルバム『METEORA』(2003年)にも通ずるものがあります。

また、作風的にも前作『A THOUSAND SUNS』で手にしたエレクトロロック路線を軸にしつつも、初期2作のミクスチャーロック感、さらには3rd『MINUTES TO MIDNIGHT』(2007年)での王道ロック&歌モノ路線を取り込んだことで、『A THOUSAND SUNS』よりも聴きやすさが増している印象が強い。ノンコンセプトでさらっと聴けてしまうことから、イメージ的には『METEORA』(2003年)にもっとも近いのかもしれません。

また、ラップボーカルやスクリームがさらに復活していることから、発売当時のキャッチコッピーにあった「新たな『HYBRID THEORY』」というたとえも納得できる。実際『A THOUSAND SUNS』よりもラウドさが戻ってきているし、ギターの存在感も復活している。でも、そのギターが主軸になるのではなく、あくまで各曲に色を添える程度の存在感で収まっている。そういう意味では本作で聴けるサウンドは、ニューメタルでもラップメタルでもない。ラウドロックからさらにはみ出し、独自の枠を作り上げたLINKIN PARKがデビューから12年でたどり着いた新たな場所。カテゴライズが好きな日本人には、当時このアルバムがどう映ったんでしょうね。

『A THOUSAND SUNS』がもっともお気に入りという自分にとっては、本作も当然お気に入りの1枚。また、『MINUTES TO MIDNIGHT』のような楽曲主体の方向性が好きという人にも、意外に受け入れられる1枚ではないでしょうか。

ちなみに、本作のプロデュースは三たびリック・ルービンとマイク・シノダが担当。『METEORA』から本作まで、4作連続で全米1位を獲得しています。



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投稿: 2017 05 05 12:00 午前 [2012年の作品, Linkin Park] | 固定リンク

2017/05/04

LINKIN PARK『A THOUSAND SUNS』(2010)

『MINUTES TO MIDNIGHT』(2007年)発表後、世界7都市で同時開催されたチャリティイベント「LIVE EARTH」にて、東京公演に出演したLINKIN PARK。その後も同年秋の来日ツアー、2009年夏の「SUMMER SONIC 09」ヘッドライナーなど定期的に日本公演を行い、改めてトップバンドとしての存在感を見せつけました。

また、その間にも定期的に新曲/企画アルバムを発表していきます。2008年春にはラッパーのバスタ・ライムスとのコラボ曲「We Made It」、同年秋にはライブアルバム『ROAD TO REVOLUTION: LIVE AT MILTON KEYNES』をリリース。2009年春には映画『トランスフォーマー:リベンジ』の主題歌として新曲「New Divide」を書き下ろし、ヒットさせます。2010年初頭にはハイチ地震支援のチャリティアルバムに新曲「Not Alone」を、同年4月にはゲームアプリ「エイト・ビット・リベリオン!」に新曲「Blackbirds」をそれぞれ提供し、ニューアルバムが発表間近であることを感じさせました。

そして2010年9月、ついに4thアルバム『A THOUSAND SUNS』が発売。プロデュースは前作から引き続きリック・ルービンとメンバーのマイク・シノダが担当。シンプルなバンドサウンドを前面に打ち出した前作『MINUTES TO MIDNIGHT』から一変し、本作ではPro Toolsを大々的に使用したエレクトロ色の強い1枚に仕上げられています。また、本作は核戦争を題材にしたコンセプトアルバムでもあり、歌詞も政治的なメッセージの比率が高くなっています。それにより、チェスター・ベニントン&マイク・シノダのボーカルワークも前作以上に攻撃的で、曲によっては“4 Letter Word”の使用、ラップボーカルやスクリームが増えています。

そして、ビートも打ち込みを多用したほか、ラウドなギターが登場する場面が減退。バンドスタイルで各楽器が鳴らされるのではなく、各プレイがひとつの素材として存在している。それらをPro Toolsを通じて再構築していることから、バンド色が過去4作中もっとも希薄かもしれません。そういう点においては前作『MINUTES TO MIDNIGHT』とは異なる意味で、ラウドロックからの脱却が図られています。

『HYBRID THEORY』(2000年)から10年。もはやLINKIN PARKはデビュー時とは別のバンドになってしまった……と嘆くファンも少なくなかったと思いますが、ちゃんと聴けば『A THOUSAND SUNS』には『HYBRID THEORY』での彼らを見つけることができますし、『HYBRID THEORY』にもこの『A THOUSAND SUNS』へとつながる布石がちゃんと散りばめられている。つまり、彼らは決していきなり変化を遂げたのではなく、デビュー時から持っていたさまざまな可能性のひとつをこの4枚目のアルバムで試しただけ。そう受け取ることはできないでしょうか?

