DURAN DURAN『NOTORIOUS』(1986)
1986年末にリリースされた、DURAN DURANにとって通算4枚目のスタジオアルバム。前々作『RIO』(1982年)、前作『SEVEN AND THE RAGGED TIGER』(1983年)が本国イギリスでそれぞれ2位、1位に輝き、アメリカでもともに200万枚を超えるヒット作に。特に『SEVEN AND THE RAGGED TIGER』からはCHICのナイル・ロジャースがリミックスを手がけた「The Reflex」が英米で1位に輝き、DURAN DURANは一躍トップバンドの仲間入りを果たします。
1984年には新曲「The Wild Boys」(全米&全英2位)を含むライブアルバム『ARENA』も発売。こちらも全米で200万枚以上の売り上げを記録するのですが、この頃からバンドは2組に分かれて新バンドプロジェクトを始動。それがジョン・テイラー(B)&アンディ・テイラー(G)組によるTHE POWER STATIONと、サイモン・ル・ボン(Vo)、ニック・ローズ(Key)、ロジャー・テイラー(Dr)からなるARCADIAでした。2組はともに1985年にアルバムを発表し、それぞれ大成功を収めます。
1986年に入ると再び5人で集い、ニューアルバムの準備に入るのですが、この制作途中でアンディが脱退を表明。当時進行させていたハードロック色の強いソロプロジェクトに移行してしまいます。さらに、ロジャーもバンドを脱退。DURAN DURANはサイモン、ジョン、ニックの3人となってしまいます。
そんな変則的な編成で制作されたのが、この『NOTORIOUS』というアルバム。プロデューサーには先の「The Reflex」や「The Wild Boys」を手がけたナイル・ロジャースを、ドラマーにAVERAGE WHITE BANDのスティーヴ・フェローン、ギターにMISSING PERSONSのウォーレン・ククロロをサポートで迎えて、文字どおり“シック”で“大人”、“黒っぽい”アルバムを完成させるのです。
初期3作では“黒人音楽に憧れる白人”よろしく、ファンクミュージックとパンク、ニューウェーブをミックスした独自のポップサウンドを確立させたDURAN DURANが“ホンモノ”たちと交わりあうことで、より“ホンモノ”に近づこうとした。それが、この『NOTORIOUS』という地味な作品集なのです。言ってみれば、アーティストの自己満足で作り上げてしまったエゴの塊みたいなもので、初期のファンからすれば「……これじゃない」と落胆する姿が目に浮かぶわけです。が、地味ながらも先行シングル「Notorious」がカッコよかったもんだから、同曲は全米2位まで上昇。アルバムも全米12位、全英16位と前作ほどのヒットにはならなかったものの、そこそこの成功を収めるわけです。
本当に派手な曲が皆無な作品ですが、ファルセットで歌うあたりにプリンスを意識したことが伺える「Skin Trade」、アメリカとヨーロッパの融合的イビツさが逆にカッコいい「American Science」、本作中でもっともロック寄りな「Hold Me」やシングルカットされた際のダンスリミックスも嫌いじゃない「Meet El Presidente」など良曲多し。別プロジェクトでの成果もちゃんと反映されており、THE POWER STATIONのファンキーさとARCADIAの冷たさはしっかり感じ取ることができます。まぁ編成的にARCADIAの色合いがどうしても強くなってしまうわけで、「A Matter Of Feeling」や「Winter Marches On」みたいな“それ、ARCADIAでやれや”的楽曲も含まれており、そのへんにどうしても“ホンモノ”になりきれないDURAN DURANの性(さが)が感じられホッとしてしまったりもします。
結局、このアルバム以降徐々にセールスを落としていったDURAN DURANは、90年代前半に「Ordinary World」で再ブレイク、2000年代にはオリジナルメンバー5人で再集結したりと紆余曲折を経て、現在もサイモン、ニック、ジョン、ロジャーの4人で活動を継続中。2015年の最新作『PAPER GODS』ではこの『NOTORIOUS』で試したことの発展型が展開されているので、やっぱり“ホンモノ”に近づきたかったのね、と妙に納得してしまいました。そういう意味でも、現在の彼らを語る上でこの『NOTORIOUS』は『RIO』(1982年)などの初期作品同様に重要な1枚なのかもしれませんね。
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