他のインダストリアルロックバンドやエレクトロロックバンドと比べても聴きやすさがしっかり保たれているのは、ちゃんと『HYBRID THEORY』から地続きなんだという証明だと、個人的には解釈しています。そういった意味でも、LINKIN PARKの全作品中もっとも好きな1枚です。



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投稿: 2017 05 04 12:00 午前 [2010年の作品, Linkin Park] | 固定リンク

2017/05/03

LINKIN PARK『MINUTES TO MIDNIGHT』(2007)

『HYBRID THEORY』(2000年)『METEORA』(2003年)の2枚でゼロ年代前半のラウドロックシーントップの座を手中に収めたLINKIN PARK。しかし、2000年代半ばに入るとラップメタルやニューメタルといった一過性のブームは過去のものとなり、ラウドロックシーンはさらなる変革を迎えていきます。

そんな中でLINKIN PARKが新たに取った手法は、音楽的に大胆なシフトチェンジを図ること。2007年春に発表され4年ぶりのオリジナルアルバム『MINUTES TO MIDNIGHT』では、プロデューサーを過去2作手がけたドン・ギルモアから大御所リック・ルービンに交代。約14ヶ月かけ、100曲の中から厳選された全13曲が収められています。

重心の低いミドルテンポのヘヴィロックが中心だった過去2作から一変。本作では前時代的なハードロックやメロディアスなロックが軸となっており、彼らが単なるラウドロックバンド、ラップメタルバンドではないことを証明しています。だって、マイク・シノダによるラップがフィーチャーされた楽曲は全13曲中たったの2曲(「Bleed It Out」「Hands Held High」)で、「In Between」においてはマイクがリードボーカルを担当しているのですから。

もう一方のシンガー、チェスター・ベニントンもスクリームを極力抑え、丁寧に歌うことに専念。ギタリストのブラッド・デルソンもメタル調ディストーションを控え、曲によっては大胆にギターソロを取り入れるなどして各曲に彩りを与えています。「What I've Done」のMVでブラッドが普通にストラトキャスターを弾いている姿を目にしたときは、そりゃあ驚いたものです。

そういえば、その「What I've Done」のMVはカリフォルニアの砂漠で撮影されたもので、歌詞同様に環境汚染・破壊などの社会問題を提示するものでした。LINKIN PARKがそういった問題と積極的に向き合い始めたのも、この前後だったと記憶しています。人によってはそのへんに姿勢に対して不信感を持ち始め、バンドと距離を置き始めたり離れ出したりしたのもこの頃だったように思います。

特に日本人にとってはこのへんの問題があまりに身近なものではないため、どうしても完全に理解できないかもしれません。が、それも「3.11」におけるバンドの働きによって、より深く理解することができたのではないでしょうか。バンドがどんどん大きくなり、視野や意識がどんどん広まることによって生まれる弊害……と言ったら語弊があるかもしれませんが、これってビッグネームになればなるほどぶつかる“壁”なのかもしれませんね。

と、ちょっと話題が脱線しましたが。アッパーな「Given Up」「Bleed It Out」「In Pieces」、ヘヴィな「No More Sorrow」、ヒップホップと賛美歌を融合させたかのような「Hands Held High」、メロウなバラード「Shadow Of The Day」、そしてアンセミックなハードロック「What I've Done」と楽曲のバラエティは過去2作以上。曲によってはエレクトロの要素も散りばめられていき、次作でのさらなる大変化を予感させる内容となっています。僕のように初期のニューメタル的作風が苦手という方は、もしかしたらこのアルバムからLINKIN PARKに入ると案外イケるかもしれません。



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投稿: 2017 05 03 12:00 午前 [2007年の作品, Linkin Park] | 固定リンク

2017/05/02

LINKIN PARK『METEORA』(2003)

2000年秋にアルバム『HYBRID THEORY』でメジャーデビューを果たしたLINKIN PARKは、たった1枚のアルバムでアメリカのみならず世界中で人気バンドに仲間入り。アルバムは1000万枚を超える大ヒット作となり、同作からのシングル「In The End」もビルボートTOP10入り(最高2位)を記録しました。2002年夏には『HYBRID THEORY』収録のリミックストラックを集めたアルバム『REANIMATION』(最高2位)を発表。現在に至るまで彼らはこういったリミックス曲を多数発表していますが、このへんも彼らの立ち位置を明確にさせるのに一役買ったように思います。

そしてLINKIN PARKは2003年春、待望の2ndアルバム『METEORA』をリリースしました。本作は発売と同時に全米1位を獲得。発売初週に80万枚以上を売り上げる記録を作りました。プロデュースは前作から引き続きドン・ギルモアが担当。作風的にもデビュー作の延長線上にある内容に仕上がっています。あれだけ爆発的大ヒットを記録したアルバムに続く作品ですもの、そりゃあ一気に路線を変えることはできませんよね。

ただ、よくよく聴くとこの『METEORA』には続く3rdアルバムへの布石もいくつか見え隠れしております。つまり、“変化の前にどうしても必要だったステップ”という点において、この『METEORA』の果たした役割は非常に大きなものがあったわけです。

リズム的には軽やかさすら感じられたデビュー作と比べると、この『METEORA』で聴ける楽曲群はもっと重心が低く、重く引きずるようなものが多い印象。このへんは当時のラウドロック/ニューメタルがどうこうよりも、ヒップホップ的観点でそうなったのではないか、と推測します。また、本作発売前に『REANIMATION』というリミックスアルバムを発表したのも、そのへんに大きく影響を与えているでしょうしね(『METEORA』に関しても、ジェイ・Zとのマッシュアップアルバム『COLLISION COURSE』を発表していますし)

興味深いことに、本作収録曲はどれも2〜3分台で、4分を超える楽曲は皆無。インタールードやインスト小楽曲なども含め、全13曲で36分という聴きやすさも、このアルバムを繰り返し聴きたくなる要因になっているはずです。いわゆるロックやHR/HMのアルバムのように頭からエンディングまでをひとつの流れで聞かせてしまう作風というよりも、もうちょっと雑多な印象が強いのが、この『METEORA』というアルバムが前作『HYBRID THEORY』とは大きく異なるポイントかもしれません。実は最初に聴いたLINKIN PARKのアルバムがこの『METEORA』。このバンドに対して苦手意識が強かったけど、不思議と入っていきやすかったのを今でも覚えています。また、このアルバムを聴いてから『HYBRID THEORY』に入っていくと、以前よりも苦手意識が解消されていたことにも気づかされました。

『HYBRID THEORY』がバンドにおけるすべての原点ならば、この『METEORA』は何にも縛られずにどこにでも行ける、どんな姿にだって変身できるという最初の意思表明だったのかもしれませんね。



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投稿: 2017 05 02 12:00 午前 [2003年の作品, Linkin Park] | 固定リンク

2017/05/01

LINKIN PARK『HYBRID THEORY』(2000)

待望のニューアルバム『ONE MORE LIGHT』のリリースを数週後に控え、今回はLINKIN PARKのデビューアルバム『HYBRID THEORY』を紹介したいと思います。

それまでのニューメタルの流れ、そして前年1999年にLIMP BIZKITが2ndアルバム『SIGNIFICANT OTHER』で全米1位を獲得したことで勃発したラップメタルブーム。2000年秋にデビューしたLINKIN PARKはこれらの恩恵をたっぷり受けたことにより、ずぶの新人にも関わらずアルバムはビルボード初登場16位、最高2位にまで上昇し、今日までに1000万枚以上ものセールスを記録しています。

実は本作リリース当時、そのあまりにも急激なブレイクに対して引き気味だった自分は、素直にアルバムを聴くことができなくて。確かアルバムをまるまる聴いたのは、続く2ndアルバム『METEORA』(2003年)が発売されて以降だったんじゃないかと記憶してます。もっと言えば、ニューメタルという言葉に対して若干の嫌悪感を持ち始めたのも、本作のメガヒットがきっかけだったんじゃないかな。

でも、実際にアルバムを聴くと本当によくできた作品なんだよね。アルバムは聴いたことなくても「One Step Closer」や「In The End」といった楽曲はシングルカットされてMVなどを通じて聴いたことがある。それらももちろん素晴らしい完成度なんだけど、アルバムを通したときに感じることができるビートに対する意識の高さ。単なるミドルテンポとはちょっと違うんですよね。もちろんDUST BROTHERSが参加した「With You」みたいな楽曲もそのひとつではあるんだけど、もっとこう……ドラムとベースが、とかじゃなくて、リズムとギター、リズムとサンプリング(ターンテーブル)、あるいはリズムと歌(もしくはラップ)といった具合に、本作以前に登場したニューメタル/ラップメタルバンドとは一線を画する魅力があると、改めて感じたわけです。

しかも、それをしっかりロックのフォーマットの中で完結させている。LIMP BIZKITもロックっちゃあロックだけど、どちらかというとヒップホップの流れからたどり着いたスタイルという印象が強い。ところが、LINKIN PARKはスタートこそロックだけど、そこにヒップホップやソウル/R&B、エレクトロニカなどのテイストを加えていく。特にここ10年くらいの作品でその傾向が強まっているけど、かといって比率的にはギリでロックサイドにとどまっている。だから安心して楽しめる……自分にとってのLINKIN PARKはそういう存在なんだと、最近になって気づいたのでした(その比率の違いはあるけど、そういう点においてはDEFTONESもその系譜にいるバンドだと思ってます)。

3rdアルバム『MINUTES TO MIDNIGHT』(2007年)以降の変化/進化はこのデビュー作の時点では想像もできませんでしたが、その都度その都度振り返ってみればそれも納得できる。そういう意味においても、現在までの活動におけるすべてのルーツがこの『HYBRID THEORY』に詰まっているように思います。



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投稿: 2017 05 01 12:00 午前 [2000年の作品, Linkin Park] | 固定リンク